説明

同軸コネクタ

【課題】同軸ケーブルに強固に固定できると共に、特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることを抑制できる同軸コネクタを提供することである。
【解決手段】ハウジング12は、同軸ケーブル220が延在している延在方向に略直交する中心軸を有する円筒部20、及び、円筒部20から同軸ケーブル220に沿って延在している保持部23を含む。ブッシング14は、ハウジング12に取り付けられる。ソケット16は、中心軸が延在する方向から平面視したときに円筒部20の中心に位置し、かつ、ブッシング14によりハウジング12と絶縁されており、中心導体224と接続される。保持部23は、外部導体222を保持するかしめ部28と、絶縁被膜221に接触する接触部30と、を有している。接触部30が絶縁被膜221に接触する面には、先端に絶縁部が形成された突起60a,60bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸コネクタに関し、より特定的には、同軸ケーブルの先端に取り付けられる同軸コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の同軸コネクタとしては、例えば、特許文献1に記載の同軸コネクタが知られている。該同軸コネクタは、同軸ケーブルの外装被膜材上に巻き付けられる連結部材を備えている。連結部材には、外装被膜材に突き刺さる複数の突起が設けられている。これにより、同軸コネクタは、同軸ケーブルに対して強固に連結されるようになる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の同軸コネクタでは、特性インピーダンスが所望の特性インピーダンスからずれるおそれがある。より詳細には、連結部材は、金属薄板により作製されている。そのため、突起が外装被膜材に突き刺さると、突起が同軸ケーブルの中心導体に接近してしまう。その結果、突起と同軸ケーブルとの間に容量が形成され、同軸コネクタの特性インピーダンスが所望の特性インピーダンス(例えば、50Ω)からずれてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−217638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、同軸ケーブルに強固に固定できると共に、特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることを抑制できる同軸コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る同軸コネクタは、第1の中心導体、該第1の中心導体の周囲に設けられている絶縁体、該絶縁体の周囲に設けられている第1の外部導体、及び、該第1の外部導体の周囲に設けられている絶縁被膜により構成されている同軸ケーブルであって、先端において該絶縁被膜が除去されて前記第1の外部導体が露出していると共に該第1の外部導体が除去されて該絶縁体が露出している同軸ケーブルに取り付けられる同軸コネクタであって、前記同軸ケーブルが延在している延在方向に略直交する中心軸を有する円筒部、及び、該円筒部から該同軸ケーブルに沿って延在している保持部を含んでいるハウジングと、前記ハウジングに取り付けられているブッシングと、中心軸が延在する方向から平面視したときに前記円筒部の中心に位置し、かつ、前記ブッシングにより前記ハウジングと絶縁されているソケットであって、前記第1の中心導体と接続されるソケットと、を備えており、前記保持部は、前記第1の外部導体を保持する第1のかしめ部と、前記絶縁被膜に接触する接触部と、を有しており、前記接触部が前記絶縁被膜に接触する面には、先端に絶縁部が形成された突起が設けられていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、同軸ケーブルに強固に固定できると共に、特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る同軸コネクタの外観斜視図である。
【図2】同軸コネクタの分解斜視図である。
【図3】同軸コネクタの断面構造図である。
【図4】同軸コネクタのハウジングの組立て途中における斜視図である。
【図5】同軸コネクタの組立て途中における分解斜視図である。
【図6】同軸コネクタの組立て途中における分解斜視図である。
【図7】コンピュータシミュレーションの結果を示したグラフである。
【図8】コンピュータシミュレーションの結果を示したグラフである。
【図9】変形例に係る同軸コネクタの外観斜視図である。
【図10】変形例に係る同軸コネクタの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態に係る同軸コネクタについて、図面を参照して説明する。
【0010】
(同軸コネクタの構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る同軸コネクタ10の外観斜視図である。図2は、同軸コネクタ10の分解斜視図である。図3は、同軸コネクタ10の断面構造図である。図4は、同軸コネクタ10のハウジング12の組立て途中における斜視図である。図1ないし図3(特に、図2参照)において、ハウジング12、ブッシング14及びソケット16が重ねられる方向をz軸方向とする。z軸方向の正方向は、ハウジング12からソケット16へと向かう方向である。また、同軸ケーブル220が延在している方向をx軸方向とし、x軸方向とz軸方向に直交する方向をy軸方向とする。x軸方向の正方向は、同軸ケーブル220からソケット16へと向かう方向である。x軸方向は、z軸方向に直交している。
【0011】
同軸コネクタ10は、図1及び図2に示すように、ハウジング12、ブッシング14及びソケット16により構成されている。同軸コネクタ10は、図3(a)及び図3(b)に示すように、外部導体232及び中心導体234を有する示したレセプタクル230に対して、着脱可能である。
【0012】
同軸ケーブル220は、図2に示すように、絶縁被膜221、外部導体222、絶縁体223及び中心導体224により構成されている。絶縁体223は、中心導体224の周囲に設けられており、弾性を有している。外部導体222は、絶縁体223の周囲に設けられている。絶縁被膜221は、外部導体222の周囲に設けられており、弾性を有している。また、同軸ケーブル220の先端において絶縁被膜221が除去されて外部導体222が露出している。更に、同軸ケーブル220の先端において外部導体222が除去されて絶縁体223が露出している。
【0013】
ハウジング12は、1枚の金属板(例えば、ばね用りん青銅)により作製され、図2及び図4に示すように、円筒部20、背面部21、保持部23及び固定部24を含んでいる。
【0014】
円筒部20は、z軸方向に延在する中心軸を有しており、図4に示すように、z軸方向の正方向側に位置する開口O1及びz軸方向の負方向側に位置する開口O2を有している。ただし、円筒部20は、一部(x軸方向の負方向側の部分)が切り欠かれている。
【0015】
背面部21は、円筒部20に接続されており、図4の状態から90度だけ折り曲げられて、図2に示すように、円筒部20の開口O2を覆う板状部材である。背面部21上には、ブッシング14が載置される。
【0016】
固定部24は、円筒部20に接続され、図2に示すように、ブッシング14をy軸方向の両側から挟んでいる。固定部24は、図4に示すように、z軸方向の正方向側から開口O1を平面視したときに、円筒部20の端部のそれぞれに設けられている。より詳細には、2つの固定部24は、円筒部20が切り欠かれることにより形成される2つの端部からx軸方向の負方向側へと延在し、互いに対向している板状部材である。
【0017】
また、固定部24には、湾曲部33が設けられている。湾曲部33は、図4に示すように、固定部24の間隔が広がるように固定部24の一部がy軸方向の正方向側又は負方向側に湾曲させられることにより形成されている。
【0018】
保持部23は、図1及び図2に示すように、円筒部20から同軸ケーブル220に沿って延在しており、具体的には、背面部21のx軸方向の負方向側に接続されている。保持部23は、図4に示すように、かしめ部26,28及び接触部30を有している。
【0019】
かしめ部26は、同軸コネクタ10の組立て前の状態において、図2に示すように、背面部21のx軸方向の負方向側に設けられているU字状の板状部材である。かしめ部26は、図1に示すように曲げられることにより、ブッシング14、固定部24及び絶縁体223の周囲に巻き付けられている。これにより、かしめ部26は、固定部24及び絶縁体223に圧接する。この際、固定部24及び絶縁体223は、かしめ部26に押されてブッシング14に圧接する。よって、固定部24及びかしめ部26は、ブッシング14を保持している。以上より、かしめ部26は、ブッシング14、ソケット16及び同軸ケーブル220をハウジング12に固定する役割を果たす。
【0020】
かしめ部28は、同軸コネクタ10の組立て前の状態において、図4に示すように、かしめ部26のx軸方向の負方向側に設けられているU字状の板状部材である。かしめ部28は、図1に示すように曲げられることにより、外部導体222の周囲に巻き付けられて、同軸ケーブル220の外部導体222を保持する。これにより、かしめ部28は、同軸ケーブル220をハウジング12に固定する役割を果たす。
【0021】
接触部30は、図2及び図4に示すように、かしめ部28のx軸方向の負方向側に設けられている平板状部材である。接触部30は、図1に示すように、かしめ部28が外部導体222の周囲に巻き付けられることにより、絶縁被膜221に接触する。
【0022】
また、接触部30の絶縁被膜221に接触する面(すなわち、z軸方向の正方向側の面)には、z軸方向の正方向側に向かって突出する突起60a,60bが設けられている。突起60a,60bは、z軸方向の正方向側の先端において尖った形状をなしており、具体的には、横倒しされた三角柱である。そして、突起60a,60bは、y軸方向に並ぶように配置されている。
【0023】
更に、突起60a,60bの表面には、樹脂等の絶縁材が塗布されることによって絶縁部が形成されている。突起60a,60bは、接触部30が絶縁被膜221に接触することにより、絶縁被膜221に刺さるようになる。これにより、突起60a,60bは、同軸ケーブル220をハウジング12に固定する役割を果たす。突起60a,60bの金属部分のz軸方向の高さは、例えば、20μm以上100μm以下である。
【0024】
絶縁部は、例えば、誘電率2.3未満のフッ素が塗布されて形成されてもよいし、誘電率が9〜10のアルミナ等のセラミックが溶射されて形成されてもよいし、誘電率が4.4のエポキシ等のプラスチックが溶射されて形成されてもよい。絶縁部のz軸方向の高さは、10μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0025】
なお、絶縁部は、突起60a,60bの少なくとも先端に形成されていればよい。そこで、突起60a,60bの先端における金属部分の表面は、他の部分よりも粗くなるように加工されていることが好ましい。これにより、絶縁部が剥離することが抑制される。
【0026】
ブッシング14は、樹脂(例えば、液晶ポリマー)からなる絶縁体により構成されており、ハウジング12とソケット16とを絶縁する役割を果たしている。ブッシング14は、ハウジング12に取り付けられており、図2に示すように、円形部36及び保持部38により構成されている。
【0027】
円形部36は、ソケット16を保持する役割を果たし、図2に示すように、背面部39及び円筒部41により構成されている。背面部39は、z軸方向から平面視したときに、円形をなす板状部材であり、ブッシング14がハウジング12に取り付けられた際に、図1に示すように、円筒部20内に収まっている部分である。
【0028】
円筒部41は、図2に示すように、背面部39のz軸方向の正方向側の面上に設けられており、z軸方向に延在する中心軸を有している。円筒部41の中心軸と円筒部20の中心軸とは略一致している。
【0029】
保持部38は、ソケット16を保持する役割を果たし、図2に示すように、背面部42及び押さえ部46により構成されている。背面部42は、円形部36の背面部39からx軸方向の負方向側に向かって延在している長方形状の板状部材である。該背面部42上には、図2に示すように、ソケット16が載置される。
【0030】
押さえ部46は、x軸方向に垂直な板状部材であり、背面部42に設けられている。ただし、押さえ部46のz軸方向の負方向側の端部と背面部42のz軸方向の正方向側の面との間には隙間Spが設けられている。同様に、円筒部41と背面部42のz軸方向の正方向側の面との間にも隙間Spが設けられている。これにより、押さえ部46のx軸方向の負方向側の空間と円筒部41内とが隙間Spを介して連通している。
【0031】
また、ブッシング14は、図2に示すように、2つに分離可能である。具体的には、ブッシング14は、y軸方向の正方向側の半分とy軸方向の負方向側の半分にV字型に分かれる。これにより、後述するソケット16がブッシング14に取り付けられることが可能である。
【0032】
ソケット16は、1枚の金属板(例えば、ばね用りん青銅)により作製され、図1及び図2に示すように、ブッシング14に取り付けられ、該ブッシング14によりハウジング12と絶縁されている。該ソケット16は、図2に示すように、円筒部48、背面部50及び取り付け部52により構成されている。円筒部48は、図2に示すように、背面部50のx軸方向の正方向側に接続されており、z軸方向から平面視したときに、円環の一部が切り欠かれた形状を有している。円筒部48の半径は、ブッシング14の円筒部41の半径よりも小さい。よって、円筒部48は、同軸コネクタ10が組立てられた際に、図1に示すように、円筒部41内に収まっている。更に、円筒部48は、円筒部20の中心軸が延在する方向(z軸方向)から平面視したときに円筒部20の中心に位置している。
【0033】
背面部50は、円筒部41から隙間Spを通過するように、x軸方向の負方向側に延在している板状部材である。取り付け部52は、背面部50のx軸方向の負方向側の端部において、z軸方向の正方向側に垂直に折り曲げられることにより設けられており、同軸ケーブル220の中心導体224と接続される。より詳細には、取り付け部52は、所定の隙間を介して並ぶ2枚の切断用片52a,52bにより構成されている。そして、同軸ケーブル220の中心導体224が切断用片52a,52bの間の所定の隙間に挟まれるように、z軸方向の正方向側から負方向側へと、同軸ケーブル220がかしめ部26により切断用片52a,52bに押さえつけられる。これにより、切断用片52a,52bは、かしめ部26からの力により同軸ケーブル220の絶縁体223に圧接する。そして、切断用片52a,52bは、同軸ケーブル220の絶縁体223の一部を切断(破壊)して、中心導体224と接続される。
【0034】
以上のように構成された同軸コネクタ10は、以下に説明する手順により組立てられる。図5及び図6は、同軸コネクタ10の組立て途中における分解斜視図である。
【0035】
まず、図5に示すように、ブッシング14に対してソケット16を取り付ける。より詳細には、円筒部41内に円筒部48が収まると共に、背面部50が隙間Spに収まるように、ブッシング14によりソケット16をy軸方向の両側から挟み込む。
【0036】
次に、図6に示すように、ハウジング12に対してブッシング14を取り付ける。より詳細には、円筒部20内に円形部36が収まると共に、固定部24間に保持部38が収まるように、z軸方向の正方向側からブッシング14をハウジング12に対して押し込むようにして取り付ける。
【0037】
次に、図6に示すように、同軸ケーブル220を取り付け部52上に載置する。この際、同軸ケーブル220は、先端において、外部導体222及び絶縁体223が露出するように加工されている。ただし、中心導体224は、露出していない。絶縁体223が取り付け部52上に位置し、外部導体222がかしめ部28間に位置し、絶縁被膜221が接触部30上に位置するように、同軸ケーブル220をソケット16に載置する。
【0038】
同軸ケーブル220を載置すると、かしめ部26,28のかしめ工程を行う。かしめ部26のかしめ工程では、かしめ部26を折り曲げることにより、絶縁体223を切断用片52a,52bに押し付ける。この際、絶縁体223の一部が切断用片52a,52bにより切断され、切断用片52a,52bと中心導体224とが接続される。
【0039】
また、かしめ部28のかしめ工程では、かしめ部28を折り曲げることにより、かしめ部28を外部導体222に巻き付ける。この際、接触部30が絶縁被膜221に圧接して、突起60a,60bが絶縁被膜221に突き刺さる。以上の工程を経て、同軸コネクタ10は、図1に示すような構成を有するようになる。
【0040】
次に、同軸コネクタ10のレセプタクル230への着脱について説明する。レセプタクル230は、図3に示すように、外部導体232及び中心導体234により構成されている。外部導体232は、円筒形状の電極である。中心導体234は、外部導体232の中心においてz軸方向の負方向側に突出している電極である。
【0041】
前記同軸コネクタ10をレセプタクル230に装着する際には、図3(a)及び図3(b)に示すように、外部導体232を開口O1から円筒部20に挿入する。これにより、円筒部20の内周面と外部導体232の外周面とが接触し、同軸ケーブル220の外部導体222とレセプタクル230の外部導体232とがハウジング12を介して電気的に接続されるようになる。この際、円筒部20は、外部導体232により押し広げられる。これにより、円筒部20の内周面が、外部導体232の外周面に圧接するようになり、同軸コネクタ10がレセプタクル230から容易に外れることが防止されている。
【0042】
また、外部導体232が円筒部20に挿入されると同時に、図3(a)及び図3(b)に示すように、中心導体234がソケット16の円筒部48に挿入される。これにより、中心導体234の外周面と円筒部48の内周面とが接触し、同軸ケーブル220の中心導体224とレセプタクル230の中心導体234とがソケット16を介して電気的に接続されるようになる。
【0043】
(効果)
以上のように構成された同軸コネクタ10によれば、同軸コネクタ10を同軸ケーブル220に強固に固定できる。より詳細には、同軸コネクタ10では、絶縁被膜221に接触する接触部30が絶縁被膜221に接触する面には、突起60a,60bが設けられている。これにより、かしめ部28が外部導体222の周囲に巻き付けられると、接触部30が絶縁被膜221に圧接し、突起60a,60bが絶縁被膜221に刺さるようになる。その結果、同軸コネクタ10が同軸ケーブル220に強固に固定される。
【0044】
更に、同軸コネクタ10によれば、特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることを抑制できる。より詳細には、同軸コネクタ10では、突起60a,60bの先端には絶縁部が形成されている。これにより、同軸コネクタ10における突起60a,60bの金属部分と中心導体224との距離は、特許文献1に記載の同軸コネクタにおける突起と中心導体との距離よりも絶縁部の厚みの分だけ大きくなる。よって、同軸コネクタ10において突起60a,60bと中心導体224との間に形成される容量は、特許文献1に記載の同軸コネクタにおける突起と中心導体との間に形成される容量よりも小さくなる。その結果、特許文献1に記載の同軸コネクタでは、特許文献1に記載の同軸コネクタに比べて、特性インピーダンスが所望の特性インピーダンスからずれにくくなる。
【0045】
(コンピュータシミュレーション)
本願発明者は、同軸コネクタ10が奏する効果をより明確にするために、以下に説明するコンピュータシミュレーションを行った。具体的には、絶縁部が突起60a,60bの全体に形成された第1のモデル、絶縁部が突起60a,60bの先端から100μmの範囲に形成された第2のモデル、及び、絶縁部が形成されていない第3のモデルを作製した。第1のモデル、第2のモデルは、本発明の実施例に相当し、第3のモデルは、比較例に相当する。そして、第1のモデルないし第3のモデルにおいて、突起60a,60bと中心導体224とのギャップを変化させたときの同軸コネクタ10の特性インピーダンスを算出した。図7は、コンピュータシミュレーションの結果を示したグラフである。縦軸はインピーダンスを示し、横軸は中心導体224とのギャップを示している。以下に、その他のシミュレーション条件を列挙する。
【0046】
中心導体224の直径:0.12mm
絶縁体224の直径:0.43mm
絶縁体224の誘電率:2.3
外部導体222の直径:0.5mm
突起60a,60bのz軸方向の高さ:0.05mm
絶縁部の厚み:10μm
絶縁部の誘電率:2.3
【0047】
図7によれば、第3のモデルでは、中心導体224に突起60a,60bが近づくにつれて、特性インピーダンスが小さくなっている。一方、第1のモデル及び第2のモデルでは、中心導体224に突起60a,60bが近づいても、特性インピーダンスが殆ど変動していない。特に、第1のモデルでは、特性インピーダンスが変動していない。これにより、同軸コネクタ10では、特性インピーダンスの変動が抑制されることが分かる。
【0048】
次に、本願発明者は、第1のモデルにおいて、絶縁部の誘電率を変化させたときの特性インピーダンスを算出した。図8は、コンピュータシミュレーションの結果を示したグラフである。縦軸はインピーダンスを示し、横軸は絶縁部の誘電率を示している。なお、誘電率は、2.3,5,10,20に変化させた。誘電率が2.3である材料は、フッ素に相当し、誘電率が5である材料はエポキシに相当し、誘電率が10である材料はアルミナに相当する。
【0049】
図8によれば、誘電率が大きくなるにしたがって、特性インピーダンスが小さくなっていくことが分かる。したがって、絶縁部の誘電率は小さい方が好ましい。例えば、特性インピーダンスを45Ω以上50Ω以下に収めるためには、絶縁部の誘電率を6以下にすることが好ましい。
【0050】
(変形例)
以下に、変形例に係る同軸コネクタについて図面を参照しながら説明する。図9は、変形例に係る同軸コネクタ10aの外観斜視図である。図10は、変形例に係る同軸コネクタ10aの分解斜視図である。
【0051】
同軸コネクタ10aでは、接触部30の代わりにかしめ部30aが設けられている。同軸コネクタ10aのその他の構成は、同軸コネクタ10と同じであるので説明を省略する。
【0052】
かしめ部30aは、同軸コネクタ10aの組立て前の状態において、図10に示すように、かしめ部28のx軸方向の負方向側に設けられているU字状の板状部材である。かしめ部30aは、図9に示すように曲げられることにより、絶縁被膜221の周囲に巻き付けられて、同軸ケーブル220の絶縁被膜221を保持する。これにより、かしめ部30aは、同軸ケーブル220をハウジング12に固定する役割を果たす。
【0053】
更に、かしめ部30aが絶縁被膜221に接触する面には、図10に示すように、絶縁被膜221に向かって突出する複数(2つ)の突起60が設けられている。突起60の表面には、樹脂等の絶縁材が塗布されることによって絶縁部が形成されている。
【0054】
以上のように構成された同軸コネクタ10aでは、かしめ部30が絶縁被膜221に巻き付けられると、突起60は絶縁被膜221に突き刺さるようになる。これにより、同軸コネクタ10aは、同軸ケーブル220に強固に固定されるようになる。また、同軸コネクタ10aでは、同軸コネクタ10と同様に、突起60に絶縁部が設けられているので、特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることが抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明は、同軸コネクタに有用であり、特に、同軸ケーブルに強固に固定できると共に、特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることを抑制できる点において優れている。
【符号の説明】
【0056】
10,10a 同軸コネクタ
12 ハウジング
14 ブッシング
16 ソケット
20 円筒部
23 保持部
30 接触部
26,28,30a かしめ部
60,60a,60b 突起
220 同軸ケーブル
221 絶縁被膜
222 外部導体
223 絶縁体
224 中心導体
230 レセプタクル
232 外部導体
234 中心導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の中心導体、該第1の中心導体の周囲に設けられている絶縁体、該絶縁体の周囲に設けられている第1の外部導体、及び、該第1の外部導体の周囲に設けられている絶縁被膜により構成されている同軸ケーブルであって、先端において該絶縁被膜が除去されて前記第1の外部導体が露出していると共に該第1の外部導体が除去されて該絶縁体が露出している同軸ケーブルに取り付けられる同軸コネクタであって、
前記同軸ケーブルが延在している延在方向に略直交する中心軸を有する円筒部、及び、該円筒部から該同軸ケーブルに沿って延在している保持部を含んでいるハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられているブッシングと、
中心軸が延在する方向から平面視したときに前記円筒部の中心に位置し、かつ、前記ブッシングにより前記ハウジングと絶縁されているソケットであって、前記第1の中心導体と接続されるソケットと、
を備えており、
前記保持部は、
前記第1の外部導体を保持する第1のかしめ部と、
前記絶縁被膜に接触する接触部と、
を有しており、
前記接触部が前記絶縁被膜に接触する面には、先端に絶縁部が形成された突起が設けられていること、
を特徴とする同軸コネクタ。
【請求項2】
前記接触部は、前記絶縁被膜を保持する第2のかしめ部であること、
を特徴とする請求項1に記載の同軸コネクタ。
【請求項3】
前記第2のかしめ部は、前記絶縁被膜の周囲に巻き付けられる板状部材であること、
を特徴とする請求項2に記載の同軸コネクタ。
【請求項4】
前記保持部は、
前記ブッシングを保持する第3のかしめ部を、
更に有していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の同軸コネクタ。
【請求項5】
前記円筒部には、レセプタクルの円筒状の第2の外部導体が挿入され、
前記ソケットには、レセプタクルの第2の中心導体が接続されること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の同軸コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−98121(P2013−98121A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242323(P2011−242323)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】