説明

同位体シード配置と関連する治療剤の送達のための方法およびデバイス

【課題】中実器官(solid organ)の悪性疾患の処置のために、付属的な治療法と組み合わせた近接照射療法を提供する。
【解決手段】インプラント可能癌治療用デバイス14は、放射性治療要素16および付属的な治療要素の隣接セグメント12を備える。放射性治療要素および付属的な治療要素のセグメントは、所定の空間的アレイで交互に配置され得る。インプラントは、永久的または一時的であり得る。デバイスは、実質的に円筒状のフィラメントであり得るか、または付属的な治療要素で重ねられた複数の間隔をおいて配置される放射性シードであり得る。デバイス18はまた、付属的な治療要素を含むモノフィラメントであり得、このモノフィラメントは、長さを示し、切断を容易にするための間隔をおいて配置されるくぼみを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般的に近接照射療法の分野に関する。特に、本発明は、中実器官(solid organ)の悪性疾患の処置のために、付属的な治療法と組み合わせた近接照射療法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
近接照射療法は、照射源が悪性腫瘍中にまたは悪性腫瘍に隣接して配置される照射処置の1つの形式である。近接照射療法には2つの一般的なカテゴリー(高線量率(HDR);および低線量率(LDR))がある。HDR近接照射療法は、限定された期間の間、悪性腫瘍に隣接して、または悪性腫瘍中に、高放射能の照射源を配置することを含む。LDR近接照射療法は、不定の期間の間、悪性腫
瘍に隣接して、または悪性腫瘍中に、低放射能の照射源を配置することを含む。
【0003】
LDR近接照射療法に使用される照射源は、放射性同位体である。LDR近接照射療法に使用される最も通例の同位体は、103Pd(パラジウム)、125I(ヨウ素)、198Au(金)および192Ir(イリジウム)である。これらの同位体は、これらの同位体は、円筒状のチタンハウジングに包まれ、一般に同位体シードと呼ばれる。シードの典型的な寸法は、直径0.5mm、長さ0.5〜1.0cmである。LDR近接照射療法に使用される同位体は、それらの低エネルギーと短い半減期のために選択される。低エネルギーは、照射の限定された浸透を提供し、その結果、照射効果が隣接する正常な組織に影響を与えることなく、腫瘍に限定される。照射線量が適切な短い時間枠で送達され得るように、短い半減期が望ましい。
【0004】
103Pdおよび125Iについて、治療効果のゾーンは、シードのまわりの直径約1cmの球に限定され、その結果、典型的には、腫瘍を処置するためにシードの3次元のアレイが使用される。前立腺癌のLDR近接照射療法では、100を超えるシードが典型的には使用される。中実腫瘍(例えば、前立腺癌に見られる腫瘍)は、拡散性(diffuse)であると認められるので器官全体が標的とされる。
【0005】
複数のシードを3次元のアレイに配置するために、シードは、2次元の格子パターン、および長手軸間隔を使用するニードルによって送達され得る。2次元格子は、通常ニードルガイド(テンプレートと呼ばれる)によって規定される。テンプレートは、腫瘍内にてそれらの2次元の適切な位置を確実にするために、ニードルの長手軸方向の進行をガイドする穴のマトリックスからなる。一旦ニードルの2次元のアレイが腫瘍内にて確立されると、シードはそれぞれのニードルの長手軸方向に沿って置かれる。ニードルの長手軸に沿ったシードの間隔は、シード間に生体適合性のスペーサーを使用することによって達成される。スペーサーおよびシードは、腫瘍内にニードルを配置する前に、交互にそのニードルに挿入される。一旦、ニードルが腫瘍内に配置されると、ニードルを引き抜く際、心棒がシードおよびスペーサーのラインの位置を維持するために使用される。これによって、それらの長手軸方向の適切な位置にシードのラインが残される。次いで、このプロセスは、シードの所望の3次元アレイを形成する、他の2次元格子座標(coordinate)にて繰り返される。
【0006】
LDR近接照射療法は、局所的な悪性疾患を処置するのに効果的な様式であるが、しかし、悪性疾患を根絶することにおいてはいつも成功しているわけではない。いくらかの腫瘍には照射の効果に対して耐性があり、時々、シードの配置は最適ではなく、空間を処置されたままにする。近接照射療法の効果を高めるために、しばしば付属的な処置が使用される。これらの付属的な処置には、外部ビーム照射療法、温熱療法、全身性の化学療法、全身性のホルモン療法、および免疫療法が挙げられる。
【0007】
しばしば、近接照射療法と付属的な治療法との間には相乗効果がある。近接照射療法は、悪性細胞の大部分を破壊し得、残りの悪性細胞に損傷を与える。付属的な治療法は、残りの損傷した細胞を根絶し得る。あるいは、付属的な治療法は、例えば、細胞を細胞周期の放射線感受性部分(例えば、G2M、後期G2またはG2/S)に保つことによって、悪性細胞を近接照射療法からの放射性同位体に対して無防備にし得る。放射線感受性化剤の例には、ブチレート、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル、カタラーゼ、パクリタキセル、およびミソニダゾールが挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、主に、付属的な治療法と組み合わせた、LDR近接照射療法(これはまた、永久的なシードインプラント近接照射療法と呼ばれる)に関する。さらに、本発明のデバイスおよび方法はまた、付属的な治療法を組み合わせたHDR近接照射療法に関する。本明細書中に使用されるように、付属的な治療要素(therapeutic)という用語は、付属的な治療法を達成するために使用され得る物質および/または化合物を含むことを意味する。本明細書において使用されるように、治療要素という用語は、治療的(curative)処置と対症療法の両方を含むことを意味する。
【0009】
より詳細には、本発明は、正常な非標的組織を照射に対して感受性にすることなしに、標的病理部位を照射に対して感受性にする方法および装置を使用する照射療法に関する。この局面において、本発明は、照射療法と同時に標的病理部位に照射感受性化剤を含むデバイスを配置することに関する。本発明は、特定の照射感受性化剤に対して特異的ではない。また、感受性化剤は、標的病理部位を照射に対して感受性にすることに加えて、有利な性質を有し得る。
【0010】
1つの局面において、本発明は、放射線治療要素および付属的な治療要素の隣接セグメントを含むインプラント可能癌治療用デバイスを特徴とする。放射線治療要素および付属的な治療要素のセグメントは、所定の空間アレイに交互に配置され得る。インプラントは、永久的であっても、一時的であっても良い。デバイスは、実質的に円筒状のフィラメント、網状パッチ、または付属的な治療要素で重ねられる複数の間隔をおいて配置される放射性シードであり得る。
【0011】
デバイスはまた、付属的な治療要素および放射性治療要素を含むモノフィラメントであり得る。モノフィラメントは、長さを示すためおよび切断を容易にするために間隔をおいて配置されるくぼみを有する。このくぼみは、均一または不均一に間隔をおいて配置され得る。
【0012】
別の局面において、本発明は、悪性腫瘍内にまたは悪性腫瘍に隣接して放射性治療要素および付属的な癌治療要素の隣接セグメントを配置する工程を包含する、癌を処置する方法を特徴とする。このセグメントは、近接照射療法用シード配置デバイスの内径よりも小さい直径を有する実質的に円筒状のフィラメントの形態であり得る。
【0013】
本発明の上記および他の目的、局面、特徴、および利点は、以下の説明および上記特許請求の範囲からより明らかになる。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1) インプラント可能癌治療用デバイスであって、以下:
放射性治療要素および付属的な治療要素の隣接セグメントを含む、デバイス。
(項目2) 前記インプラントが永久的である、項目1に記載のデバイス。
(項目3) 前記プラントが一時的である、項目1に記載のデバイス。
(項目4) 前記デバイスが、実質的にシリンダ状のフィラメントである、項目1に記載のデバイス。
(項目5) 前記デバイスが、付属的な治療要素で重ねられた、複数の間隔をおいて配置される放射性シードを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目6) 前記セグメントが相互接続される、項目1に記載のデバイス。
(項目7) 所定の空間的アレイで交互に配置される放射性治療要素および付属的な治療要素のセグメントを含む、医療用デバイス。
(項目8) インプラントが永久的である、項目7に記載のデバイス。
(項目9) インプラントが一時的である、項目7に記載のデバイス。
(項目10) 前記デバイスが実質的に円筒状のフィラメントである、項目7に記載のデバイス。
(項目11) 前記デバイスが、付属的な治療要素で重ねられた、複数の間隔をおいて配置される放射性シードを含む、項目7に記載のデバイス。
(項目12) インプラント可能治療用デバイスであって、以下:
付属的な治療要素を含む細長モノフィラメントであって、ここで、該モノフィラメントが近接照射療法用シード配置デバイスの内径よりも小さい直径であり、近接照射療法用シードスペーサーとしての使用のために切り取られ得る、細長モノフィラメント、を含む、デバイス。
(項目13) 前記モノフィラメントが、長さを示し、切断を容易にするために、間隔をおいて配置されるくぼみを有する、項目12に記載のデバイス。
(項目14) 前記くぼみが均一な間隔で配置される、項目12に記載のデバイス。
(項目15) 放射性治療要素および付属的な癌治療要素の隣接セグメントを悪性腫瘍内にまたは悪性腫瘍に隣接して配置する工程を包含する、癌を処置するための方法。
(項目16) 前記セグメントが、近接照射療法用シード配置デバイスの内径よりも小さい直径を有するフィラメントを形成する、項目15に記載の方法。
(項目17) インプラントが永久的である、項目15に記載の方法。
(項目18) インプラントが一時的である、項目15に記載の方法。
(項目19) 前記フィラメントが実質的に円筒状である、項目15に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面において、同一の参照文字は、一般的に異なる図全てを通して同じ部分を示す。また、図面は、一定の縮尺である必要はなく、代わりに一般的に本発明の原理を示す強調がなされる。
【図1】図1は、付属的な治療要素を含む実質的に円筒状のユニットの図である。
【図1A】図1Aは、放射性シードを有するニードル内に配置される付属的な治療要素を含む実質的に円筒状の部材を示す。
【図2】図2は、交互になった放射性セグメントおよび付属的な治療要素セグメントを有する一体化部材を含むデバイスを示す。
【図3】図3は、間隔をおいて配置されるくぼみを有する付属的な治療要素を含むモノフィラメントを含む治療用デバイスを示す。
【図4】図4は、網状パッチ形態の治療用デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(詳細な説明)
本発明は、当該分野において現在公知のシードスペーサーを置換し、所定の間隔のアレイで放射性治療要素および付属的な治療要素を構成しながら、付属的な治療剤を送達し得るかまたは付属的な治療剤の送達を容易にし得るデバイス、およびその使用方法である。デバイスは、照射要素のためおよび付属的な治療要素のためのキャリアを備える。デバイスは、外科的または非外科的な手段によって、標的病理部位内にまたは標的病理部位に隣接して配置され得る。
【0016】
デバイスは、生体吸収性ポリマーおよび付属的な治療要素を含む化合物から構成され得る。デバイスはまた、このデバイスが製造された後に、付属的な治療要素が加えられ得るように構成され得る。
【0017】
標的病理部位の効果的な適用範囲について、デバイスは、3次元アレイの標的組織内に配置され得る。デバイスがペレットまたはフィラメントのいずれかである実施態様において、このデバイスは、2次元の格子パターンおよび長手軸間隔を使用するニードルによって送達され得る。2次元の格子は、通常、テンプレートと呼ばれるニードルガイドによって規定される。テンプレートは、腫瘍におけるそれらの適切な2次元の位置を確実にするために、ニードルの長手軸方向の進行をガイドする穴のマトリックスからなる。一旦、ニードルの2次元のアレイが腫瘍内にて確立されると、シードは、それぞれのニードルの長手軸方向に沿って置かれる。ニードルの長手方向軸に沿ったシードの間隔は、シード間に生分解性スペーサーを使用することによって達成される。スペーサーおよびシードは、ニードルを腫瘍内に配置する前にニードル内に交互に挿入される。一旦、ニードルが腫瘍内に配置されると、ニードルを引き抜く際、シードおよびスペーサーのラインの位置を維持するために、心棒が使用される。これによって、それらの適切な長手方向の位置にシードのラインが残される。次いで、このプロセスは、シードの所望の3次元アレイを形成する他の2次元格子座標にて繰り返される。あるいは、2次元アレイは、放射性治療要素および付属的な治療要素を網状パッチに織り込むことによって作製され得る。このようなパッチは、腔内に適用され得るが、間隙にもまた適用され得る。
【0018】
このデバイスによって運ばれる付属的な治療要素は、化学治療剤、ホルモン、ホルモンアゴニスト、遺伝子ベクター、ワクチン、およびモノクーロナル抗体を含み得る。このデバイスはまた、外部から適用される交流電磁場の吸収による熱の発生による治療を提供するように構成され得る。
【0019】
図1を参照すると、1つの実施態様において、治療用デバイスは、付属的な治療剤を含む実質的に円筒状のユニット12から構成される。この寸法は、直径0.5mm、および長さ0.5〜1.0cmであり得る。実質的に円筒状のユニット12の寸法は、デバイスの長さが複数の近接照射療法用シード16(図1A)の適切な間隔を提供し、そしてデバイスの直径がシード配置デバイス14(図1A)の内径に適応するのに適切である限り、種々であり得る。図1Aを参照すると、治療用デバイス18の送達のための1つの方法は、イメージガイダンスのもとでニードル14を病理部位に経皮的に配置し、ニードルを介して病理部位にデバイスを挿入することによる。デバイス18は、付属的な治療剤12および近接照射療法用シード16の交互になったセグメントを含み、ニードル14を通って病理部位に入る。単一のデバイスまたは空間的なアレイのデバイスは、この方法で病理部位に配置され得る。
【0020】
図2を参照すると、別の実施態様において、治療用デバイス20は、交互になった放射性セクション22および付属的な治療要素セグメント24を有する一体化されたユニットのストリップを含む。図3に示される別の実施態様では、治療用デバイス26は、付属的な治療要素を含む細長部材(またはモノフィラメント)28を含む。モノフィラメントの直径は、シード配置デバイス(図示されず)の内径に適応するのに適切であり得る。モノフィラメント28の長さは、少なくとも近接照射療法用シードの間隔の長さであり得る。この実施態様において、モノフィラメント28は、切り取られて、特定の治療レジメンのためにカスタムスペーサーを作り得る。モノフィラメントは、長さを示すため、および所定の大きさのセグメントを切断または折り取ることを容易にするために、間隔をおいたくぼみ30を含み得る。
【0021】
図4を参照すると、別の実施態様では、治療用デバイス32は、所定のアレイで配置される放射性治療要素34および付属的な治療要素36を有する網状パッチの形態であり得る。なお別の実施態様では、デバイスは、付属的な治療要素を含む外側シェルおよび内側構造を含む複合構造であり得る(図示されず)。外側シェルは、内側構造の治療剤を放出するように生分解性であり得るか、内側構造の治療剤が逃れ得るように多孔性であり得る。
【0022】
デバイスの材料および構成は、送達される付属的な治療要素の要件によって決定される。付属的な治療要素は、製造時にまたは手術時にデバイスへと組み込まれ得る。デバイスは、経時的に身体によって吸収され得、付属的な治療要素を放出するような性質を使用し得るか、あるいは、デバイスは、身体内にとどまり、他の手段(例えば、浸透(osmotic)ポンプ、生体侵食(bioerosion)、生体吸収(bioabsorption)または拡散)によって付属的な治療要素を放出し得る。デバイスは、不定的に標的病理部位にとどまり得、ここで、身体によって吸収され得るか、または身体から排出され得る。あるいは、デバイスは、身体から手動的に除去され得る。
【0023】
任意の上記実施態様では、付属的な治療要素セグメントおよび/または放射性セグメントは、外部交互電磁場からの誘導される熱を考慮して鉄成分を有し得る。このデバイスを構成するための材料は、当該分野で周知である。
【0024】
本明細書中で記載されたものの変化、改変および他の実行は、特許請求された本発明の意図および範囲から離れることなく、当業者が想到する。従って、本発明は、先に示された説明ではなく、その代わりに上記の特許請求の範囲の意図および範囲によって規定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−156373(P2011−156373A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−68741(P2011−68741)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【分割の表示】特願2000−554409(P2000−554409)の分割
【原出願日】平成11年6月3日(1999.6.3)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】