説明

同軸ケーブル

【課題】
本発明は接続が容易で、接続の信頼性が高い接地用の接続部を有する同軸ケーブルを提供することを目的とするものである。
【解決手段】
絶縁体で被覆された内部導体の外周に外部導体層が設けられ、
前記外部導体層は1層又は複数層の主導体層と、その外周に設けられた1層又は複数層の補助導体層とからなり、
前記補助導体層の少なくとも1層は、素線を複数本撚り合わせてなる撚り導体を1本又は複数本らせん状に巻き付けた横巻構造からなり、
前記撚り導体の少なくとも1本の端末部が接地用の接続部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両内の信号伝送(例えば、ラジオ、モニター画像等)に使用される同軸ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な同軸ケーブルは、図5、6に示すような構成になっている。図5に示す同軸ケーブル1は、絶縁体4で被覆された内部導体(中心導体)3の外周に、1層の外部導体層(遮蔽層)5が設けられ、その外周にシース(外被)7が設けられたものである。また、図6に示す同軸ケーブル2は、絶縁体4で被覆された内部導体3の外周に、2層の外部導体層5、6が設けられ、その外周にシース7が設けられたものである。
なお、外部導体層5、6は、複数本の金属素線(単線)を網目状に編組したもの、複数本の金属素線を横巻きしたもの、金属箔、金属テープ又はプラスチックテープの片面に金属蒸着層をラミネートした複合テープを縦添え又は横巻きしたもの等が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
特に自動車等の車両内の信号伝送(例えば、ラジオ、モニター画像等)用途では、車両内に配索されたワイヤーハーネスやオルタネータ、モータ等のノイズ源から生じるノイズの影響を受けやすいことから、特に図6に示すような外部導体層が二層以上の遮断性能の向上が図られた同軸ケーブル2が使用されており、通常は端子、コネクタ等の接続手段を取り付けることにより、同軸ケーブル2同士、機器もしくは回路等に接続して使用されている。
【0004】
同軸ケーブル2に接続手段を取り付ける方法として、一例を図7に示す。すなわち図7に示す同軸ケーブル2の端末部のシース7及び外部導体層5、6の所定長を切断加工し(図7(a))、次に手加工もしくは図示しない所定の設備を用いて、その端末部の外部導体層5、6を解きほぐし、かつ折り返す(図7(b))。次に、図7(c)に示すように端末部の絶縁体4および内部導体3の所定長を切断加工する。その後、前記加工した端末部の内部導体3および外部導体層5、6に適宜内部導体用端子8、外部導体層用端子9を半田付けもしくは圧着したのち(図8)、専用の同軸構造のハウジング等に取り付けて使用されている。
【0005】
また、回路基板11上の導通パタン12に同軸ケーブル2を直接接続する場合は、端末部の外部導体層5、6を折り返さずに単に解きほぐした状態や、解きほぐした後、手加工で撚り合わせて(図7(d))、その加工された端末部を半田付けして使用されている(図9)。
【特許文献1】特開2004−214137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
同軸ケーブル2に図8に示すような接続手段を取り付ける場合には、端末部を加工後、形状の異なる特殊な内部導体用端子8と外部導体層用端子9を通常は別工程にて取り付けており、作業が繁雑となり、またその後専用のハウジング等を取り付けて使用することから汎用性が低い場合がある。さらに外部導体層用端子9の圧着部10においては、折り返した外部導体層5、6の厚さに応じて、圧着部10の内径等を調整する必要があり作業が繁雑となる。
【0007】
また、図9に示すように同軸ケーブル2を回路基板11上に直接接続する場合は、前述の図7(d)に示したように、外部導体層5、6を解きほぐしたり、解きほぐした後、手加工で撚り合わせるめんどうな端末加工が必要となり、その後図9に示すように回路基板11等へ半田付けにより接続するので作業が繁雑となる。
【0008】
さらに、外部導体層は前記のように複数本の金属素線を網目状に編組したもの、複数本の金属素線を横巻きしたもの、金属箔、金属テープ又はプラスチックテープの片面に金属蒸着層をラミネートした複合テープを縦添え又は横巻きしたもの等であるため、それを前記のように解きほぐしたり、解きほぐした後、手加工で撚り合わせると、前記端末加工部は強度が低下し、その後の接続で不具合を生じる恐れがある。
【0009】
本発明は上記課題を解決し、接続が容易で、接続の信頼性が高い接地用の接続部を有する同軸ケーブルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、絶縁体で被覆された内部導体の外周に外部導体層が設けられ、前記外部導体層は1層又は複数層の主導体層と、その外周に設けられた1層又は複数層の補助導体層とからなり、前記補助導体層の少なくとも1層は、素線を複数本撚り合わせてなる撚り導体を1本又は複数本らせん状に巻き付けた横巻構造からなり、前記撚り導体の少なくとも1本の端末部が接地用の接続部を構成することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の同軸ケーブルにおいて、前記同軸ケーブルの端末部は、前記シースおよび前記主導体層が除去されており、補助導体層は前記撚り導体の少なくとも1本を残して除去されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1記載の同軸ケーブルによると、外部導体層のうち補助導体層の少なくとも1層は、素線を複数本撚り合わせてなる撚り導体を1本又は複数本らせん状に巻き付けた横巻構造であり、その撚り導体の少なくとも1本の端末部が接地用の接続部を構成するので、前記接続部への接続手段の取り付け、該接続部のその後の接地用の回路等への接続作業が容易となり、なおかつ、接続の信頼性が高くなる。また図8のような特殊な外部導体層用端子9を必要とせず、汎用端子が使用可能になり、更には、図8の内部導体用端子8との共通化が可能となり、接続コストを大幅に低減することかできる。また、撚り導体を外部導体層の接続に用いるので、前記撚り導体の端末部をコネクタ等の接続手段の接続部(端末挿入部)に挿入した際に、挿入されたその端末部が広がり、加締められることから、接続部の信頼性が向上する。
【0013】
本発明の請求項2記載の同軸ケーブルによると、前記同軸ケーブルの端末部は、前記シースおよび前記主導体層が除去されており、補助導体層は前記撚り導体の少なくとも1本を残して除去されているので、前記撚り導体の少なくとも1本の端末部が構成する接地用の接続部への接続手段の取り付け、該接続部のその後の接地用の回路等への接続作業がさらに容易となり、なおかつ、接続の信頼性がさらに高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1(a)、図1(b)は本発明に係る同軸ケーブル15の一実施形態を説明する平面図、断面図である。なお、従来の同軸ケーブルと同一構成のものには同一符号が付してある。
【0015】
本発明の一実施形態の同軸ケーブル15は、絶縁体4で被覆された内部導体3の外周に、外部導体層17が設けられ、その外周にシース7が設けられており、外部導体層17は1層の主導体層18と、その外周に1層の補助導体層19とから構成されている。
【0016】
絶縁体4はポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂等が押出し成型により設けられたものであり、シース7はポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が押出し成型により設けられたものである。
【0017】
内部導体3は、金属素線により構成されており、好ましくは銅または銅合金素線により構成されている。
【0018】
主導体層18は、金属素線を複数本の網目状に編組したもの、複数本の金属素線を同方向若しくは交互に横巻きしたもの、又は内部導体3の長手方向に沿って縦添えしたもの、金属箔、金属テープ又はプラスチックテープの片面に金属蒸着層をラミネートした複合テープを縦添え又は横巻きしたもの等で構成され、前記したような1層ではなく、複数層設けるようにしてもよい。金属素線として好ましくは軟銅、錫めっき軟銅素線が用いられる。また、遮断性能を上げる観点からは、前記金属素線や金属箔等は一様に隙間がないように密着させて設けられることが好ましい。
【0019】
補助導体層19は、少なくとも1層が、金属素線を複数本撚り合わせた撚り導体の1本又は複数本をらせん状に任意のピッチにて巻き付けてなる横巻き構造からなり、かつ前記撚り導体の少なくとも1本の端末部が接地用の接続部を構成する。金属素線として好ましくは軟銅、錫めっき軟銅素線が用いられ、撚り導体は周方向に一箇所または複数個所にわたり隙間が形成されるように設けてもよい。
【0020】
また、補助導体層が複数層の場合、前記以外の補助導体層は前記の主導体層同様に、複数本の金属素線を網目状に編組したもの、複数本の金属素線を同方向若しくは交互に横巻きしたもの、又は内部導体3の長手方向に沿って縦添えしたもの、金属箔、金属テープ又はプラスチックテープの片面に金属蒸着層をラミネートした複合テープを縦添え又は横巻きしたもの等で構成され、前記したような1層ではなく、複数層設けるようにしてもよい。また、前記金属素線や金属箔等は周方向に一箇所または複数個所にわたり隙間が形成されるように設けてもよい。
【0021】
ここで、本発明の一実施形態の同軸ケーブル15の各部の寸法を記載しておくと、ポリエチレンで形成された外径1.61mmの絶縁体4で被覆された外径0.265mmの軟銅素線で出来た内部導体3の外周に、外部導体層17が設けられ、その外周に厚さ0.5mmに押出し成形されたポリ塩化ビニル製のシース7が設けられる。外部導体層17は、絶縁体4の外周に一様に設けられた1層の主導体層18とその外周に設けられた1層の補助導体層19とから構成される。主導体層18は、外径(線径)0.10mmの錫めっき軟銅線をピッチ15mm、編組密度97%で網目状に編組して構成され、補助導体層19は19本の外径0.18mmの錫めっき軟銅線を撚り合わせた撚線を9本、主導体層18の外周に60mmのピッチで同方向に横巻きして構成される。
なお、IEC61196に定められた伝達インピーダンス法により本発明の一実施形態の同軸ケーブル15の伝達インピーダンスを測定したところ、150kHzの周波数において、外部導体層17全体で1.4mΩ/mであり、遮蔽性能に優れるものであった。
【0022】
さらに本発明の一実施形態の同軸ケーブル15における、前記撚り導体の少なくとも1本の端末部が接地用の接続部を構成する一例を図2に示す。すなわち図2(a)に示すように同軸ケーブル15の端末部においてシース7を切断除去した後、補助導体層19の少なくとも1本を残して切断除去する(本発明の一実施形態では1本)。次に図2(b)に示すように端末部の主導体層18を切断除去し、絶縁体4および内部導体3の所定長を切断加工し、前記少なくとも1本残した補助導体層19を接地用の回路等に接続して用いる。
【0023】
さらに、図2(c)に示すように端末部の補助導体層19に汎用の端子20を圧着ないしは半田付け等で固定したり、あるいは図2(d)に示すように内部導体3の端末部に内部導体用端子8を圧着ないしは半田付け等で固定してもよい。また、図2(e)に示すように端末部の補助導体層19に汎用の端子20を、かつ内部導体3の端末に内部導体用端子8を圧着ないしは半田付け等で固定してもよい。
【0024】
さらには、図2(f)に示すように端末部の補助導体層19を内部導体3とほぼ同寸法に加工し、内部導体用端子8と同形状の端子を取り付けることによって、例えば図3に示すような一つの多極コネクタハウジング22に他の電線21と共に同軸ケーブル15の内部導体および外部導体層を取り付けることが可能となり、専用のハウジングを用いずに接続が可能となり、省スペース性、汎用性が高くなる。なお、これらの端子については特に制限はなく、汎用的な端子を使用すれば経済的である。
【0025】
また、回路基板上に接続する場合でも、図4に示すように外部導体層に端子を介しての接続が可能となり、半田付け等に比べ接続が容易となる。
【0026】
以上に述べたように、本発明の同軸ケーブルによると、外部導体層のうち補助導体層の少なくとも1層は、素線を複数本撚り合わせてなる撚り導体を1本又は複数本らせん状に巻き付けた横巻構造であり、その撚り導体の少なくとも1本の端末部が接地用の接続部を構成するので、前記接続部への接続手段の取り付け、該接続部のその後の接地用の回路等への接続作業が容易となり、なおかつ、接続の信頼性が高くなる。また図8のような特殊な外部導体層用端子9を必要とせず、汎用端子が使用可能になり、更には、図8の内部導体用端子8との共通化が可能となり、接続コストを大幅に低減することかできる。また、撚り導体を外部導体層の接続に用いるので、前記撚り導体の端末部をコネクタ等の接続手段の接続部(端末挿入部)に挿入した際に、挿入されたその端末部が広がり、加締められることから、接続部の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は本発明に係る同軸ケーブルの一実施形態を説明する平面図、(b)は同断面図である。
【図2】本発明に係る同軸ケーブルの接続端末部構造を説明する平面図である。
【図3】本発明に係る同軸ケーブルを電線と共に多極コネクタハウジングに接続した状態を説明する平面図である。
【図4】本発明に係る同軸ケーブルを回路基板上に接続した状態を説明する平面図である。
【図5】従来の同軸ケーブルを示す断面図である。
【図6】従来の他の同軸ケーブルを示す断面図である。
【図7】従来の他の同軸ケーブルの端末部の加工手順を示す平面図である。
【図8】従来の他の同軸ケーブルの端末部に接続手段が取り付けられた状態を示す平面図である。
【図9】従来の他の同軸ケーブルを回路基板上に接続した状態を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 同軸ケーブル
2 同軸ケーブル
3 内部導体
4 絶縁体
5 外部導体層
6 外部導体層
7 シース
8 内部導体用端子
9 外部導体層用端子
10 圧着部
11 回路基板
12 導通パタン
13 半田付け箇所
15 同軸ケーブル
17 外部導体層
18 主導体層
19 補助導体層
20 端子
21 電線
22 多極コネクタハウジング
23 回路基板
24 導通パタン
25 半田付け箇所
26 端子
27 圧切箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体で被覆された内部導体の外周に外部導体層が設けられ、
前記外部導体層は1層又は複数層の主導体層と、その外周に設けられた1層又は複数層の補助導体層とからなり、
前記補助導体層の少なくとも1層は、素線を複数本撚り合わせてなる撚り導体を1本又は複数本らせん状に巻き付けた横巻構造からなり、
前記撚り導体の少なくとも1本の端末部が接地用の接続部を構成することを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
前記同軸ケーブルの端末部は、前記シースおよび前記主導体層が除去されており、補助導体層は前記撚り導体の少なくとも1本を残して除去されていることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−250421(P2007−250421A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74315(P2006−74315)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】