説明

同軸ケーブル用コネクタ及び電子機器用箱体

【課題】 同軸ケーブルの取付けが簡単であるばかりでなく,この同軸ケーブルが抜け難く且つ回転し難い構成とする。
【解決手段】 同軸ケーブルが挿入されるコネクタ本体内に,スリーブ体6と,同軸ケーブル7の抜脱を阻止する抜け止め具とを設けた。前記抜け止め具は,コネクタ本体に対する軸線方向の移動と該軸線を中心軸とする回転と,を阻止して固定するように係止手段を備えた,コネクタ本体と同一中心軸を有するように内設するリング形状の係止部と,該係止部からコネクタ本体の中心軸方向に前方側が立ち上がった複数の爪部と,から成り,同軸ケーブル端部を記前記コネクタ本体内へ後方から挿入操作することで,前記抜け止め具は,前記爪部が前記同軸ケーブル周囲を咬持して同軸ケーブルの抜脱を阻止すると共に,前記係止部が同軸ケーブルの回転を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,同軸ケーブル同士或いは同軸ケーブルを電子機器の筐体に接続するために同軸ケーブル端部に装着する同軸ケーブル用コネクタ,及び同軸ケーブルを直接接続できる電子機器用箱体に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸ケーブルにコネクタを装着する場合,従来はケーブルの抜けを防ぐために,フェルール又はシェルと一体になったリング部分をペンチや特殊工具を用いてカシメを行い,コネクタをケーブルに装着する方法が広く採用されていた。
しかし,この方法は工具を用いてカシメを行わなければならず,コネクタの装着作業が面倒であったため,本出願人が先に出願した特許文献1に示すように,爪部を有するリング状の抜け止め具を同軸ケーブルに外嵌して,爪部をケーブルに食い込ませて抜けを防止させ,カシメの工程を必要とせずにケーブルを抜け難くしたコネクタの構成や,同様の端子を設けた電子機器用箱体の構成が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−184536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし,特許文献1で開示した技術は,抜け止め具に備えた爪部をケーブルに食い込ませて抜けを防止させ,カシメの工程を必要とせずにケーブルを抜け難くしたものであるが,この実施例ではケーブル装着後に,ケーブルに対して回転方向に力が加わった場合に,ケーブルが回転し難い構造とするためには,抜け止め具を固定する固定具を強固に固着しないと,抜け止め具が回転してしまう。ところが固定具を強固に固着するためには,固定具とコネクタ本体との係止構造が最適化されなければ成らないし,場合によっては指先だけの力では固定具が装着し難いものになり,工具等を必要とすることが考えられた。また,このようにして強固に固着するような構造であれば,ケーブルの装着を失敗したときや,メンテナンス等によるケーブルの配線し直しのときのような,同軸ケーブルの取り外しを行う事が必要となった場合,固定具が容易に取り外すことができないばかりか,無理やり外すことによって固定具が変形し,再度のコネクタ本体との係止ができなくなり,固定具は繰り返しの使用ができなくなるといた問題があった。
そこで,本発明は上記問題点に鑑み,同軸ケーブルの取付けが簡単であるばかりでなく,この同軸ケーブルが抜け難く且つ回転し難い構成を有する同軸ケーブル用コネクタ及び電子機器用箱体を提供することを目的とする。
更に他の目的は,同軸ケーブルの取付けが簡単であるばかりでなく,簡単な操作によって同軸ケーブルの取り外しができる同軸ケーブル用コネクタ及び電子機器用箱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため,請求項1の発明は,少なくとも,同軸ケーブルを挿入して装着する筒状のコネクタ本体と,前記コネクタ本体内に装着する同軸ケーブルの内部絶縁体と外部導体との間に挿入されるスリーブ体と,同軸ケーブルの抜脱を阻止するために前記コネクタ内に固定された抜け止め具と,前記コネクタ本体の前方に連結され接続対象と接続するための接続手段と,を備えた同軸ケーブル用コネクタにおいて,
前記抜け止め具は,コネクタ本体に対する軸線方向の移動と該軸線を中心軸とする回転とを阻止して固定するように係止手段を備えた,コネクタ本体と同一中心軸を有するように内設するリング形状の係止部と,該係止部からコネクタ本体の中心軸方向へ向けて突設した複数の爪部と,から成り,
コネクタ本体の後方端部には,中心に同軸ケーブルを挿通するための同軸ケーブル挿通孔を有し,前記コネクタ本体の後方端部に着脱自在に固着されることによって,前記抜け止め具の軸線方向の移動を制限するためのキャップを備え,
同軸ケーブルを装着するときは,該同軸ケーブル端部を前記同軸ケーブル挿通孔を介してコネクタ本体内へ挿入操作することで,前記抜け止め具は,前記爪部が前記同軸ケーブル周囲を咬持することによって,同軸ケーブルの抜脱を阻止すると共に,同軸ケーブルの回転を阻止するように構成した。
この構成により,コネクタに装着した同軸ケーブルは,抜け止め具の作用により引っ張り応力が加わっても抜けてしまうようなことがなく,また,回転応力が加わっても回転することのない,堅牢な装着ができる。また,同軸ケーブルの端部を所定の形状に処理してコネクタ本体に挿入すれば,コネクタ装着が完了してコネクタ部が完成するので,コネクタ装着も容易である。また,装着時の失敗や,再配線を行うようなときに,一般的に市販されている工具を使って,一度装着した同軸ケーブルを簡単に取り外すことができるので,繰り返しの使用にも耐える利便性の高い同軸ケーブル用コネクタを提供できる。
【0006】
請求項2の発明は,外部から同軸ケーブルを装着する同軸ケーブル用コネクタを有する電子機器用箱体において,
前記同軸ケーブル用コネクタは,少なくとも,同軸ケーブルを挿入して装着する筒状のコネクタ本体と,前記コネクタ本体内に装着する同軸ケーブルの内部絶縁体と外部導体との間に挿入されるスリーブ体と,同軸ケーブルの抜脱を阻止するために前記コネクタ内に固定された抜け止め具と,前記コネクタ本体の前方に連結され接続対象と接続するための接続手段と,を備え,
前記抜け止め具は,コネクタ本体に対する軸線方向の移動と該軸線を中心軸とする回転とを阻止して固定するように係止手段を備えた,コネクタ本体と同一中心軸を有するように内設するリング形状の係止部と,該係止部からコネクタ本体の中心軸方向へ向けて突設した複数の爪部と,から成り,
該抜け止め具は,中心に同軸ケーブルを挿通するための同軸ケーブル挿通孔を有し,前記コネクタ本体の後方端部に着脱自在に固着されるように構成されたキャップによって前記コネクタ本体内に固定され,
コネクタ本体の後方端部には,中心に同軸ケーブルを挿通するための同軸ケーブル挿通孔を有し,前記コネクタ本体の後方端部に着脱自在に固着されることによって,前記抜け止め具の軸線方向の移動を制限するためのキャップを備え,
同軸ケーブルを装着するときは,該同軸ケーブル端部を前記同軸ケーブル挿通孔を介してコネクタ本体内へ挿入操作することで,前記抜け止め具は,前記爪部が前記同軸ケーブル周囲を咬持することによって,同軸ケーブルの抜脱を阻止すると共に,同軸ケーブルの回転を阻止するように構成した。
この構成により,コネクタに装着した同軸ケーブルは,抜け止め具の作用により引っ張り応力が加わっても抜けてしまうようなことがなく,また,回転応力が加わっても回転することのない,堅牢な装着ができる。また,同軸ケーブルの端部を所定の形状に処理してコネクタ本体に挿入すれば,コネクタ装着が完了することから配線工事がきわめて簡単にできる。また,装着時の失敗や,再配線を行うようなときに,一般的に市販されている工具を使って,一度装着した同軸ケーブルを簡単に取り外すことができるので,繰り返しの使用にも耐える利便性の高い電子機器用箱体を提供できる。
【発明の効果】
【0007】
このように,本発明に係る同軸ケーブル用コネクタによれば,コネクタに装着した同軸ケーブルは,抜け止め具の作用により引っ張り応力が加わっても抜けてしまうようなことがなく,また,回転阻止手段に加えて,抜け止め具が回転しないような係止構造を持たせたことによる作用によって,同軸ケーブルに回転力が加わっても回転し難い,堅牢な装着ができる。それでいて,リリーサを備えさせることもなく,抜け止め具による抜脱阻止作用を解除して容易に同軸ケーブルの取り外しができるので,ケーブル交換等の作業を容易に繰り返し実施できる。
また,このような抜き取り可能な構成であっても,装着状態で同軸ケーブルは回転し難く,良好な接続状態を維持できるし,同軸ケーブルの端部を所定の形状に処理してコネクタ本体に挿入するだけで,コネクタ装着が完了するので,コネクタ装着も容易である。
そして,本発明に係る電子機器用箱体によれば,箱体に装着した同軸ケーブルは,抜け止め具の作用により引っ張り応力が加わっても抜けてしまうようなことがなく,また,回転阻止手段に加えて,抜け止め具が回転しないような係止構造にしたことによる作用によって同軸ケーブルに回転力が加わっても回転し難い,堅牢な装着ができる。それでいて,リリーサを持ちなくとも,一般的にある工具を使って,抜け止め具による抜脱阻止作用を解除できるので,ケーブル交換等の作業を容易に実施できる。また,同軸ケーブルの端部を所定の形状に処理してコネクタ本体に挿入するだけで,箱体への装着が完了するので,同軸ケーブルの装着が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下,本発明を具体化した実施の形態を,図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る同軸ケーブル用コネクタ(以下,単にコネクタと称する。)の第1の実施形態を示し,同軸ケーブルに装着した状態のコネクタの要部を断面で示した説明図及びその一部拡大図を示している。図2はケーブル挿入前の状態を示す。
図1において,41は内部にケーブル装着手段を備え,同軸ケーブル(以下,単にケーブルと称する。)に外嵌する筒状のコネクタ本体,2はレセプタクル等の接続対象に接続する接続手段としてのナット体である。ケーブル装着手段は,装着したケーブルの抜けを防止する抜け止め具130,抜け止め具3を固定するキャップ153,装着するケーブル7の内部絶縁体7bと外部導体7cの間に挿入するスリーブ体6とから成り,以下ナット体が取付けられている方向を前方として説明する。尚,7aはケーブルの中心導体,7dは保護被覆である。
【0009】
この実施例によると,コネクタ本体41の前方には,前記スリーブ体6を固着する為の嵌合孔42が,後方には同軸ケーブルを挿入するためのケーブル挿通孔143が形成されている。尚,コネクタ本体41は円筒形状としてもよいし,他の形状,例えば6角柱形状としても何ら差し支えない。また,接続手段は,上記実施例の如くプラグであっても良いし,或いは,コネクタ本体と一体的に形成され該周にねじ溝を形成したレセプタクル構造にしてもよいしこれ以外の形状であってもよい(詳細は後述する)。
【0010】
図3に示されるように,スリーブ体6は,内部に一体的に同一径で形成されている挿通孔6aを有し,外周は先細の後方端部から前方にかけて肉厚を徐々に厚く成るように円錐状に形成されてケーブル7の内部絶縁体7bと外部導体7cの間に挿入し易く形成されていると共に, 更にスリーブ体6の前方には,前記コネクタ本体41の嵌合孔42に連結するための環状連結部10と,この環状連結部10の前部から連設させた前記ナット体2を装着するための細径の筒状嵌合部16が一体に形成されている。本願の実施例では前記環状連結部10は,前記コネクタ本体41の前方側から前記嵌合孔42に対して圧入固着されてコネクタ本体と固着されるように構成されている。
また,スリーブ体の側面には,このスリーブ体6と同様に,環状連結部10から先端に亘って徐々に低く形成されている回転阻止手段としての直線状の帯状突起11が複数形成されている。
前記筒状嵌合部16には,装着するケーブル7の内部絶縁体7b及び中心導体7aを挿通する挿通孔が,前記スリーブ体6に形成されている挿通孔6aと内径を同じに連設されている。そして,ナット体2は,内部に雌ねじが切られ,後部にスリーブ体6の筒状嵌合部16を挿入嵌合する連結孔2aを有し,回転可能に筒状嵌合部16にて連結されている。
尚,筒状嵌合部16は,ナット体2と嵌合した後に先端部16bが拡径され,ナット体2が抜け落ちることはない。
【0011】
尚,帯状突起11は1つだけであっても良いし,スリーブ体6の筒状連結部10から後方端部にかけて全体に形成せず,一部だけに設けても良い。また,帯状突起11の替わりにスリーブ体の側面にローレットを形成してもよい等実施例に限定されるものではない。
スリーブ体6の挿通孔6aと筒状嵌合部16に形成された挿通孔は,コネクタ中心軸M上に同一径で形成されているし,スリーブ体6はコネクタ本体1に一体形成することもできる。筒状嵌合部16はコネクタ本体41と連設して一体形成してもよく,ナット体2が枢着されれば実施の形態に限定されるものではない。
【0012】
抜け止め具130は,図4(a)の正面図に示すように,略円盤状に形成され,弾性を有する金属,例えばバネ用ステンレスで形成されている。
この抜け止め具130は,コネクタ本体41の中心軸と同一の中心軸を有するリング状の係止部130bと,該リング状の係止部130bに内側に係止部130bの中心線方向に向けて突設させた複数の爪部130aとから成る。
係止部130bには,130cで示される係止爪が形成されている。この係止爪130cは,係止部130bからコネクタ前方に突出するように係止部の周縁に1又は複数個,折り曲げ形成されている。
尚,この係止爪130cが請求孔に記載の係止手段であり,係止部130bと係止爪130cとで請求孔に記載の係止部を構成している。
爪部3aの先端部の形状は本願の実施例においては台形形状をしているが,ケーブルの挿入を容易とするならば先端分を鋭角的に尖らせてもよいし,更にはケーブルの引き抜き方向の力に対する耐力をより強くするためには,爪部3aが形成する内径が装着するケーブル7の外径より小さな径で形成され,その先端はケーブル7に線接触するように,内周がケーブルの径に合わせたアールを設けて形成してもよく,特に限定されるものではなく,ケーブルを保持するに要求される所定の保持力に対して最適な形状をなすようにすればよい。
【0013】
更には,爪部130aは,図4(b)のA−A線端面図に示すように,コネクタ前方となるコネクタ本体1の内部方向に,折り曲げ角θを例えば約45°として折り曲げ形成され,抜け止め具130全体は前方に窄み形成した略円錐形状としてもよい。
このように折り曲げることで,ケーブルの挿入操作の際爪部130aは容易に拡径するので,挿入操作をスムーズに実施できる。また,このように形成した場合であっても挿入したケーブルに引っ張り応力が加わった場合,爪部130aがケーブルに確実に食い込むので,抜け落ちることがない。
【0014】
尚,抜け止め具130作製の際,打ち抜きにより作製し,その後爪部130aを折り曲げることになるが,爪部130aの打ち抜きは前方(図4(b)の左側)から打ち抜くと良い。こうすることで,その反対側となる爪部130aのケーブル7に接触する端部(図4(b)左側の内周端部)が鋭角に形成され,ケーブル7を確実に咬持操作するよう作製できる。また図4では,爪部130aが12箇所に形成されているが,切り欠きの幅を変更することで容易にその数を変更できる。
【0015】
図6(a)に示すように,コネクタ本体41の後部に形成されたケーブル挿入口143には,前記抜け止め具130に対応するように,前記抜け止め具130の嵌合部が形成されている。
このケーブル挿入孔143には開口部内部に段部143aが形成されている。この段部143aは,周径が前記抜け止め具3の係止部130bが内接される大きさに形成されていると共に,前記抜け止め具130の係止部130bを段部143aに当接するように載置したときに,前記係止部130bに備えた係止爪130cが挿入されて嵌合する嵌合溝143cが,前記係止爪130cに対向する位置に形成されている。更にコネクタ本体41の後方側端部の外周縁には,雄ねじ143bが形成されている。
153は,中心に同軸ケーブルを挿通するための挿通孔152を有すると共に,内部には前記コネクタ本体の後方側端部に形成された雄ねじに螺合するように形成された雌ねじ153bが形成されて,前記コネクタ本体41のケーブル挿通孔143に着脱自在に構成されたキャップである。このキャップ153は,コネクタ抜け止め具130をコネクタ本体内に固定するためのものであり,抜け止め具130はこのキャップ153と段部143aとの間に,軸線方向の移動と,軸線を中心軸とした回転を阻止されて取り付けられるのである。
尚,この抜け止め具の異なる実施例を図5(a),(b)に示す。この実施例における抜け止め具は前記係止爪130cの変わりに係止部130bに切欠部130dを形成したものであり,ケーブル挿通孔143における嵌合部は,図6(b)に示されるように,段部143aから延設された,前記切欠部130dに嵌合する突起143dを備えたものであり,この嵌合においてコネクタ抜け止め具130の回転を阻止するように取り付けられるのである。
【0016】
更に,コネクタ本体41の内面から中心軸方向に向かって,コネクタ本体41に形成された同軸ケーブルの収納空間の前方から後方部に亘り回転阻止手段としての直線状の帯状突起45が複数形成されている。この帯状突起45は,例えば断面形状を四角形状や3角形状に形成されており,本願の実施例では前方側が先端に向けて徐々に低く形成されている。このように,コネクタ本体41の内部に帯状突起45を形成したので,同軸ケーブル挿入操作により,内部絶縁体と外部導体の間にスリーブ体が進入し,保護被覆がスリーブ体周囲にせり上がって行くことになり,帯状突起45が確実に保護被覆に食い込む。
尚,本願の実施例では帯状突起11と45を備えさせた例を示したが,特にこの実施例に限定されるものではなく,所望の性能を得られるのなら何れか一方だけ備えさせてもよいし。また帯状突起は,夫々に対して対向する2ヶ所だけに設けても回転阻止に十分有効であるし,1ヶ所だけであっても,回転阻止力を発揮させることは可能である。更に,帯状突起45の保護被覆7dへ食い込む割合は,大きい方がケーブルの回転阻止には有効であるが,大き過ぎると保護被覆7dが切断され破れてしまうので,保護被覆7dの厚みの20%以内が好ましいし,少ないと回転阻止作用が弱いので10%以上が好ましい。
【0017】
次に,上記コネクタの組立て及びケーブルへの装着手順を説明する。コネクタの組立ては,先ずコネクタ本体41の嵌合孔42にスリーブ体6を備えた環状連結部10が前方方から挿入され連結される。この時,環状連結部10は圧入等により両者は固着一体化される。そして,筒状嵌合部16にナット体2を嵌合した後,嵌合部16bを拡径させることで,ナット体2は回転自在にスリーブ体6(即ち,コネクタ本体1)に連結される。
その後,上述するようにケーブル挿通孔143から抜け止め具130を,コネクタ本体1内に装着し,キャップ153を締め付けることによって,コネクタは完成する。
【0018】
ケーブル7の装着操作は次のように実施される。最初に挿入するケーブル7端部を加工する。具体的には図2に示すように,中心導体7a及び内部絶縁体7bが所定の長さに露出されるよう内部絶縁体7b及び保護被覆7dを切除し,スリーブ体6が挿入し易いように,外部導体7cを保護被覆7d上に捲りあげる。後は,ケーブル7をコネクタ本体1の後方から挿入操作すれば良い。
図2はケーブル挿入前の状態であり,装着完了した状態は図1のようになる。ケーブル7の挿入は,保護被覆7dがコネクタ本体1の前面背部,正確には環状連結部10に当接する所定位置まで行われる。こうすることで,スリーブ体6は内部絶縁体7bと外部導体7cの間に挿入され,外部導体7cとコネクタ本体1とはスリーブ体6を介して確実に電気的接続が成されるし,スリーブ体6とスリーブ体6周囲に形成された帯状突起11の作用によって,保護被覆がスリーブ体周囲にせり上がって行くので,コネクタ本体41の内部に形成された帯状突起11の作用ばかりでなく,帯状突起45が確実に保護被覆に食い込むことになり,ケーブル7は回転応力が加わっても容易に回転することがなく,良好な接続状態を維持できる。
そして,爪部3aは上述するように確実にケーブル7を咬持するよう作用する。更に,中心導体7aの先端はナット体2先端位置まで突出し,ナット体2の中心軸(M)上にケーブル7の中心導体が配置され,接続手段の中心導体を得る。
【0019】
尚,図において,7eはアルミ箔を示している。同軸ケーブルの外部導体は,網状の導体(上述する外部導体7c)とその内側に設けられたアルミ箔7eから構成されているのが一般的であり,このようにアルミ箔7eを有する場合,ケーブル端部加工の際,アルミ箔7eは捲ること無く内部絶縁体7bに沿わせたままで,スリーブ体6はアルミ箔7eと網状の導体(上述する外部導体7c)の間に挿入される。
【0020】
このように,コネクタに装着した同軸ケーブルは,抜け止め具130の作用により引っ張り応力が加わっても抜けてしまうようなことがなく,堅牢な装着ができる。それでいて,キャップを外せば抜け止め具130による抜脱阻止作用を解除して同軸ケーブルを容易に抜き取ることができるので,ケーブル交換等の作業を容易に実施できる。更に,同軸ケーブルの端部を所定の形状に処理してコネクタ本体1に挿入すれば,コネクタ装着が完了してコネクタ部が完成するので,コネクタ装着も容易である。また,外したコネクタを再利用できるので無駄がない。
また,抜け止め具130はケーブルの挿入をスムーズに実施できるばかりでなくこれ自体でケーブルの回転を阻止できるので,スリーブ体に形成した帯状突起と合わせてケーブルの回転を阻止でき,良好な接続状態を維持できる。
【0021】
即ちこの実施例によれば,同軸ケーブルの保護被覆は取付状態において,コネクタ本体41の後方端部において抜け止め具130の爪部130aによって咬持されて同軸ケーブルの軸線方向に対する抜脱及び軸線を中心軸とした回転を阻止すると共に,同軸ケーブルの先端部は内部からはスリーブ体6,外部からは帯状突起45とで挟持されることとなり,更に優れた保持力を有すると共に確実に同軸ケーブルの回転を阻止することができる。
更に,抜け止め具131の係止部131bは,外周方向に所定の平面部が形成されると共に,この平面部131bが配設されるコネクタ本体1内部において,段部143aとキャップ153の内面とで,係止部3bの前後方向への動きが制限されるように形成されているので,ケーブルに大きな応力が加わることによって,係止部3bが前方向にも後方向にも反り返ることがないので係止部3bが変形することがなく,抜け止め具3の爪部3aの折り曲げ角θは維持され,良好に咬持動作する。
加えて,前記係止爪130cと嵌合溝143aとで抜け止め具の回転をも阻止されることに成り,同軸ケーブルに対する引っ張り力に対して強いばかりでなく,同軸ケーブルに加わる回転力に対しても信頼性の高い取付性を有する。
更に加えて,この実施例においては,抜け止め具の固定用キャップが着脱自在に構成されていることから,コネクタの出荷の時点で,キャップをケーブル挿通孔に螺合した状態にしておけば,ユーザーは同軸ケーブルを挿入操作することで簡単且つ素早く取付することができるのであるが,もしこの取付作業においてケーブルの挿着ミスがあった場合,一般的な工具を使ってキャップを取り外すことができ,これによって抜け止め具を簡単にコネクタ本体から取り外すことができ,同軸ケーブルの再装着が簡単にできるのである。また,長期的な使用を考えると,システムの変更等による同軸ケーブルの再配線にも簡単に対応できるのである。
【0022】
尚,本願の実施例では同軸ケーブル用コネクタにおける実施例を示したが,図示されてはいないが,箱体に上記コネクタと同様の同軸ケーブル装着手段を設けることで,装着したケーブルは,抜け止め具の作用により引っ張り応力が加わっても抜けてしまうようなことがなく,堅牢な装着ができる電子機器を提供できるのである。それでいて,備えさせたキャップを取り外せば,抜け止め具による抜脱阻止作用を解除でき,同軸ケーブルを取り外しできるので,ケーブル交換等の作業を容易に実施できる。また,ケーブルの端部を所定の形状に処理してコネクタ本体に挿入するだけで,箱体への装着が完了するので,ケーブルに別途コネクタを装着する必要がなく,簡易な構成で接続できる。
また,抜け止め具は回転方向の動きを阻止するように構成されているので,スリーブ体若しくはコネクタ本体に形成されている帯状突起と合わせてケーブルの回転を阻止でき,良好な接続状態を維持できる。
【0023】
尚,この電子機器用箱体の実施形態では,コネクタ本体を箱体の外方へ突出させても良いし,反対方向の箱体の内部空間へ突出させて,同軸ケーブル装着手段をその箱体内に形成しても良い。そうすることで,内部空間は狭くなるが,ケーブル接続部の露出部を短くでき,接続部の堅牢化を図ることができるし見映えも向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る同軸ケーブル用コネクタの第6の実施形態を示し,同軸ケーブルを挿入した状態の断面図である。
【図2】図1の同軸ケーブル用コネクタに同軸ケーブルを挿入する前の状態を示す。
【図3】図1のスリーブ体の側面図である。
【図4】図1の抜け止め具を示し,(a)は正面図,(b)はA−A線端面図である。
【図5】図1の抜け止め具の異なる実施例を示し,(a)は正面図,(b)はB−B線端面図である。
【図6】(a)は図4の抜け止め具に対応するケーブル挿通孔の一部拡大斜視図を示し,(b)は5の抜け止め具に対応するケーブル挿通孔の一部拡大斜視図を示す。
【符号の説明】
【0025】
1・・コネクタ本体,2・・ナット体(接続手段),130・・抜け止め具,130a・・爪部,130b・・係止部,130c・・係止爪,130c・・切欠部,6・・スリーブ体,7・・同軸ケーブル,11・・帯状突起(回転阻止手段),41・・コネクタ本体,42・・嵌合孔,45・・帯状突起(回転阻止手段),143・・ケーブル挿入孔,143a・・段部,143b・・雄ねじ,143d・・突起,152・・挿通孔,153・・キャップ,153b・・雌ねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも,同軸ケーブルを挿入して装着する筒状のコネクタ本体と,前記コネクタ本体内に装着する同軸ケーブルの内部絶縁体と外部導体との間に挿入されるスリーブ体と,同軸ケーブルの抜脱を阻止するために前記コネクタ内に固定された抜け止め具と,前記コネクタ本体の前方に連結され接続対象と接続するための接続手段と,を備えた同軸ケーブル用コネクタにおいて,
前記抜け止め具は,コネクタ本体に対する軸線方向の移動と該軸線を中心軸とする回転とを阻止して固定するように係止手段を備えた,コネクタ本体と同一中心軸を有するように内設するリング形状の係止部と,該係止部からコネクタ本体の中心軸方向へ向けて突設した複数の爪部と,から成り,
コネクタ本体の後方端部には,中心に同軸ケーブルを挿通するための同軸ケーブル挿通孔を有し,前記コネクタ本体の後方端部に着脱自在に固着されることによって,前記抜け止め具の軸線方向の移動を制限するためのキャップを備え,
同軸ケーブルを装着するときは,該同軸ケーブル端部を前記同軸ケーブル挿通孔を介してコネクタ本体内へ挿入操作することで,前記抜け止め具は,前記爪部が前記同軸ケーブル周囲を咬持することによって,同軸ケーブルの抜脱を阻止すると共に,同軸ケーブルの回転を阻止するように構成したことを特徴とする同軸ケーブル用コネクタ。
【請求項2】
外部から同軸ケーブルを装着する同軸ケーブル用コネクタを有する電子機器用箱体において,
前記同軸ケーブル用コネクタは,少なくとも,同軸ケーブルを挿入して装着する筒状のコネクタ本体と,前記コネクタ本体内に装着する同軸ケーブルの内部絶縁体と外部導体との間に挿入されるスリーブ体と,同軸ケーブルの抜脱を阻止するために前記コネクタ内に固定された抜け止め具と,前記コネクタ本体の前方に連結され接続対象と接続するための接続手段と,を備え,
前記抜け止め具は,コネクタ本体に対する軸線方向の移動と該軸線を中心軸とする回転とを阻止して固定するように係止手段を備えた,コネクタ本体と同一中心軸を有するように内設するリング形状の係止部と,該係止部からコネクタ本体の中心軸方向へ向けて突設した複数の爪部と,から成り,
該抜け止め具は,中心に同軸ケーブルを挿通するための同軸ケーブル挿通孔を有し,前記コネクタ本体の後方端部に着脱自在に固着されるように構成されたキャップによって前記コネクタ本体内に固定され,
コネクタ本体の後方端部には,中心に同軸ケーブルを挿通するための同軸ケーブル挿通孔を有し,前記コネクタ本体の後方端部に着脱自在に固着されることによって,前記抜け止め具の軸線方向の移動を制限するためのキャップを備え,
同軸ケーブルを装着するときは,該同軸ケーブル端部を前記同軸ケーブル挿通孔を介してコネクタ本体内へ挿入操作することで,前記抜け止め具は,前記爪部が前記同軸ケーブル周囲を咬持することによって,同軸ケーブルの抜脱を阻止すると共に,同軸ケーブルの回転を阻止するように構成した同軸ケーブル用コネクタを有することを特徴とする電子機器用箱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−66663(P2007−66663A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250057(P2005−250057)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)