説明

同軸ケーブル用F型接栓

【課題】5C同軸ケーブル用F型プラグより中心導体の径が太い7C同軸ケーブル用F型プラグを挿入しようとした場合に,挿入できない同軸ケーブル用F型接栓を提供すること
【解決手段】
F型プラグの中心導体5を挿入する挿入孔の径d1は,5C同軸ケーブル用F型プラグの中心導体が挿入でき,7C同軸ケーブル用F型プラグの中心導体が挿入できない大きさに形成されたので,コンタクト導体4の挟持板が広がりすぎて高周波特性を悪化したり,コンタクト導体4が破壊されることを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,同軸ケーブルを接続する際に使用するF型コネクタのうち,F型接栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,テレビ共同受信用機器のF型コネクタは,同軸ケーブルの端部に装着するF型プラグと各種高周波機器側に設けられるF型接栓とから成り,F型接栓は通常,図6(a)の断面図に示すような構造となっている。図において,45は高周波機器の筐体44から突設形成した接栓の外部導体,46はコンタクト導体,47はコンタクト導体を保持するコンタクト導体保持体であり,43は筐体内に配置した回路基板,49はF型プラグの中心導体であり,同軸ケーブルの芯線である。図6(b)はコンタクト導体46の斜視図を示し,図示右側が先端方向であり46aが中心導体挟持部,48が基板接続片である。F型接栓は特に高周波の場合,このように回路基板等の回路形成部に直接接続するのが損失の少ない良好な特性を維持できるため,コンタクト導体の後端接続片は基板等へ直接接続可能な形状となっている。
【0003】
ところが,上記図6(b)に示すコンタクト導体46の場合,挟持部46aの後部に中心導体挿入空間46bを設けているが,F型プラグが,その中心導体49を装着する同軸ケーブルの芯線により形成される所謂直付プラグタイプの場合,中心導体の長さが所定寸法より長いと中心導体の先端がコンタクト導体46の底部46cに突き当たってしまい,コンタクト導体46を介してハンダ付けした回路基板43にその応力が加わることになる。特に,中心導体49が硬銅線で形成されている場合,コンタクト導体46を接続している回路基板43のハンダ付け部に大きな応力が加わり,パターン剥離や接続ハンダの劣化が発生することがあり,高周波信号が伝送される場合,このようなパターン剥離の発生等は大きな特性の劣化を生ずるため問題となっていた。
【0004】
上記課題を解決するため,図6(c)に示すように,前記コンタクト導体50は,前記中心導体を左右から挟持する2枚の挟持板51a,51bと,挟持板51bの後部を更に後方へ延長して形成した基板接続片52とを有し,基板接続片52は,接栓の略中心軸上に延設されると共に,挟持板51aと基盤接続片52との間には少なくともt=1mmの隙間53を有することで,F型プラグの中心導体が規定寸法より長い場合であっても,基板回路パターンと接栓の接続部にストレスが加わることがないことを特徴としたF型コネクタが提案されていた。
(例えば,特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】特開2002−246126公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし,上記図6(c)に示すF型コネクタの場合であっても,
5C同軸ケーブル用F型プラグに,
5C同軸ケーブルの中心導体(W=1.05mm)より径が太い,直付プラグタイプの7C同軸ケーブル用F型プラグ(W=1.5mm)を挿入しようとした場合に,
例えばひどいときにはコンタクト導体が変形したり,
F型プラグの挿脱が繰り返されたりすることによって,コンタクト導体が押し広げられてしまい,接触不良が起きることによって高周波特性が損なわれ,十分に性能を発揮できなくなってしまうといった問題が未だ残っていた。
そこで本願においては,こうした問題点を解決するためになされたものであり,
その目的は,5C同軸ケーブル用F型プラグより中心導体の径が太い7C同軸ケーブル用F型プラグを挿入しようとした場合に挿入することができないようにして,コネクタ部が破損することを未然に防止するF型接栓を提供することである。
他の目的は,簡単かつ安価な破損防止構造を有するF型接栓を提供することである。


【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために,請求項1の発明は,
外部導体と,
その内部に収納される絶縁体で形成したコンタクト導体保持体と,
該コンタクト導体保持体により保持され,F型プラグの中心導体と連結するコンタクト導体と,
からなるF型接栓において,
前記コンタクト導体保持体には,F型プラグの中心導体が挿入される挿入孔がF型接栓の略中心軸上に形成され,
該挿入孔の径は5C同軸ケーブル用F型プラグの中心導体が挿入でき,7C同軸ケーブル用F型プラグの中心導体が挿入できない大きさに形成したこと
を特徴とする同軸ケーブル用F型接栓で構成される。
【0008】
請求項2の発明は,請求項1に記載の同軸ケーブル用F型接栓において,
前記コンタクト導体保持体は,硬質の絶縁体により形成した。
【0009】
請求項3の発明は,請求項1または請求項2に記載の同軸ケーブル用F型接栓において,
前記F型接栓の外部導体は,高周波機器の筐体壁面に突設するように一体的に形成した。
【0010】
請求項4の発明は,請求項1または請求項2に記載の同軸ケーブル用F型接栓において,
前記F型接栓の外部導体の略中央部につば部を突設し,該つば部を挟んで挿入孔を対向配置させた。


【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば,
外部導体と,
該外部導体の収納される絶縁体で形成したコンタクト導体保持体と,
該コンタクト導体保持体により保持されF型プラグの中心導体と連結するコンタクト導体と,
からなるF型接栓において,
前記コンタクト導体保持体には,F型プラグの中心導体が挿入される挿入孔がF型接栓の略中心軸上に形成され,
該挿入孔の径は5C同軸ケーブル用F型プラグの中心導体が挿入でき,直付プラグタイプの7C同軸ケーブル用F型プラグの中心導体が挿入できない大きさに形成したので,
7C同軸ケーブル用F型プラグを挿入しようとした場合や,
連結可能な中心導体であっても,例えば,中心導体が曲がっているような,加工状態が悪い場合に,
挿入孔に挿入できなくすることができる。
この結果,取扱いのミスなどによる誤挿入を防止でき,破損を防止できる。
【0012】
請求項2の発明は,請求項1に記載の同軸ケーブル用F型接栓において,
前記コンタクト導体保持体は,硬質の絶縁体により形成したので,
上記効果に加え,想定より太い中心導体の誤挿入などに対して,更に強固に挿入を阻止できる同軸ケーブル用F型接栓を提供できる。
【0013】
請求項3の発明は,請求項1または請求項2に記載の同軸ケーブル用F型接栓において,
前記F型接栓の外部導体は,高周波機器の筐体壁面に突設するように一体的に形成したので,
5C同軸ケーブル用F型プラグより中心導体の径が太い7C同軸ケーブル用F型プラグを挿入しようとした場合に挿入できなくすることで,
例えばブースターや分配器などのテレビ共同受信機器に好適で,同軸ケーブル用F型接栓の破損防止機構を有した有効性の高い高周波機器を提供できる。
【0014】
請求項4の発明は,請求項1または請求項2に記載の同軸ケーブル用F型接栓において,
前記F型接栓の外部導体の略中央部につば部を突設し,該つば部を挟んで挿入孔を対向配置させたので,
5C同軸ケーブル用F型プラグより中心導体の径が太い7C同軸ケーブル用F型プラグを挿入しようとした場合に,
挿入できなくすることができる中継用のF型接栓を提供できる。


【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に,本発明を具体化した実施形態の例を,図面を基に詳細に説明する。
図1は,本発明に係るF型接栓の断面図である。
図2は,1図のF型プラグの中心導体を挿入する挿入孔付近の断面図である。
図3は,本発明に係る第2の実施形態のF型接栓の断面図である。
図4は,本発明に係る第3の実施形態のF型接栓の断面図である。
図5は,本発明に係る第4の実施形態のF型接栓の断面図である。
図6は,従来のF型接栓である。
【実施例1】
【0016】
発明の第1の実施形態として図1を参照して説明する。
1はF型接栓であり,2は外部導体である。該外部導体2は,金属材料により形成しており,
外周にはF型プラグを螺着するネジ溝2aと,
高周波機器などの筐体に螺着して取り付けるためのネジ溝2bと,
高周波機器などの筐体に一定の深さで取り付けるためのつば部2cを形成している。
F型接栓1の内部には,外部導体2を貫通する貫通孔が形成され,
該貫通孔には樹脂製絶縁体で形成したコンタクト導体保持体3が装着され,
F型接栓1の略中心軸M上に,りん青銅やベリリウム銅などのバネ性を有する金属材料により形成したコンタクト導体4が配置固定されている。
コンタクト導体4は,2枚の挟持板によりF型プラグの中心導体を挟持して連結することができる。
【0017】
次にF型プラグの中心導体の挿入部分について,図2を基に説明する。前記コンタクト導体保持体3の端部には,前記F型プラグの中心導体5を挿入するための挿入孔3aが形成されている。この挿入孔3aの径d1は,5C同軸ケーブル用F型プラグの中心導体が挿入可能で,前記F型接栓1のコンタクト導体4を破損させるような径の,例えば直付プラグタイプの7C同軸ケーブル用F型プラグの中心導体が挿入できない大きさに形成されているのがよい。
【0018】
ところでこのようなF型接栓1が,例えばブースターに代表されるテレビ受信用機器の筐体に取付けられて,前記F型接栓1を介して筐体内部の電子回路と外部とを接続するように構成されているものにおいては,例えばそのブースターにF型プラグが付属されていれば,このF型プラグを使って同軸ケーブルに配線をすることになる。
このF型プラグには,F型プラグを形成する中心導体が,同軸ケーブルの中心導体により形成される所謂直付プラグタイプや,付属されたコンタクトピンにより形成されるタイプのものがある。
【0019】
従って,例えば新しくテレビ受信システムを構築するために同軸ケーブルを配線するような場合は,ブースターや分配器等に予め5C同軸ケーブル用の直付プラグタイプのF型プラグが付属してあれば,使用する同軸ケーブルは5Cであり中心導体の径は決まる。
付属されたF型プラグがコンタクトピンのタイプであれば,同軸ケーブルの太さには関係なく中心導体の径が決まる。
このように形成したF型プラグは,ブースター等に組みつけられた前記F型接栓1に最適な状態で接続することができる。
【0020】
ところが,例えば,既に配線済みの受信システムにテレビ受信機器を接続する場合や,レベルチェッカー(所謂,電界強度測定器)のように,色々な現場に持ち運んでレベルを図るような場合,既に配線されているF型プラグを使って接続し,レベルを測定するような状況で使われることになる。つまりは,F型接栓1に想定(例えば取扱説明書により推奨されている同軸ケーブルの中心導体)外の太さの,例えば7C同軸ケーブル用F型プラグの中心導体が挿入される場合が発生し,例えばひどいときにはコンタクト導体が変形したり,F型プラグの挿脱が繰り返されたりすることによって,コンタクト導体が押し広げられてしまい接触不良が起きることによって高周波特性が損なわれ,十分に性能を発揮できなくなってしまう。
このため,挿入孔3aの径の大きさを規定し,想定外の中心導体を通さないようにすることで,取扱いのミスによる誤挿入を防止でき,F型接栓の破壊を未然に防ぐことができるようになるのである。
【0021】
尚,前記挿入孔の入口付近は,内側から外側に向かってハ字状に拡径を形成して,使用者がF型プラグの中心導体5を挿入し易くしてもよい。
また,コンタクト導体保持体3の材料として,通常は樹脂製絶縁体のポリエチレンを用いているが,ポリカーボネイトなどのより硬性の絶縁体材料を用いることで,前記挿入孔に5C同軸ケーブル用F型プラグより中心導体の径が太い,直付プラグタイプの7C同軸ケーブル用F型プラグを挿入したときにかかる応力による挿入孔の破壊に対して,強くすることができる。
また、挿入孔3aに挿入できる同軸ケーブルとして5Cだけを述べたが、3C・4Cの同軸ケーブルも挿入できると、より汎用性の高いF型接栓にすることができる。
【実施例2】
【0022】
次に本発明の第2の実施形態として図3を参照して説明する。尚,以下の説明では,上記第1の実施形態のF型接栓と同様の構成要素については同一符号を付与し,詳細な説明は省略する。
本願の第2実施形態のF型接栓11の特徴は,外部導体12と高周波機器の筐体12d
が一体に形成されていることである。
これにより,外部導体12と高周波機器の筐体12bが一体に形成された例えばブースターや分配器などのテレビ共同受信機器での誤挿入を防止できるので,F型接栓の破損防止機構を有した有効性の高い高周波機器を提供できるようになる。
【実施例3】
【0023】
次に本発明の第3の実施形態として図4を参照して説明する。
本願の第3実施形態の同軸ケーブル用F型接栓21の特徴は,外部導体22の略中央部につば部22cを突設し,該つば部22cを挟んで前記挿入孔とF型プラグを螺着するネジ溝22aを対向配置させていることである。
これにより,F型接栓の破損防止機構を有した有効性の高い中継用のF型接栓を提供できるようになる。
【実施例4】
【0024】
次に本発明の第4の実施形態として図5を参照して説明する。
本願の第4実施形態のF型接栓31の特徴は,コンタクト導体34は金属材料により形成した中空の筒に4本のすり割り34aを設け,F型プラグの中心導体を摺動挿差により挟持して連結することができることである。
これにより,F型接栓の破損防止機構を有した有効性の高いF型コネクタを提供できるようになる。
【0025】
尚、上記のコンタクト導体34を使用した場合,一般的にコンタクトピンタイプのF型プラグ(W=1mm)専用となっているものが多く,中心導体の太さの差が少ない例えば直付プラグタイプの5C同軸ケーブル用F型プラグを装着した場合でも,コンタクト導体34が破損してしまう。このため,挿入孔3aの径をコンタクトピンタイプのF型プラグが挿入でき,直付プラグタイプの5C同軸ケーブル用F型プラグが挿入できない太さにすると,非常に有効性の高い同軸ケーブル用F型接栓を提供できるようになる。
【0026】
尚,本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく,本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の大きさ,並びに構成を適宜に変更して実施することも可能である。


【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るF型接栓の断面図である。
【図2】図1のF型プラグの中心導体を挿入する挿入孔付近の断面図である。
【図3】第2の実施形態に係るF型接栓の断面図である。
【図4】第3の実施形態に係るF型接栓の断面図である。
【図5】第4の実施形態に係るF型接栓の断面図である。
【図6】従来のF型接栓である。(a)は,従来の型接栓の断面図,(b)(c)は,従来のコンタクト導体の斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1…F型接栓,
2…外部導体,2a…外部導体のネジ溝,2b…外部導体のネジ溝,2c…外部導体のつば部,
3…コンタクト導体保持体,3a…挿入孔,
4…コンタクト導体,
5…F型プラグの中心導体,
11…F型接栓,
12…外部導体,12d…高周波機器の筐体
16…回路基板,
17…基板接続片,
21…F型接栓,
22…外部導体,22a…外部導体のネジ溝,22c…外部導体のつば部,
23…コンタクト導体保持体,
24…コンタクト導体,
31…F型接栓,
34…コンタクト導体,34a…コンタクト導体の切り欠き,
M…F型接栓1の略中心軸,
d1…挿入孔の径,d2…挿入孔の径,
W…F型プラグの中心導体5の径,
43…回路基板,
44…高周波機器の筐体,
45…外部導体,
46…コンタクト導体,46a…挟持板,46b…コンタクト導体,46c…コンタクト導体,
47…コンタクト導体保持体,
48…基板接続片,
49…F型プラグの中心導体,
50…コンタクト導体,
51a,51b…挟持板,
52…基板接続片,
53…隙間,
t…隙間の幅


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部導体と,
該外部導体の内部に収納される,絶縁体で形成したコンタクト導体保持体と,
該コンタクト導体保持体により保持され,F型プラグの中心導体と連結するコンタクト導体と
からなる同軸ケーブル用F型接栓において,
前記コンタクト導体保持体には,F型プラグの中心導体が挿入される挿入孔がF型接栓の略中心軸上に形成され,
該挿入孔の径は5C同軸ケーブル用F型プラグの中心導体が挿入でき,7C同軸ケーブル用F型プラグの中心導体が挿入できない大きさに形成したこと
を特徴とする同軸ケーブル用F型接栓。
【請求項2】
前記コンタクト導体保持体は,硬質の絶縁体により形成したことを特徴とする,
請求項1に記載の同軸ケーブル用F型接栓。
【請求項3】
前記F型接栓の外部導体は,高周波機器の筐体壁面に突設するように一体的に形成したことを特徴とする,
請求項1または請求項2に記載の同軸ケーブル用F型接栓。
【請求項4】
前記F型接栓の外部導体の略中央部につば部を突設し,該つば部を挟んで挿入孔を対向配置させたことを特徴とする,
請求項1または請求項2に記載の同軸ケーブル用F型接栓。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−351251(P2006−351251A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172953(P2005−172953)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)