説明

吐出容器

【課題】容器体内へ入った空気の排出が迅速に行える吐出容器を提供する。
【解決手段】口頸部3内へシリンダ部材10を嵌合させ、シリンダ部材10内へ上下動自在に嵌合させた筒状のピストン部材20へ吐出路付きの作動部材30を貫設させ、シリンダ部材10の上下方向中間部内面にシール部15を周設し、シリンダ部材10に対してピストン部材20と作動部材30との摺動により作動部材30がシール部15内周へ摺接することで、作動部材30がシリンダ部材10内をシール部15より上方のポンプ室と、シール部より下方の連通室とに分離可能に設け、作動部材30のさらなる摺動で前記連通室内の内容物を容器体内へ押し戻し可能に、かつ作動部材30の下降ストロークより小さいストロークでのピストン部材20のさらなる摺動で、作動部材30がピストン部材20から離間して前記吐出路が開口することによりポンプ室内の内容物が吐出路を介して吐出可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器体に装着したポンプによって容器体内容物を吐出可能に設けた吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ作用により容器体内容物を吐出可能な吐出容器の例として、容器体上端部にポンプを設け、該ポンプから突出したステムに塗布具を上方付勢状態で押下げ可能に嵌着した塗布容器が従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−187006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような塗布容器において、容器体の上端部内へ空気が入って気泡が生じることがあるが、吐出時にこの気泡がポンプ機構に吸込まれると内容物が吐出されないか、あるいは吐出されても微量であり、そこで気泡が排出されるまでポンプ操作を繰り返さなければならないが、従来技術では内容物が吐出されるようになるまでに時間を要していた。特に、塗布具がリップペンと呼ばれるような細径のものでは、一回の吐出量が少量であることから、気泡が排出されるまでにある時間を要するという課題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、容器体交換後の気泡の排出が迅速に行える吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、ポンプ作用によって容器体の内容物を塗布用のノズルヘッドから吐出可能に設けた吐出容器において、
容器体の口頸部3内へシリンダ部材10を嵌合させると共に、該シリンダ部材内へ上下動自在に嵌合させた筒状のピストン部材20へ吐出路付きの作動部材30を貫設させ、
前記シリンダ部材10の上下方向中間部内面にシール部15を周設し、
前記シリンダ部材10に対して前記ピストン部材20と前記作動部材30とが摺動することにより該作動部材30が前記シール部15内周へ摺接することで、該作動部材30がシリンダ部材10内をシール部15より上方のポンプ室と、シール部より下方の連通室とに分離可能に設け、
前記作動部材30のさらなる摺動で前記連通室内の内容物を容器体内へ押し戻し可能に、かつ前記作動部材30の下降ストロークより小さいストロークでのピストン部材20のさらなる摺動で、作動部材30とピストン部材20とが離間して前記吐出路が開口することにより前記ポンプ室内の内容物が吐出路を介して吐出可能に設け、
前記シリンダ部材10に対するピストン部材20と作動部材30との上記と反対方向への摺動により、前記作動部材30が前記シール部15より上方へ上昇することで容器体の内容物を前記シリンダ部材内へ吸引可能に設けたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、前記作動部材30は下面開口の液流入筒31の頂壁から連結杆31aを起立させ、該連結杆下部を前記ピストン部材20の内周へ離脱可能に嵌合させ、かつ前記液流入筒31下部をピストン部材20の摺動時に前記シール部15内周へ摺接可能に設けたことを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明は、前記シリンダ部材10は、周壁11が小内径部と該小内径部より上方に位置する大内径部13とに形成され、該大内径部を前記ポンプ室該当部に形成すると共に、小内径部を前記容器体口頸部内へ嵌合させて前記連通室該当部に形成し、前記シール部15を前記大内径部と小内径部との境界に位置する上向き段部12内周で構成したことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記容器体を前記シリンダ部材に対して着脱自在に形成することで、前記容器体を交換可能に設けたことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明は、前記シリンダ部材10の上部外面へノズルヘッド連結用の連結筒40下部を嵌合させると共に、該連結筒の上部内から垂下する接続筒46へ前記作動部材30上部を嵌合させ、さらに前記連結筒40外面へ嵌合させた把持筒50内へ前記容器体を摺動自在に嵌挿させたことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、前記容器体の底部を押釦筒4で構成して、該押釦筒を介して容器体を上方へ押すことで吐出可能に設けたことを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、前記ノズルヘッド60の上端部を塗布部62に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、シリンダ部材に対するピストン部材の摺動により、作動部材が下降してシール部内周へ摺接することで、シリンダ部材内をシール部より上方のポンプ室と、シール部より下方の連通室とに分離可能に設けたので、容器体内容物の吸引時には、所定の吐出量以上の内容物を吸引可能とすることで、容器体内の気泡すべてをシリンダ部材内へ吸引し、吐出直前に、シリンダ部材内を気泡が混じった内容物が収納されるポンプ室と、容器体内と連通する連通室とに分離し、吐出に際しては、ポンプ室内の内容物を吐出可能とすることで初期のポンプ操作段階で気泡をすみやかに排出可能とすると共に、連通室内の内容物を容器体内へ押し戻すことで所定の吐出量以上の余分な内容物が吐出されないようにすることが可能である。
【0013】
また、本発明は、ピストン部材の摺動時に液流入筒下部をシール部内周へ摺接可能に設けて、ポンプ室内に液流入筒の少なくとも上部を位置させるため、ポンプ室内の体積を小さくすることができ、したがって、ピストン部材の摺動時における吐出力を大にすることができ、よって気泡の排出を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る吐出容器の断面図である。
【図2】吐出直前の状態を示す作用説明図である。
【図3】吐出後の状態を示す作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1において、1は容器体で、筒体2上端から内向きフランジを介して口頸部3を起立すると共に、筒体2下部へ押釦筒4を嵌合させている。押釦筒4は下面開口の第1筒体5の上端部外面に下方小径のテーパ筒6を付設した第1栓筒7と、第1栓筒7より下方の筒体2部分内へ嵌合された第2栓筒8とから構成されていて、第2栓筒8は第2筒体9の小外径部9aを筒体2内へ嵌合させ、かつ筒体2下面から下方へ突出する大外径部9bの底壁に透孔9cを穿設させている。後述のように筒体2は下方へ付勢されており、押釦筒4をあたかも押ボタンのように上方へ押すことで吐出可能である。
【0017】
10はシリンダ部材で、周壁11上部を上向き段部12を介して大内径部13に形成し、該大内径部13の下部内面に後述のピストン部材20を係合させる係合段部14を周設すると共に、周壁11下面を閉塞する底壁中央部に流出孔14aを形成して、周壁11下部を口頸部3内へ嵌合させると共に、上向き段部12下面を口頸部3の上端へ載置させている。上向き段部12内周は後述の液流入筒31のテーパ状部32が摺接可能なシール部15を構成する。また、周壁11上部の大内径部13はポンプ室を、かつ周壁11下部は連通室を、それぞれ構成する。
【0018】
20はピストン部材で、シリンダ部材10の周壁11内周面に筒部21を上下動自在に嵌合させ、筒部21上端に内向きフランジを付設して、該内向きフランジ内周に保持筒部22を貫設させている。
【0019】
30は作動部材で、下面開口の液流入筒31の円錐台形状の頂壁中央部から連結杆31aを起立して、該連結杆31aを保持筒部22内へ挿通させてその下端部を保持筒部22内周へ離脱可能に係合させると共に、円錐台状の頂壁外面から連結杆31a外面にかけて後述の接続筒46へ連通する図示しない吐出路を形成している。さらに液流入筒31の下端部外面に下方小径のテーパ状部32を形成して、該テーパ状部32をシール部15へ摺接可能に設けている。液流入筒31下端とシリンダ部材10底壁との間にコイルバネからなるバネ材34を設け、該バネ材34で液流入筒31を上方へ付勢している。
【0020】
40は連結筒で、シリンダ部材10の周壁11の上部外面へ周壁41下部を上下動自在に嵌合させて、該周壁41下部に周方向へ任意の間隔をおいて縦設された割溝41a内へシリンダ部材周壁11外面の係合突部11aを上下動自在に嵌合させると共に、周壁41上部を下向き段部42を介して小内径部43に形成し、小内径部43上端に付設した内向きフランジ内周から嵌合筒44を起立すると共に、下向き段部42内周下面から垂下筒45を垂下し、垂下筒45内から垂設する接続筒46の上下方向中間部に凹凸の係合手段47を設けて、該係合手段47を作動部材30の連結杆31a外面へ抜出し不能に嵌合させている。さらに接続筒46の下部外面に係合段部48を形成して、係合段部48とピストン部材20との間にコイルバネからなるバネ材49を設けて、該バネ材49でピストン部材20を下方へ付勢している。
【0021】
50は把持筒で、上端部を連結筒40下部へ螺合させた筒部51a内へ容器体1を上下動自在に嵌挿させ、かつ筒部51a上端を連結筒40の下部外面に付設された鍔部42aへ当接させている。
【0022】
60は塗布用のノズルヘッドで、上端部に塗布部62としてのノズルが設けられた筒状ヘッド本体61の下部を嵌合筒44付き小内径部43へ嵌着させている。
【0023】
70はノズルヘッド60を覆うキャップで、周壁71下部を連結筒40外面へ螺合させている。
【0024】
次に作用について説明する。吐出するには、把持筒50を持って容器体1の底部、すなわち押釦筒4を上方へ押せばよく、するとシリンダ部材10が上昇して、図2に示すようシール部15が作動部材30のテーパ状部32へ摺接する。
【0025】
これによってシリンダ部材10内はシール部15より上方のポンプ室と、シール部15より下方の連通室とに分離される。さらにシリンダ部材10が上昇すると、ポンプ室内の内容物が徐々に加圧される。そしてピストン部材20が係合段部14へ係合して上昇を開始することにより、該ピストン部材が作動部材30の円錐台形状の頂壁から上方へ離脱すると、図示しない吐出路がポンプ室内に連通するため、内容物がこの吐出路と接続筒46とを介してノズルヘッド60内へ流入してノズルから吐出する。
【0026】
さらにシリンダ部材10が上昇すると、連通室内の内容物が容器体1内へ押し戻される。このようにポンプ室内には液流入筒31が位置しているため、その体積の占有分だけポンプ室の体積は小さくなっており、したがって、吐出力を増大させることができる。一方、連通室内の余分な内容物は容器体1内へ押し戻されるため、所要の吐出量以上に内容物が吐出されることがない。
【0027】
吐出後、容器体1が下降すると、これと共にシリンダ部材10も下降するため、容器体内容物がシリンダ部材10内へ吸引される。この吸引量は作動部材30が連通室より上方へ達した時点では、連通室とポンプ室との体積の和であり、所要の吐出量以上であり、したがって、容器体内へ入った空気は殆どすべてが初期のポンプ操作によってシリンダ部材内へ吸引される。上記のようにして、内容物がシリンダ部材内へ吸込まれて、容器体内の内容物が減少すると、これに応じて第1栓筒7が上昇する。
【0028】
なお、容器体1はシリンダ部材10に対して着脱自在であり、したがって、内容物を使い切った場合には、新しい容器体と交換することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は容器体内容物をポンプ作用により少量吐出して塗布する塗布容器等の吐出容器の分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 容器体
2 外筒
3 口頸部
4 押釦筒
5 第1筒体
6 テーパ筒
7 第1栓筒
8 第2栓筒
9 第2筒体
9a 小外径部
9b 大外径部
9c 透孔
10 シリンダ部材
11 周壁
11a 係合突部
12 上向き段部
13 大内径部
14 係合段部
14a 流出孔
15 シール部
20 ピストン部材
21 筒部
22 保持筒部
30 作動部材
31 液流入筒
31a 連結杆
32 テーパ状部
34 バネ材
40 連結筒
41 周壁
41a 割溝
42 下向き段部
42a 鍔部
43 小内径部
44 嵌合筒
45 垂下筒
46 接続筒
47 係合手段
48 係合段部
49 バネ材
50 把持筒
51a 筒部
60 ノズルヘッド
61 筒状ヘッド本体
62 塗布部
70 キャップ
71 周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ作用によって容器体の内容物を塗布用のノズルヘッドから吐出可能に設けた吐出容器において、
容器体の口頸部3内へシリンダ部材10を嵌合させると共に、該シリンダ部材内へ上下動自在に嵌合させた筒状のピストン部材20へ吐出路付きの作動部材30を貫設させ、
前記シリンダ部材10の上下方向中間部内面にシール部15を周設し、
前記シリンダ部材10に対して前記ピストン部材20と前記作動部材30とが摺動することにより該作動部材30が前記シール部15内周へ摺接することで、該作動部材30がシリンダ部材10内をシール部15より上方のポンプ室と、シール部より下方の連通室とに分離可能に設け、
前記作動部材30のさらなる摺動で前記連通室内の内容物を容器体内へ押し戻し可能に、かつ前記作動部材30の下降ストロークより小さいストロークでのピストン部材20のさらなる摺動で、作動部材30とピストン部材20とが離間して前記吐出路が開口することにより前記ポンプ室内の内容物が吐出路を介して吐出可能に設け、
前記シリンダ部材10に対するピストン部材20と作動部材30との上記と反対方向への摺動により、前記作動部材30が前記シール部15より上方へ上昇することで容器体の内容物を前記シリンダ部材内へ吸引可能に設けた
ことを特徴とする吐出容器。
【請求項2】
前記作動部材30は下面開口の液流入筒31の頂壁から連結杆31aを起立させ、該連結杆下部を前記ピストン部材20の内周へ離脱可能に嵌合させ、かつ前記液流入筒31下部をピストン部材20の摺動時に前記シール部15内周へ摺接可能に設けた
ことを特徴とする請求項1記載の吐出容器。
【請求項3】
前記シリンダ部材10は、周壁11が小内径部と該小内径部より上方に位置する大内径部13とに形成され、該大内径部を前記ポンプ室該当部に形成すると共に、小内径部を前記容器体口頸部内へ嵌合させて前記連通室該当部に形成し、前記シール部15を前記大内径部と小内径部との境界に位置する上向き段部12内周で構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の吐出容器。
【請求項4】
前記容器体を前記シリンダ部材に対して着脱自在に形成することで、前記容器体を交換可能に設けたことを特徴とする請求項1、2又は3いずれか1項記載の吐出容器。
【請求項5】
前記シリンダ部材10の上部外面へノズルヘッド連結用の連結筒40下部を嵌合させると共に、該連結筒の上部内から垂下する接続筒46へ前記作動部材30上部を嵌合させ、さらに前記連結筒40外面へ嵌合させた把持筒50内へ前記容器体を摺動自在に嵌挿させたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5いずれか1項記載の吐出容器。
【請求項6】
前記容器体の底部を押釦筒4で構成して、該押釦筒を介して容器体を上方へ押すことで吐出可能に設けたことを特徴とする請求項5記載の吐出容器。
【請求項7】
前記ノズルヘッド60の上端部を塗布部62に構成したことを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載の吐出容器。





























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−235201(P2010−235201A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88476(P2009−88476)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】