説明

含フッ素界面活性剤含有水の浄化方法

【課題】本発明は、極めて効率よくPFOA等の含フッ素界面活性剤を除去することができる処理方法を提供する。
【解決手段】本発明は、含フッ素界面活性剤を含む処理対象水をポリテトラフルオロエチレン多孔体もしくはポリテトラフルオロエチレン粉末と接触させる工程、及び、含フッ素界面活性剤が除去された浄化水を得る工程を含むことを特徴とする浄化方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素界面活性剤を含有する水を浄化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等の含フッ素界面活性剤は、フルオロポリマーの製造工程等において界面活性剤として使用されている。
【0003】
最近の研究結果(EPAレポート“PRELIMINARY RISK ASSESSMENT OF THE DEVELOPMENTAL TOXICITY ASSOCIATED WITH EXPOSURE TO PERFLUOROOCTANOIC ACID AND ITS SALTS”(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoara.pdf))などから、PFOAに対する環境への負荷の懸念が明らかとなってきており、2003年4月14日EPA(米国環境保護局)がPFOAに対する科学的調査を強化すると発表した。
【0004】
フルオロポリマーの製造工程において使用された界面活性剤をフルオロポリマーから分離する方法は公知である。
【0005】
特許文献1では、含フッ素界面活性剤を含む水溶液を逆浸透膜を用いる濾過処理工程に付して、水溶液から含フッ素界面活性剤が濃縮された水溶液を得ることによって含フッ素界面活性剤を回収する方法が提案された。
【0006】
特許文献2では、含フッ素界面活性剤を含む含フッ素重合体粒子の水性分散液を精密濾過膜に送液し、水性分散液から界面活性剤を含む水性媒体を除く含フッ素重合体水性分散液の濃縮方法が提案された。
【0007】
特許文献3では、濃縮された弗素化重合体分散物並びに、弗素含有乳化剤を含有するコロイド状の弗素化重合体分散物を安定化乳化剤の添加下に限外濾過により濃縮することが提案された。
【0008】
特許文献3では、更に、限外濾過膜から出る、弗素含有乳化剤および安定化乳化剤を含有する水性透過液を、塩基性アニオン系交換器に案内し、そこで弗素含有乳化剤を捕え、そして流出する水性濾液から分離することが提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−58966号公報
【特許文献2】国際公開第98/36017号パンフレット
【特許文献3】特開昭55−120630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、アニオン系交換体等のイオン交換樹脂を使用して含フッ素界面活性剤を水から分離する方法は経済性に劣り、特に工場からの排水や河川の水等の低濃度の含フッ素界面活性剤含有水を浄化する方法としては生産性の面からも実用的でない。
【0011】
そこで、本発明は、上記現状に鑑み、極めて効率よくPFOA等の含フッ素界面活性剤を除去することができる処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するための手段を鋭意検討した結果、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粉体又は多孔体に含フッ素界面活性剤を含む処理対象水を接触させることによって、処理対象水から高効率で含フッ素界面活性剤を除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明者らが行った実験結果によれば、含フッ素界面活性剤を含む処理対象水がPTFE粉末又はPTFE多孔体と接触すると、含フッ素界面活性剤が何らかの相互作用によって粉末又は多孔体に吸着されるようである。
【0014】
すなわち、本発明は、含フッ素界面活性剤を含む処理対象水をPTFE多孔体と接触させる工程、及び、含フッ素界面活性剤が除去された浄化水を得る工程を含むことを特徴とする浄化方法である。
【0015】
本発明は、含フッ素界面活性剤を含む処理対象水をPTFE粉末と接触させる工程、及び、含フッ素界面活性剤が除去された浄化水を得る工程を含むことを特徴とする浄化方法でもある。
【0016】
含フッ素界面活性剤は、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロオクタン酸塩、パーフルオロオクタンスルホン酸、及び、パーフルオロオクタンスルホン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
処理対象水は、含フッ素界面活性剤を30〜1000ppb含有することが好ましい。
【0018】
処理対象水に電解質を添加する工程を含むことが好ましい。
【0019】
電解質は、硫酸イオン、塩化物イオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン及びカリウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種のイオンを生じる電解質であることが好ましい。
【0020】
処理対象水は、電気伝導度が0.1〜1.0S/mであることが好ましい。
【0021】
浄化水の含フッ素界面活性剤の濃度は、処理対象水の含フッ素界面活性剤の濃度の70%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の浄化方法は、上述の構成よりなるので、含フッ素界面活性剤を含む処理対象水から含フッ素界面活性剤が除去された浄化水を極めて高効率で得ることができる。本発明の浄化方法は、非常に簡単な工程のみで浄化できるので、コスト面でも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、含フッ素界面活性剤を含む処理対象水をPTFE粉末と接触させる工程、及び、含フッ素界面活性剤が除去された浄化水を得る工程を含むことを特徴とする浄化方法である。
【0024】
PTFE粉末は、いわゆるモールディングパウダーであってもよいし、ファインパウダーであってもよい。含フッ素界面活性剤の高い除去効率が達成できることから、平均粒子径が0.1〜1.0μmのPTFE粉末であることが好ましい。平均粒子径は、濁度計を用いて測定した値である。
PTFE粉末の融点は、例えば、310〜350℃であることが好ましい。融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
PTFE粉末のSSG(標準比重)は、2.155〜2.185であることが好ましい。SSGは、ASTM D 4895に準拠して測定したものである。
【0025】
処理対象水とPTFE粉末との接触は、生産性と除去効率を考慮すると、PTFE粉末を充填したカラムに処理対象水を流通させる連続式の接触が好ましい。また、連続式の接触で複数回処理してもよい。なお、連続式の接触における充填カラムは、移動層式、固定層式、又は、流動層式のいずれであってもよい。処理対象水とPTFE粉末との接触は、加圧下、好ましくは大気圧を超える圧力下に接触させることが好ましい。
【0026】
本発明は、含フッ素界面活性剤を含む処理対象水をPTFE多孔体と接触させる工程、及び、含フッ素界面活性剤が除去された浄化水を得る工程を含むことを特徴とする浄化方法でもある。処理対象水とPTFE多孔体との接触は、加圧下、好ましくは大気圧を超える圧力下に接触させることが好ましい。
【0027】
上記多孔体としては、空孔率が75体積%以上であるものが好適に利用できる。また、孔径が0.1〜1.0μmのものが好適に使用できる。孔径が小さすぎると生産性に劣るので好ましくない。上記多孔体は、フィブリル化したPTFE粉体を液体に分散し、一定の厚さに抄紙した後、乾燥、焼結して製造したPTFEペーパーであってもよいし、PTFEを押出又はカレンダー成形して予備成形品を作製し、これを延伸した後高温で熱処理して製造した延伸PTFEであってもよい。ここで空孔率とは、多孔体の体積(空孔部の体積を含む)に対する空孔部の体積の比率を表す。孔径は、例えば、ポロシメーター法や、JIS K 3832に準じたバブルポイント法を用いて測定することができる。
【0028】
PTFE粉末又はPTFE多孔体と接触させる工程は、複数回繰り返してもよい。複数回繰り返すことによって、所望の含フッ素界面活性剤濃度の浄化水を得ることができ、実質的に含フッ素界面活性剤を含まない浄化水を得ることも可能である。
【0029】
上記PTFE粉末又はPTFE多孔体を構成するPTFEは、非溶融加工性のポリマーであれば、変性モノマー単位を含む変性PTFEであってもよい。
【0030】
含フッ素界面活性剤は、フッ素原子を有する界面活性を示す化合物であれば特に限定されないが、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロオクタン酸塩、パーフルオロオクタンスルホン酸、及び、パーフルオロオクタンスルホン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。パーフルオロオクタン酸塩及びパーフルオロオクタンスルホン酸塩は、アンモニウム塩であってもよいし、アルカリ金属塩であってもよい。
【0031】
処理対象水は、特に限定されないが、上記含フッ素界面活性剤を含む水溶液であって、フルオロポリマーの製造工程において使用された水溶液であってもよいし、同製造工程で生じた排水であってもよい。または、一般の水道水、自然環境水であってもよい。また、固形分を含んでいても良いが、多量に固形分を含むことにより除去効率への影響が懸念される場合は、接触させる工程の前に濾過等の固形分を除去する工程を含むことが好ましい。
【0032】
処理対象水は、含フッ素界面活性剤を30〜1000ppb含有するものであることが好ましい。処理対象水の含フッ素界面活性剤濃度(含有量)が1000ppbを超えると経済的に不利であり、30ppb未満であると除去効率が低下する。含フッ素界面活性剤濃度の上限は、500ppbであることがより好ましく、400ppbであることが更に好ましい。なお、本明細書中で「ppm」及び「ppb」は質量基準である。
【0033】
本明細書において、含フッ素界面活性剤濃度は、Waters Corporation社製液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)を使用して測定する値である。
・HPLCシステム本体:2695セパレーションモジュール
・移動相溶媒:アセトニトリル45vol%/0.15%酢酸水溶液55vol%
・HPLCカラム:Atlantis dC18 3μm 2.1×30mm
・タンデム四重極型質量分析計:Quattro micro API
【0034】
本発明の浄化方法は、含フッ素界面活性剤を含む処理対象水に電解質を添加する工程を含むことが好ましい。処理対象水に電解質を添加し、PTFE粉末又はPTFE多孔体と接触させることによって、含フッ素界面活性剤の除去効率が格段に向上する。
【0035】
上記電解質は、硫酸イオン、塩化物イオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン及びカリウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種のイオンを生じる電解質であることが好ましい。上記電解質は、1種又は2種以上を用いることができる。
上記電解質としては、例えば、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0036】
処理対象水は、全てのイオン種の合計量が500〜10000ppmであることが好ましい。イオン量は、JIS K 0102:2008に準拠して測定することができる。全てのイオン種の合計量の下限は、750ppmであることがより好ましい。
【0037】
処理対象水は、電気伝導度が0.1〜1.0S/mであることが好ましい。電気伝導度が低すぎると含フッ素界面活性剤の除去効率が低下する傾向がある。電気伝導度は、市販の導電率計、例えば株式会社堀場製作所の導電率計Twin Cond B−173によって、25℃で測定することができる。
【0038】
処理対象水は、含フッ素ポリマーの含有量が1重量%以下であることが好ましい。含フッ素ポリマーを含むと、含フッ素界面活性剤が充分に除去できないおそれがある。処理対象水は、ノニオンの含有量が1重量%以下であることが好ましい。ノニオンを含むと、含フッ素界面活性剤が充分に除去できないおそれがある。
【0039】
本発明の浄化方法は、処理対象水の含フッ素界面活性剤の濃度(ppb)の70%以下である浄化水を得る工程を含むことが好ましい。この工程は、粉末を沈殿、ろ過等により分離して浄化水を回収する操作を含んでもよい。浄化水の含フッ素界面活性剤の濃度は、処理対象水の含フッ素界面活性剤の濃度の70%以下であることが好ましい。より好ましくは60%以下であり、更に好ましくは40%以下である。
なお、本明細書において「処理対象水の含フッ素界面活性剤の濃度」は、処理対象水をPTFE多孔体又はPTFE粉末と接触させる前の処理対象水の含フッ素界面活性剤の濃度である。
【0040】
本発明の浄化方法は、含フッ素界面活性剤を3.0ppb以下含有する浄化水を得ることも可能である。また、0.4ppb以下含有する浄化水を得る工程であることが、米国環境保護局が推奨する基準値をも満たすことができる点で更に好ましい。
【0041】
なお、本発明の浄化方法は、処理対象水の体積と、処理対象水を浄化して得られる浄化水の体積に実質的な変化はない。含フッ素ポリマー分散体を濃縮して含フッ素ポリマーの濃縮液とろ液とを得る濃縮方法とは異なる。
【0042】
本発明の処理方法は、工場排水の処理・浄化等に好適に利用可能である。
【実施例】
【0043】
次に本発明を、実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
本明細書においては以下の測定方法を採用した。
【0045】
1.パーフルオロオクタン酸〔PFOA〕濃度の測定
Waters Corporation社製液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)を使用して測定した。
・HPLCシステム本体:2695セパレーションモジュール
・移動相溶媒:アセトニトリル45vol%/0.15%酢酸水溶液55vol%
・HPLCカラム:Atlantis dC18 3μm 2.1×30mm
・タンデム四重極型質量分析計:Quattro micro API
【0046】
2.イオン濃度の測定
硫酸イオン、塩化物イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンの濃度は、イオンクロマトグラフ法を適用して、JIS K 0102:2008に準拠して測定した。
【0047】
3.電気伝導度の測定
電気伝導度は、株式会社堀場製作所の導電率計Twin Cond B−173、によって、25℃に調節した恒温室内で測定した。
【0048】
実施例1
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)を溶解させ、PFOA濃度が195ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13JP020AN、フィルターの材質:PTFE、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は157ppbであった。
【0049】
比較例1
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)を溶解させ、PFOA濃度が195ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13CP020AN、フィルターの材質:酢酸セルロース、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は195ppbであった。
【0050】
実施例2
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)及び硫酸ナトリウムを溶解させ、PFOA濃度が190ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13JP020AN、フィルターの材質:PTFE、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は101ppbであった。
【0051】
比較例2
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)及び硫酸ナトリウムを溶解させ、PFOA濃度が190ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13CP020AN、フィルターの材質:酢酸セルロース、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は190ppbであった。
【0052】
実施例3
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)及び硫酸ナトリウムを溶解させ、PFOA濃度が212ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13JP020AN、フィルターの材質:PTFE、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は22ppbであった。
【0053】
比較例3
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)及び硫酸ナトリウムを溶解させ、PFOA濃度が212ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13CP020AN、フィルターの材質:酢酸セルロース、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は212ppbであった。
【0054】
実施例4
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)及び硫酸ナトリウムを溶解させ、PFOA濃度が927ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13JP020AN、フィルターの材質:PTFE、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は650ppbであった。
【0055】
比較例4
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)及び硫酸ナトリウムを溶解させ、PFOA濃度が927ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13CP020AN、フィルターの材質:酢酸セルロース、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は927ppbであった。
【0056】
実施例5
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)及び塩化ナトリウムを溶解させ、PFOA濃度が183ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13JP020AN、フィルターの材質:PTFE、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は86ppbであった。
【0057】
比較例5
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)及び塩化ナトリウムを溶解させ、PFOA濃度が183ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13CP020AN、フィルターの材質:酢酸セルロース、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は183ppbであった。
【0058】
実施例6
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)及び塩化カリウムを溶解させ、PFOA濃度が169ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13JP020AN、フィルターの材質:PTFE、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は96ppbであった。
【0059】
比較例6
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)及び塩化カリウムを溶解させ、PFOA濃度が169ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13CP020AN、フィルターの材質:酢酸セルロース、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は169ppbであった。
【0060】
実施例7
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)及び塩化カルシウムを溶解させ、PFOA濃度が141ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13JP020AN、フィルターの材質:PTFE、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は45ppbであった。
【0061】
比較例7
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)及び塩化カルシウムを溶解させ、PFOA濃度が141ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13CP020AN、フィルターの材質:酢酸セルロース、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は141ppbであった。
【0062】
実施例8
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化カリウムを溶解させ、PFOA濃度が381ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13JP020AN、フィルターの材質:PTFE、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は19ppbであった。
【0063】
比較例8
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化カリウムを溶解させ、PFOA濃度が381ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13CP020AN、フィルターの材質:酢酸セルロース、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は381ppbであった。
【0064】
実施例9−1
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化カリウムを溶解させ、PFOA濃度が268ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13JP020AN、フィルターの材質:PTFE、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水6.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は96ppbであった。
【0065】
実施例9−2
実施例9−1で得られた水溶液4.0mlを更に新規のメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13JP020AN、フィルターの材質:PTFE、孔径:0.2μm)に通過させて水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は31ppbであった。
【0066】
実施例9−3
実施例9−2で得られた水溶液2.0mlを更に新規のメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13JP020AN、フィルターの材質:PTFE、孔径:0.2μm)に通過させて水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は3ppbであった。
【0067】
実施例10
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化カリウムを溶解させ、PFOA濃度が225ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器の中にPTFEファインパウダー1.00gを詰め、該注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13CP020AN、フィルターの材質:酢酸セルロース、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は71ppbであった。
なお、用いたPTFEファインパウダーの平均粒子径は、0.279μmであり、濁度計(型番:SEP−PT−706D、三菱化学株式会社製)を用いて測定した。また融点は、338.5℃であり、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。SSGは、2.175であり、ASTM D 4895に準拠して測定したものである。
【0068】
比較例9
純水にPFOA(Aldrich社製、純度96%品)、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化カリウムを溶解させ、PFOA濃度が225ppbのPFOA含有水を得た。ピストン及び注射筒を備える注射器にメンブレンフィルター(ADVANTEC製ディスミック−13CP020AN、フィルターの材質:酢酸セルロース、孔径:0.2μm)を接続し、PFOA含有水2.0mlを注射筒に投入し、ピストンを押してPFOA含有水をメンブレンフィルターに通過させ、水溶液を得た。得られた水溶液に含まれるPFOAの含有量は225ppbであった。
下記表1に実施例1〜10及び比較例1〜9の結果についてまとめる。なお、イオンの濃度は、処理対象水のイオン濃度である。また、電気伝導度は、処理対象水の電気伝導度である。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例及び比較例から、酢酸セルロースを用いたフィルターではPFOA濃度が低減しないのに対して、PTFEを用いたフィルターではPFOA濃度を低減し、PFOAを含有する処理対象水を浄化できることを確認した。また、電解質が添加され、イオンを含む処理対象水では、より浄化の効果が高まることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の浄化方法は、工場排水の処理・浄化等に好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素界面活性剤を含む処理対象水をポリテトラフルオロエチレン多孔体と接触させる工程、及び、
含フッ素界面活性剤が除去された浄化水を得る工程
を含むことを特徴とする浄化方法。
【請求項2】
含フッ素界面活性剤を含む処理対象水をポリテトラフルオロエチレン粉末と接触させる工程、及び、
含フッ素界面活性剤が除去された浄化水を得る工程
を含むことを特徴とする浄化方法。
【請求項3】
含フッ素界面活性剤は、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロオクタン酸塩、パーフルオロオクタンスルホン酸、及び、パーフルオロオクタンスルホン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の浄化方法。
【請求項4】
処理対象水は、含フッ素界面活性剤を30〜1000ppb含有する請求項1、2又は3記載の浄化方法。
【請求項5】
処理対象水に電解質を添加する工程を含む請求項1、2、3又は4記載の浄化方法。
【請求項6】
電解質は、硫酸イオン、塩化物イオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン及びカリウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種のイオンを生じる電解質である請求項5記載の浄化方法。
【請求項7】
処理対象水は、電気伝導度が0.1〜1.0S/mである請求項1、2、3、4、5又は6記載の浄化方法。
【請求項8】
浄化水の含フッ素界面活性剤の濃度は、処理対象水の含フッ素界面活性剤の濃度の70%以下である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の浄化方法。