説明

吐出容器

【課題】容器体内の気泡の排出が迅速に行える吐出容器を提供する。
【解決手段】シリンダ部材10内へ筒状のピストン部材20を上下動自在に嵌合させ、ピストン部材内周に吐出路付きの作動部材30を抜止め手段32を介して抜出し不能に貫設させ、シリンダ部材底壁内の嵌合筒16の下端に付設の弾性片17とシリンダ部材底壁との間に玉弁15の吸込み弁を形成し、さらに嵌合筒上端と抜止め手段との間に作動部材を上方付勢のバネ材35を設け、シリンダ部材に対してピストン部材と作動部材とが摺動して、ピストン部材がシリンダ部材の第2上向き段部11aへ係合することで作動部材の抜止め手段がピストン部材から下方へ離間して、吐出路の開口によりシリンダ部材内の内容液が吐出路を介して吐出可能とし、シリンダ部材に対するピストン部材と作動部材との上記と反対方向への摺動により、吸込み弁が開いて容器体の内容物をシリンダ部材内へ吸込み可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器体に装着したポンプによって容器体内容物を吐出可能に設けた吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ作用により容器体内容物を吐出可能な吐出容器の例として、容器体上端部にポンプを設け、該ポンプから突出したステムに塗布具を上方付勢状態で押下げ可能に嵌着した塗布容器が従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−187006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような塗布容器において、と容器体の上端部内へ空気が入って気泡が生じることがあるが、吐出時にこの気泡がポンプ機構に吸込まれると内容物が吐出されないか、あるいは吐出されても微量であり、そこで気泡が排出されるまでポンプ操作を繰り返さなければならないが、従来技術では内容物が吐出されるようになるまでに時間を要していた。特に、塗布具がリップペンと呼ばれるような細径のものでは、一回の吐出量が少量であることから、気泡が排出されるまでにある時間を要するという課題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、容器体交換後の気泡の排出が迅速に行える吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、ポンプ作用によって容器体の内容物を塗布用のノズルヘッドから吐出可能に設けた吐出容器において、
前記容器体の口頸部3内へ、第1上向き段部を介して下部を小内径部に形成したシリンダ部材10の小外径部を嵌合させ、
該シリンダ部材内へ筒状のピストン部材20を上下動自在に嵌合させ、
該ピストン部材内周に吐出路付きの作動部材30を抜止め手段を介して抜出し不能に貫設させ、
前記シリンダ部材の底部内に嵌合筒16を嵌合させて、該嵌合筒下端に弾性片17を付設すると共に、該弾性片とシリンダ部材底壁との間に玉弁15を設けて吸込み弁を形成し、さらに前記嵌合筒上端と抜止め手段との間に前記作動部材30を上方付勢するバネ材35を設け、
前記シリンダ部材10に対して前記ピストン部材20と前記作動部材30とが摺動して、ピストン部材が前記シリンダ部材の第2上向き段部11aへ係合することにより作動部材の抜止め手段32がピストン部材から下方へ離間して、前記吐出路を開口することでシリンダ部材内の内容液が吐出路を介して吐出可能に設け、
前記シリンダ部材10に対するピストン部材20と作動部材30との上記と反対方向への摺動により、前記吸込み弁が開いて容器体の内容物を前記シリンダ部材内へ吸込み可能に設けた
ことを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、前記容器体を前記シリンダ部材に対して着脱自在に形成することで、前記容器体を交換可能に設けたことを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明は、前記シリンダ部材10の上部外面へノズルヘッド連結用の連結筒40を嵌合させると共に、該連結筒の上部内から垂下する接続筒46へ前記作動部材30上部を嵌合させ、さらに前記連結筒40外面へ嵌合させた把持筒50内へ前記容器体を摺動自在に嵌挿させたことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記容器体の底部を押釦筒4で構成して、該押釦筒を介して容器体を上方へ押すことで吐出可能に設けたことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明は、前記ノズルヘッド60の上端部を塗布部62に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、シリンダ部材の下部を小内径部に形成し、またシリンダ部材の底部内に嵌合筒を嵌合させて、該嵌合筒下端に弾性片を付設すると共に、該弾性片とシリンダ部材底壁との間に玉弁を設けて吸込み弁を形成し、さらに嵌合筒上端と抜止め手段との間に作動部材を上方付勢するバネ材を設けたので、シリンダ部材は下部が小外径部に形成されていることに加えて、その内部には嵌合筒、玉弁およびバネ材が内装されているため、体積が従来に比較して小さく、したがって、ピストンの摺動時における吐出力を大にすることができ、よって気泡の排出を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る吐出容器の断面図である。
【図2】作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1において、1は容器体で、筒体2上端から内向きフランジを介して口頸部3を起立すると共に、筒体2下部へ押釦筒4を嵌合させている。押釦筒4は下面開口の第1筒体5の上端部外面に下方小径のテーパ筒6を付設した第1栓筒7と、第1栓筒7より下方の筒体2部分内へ嵌合された第2栓筒8とから構成されていて、第2栓筒8は第2筒体9の小外径部9aを筒体2内へ嵌合させ、かつ筒体2下面から下方へ突出する大外径部9bの底壁に透孔9cを穿設させている。後述のように筒体2は下方へ付勢されており、押釦筒4をあたかも押ボタンのように上方へ押すことで吐出可能である。
【0014】
10はシリンダ部材で、第1上向き段部を介して下端部を小内径部11に形成して、該小内径部11を容器体口頸部3内へ嵌合させ、また第1上向き段部よりやや上方に第2上向き段部11aを形成して、第2上向き段部より上方のシリンダ部材部分を第1大内径部12に形成し、さらに第2上向き段部より上方のシリンダ部材部分を第3上向き段部を介して第2大内径部13に形成している。
【0015】
またシリンダ部材10の小内径部11の下端部内面から下方小径のテーパ筒14を垂下して、テーパ筒14内へ吸込み弁としての玉弁15を上下動自在に嵌合させると共に、玉弁15より上方のシリンダ部材内へ嵌合筒16を嵌合させて、嵌合筒16下端に玉弁15押え用の弾性片17を付設している。
【0016】
20はピストン部材で、シリンダ部材10の内周面に筒部21を上下動自在に嵌合させ、さらに筒部21上端に内向きフランジを付設して、該内向きフランジ内周に保持筒部22を貫設させている。
【0017】
30は作動部材で、ピストン部材20の保持筒部22内へ挿通させた作動杆31の下部を上部より大径にして大径部に形成し、該大径部の上端に鍔部32による抜止め手段を形成して、該抜止め手段を保持筒部22下端へ当接させている。抜止め手段より上方の作動杆31部分には図示しない吐出路が形成されていて、吐出路の下端は抜止め手段が保持筒部22から下方へ離間することで開口可能に形成されている。抜止め手段と嵌合筒16上端との間には作動杆31を上方付勢するコイルバネからなるバネ材35が設けられている。
【0018】
40は連結筒で、シリンダ部材10の上部外面へ周壁41下部を上下動自在に嵌合させて、該周壁41下部に周方向へ任意の間隔をおいて縦設された割溝41a内へシリンダ部材10の上下方向中間部外面へ嵌合させた短筒外面の係合突部41bを上下動自在に嵌合させている。
【0019】
また連結筒40の周壁41上部を上向き段部42を介して小内径部43に形成し、小内径部43上端に付設した内向きフランジ内周から嵌合筒44を起立すると共に、嵌合筒44内から垂設する接続筒46の上部内面に凹凸の係合手段47を設けて、該係合手段47を作動部材30の連結杆31外面へ抜出し不能に嵌合させている。
【0020】
さらに接続筒46の下部外面に係合段部48を形成して、係合段部48とピストン部材20との間にコイルバネからなるバネ材49を設けて、該バネ材49でピストン部材20を下方へ付勢している。なお、49bはシリンダ部材10の上端部内へ嵌合させた内筒で、該内筒内へ接続筒46下部を嵌合させている。
【0021】
50は把持筒で、上端部を連結筒40下部へ螺合させた筒部51a内へ容器体1を上下動自在に嵌挿させ、かつ筒部51a上端を連結筒40の下部外面に付設された鍔部42aへ当接させている。
【0022】
60は塗布用のノズルヘッドで、上端部に塗布部61としてのノズルが設けられた筒状ヘッド本体62の下部を嵌合筒44付き小内径部43へ嵌着させている。
【0023】
70はノズルヘッド60を覆うキャップで、周壁71下部を連結筒40外面へ螺合させている。
【0024】
次に作用について説明する。吐出するには、把持筒50を持って容器体1の底部、すなわち押釦筒4を上方へ押せばよく、するとシリンダ部材10が上昇して第2上向き段部11aがピストン部材20下端へ係合してピストン部材を上昇させるため、図示しない吐出路が開口する。これにより内容物がこの吐出路と接続筒46とを介してノズルヘッド60内へ流入してノズルから吐出する。
【0025】
上記のようにシリンダ部材10の下部内には吸込み弁、嵌合筒およびバネ材が設けられているため、これらの占有分だけシリンダ部材10内の体積は小さくなっており、したがって、従来に比較して吐出力の増大が見込める。このためシリンダ部材10内へ吸込まれた気泡は迅速に排出される。
【0026】
吐出後、容器体1が下降すると、これと共にシリンダ部材10も下降するため、容器体内容物が玉弁を上昇させてシリンダ部材10内へ吸引される。その際、玉弁は上昇して弾性片を斜め上に弾性変形させるが、ピストン部材10が上限に達して吸引力が低下すると、玉弁は弾性片の弾性力で押下げられて速やかに閉弁位置に復帰する。上記のようにして、内容物がシリンダ部材内へ吸込まれて、容器体内の内容物が減少すると、これに応じて第1栓筒7が上昇する。
【0027】
なお、容器体1はシリンダ部材10に対して着脱自在であり、したがって、内容物を使い切った場合には、新しい容器体と交換することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は容器体内容物をポンプ作用により少量吐出して塗布する塗布容器等の吐出容器の分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 容器体
2 筒体
3 口頸部
4 押釦筒
5 第1筒体
6 テーパ筒
7 第1栓筒
8 第2栓筒
9 第2筒体
9a 小外径部
9b 大外径部
10はシリンダ部材
11 小内径部
11a 第2上向き段部
12 第1大内径部
13 第2大内径部
14 テーパ筒
15 玉弁
16 嵌合筒
17 弾性片
20 ピストン部材
21 筒部
22 保持筒部
30 作動部材
31 作動杆
32 鍔部
35 バネ材
40 連結筒
41 周壁
41a 割溝
41b 係合突部
42 上向き段部
43 小内径部
44 嵌合筒
46 接続筒
47 係合手段
48 係合段部
49 バネ材
49b 内筒
50 把持筒
51a 筒部
61 塗布部
70 キャップ
71 周壁



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ作用によって容器体の内容物を塗布用のノズルヘッドから吐出可能に設けた吐出容器において、
前記容器体の口頸部3内へ、第1上向き段部を介して下端部を小内径部に形成したシリンダ部材10の小外径部を嵌合させ、
該シリンダ部材内へ筒状のピストン部材20を上下動自在に嵌合させ、
該ピストン部材内周に吐出路付きの作動部材30を抜止め手段を介して抜出し不能に貫設させ、
前記シリンダ部材の底部内に嵌合筒16を嵌合させて、該嵌合筒下端に弾性片17を付設すると共に、該弾性片とシリンダ部材底壁との間に玉弁15を設けて吸込み弁を形成し、さらに前記嵌合筒上端と抜止め手段との間に前記作動部材30を上方付勢するバネ材35を設け、
前記シリンダ部材10に対して前記ピストン部材20と前記作動部材30とが摺動して、ピストン部材が前記シリンダ部材の第2上向き段部11aへ係合することにより作動部材の抜止め手段32がピストン部材から下方へ離間して、前記吐出路を開口することでシリンダ部材内の内容液が吐出路を介して吐出可能に設け、
前記シリンダ部材10に対するピストン部材20と作動部材30との上記と反対方向への摺動により、前記吸込み弁が開いて容器体の内容物を前記シリンダ部材内へ吸込み可能に設けた
ことを特徴とする吐出容器。
【請求項2】
前記容器体を前記シリンダ部材に対して着脱自在に形成することで、前記容器体を交換可能に設けたことを特徴とする請求項1記載の吐出容器。
【請求項3】
前記シリンダ部材10の上部外面へノズルヘッド連結用の連結筒40を嵌合させると共に、該連結筒の上部内から垂下する接続筒46へ前記作動部材30上部を嵌合させ、さらに前記連結筒40外面へ嵌合させた把持筒50内へ前記容器体を摺動自在に嵌挿させたことを特徴とする請求項1又は2記載の吐出容器。
【請求項4】
前記容器体の底部を押釦筒4で構成して、該押釦筒を介して容器体を上方へ押すことで吐出可能に設けたことを特徴とする請求項3記載の吐出容器。
【請求項5】
前記ノズルヘッド60の上端部を塗布部62に構成したことを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の吐出容器。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−235199(P2010−235199A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88425(P2009−88425)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】