吸入用ガス供給用具
【課題】吸入用ガス吸入用具の装着時の美観を改善する。
【解決手段】吸入用ガス供給源からチューブを介して吸入用ガスを使用者に供給する供給用具であり、装着者の頭部にかける支持体、該支持体に一方の端部に吸入用ガス供給用チューブの固定部、他方の端部が装着者の鼻・口から離れた位置に位置し、該他方の端部から装着者の顔部外周面上の鼻・口方向に吸入用ガスを送風する供給端部、供給方向を調節する方向可変部を備えた吸入用ガス供給用ノズルを備え、且つ、該吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガス供給先端部のノズル管路方向と装着部顔部表面のなす角度が鋭角であることを特徴とする吸入用ガス供給用具。
【解決手段】吸入用ガス供給源からチューブを介して吸入用ガスを使用者に供給する供給用具であり、装着者の頭部にかける支持体、該支持体に一方の端部に吸入用ガス供給用チューブの固定部、他方の端部が装着者の鼻・口から離れた位置に位置し、該他方の端部から装着者の顔部外周面上の鼻・口方向に吸入用ガスを送風する供給端部、供給方向を調節する方向可変部を備えた吸入用ガス供給用ノズルを備え、且つ、該吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガス供給先端部のノズル管路方向と装着部顔部表面のなす角度が鋭角であることを特徴とする吸入用ガス供給用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入用ガスを吸入する為の吸入用具に関する。更に詳細には、在宅酸素療法等に使用される酸素富化ガス、疲労回復を目的とした低濃度酸素ガスや、アロマセラピーで使用される香り物質等を、吸入用具を外鼻周辺に配置せず、皮膚の圧迫なしに、かつ、美観を損なわずに供給する吸入用ガス供給用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
在宅酸素療法やアロマセラピー等での吸入用ガス吸入には、一般に鼻孔カニューラが使用されている。鼻孔カニューラは、酸素濃縮器やガスボンベ等から供給される吸入用ガスを使用者の鼻孔まで導く為、途中で分岐したカニューラを左右両耳に掛け、患者鼻腔に挿入する吸入用ガス供給管(プロング)を有する鼻部分岐部にカニューラ開放端を接続することで吸入用ガスを使用者鼻孔に供給する用具である。
【0003】
鼻孔カニューラはシンプルな形状の吸入用ガス投与具で、使い易く、安価であり、長期酸素療法等には適した吸入用具である。一方で、以下の不利益な点を含んでいる。
1.供給用具接触による頬・鼻孔部の刺激
2.プロング装着による美観の悪化
【0004】
上記不利益を解決する形態として、US6065473号公報(特許文献1)では、ヘッドセット型の支持体により酸素供給チューブを固定し、酸素富化ガス供給チューブ端に酸素富化ガス放出ノズルを設け、酸素富化ガス供給用ノズルが鼻孔に接触することなく、酸素富化ガスを投与する手段が開示されている。このシステムでは、供給用具が顔部に非接触のため頬や鼻孔部への刺激が少ない。しかしながら、酸素を吸入する為には酸素供給用ノズルを鼻・口付近に配置する支持体が必要で、その支持体は美観を悪化させる。また、酸素富化ガス供給用ノズルから放出される酸素富化ガスは直進性の噴流であり、噴出方向が鼻・口近辺から外れると吸入気酸素濃度低下の危険がある。顔部と離れた酸素富化ガス供給用ノズルの向きを調節するのは困難を要する。
【0005】
また、US6450166号公報(特許文献2)には、ヘッドセット型の支持体により酸素富化ガス供給チューブを固定し、同様にチューブ端に酸素富化ガス放出ノズルを設け、外鼻部に対し非接触で酸素富化ガスを投与する手段が開示されている。このシステムは、酸素富化ガス放出ノズル部にディフューザ(拡散ノズル)を設けている為、広範囲に酸素富化ガスを拡散させる。これによりディフューザの設置位置の調節は容易となる。しかしながら、拡散させて酸素供給するため、ディフューザを鼻口付近に設置せねばならず、装着時にディフューザが目立つ欠点がある。
【0006】
【特許文献1】US6065473号公報
【特許文献2】US6450166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、現在、普及している鼻孔カニューラには、頬・鼻孔への刺激、美観悪化の課題があり、特許文献1の方法では、頬・鼻孔への刺激は緩和されているものの、ノズルの位置調節が困難という課題があり、特許文献2の方法では、頬・鼻孔への刺激、ノズル調節の困難さは緩和されるが、美観が悪化する。本願発明は、かかる課題を解決する吸入用のガス供給用具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決する手段として本発明者は以下の吸入用ガス投与方法を見出した。すなわち本発明は、吸入用ガスを供給するノズルを鼻口以外の顔外周面上に設置し、該ノズルと顔外周面の成す角度が鋭角とすることで、該ノズルから噴出する吸入用ガス流をコアンダ効果により顔部外周面に付着させて、鼻口付近へ吸入用ガスを供給することを特徴とする吸入用ガス供給用具を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の吸入用ガス供給用具を用いることにより、従来の鼻孔カニューラのように供給用具が顔部に接触しないため、頬・鼻孔刺激が軽減される。また、鼻・口付近にノズルを設置する必要が無いため、美観を損なわずに吸入用ガス吸入を行なうことができる。しかも、コアンダ効果により、吸入用ガス噴流の到達距離は、自由噴流よりも長くなり、鼻・口から、さらに離れた位置にノズルを設置可能である。また、顔部外周面上にノズルを固定する為、位置調節が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の吸入用ガス供給用具の実施態様例を以下に説明する。
本発明の吸入用ガス供給用具は、ガスボンベ等の吸入用ガス供給源から吸入用ガス供給チューブを介して供給される吸入用ガスを使用者の鼻または口に供給する用具である。吸入用ガス供給用具は、装着者の頭部にかける支持体、該支持体に固定される吸入用ガス供給用ノズルを備え、かかるノズルの一方の端部には吸入用ガス供給用チューブの固定部が、他方の端部は装着者の鼻・口から離れた位置に位置し、該他方の端部から装着者の顔部外周面上の鼻・口方向に吸入用ガスを送風する供給端部を備える。供給先端部のノズル管路方向と装着部顔部表面のなす角度は鋭角であり、供給された吸入用ガスは、鼻・口以外の顔部外周面へ放出され、放出された吸入用ガス噴流はコアンダ効果により顔部外周面に付着した状態で流れ、鼻・口周辺まで輸送される。
【0011】
吸入用ガス供給源としては、ガスボンベの他、液体酸素や空気中の酸素を分離し酸素富化ガスを供給する酸素富化膜を用いた膜式酸素濃縮装置やゼオライトを窒素吸着剤として用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置、電気化学的に酸素を分離する酸素濃縮装置などを用いることができる。
【0012】
コアンダ効果とは、気体や液体の噴流が噴流軸の方向と湾曲した壁の方向とが離れていても、壁の曲面に沿った方向の近くを流れようとする傾向をいい、本発明の吸入用ガス供給用具は、この性質を利用し、顔面正面や鼻孔先端部まで供給用具であるプロングなどを設けず、離れた位置である頬などに吸入用ガスを噴出させ、皮膚表面に沿って鼻孔あるいは口まで流す。これにより鼻孔カニューラ装着時の美観を維持することができる。
【0013】
吸入用ガス吸入用具を装着者の頭部で支持するための支持体を備える。例えば、耳で支持する場合には、外耳にリング等で掛ける耳掛け型や耳穴挿入型(イヤホン型)とすることで実現でき、装着者の頭頂部で吸入用具を支持する場合には、ヘッドセット型の支持体とすることで実現できる。
【0014】
支持体には、吸入用ガスを供給するための吸入用ガス供給用ノズルが固定される。かかるノズルには、一方の端部に吸入用ガス供給用チューブの固定部、他方の端部から装着者の顔部外周面上の鼻・口方向に吸入用ガスを送風する供給端部を備える。吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガス供給先端部のノズル管路方向と装着部顔部表面のなす角度は鋭角とすることで上記コアンダ効果を実現することができる。支持体の形態を変えることで、コアンダ効果を実現するようノズルを額部、顎部、頬部、耳部などに選択的に設置でき、使用状況(昼間活動時、夜間睡眠時)に適した吸入用ガス供給を実現できる。
【0015】
装着方法、装着者によってノズル方向が変化することから、供給方向を補正する回転式部材を備え、或いはノズル自体を可撓性部材とするなど、供給方向を調節する方向可変部を備える。
【0016】
吸入用ガス供給用ノズルの供給端部には、吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガスの供給方向と装着部顔部表面のなす角度を変更する角度切替手段備を備える。供給する吸入用ガスの流速によって鋭角とする供給角度の調整を行い、調整範囲は、吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガスの供給方向と顔部表面のなす角度が15度より大きく80度未満、より確実にコアンダ効果を実現しつつ吸入用ガスを供給するためには15度〜60度、更に好ましくは15度〜45度の範囲とする。
【0017】
吸入用ガス流速が早くなるとコアンダ効果なしにそのまま吸入用ガスが拡散してしまうため、吸入用ガス供給用ノズルのノズル管路径は、吸入用ガスの最大流速が20m/秒以下、より好ましくは5m/秒、更に好ましくは1m/秒となる口径であり、流速を微調整する絞り弁を備えることが好ましい。
吸入用ガス供給用ノズルのノズル長は、美観と供給量を加味し適宜可変可能な伸縮機構を有することが好ましい。
【0018】
図1に、本発明の吸入用ガス供給用具の実施態様例の模式図を示す。
吸入用ガス供給源から供給された吸入用ガスは吸入用ガス供給チューブを通り、吸入用ガス吸入用具へ供給される。吸入用ガス供給チューブは吸入用ガス供給チューブ固定部に接続されている。本例では外耳に載せる半リング状の台座を支持体とする吸入用具を図示している。
【0019】
図2に示すように、供給された吸入用ガスは吸入用ガス放出部から噴出する。噴出箇所は、鼻・口部ではない顔部表面であり、本例では耳穴と頬骨の間に位置している。放出した吸入用ガス噴流は鼻口部に向かって流れる。なお、本例に示す通り、吸入用ガス供給用具は鼻・口から離れた位置にあり、チューブが顔表面を這う事がないため、美観を損なわない。
【0020】
図3は、図1を断面Aで切断した断面図であり、吸入用ガス噴出口を示している。この吸入用ガス噴出口のノズル方向、衝突部である顔表面とのなす角度は鋭角である(図4)。
図5に示す通り、ノズルには、吸入用ガス供給チューブ先端を受ける差込部を備えている。
図6に示す通り、放出部は噴出速度を調節するため、絞り手段として異なる開口面積の複数孔を備えた調節機構を備えてもよい。流量調節機構の詳細図を図7に示す。
【0021】
また、噴流が付着する距離は、噴出方向と衝突面(顔部)の角度によって異なるため、噴出角度を調節する機構が必要な場合は、例えば図8に示すように、開口方向の異なる複数孔を備えた調節機構を用いるとよい。
【0022】
別の態様として、吸入用ガス供給チューブ固定部は、図9に示すような吸入用ガス供給チューブを把持する方法でも良く、この場合は吸入用ガス放出口が、吸入用ガス供給チューブの先端となるが、吸入用ガス放出出口の位置は、吸入用ガス供給チューブの把持位置を変えることで調節できる。吸入用ガス放出口であるチューブ先端は供給角度が鋭角となるようにする。
【0023】
図10に、本発明の吸入用ガス供給用具の別の態様例として吸入用ガス放出口を2つ持つ実施例を示す。この実現態様例では鼻・口正面で吸入用ガス噴流を衝突させることができ、鼻口周辺の吸入用ガス濃度を上げることができる。
【0024】
図2に示した吸入用ガス供給用具を用い、吸入用ガスを実際に吸入することが可能かどうか確認する試験を、頭部の擬似モデル及び人工肺を用い実施した。吸入用ガスには酸素富化ガスを用いた。試験方法の概略を図11に示す。呼吸回数:20回/分、一回換気量:500mlの呼吸に設定し、噴出角度(θ)が人工肺の末端の酸素濃度に与える影響を調べた。
【0025】
図12に示した結果の通り、酸素噴出方向と顔表面のなす角度が0度(噴流と頬が平行関係)である場合には、酸素富化ガス供給流量を変化させても、人工肺末端の酸素濃度は21[%O2]であり、環境の酸素濃度と変わらず、酸素富化ガスが人工肺末端に供給されていないことが分かる。一方、噴出方向と顔表面のなす角度が30度である場合は、人工肺末端の酸素濃度が上昇しており、酸素富化ガスを吸入できている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の吸入用ガス供給用具を用いた吸入用ガス供給システムの模式図(横)。
【図2】本発明の吸入用ガス供給用具を用いた吸入用ガス供給システムの模式図(斜め)。
【図3】断面Aで切断した断面図。
【図4】ノズル方向を示す図。
【図5】吸入用ガス供給チューブ固定部(差込型)。
【図6】噴出速度調節機構。
【図7】噴出速度調節機構(詳細)。
【図8】噴出角度調節機構。
【図9】吸入用ガス供給チューブ固定部(掴み型)の吸入用ガス供給用具の実施態様例。
【図10】2つの噴出口を持つ吸入用ガス供給用具の実施態様例。
【図11】呼吸模擬実験の模式図。
【図12】呼吸模擬実験の結果。
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入用ガスを吸入する為の吸入用具に関する。更に詳細には、在宅酸素療法等に使用される酸素富化ガス、疲労回復を目的とした低濃度酸素ガスや、アロマセラピーで使用される香り物質等を、吸入用具を外鼻周辺に配置せず、皮膚の圧迫なしに、かつ、美観を損なわずに供給する吸入用ガス供給用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
在宅酸素療法やアロマセラピー等での吸入用ガス吸入には、一般に鼻孔カニューラが使用されている。鼻孔カニューラは、酸素濃縮器やガスボンベ等から供給される吸入用ガスを使用者の鼻孔まで導く為、途中で分岐したカニューラを左右両耳に掛け、患者鼻腔に挿入する吸入用ガス供給管(プロング)を有する鼻部分岐部にカニューラ開放端を接続することで吸入用ガスを使用者鼻孔に供給する用具である。
【0003】
鼻孔カニューラはシンプルな形状の吸入用ガス投与具で、使い易く、安価であり、長期酸素療法等には適した吸入用具である。一方で、以下の不利益な点を含んでいる。
1.供給用具接触による頬・鼻孔部の刺激
2.プロング装着による美観の悪化
【0004】
上記不利益を解決する形態として、US6065473号公報(特許文献1)では、ヘッドセット型の支持体により酸素供給チューブを固定し、酸素富化ガス供給チューブ端に酸素富化ガス放出ノズルを設け、酸素富化ガス供給用ノズルが鼻孔に接触することなく、酸素富化ガスを投与する手段が開示されている。このシステムでは、供給用具が顔部に非接触のため頬や鼻孔部への刺激が少ない。しかしながら、酸素を吸入する為には酸素供給用ノズルを鼻・口付近に配置する支持体が必要で、その支持体は美観を悪化させる。また、酸素富化ガス供給用ノズルから放出される酸素富化ガスは直進性の噴流であり、噴出方向が鼻・口近辺から外れると吸入気酸素濃度低下の危険がある。顔部と離れた酸素富化ガス供給用ノズルの向きを調節するのは困難を要する。
【0005】
また、US6450166号公報(特許文献2)には、ヘッドセット型の支持体により酸素富化ガス供給チューブを固定し、同様にチューブ端に酸素富化ガス放出ノズルを設け、外鼻部に対し非接触で酸素富化ガスを投与する手段が開示されている。このシステムは、酸素富化ガス放出ノズル部にディフューザ(拡散ノズル)を設けている為、広範囲に酸素富化ガスを拡散させる。これによりディフューザの設置位置の調節は容易となる。しかしながら、拡散させて酸素供給するため、ディフューザを鼻口付近に設置せねばならず、装着時にディフューザが目立つ欠点がある。
【0006】
【特許文献1】US6065473号公報
【特許文献2】US6450166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、現在、普及している鼻孔カニューラには、頬・鼻孔への刺激、美観悪化の課題があり、特許文献1の方法では、頬・鼻孔への刺激は緩和されているものの、ノズルの位置調節が困難という課題があり、特許文献2の方法では、頬・鼻孔への刺激、ノズル調節の困難さは緩和されるが、美観が悪化する。本願発明は、かかる課題を解決する吸入用のガス供給用具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決する手段として本発明者は以下の吸入用ガス投与方法を見出した。すなわち本発明は、吸入用ガスを供給するノズルを鼻口以外の顔外周面上に設置し、該ノズルと顔外周面の成す角度が鋭角とすることで、該ノズルから噴出する吸入用ガス流をコアンダ効果により顔部外周面に付着させて、鼻口付近へ吸入用ガスを供給することを特徴とする吸入用ガス供給用具を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の吸入用ガス供給用具を用いることにより、従来の鼻孔カニューラのように供給用具が顔部に接触しないため、頬・鼻孔刺激が軽減される。また、鼻・口付近にノズルを設置する必要が無いため、美観を損なわずに吸入用ガス吸入を行なうことができる。しかも、コアンダ効果により、吸入用ガス噴流の到達距離は、自由噴流よりも長くなり、鼻・口から、さらに離れた位置にノズルを設置可能である。また、顔部外周面上にノズルを固定する為、位置調節が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の吸入用ガス供給用具の実施態様例を以下に説明する。
本発明の吸入用ガス供給用具は、ガスボンベ等の吸入用ガス供給源から吸入用ガス供給チューブを介して供給される吸入用ガスを使用者の鼻または口に供給する用具である。吸入用ガス供給用具は、装着者の頭部にかける支持体、該支持体に固定される吸入用ガス供給用ノズルを備え、かかるノズルの一方の端部には吸入用ガス供給用チューブの固定部が、他方の端部は装着者の鼻・口から離れた位置に位置し、該他方の端部から装着者の顔部外周面上の鼻・口方向に吸入用ガスを送風する供給端部を備える。供給先端部のノズル管路方向と装着部顔部表面のなす角度は鋭角であり、供給された吸入用ガスは、鼻・口以外の顔部外周面へ放出され、放出された吸入用ガス噴流はコアンダ効果により顔部外周面に付着した状態で流れ、鼻・口周辺まで輸送される。
【0011】
吸入用ガス供給源としては、ガスボンベの他、液体酸素や空気中の酸素を分離し酸素富化ガスを供給する酸素富化膜を用いた膜式酸素濃縮装置やゼオライトを窒素吸着剤として用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置、電気化学的に酸素を分離する酸素濃縮装置などを用いることができる。
【0012】
コアンダ効果とは、気体や液体の噴流が噴流軸の方向と湾曲した壁の方向とが離れていても、壁の曲面に沿った方向の近くを流れようとする傾向をいい、本発明の吸入用ガス供給用具は、この性質を利用し、顔面正面や鼻孔先端部まで供給用具であるプロングなどを設けず、離れた位置である頬などに吸入用ガスを噴出させ、皮膚表面に沿って鼻孔あるいは口まで流す。これにより鼻孔カニューラ装着時の美観を維持することができる。
【0013】
吸入用ガス吸入用具を装着者の頭部で支持するための支持体を備える。例えば、耳で支持する場合には、外耳にリング等で掛ける耳掛け型や耳穴挿入型(イヤホン型)とすることで実現でき、装着者の頭頂部で吸入用具を支持する場合には、ヘッドセット型の支持体とすることで実現できる。
【0014】
支持体には、吸入用ガスを供給するための吸入用ガス供給用ノズルが固定される。かかるノズルには、一方の端部に吸入用ガス供給用チューブの固定部、他方の端部から装着者の顔部外周面上の鼻・口方向に吸入用ガスを送風する供給端部を備える。吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガス供給先端部のノズル管路方向と装着部顔部表面のなす角度は鋭角とすることで上記コアンダ効果を実現することができる。支持体の形態を変えることで、コアンダ効果を実現するようノズルを額部、顎部、頬部、耳部などに選択的に設置でき、使用状況(昼間活動時、夜間睡眠時)に適した吸入用ガス供給を実現できる。
【0015】
装着方法、装着者によってノズル方向が変化することから、供給方向を補正する回転式部材を備え、或いはノズル自体を可撓性部材とするなど、供給方向を調節する方向可変部を備える。
【0016】
吸入用ガス供給用ノズルの供給端部には、吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガスの供給方向と装着部顔部表面のなす角度を変更する角度切替手段備を備える。供給する吸入用ガスの流速によって鋭角とする供給角度の調整を行い、調整範囲は、吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガスの供給方向と顔部表面のなす角度が15度より大きく80度未満、より確実にコアンダ効果を実現しつつ吸入用ガスを供給するためには15度〜60度、更に好ましくは15度〜45度の範囲とする。
【0017】
吸入用ガス流速が早くなるとコアンダ効果なしにそのまま吸入用ガスが拡散してしまうため、吸入用ガス供給用ノズルのノズル管路径は、吸入用ガスの最大流速が20m/秒以下、より好ましくは5m/秒、更に好ましくは1m/秒となる口径であり、流速を微調整する絞り弁を備えることが好ましい。
吸入用ガス供給用ノズルのノズル長は、美観と供給量を加味し適宜可変可能な伸縮機構を有することが好ましい。
【0018】
図1に、本発明の吸入用ガス供給用具の実施態様例の模式図を示す。
吸入用ガス供給源から供給された吸入用ガスは吸入用ガス供給チューブを通り、吸入用ガス吸入用具へ供給される。吸入用ガス供給チューブは吸入用ガス供給チューブ固定部に接続されている。本例では外耳に載せる半リング状の台座を支持体とする吸入用具を図示している。
【0019】
図2に示すように、供給された吸入用ガスは吸入用ガス放出部から噴出する。噴出箇所は、鼻・口部ではない顔部表面であり、本例では耳穴と頬骨の間に位置している。放出した吸入用ガス噴流は鼻口部に向かって流れる。なお、本例に示す通り、吸入用ガス供給用具は鼻・口から離れた位置にあり、チューブが顔表面を這う事がないため、美観を損なわない。
【0020】
図3は、図1を断面Aで切断した断面図であり、吸入用ガス噴出口を示している。この吸入用ガス噴出口のノズル方向、衝突部である顔表面とのなす角度は鋭角である(図4)。
図5に示す通り、ノズルには、吸入用ガス供給チューブ先端を受ける差込部を備えている。
図6に示す通り、放出部は噴出速度を調節するため、絞り手段として異なる開口面積の複数孔を備えた調節機構を備えてもよい。流量調節機構の詳細図を図7に示す。
【0021】
また、噴流が付着する距離は、噴出方向と衝突面(顔部)の角度によって異なるため、噴出角度を調節する機構が必要な場合は、例えば図8に示すように、開口方向の異なる複数孔を備えた調節機構を用いるとよい。
【0022】
別の態様として、吸入用ガス供給チューブ固定部は、図9に示すような吸入用ガス供給チューブを把持する方法でも良く、この場合は吸入用ガス放出口が、吸入用ガス供給チューブの先端となるが、吸入用ガス放出出口の位置は、吸入用ガス供給チューブの把持位置を変えることで調節できる。吸入用ガス放出口であるチューブ先端は供給角度が鋭角となるようにする。
【0023】
図10に、本発明の吸入用ガス供給用具の別の態様例として吸入用ガス放出口を2つ持つ実施例を示す。この実現態様例では鼻・口正面で吸入用ガス噴流を衝突させることができ、鼻口周辺の吸入用ガス濃度を上げることができる。
【0024】
図2に示した吸入用ガス供給用具を用い、吸入用ガスを実際に吸入することが可能かどうか確認する試験を、頭部の擬似モデル及び人工肺を用い実施した。吸入用ガスには酸素富化ガスを用いた。試験方法の概略を図11に示す。呼吸回数:20回/分、一回換気量:500mlの呼吸に設定し、噴出角度(θ)が人工肺の末端の酸素濃度に与える影響を調べた。
【0025】
図12に示した結果の通り、酸素噴出方向と顔表面のなす角度が0度(噴流と頬が平行関係)である場合には、酸素富化ガス供給流量を変化させても、人工肺末端の酸素濃度は21[%O2]であり、環境の酸素濃度と変わらず、酸素富化ガスが人工肺末端に供給されていないことが分かる。一方、噴出方向と顔表面のなす角度が30度である場合は、人工肺末端の酸素濃度が上昇しており、酸素富化ガスを吸入できている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の吸入用ガス供給用具を用いた吸入用ガス供給システムの模式図(横)。
【図2】本発明の吸入用ガス供給用具を用いた吸入用ガス供給システムの模式図(斜め)。
【図3】断面Aで切断した断面図。
【図4】ノズル方向を示す図。
【図5】吸入用ガス供給チューブ固定部(差込型)。
【図6】噴出速度調節機構。
【図7】噴出速度調節機構(詳細)。
【図8】噴出角度調節機構。
【図9】吸入用ガス供給チューブ固定部(掴み型)の吸入用ガス供給用具の実施態様例。
【図10】2つの噴出口を持つ吸入用ガス供給用具の実施態様例。
【図11】呼吸模擬実験の模式図。
【図12】呼吸模擬実験の結果。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入用ガス供給源からチューブを介して吸入用ガスを使用者に供給する供給用具であり、装着者の頭部にかける支持体、該支持体に一方の端部に吸入用ガス供給用チューブの固定部、他方の端部が装着者の鼻・口から離れた位置に位置し、該他方の端部から装着者の顔部外周面上の鼻・口方向に吸入用ガスを送風する吸入用ガス供給用ノズルを備え、且つ、該吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガス供給先端部のノズル管路方向と装着部顔部表面のなす角度が鋭角であることを特徴とする吸入用ガス供給用具。
【請求項2】
該吸入用ガス供給用ノズルの供給端部に該吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガスの供給方向と装着部顔部表面のなす角度を変更する角度切替手段を有することを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項3】
該吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガスの供給方向と顔部表面のなす角度が15度より大きく80度未満であることを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項4】
該吸入用ガス供給用ノズルのノズル管路径が該吸入用ガスの最大流速が20m/秒以下となる口径であり、流速を調整する絞り弁を有することを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項5】
該吸入用ガス供給用ノズルのノズル長を可変可能な伸縮機構を有することを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項6】
該吸入用ガス供給用ノズルの供給方向を調節する方向可変部を有することを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項7】
該吸入用ガス供給用ノズルが複数の吸入用ガス供給用ノズルからなり、該吸入用ガス供給用ノズルの各々の供給端部の吸入用ガスの供給方向が装着者の鼻・口部方向に調整可能となるように該支持体に固定されていることを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項8】
該支持体が使用者の外耳に乗せる台座であり、該台座に固定される該吸入用ガス供給用ノズルの供給端部が、装着者の頬骨下部、乃至、耳珠部付近の皮膚上となるノズル長であることを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項9】
該吸入用ガスが、酸素療法用の酸素ガスであることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項1】
吸入用ガス供給源からチューブを介して吸入用ガスを使用者に供給する供給用具であり、装着者の頭部にかける支持体、該支持体に一方の端部に吸入用ガス供給用チューブの固定部、他方の端部が装着者の鼻・口から離れた位置に位置し、該他方の端部から装着者の顔部外周面上の鼻・口方向に吸入用ガスを送風する吸入用ガス供給用ノズルを備え、且つ、該吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガス供給先端部のノズル管路方向と装着部顔部表面のなす角度が鋭角であることを特徴とする吸入用ガス供給用具。
【請求項2】
該吸入用ガス供給用ノズルの供給端部に該吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガスの供給方向と装着部顔部表面のなす角度を変更する角度切替手段を有することを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項3】
該吸入用ガス供給用ノズルの吸入用ガスの供給方向と顔部表面のなす角度が15度より大きく80度未満であることを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項4】
該吸入用ガス供給用ノズルのノズル管路径が該吸入用ガスの最大流速が20m/秒以下となる口径であり、流速を調整する絞り弁を有することを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項5】
該吸入用ガス供給用ノズルのノズル長を可変可能な伸縮機構を有することを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項6】
該吸入用ガス供給用ノズルの供給方向を調節する方向可変部を有することを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項7】
該吸入用ガス供給用ノズルが複数の吸入用ガス供給用ノズルからなり、該吸入用ガス供給用ノズルの各々の供給端部の吸入用ガスの供給方向が装着者の鼻・口部方向に調整可能となるように該支持体に固定されていることを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項8】
該支持体が使用者の外耳に乗せる台座であり、該台座に固定される該吸入用ガス供給用ノズルの供給端部が、装着者の頬骨下部、乃至、耳珠部付近の皮膚上となるノズル長であることを特徴とする請求項1記載の吸入用ガス供給用具。
【請求項9】
該吸入用ガスが、酸素療法用の酸素ガスであることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の吸入用ガス供給用具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【公開番号】特開2008−264224(P2008−264224A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111627(P2007−111627)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
[ Back to top ]