説明

含浸用シート及びそれを用いたウェットシート製品

【課題】 含浸用シートの使用量を大幅に減らすために、含浸用シートにバクテリアセルロースを利用して含浸倍率を高めることができ、また、バインダーを用いないで銀抗菌剤を固定できる含浸用シート及びそれを用いたウェットシート製品を提供する。
【解決手段】 不織布又は紙の各繊維にバクテリアセルロースが交絡していると共に、該繊維間の間隙に網目状構造を形成していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含浸倍率が高い含浸用シート及びそれを用いたウェットシート製品に関する。更に詳しくは、ウェットティッシュ類で6〜10倍の含浸倍率であり、パックシート類で10〜30倍の含浸倍率である含浸用シート、及び、それを用いたウェットシート製品に関する。
【背景技術】
【0002】
日本における紙の消費量は年々数%で確実に増加しており、また国際的・長期的にみても、人口の多い中国、インド等で紙の消費量が多くなることは確実なので、世界の紙の消費量は今後ますます増加し続けるといわれている。
そのために、紙の消費量の多い国では古紙の再生利用が積極的に行われているが、本発明者は世界的な規模でのこの増加に対して、紙の消費量を少しでも減らす製品の開発が必要であるとの思いから、本発明の含浸用シートの開発を試みた。
【0003】
ウェットシート製品は、使用する液体の含浸倍率の相違から、ウェットティッシュ類とパックシート類に大別することができる。
ウェットティッシュ類には、用途別にウェットティッシュ、クレンジングシート、化粧水シート等があり、セルロース系の不織布又は紙に化粧料液又はクレンジング液を含浸している。その不織布又は紙の目付は40〜80g/m2であり、不織布等に液体を含浸できる量は、80〜400g/m2であるので含浸倍率が2〜5倍である。
【0004】
含浸倍率は不織布等に液体を含浸した後の重量を、含浸する前の不織布等の重量で割った値である。その含浸倍率に関して、ウェットティッシュの実施例として、不織布100重量部に水性エマルジョンを150〜250重量部含浸することができ、その含浸倍率が1.5〜2.5倍であることが知られている(特許文献1参照)。また、パルプを30%以上含有する不織布に液体を含浸させて、含浸倍率が2〜5倍であることが知られている(特許文献2参照)。
このように従来の不織布等に液体を含浸できる含浸倍率は5倍が限度であり、含浸倍率をそれ以上に高めることはできなかった。
【0005】
パックシート類には、フェィスマスクとパックシートがあり、目付40〜80 g/m2のセルロース系不織布に粘度を有するパック液を含浸させるので、含浸倍率は6〜8倍である。その含浸倍率に関して、フェィスマスクにおいてはパック液の含浸倍率が7倍である(特許文献3参照)。このように従来のセルロース系不織布にパック液を含浸できる含浸倍率は8倍が限度であり、含浸倍率をそれ以上に高めることはできなかった。
【0006】
上記したように、ウェットティッシュ類の不織布又は紙は、80g/m2の目付に対して400g/m2の液を含浸できるので含浸倍率が5倍であるが、例えばクレンジングシートの40g/m2の目付に対して、400g/m2のクレンジング液が含浸できれば含浸倍率が10倍となり、肌の汚れを落とすのに必要な400g/m2のクレンジング液を確保しながら、クレンジングシートの使用量を半分に減らすことができる。
従って、従来の含浸用シートの使用目的に応じた含浸倍率を高めることができるならば、含浸用シートの使用量を大幅に減らすことが可能となる。
【0007】
ところで、酢酸菌が生産するバクテリアセルロースは食品素材「ナタデココ」として知られており、酢酸菌により生合成されたセルロース鎖は酢酸菌の細胞表層に一直線状に並んでいる粒子群から排出されると考えられており、この排出されたセルロースのサブエレメンタリーフィブリルは、水素結合により集合して幅が7.5〜10nmのミクロフィブリルとなり、さらにミクロフィブリルが集合して、リボン状のセルロース繊維(セルロースリボン)を形成して、それぞれの菌体がセルロースリボンを排出しながら自由に動くことによって、バクテリアセルロースは緻密な網目状構造となり、生成膜を希アルカリで除タンパク、水洗後、水分量が約99.5%のゲル状形態になることが知られている(非特許文献1参照)。
【0008】
このバクテリアセルロースを紙に用いることが提案されている。例えば、紙力増強効果を保持し且つ抄紙工程における濾水性を改良し、抄紙性を向上させるために、クラフトパルプとバクテリアセルロースの離解物又は未離解物を混合して紙を抄造することが知られており(特許文献4参照)、また引張強度及び透明度を向上させるために、原料パルプ中にバクテリアセルロースを混合して得られた包装用紙が知られている(特許文献5参照)
【0009】
パルプ中にバクテリアセルロースを混合する上記従来技術は、紙力増強、引張強度及び透明度等を向上させるものであり、シート類に吸水機能を向上させるためにバクテリアセルロースを利用することは知られていない。
そこで、本発明者はバクテリアセルロースの幅が7.5〜10nmという細い繊維で網目状構造からなることから、含浸用シート中にバクテリアセルロースを含有させれば、含浸倍率を高めることができるとの知見に基づき新たな含浸用シートの開発を試みた。
【0010】
そこで、本発明者はバクテリアセルロースの含水ゲルを乾燥体として、該乾燥体を0.2〜0.5mmに切断して水を注いでホモミキサーにかけ、その後マイクロフルイタイザー等により高度の剪断力を与えることにより、離解状態にすることでバクテリアセルロースをスラリーとして、それを不織布等に塗布して乾燥させ、得られた不織布の含浸倍率の測定を行った。しかし、その測定結果は高い含浸倍率を得られるものではなかった。その原因として、離解状態のバクテリアセルロースが乾燥により網目状構造が凝縮して吸水機能を消失するためと推測される。
【0011】
また、含浸用シートは、含浸液(水を含む溶液又は乳化液)を不織布又は紙に含浸するので、細菌やカビの増殖を防止するために含浸液に必ず抗菌剤が配合されている。抗菌剤としては薬事法で使用が認められているパラベン類が使用されているが、パラベン類は内分泌かく乱作用を持つ可能性があることが指摘されていることから、それに代わる抗菌剤が熱望されている。銀抗菌剤は安全で環境に優しいとされているが、銀ゼオライト系、銀ガラス系の何れも10μm以下の微粒子であるので、バインダーで繊維に固定しないと適用できないために、その施工の手間及びコストがかかり実施化されていないのが現状である。
【0012】
【特許文献1】特開2006-345997号公報
【特許文献2】特開2005-287710号公報
【特許文献3】特開2002-142861号公報
【特許文献4】特開平07-118303号公報
【特許文献5】特開平09-195193号公報
【非特許文献1】「セルロースの辞典」、42〜43頁、セルロース学会編集、朝倉書店、2000年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の含浸用シートの含浸倍率は、ウェットティッシュ類で2〜5倍、パックシート類で6〜8倍であり、従来の含浸用シートではそれ以上の含浸倍率を得ることはできない。そこで、バクテリアセルロースの網目状構造を利用して含浸倍率を高めることを試みたが、離解状態のバクテリアセルロースが乾燥により網目状構造が凝縮して吸水機能を消失するために、含浸倍率を高めることができない。
また、抗菌剤としてのパラベン類に代わるものとして、安全で環境に優しい銀抗菌剤の使用が考えられるが、その微粒子の粒径が10μm以下であるためにバインダーでの固定が不可欠なために、その施工の手間及びコストがかかるという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、かかる問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、含浸用シートの使用量を大幅に減らすために、含浸用シートにバクテリアセルロースを利用して含浸倍率を高めることができ、また、バインダーを用いないで銀抗菌剤を固定できる含浸用シート及びそれを用いたウェットシート製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を解決するために、請求項1に係る含浸用シートは、含浸倍率が高い含浸用シートであって、不織布又は紙の各繊維にバクテリアセルロースが交絡していると共に、該繊維間の間隙に網目状構造を形成していることを特徴とする。
同様に、請求項2に係る含浸用シートは、前記バクテリアセルロースがアセトバクターキシリナム菌により産生されたものであることを特徴とする。
請求項3に係る含浸用シートは、前記含浸用シートがウェットティッシュ類又はパックシート類であることを特徴とする。
請求項4に係る含浸用シートは、前記ウェットティッシュ類の含浸倍率が6〜10倍、前記パックシート類の含浸倍率が10〜30倍であることを特徴とする。
請求項5に係る含浸用シートは、前記バクテリアセルロースの網目状構造中に銀抗菌剤が担持されていることを特徴とする。
請求項6に係る含浸用シートは、前記銀抗菌剤が銀ゼオライト系又は銀ガラス系であることを特徴とする。
請求項7に係るウェットシート製品は、含浸倍率が高い含浸用シートに液体が含浸されたウェットシート製品であって、不織布又は紙の各繊維にバクテリアセルロースが交絡していると共に、該繊維間の間隙に網目状構造を形成している含浸用シートに、化粧液、皮膚外液、抗菌剤配合液、洗浄液より選ばれた液体が含浸されてなることを特徴とする。
請求項8に係るウェットシート製品は、前記含浸用シートがウェットティッシュ類又はパックシート類であることを特徴とする請。
請求項9に係るウェットシート製品は、構造中に銀抗菌剤が担持されていることを特徴とする。
請求項10に係るウェットシート製品は、前記銀抗菌剤が銀ゼオライト系又は銀ガラス系であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の含浸用シートは、ウェットティッシュ類で液体の含浸倍率が6〜10倍、フェィスマスク類で液体の含浸倍率が10〜30倍であるので、従来から使用している含浸量と同量の場合には、含浸用シートの目付を1/2〜1/3に低減することができるので、含浸用シートの使用量を大幅に減らすことができるという効果を奏する。
また、本発明の含浸用シートは柔軟で嵩高性を備えているので、肌の汚れやメイク落としをする際に、肌を痛める虞はなく、また汚れ、化粧料をスムーズに取り除くという効果もある。
更に、本発明の含浸用シートは、10μm以下の微粒子である銀抗菌剤を担持できるので、内分泌かく乱作用を持つ可能性があるパラベン類に代えて、銀抗菌剤を担持できるという効果も奏する。
【0017】
本発明のウェットシート製品は、吸収倍率が高いにも拘わらず、含浸したウェットシート製品を使用している最中に液体が垂れることはなく、取り扱う上で問題がない。
本発明の含浸用シートは、優れた吸液性と、潰れ難い嵩高性の特徴は、化粧用コットンシート、化粧用ティッシュ、ウェットティシュにも用いることができる。
本発明のウェットティシュは、皮膚を拭くのに用いることで、人やペットの臭気を迅速に除去すると共に臭気の発生を防止する効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に用いるバクテリアセルロースを産生する培養液に植菌する菌株には、アセトバクター(Acetobacter)属、リゾビウム(Rhizobium)属、アグロバクター(Agrobacterim)属、サリナ(Sarina)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属が挙げられるが、アセトバクター(Acetobacter)属のアセトバクターキシリナム菌(Acetobacter Xylinum)が好ましい。
【0019】
酢酸によりpH3〜5に調整したココナッツ水にスクロース8〜20重量%を溶解した培地に、上記アセトバクターキシリナム菌の菌株を3〜8重量%植菌して、28〜30℃に保つと液面にバクテリアセルロースによる含水ゲルが生成する。生成した含水ゲルを水洗いして、95〜100℃で20〜30分の熱処理による殺菌処理をする。次いで、殺菌処理された含水ゾルを0.1重量%の水酸化ナトリウム水溶液で80℃、30分間、加熱処理を施してアセトバクターキシリナム菌を溶出除去して、バクテリアセルロースの含水ゲルを水洗し熱風又は凍結乾燥により乾燥体とする。該乾燥体を0.2〜0.5mmに切断して水を注いでホモミキサーにかけて、次いでマントンガウリン又はマイクロフルイタイザーにより高度の剪断力を与える。かかる離解処理でスラリーとすることができる。
【0020】
該スラリーを乾燥しても含水ゲルの再現性を有するものとするには、前記スラリーに凝集防止剤をナノセルロース量基準で好ましくは1〜5重量%を添加する。凝集防止剤を添加したスラリーを「離解物スラリー」という。不織布又は紙に該離解物スラリーを塗布又は含浸して乾燥して含浸用シートが得られる。この含浸用シートに化粧液、皮膚外用液、抗菌剤配合液、洗浄液を含浸して、ウェットティッシュ、クレンジングシート、化粧液シート、フェィスマスク、パックシートとすることができる。
【0021】
凝集防止剤としては、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリクオタニウム-51、ポリクオタニウム-64、コラーゲン加水分解物、高吸水性高分子CHC、1-3ブチレングリコール、グリセリン、コハク酸ジエトキシエチルを挙げることができる。
【0022】
銀抗菌剤は銀ゼオライト系と銀ガラス系があり、銀ゼオライト系はゼオライトのNaをAgでイオン交換したもので、製品としてはゼオミック(シナネンゼオミック株式会社製品)がある。銀ガラス系はゼオライトのAgを可溶性ガラスに包接したもので、製品としてはミリオンキラー(興亜硝子株式会社製品)、イオンピュアー(石塚ガラス株式会社製品)の2品目がある。他に銀・燐酸ジルコニウム、銀・アパタイトの製品もあるが、この製品は、銀イオンの放出量が10ppb以下で少ないので抗菌効果が弱いために、本発明の抗菌剤としては適さない。
【0023】
本発明では、銀イオンの放出量が10〜50ppbの銀ゼオライト系と銀ガラス系が安全性と抗菌効果の面から好ましく、含浸液の抗菌防かび効果による安全性を得ることができる。
一般的に、皮膚表面に皮膚常在菌が生息しており、この菌が汗や垢を食べる時に分解臭が、また40代以降から皮脂が酸化される時に酸化臭、いわゆる加齢臭が、身体の皮膚表面から放出されており、これらの放出された臭いが体臭として知られたものである。その体臭に対して、皮膚を本発明のウェットティシュにより拭くことで、人やペットの臭気を迅速に除去すると共に臭気の発生を防止する効果も得られる。
【0024】
本発明の含浸用シートは、前記の通り液垂れがなく高度に液体を含むことができる。更にウェブ間隙にバクテリアセルロースが交絡されることにより湿潤時にも形態安全性の高い嵩高性が得られる特徴がある。ウェットシート類やパックシート類の含浸用シートとして画期的な高含浸性と嵩高性を有する含浸用シートである。
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
(実施例1及び2)
酢酸0.5重量%、ショ糖10重量%をココナッツ水に配合したpH3.5の水溶液を培地としてアセトバクター・キシリナム5重量%を植菌して、温度29℃で50×50cmのトレーで3日間の静置培養により、厚さ20mmのバクテリアセルロースによる含水ゲル体を得た。該含水ゲル体中から酢酸が検出されなくなるまで水で洗浄し、0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて95℃で30分処理を行って殺菌・除菌処理を行った。除菌処理をした含水ゲル体を高圧マングルで脱水して100℃で乾燥して被膜状にした。
【0026】
乾燥した該被膜状を0.5mmに切断して、水を加えてホモミキサーにかけて次にマントンガウリンにより剪断力を与えてスラリーとした。該スラリーにコハク酸ジエトキシエチル0.4重量%、1-3ブチレングリコール0.6重量%を添加して80℃で1時間の処理により離解物を5重量%含有する離解物スラリーとした。該離解物スラリーをレーヨン不織布(目付60g/m2)の全表面に略均一に塗布して乾燥した。実施例1はバクテリアセルロース(BC)の含有量が2重量%であり、実施例2はバクテリアセルロース(BC)の含有量が6重量%である。精製水を含浸したウェットティッシュの実施例1及び2の結果を表1に示す。
【0027】
比較例1としてバクテリアセルロースを含有しないレーヨン不織布に精製水を含浸した結果を示す。含浸倍率の測定は、供試不織布を精製水に常温で1時間浸漬して引上げて過剰の水分をろ紙に挟み除いて重量を測定して次の如くして算出した。
含浸倍率=浸漬後の重量/浸漬前の重量
含浸した厚さと、50g/cm2の加圧下の厚さを測定して嵩高性に優れることを示した。実施例1の倍率1万倍の電子顕微鏡写真を図1に、実施例2の倍率1万倍の電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0028】
図1及び図2は、レーヨン不織布に離解物スラリーを塗布して乾燥して得られた含浸用シートの電子顕微鏡写真である。これらの写真から、幅が7.5〜10nmのバクテリアセルロースがレーヨン不織布の繊維に、交絡していると共に該繊維間の間隙に網目状構造を形成しているのは明らかである。
【0029】
図1はバクテリアセルロースの含有量が2重量%で、図2のバクテリアセルロースの含有量が6重量%であり、図1のバクテリアセルロースの含有量は、図2のそれと比べ含有量が少ないために、各繊維に交絡しているバクテリアセルロースが少なく、繊維間の間隙に形成された網目状構造も少ないことが分かる。
【0030】
【表1】

【0031】
(実施例3〜4)
フェィスマスクの実施例3〜4を説明する。
前記の方法によるバクテリアセルロースを乾燥した被膜状を0.5mmに切断して、水を加えてスラリーして、該スラリーにポリクオタニウム-64、0.5重量%、1-3ブチレングリコール0.3重量%を添加して80℃で1時間の処理により含水再現性を有するバクテリアセルロースの離解物を5重量%含有する離解物スラリーとした。
【0032】
該離解物スラリーをコットン不織布(目付45 g/m2)にパック液として、水86.0重量%、1,3 BG 10.0重量%、カルモボマー0.1重量%、キサンタンガム0.3重量%、エタノール2.0重量%、パラベン0.3重量%、界面活性剤0.3重量%、ヒアルロン酸Na 1%重量溶液を1.0重量%よりなる配合液を含浸した。
【0033】
実施例3はバクテリアセルロースの含有量が3重量%の含浸用シートであり、実施例4はその含有量が7重量%の含浸用シートである。そして、実施例3及び実施例4の含浸用シートにパック液を含浸したフェィスマスクの実施例を表2に示す。比較例2としてバクテリアセルロースを含有しないコットン不織布に該パック液を含浸した結果を示す。含浸倍率の測定は、供試不織布にパック液を常温で1時間浸漬して引上げて過剰の水分をドリップさせ重量を測定し次の如くして算出した。
含浸倍率=浸漬後の重量/浸漬前の重量
含浸した厚さと、50g/cm2の加圧下の厚さを測定して嵩高性に優れることを示した。
【0034】
【表2】

【0035】
(実施例5及び6)
前記実施例3のバクテリアセルロースの離解物を3重量%含有する離解物スラリーに、又は、前記実施例4のバクテリアセルロースの離解物を7重量%含有する離解物スラリーに、ゼオミックAJ10N(銀ゼオライト系抗菌剤、シナネンゼオミックス会社製品)を1重量%配合して攪拌した。該銀ガラス系抗菌剤含有の離解物スラリーをサンモアKP3160(パルプを主体とする紙、三昭紙業株式会社製品)に塗布して乾燥し、バクテリアセルロースを3重量%含有する含浸用シート又はバクテリアセルロースを7重量%含有する含浸用シートを生成した。実施例5は前記バクテリアセルロースの離解物を3重量%含有する含浸用シートを、実施例6は前記バクテリアセルロースの離解物を7重量%含有する含浸用シートを用いて、以下に述べる含浸液を含浸させて抗菌性の効果を検討した。
【0036】
前記実施例5の含浸用シートに、前記実施例3で説明したパック液配合からパラベンを除いたパック液を含浸倍率10倍として含浸させ、また前記実施例6の含浸用シートに、上記の同じパック液を含浸倍率30倍として含浸させた。
比較例3として、サンモアKP3160(パルプを主体とする紙、三昭紙業株式会社製品)の原紙に前記同じパック液を含浸倍率7倍に含浸させたものを用いた。
【0037】
これらの実施例5、実施例6及び比較例3の含浸用シートを、LIS Z-2801により抗菌性試験を行った。各実施例5、実施例6及び比較例3の上記条件でパック液が含浸された含浸シートに大腸菌(IFO 3972)を1.3×10個/ml植菌して、35℃で24時間培養した後に菌数を測定した。
菌数測定の結果は、比較例3では3.2×10個/mlの菌数に増殖していたが、実施例5及び6では菌は観察されずに消滅しており、含浸用シートが10μm以下の微粒子の銀ゼオライト系抗菌剤を担持していることが確認された。
【0038】
実施例5の倍率5千倍の電子顕微鏡写真を図3に示す。
この写真から、粒形状の銀ゼオライト系抗菌剤がバクテリアセルロースの網目状構造中に担持されていることが分かる。銀ゼオライト系抗菌剤の粒径は10μm以下であるが、バクテリアセルロースの幅が7.5〜10nmであることから、バクテリアセルロースが銀ゼオライト系抗菌剤を網目状構造中に担持していることが明確に分かる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1の電子顕微鏡写真。
【図2】実施例2の電子顕微鏡写真。
【図3】実施例5の電子顕微鏡写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸倍率が高い含浸用シートであって、
不織布又は紙の各繊維にバクテリアセルロースが交絡していると共に、該繊維間の間隙に網目状構造を形成していることを特徴とする含浸用シート。
【請求項2】
前記バクテリアセルロースがアセトバクターキシリナム菌により産生されたものであることを特徴とする請求項1に記載の含浸用シート。
【請求項3】
前記含浸用シートがウェットティッシュ類又はパックシート類であることを特徴とする請求項2に記載の含浸用シート。
【請求項4】
前記ウェットティッシュ類の含浸倍率が6〜10倍、前記パックシート類の含浸倍率が10〜30倍であることを特徴とする請求項3に記載の含浸用シート。
【請求項5】
前記バクテリアセルロースの網目状構造中に銀抗菌剤が担持されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の含浸用シート。
【請求項6】
前記銀抗菌剤が銀ゼオライト系又は銀ガラス系であることを特徴とする請求項5に記載の含浸用シート。
【請求項7】
含浸倍率が高い含浸用シートに液体が含浸されたウェットシート製品であって、
不織布又は紙の各繊維にバクテリアセルロースが交絡していると共に、該繊維間の間隙に網目状構造を形成している含浸用シートに、化粧液、皮膚外液、抗菌剤配合液、洗浄液より選ばれた液体が含浸されてなることを特徴とするウェットシート製品。
【請求項8】
前記含浸用シートがウェットティッシュ類又はパックシート類であることを特徴とする請求項7に記載のウェットシート製品。
【請求項9】
前記バクテリアセルロースの網目状構造中に銀抗菌剤が担持されていることを特徴とする請求項7に記載のウェットシート製品。
【請求項10】
前記銀抗菌剤が銀ゼオライト系又は銀ガラス系であることを特徴とする請求項9に記載のウェットシート製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−24274(P2009−24274A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187730(P2007−187730)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000212005)
【Fターム(参考)】