説明

同一領域上で取得されたSAR画像における統計的に均質な画素を識別するための方法

【課題】同一領域上で取得されたSAR画像の統計的に均質な画素を識別する方法を提供する
【解決手段】共通のグリッド上でSARセンサを用いてN個のレーダ画像を取得するとともに、それらN個の画像において決定されたサンプル画素に対してN個の振幅又は強度値のベクトルを計算し、サンプル画素に対して1つの推定窓(10)を規定し、その推定窓(10)内に含まれている全ての画素について、統計的検定を用いて各ベクトルをサンプル画素のベクトルと比較して、それらベクトルのうちでサンプル画素のベクトルの同じ確率分布関数により生成されるものを確認し、KS検定に合格した画素をサンプル画素と均質である画素(2、3)として、不合格の画素をサンプル画像と均質ではない画素(4)としてそれぞれ識別し、KS検定に合格した画素(2、3)であっても直接的又はサンプル画素と均質な他の画素を介してサンプル画素に連結していない画素を除去し、サンプル画素と均質かつ連結している画素のセットを統計的に均質な画素として識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同じ領域上で取得されたSAR画像における統計的に均質な画素を識別するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)装置は、二次元画像を生成するものである。この画像の次元の一方はレンジと呼ばれ、レーダからの視線における照射されている物体までの距離である。他方の次元はアジマスと呼ばれ、レンジに対して垂直である。
【0003】
SARレーダは、一般的に400Mhzから10Ghzまでの間に含まれる周波数で動作し、通常は航空機や、250kmから800kmまでの高度で軌道を周回する衛星プラットフォームなどに搭載される。レーダのアンテナは、プラットフォーム(航空機又は衛星)の運動方向に対して直交するように地球に向いており、ナディア方向、すなわち地球に対して鉛直な方向に対して20°から80°までを含む「オフナディア」角として知られる角度をなして地球に向いている。
【0004】
このシステムにより地球表面の画像は数mの空間分解能で生成可能であり、公知の文献に記載された適当なアルゴリズムを用いて、アジマス方向において実際の寸法より遥かに大きい寸法のアンテナを合成する(これがセンサの名称の由来である)。
【0005】
SARの最も重要な特徴は、これが一貫性のセンサであることであり、そのため画像は複素数の行列となり、その振幅値は照射された物体から後方散乱されるパワーに関連している(すなわちレーダの横断面に関連している)。一方、このステップは、対象物の性質とレーダからターゲットまでの距離とにより決定される。日射の状況と雲のかかり具合に関わりなく画像が得られるので、SAR画像は種々のアプリケーションにとって好適である。それらのアプリケーションのうち、対象物の識別と分類に関するアプリケーション、「変化検出」及び干渉分光アプリケーションが主に重要である。後者は、通常は複数の多時期SARデータからデジタル高度モデルを得ること、及び/又は地形表面の変形を分析することを目的としている。
【0006】
レーダのデータから注目情報を抽出するために使用される方法において、統計的に均質な画素、すなわちレーダの特徴が実質的に同一である画素を合わせてグループ化することが有用であることが多い。データのフィルタリング(雑音除去)に関連する問題について十分に考察してみよう。音響低減は、それが振幅や位相についてのものであっても、通常はデータの空間分解能の損失につながる。実際には、雑音除去は、ほとんど常に各画素の周りの推定窓に対して行われる可動平均演算に事実上変換される。また、同様のアプローチも関心のある他のパラメータを推定するために使用される。それらのパラメータとしては、例えば、時間的一貫性を有する照射対象物の地球物理的又は電磁的な特性や、ポラリメトリックデータにおける散乱行列などがある。
【0007】
通常のSAR画像は、種々の性質の対象物、例えば自然物(木材、岩、牧草など)又は人工物(製品、金属構造物、自動車など)から到来するデータを集める。それ故、1つのレーダ画像の隣接する画素間でさえも、電磁的特徴は著しく異なったものとなり得る。また、対象物が分布しているので、複数の画素からなるグループ全体において、点状の画素又は単一若しくはせいぜい他の画素と結合しているとして特徴付けられている画素からなるレーダ信号の特徴がほぼ同一となることもあり得る。これらの2つのタイプの対象物は、通常は現在のアプリケーションにおいて実質的に異なる処理を要する。例えば、第一のタイプのターゲット(分布している場合)にとって有用であることが判明しているフィルタリング技術を採用することは、信号雑音比(SNR)の高い値によって特徴付けられる第二のタイプ(点状の場合)にとっては有害であるのに対して、低いSNRによって特徴付けられる隣接する画素についておこなわれる空間的平均演算は逆効果となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術に鑑みて、本発明の目的は、同一領域上で取得されたSAR画像の統計的に均質な画素、すなわち同様の電磁的特性により特徴付けられる画素を識別する方法を提供することにある。それにより、適応的な手法で選択されたサポートにおいて信頼できる統計的推定を行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記の課題は、同一領域上で取得されたSAR画像の統計的に均質な画素を識別する合成開口レーダ(SARセンサ)を用いた次の方法により解決される。
【0010】
(a) 同一領域上でSARセンサを用いて、共通グリッドでのデータのリサンプリングを許容するのに好適な取得形状をもってN個のレーダ画像を取得するステップと、
(b) 共通のグリッドでのデータのリサンプリングの後、1つの画素を選択してサンプル画素として識別するステップと、
(c) N個の利用可能な画像におけるサンプル画素についてN個の振幅値又は強度値のベクトルを計算し、そのベクトルをサンプルベクトルとして識別するステップと、
(d) サンプル画素の近辺の画素セットを識別するために、サンプル画素に対して推定窓を規定するステップと、
(e) サンプル画素に対して行ったのと同じように、推定窓内に含まれる全ての画素に対してN個の振幅値又は強度値のベクトルを計算するステップと、
(f) 推定窓に属する全ての振幅値又は強度値のベクトルを、統計的検定を用いてサンプルベクトルと比較して、いずれの振幅値又は強度値のベクトルが、サンプルベクトルと同じ確率分布関数により生成されるかを検定するステップと、
(g) 振幅値又は強度値のベクトルに関連しかつステップ(f)の検定に合格した画素を、サンプル画素と均質な画素であると識別するとともに、振幅値又は強度値のベクトルに関連しかつステップ(f)の検定に合格しなかった画素を、サンプル画像と均質ではない画素であると識別するステップと、
(h) 推定窓に含まれている画素において、振幅値又は強度値のベクトルに関連しかつステップ(f)の検定に合格していても、直接的にあるいはサンプル画素と均質な他の画素を介して、サンプル画素に連結していないためサンプル画素と均質ではない画素を除去するステップと、
(i) サンプル画素と均質かつ連結している画素を、統計的に均質な画素として識別するステップ。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、一般的な方法により同一領域上で取得されたSAR画像において統計的に均質な画素を識別する方法を実現することが可能となる。それにより、フィルタリングの結果に影響を与え、通常は分析に完全に歪みを生じさせる著しく不均質なデータの統計的集団に対してなされる平均化及び推定により発生する問題を劇的に低減することができる。
【0012】
更に、本発明の方法により、点状のレーダ対象物からの応答を保存することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】共通のグリッド上で取得されリサンプリングされる一連のSAR画像である。
【図2】サンプル画素と均質であるが連結していない画素、及びサンプル画素と均質であり連結している画素を有する推定窓の概略図である。
【図3】エトナ火山の領域の平均反射率マップである。
【図4】本発明の方法における、各画素について統計的に均質な画素の数を示す画像である。
【図5a】本発明の方法における、反スペックルフィルタ前の画像である。
【図5b】本発明の方法における、反スペックルフィルタ後の画像である。
【図6a】本発明の方法における、インターフェログラムのためのフィルタの適用前の画像である。
【図6b】本発明の方法における、インターフェログラムのためのフィルタの適用後であって図5aと同じ画像である。
【図7a】従来の方法又は非適応的な長方形の推定窓により推定された一貫性のマップである。
【図7b】本発明の方法による、適応的な推定窓又は統計的に均質な画素のグループを用いて推定された一貫性のマップである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の特徴及び利点は、以下の具体的な実施例についての詳細な説明から明らかであるが、添付図面に示された例により限定されるものではない。
【0015】
本発明による方法は、同一領域についての異なる時点及び/又は異なる観測角度で、共通のグリッド上でのリサンプリングを許容するように、N個の画像A1〜AN(図1)を収集(又はデータセット)するために用いられる。リサンプリングの後、全てのデータセットの画像は、データのセットの2つの全体的画像における均質な画素が、レーダ照射を受ける地形の同じ部分に対応するように、共通のグリッド上で相互に重畳可能にされる。
【0016】
この方法が演算する値は、地表についての分解画素の所定のセルに関してSARにより取得される信号の振幅値、すなわち関心のある領域上で利用可能なN個の取得物のうちの所定の画素において記録されたN個の振幅値である。振幅値についてのみ演算することにより、コンピュータ計算量はより少なくなるとともに、本方法がSARの干渉測定において周知である一連の効果全体から影響を受けないようになる。それらの効果は、信号の位相値を変えるが、モジュールを実質的に変えることなく維持するものであり、例えば大気の影響や、衛星の軌道の変動などである。本方法は、画像の強度値、すなわち振幅値の自乗値に適用することもできる。
【0017】
本方法は、サンプル画素として1つの画素を選ぶことを含む。
【0018】
共通のグリッドA1…AN(図1)上でリサンプリングされた上記のN個のレーダ画像を用いて、すべてのサンプル画素に対してN個の振幅値のベクトルが、レーダの照射を受ける領域に関連して取得中に形成される。このようにして、大きさNの振幅値のベクトルが得られる。振幅値Aは、式により計算される。Re及びImは、SAR画像を複素数の行列として用いることができるため、それぞれ処理中の画素の各複素数の実部及び虚部になる。サンプル画素の振幅のベクトルは、サンプルベクトルとして規定される。
【0019】
本発明の方法(図2)は、各サンプル画素1(黒い正方形で示す)に対して関心のある領域10を規定して推定窓とし、その中でサンプル画素と統計的に均質な画素を求めるものである。推定窓の形状と大きさは、一方のアプリケーションから他方のアプリケーションへ移るにつれて変わり得るパラメータではあるが、通常は数百の画素を含む長方形の窓が選択される。
【0020】
推定窓10に属する各画素に対して、N個の振幅値のベクトルが、サンプルベクトルと同じ方式で計算される。
【0021】
推定窓10は、画素セットと、サンプルベクトルと同じ大きさNを有する振幅のベクトルセットとを識別し、その結果は統計的に均質な特性を探す際に、サンプルベクトルと比較される。N個の同数のサンプルを含む確率変数の2つのベクトル間の比較における問題点は追跡可能であり、同一分布関数の2つの実施形態であるか、あるいは異なる分布関数の形態であるかを確認することが望ましい。
【0022】
推定窓10の画素に関する各ベクトル、及びサンプルベクトルを比較するための検定を行うことが必要である。
【0023】
手順をできるだけ一般化できるようにするためと、アルゴリズムが統計分布の所定ファミリー内でしか有効でないと考えなくてもよいようにするために、検定はノンパラメトリックなタイプのものであってよい。この比較検定のタイプは、先行技術において公知であり、そのうちの使用可能な公知の技術のうちの1つに、コルモゴロフ-スミルノフ検定(KS検定:Kolmogorov-Smirnov test)がある。この検定は、実際には有意性の度合いを選択することを要するのみであり、検定ベクトルの限られた大きさをもって合理的な成果をあげている。この検定は、「Numerical recipes in C:the art of scientific computing」(ISBN 0-521-43108-5)、1988-1992ケンブリッジ大学刊行の第14章、620〜628頁に、又は、Massey, F.J.の「The Kolmogorov-Smirnov Test for Goodness of Fit」、Journal of the American Standard Association, Vol.46、No.253, 1951, pp.68-78 に開示されている。
【0024】
明らかに、データセットが一杯になるにつれて(利用可能な画像の数が多くなるにつれて)、結果の信頼性はますます高いものになるだろう。信号統計特性についての先見的情報を使用したいならば、採用される検定を改良することができる。また、KS検定は、種々のレーダ照射の放射測定による較正が比較的パーフェクトでない場合においても有効であることが判明している。
【0025】
推定窓10に関連する全ての振幅のベクトルについて行われる上記の比較検定が終了した後に、画素2、3(図2)は、サンプル画素1と均質であるとマークされる(画素3はグレイの円で示され、画素2は黒の円で示される)。そして、画素4は、サンプル画素とは均質でないとマーキングされる(白い円により示される)。
【0026】
続いて、連結されていないオブジェクトのセットではなく、分布している対象物から構成されるように、サンプル画素と均質であるとマークされた画素が連結されていることを検証するステップがある。推定窓10において均質であるとマークされた各画素と、サンプル画素との間の連結の検定は容易に実行可能であり、いずれにしろ従来技術として公知である(例えば、S.Marchand-Maillet及びY.M.Sharaihaの「Binary digital image processing」 Academic Press, 2000を参照)。
【0027】
このような本発明の方法は、下記のステップを備えている。
【0028】
・同一領域上でSARセンサを用いて、共通グリッドでのデータのリサンプリングを許容するのに好適な取得形状をもってN個のレーダ画像を取得するステップと、
・共通のグリッドでのデータのリサンプリングの後、1つの画素を選択してサンプル画素1として識別するステップと、
・N個の利用可能な画像におけるサンプル画素についてN個の振幅値又は強度値のベクトルを計算し、そのベクトルをサンプルベクトルとして識別するステップと、
・サンプル画素の近辺の画素セットを識別するために、サンプル画素に対して推定窓(図2)を規定するステップと、
・サンプル画素に対して行ったのと同じように、推定窓内に含まれる全ての画素に対してN個の振幅値又は強度値のベクトルを計算するステップと、
・推定窓に属する全ての振幅値又は強度値のベクトルを、統計的検定を用いてサンプルベクトルと比較して、いずれの振幅値又は強度値のベクトルが、サンプルベクトルと同じ確率分布関数により生成されるかを検定するステップと、
・振幅値又は強度値のベクトルに関連しかつステップ(f)の検定に合格した画素2、3を、サンプル画素と均質な画素(図2)であると識別するとともに、振幅値又は強度値のベクトルに関連しかつステップ(f)の検定に合格しなかった画素を、サンプル画像と均質ではない画素4であると識別するステップと、
・推定窓10に含まれている画素において、振幅値又は強度値のベクトルに関連しかつ検定(f)に合格していても、直接的にあるいはサンプル画素と均質な他の画素を介して、サンプル画素1に連結していないためサンプル画素1と均質ではない画素を除去するステップと、
・サンプル画素1と均質かつ連結している画素2を、統計的に均質な画素として識別するステップ。
【0029】
統計的にサンプル画素と均質な画素のセットは、平均化又は他の推定を行うために用いることができる。
【0030】
画像の各箇所をサンプル画素として選択できるので、本方法を関心のある領域の全ての画素に対して実施することができる。
【0031】
サンプル画素のなかには、それぞれの推定窓内に含まれる均質画素を持たないものがある。このような後者のケースは、いわゆる点状画素について通常起こりえるものであり、識別的に周囲の地形のそれとは異なる電磁的特性によるものがある。
【0032】
拡がりが推定窓より大きいか又は推定窓と同じである分布画素の存在下では、概して、全ての画素はサンプル画素と類似する。そのため、比較的多数のサンプルに対して推定ができるようになる。
【0033】
これにより、ユーザにとって自動的かつ透明性があるように、点状のレーダ画素に関連する詳細を維持するだけでなく、画像の均質な領域のロバストなフィルタリングを可能にするフィルタリング戦略及び/又は適応的推定を実現することができる。
【0034】
本発明であるSAR画像の統計的に均質な画素を識別する方法は、処理装置のメモリ内にインストールされたアプリケーションソフトウェアによって実現される。この処理装置は、そのアプリケーションソフトウェアを実行するメモリとやり取りをするマイクロプロセッサを備えている。推定窓はユーザにより選択される。
【0035】
本発明の方法における3つの異なる応用を以下に説明する。
【0036】
本発明の方法は、SAR画像のスペックルノイズを低減するために使用される。ヨーロッパ宇宙機関(European Space Agency)のESR−1及びESR−2衛星により取得された75個のマルチ時間レーダデータからなるデータセットが、本発明の方法において、画像の各画素に対して統計的に均質な画素のセットを生成するために用いられる。
【0037】
ここでの及び引き続いての事例において用いられる推定窓は、形状が長方形であり13×25画素(それぞれレンジ方向及びアジマス方向)の大きさである。すなわち、最大で325個の均質画素が含まれる。図3は、結果のより一層簡単な解釈のため、関心のある領域の平均反射率のマップを示す。すなわち、エトナ山上でESR−1及びESR−2衛星により取得された75個のマルチ時間レーダデータに関連する振幅値の平均が示されており、水平方向のディメンションはアジマス座標であり、垂直方向のディメンションはレンジ座標である。図4は、各画素に対して、本発明の方法により識別された統計的に均質なエレメントの数を示す。これに対して図5bは、公知のタイプのスペックル防止フィルタ(図5a)に比べて、本発明による方法をスペックル防止フィルタとして用いることの利点を示している。スペックルノイズは、均質ターゲット上でも測定される信号の振幅値における変動に相当するものであり、SARシステムのようないわゆる一貫性のある観測システムにより得られるデータ中に見られるものである。スペックルノイズは、現在の画素と実質的に均質な画素に関連する振幅値についてのみ移動可能な簡単なアルゴリズムによって低減される。本発明の方法により行われるフィルタリングの成果は、顕著なものであり、単一の取得(統計的に均質な画素に相当する適応的な窓上でフィルタリングされる)を、平均反射率のマップ(図3)と75個全ての画像において比較できるようになる。このことは、データの空間分解能が変化しないように維持されているものの、反射率値のマルチ時間的分析を可能にするものではないが、他方では、地上の湿度、植栽における変動や人工的ターゲットなどの種々の現象により影響されるRCS値の時間的な変動を示すことができる。
【0038】
本発明の方法における第二の応用は、SARインターフェログラムのフィルタリングツールとしての利用である。
【0039】
上記の例のようなERS衛星により取得されたSAR画像の同じデータベースを使用することにより、図6a及び図6bに示すように、一対のERS画像からバルデルボブ(Valle del Bove)の領域の干渉フリンジが得られる。各「フリンジ」は、3cmよりも少し小さな大きさで、観測線に沿った地形の動きに対応している。
【0040】
同様のフリンジは、均質画素のフィルタリング作用のある場合とない場合とについても見られ、後者は均質ターゲットの複素値(モジュール及び位相)の平均により容易に得ることができる。図6bには、均質画素に対する平均からの利益が、S/N比の改善に関して明確に示されており、このことは、初期的には、元の干渉フリンジと比べてこの干渉(測定)フリンジが鮮明であることに起因するものである。フィルタリング作用は、局所的反射率の急激な変動がある場合には、従来のフィルタリング作用について通常発生する分解能の有意な損失(ぼかし効果)をもたらすものではないことに留意すべきである。
【0041】
本発明の方法の第三の応用は、2つのSAR画像の一貫性の推定に関することである。図7a及び図7bは、先行の段落において開示された適応的方法で得られるものと、従来の一貫性の推定の結果との比較を示す。すなわち、均質画素を全く選択せずに、この事例において使用される均質画素の推定窓と同じ大きさである13×25個のサンプル窓上での可動平均の過程を用いている。一貫性の定義付けの1つが、次の論文に開示されている。Touzi, Lopes, Bruniquel, Vachonの「Coherence estimation for SAR imagery」、IEEE, Trans. Geosc. Remote Sensing, vol.37, No.1, pages 135−149、January 1999。この比較は、コストゾーンに沿ってなされており、そして、統計的に均質なターゲットの適応的選択の戦略を採用する(図7b)ことで、従来技術(図7a)の詳細の通常損失が生じない理由を明確に示している。このことを確認することで、均質画素の推定された一貫性が一層明確になるので対応が直接的になる。つまり、従来の移動平均の推定は画素間を区別することができず、均質画素についての推定が海の画素が地の画素と平均化されるのを妨げるのに対して、海岸線をより良く規定することができるのである。
【符号の説明】
【0042】
1 サンプル画素
2、3 サンプル画素と均質な画素
4 サンプル画素と均質ではない画素
10 推定窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成開口レーダ(SARセンサ)を用いて、同一領域上で取得された画像内の統計的に均質な画素を識別する方法であって、次のステップを備える方法。
(a) 同一領域上でSARセンサを用いて、共通グリッドでのデータのリサンプリングを許容するのに好適な取得形状をもってN個のレーダ画像(A1…AN)を取得するステップと、
(b) 共通のグリッドでのデータのリサンプリングの後、1つの画素を選択してサンプル画素(1)として識別するステップと、
(c) N個の利用可能な画像におけるサンプル画素についてN個の振幅値又は強度値のベクトルを計算し、そのベクトルをサンプルベクトルとして識別するステップと、
(d) サンプル画素の近辺の画素セットを識別するために、サンプル画素に対して推定窓(10)を規定するステップと、
(e) サンプル画素に対して行ったのと同じように、推定窓内に含まれる全ての画素に対してN個の振幅値又は強度値のベクトルを計算するステップと、
(f) 推定窓に属する全ての振幅値又は強度値のベクトルを、統計的検定を用いてサンプルベクトルと比較して、いずれの振幅値又は強度値のベクトルが、サンプルベクトルと同じ確率分布関数により生成されるかを検定するステップと、
(g) 振幅値又は強度値のベクトルに関連しかつステップ(f)の検定に合格した画素を、サンプル画素と均質な画素(2、3)であると識別するとともに、振幅値又は強度値のベクトルに関連しかつステップ(f)の検定に合格しなかった画素を、サンプル画像と均質ではない画素(4)であると識別するステップと、
(h) 推定窓(10)に含まれている画素において、振幅値又は強度値のベクトルに関連しかつステップ(f)の検定に合格していても、直接的にあるいはサンプル画素と均質な他の画素を介して、サンプル画素に連結していないためサンプル画素と均質ではない画素を除去するステップと、
(i) サンプル画素と均質かつ連結している画素を、統計的に均質な画素として識別するステップ。
【請求項2】
ベクトルの全ての振幅値が、式により計算される請求項1に記載の方法。但し、Aは振幅値、Reは画素に関連する複素数の実部、Imは前記複素数の虚部を示す。
【請求項3】
ベクトルのすべての強度値が、式により計算される請求項1に記載の方法。
但し、A2は振幅の自乗値、Reは画素に関連する複素数の実部、Imは前記複素数の虚部を示す。
【請求項4】
SARにより取得された前記N個の画像が、異なる時点で取得される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
SARにより取得された前記N個の画像が、異なる視角で取得される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(f)における比較が、コルモゴロフ-スミルノフ検定を用いて行われる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
メモリと、そのメモリとのデータ交換に好適なマイクロプロセッサとを備えたコンピュータであって、前記メモリは該メモリ内にインストールされ実行されるアプリケーションソフトウェアを有するとともに、前記ソフトウェアは請求項1〜6のいずれかに記載された同一領域上で取得されたSAR画像の統計的に均質な画素を識別する方法の実施に好適であるコンピュータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2012−523030(P2012−523030A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502602(P2012−502602)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054016
【国際公開番号】WO2010/112426
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511229411)
【氏名又は名称原語表記】TELE−RILEVAMENTO EUROPA−T.R.E. s.r.l
【Fターム(参考)】