吸入器
【課題】吸入器において、噴霧方向の調整と噴霧液量の調整が簡単な操作で容易に行えるものとする。
【解決手段】吸入器1は、給水タンク11と、給水タンク11から引き込んだ水を沸騰させるヒータ12と、ヒータ12により沸騰して得られる水蒸気を噴出すると共に負圧を発生する噴出ノズル13と、薬液カップ14と、噴出ノズル13付近に配置され薬液カップ14の薬液を噴出ノズル13の発生する負圧で吸い上げると共にその薬液を霧状に噴霧する薬液ノズル15と、噴出ノズル13からの水蒸気及び薬液ノズル15からの噴霧液を口及び又は鼻へ導くアタッチメント2と、アタッチメント2の内部において水蒸気及び噴霧液を導く方向を切り替える切替板3と、薬液ノズル15から噴霧される薬液量を調整する薬液調整部4と、を備える。切替板3は、薬液調整部4の操作に連動してその状態が変化する。
【解決手段】吸入器1は、給水タンク11と、給水タンク11から引き込んだ水を沸騰させるヒータ12と、ヒータ12により沸騰して得られる水蒸気を噴出すると共に負圧を発生する噴出ノズル13と、薬液カップ14と、噴出ノズル13付近に配置され薬液カップ14の薬液を噴出ノズル13の発生する負圧で吸い上げると共にその薬液を霧状に噴霧する薬液ノズル15と、噴出ノズル13からの水蒸気及び薬液ノズル15からの噴霧液を口及び又は鼻へ導くアタッチメント2と、アタッチメント2の内部において水蒸気及び噴霧液を導く方向を切り替える切替板3と、薬液ノズル15から噴霧される薬液量を調整する薬液調整部4と、を備える。切替板3は、薬液調整部4の操作に連動してその状態が変化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の呼吸器系の炎症治療などの目的で薬液噴霧の吸入に用いる吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体の呼吸器系の炎症治療などのために薬液や水の噴霧を発生させてその噴霧を吸入することが行われている。吸入器は、このような噴霧を発生して吸入させる装置である。その一般的な装置構成は、ノズルから吹き出す噴出蒸気が発生する負圧で薬液や水を吸い上げると共に噴霧状にし、その噴霧をのどや鼻に導くという構成になっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−245202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような吸入器においては、噴霧液量の変更や、のどや鼻などの方向に噴霧方向を切り替える変更はできるが、これらの変更が互いに連動していないため、煩わしい調整操作が必要だった。
【0004】
本発明は、上記課題を解消するものであって、噴霧方向の調整と噴霧液量の調整が簡単な操作で容易に行える吸入器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、水を注ぎ込んで貯留する給水タンクと、前記給水タンクから引き込んだ水を沸騰させるヒータと、前記ヒータにより沸騰して得られる水蒸気を噴出すると共に負圧を発生する噴出ノズルと、薬液を貯留する薬液カップと、前記噴出ノズル付近に配置され前記薬液カップの薬液を前記噴出ノズルの発生する負圧で吸い上げると共にその薬液を霧状に噴霧する薬液ノズルと、前記噴出ノズルからの水蒸気及び前記薬液ノズルからの噴霧液を口及び又は鼻へ導くアタッチメントと、を備えた吸入器において、前記アタッチメントの内部において前記水蒸気及び噴霧液を導く方向を切り替える切替板と、前記薬液ノズルから噴霧される薬液量を調整する薬液調整部と、をさらに備え、前記切替板と前記薬液調整部とが連動して動作するものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の吸入器において、前記薬液調整部は、前記切替板を所定の方向に固定した状態で薬液量を調整できるものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の吸入器において、前記アタッチメントはその内部と外部の間で外気の流通を可能とする外気流通口を有し、前記外気流通口は前記薬液調整部の動作と連動してその開口量が調整されるものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の吸入器において、前記互いに連動する薬液調整部、切替板、及び外気流通口のそれぞれが取り得る所定の状態を互いに組み合わせて予め異なる組合せを複数設定して成る使用モードから所望の使用モードを選択するモード選択手段と、前記モード選択手段を用いて選択された使用モードの状態を自動的に実現する自動調整手段と、をさらに備えたものである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載の吸入器において、前記使用モードから選択された複数の使用モードを所定の時間間隔で順次繰り返えすように予め異なる組合せに複数設定して成る使用コースから所望の使用コースを選択するコース選択手段と、前記コース選択手段を用いて選択された使用コースを前記自動調整手段を動作させて実行するコース実行手段と、をさらに備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、連動して動作する切替板と薬液調整部とを備えるので、噴霧方向の調整と噴霧液量の調整が簡単な操作で容易に行える。通常、薬液量の調整により、噴霧粒径を切り替えることができるので、例えば、鼻やのどの用途に応じた噴霧粒径となるように薬液調整部を動作させると共に、これに連動して、用途に応じた噴霧方向と成るように切替板を連動動作させることができ、従来よりも吸入器の使い勝手が向上する。
【0011】
請求項2の発明によれば、例えば、切替板を鼻やのどのいずれか一方の方向に切り替えた状態で、噴霧粒径を切換える動作ができるので、吸入器の使用者が、自分の望む用途や症状に容易に合わせて吸入器を使用できる。
【0012】
請求項3の発明によれば、例えば、薬液量を制限した際に噴霧温度が高くなるのを自動的に防止できる。
【0013】
請求項4の発明によれば、使用者が、予め設定された使用モードから使用モードを選択することにより、所望のモードで吸入器を用いることができ、操作が容易である。
【0014】
請求項5の発明によれば、複数の使用モードを所定の時間間隔で順次切り替えながら繰り返すような使用に際して、煩雑なモード切替の操作や、切替のための中断などが不要であり、従来よりも吸入器の使い勝手が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る吸入器について、図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係る吸入器1を示し、図2は吸入器1のブロック構成を示し、図3(a)(b)は吸入器1の外観を示す。吸入器1は、水蒸気を生成してその水蒸気により薬液を噴霧するものである。吸入器1は、水を注ぎ込んで貯留する給水タンク11と、給水タンク11から引き込んだ水Wを沸騰させるヒータ12と、ヒータ12により沸騰して得られる水蒸気Vを蒸気道13aを経由して導いて噴出すると共に負圧を発生する噴出ノズル13と、薬液Pを貯留する薬液カップ14と、噴出ノズル13付近に配置され薬液カップ14の薬液Pを噴出ノズル13の発生する負圧で、吸上チューブ15aを介して吸い上げると共にその薬液Pを霧状に噴霧する薬液ノズル15と、噴出ノズル13からの水蒸気及び薬液ノズル15からの噴霧液を口及び又は鼻へ導くアタッチメント2と、を備えている。
【0016】
また、吸入器1は、アタッチメント2の内部において水蒸気及び噴霧液を導く方向を、例えば矢印aや矢印bの方向に切り替える切替板3と、薬液ノズル15から噴霧される薬液量を調整する薬液調整部4と、をさらに備えている。切替板3は、例えば、薬液調整部4の操作に連動してその状態が変化する。切替板3と薬液調整部4の状態は、使用用途に応じて切り替えられる。吸入器1の使用者は、切替つまみ41(図3(a)(b))を回転させることによって薬液調整部4を操作する。使用者は、図1における左上方からアタッチメント2に顔を接近させて、噴霧を口や鼻から吸入する。そこで、矢印aの方向が大略口(のど)の方向であり、矢印bの方向が大略鼻の方向になる。
【0017】
また、アタッチメント2は、その内部と外部の間で外気の流通を可能とする外気流通口21を有し、外気流通口21は、薬液調整部4の動作と連動して動作する開閉板22によって、その開口量が調整される。開口量の調整により、口や鼻に至る蒸気の温度が調整される。図1、図3(a)は、外気流通口21が閉じた状態を示し、図3(b)は、外気流通口21が全開の状態を示す。なお、図2において、白抜き矢印は液体や蒸気の移動を示し、黒矢印は薬液調整部4の動作結果が、矢印の到達先に及ぶこと、すなわち、薬液調整部4と矢印の到達先とが連動することを示す。
【0018】
図4、図5(a)(b)は、吸入器1のアタッチメント2と吸入器1の本体部分の上部カバー、及び薬液吸上チューブ15aを外した状態を示す。これらの図には、薬液調整部4の一部外観、及び薬液調整部4と切替板3を連動させるリンク機構30が示されている。図4、図5(a)においては、切替板3を矢印b1の方向に切り替えた結果、切替板3が起きた「鼻方向」の状態が示され、図5(b)においては、切替板3を矢印a1の方向に切り替えた結果、切替板3が寝た「のど方向」の状態が示されている。
【0019】
次に、図6(a)(b)、図7、図8を参照して、切替板3を切り替える機構を説明する。切替板3は、薬液調整部4の動作に連動してその向きが切り替えられて水蒸気や噴霧液を導く方向を切り替える。切替板3は、切替板回転軸31に固定されている。回転軸31は、吸入器1の本体部分の所定位置(不図示)に回転自在に固定されている。回転軸31は、リンク機構30によって、切替つまみ軸42に連結されている。切替つまみ軸42は、回転軸31に平行な回転軸を有する。リンク機構30は、切替つまみ軸42側から順番に、軸固定リンク33、連結ピン34、自由リンク35、連結ピン36、及び、軸固定リンク37を連結して構成されている。この例のリンク機構30は、クランクを構成している。
【0020】
上述の切替つまみ軸42は、薬液調整部4の一部であり、不図示の切替つまみ41を用いて回転される。つまみ41と切替つまみ軸42の回転は1対1であり、これらの回転角と切替板3の回転角とは、1対1ではなく、例えば、表1に示すような関係がある。このような関係は、例えば、リンク機構30の構成(例えば、クランクの構成)の仕方によって種々設定することができる。
【0021】
【表1】
【0022】
次に、図9〜図13を参照して、薬液調整部4の構造と動作を説明する。ここに示した図は、例えば、上述の図7、図8から、切替板3とリンク機構30を除いた部分を示している。以下では、主に、図12、図13に注目して説明する。薬液調整部4は、噴出ノズル13の発生する負圧によって吸上チューブ15aを介して吸い上げられる薬液Pの量を、ニードル弁の開閉によって調整するものである。このような薬液調整部4は、切替つまみ41、切替つまみ軸42、ニードル弁体43、ニードル弁座体44によって構成されている。
【0023】
ニードル弁座体44の先端には、薬液ノズル15が噴出ノズル13に近接して配置されている。噴出ノズル13は、ニードル弁座体44に、例えば、一体成形により形成して備えられている。なお、噴出ノズル13は、Oリング13bで封止されて係合部13cによって蒸気道13aに固定接続される(図1参照)。
【0024】
切替つまみ軸42には、上述したように、軸固定リンク33が設けられている。切替つまみ軸42は、ニードル弁座体44に対して、ニードル弁座体44と同軸状態で回転可能なように、切替つまみ軸42の係合鍔部42bとニードル弁座体44の係合鉤部44aとによって固定されている。
【0025】
ニードル弁体43は、外周に形成した螺旋リブ43aと回転防止突起43b、及び、先端ニードル部分43dの近傍に配置したOリング43cを備えている。回転防止突起43bは、ニードル弁座体44の内面に設けられた直線溝44bに嵌合して直線摺動する。螺旋リブ43aは、切替つまみ軸42の内面に設けられた螺旋溝42aに螺合して、切替つまみ軸42の回転運動を軸方向の直線運動に変換する。
【0026】
薬液供給開口15bが、ニードル弁座体44における薬液ノズル15の近傍に設けられている。薬液供給開口15bは、薬液吸上チューブ15aの上端からニードル弁空間に薬液Pを導入する。そこで、切替つまみ41を回転すると、ニードル弁が開閉され、薬液供給開口15bから薬液ノズル15に供給される薬液供給量が増減、調整される。図13に示される状態は、ニードル弁体43が左方限まで移動して薬液の供給が遮断された状態である。
【0027】
次に、上述のように構成された吸入器1の動作を、薬液調整部4に連動する切替板3と薬液調整部4の動作に関連して説明する。吸入器1において、噴出ノズル13から水蒸気が噴出されるとノズル先端部が負圧となり、薬液吸上チューブ15aで吸上げられた薬液が薬液ノズル15から噴出し、この薬液と水蒸気とが混合して噴霧液となる。このように、蒸気が発生する負圧によって薬液を噴霧化する場合、薬液と水蒸気の混合比率によって噴霧の粒径が変化する。通常、同じ蒸気量に対して薬液量が多いと噴霧の粒径が大きくなり、薬液量が少ないと噴霧の粒径が小さくなる。また、噴出ノズル13からの水蒸気が切替板3に当たる角度によっても噴霧の粒径が変化する。例えば、角度が浅いと粒径が大となり、角度が深いと、粒径が小となる。なお、噴霧の粒径が小さいほど、鼻やのどの奥の方まで噴霧が到達し易くなる。
【0028】
薬液調整部4の切替つまみ41の回転角に合わせて、リンク機構30(クランク機構)によって切替板3の回転角が変化し、同時に、螺旋リブ43aによってニードル弁体43の位置、すなわち、薬液供給量を調整する弁の絞り量、が連続的に変化する。これにより、切替つまみ41の回転角の3領域によって、表2に示すような3つの使用モードが実現される。
【0029】
【表2】
【0030】
表2は、吸入器1の使用モードと、各使用モードを実現する薬液調整部4の状態(切替つまみと薬液供給量の状態)、及び切替板3の状態を示す。表中の「切替つまみ」は、切替つまみ41の初期位置からの回転角を示す。切替つまみ41の位置が、0°から45°に変化した場合、切替板3の状態は「のど方向」から「鼻方向」に変化するが、噴霧粒径は「通常」のままで変化しない。切替つまみ41の位置が、45°から90°に変化した場合、切替板3の状態は、「鼻方向」のままで変化しないが、噴霧粒径が「通常」から「小径」に変化する。
【0031】
なお、切替つまみ41の位置が90゜の近傍において、噴霧の内容は、「薬液の噴霧を少なめに水蒸気に混合した状態、又は、蒸気だけ」の状態になる。また、噴霧粒径の代表的な寸法を挙げると、「のどモード」から「鼻モード」では、約15μmから約8μm、「鼻すっきりモード」では約4μmなどとなる。
【0032】
ところで、切替つまみ41と切替板3の回転角の関係、つまり、切替つまみ41と噴霧液を導く方向との関係は、上述したように、リンク機構30をどのように構成するかによって、ほぼ任意に設定することができる。そこで、上述した吸入器1の変形例として、例えば、切替つまみ41の切り替えによって、薬液の経路を遮断して水蒸気だけを噴霧することができる構造において、水蒸気や薬液の噴霧(噴霧液)を導く方向を切り替える切替板3の方向は変更せずに、薬液の経路だけを遮断して、水蒸気だけを噴霧するようにできる。
【0033】
上述の場合、例えば、噴霧液が「のど」方向に向かうように切替板3がある状態において、切替つまみ41を切り替えると、切替板3が「のどモード」の方向を維持したままの状態で薬液の経路を遮断し、水蒸気だけを噴霧する「のどすっきりモード」状態にすることができる。このように、「噴霧液を導く方向を、鼻やのどのいずれかの状態に固定した状態」で、「噴霧粒径を切換える」ということができる。
【0034】
上述のように、切替板3の各状態に対して、薬液調整部4の状態を複数設定可能とするには、機械式で行う場合、例えば、複数のリンク機構を切り替えるようにすればよい。例えば、切替つまみを押し込む操作によってこのリンク機構の切替を行うようにすれば、1つの切替つまみの操作で種々の使用モードを選択できる。すなわち、吸入器1において、薬液調整部4と切替板3とが連動したワンタッチ操作を実現でき、吸入器1の向上した操作性を実現できる。
【0035】
さらに、上述のように構成された吸入器1の動作を、外気流通口21の開口量に関連して説明する。吸入器1は、上述のように、薬液の経路を遮断して水蒸気だけを噴霧することができる。ところで、薬液が遮断されると噴霧温度が上昇する。そこで、噴霧温度の上昇を抑えるため、使用者ののどや鼻に至るまでの噴霧のガイド部であるアタッチメント2に、その内部と外部の間で外気の流通を可能とする外気流通口21(図1)を設けておき、外気流通口21が薬液調整部4の動作と連動してその開口量が調整されるようにする。これにより、切替つまみ41の操作によって薬液が遮断された状態になると、外気流通口21が連動して開き、導入された外気によって噴霧の温度上昇を抑えることができる。
【0036】
上述の切替つまみ41の動作と、外気流通口21の開閉動作の連動は、例えば、付勢ばねとワイヤとを用いて実現できる。すなわち、付勢ばねを用いて、外気流通口21の開閉を行う開閉板22を初期位置に保持しておき、外気流通口21の開口量を大きくする際には、一端を開閉板22に結ばれたワイヤの他端を、切替つまみ41の操作に連携して巻き取る。これにより、開閉板22を移動して開動作をさせることができる。また、ワイヤを巻き戻すことにより、付勢ばねの付勢力によって、開閉板22を初期位置に戻すことができる。
【0037】
次に、図14、図15を参照して、本発明の他の実施形態に係る吸入器1を説明する。この実施形態の吸入器1の基本構造は、図1に示した吸入器1と同様であるので、図1も同じく参照する。この吸入器1は、互いに連動する薬液調整部4、切替板3、及び外気流通口21のそれぞれが取り得る所定の状態を互いに組み合わせて予め異なる組合せを複数設定して成る使用モードから所望の使用モードを選択するモード選択手段5と、モード選択手段5を用いて選択された使用モードの状態を自動的に実現する自動調整手段6とを、図1に示した吸入器1にさらに加えて、備えている。
【0038】
上述のモード選択手段5は、例えば、使用者が使用モードを選択するボタン51,52,53と、自動調整手段6に選択結果を出力する回路からなる。自動調整手段6は、各モードの状態を自動的に実現するために、薬液調整部4、切替板3、及び外気流通口21のそれぞれが取り得る所定の状態を実現する不図示の各種アクチュエータ、及び、信号処理する制御機器を用いて構成される。アクチュエータは、電導モータ、超音波モータなどを用いることができる。この他に、例えば、形状記憶合金やリレー、センサ等を組み合わせて自動調整手段6が構成される。
【0039】
このような吸入器1は、図15に示すように、使用者がモードを選択し(S1)、選択されたモードを自動調整手段6が自動実行し(S2)、選択モードの噴霧が発生する(S3)、という手順を、順次繰り返して使用される。この吸入器1によれば、使用者が、予め設定された使用モードから順次使用モードを選択することにより、所望のモードで吸入器を用いることができ、操作が容易である。
【0040】
次に、図14に加えて、図16、図17を参照して、本発明のさらに他の実施形態に係る吸入器1を説明する。この実施形態の吸入器1は、図14に示した吸入器1において、自動化をさらに図ったものである。従って、この吸入器1の基本構造は、図1に示した吸入器1と同様であるので、図1も同じく参照する。この吸入器1は、複数種類の使用モードから選択された複数の使用モードを所定の時間間隔で順次繰り返すように予め異なる組合せに複数設定して成る使用コースから所望の使用コースを選択するコース選択手段7と、コース選択手段7を用いて選択された使用コースを自動調整手段6を動作させて実行するコース実行手段8とを、図14に示した吸入器1にさらに加えて、備えている。
【0041】
上述のコース選択手段7は、例えば、使用者が使用コースを選択するボタン71,72,73と、コース実行手段8に選択結果を出力する回路からなる。コース実行手段8は、選択されたコースに含まれる使用モードを順次自動調整手段6に実行させるため、例えば、コース毎の使用モードの組合せを記憶するメモリや、自動調整手段6とコース選択手段7との入出力を行う機器などを備えて構成される。
【0042】
このような吸入器1は、図17に示すように、使用者が使用コースを選択し(S11)、コース実行手段8が自動調整手段6を動作させて、選択された使用コースを自動実行し(S12)、選択モードが順次切り替えられながら実行されて噴霧の発生が行われ(S13)、選択コースの一連の選択モードの実行が終了した段階で動作が終了する、というように使用される。
【0043】
この吸入器1によれば、使用者が、予め設定された使用コースから所望の使用コースを選択することにより、順次使用モードを選択することなく、一連の所望のモードで吸入器を用いることができ、上述の実施形他の吸入器1に比べて、操作がより容易である。
【0044】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。上述した全ての吸入器1において、薬液カップ14に貯留した薬液は、吸入器1の使用目的に応じて、適宜選択して使用される。例えば、水に薬品を溶かした水溶液やその他の液体を用いることができ、また、水単体を用いることができる。また、吸入器1は、動作のエネルギを、例えば、商用電源や電池、またはこれらの両方から供給されて動作する。また、吸入器1にリモートコントロール装置を備えて、使用者が口や鼻をアタッチメント2に向けて吸入器1を使用中に、そのリモートコントロール装置を用いて吸入器1の動作変更の操作をできるようにしてもよい。また、形状記憶合金やバイメタルなどを用いて、外気流通口21の開閉板22が、噴霧液の温度によって自動的に動作するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る吸入器の断面図。
【図2】同上吸入器の構成を模式的に示すブロック図。
【図3】(a)は同上吸入器の側面図、(b)は同吸入器の上平面図。
【図4】同上吸入器のアタッチメントとカバーを除いた上部方向からの斜視図。
【図5】(a)は同上吸入器のアタッチメントとカバーを除いた上部方向からの斜視図、(b)は(a)における切替板の方向を変えた状態の斜視図。
【図6】(a)は同上吸入器の切替板とその周辺部部分の斜視図、(b)は同部分の上平面図。
【図7】同上吸入器の切替板とその周辺部部分の上平面図。
【図8】同上吸入器の切替板とその周辺部部分の側面図。
【図9】同上吸入器の薬液調整部の斜視図。
【図10】(a)は同上吸入器の薬液調整部の上平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図11】(a)は同上吸入器の薬液調整部の側面図、(b)は図10(a)のB−B線断面図。
【図12】同上吸入器の薬液調整部の分解斜視図。
【図13】同上吸入器の薬液調整部の断面図。
【図14】本発明の他の実施形態に係る吸入器の側面図。
【図15】同上吸入器の使用形態を示すフロー図。
【図16】本発明のさらに他の実施形態に係る吸入器の側面図。
【図17】同上吸入器の使用形態を示すフロー図。
【符号の説明】
【0046】
1 吸入器
2 アタッチメント
3 切替板
4 薬液調整部
5 モード選択手段
6 自動調整手段
7 コース選択手段
8 コース実行手段
11 給水タンク
12 ヒータ
13 噴出ノズル
14 薬液カップ
15 薬液ノズル
21 外気流通口
A 外気
P 薬液
V 水蒸気
W 水
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の呼吸器系の炎症治療などの目的で薬液噴霧の吸入に用いる吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体の呼吸器系の炎症治療などのために薬液や水の噴霧を発生させてその噴霧を吸入することが行われている。吸入器は、このような噴霧を発生して吸入させる装置である。その一般的な装置構成は、ノズルから吹き出す噴出蒸気が発生する負圧で薬液や水を吸い上げると共に噴霧状にし、その噴霧をのどや鼻に導くという構成になっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−245202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような吸入器においては、噴霧液量の変更や、のどや鼻などの方向に噴霧方向を切り替える変更はできるが、これらの変更が互いに連動していないため、煩わしい調整操作が必要だった。
【0004】
本発明は、上記課題を解消するものであって、噴霧方向の調整と噴霧液量の調整が簡単な操作で容易に行える吸入器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、水を注ぎ込んで貯留する給水タンクと、前記給水タンクから引き込んだ水を沸騰させるヒータと、前記ヒータにより沸騰して得られる水蒸気を噴出すると共に負圧を発生する噴出ノズルと、薬液を貯留する薬液カップと、前記噴出ノズル付近に配置され前記薬液カップの薬液を前記噴出ノズルの発生する負圧で吸い上げると共にその薬液を霧状に噴霧する薬液ノズルと、前記噴出ノズルからの水蒸気及び前記薬液ノズルからの噴霧液を口及び又は鼻へ導くアタッチメントと、を備えた吸入器において、前記アタッチメントの内部において前記水蒸気及び噴霧液を導く方向を切り替える切替板と、前記薬液ノズルから噴霧される薬液量を調整する薬液調整部と、をさらに備え、前記切替板と前記薬液調整部とが連動して動作するものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の吸入器において、前記薬液調整部は、前記切替板を所定の方向に固定した状態で薬液量を調整できるものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の吸入器において、前記アタッチメントはその内部と外部の間で外気の流通を可能とする外気流通口を有し、前記外気流通口は前記薬液調整部の動作と連動してその開口量が調整されるものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の吸入器において、前記互いに連動する薬液調整部、切替板、及び外気流通口のそれぞれが取り得る所定の状態を互いに組み合わせて予め異なる組合せを複数設定して成る使用モードから所望の使用モードを選択するモード選択手段と、前記モード選択手段を用いて選択された使用モードの状態を自動的に実現する自動調整手段と、をさらに備えたものである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載の吸入器において、前記使用モードから選択された複数の使用モードを所定の時間間隔で順次繰り返えすように予め異なる組合せに複数設定して成る使用コースから所望の使用コースを選択するコース選択手段と、前記コース選択手段を用いて選択された使用コースを前記自動調整手段を動作させて実行するコース実行手段と、をさらに備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、連動して動作する切替板と薬液調整部とを備えるので、噴霧方向の調整と噴霧液量の調整が簡単な操作で容易に行える。通常、薬液量の調整により、噴霧粒径を切り替えることができるので、例えば、鼻やのどの用途に応じた噴霧粒径となるように薬液調整部を動作させると共に、これに連動して、用途に応じた噴霧方向と成るように切替板を連動動作させることができ、従来よりも吸入器の使い勝手が向上する。
【0011】
請求項2の発明によれば、例えば、切替板を鼻やのどのいずれか一方の方向に切り替えた状態で、噴霧粒径を切換える動作ができるので、吸入器の使用者が、自分の望む用途や症状に容易に合わせて吸入器を使用できる。
【0012】
請求項3の発明によれば、例えば、薬液量を制限した際に噴霧温度が高くなるのを自動的に防止できる。
【0013】
請求項4の発明によれば、使用者が、予め設定された使用モードから使用モードを選択することにより、所望のモードで吸入器を用いることができ、操作が容易である。
【0014】
請求項5の発明によれば、複数の使用モードを所定の時間間隔で順次切り替えながら繰り返すような使用に際して、煩雑なモード切替の操作や、切替のための中断などが不要であり、従来よりも吸入器の使い勝手が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る吸入器について、図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係る吸入器1を示し、図2は吸入器1のブロック構成を示し、図3(a)(b)は吸入器1の外観を示す。吸入器1は、水蒸気を生成してその水蒸気により薬液を噴霧するものである。吸入器1は、水を注ぎ込んで貯留する給水タンク11と、給水タンク11から引き込んだ水Wを沸騰させるヒータ12と、ヒータ12により沸騰して得られる水蒸気Vを蒸気道13aを経由して導いて噴出すると共に負圧を発生する噴出ノズル13と、薬液Pを貯留する薬液カップ14と、噴出ノズル13付近に配置され薬液カップ14の薬液Pを噴出ノズル13の発生する負圧で、吸上チューブ15aを介して吸い上げると共にその薬液Pを霧状に噴霧する薬液ノズル15と、噴出ノズル13からの水蒸気及び薬液ノズル15からの噴霧液を口及び又は鼻へ導くアタッチメント2と、を備えている。
【0016】
また、吸入器1は、アタッチメント2の内部において水蒸気及び噴霧液を導く方向を、例えば矢印aや矢印bの方向に切り替える切替板3と、薬液ノズル15から噴霧される薬液量を調整する薬液調整部4と、をさらに備えている。切替板3は、例えば、薬液調整部4の操作に連動してその状態が変化する。切替板3と薬液調整部4の状態は、使用用途に応じて切り替えられる。吸入器1の使用者は、切替つまみ41(図3(a)(b))を回転させることによって薬液調整部4を操作する。使用者は、図1における左上方からアタッチメント2に顔を接近させて、噴霧を口や鼻から吸入する。そこで、矢印aの方向が大略口(のど)の方向であり、矢印bの方向が大略鼻の方向になる。
【0017】
また、アタッチメント2は、その内部と外部の間で外気の流通を可能とする外気流通口21を有し、外気流通口21は、薬液調整部4の動作と連動して動作する開閉板22によって、その開口量が調整される。開口量の調整により、口や鼻に至る蒸気の温度が調整される。図1、図3(a)は、外気流通口21が閉じた状態を示し、図3(b)は、外気流通口21が全開の状態を示す。なお、図2において、白抜き矢印は液体や蒸気の移動を示し、黒矢印は薬液調整部4の動作結果が、矢印の到達先に及ぶこと、すなわち、薬液調整部4と矢印の到達先とが連動することを示す。
【0018】
図4、図5(a)(b)は、吸入器1のアタッチメント2と吸入器1の本体部分の上部カバー、及び薬液吸上チューブ15aを外した状態を示す。これらの図には、薬液調整部4の一部外観、及び薬液調整部4と切替板3を連動させるリンク機構30が示されている。図4、図5(a)においては、切替板3を矢印b1の方向に切り替えた結果、切替板3が起きた「鼻方向」の状態が示され、図5(b)においては、切替板3を矢印a1の方向に切り替えた結果、切替板3が寝た「のど方向」の状態が示されている。
【0019】
次に、図6(a)(b)、図7、図8を参照して、切替板3を切り替える機構を説明する。切替板3は、薬液調整部4の動作に連動してその向きが切り替えられて水蒸気や噴霧液を導く方向を切り替える。切替板3は、切替板回転軸31に固定されている。回転軸31は、吸入器1の本体部分の所定位置(不図示)に回転自在に固定されている。回転軸31は、リンク機構30によって、切替つまみ軸42に連結されている。切替つまみ軸42は、回転軸31に平行な回転軸を有する。リンク機構30は、切替つまみ軸42側から順番に、軸固定リンク33、連結ピン34、自由リンク35、連結ピン36、及び、軸固定リンク37を連結して構成されている。この例のリンク機構30は、クランクを構成している。
【0020】
上述の切替つまみ軸42は、薬液調整部4の一部であり、不図示の切替つまみ41を用いて回転される。つまみ41と切替つまみ軸42の回転は1対1であり、これらの回転角と切替板3の回転角とは、1対1ではなく、例えば、表1に示すような関係がある。このような関係は、例えば、リンク機構30の構成(例えば、クランクの構成)の仕方によって種々設定することができる。
【0021】
【表1】
【0022】
次に、図9〜図13を参照して、薬液調整部4の構造と動作を説明する。ここに示した図は、例えば、上述の図7、図8から、切替板3とリンク機構30を除いた部分を示している。以下では、主に、図12、図13に注目して説明する。薬液調整部4は、噴出ノズル13の発生する負圧によって吸上チューブ15aを介して吸い上げられる薬液Pの量を、ニードル弁の開閉によって調整するものである。このような薬液調整部4は、切替つまみ41、切替つまみ軸42、ニードル弁体43、ニードル弁座体44によって構成されている。
【0023】
ニードル弁座体44の先端には、薬液ノズル15が噴出ノズル13に近接して配置されている。噴出ノズル13は、ニードル弁座体44に、例えば、一体成形により形成して備えられている。なお、噴出ノズル13は、Oリング13bで封止されて係合部13cによって蒸気道13aに固定接続される(図1参照)。
【0024】
切替つまみ軸42には、上述したように、軸固定リンク33が設けられている。切替つまみ軸42は、ニードル弁座体44に対して、ニードル弁座体44と同軸状態で回転可能なように、切替つまみ軸42の係合鍔部42bとニードル弁座体44の係合鉤部44aとによって固定されている。
【0025】
ニードル弁体43は、外周に形成した螺旋リブ43aと回転防止突起43b、及び、先端ニードル部分43dの近傍に配置したOリング43cを備えている。回転防止突起43bは、ニードル弁座体44の内面に設けられた直線溝44bに嵌合して直線摺動する。螺旋リブ43aは、切替つまみ軸42の内面に設けられた螺旋溝42aに螺合して、切替つまみ軸42の回転運動を軸方向の直線運動に変換する。
【0026】
薬液供給開口15bが、ニードル弁座体44における薬液ノズル15の近傍に設けられている。薬液供給開口15bは、薬液吸上チューブ15aの上端からニードル弁空間に薬液Pを導入する。そこで、切替つまみ41を回転すると、ニードル弁が開閉され、薬液供給開口15bから薬液ノズル15に供給される薬液供給量が増減、調整される。図13に示される状態は、ニードル弁体43が左方限まで移動して薬液の供給が遮断された状態である。
【0027】
次に、上述のように構成された吸入器1の動作を、薬液調整部4に連動する切替板3と薬液調整部4の動作に関連して説明する。吸入器1において、噴出ノズル13から水蒸気が噴出されるとノズル先端部が負圧となり、薬液吸上チューブ15aで吸上げられた薬液が薬液ノズル15から噴出し、この薬液と水蒸気とが混合して噴霧液となる。このように、蒸気が発生する負圧によって薬液を噴霧化する場合、薬液と水蒸気の混合比率によって噴霧の粒径が変化する。通常、同じ蒸気量に対して薬液量が多いと噴霧の粒径が大きくなり、薬液量が少ないと噴霧の粒径が小さくなる。また、噴出ノズル13からの水蒸気が切替板3に当たる角度によっても噴霧の粒径が変化する。例えば、角度が浅いと粒径が大となり、角度が深いと、粒径が小となる。なお、噴霧の粒径が小さいほど、鼻やのどの奥の方まで噴霧が到達し易くなる。
【0028】
薬液調整部4の切替つまみ41の回転角に合わせて、リンク機構30(クランク機構)によって切替板3の回転角が変化し、同時に、螺旋リブ43aによってニードル弁体43の位置、すなわち、薬液供給量を調整する弁の絞り量、が連続的に変化する。これにより、切替つまみ41の回転角の3領域によって、表2に示すような3つの使用モードが実現される。
【0029】
【表2】
【0030】
表2は、吸入器1の使用モードと、各使用モードを実現する薬液調整部4の状態(切替つまみと薬液供給量の状態)、及び切替板3の状態を示す。表中の「切替つまみ」は、切替つまみ41の初期位置からの回転角を示す。切替つまみ41の位置が、0°から45°に変化した場合、切替板3の状態は「のど方向」から「鼻方向」に変化するが、噴霧粒径は「通常」のままで変化しない。切替つまみ41の位置が、45°から90°に変化した場合、切替板3の状態は、「鼻方向」のままで変化しないが、噴霧粒径が「通常」から「小径」に変化する。
【0031】
なお、切替つまみ41の位置が90゜の近傍において、噴霧の内容は、「薬液の噴霧を少なめに水蒸気に混合した状態、又は、蒸気だけ」の状態になる。また、噴霧粒径の代表的な寸法を挙げると、「のどモード」から「鼻モード」では、約15μmから約8μm、「鼻すっきりモード」では約4μmなどとなる。
【0032】
ところで、切替つまみ41と切替板3の回転角の関係、つまり、切替つまみ41と噴霧液を導く方向との関係は、上述したように、リンク機構30をどのように構成するかによって、ほぼ任意に設定することができる。そこで、上述した吸入器1の変形例として、例えば、切替つまみ41の切り替えによって、薬液の経路を遮断して水蒸気だけを噴霧することができる構造において、水蒸気や薬液の噴霧(噴霧液)を導く方向を切り替える切替板3の方向は変更せずに、薬液の経路だけを遮断して、水蒸気だけを噴霧するようにできる。
【0033】
上述の場合、例えば、噴霧液が「のど」方向に向かうように切替板3がある状態において、切替つまみ41を切り替えると、切替板3が「のどモード」の方向を維持したままの状態で薬液の経路を遮断し、水蒸気だけを噴霧する「のどすっきりモード」状態にすることができる。このように、「噴霧液を導く方向を、鼻やのどのいずれかの状態に固定した状態」で、「噴霧粒径を切換える」ということができる。
【0034】
上述のように、切替板3の各状態に対して、薬液調整部4の状態を複数設定可能とするには、機械式で行う場合、例えば、複数のリンク機構を切り替えるようにすればよい。例えば、切替つまみを押し込む操作によってこのリンク機構の切替を行うようにすれば、1つの切替つまみの操作で種々の使用モードを選択できる。すなわち、吸入器1において、薬液調整部4と切替板3とが連動したワンタッチ操作を実現でき、吸入器1の向上した操作性を実現できる。
【0035】
さらに、上述のように構成された吸入器1の動作を、外気流通口21の開口量に関連して説明する。吸入器1は、上述のように、薬液の経路を遮断して水蒸気だけを噴霧することができる。ところで、薬液が遮断されると噴霧温度が上昇する。そこで、噴霧温度の上昇を抑えるため、使用者ののどや鼻に至るまでの噴霧のガイド部であるアタッチメント2に、その内部と外部の間で外気の流通を可能とする外気流通口21(図1)を設けておき、外気流通口21が薬液調整部4の動作と連動してその開口量が調整されるようにする。これにより、切替つまみ41の操作によって薬液が遮断された状態になると、外気流通口21が連動して開き、導入された外気によって噴霧の温度上昇を抑えることができる。
【0036】
上述の切替つまみ41の動作と、外気流通口21の開閉動作の連動は、例えば、付勢ばねとワイヤとを用いて実現できる。すなわち、付勢ばねを用いて、外気流通口21の開閉を行う開閉板22を初期位置に保持しておき、外気流通口21の開口量を大きくする際には、一端を開閉板22に結ばれたワイヤの他端を、切替つまみ41の操作に連携して巻き取る。これにより、開閉板22を移動して開動作をさせることができる。また、ワイヤを巻き戻すことにより、付勢ばねの付勢力によって、開閉板22を初期位置に戻すことができる。
【0037】
次に、図14、図15を参照して、本発明の他の実施形態に係る吸入器1を説明する。この実施形態の吸入器1の基本構造は、図1に示した吸入器1と同様であるので、図1も同じく参照する。この吸入器1は、互いに連動する薬液調整部4、切替板3、及び外気流通口21のそれぞれが取り得る所定の状態を互いに組み合わせて予め異なる組合せを複数設定して成る使用モードから所望の使用モードを選択するモード選択手段5と、モード選択手段5を用いて選択された使用モードの状態を自動的に実現する自動調整手段6とを、図1に示した吸入器1にさらに加えて、備えている。
【0038】
上述のモード選択手段5は、例えば、使用者が使用モードを選択するボタン51,52,53と、自動調整手段6に選択結果を出力する回路からなる。自動調整手段6は、各モードの状態を自動的に実現するために、薬液調整部4、切替板3、及び外気流通口21のそれぞれが取り得る所定の状態を実現する不図示の各種アクチュエータ、及び、信号処理する制御機器を用いて構成される。アクチュエータは、電導モータ、超音波モータなどを用いることができる。この他に、例えば、形状記憶合金やリレー、センサ等を組み合わせて自動調整手段6が構成される。
【0039】
このような吸入器1は、図15に示すように、使用者がモードを選択し(S1)、選択されたモードを自動調整手段6が自動実行し(S2)、選択モードの噴霧が発生する(S3)、という手順を、順次繰り返して使用される。この吸入器1によれば、使用者が、予め設定された使用モードから順次使用モードを選択することにより、所望のモードで吸入器を用いることができ、操作が容易である。
【0040】
次に、図14に加えて、図16、図17を参照して、本発明のさらに他の実施形態に係る吸入器1を説明する。この実施形態の吸入器1は、図14に示した吸入器1において、自動化をさらに図ったものである。従って、この吸入器1の基本構造は、図1に示した吸入器1と同様であるので、図1も同じく参照する。この吸入器1は、複数種類の使用モードから選択された複数の使用モードを所定の時間間隔で順次繰り返すように予め異なる組合せに複数設定して成る使用コースから所望の使用コースを選択するコース選択手段7と、コース選択手段7を用いて選択された使用コースを自動調整手段6を動作させて実行するコース実行手段8とを、図14に示した吸入器1にさらに加えて、備えている。
【0041】
上述のコース選択手段7は、例えば、使用者が使用コースを選択するボタン71,72,73と、コース実行手段8に選択結果を出力する回路からなる。コース実行手段8は、選択されたコースに含まれる使用モードを順次自動調整手段6に実行させるため、例えば、コース毎の使用モードの組合せを記憶するメモリや、自動調整手段6とコース選択手段7との入出力を行う機器などを備えて構成される。
【0042】
このような吸入器1は、図17に示すように、使用者が使用コースを選択し(S11)、コース実行手段8が自動調整手段6を動作させて、選択された使用コースを自動実行し(S12)、選択モードが順次切り替えられながら実行されて噴霧の発生が行われ(S13)、選択コースの一連の選択モードの実行が終了した段階で動作が終了する、というように使用される。
【0043】
この吸入器1によれば、使用者が、予め設定された使用コースから所望の使用コースを選択することにより、順次使用モードを選択することなく、一連の所望のモードで吸入器を用いることができ、上述の実施形他の吸入器1に比べて、操作がより容易である。
【0044】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。上述した全ての吸入器1において、薬液カップ14に貯留した薬液は、吸入器1の使用目的に応じて、適宜選択して使用される。例えば、水に薬品を溶かした水溶液やその他の液体を用いることができ、また、水単体を用いることができる。また、吸入器1は、動作のエネルギを、例えば、商用電源や電池、またはこれらの両方から供給されて動作する。また、吸入器1にリモートコントロール装置を備えて、使用者が口や鼻をアタッチメント2に向けて吸入器1を使用中に、そのリモートコントロール装置を用いて吸入器1の動作変更の操作をできるようにしてもよい。また、形状記憶合金やバイメタルなどを用いて、外気流通口21の開閉板22が、噴霧液の温度によって自動的に動作するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る吸入器の断面図。
【図2】同上吸入器の構成を模式的に示すブロック図。
【図3】(a)は同上吸入器の側面図、(b)は同吸入器の上平面図。
【図4】同上吸入器のアタッチメントとカバーを除いた上部方向からの斜視図。
【図5】(a)は同上吸入器のアタッチメントとカバーを除いた上部方向からの斜視図、(b)は(a)における切替板の方向を変えた状態の斜視図。
【図6】(a)は同上吸入器の切替板とその周辺部部分の斜視図、(b)は同部分の上平面図。
【図7】同上吸入器の切替板とその周辺部部分の上平面図。
【図8】同上吸入器の切替板とその周辺部部分の側面図。
【図9】同上吸入器の薬液調整部の斜視図。
【図10】(a)は同上吸入器の薬液調整部の上平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図11】(a)は同上吸入器の薬液調整部の側面図、(b)は図10(a)のB−B線断面図。
【図12】同上吸入器の薬液調整部の分解斜視図。
【図13】同上吸入器の薬液調整部の断面図。
【図14】本発明の他の実施形態に係る吸入器の側面図。
【図15】同上吸入器の使用形態を示すフロー図。
【図16】本発明のさらに他の実施形態に係る吸入器の側面図。
【図17】同上吸入器の使用形態を示すフロー図。
【符号の説明】
【0046】
1 吸入器
2 アタッチメント
3 切替板
4 薬液調整部
5 モード選択手段
6 自動調整手段
7 コース選択手段
8 コース実行手段
11 給水タンク
12 ヒータ
13 噴出ノズル
14 薬液カップ
15 薬液ノズル
21 外気流通口
A 外気
P 薬液
V 水蒸気
W 水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を注ぎ込んで貯留する給水タンクと、前記給水タンクから引き込んだ水を沸騰させるヒータと、前記ヒータにより沸騰して得られる水蒸気を噴出すると共に負圧を発生する噴出ノズルと、薬液を貯留する薬液カップと、前記噴出ノズル付近に配置され前記薬液カップの薬液を前記噴出ノズルの発生する負圧で吸い上げると共にその薬液を霧状に噴霧する薬液ノズルと、前記噴出ノズルからの水蒸気及び前記薬液ノズルからの噴霧液を口及び又は鼻へ導くアタッチメントと、を備えた吸入器において、
前記アタッチメントの内部において前記水蒸気及び噴霧液を導く方向を切り替える切替板と、前記薬液ノズルから噴霧される薬液量を調整する薬液調整部と、をさらに備え、前記切替板と前記薬液調整部とが連動して動作することを特徴とする吸入器。
【請求項2】
前記薬液調整部は、前記切替板を所定の方向に固定した状態で薬液量を調整できることを特徴とする請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記アタッチメントはその内部と外部の間で外気の流通を可能とする外気流通口を有し、前記外気流通口は前記薬液調整部の動作と連動してその開口量が調整されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記互いに連動する薬液調整部、切替板、及び外気流通口のそれぞれが取り得る所定の状態を互いに組み合わせて予め異なる組合せを複数設定して成る使用モードから所望の使用モードを選択するモード選択手段と、前記モード選択手段を用いて選択された使用モードの状態を自動的に実現する自動調整手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の吸入器。
【請求項5】
前記使用モードから選択された複数の使用モードを所定の時間間隔で順次繰り返すように予め異なる組合せに複数設定して成る使用コースから所望の使用コースを選択するコース選択手段と、前記コース選択手段を用いて選択された使用コースを前記自動調整手段を動作させて実行するコース実行手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の吸入器。
【請求項1】
水を注ぎ込んで貯留する給水タンクと、前記給水タンクから引き込んだ水を沸騰させるヒータと、前記ヒータにより沸騰して得られる水蒸気を噴出すると共に負圧を発生する噴出ノズルと、薬液を貯留する薬液カップと、前記噴出ノズル付近に配置され前記薬液カップの薬液を前記噴出ノズルの発生する負圧で吸い上げると共にその薬液を霧状に噴霧する薬液ノズルと、前記噴出ノズルからの水蒸気及び前記薬液ノズルからの噴霧液を口及び又は鼻へ導くアタッチメントと、を備えた吸入器において、
前記アタッチメントの内部において前記水蒸気及び噴霧液を導く方向を切り替える切替板と、前記薬液ノズルから噴霧される薬液量を調整する薬液調整部と、をさらに備え、前記切替板と前記薬液調整部とが連動して動作することを特徴とする吸入器。
【請求項2】
前記薬液調整部は、前記切替板を所定の方向に固定した状態で薬液量を調整できることを特徴とする請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記アタッチメントはその内部と外部の間で外気の流通を可能とする外気流通口を有し、前記外気流通口は前記薬液調整部の動作と連動してその開口量が調整されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記互いに連動する薬液調整部、切替板、及び外気流通口のそれぞれが取り得る所定の状態を互いに組み合わせて予め異なる組合せを複数設定して成る使用モードから所望の使用モードを選択するモード選択手段と、前記モード選択手段を用いて選択された使用モードの状態を自動的に実現する自動調整手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の吸入器。
【請求項5】
前記使用モードから選択された複数の使用モードを所定の時間間隔で順次繰り返すように予め異なる組合せに複数設定して成る使用コースから所望の使用コースを選択するコース選択手段と、前記コース選択手段を用いて選択された使用コースを前記自動調整手段を動作させて実行するコース実行手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の吸入器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−105103(P2007−105103A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296555(P2005−296555)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
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