説明

同軸ケーブルかしめリング

【課題】かしめ作業の施工性が向上し、かしめ強度のばらつきがなくなる同軸ケーブルかしめリングを提供する。
【解決手段】同軸用のコネクタである同軸接栓8に接続された同軸ケーブル7の端部を同軸接栓8にかしめて固定する同軸ケーブルかしめリング1であって、内周が略円形でリング状のリング本体部3と、リング本体部3の一部から径方向外方に突出した突出部4とを有し、突出部4の径方向の最端4aと、リング本体部3との間に少なくとも一つ以上の折曲部6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は同軸接栓と同軸ケーブルとの接続時に、圧締作業により同軸接栓と同軸ケーブルとを固定する同軸ケーブルかしめリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、同軸ケーブルと同軸接栓とを接続する場合、同軸ケーブルと同軸接栓との接続部を固定するために図5に示すようなかしめリングが知られている。すなわち、内周が略円形状のかしめリング11であって、内周の一部からリング本体外方に向かって略三角形状に突出した突出部12が設けられているものである。
【0003】
このかしめリング11のかしめ方法としては、まず、あらかじめ同軸ケーブルにかしめリング11を挿通させておく。次いで、同軸ケーブルと同軸接栓とを接続し、その接続部をかしめリング11で圧締し、同軸ケーブルと同軸接栓とを固定する。かしめリング11の圧締作業は、かしめリング11の略三角形状の突出部12をペンチ等でかしめる作業を行い、かしめリング11の内周が絞り込まれる状態になり、同軸ケーブルと同軸接栓とが圧接される。
【特許文献1】特開2004−55475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のかしめリングには次のような課題がある。すなわち、かしめリングをかしめる際には、かしめリングに突出部が設けられているため、ペンチ等でかしめる際の場所を特定する目安にはなっているが、突出部は略三角形状であり、しかもかしめリングはアルミニウム等の材質で形成されているため、ペンチ等でかしめる場合には引掛りがなく滑ってしまい、かしめ難い。
【0005】
また、かしめリングをかしめる際、ペンチで突出部の任意の位置を掴んでかしめるため、任意の位置に応力がかかり、かしめ強度が一定しない。すると、同軸接栓と同軸ケーブルとを固定するのに必要なかしめ強度よりも弱くかしめられた場合には、同軸接栓が同軸ケーブルから抜け易くなってしまい、強くかしめられた場合にはかしめリングが折れてしまう。また、同軸ケーブルの外皮等を挟んだままかしめられてしまうこともあり、外皮等はゴム状の軟質な材料で形成されているため、かしめリングの外皮等が挟まれた部分は、強固にかしめることができない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなしたもので、その目的は、かしめ作業の施工性が向上し、かしめ強度のばらつきがなくなる同軸ケーブルかしめリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明の同軸ケーブルかしめリングは、同軸用のコネクタである同軸接栓に接続された同軸ケーブルの端部を同軸接栓にかしめて固定する同軸ケーブルかしめリングであって、内周が略円形でリング状のリング本体部と、リング本体部の一部から径方向外方に突出した突出部とを有し、突出部の径方向の最端と、リング本体部との間に少なくとも一つ以上の折曲部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明の同軸ケーブルかしめリングは、請求項1記載の同軸ケーブルかしめリングにおいて、突出部に、該突出部に当接される工具とを係合させる凹凸部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明の同軸ケーブルかしめリングによれば、内周が略円形でリング状のリング本体部と、リング本体部の一部から径方向外方に突出した突出部とを有し、突出部の径方向の最端と、リング本体部との間に少なくとも一つ以上の折曲部を有する。よって、従来のかしめリングのように、突出部すべてが滑らかな弧状である場合よりも、突出部とリング本体部との境界部の外角がより鋭角となるので、境界部を目視し易く、境界部に外施工事の際に使用するペンチ等の工具の先端がしっかりと当接し、ペンチで突出部を掴んだ際に不安定になることがなく、ペンチの掴み状態が安定する。また、ペンチで突出部を掴む場合の摘み位置や力の入れ具合の如何によって突出部における応力のかかり方が不均一となり、かしめ強度がばらついてしまうことがなく、かしめ強度が一定に保たれる。
【0010】
その結果、突出部が工具によってより掴み易くなって、かしめ作業の効率が良くなる。また、毎度適切なかしめ強度でかしめ作業を行っていれば、かしめ過ぎによる同軸ケーブルかしめリングが切断されてしまうことを防止できる。
【0011】
請求項2に係る発明の同軸ケーブルかしめリングによれば、請求項1記載の同軸ケーブルかしめリングの効果に加えて、突出部に、該突出部に当接される工具とを係合させる凹凸部を設けているので、工具が突出部に引っ掛り易くなり、小さな握力でも施工し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の同軸ケーブルかしめリングを示した正面図と側面図である。同軸ケーブルかしめリング1は、アルミニウム製のリング部材2で形成されたリング状のものであり、リング本体部3と突出部4とから成り立っている。
【0014】
リング本体部3は内周が略円形であって、該リング本体部3には後述する同軸ケーブルが挿通される。また、リング本体部3の任意の一部分から、リング本体部3の外径方向に向かって凸状の突出部4が設けられている。本実施形態では、リング本体部3の内周の一部が途切れて、そこからリング本体部3の外径方向に向かって突出部4が設けられている。つまり、リング本体部3の第1境界5aと第2境界5bとからリング部材2が延設されて突出部4を形成している。
【0015】
リング本体部3の断面方向と垂直な高さは、リング本体部3全域に亘って略均一であり、突出部4の高さも、突出部4全域に亘って略均一であると共に、リング本体部3と突出部4との高さは略同一となるように設けられている。
【0016】
また、リング本体3と突出部4とは一体に形成されるが、別々に形成されて溶接等の公知の接着手段を用いて接着しても構わない。
【0017】
突出部4には、本発明の同軸ケーブルかしめリング1の特徴となる折曲部6が設けられている。折曲部6は、リング本体部3と突出部4との境界部にあたる第1境界5aおよび第2境界5bと、突出部4の最端4aとの間に設けられ、本実施形態では折曲部6は2箇所設けられている。つまり、突出部4の最端4aを中心として、最端4aと第1境界5aとの間、最端4aと第2境界5bとの間にそれぞれ一箇所づつ設けられている。この折曲部6は突出部4の高さ方向に亘って延設されている。
【0018】
本実施形態では、折曲部6は最端4aと第1境界5aとの間、および最端4aと第2境界5bとの間の2箇所に設けられていたが、1箇所だけ設けられていてもよいし、2箇所以上設けてもよい。また、最端4aと第1境界5aとの間、又は最端4aと第2境界部5bとの間のどちらか一方の間に複数個設けられていてもよい。
【0019】
次に、図2を用いて本発明の同軸ケーブルかしめリング1を同軸ケーブル7にかしめる方法について説明する。
【0020】
同軸ケーブル7は、同軸接栓8と接続される。図2(a)に示すように、同軸ケーブル7にあらかじめ、同軸ケーブルかしめリング1を挿通しておき、その状態のまま同軸ケーブル7と同軸接栓8とが嵌め合わされ、接続される。次いで、同軸ケーブル7に挿通されている同軸ケーブルかしめリング1を同軸ケーブル7と同軸接栓8との接続部9にずらして配設させる。次いで、同軸ケーブルかしめリング1の突出部4をペンチ等の工具10によってかしめて圧接する。
【0021】
図3は、ペンチ10で同軸ケーブルかしめリング1をかしめた後の正面図である。突出部4をペンチ10で挟み、かしめていくことにより、まず、突出部4がかしめられる。ここで、突出部4に折曲部6が設けられていることにより、突出部4とリング本体部3との境界部(第1境界5aおよび第2境界5b)の外角をそれぞれより鋭角にすることができるため、ペンチ10の先端が第1境界5aおよび第2境界5bにしっかりと当接して安定する。
【0022】
そして、突出部4をかしめていくと、リング本体3と、リング本体部3に挿通されている同軸ケーブル7と同軸接栓8との接続部9とが密着していき、同軸ケーブルかしめリング1がかしめられる。
【0023】
本実施形態の同軸ケーブルかしめリング1によれば、従来のかしめリングのように、突出部すべてが滑らかな弧状である場合よりも、突出部4とリング本体部3の境界部の外角をより鋭角にすることができるため、境界部を目視し易く、境界部に外施工事の際に使用するペンチ等の工具10の先端がしっかりと当接し、工具10で突出部4を掴んだ際に不安定になることがなく、工具10の掴み状態が安定する。また、工具10で突出部4を掴む場合の摘み位置や力の入れ具合の如何によって突出部4における応力のかかり方が不均一となり、かしめ強度がばらついてしまうことがなく、かしめ強度が一定に保たれる。
【0024】
その結果、突出部4が工具10によってより掴み易くなって、かしめ作業の効率が良くなる。また、毎度適切なかしめ強度でかしめ作業を行っていれば、かしめ過ぎによる同軸ケーブルかしめリング1が切断されてしまうことを防止できる。
【0025】
(実施形態2)
本発明の実施形態2について、図4を用いて説明する。なお実施形態1と同じ箇所には同符号を付してあり、同等の箇所の詳細な説明は省略する。
【0026】
本実施形態の同軸ケーブルかしめリング1は、実施形態1の同軸ケーブルかしめリング1の突出部4に凹凸部4bが設けられているものである。本実施形態では、凹凸部4bは山谷形状を有し、突出部4の外側面に高さ方向に亘って設けられている。
【0027】
この凹凸部4bは、ペンチ等の工具10との接触部分との引掛りをよくし、突出部4をかしめ易くするためのものであるから、工具10のつかみ部の凹凸と引っ掛るように設けられていれば、その形状の如何は問わない。また、突出部4の外側面に設けられていれば、その配設場所は問わない。
【0028】
本実施形態の同軸ケーブルかしめリング1によれば、実施形態1の効果に加えて、突出部4と該突出部4に当接される工具10とを係合させる凹凸部4bを突出部10に設けているので、工具10が突出部4に引っ掛り易くなり、小さな握力でも施工し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の同軸ケーブルかしめリング1を示した正面図および側面図である。
【図2】同上の使用方法を示した工程図である。
【図3】同上のかしめ作業を示した正面図である。
【図4】同上の実施形態2を示した正面図および側面図である。
【図5】従来の同軸ケーブルかしめリング1を示した正面図および側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 同軸ケーブルかしめリング
2 リング部材
3 リング本体部
4 突出部
4a 最端
4b 凹凸部
5a 第1境界
5b 第2境界
6 折曲部
7 同軸ケーブル
8 同軸接栓
9 接続部
10 工具(ペンチ)





【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸用のコネクタである同軸接栓に接続された同軸ケーブルの端部を同軸接栓にかしめて固定する同軸ケーブルかしめリングであって、
内周が略円形でリング状のリング本体部と、リング本体部の一部から径方向外方に突出した突出部とを有し、
前記突出部の径方向の最端と、リング本体部との間に少なくとも一つ以上の折曲部を有することを特徴とする同軸ケーブルかしめリング。
【請求項2】
前記突出部に、該突出部に当接される工具とを係合させる凹凸部を設けたことを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブルかしめリング。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−278064(P2006−278064A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93202(P2005−93202)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)