説明

吸入療法に使用するためのエアロゾル形成装置

【課題】吸入療法に使用するための薬物含有エアロゾルを形成し、送出する装置を提供する。
【解決手段】装置には、ハウジング8と、ガス/蒸気混合空気通路を有する空気通路102と、が含まれる。空気通路102には、さらにまた薬物を含む組成物60でその表面が塗布された金属製基質64を有するサブアッセンブリが含まれる。薬物含有蒸気を形成するために金属製基質64を加熱する加熱システムを備え、空気通路102は、薬物含有蒸気から、選択された大きさ幅の安定したエアロゾル粒子を形成するように構成された、エアロゾル形成のためのガス/蒸気混合領域を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を含有するエアロゾルの吸入送出に関する。詳細には、本発明は吸入
療法に使用するための薬物含有エアロゾルを形成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、あらゆる目的のために参照してここに組み込まれる2001年10月26日
に提出されたLloyedらの「生理学的に活性な化合物を送出するための方法および装
置(Method and Device for Delivering a Phy
siologically Active Compound)」と題する米国特許出願
第10/057,198号および2001年10月26日に提出されたWensleyら
の「エアロゾルを発生させる装置および方法(Aerosol Generating
Device and Method)」と題する米国特許出願第10/057,197
号の一部継続出願である。本出願はさらにまた、その全開示が参照してここに組み込まれ
る2001年6月5日に提出されたWensleyらの「エアロゾルを発生させる装置お
よび方法(Aerosol Generating Device and Metho
d)」と題する米国特許出願第60/296,225号への優先権を主張する。
【0003】
現在、薬物の吸入送出のためにはドライパウダーインヘラー(乾燥粉末吸入器)、ネブ
ライザー(噴霧器)、および加圧式定量噴霧吸入器を含む多数の装置が承認されている。
しかし特定薬物と一緒に、これらの装置はさらにまた広範囲の賦形剤も送出する。
【0004】
望ましいのは、賦形剤の不在下でエアロゾルを生成できる装置を提供することである。
このような装置を提供することが本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10/057,198号
【特許文献2】米国特許第10/057,197号
【特許文献3】米国特許第60/296,225号
【発明の概要】
【0006】
本発明は、微粒子を含有するエアロゾルの吸入送出に関する。詳細には、本発明は吸入
療法に使用するための薬物含有エアロゾルを形成する装置に関する。
【0007】
本発明の装置態様では、吸入療法のための薬物含有エアロゾルを送出する装置を提供す
る。本装置にはハウジングと、ガス/蒸気混合空気通路を有する空気通路と、が含まれる
。空気通路には、さらにまた薬物を含む組成物でその表面が塗布された金属製基質を有す
るサブアッセンブリが含まれる。
【0008】
典型的には、前記装置にはさらにまた加熱システムが含まれる。好ましくは、前記加熱
システムは誘導加熱システムである。より好ましくは、前記加熱システムは空気がフェラ
イト・トロイドを有する誘導加熱システムである。
【0009】
典型的には、前記空気通路はガス/蒸気混合領域に沿って制限された断面積を含有する
。好ましくは、前記空気通路にはさらにまた空気が空気通路を通過するにつれて渦を惹起
するための手段が含まれる。
【0010】
典型的には、前記薬物は0.15未満の分解指数を有する。好ましくは、前記薬物は0
.10未満の分解指数を有する。より好ましくは、前記薬物は0.05未満の分解指数を
有する。
【0011】
典型的には、前記組成物の薬物は次のクラスの薬物である。すなわち、抗生物質、抗痙
攣薬、抗うつ薬、制吐薬、抗ヒスタミン剤、抗パーキンソン薬、抗精神病薬、抗不安薬、
勃起不全薬、偏頭痛薬、アルコール中毒治療薬、嗜癖治療薬、筋弛緩薬、非ステロイド抗
炎症薬、オピオイド、その他の鎮痛薬および興奮薬である。
【0012】
典型的には、前記薬物が抗生物質である場合は、次の化合物の1つから選択される。す
なわち、セフメタゾール;セファゾリン;セファレキシン;セフォキシチン;セファセト
リル;セファログリシン;セファロリジン;セファロスポリンCのようなセファロスポリ
ン;セファロチン;セファマイシンA、セファマイシンBおよびセファマイシンCのよう
なセファマイシン;セファリン;セフラジン;アンピシリン;アモキシリン;ヘタシリン
;カルフェシリン;カリンダシリン;カルベニシリン;アミルペニシリン;アジドシリン
;ベンジルペニシリン;クロメトシリン;クロキサシリン;シクラシリン;メチシリン;
ナフシリン;2−ペンテニルペニシリン;ペニシリンN、ペニシリンO、ペニシリンS、
ペニシリンVのようなペニシリン;クロロブチンペニシリン;ジクロキサシリン;ジフェ
ニシリン;ヘプチルペニシリン;およびメタンピシリンの1つである。
【0013】
典型的には、前記薬物が抗痙攣薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。す
なわち、ガバペンチン、チアガビン、およびビガバトリンの1つである。
【0014】
典型的には、前記薬物が抗うつ薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。ア
ミトリプチリン、アモキサピン、ベンモキシン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシ
プラミン、ドスレピン、ドキセピン、イミプラミン、キタンセリン、ロフェプラミン、メ
ジフォキサミン、ミアンセリン、マプロトリン、ミルタザピン、ノルトリプチリン、プロ
トリプチリン、トリミプラミン、ビロキサジン、シタロプラム、コチニン、デュロキセチ
ン、フルオキセチン、フルボキサミン、ミルナシプラン、ニソキセチン、パロキセチン、
レボキセチン、セルトラリン、チアネプチン、アセタフェナジン、ビネダリン、ブロファ
ロミン、セリクラミン、クロボキサミン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、モクロ
ベミド、フェニルヒドラジン、フェネルジン、セレギリン、シブトラミン、トラニルシプ
ロミン、アデメチオニン、アドラフィニル、アメセルギド、アミスルプリド、アンペロザ
イド、ベナクチジン、ブプロピオン、カロキサゾン、ゲピロン、イダゾキサン、メトラル
インドール、ミルナシプラン、ミナプリン、ネファゾドン、ノミフェンシン、リタンセリ
ン、ロキシインドール、S−アデノシルメチオニン、トフェナシン、トラゾドン、トリプ
トファン、ベンラファキシン、およびザロスピロンの1つである。
【0015】
典型的には、前記薬物が制吐薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。すな
わち、アリザプリド、アザセトロン、ベンズキナミド、ブロモプリド、ブクリジン、クロ
ルプロマジン、シンナリジン、クレボプリド、シクリジン、ジフェンヒドラミン、ジフェ
ニドール、ドラセトロンメタンスルフォネート、ドロペリドール、グラニセトロン、ヒヨ
スチン、ロラゼパム、メトクロプラミド、メトピマジン、オンダンセトロン、ペルフェナ
ジン、プロメタジン、プロクロルペラジン、スコポラミン、トリエチルペラジン、トリフ
ルオペラジン、トリフルプロマジン、トリメトベンズアミド、トロピセトロン、ドメリド
ン、およびパロノセトロンの1つである。
【0016】
典型的には、前記薬物が抗ヒスタミン剤である場合は、次の化合物の1つから選択され
る。アザタジン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプ
タジン、デキスメデトミジン、ジフェニヒドラミン、ドキシラミン、ヒドロキシジン、セ
トリジン、フェキソフェナジン、ロラチジン、およびプロメタジンの1つである。
【0017】
典型的には、前記薬物が抗パーキンソン薬である場合は、次の化合物の1つから選択さ
れる。すなわち、アマンタジン、バクロフェン、ビペリデン、ベンズトロピン、オルフェ
ナドリン、プロシクリジン、トリヘキシルフェニジル、レボドパ、カルビドパ、セレギリ
ン、デプレニル、アンドロピニロール、アポモルフィン、ベンセラジド、ブロモクリプチ
ン、ブジピン、カベルゴリン、ジヒドロエルゴクリプチン、エリプロジル、エプタスチグ
ミン、エルゴリンプラミペキソール、ガランタミン、ラザベミド、リスリド、マジンドー
ル、メマンチン、モフェギリン、ペルゴリド、プラミペキソール、プロペントフィリン、
ラサギリン、レマセミド、スフェラミン、テルグリド、エンタカポン、およびトルカポン
の1つである。
【0018】
典型的には、前記薬物が抗精神病薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。
すなわち、アセトフェナジン、アリザプリド、アンペロザイド、ベンペリドール、ベンズ
キナミド、ブロムペリドール、ブラメート、ブタペラジン、カルフェナジン、カルピラミ
ン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロカプラミン、クロマクラン、クロペン
チキソール、クロスピラジン、クロチアピン、シアメマジン、ドロペリドール、フルペン
チキソール、フルフェナジン、フルスピリレン、ハロペリドール、メソリダジン、メトフ
ェナゼート、モリンドロン、ペンフルリドール、ペリシアジン、ペルフェナジン、ピモジ
ド、ピパメロン、ピペラセタジン、ピポチアジン、プロクロルペラジン、プロマジン、レ
モキシプリド、セルチンドール、スピペロン、スルピリド、チオリダジン、チオチキセン
、トリフルペリドール、トリフルプロマジン、トリフルオペラジン、ジプラシドン、ゾテ
ピン、ズクロペンチキソール、アミスルプリド、ブタクラモール、クロザピン、メルペロ
ン、オランザピン、クエチアピン、およびリスペリドンである。
【0019】
典型的には、前記薬物が抗不安薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。メ
クロカロン、メデトミジン、メトミデート、アジナゾラム、クロルジアゼポキシド、クロ
ベンゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ロプラゾラム、ミダゾラム、アルピデム、アル
セロキシロン、アンフェニドン、アザシクロノール、ブロムイソバルム、ブスピロン、カ
ルシウムN−アスパラギン酸カルバモイル、カプトジアミン、カプリド、カルボクロラー
ル、カルブロマール、クロラールベタイン、エンシプラジン、フレシノキサン、イプサピ
ラオン、レソピトロン、ロキサピン、メタカロン、メスプリロン、プロパノロール、タン
ドスピロン、トラザドン、ゾピクロン、およびゾルピデムの1つである。
【0020】
典型的には、前記薬物が勃起不全薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。
すなわち、シアリス(IC351)、シルデナフィル、バルデナフィル、アポモルフィン
、アポモルフィンジアセテート、フェントラミン、およびヨヒンビンの1つである。
【0021】
典型的には、前記薬物が偏頭痛薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。す
なわち、アルモトリプタン、アルペロプリド、コデイン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴ
タミン、エレトリプタン、フロバトリプタン、イソメテプテン、リドカイン、リスリド、
メトクロプラミド、ナラトリプタン、オキシコドン、プロポキシフェン、リザトリプタン
、スマトリプタン、トルフェナム酸、ゾルミトリプタン、アミトリプチリン、アテノロー
ル、クロニジン、シプロヘプタジン、ジルチアゼム、ドキセピン、フルオキセチン、リシ
ノプリル、メチセルギド、メトプロロール、ナドロール、ノルトリプチリン、パロキセチ
ン、ピゾチフェン、ピゾチリン、プロパノロール、プロトリプチリン、セルトラリン、チ
モロール、およびベラパミルの1つである。
【0022】
典型的には、前記薬物がアルコール中毒治療薬である場合は、次の化合物の1つから選
択される。すなわち、ナロキソン、ナルトレキソン、およびジスルフィラムの1つである

【0023】
典型的には、前記薬物が嗜癖治療薬である場合、その薬物はブプレノルフィンである。
【0024】
典型的には、前記薬物が筋弛緩薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。す
なわち、バクロフェン、シクロベンザプリン、オルフェナドリン、キニン、およびチザニ
ジンの1つである。
【0025】
典型的には、前記薬物が非ステロイド抗炎症薬である場合は、次の化合物の1つから選
択される。すなわち、アセクロフェナク、アルミノプロフェン、アムフェナク、アミノプ
ロピロン、アミキセトリン、ベノキサプロフェン、ブロムフェナク、ブフェキサマク、カ
プロフェン、コリン、サリチル酸塩、シンコフェン、シンメタシン、クロプリアク、クロ
メタシン、ジクロフェナク、エトドラク、インドプロフェン、マジプレドン、マクロフェ
ナメート、ピロキシカム、ピルプロフェン、およびトルフェナム酸塩の1つである。
【0026】
典型的には、前記薬物がオピオイドである場合は、次の化合物の1つから選択される。
すなわち、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベン
ジルモルフィン、ベンジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、カルビフェン
、シプラマドール、クロニトラゼン、コデイン、デキストロモラミド、デキストロプロポ
キシフェン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、ジピパノン、フ
ェンタニル、ヒドロモルホン、L−αアセチルメタドール、ロフェンタニル、レボルファ
ノール、メペリジン、メタドン、メプタジノール、メトポン、モルフィン、ナルブフィン
、ナロルフィン、オキシコドン、パパベレタム、ペチジン、ペンタゾシン、フェナゾシン
、レミフェンタニル、スフェンタニル、およびトラマドールの1つである。
【0027】
典型的には、前記薬物が他の鎮痛薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。
すなわち、アパゾン、ベンズピペリロン、ベンジダミン、カフェイン、クロニキシン、エ
トヘプタジン、フルピルチン、ネフォパム、オルフェナドリン、プロパセタモール、およ
びプロポキシフェンの1つである。
【0028】
典型的には、前記薬物が興奮薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。すな
わち、アンフェタミン、ブルシン、カフェイン、デキスフェンフルラミン、デキストロア
ンフェタミン、エフェドリン、フェンフルラミン、マジンドール、メチルフェニデート、
ペモリン、フェンテルミン、およびシブトラミンの1つである。
【0029】
本発明の方法態様では、吸入療法に使用するための薬物含有エアロゾルを形成するため
の方法を提供する。この方法は、蒸気を形成するために薬物を含む組成物が塗布された基
質を加熱するステップと、粒子を有するエアロゾルが形成されるように前記蒸気とある容
積の空気とを混合するステップとを含む。
【0030】
典型的には、基質は加熱帯を通って移動させることによって加熱される。好ましくは、
加熱帯は交流磁場によって誘導された渦電流によって主として作り出される。
【0031】
典型的には、形成したエアロゾルは約10粒子/cc(空気)を有している。
【0032】
一般的には、組成物中の薬物は本発明の装置に関して上記で説明した薬物または薬物ク
ラスの1つである。
【0033】
更なる特徴および利点は、添付の図面に示されているように、本発明の様々な実施例に
ついての以下の説明から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の装置の実験実施例を使用して実験を実施するためのシステム全体の略図である。
【図2】図1に示した実施例の上部、右端および正面斜視図である。
【図3】図2に示した実施例の部分断面および部分略側面図である。
【図4】図2に示した実施例の部分断面および部分略側面図である。
【図5】図2に示した実施例の部分断面および部分略平面図である。
【図6】警報装置を使用した本発明の装置のまた別の実施例の略横断側面図である。
【図7】スライド内に取り付けられているサブアッセンブリを示している、図2に示した実施例の化合物および可動スライドを含有する可動式サブアッセンブリの上部、左端および正面斜視図である。
【図8】電気駆動回路を示している、図2に示した実施例の加熱素子の略図である。
【図9】ベンチュリ管を使用した、本発明の第2実施例の略側面図である。
【図10】前記化合物が塗布された薄壁管を使用した、本発明の第4実施例の略側面図である。
【図11】図10に示した実施例の略側端面図である。
【図12】交流磁場を発生させる誘導加熱システムを示している、図10に示した実施例の略側端面図である。
【図13】薄壁管内で流量絞り弁を使用した、図10に示したまた別の実施例の略側面図である。
【図14】前記化合物のための膨張可能な容器を使用した、本発明の第5実施例の略側面図である。
【図15】不活性雰囲気中の前記化合物のための容器を使用した、本発明の第6実施例の略側面図である。
【図16】前記化合物上方での不活性雰囲気の再循環を使用した、図15に示した実施例の略側面図である。
【図17】前記化合物で被覆された粒子を含有する管を使用した、本発明の第7実施例の略側面図である。
【図18】被覆された粒子の上方を通過するガスを加熱するための加熱システムを使用した、図17に示した実施例の略側面図である。
【図19】ここでは「オーブン装置」と呼ぶ、本発明の第8実施例の略側面図である。
【図20】勾配加熱を使用した、本発明の第9実施例の略側面図である。
【図21】前記化合物で被覆された細目スクリーンを使用した、本発明の第10実施例の略側面図である。
【図22】図21に示した実施例の上部、右端および正面斜視図である。
【図23】小さな粒子から大きな粒子への凝集速度のプロット図である。
【図24】前記化合物の凝集係数(K)vs.粒径のプロット図である。
【図25】例えばジフェニルエーテル、ヘキサデカン、ギ酸ゲラニルおよびカプロン酸のような様々な化合物の温度に対する蒸気圧値のプロット図である。
【図26】図1に示したシステムを使用した実験中に様々なイヌに投与されたIV用量および吸入用量の両方についての血中濃度のプロット図である。
【図27】10〜310μgの範囲内の化合物質量に対する質量中央径(MMD)の計算値および実験値のプロット図である。
【図28】10〜310μgの範囲内の化合物質量に対するMMDの計算値および実験値のプロット図である;および
【図29】気化した化合物対混合ガスの体積の比率の関数としてのエアロゾルの理論サイズ(径)のプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[用語の定義]
任意の粒子の「空気力学的径」は、任意の粒子と同一沈降速度を有する1g/mLの密
度(水の密度)を備える球状液滴の径を意味する。
【0036】
「エアロゾル」は、気体中の固体または液体粒子の懸濁剤を意味する。
【0037】
「分解指数」は、実施例7に記載した分析(assay)から導き出される数を意味す
る。この数は、生成されたエアロゾルの純度を1から減じることによって決定される。
【0038】
「薬物」は、疾患の予防、診断、治療もしくは治癒において、疼痛緩和のため、または
ヒトもしくは動物における何らの生理的または病理的障害を制御または改善するために使
用されるあらゆる化合物を意味する。このような化合物は、参照してここに組み込まれる
医師用便覧(Physician’s Desk Reference)(Medica
l Economics Company社、モントベール、NJ,第56版、2002
年)に列挙されている。
【0039】
代表的薬物には次のものが含まれる。すなわち、大麻からのカンナビノイド抽出液、T
HC(テトラヒドロカナビノール)、ケトロラク、フェンタニル、モルフィン、テストス
テロン、イブプロフェン、コデイン、ニコチン、ビタミンA、ビタミンEアセテート、ビ
タミンE、ニトログリセリン、ピロカルピン、メスカリン、テストステロンエナンテート
、メントール、フェンカラムクデ、メトスクシミド、エプタスチグミン、プロメタジン、
プロカイン、レチノール、リドカイン、トリメプラジン、イソソルビドジニトレート、チ
モロール、メチプリロン、エタミフィリン、プロポキシフェン、サルメトロール、ビタミ
ンEスクシネート、メタドン、オクスプレノロール、イソプロテレノール、重酒石酸、エ
タカロン、ビタミンD3、エタンブトール、リトドリン、オモコナゾール、コカイン、ロ
ムスチン、ケタミン、ケトプロフェン、シラザプロール、プロプラノロール、スフェンタ
ニル、メタプロテレノール、プレントキサピリン、テストステロンプロプリオネート、バ
ルプロ酸、アセブトロール、テルブタリン、ジアゼパム、トピラメート、ペントバルビタ
ール、塩酸アルフェンタニル、パパベリン、ニセルゴリン、フルコナゾール、ザフィルル
カスト、テストステロンアセテート、ドロペリドール、アテノロール、メトクロプラミド
、エナラプリル、アルブテロール、ケトチフェン、イソプロテレノール、塩酸アミオダロ
ン、ジロートン、ミダゾラム、オキシコドン、シロスタゾール、プロポフォール、ナビロ
ン、ガバペンチン、ファモチジン、ロレゼパム、ナルトレキソン、アセタミノフェン、ス
マトリプタン、ビトルテロール、ニフェジピン、フェノバルビタール、フェントラミン、
13−シス−レチノイン酸、塩酸ドロプレニラミン、アムロジピン、カフェイン、ゾピク
ロン、塩酸トラマドール、ピルブテロールナロキソン、塩酸メペリジン、トリメトベンズ
アミド、ナルメフェン、スコポラミン、シルデナフィル、カルバマゼピン、塩酸プロカテ
ロール、メチセルギド、グルタチオン、オランザピン、ゾルピデム、レボルファノール、
ブスピロンおよびそれらの混合物である。
【0040】
典型的には、前記組成物の薬物は次のクラスの薬物である。すなわち、抗生物質、抗痙
攣薬、抗うつ薬、制吐薬、抗ヒスタミン剤、抗パーキンソン薬、抗精神病薬、抗不安薬、
勃起不全薬、偏頭痛薬、アルコール中毒治療薬、嗜癖治療薬、筋弛緩薬、非ステロイド抗
炎症薬、オピオイド、その他の鎮痛薬、カンナビノイドおよび興奮薬である。
【0041】
典型的には、前記薬物が抗生物質である場合は、次の化合物の1つから選択される。す
なわち、セフメタゾール;セファゾリン;セファレキシン;セフォキシチン;セファセト
リル;セファログリシン;セファロリジン;セファロスポリンCのようなセファロスポリ
ン;セファロチン;セファマイシンA、セファマイシンBおよびセファマイシンCのよう
なセファマイシン;セファリン;セフラジン;アンピシリン;アモキシリン;ヘタシリン
;カルフェシリン;カリンダシリン;カルベニシリン;アミルペニシリン;アジドシリン
;ベンジルペニシリン;クロメトシリン;クロキサシリン;シクラシリン;メチシリン;
ナフシリン;2−ペンテニルペニシリン;ペニシリンN、ペニシリンO、ペニシリンS、
ペニシリンVのようなペニシリン;ジクロキサシリン;ジフェニシリン;ヘプチルペニシ
リン;およびメタンピシリンの1つである。
【0042】
典型的には、前記薬物が抗痙攣薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。す
なわち、ガバペンチン、チアガビン、およびビガバトリンの1つである。
【0043】
典型的には、前記薬物が抗うつ薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。す
なわち、アミトリプチリン、アモキサピン、ベンモキシン、ブトリプチリン、クロミプラ
ミン、デシプラミン、ドスレピン、ドキセピン、イミプラミン、キタンセリン、ロフェプ
ラミン、メジフォキサミン、ミアンセリン、マプロトリン、ミルタザピン、ノルトリプチ
リン、プロトリプチリン、トリミプラミン、ビロキサジン、シタロプラム、コチニン、デ
ュロキセチン、フルオキセチン、フルボキサミン、ミルナシプラン、ニソキセチン、パロ
キセチン、レボキセチン、セルトラリン、チアネプチン、アセタフェナジン、ビネダリン
、ブロファロミン、セリクラミン、クロボキサミン、イプロニアジド、イソカルボキサジ
ド、モクロベミド、フェニルヒドラジン、フェネルジン、セレギリン、シブトラミン、ト
ラニルシプロミン、アデメチオニン、アドラフィニル、アメセルギド、アミスルプリド、
アンペロザイド、ベナクチジン、ブプロピオン、カロキサゾン、ゲピロン、イダゾキサン
、メトラルインドール、ミルナシプラン、ミナプリン、ネファゾドン、ノミフェンシン、
リタンセリン、ロキシインドール、S−アデノシルメチオニン、トフェナシン、トラゾド
ン、トリプトファン、ベンラファキシン、およびザロスピロンの1つである。
【0044】
典型的には、前記薬物が制吐薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。すな
わち、アリザプリド、アザセトロン、ベンズキナミド、ブロモプリド、ブクリジン、クロ
ルプロマジン、シンナリジン、クレボプリド、シクリジン、ジフェンヒドラミン、ジフェ
ニドール、ドラセトロンメタンスルフォネート、ドロナビノール、ドロペリドール、グラ
ニセトロン、ヒヨスチン、ロラゼパム、メトクロプラミド、メトピマジン、オンダンセト
ロン、ペルフェナジン、プロメタジン、プロクロルペラジン、スコポラミン、トリエチル
ペラジン、トリフルオペラジン、トリフルプロマジン、トリメトベンズアミド、トロピセ
トロン、ドメリドン、およびパロノセトロンの1つである。
【0045】
典型的には、前記薬物が抗ヒスタミン剤である場合は、次の化合物の1つから選択され
る。すなわち、アザタジン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、
シプロヘプタジン、デキスメデトミジン、ジフェニヒドラミン、ドキシラミン、ヒドロキ
シジン、セトリジン、フェキソフェナジン、ロラチジン、およびプロメタジンの1つであ
る。
【0046】
典型的には、前記薬物が抗パーキンソン薬である場合は、次の化合物の1つから選択さ
れる。すなわち、アマンタジン、バクロフェン、ビペリデン、ベンズトロピン、オルフェ
ナドリン、プロシクリジン、トリヘキシルフェニジル、レボドパ、カルビドパ、セレギリ
ン、デプレニル、アンドロピニロール、アポモルフィン、ベンセラジド、ブロモクリプチ
ン、ブジピン、カベルゴリン、ジヒドロエルゴクリプチン、エリプロジル、エプタスチグ
ミン、エルゴリンプラミペキソール、ガランタミン、ラザベミド、リスリド、マジンドー
ル、メマンチン、モフェギリン、ペルゴリド、プラミペキソール、プロペントフィリン、
ラサギリン、レマセミド、スフェラミン、テルグリド、エンタカポン、およびトルカポン
の1つである。
【0047】
典型的には、前記薬物が抗精神病薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。
すなわち、アセトフェナジン、アリザプリド、アンペロザイド、ベンペリドール、ベンズ
キナミド、ブロムペリドール、ブラメート、ブタペラジン、カルフェナジン、カルピラミ
ン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロカプラミン、クロマクラン、クロペン
チキソール、クロスピラジン、クロチアピン、シアメマジン、ドロペリドール、フルペン
チキソール、フルフェナジン、フルスピリレン、ハロペリドール、メソリダジン、メトフ
ェナゼート、モリンドロン、ペンフルリドール、ペリシアジン、ペルフェナジン、ピモジ
ド、ピパメロン、ピペラセタジン、ピポチアジン、プロクロルペラジン、プロマジン、レ
モキシプリド、セルチンドール、スピペロン、スルピリド、チオリダジン、チオチキセン
、トリフルペリドール、トリフルプロマジン、トリフルオペラジン、ジプラシドン、ゾテ
ピン、ズクロペンチキソール、アミスルプリド、ブタクラモール、クロザピン、メルペロ
ン、オランザピン、クエチアピン、およびリスペリドンの1つである。
【0048】
典型的には、前記薬物が抗不安薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。す
なわち、メクロカロン、メデトミジン、メトミデート、アジナゾラム、クロルジアゼポキ
シド、クロベンゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ロプラゾラム、ミダゾラム、アルピ
デム、アルセロキシロン、アンフェニドン、アザシクロノール、ブロムイソバルム、ブス
ピロン、カルシウムN−アスパラギン酸カルボモイル、カプトジアミン、カプリド、カル
ボクロラール、カルブロマール、クロラールベタイン、エンシプラジン、フレシノキサン
、イプサピラオン、レソピトロン、ロキサピン、メタカロン、メスプリロン、プロパノロ
ール、タンドスピロン、トラザドン、ゾピクロン、およびゾルピデムの1つである。
【0049】
典型的には、前記薬物が勃起不全薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。
すなわち、シアリス(IC351)、シルデナフィル、バルデナフィル、アポモルフィン
、アポモルフィンジアセテート、フェントラミン、およびヨヒンビンの1つである。
【0050】
典型的には、前記薬物が偏頭痛薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。す
なわち、アルモトリプタン、アルペロプリド、コデイン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴ
タミン、エレトリプタン、フロバトリプタン、イソメテプテン、リドカイン、リスリド、
メトクロプラミド、ナラトリプタン、オキシコドン、プロポキシフェン、リザトリプタン
、スマトリプタン、トルフェナム酸、ゾルミトリプタン、アミトリプチリン、アテノロー
ル、クロニジン、シプロヘプタジン、ジルチアゼム、ドキセピン、フルオキセチン、リシ
ノプリル、メチセルギド、メトプロロール、ナドロール、ノルトリプチリン、パロキセチ
ン、ピゾチフェン、ピゾチリン、プロパノロール、プロトリプチリン、セルトラリン、チ
モロール、およびベラパミルの1つである。
【0051】
典型的には、前記薬物がアルコール中毒治療薬である場合は、次の化合物の1つから選
択される。すなわち、ナロキソン、ナルトレキソン、およびジスルフィラムの1つである

【0052】
典型的には、前記薬物が嗜癖治療薬である場合、前記薬物はブプレノルフィンである。
【0053】
典型的には、前記薬物が筋弛緩薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。す
なわち、バクロフェン、シクロベンザプリン、オルフェナドリン、キニン、およびチザニ
ジンの1つである。
【0054】
典型的には、前記薬物が非ステロイド抗炎症薬である場合は、次の化合物の1つから選
択される。すなわち、アセクロフェナク、アルミノプロフェン、アムフェナク、アミノプ
ロピロン、アミキセトリン、ベノキサプロフェン、ブロムフェナク、ブフェキサマク、カ
プロフェン、コリン、サリチル酸塩、シンコフェン、シンメタシン、クロプリアク、クロ
メタシン、ジクロフェナク、エトドラク、インドプロフェン、マジプレドン、マクロフェ
ナメート、ピロキシカム、ピルプロフェン、およびトルフェナム酸塩の1つである。
【0055】
典型的には、前記薬物がオピオイドである場合は、次の化合物の1つから選択される。
すなわち、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベン
ジルモルフィン、ベンジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、カルビフェン
、シプラマドール、クロニトラゼン、コデイン、デキストロモラミド、デキストロプロポ
キシフェン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、ジピパノン、フ
ェンタニル、ヒドロモルホン、L−αアセチルメタドール、ロフェンタニル、レボルファ
ノール、メペリジン、メタドン、メプタジノール、メトポン、モルフィン、ナルブフィン
、ナロルフィン、オキシコドン、パパベレタム、ペチジン、ペンタゾシン、フェナゾシン
、レミフェンタニル、スフェンタニル、およびトラマドールの1つである。
【0056】
典型的には、前記薬物が他の鎮痛薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。
すなわち、アパゾン、ベンズピペリロン、ベンジダミン、カフェイン、クロニキシン、エ
トヘプタジン、フルピルチン、ネフォパム、オルフェナドリン、プロパセタモール、およ
びプロポキシフェンの1つである。
【0057】
典型的には、前記薬物がカンナビノイドである場合は、それはテトラヒドロカンナビノ
ール(例、δ−8またはδ−9)である。
【0058】
典型的には、前記薬物が興奮薬である場合は、次の化合物の1つから選択される。すな
わち、アンフェタミン、ブルシン、カフェイン、デキスフェンフルラミン、デキストロア
ンフェタミン、エフェドリン、フェンフルラミン、マジンドール、メチルフェニデート、
ペモリン、フェンテルミン、およびシブトラミンの1つである。
【0059】
「薬物分解産物」は、前記薬物の化学修飾の結果として生じる化合物を意味する。修飾
は、例えば熱的または光化学的に誘導された反応の結果であってよい。そのような反応に
は、制限なく酸化および加水分解が含まれる。
【0060】
エアロゾルの「空気力学的質量中央径」もしくは「MMAD」は、エアロゾルの粒子質
量の半分をMMADより大きい空気力学的径を備える粒子が占め、残り半分をMMADよ
り小さい空気力学的径を備える粒子が占める場合の空気力学的径を意味する。
【0061】
「安定性エアロゾル」は、構成粒子のMMADがある設定時間にわたり50%超までは
変動しないエアロゾルを意味する。例えば100nmのMMADを備えるエアロゾルは、
1秒間後には50nm〜150nmのMMADを有するとしても、1秒間にわたり安定性
である。好ましくは、MMADはある設定期間にわたり25%超までは変動しない。より
好ましくは、MMADは経時的に20%、15%、10%または5%超までは変動しない

[エアロゾル化装置]
実施例1では、イヌを対象とするin vivo(生体内)実験について説明する。な
お、この実施例は、それを通過する空気流を増加させることにより本質的にヒト吸入用に
適応するように容易に修正できる。
【0062】
図1〜8を参照しながら、本発明のエアロゾル化装置の第1実施例(1)を説明する。
図1に示した装置1は、流量計4(例、TSI 4100流量計)と操作可能に接続され
ている。流量計4からの示度は図2に示したケース8内の電子機器に送信される。流量計
4は、図1のハウジング10を示す点線内に示されている。装置コントローラ20には、
装置1を制御し、実験中に収集された全データの記録を制御するためにコンピュータ20
と連動するアクチュエータスイッチ22(図3)およびナショナルインスツルメンツ(N
ational Instruments)製I/Oボード(SC2345型)(図示し
ていない)を有するChembookモデルN30Wラップトップ型コンピュータが含ま
れる。これらの機能を実施するソフトウェアプログラムは、ナショナルインスツルメンツ
製のLabviewソフトウェアプログラムを使用して開発された。
【0063】
装置1とI/Oボードとの接続は、ケーブル(例、DB25、図示していない)を用い
て達成される。標準型電源装置(例、Condor F15−15A+、図示していない
)が装置1に電気供給する。吸入コントローラ30は、麻酔をかけたイヌへ気管内チュー
ブ34を通して装置1を通過する吸入剤の速度および量を制御するために使用される。コ
ントローラ30はプログラム可能な息こらえ遅延時間を有しており、その終了時に排気ラ
イン42の排気弁40が開き、イヌは息を吐くことができる。ライン42内のフィルタ5
0は、排出された薬物を監視するために排気の量およびその組成を計量する。吸気ライン
54、吸気弁58、流量計4および吸気口59を通る供給空気は加圧式エアシリンダ(図
示していない)から送り出される。
【0064】
ここで図3〜5および図7を参照すると、1回量の化合物60は化合物60の厚さが1
0ミクロン未満となるように薄いステンレス箔64上に配置されている。多くの場合、化
合物60は前記化合物と有機溶媒との溶液を作製することによって置かれる。この混合液
は、その後自動ポンプシステムを用いて箔基質へ塗布される。図示したように、箔64(
例、厚さ0.004インチの302または304の合金)全体のサイズは0.7×2.9
インチであり、化合物60が配置される領域は0.35×1.6インチである。他の箔材
料を使用することもできるが、ステンレススチールは感知できるほど熱質量を増加させず
に極めて低い熱伝導性を有しているという点でアルミニウムのような他の材料より優れた
利点を有している。低い熱伝導性が有用であるのは、箔64において発生した熱が関心領
域(すなわち、加熱/気化帯70)にとどまるためである。箔64は一定の断面を有して
いなければならず、さもないと加熱装置によって誘発される電流は一様ではなくなる。箔
64は箔64の後縁が可動スライド78上にへりを有していないように作成されたフレー
ム68内に保持されているので、化合物60は空気と混合されると図3の矢印127によ
って示した下流方向へ遊離させられる。フレーム68は、典型的には適度な熱(例、20
0℃)に抵抗することができて前記化合物と化学的に非反応性である非伝導性材料から作
られている(例、アセタールのコポリマーであるDELRIN AF(登録商標)および
TEFLON(登録商標))。
【0065】
図7に示したサブアッセンブリ80は、その上に取り付けられた化合物(60)が塗布
された箔64を有するフレーム68から構成されている。サブアッセンブリ80は、図7
に示したようにスライド78の各下流端から突き出ている小さなロッド86と接するよう
にフレーム68の下流のテーパ付け端の各々を固定することによって可動スライド78内
に固定される。スライド78は、実施例1の長手軸に沿って化合物60を含有するサブア
ッセンブリ80を移動させる図3に示したステッピング・モータ88によって駆動させら
れる。これは、順にステンレス箔64を交流磁場に通して移動させる。(磁場は、この実
験例におけるように、図6に示した加熱/気化帯70内に限定されるのが好ましい。)フ
ェライト・トロイド90は磁場を方向付けるために使用されており、箔64の下方(例、
約0.05インチ下方)に配置されている。図5に示したように、加熱される領域70は
およそ0.15×0.4インチであるが、左から右に移動する方向(すなわち、装置1の
上流端から下流端)に沿っては小さな寸法を有し、移動方向を横切って大きな寸法(すな
わち、装置1の幅)を有している。
【0066】
箔64は対象へ送出される薬物のための基質、および前記薬物を気化させるための加熱
素子の両方の機能を果たす。加熱素子64は、主として交流磁場によって誘導された渦電
流によって加熱される。交流磁場は、銅製マグネット・ワイヤから作られたコイル98で
被覆された、スリット94(例、幅が0.10インチ)を備えたフェライト・トロイド9
0(例、Fair−Rite社製)内で作り出される。交流がコイル98を通過するとき
に、トロイド90内で交流磁場が作り出される。磁場は、図5および図6に示したように
、スリット94とトロイド90から伸びる磁場フリンジ線100とによって形成される間
隙を満たす。磁場フリンジ線100は加熱素子64と交差する。フェライト・コアを使用
すると、磁場の交流周波数は1MHz未満に限定される。この装置では、典型的には10
0〜300kHzの周波数が使用される。
【0067】
渦電流の位置および形状は、64が加熱される場所を決定する。磁場フリンジ線100
は、1回はフェライト・トロイド90を離れて、もう1回は戻ってきて箔64を2回通過
するので、2つの電流環が反対方向に形成される。電流環の1つはトロイド90を離れる
磁場線100の周囲に形成され、もう1つの電流環はトロイド90へ戻る磁場線100の
周囲で形成される。電流環はスリット94の中心の上方で直接に重複する。これらは反対
方向であるので、合わさって一緒になる。このため最大の加熱素子はスリット94の中心
の上方に作製される。
【0068】
スライド78およびその内容物は、図3に示した上方空気通路区間104と下方空気通
路区間108とから構成される空気通路102内に収容される。上方空気通路区間104
は取り外し可能であるので、可動スライド78、サブアッセンブリ80および箔64を挿
入することができる。下方空気通路区間108は、電子機器(図示していない)、磁場発
生器110、ステッピングモータ88および位置センサ(図示していない)を収容してい
るケース8の上に取り付けられている。再び図1を参照すると、上方空気通路区間104
内には上流通路120と上方空気通路区間104を流量計4へ接続する吸気口59が取り
付けられている。流量計4からの示度はケース8内に収容された電子機器へ送信される。
さらに、空気通路102の下流端では、排気口124にマウスピース126が接続されて
いる。イヌへの化合物60の投与中には、システムと接続されていれば、空気が吸気ライ
ン54、流量計4、空気通路102、および排気口124を通ってイヌへ強制的に送り込
まれる。
【0069】
さらに、TC2ライン130の端部のパイロメータは空気通路102内に配置されてお
り、これを使用して箔64の温度が測定される。図1〜7に示した実施例の特定形状のた
めに、箔64の温度示度は加熱帯70の後に入手される。加熱帯70と測定領域間の熱減
衰の校正が必要とされる。温度データは、加熱パラメータを制御するためではなく品質管
理および検証のために収集かつ使用される。第2温度センサは、排気口124内のTC1
ライン132の端部に配置されており、イヌに送出される空気の温度を監視するために使
用される。
【0070】
実験装置の好ましい実施例では、上方空気通路区間104上に取り付けられた可動ブロ
ック140が空気通路102の断面積を制限し、その中の特定の混合形状を提供する。こ
の好ましい実施例では、空気通路140は箔64に対して上方空気通路区間104の天井
を(例、0.04インチ以内へ)低下させる。さらに、ブロック140はバッフル(例、
径0.04インチの31スチール製ロッド、図示していない)を含有している。これらの
ロッドは箔に対して垂直に方向付けられており、上方空気通路区間104の上部から箔の
短い間隔(例、0.004インチ)内へ伸びている。これらのロッドは千鳥状パターンで
置かれ、鋭った角状の端部を有しているので、空気がその周囲を通過すると渦が引き起こ
される。この渦は気化した化合物と本装置を通過する空気との完全な混合を保証する。
【0071】
同様にガス/蒸気混合領域に沿って断面積が制限されている本発明のエアロゾル化装置
の第2実施例(150)について、図9を参照しながら説明する。この実施例では、吸気
口154、排気口156を有するハウジング10内のベンチュリ管152には、吸気口1
54と排気口156との間のスロート158が含まれており、これを使用してベンチュリ
管152を通過するガス流量が制限される。さらに、コントローラ160は、加熱装置1
66によって制御できる空気温度の熱電対168からの示度に基づいて弁164を通過す
る空気流量を制御するように設計されている。
【0072】
ブロック140は、加熱帯70のすぐ上方に配置されており、加熱/気化/混合帯を作
り出す。エアロゾル発生を開始する前は、スライド78は下流位置にある。スライド78
は、その内容物と一緒にその後、下記で詳細に説明するように誘導加熱器システムを通し
て箔64にエネルギーが印加されるにつれて、この加熱/気化/混合帯70内へ上流に向
かって引き込まれる。
【0073】
本発明の装置には、任意で警報装置が装備される。警報装置の数多くの機能のうちの1
つは、本装置のオペレータに前記化合物が気化していない、または適切に気化していない
ことを警告することである。警報装置は、さらにまたオペレータにガス流量が所望の範囲
内から外れていることを警告するためにも使用できる。図6は、本発明のハンドヘルド式
エアロゾル化装置180の第3実施例を示している略図である。図示したように、装置1
80には上記のような装置150の構成要素の多くが含まれているが、さらに警報装置1
70も含まれている。患者の吸入速度が空気流量を制御する装置180の使用中には、警
報装置170からの信号が患者に吸入速度を所望の範囲へ調整するように警告するであろ
う。この場合には、警報装置170には流量が所望の範囲内でないときに必要な信号を送
信するためにコントローラ160が接続されているであろう。
【0074】
図8に示した誘導駆動回路190は、装置1の誘導加熱素子を駆動させるために使用さ
れる。回路190の目的は、フェライト・コア90の周囲に巻き付けられた駆動コイル9
8内で交流を作り出すことである。回路190は、ブリッジ構造で配列された2個のP−
チャネルト・ランジスタ200と2個のN−チャネルMOSFETトランジスタ202と
から構成される。クロック・パルス発生器219に接続されたMOSFETトランジスタ
200および202のスイッチは、MOSFETトランジスタ駆動回路210を介してD
型フリップ・フロップ208によって対でオン・オフされる。D型フリップ・フロップ2
08は、フリップ・フロップのQ出力がクロック発生信号の立ち上がりに伴って交互に状
態を変化させるように配線されている。1対のMOSFETトランジスタ200はD型フ
リップ・フロップ208のQ出力に接続されており、もう一方の対202はフリップ・フ
ロップ208のQ非出力に接続されている。Qが高い場合(5ボルト)、DC電源(図示
していない)と、Q出力によって制御される対のMOSFETトランジスタ200を介す
る駆動コイル98およびキャパシタの直列組合せとの間で低インピーダンス接続が作り出
される。D型フリップ・フロップ208が状態を変化させてQ非出力が高くない場合は、
電源から駆動コイル98およびキャパシタ220の直列組み合わせへの低インピーダンス
接続が反転させられる。フリップ・フロップ208はクロック発生信号の立ち上がりで変
化するので、誘導加熱素子の1回の完全駆動サイクルのためには2回のフリップ・フロッ
プ変化が必要とされる。クロック発生信号は、典型的には駆動コイル98およびキャパシ
タ220の直列組合せの共鳴周波数の2倍に設定される。クロック信号周波数は、手動で
、または自動的に設定することができる。
【0075】
同様にガス/蒸気混合領域に沿って断面積が制限されている本発明のエアロゾル化装置
の第2実施例(150)について、図9を参照しながら説明する。この実施例では、吸気
口154、排気口156を有するハウジング10内のベンチュリ管152には、吸気口1
54と排気口156との間のスロート158が含まれており、これを使用してベンチュリ
管152を通過するガス流量が制限される。さらに、コントローラ160は、加熱装置1
66の結果として空気温度の熱電対168からの示度に基づいて弁164を通過する空気
流量を制御するように設計されている。
【0076】
図10および図11を参照しながら、本発明のエアロゾル化装置の第4実施例(300
)について説明する。ガス流は、その内側に化合物60の塗膜(310)を有する薄壁管
302内へ通過させられる。ガス流の流量は弁314によって制御される。実施例300
の装置は、他の装置と同様に気化した化合物の流動方向を制御しながら、抵抗加熱システ
ム(320)を使用して高速に加熱することができる。アクチュエータ330を用いて加
熱システム320を作動させた後、キャリヤガス(例、空気、N等)がチューブ302
を通過して発生した蒸気と混合されるにつれて、電流が加熱/気化帯340内をチューブ
302に沿って通される。
【0077】
図12は、第4実施例と一緒に使用される抵抗加熱システム320に代わる加熱システ
ムを示している。この場合には、誘導加熱システム350は化合物310を気化させる目
的で磁束を誘導するために複数のフェライト360から構成される。
【0078】
図13は、化合物310の表面を越える混合ガスの流量を増加させるために流量絞り器
370がハウジング(図示していない)内のサポート374によって薄壁管302内に取
り付けられている第4実施例についての変形を示している。
【0079】
図14を参照しながら、本発明のエアロゾル化装置の第5実施例400について説明す
る。この実施例のためには、化合物60は膨張可能な容器402(例、ホイルパウチ)内
に置かれており、図14に示したようにアクチュエータ410によって作動させられる抵
抗加熱装置406によって加熱される。発生した気化した化合物は排気通路440を通っ
て容器420内へ推し進められ、チューブ404を通って流れるガスと混合される。必要
な場合は、化合物60の分解を防止または遅延させるために追加のステップが講じられる
。このようなステップの1つは、加熱時間中に60の周囲での酸素の除去または減少であ
る。これは、例えば不活性雰囲気中で小さな容器ハウジングを密封することによって達成
できる。
【0080】
図15を参照しながら、本発明のエアロゾル化装置の第6実施例500について説明す
る。化合物60は不活性雰囲気内またはハウジング10内の容器502中の真空下に配置
され、図15に示したようにアクチュエータ508によって作動させられると抵抗加熱装
置504によって加熱させられる。化合物60が気化されると、その後は排気通路510
を通してチューブ520を通過する空気流内へ噴出させることができる。
【0081】
図16は、ファン530が化合物60の表面の上方で不活性雰囲気を再循環させる装置
500の変形を示している。圧縮ガスボンベ(図示していない)からの不活性ガスは、吸
気口540および一方向弁550を通って進入し、排気通路510を通ってチューブ50
2内へ出て行く。
【0082】
図17を参照しながら、本発明のエアロゾル化装置の第7実施例(600)について説
明する。上記の化合物60のような化合物(図示していない)は、離散粒子602(例、
酸化アルミニウム(アルミナ)、シリカ、被覆シリカ、炭素、グラファイト、珪藻土、お
よびその他の一般にガスクロマトグラフィーに使用される充填材料)の形状にある基質上
に配置されている。被覆粒子は、フィルタ606と608の間に挟まれている第1チュー
ブ604内に配置され、アクチュエータ620によって作動させられる抵抗加熱装置61
0によって加熱される。結果としてチューブ604から生じる蒸気は、第2チューブ62
5を通過する空気または他のガスと結合される。
【0083】
図18は装置600の変形を示しており、この装置では抵抗加熱装置630は第1チュ
ーブ604を通って離散粒子602の上方へ通過する前に空気を加熱する。
【0084】
図19を参照しながら、本発明のエアロゾル化装置の第8実施例700について説明す
る。化合物60はチャンバ710内へ置かれ、アクチュエータ720によって作動させら
れる抵抗加熱装置715によって加熱される。加熱されると、化合物60の一部は気化し
、不活性ガス吸気口725を通過して前記化合物の表面を越えて弁728を通ってハウジ
ング10内に進入する不活性ガスを通過することによってチャンバ710から噴出させら
れる。不活性ガスと気化した化合物の混合気は通路730を通過し、その後チューブ73
5を通過するガスと混合される。
【0085】
図20を参照しながら、本発明のエアロゾル化装置の第9実施例800について説明す
る。熱伝導性基質802はチューブ820の上流端で抵抗加熱装置810によって加熱さ
れ、そして熱エネルギーは基質802に沿って進行させられる。これは、特定の位置で観
察すると、熱伝導性基質の特性から決定される加熱速度を作り出す。材料とその断面積を
変化させることによって、加熱速度を制御することが可能であった。抵抗加熱装置は基質
802内の一方の先端に組み込まれている。しかし、抵抗加熱装置は両端または基質に沿
った様々な位置に組み込むことができ、それでもキャリアおよび/または基質に沿って温
度勾配を移動させることができる。
【0086】
図21および図22を参照しながら、本発明のエアロゾル化装置の第10実施例900
について説明する。空気は、その上に薬剤が置かれる細目金属製スクリーン902を通し
て運ばれる。スクリーン902は空気通路910(例、18mm径ガラスチューブから構
成される)を越えて配置されている。スクリーンの両側は、回路を形成するためにシリコ
ーン制御整流器(SCR)を介して荷電キャパシタ920と電気接続されている。キャパ
シタの電荷は計算され、アクチュエータ930がSCR922を閉鎖したときに、キャパ
シタ920からのエネルギーがスクリーン902内での所望の温度上昇へ転換されるよう
な数値に設定される。
[一般的考察]
本発明の装置は、化合物(60)の表面を越えるガス(例、空気)の流れを利用して気
化した分子を吹き飛ばす。このプロセスは、凝縮とは対照的に気化を推進するので、この
ため比較的穏やかな温度でのエアロゾル形成を可能にする。例えばニコチン(1mg、沸
点247℃/745mm)は、本発明の装置では約130℃、2秒間未満で気化した。同
様に、フェンタニル(沸点>300℃/760mm)は、約190℃で2mgまでの量が
気化した。
【0087】
本発明の装置を使用して生成するエアロゾルの純度は、化合物(60)を高温に曝露さ
せる時間を制限することによって上昇する。これは、前記化合物の薄層フィルムを気化さ
せるために高速で加熱することによって達成される。蒸気は、その後キャリアガス流内へ
進入すると直ちに冷却される。
【0088】
典型的には、化合物60は少なくとも1,000℃/秒の温度上昇に曝される。一定の
場合には、前記化合物は少なくとも2,000℃/秒、5,000℃/秒、7,500℃
/秒または10,000℃/秒の温度上昇に曝される。前記化合物内の高速の温度上昇は
、前記化合物が薄層フィルム(例、厚さ10μ〜10nm)として塗布された場合に促進
される。前記化合物は、しばしば厚さ5μ〜10nm、4μ〜10nm、3μ〜10nm
、2μ〜10nm、または1μ〜10nmさえのフィルムとして塗布される。
【0089】
高速の温度上昇および薄い塗布は、前記化合物が実質的に短時間で気化することを保証
する。典型的には、0.1mg、0.25mg、0.5mg、0.75mgまたは1mg
を超える化合物が加熱開始後100ミリ秒間未満で気化する。しばしば、同一量の化合物
は、加熱開始から75ミリ秒間、50ミリ秒間、25ミリ秒間、または10ミリ秒間未満
で気化する。
【0090】
本発明の装置内での高速加熱の恩恵を受けた化合物の例には、脂肪親和性物質#87お
よびフェンタニルが含まれる。脂肪親和性物質#87は425℃で5分間にわたり加熱す
ると90%を超えるまで分解したが、温度を350℃へ低下させると20%しか分解しな
かった。この物質の分解は、加熱時間を30秒間に低下させるとさらに約12%まで低下
し、10〜50ミリ秒間では2%未満へ低下した。フェンタニルサンプルは、200℃へ
30秒間加熱すると完全に分解したが、10秒間加熱した場合は15〜30%しか分解し
なかった。装置1内の気化したフェンタニルは0.1%未満の分解をもたらした。
【0091】
本発明のエアロゾルは、10nm〜1μ、好ましくは10nm〜900nm、10nm
〜800nm、10nm〜700nm、10nm〜600nm、10nm〜500nm、
10nm〜400nm、10nm〜300nm、10nm〜200nm、または10nm
〜100nmのMMADを有する粒子を含有する。粒子は、それらのサイズが数秒間(例
、1〜3秒間)は安定性であるように生成される。エアロゾルの粒径および引き続いての
安定性は前記化合物の気化速度、キャリアガス導入速度および結果として生じる蒸気とキ
ャリアガスの混合によって制御される。このような制御は、以下を含む多数の方法を使用
して達成される。(a)混合気の流量を測定してこれを調節するステップ、および/また
は(b)前記化合物の気化速度を調節するステップ(例、加熱工程中に前記化合物へ移さ
れるエネルギーを変化させることによって、または加熱領域内に導入される前記化合物の
量を変化させることによって)。
【0092】
所望の粒径は、混合気の個数濃度が約10粒子/mLに達したときに1〜3秒間にわ
たって10nm〜100nmの粒径範囲内にある粒子が生じるような比率で蒸気状態にあ
る前記化合物をある容積のキャリアガス内へ混合することによって達成される。
【0093】
図23は、数学的モデルから計算した理論データのプロット図である。例えば、「エア
ロゾルテクノロジー(Aerosol Technology)」,W. C. Hin
ds,1999年第2版, Wiley, New York.を参照されたい。この書
籍は、エアロゾルの個数濃度が粒子濃度の関数としての初期値の半分まで凝集するのに要
する時間を秒数で示している。例えば、1リットルの空気内に混合される分子量が200
の化合物の気化用量1.0mgは1リットル中に約3×1018分子(粒子)を有してい
るであろう。これは3×1015/ccの個数濃度を生じさせる。図23から外挿推定す
ると、この実施例でこの粒子数を得るには10ミリ秒間未満を要することを見て取ること
ができる。このため、気化した化合物の一様な混合を保証するためには、混合は極めて短
時間で発生しなければならない。図23はさらにまた、混合気の個数濃度が約10粒子
/mLに達すると、この粒径が吸入による薬物送出にとって「安定性」であることも証明
している。
【0094】
図23は、5×10−16/秒の凝固係数(K)を有するエアロゾルについての図
である。このK値は、200nmの粒径に対応する。粒径が変化するにつれて、そのK値
も変化し得る。次の表1は、様々な粒径についてのK値を示している。Kが増加するとエ
アロゾルが特定粒径からより大きな粒径へ凝集するために必要な時間が減少する。表1お
よび図24から明らかなように、粒径が10nm〜100nmの範囲内の場合、K値を変
化させる影響は粒径100nmに向かって凝固プロセスを促進する傾向を示す。
【0095】
【表1】

【0096】
特定粒径のエアロゾルを作製する際には、気化した化合物の質量対混合ガスの容積の比
率が制御条件である。この比率を変化させることによって、粒径を操作することができる
(図29を参照)。しかし同一比率を用いても、必ずしもすべての化合物およびすべての
ガスが同一粒径分布(PSD)を生じさせる訳ではない。結果として生じる粒径を正確に
予測できるためには、他の要素も分かっていなければならない。化合物の密度、極性およ
び温度がこれらの要素の一部の例である。さらに、化合物が親水性または疎水性のどちら
であるかも最終的粒径に影響を及ぼすが、それはこの要素が周囲環境から水を取り込むこ
とによってエアロゾルが大きくなる傾向に影響を及ぼすためである。
【0097】
結果として生じる粒径を予測するために使用されるアプローチを単純にするために、以
下の仮説を立てた。
1.前記化合物は非極性である(または弱い極性を有する)。
2.前記化合物は乾燥している混合ガスとともに疎水性である、または親水性である。
3.結果として生じるエアロゾルは標準またはそれに近い温度および圧力である。
4.凝固係数は粒径範囲にわたって一定であるので、このため粒径の安定性を予測する個
数濃度は一定である。
【0098】
そこで、結果として生じる粒径を予測する際には以下の変量を考慮に入れた。
1.気化した化合物の量(g)。
2.気化した化合物がその中に混合されるガスの容積(cc)。
3.粒子/ccの数で表した「安定性」の個数濃度。
4.エアロゾルの幾何標準偏差(GSD)。
【0099】
GSDが1である場合、すべての粒径は同一粒径であるので、粒径の計算は前記化合物
の質量を個数濃度によって与えられる粒子数で割り、そこから前記化合物の密度を使用し
て粒径を計算するという内容になる。だがこの問題は、GSDが1以外である場合は困難
になる。エアロゾルが1のGSDから1.35のGSDへ変化するにつれて、質量中央径
(MMD)は増加する。MMDは、大きな径の粒子と等質量の材料が小さな径の粒子で存
在する平衡点である。GSDが変化しても総質量は変化することはなく、そして大きな粒
子と小さな粒子が存在するので、粒子の質量はその径の3乗として上昇するために、MM
DはGSDが増加するにつれて大きくなるはずである。このため大きな粒子は実際により
多い重量を有しており、MMDは質量と「釣り合う」ために大きくなる。
【0100】
GSDを変化させる影響を判定するためには、MMD、GSD、密度および個数濃度が
既知であることを前提に、エアロゾルの単位容積当たりの質量についての式から始めるこ
とができる。この式は、Finlayの「吸入された薬用エアロゾルのメカニクス(Th
e Mechanics of Inhaled Pharmaceutical Ae
rosols)」,(2001,Academic press)に記載されている式で
ある。式2.39は、エアロゾルの単位容積当たりの質量を次のように表している。
【0101】
M=(ρNπ/6)(MMD)exp[−9/2(1nσ
式中:ρ=密度(gm/cc)
N=個数濃度(粒子/cc)
MMD=質量中央径(cm)
σ=GSD
M=エアロゾルの単位容積当たり質量(gms/cc)。
【0102】
1つのGSDから別のGSDへ変化するにつれてのMMDにおける変化を考察すると、
密度、個数濃度、および質量が変化しないままであれば、以下の特性を設定することがで
きる。
【0103】
ρNπ/6(MMDexp[−9/2(1nσ]=ρNπ/6(MMD
exp[−9/2(1nσ
これを簡略化すると、
(MMDexp[−9/2(1nσ]=(MMDexp[−9/
2(1nσg2
または
(MMD/(MMD=exp[−9/2(1nσg2]/exp[
−9/2(1nσg1
である。ケース1のGSDを1.0へ設定すると、
exp[−9/2(1nσg1=1
そこでこのため、
(MMD/MMD=exp[−9/2(1nσg2
または
MMD/MMD=exp[−3/2(1nσg2
となる。
【0104】
GSDが変化するにつれてMMDにおける変化を計算するのが有益である。MMD
関数としてMMDについて解くと新しいGSDが生じる。すなわち、
MMD= MMD/exp[−3/2(1nσg2] (σg1=1に対し
て)
となる。
【0105】
MMDを計算するためには、前記化合物の質量を粒子数で割り、その後前記化合物の
密度を使用して径を計算する。すなわち、1のGSDを備えるエアロゾルに対して
MMD=(6C/ρNV)1/3である。
【0106】
式中:C=化合物の質量(gm)
ρ=密度(gm/cc)(上記と同様)
N=個数濃度(粒子/cc)(上記と同様)
V=混合ガスの容積(cc)
MMDを上記の方程式に挿入すると下記が得られる。すなわち、cmで測定されたも
のとして、
MMD=(6C/ρNVπ)1/3/[exp[−3/2(1nσg2
結果として生じるMMDは個数濃度、前記化合物の質量、前記化合物の密度、混合ガス
の容積、およびエアロゾルのGSDから計算できる。
【0107】
必要な気化速度は、作製したいと所望する粒径に依存する。粒径が10nm〜100n
mの範囲内であれば、前記化合物は気化したらすぐに、ほとんどの場合にできる限り大量
の空気中へ混合されなければならない。この空気の容積は、肺生理学から決定され、2リ
ットルの合理的上限を有すると推測することができる。空気の容積が2リットル未満(例
、500cc)に限定される場合は、用量が非常に少ない(例、50μg未満)のではな
い限り、過度に大きい粒子が生じるであろう。
【0108】
10nm〜100nmの範囲内では、1〜2mgの用量が可能である。この用量が1〜
2秒間で吸入される2リットルの空気と混合されると、必要な所望の気化速度は約0.5
〜約2mg/秒の範囲内である。
【0109】
本発明の第1実施例を図1に示したが、これはそれを通して上記に言及した原理が実験
室で明確に証明された基本装置である。この装置については、実施例において詳細に説明
する。
【0110】
図9に示した本発明の第2実施例では、縮小された空気通路断面積の使用が前記化合物
の表面を越える空気の速度を約10m/秒へ増加させる。完全な混合が1ミリ秒間以内に
起こらなければならない場合は、完全な混合を達成するためにガスと気化した混合気が移
動しなければならない距離は10mm以下でなければならない。しかし前記化合物が大き
な粒径に凝集してしまう前に完全な混合が起こることがより望ましいので、所望の混合距
離は典型的には約1mm以下である。
【0111】
図10〜13に示した本発明の第4実施例では、加熱プロセス中に前記化合物の薄肉フ
ィルムの上方に空気を通すことによって10nm〜100nmの範囲内のMMADを備え
る粒子を有するエアロゾルが発生する。これによりフィルムの表面近くでの化合物の部分
圧が低下するために前記化合物を低温で気化させることができる。
【0112】
図14に示した第5実施例、図15および図16に示した第6実施例、および図19に
示した第8実施例は、高温では酸素と高速に反応する一定の化合物に関する問題を克服す
る。この問題を解決するために、前記化合物は膨張可能な容器(第4実施例)、真空下ま
たは例えば約1〜約10mLの少量の不活性ガスを含有する小さな容器ハウジング(第5
実施例)内で加熱される。前記化合物が気化して、前記化合物が気化状態で維持するため
に十分な温度で混合気を維持しながら不活性ガスと混合されると、ガス状混合物はその後
空気流内へ注入される。不活性ガスの容積は、図16に示したようにその気化に役立つよ
うに加熱された前記化合物の表面の上方で再循環させることができる。第7実施例では、
前記化合物は純粋蒸気としてガス内に導入される。これには、前記化合物をオーブンまた
は他の容器内で気化させ、その後蒸気を1つまたは複数の混合ノズルを通して空気流また
は他のガス流内へ注入するステップが含まれる。
【0113】
図17〜18に示した第6実施例では、ガスは第1チューブを通り、前記化合物が塗布
されている大きな表面積対質量比を有する離散基質粒子の上方に通過させられる。これら
の粒子は前記化合物を気化させるために図17に示した通りに加熱される、または図18
に示した通りにガスが加熱されて加熱されたガスが前記化合物を気化させる。第1チュー
ブからのガス状混合物は、患者に投与する前に混合気を高速で冷却するために第2チュー
ブを通過するガスと結合させられる。
【0114】
図20に示した第8実施例は、実験室での実験に使用した装置1に類似する温度勾配装
置である。この実施例は、さらにまた装置の一方の端部から他方の端部へ経時的に横断す
る温度勾配を確立することによって達成される、可動部を備えていない可動式加熱帯を有
している。加熱帯が移動するにつれて、前記化合物の露出した部分は順次加熱されて気化
される。この方法で、気化した化合物を経時的にガス流内へ導入することができる。
【0115】
図21〜22に示した第9実施例はスクリーン装置であり、100nmを超えるMMA
Dを備える粒子を含有するエアロゾルを発生させるために好ましい。この実施例では、空
気はその上に患者に投与すべき薬物が置かれている細目スクリーンを通って流動させられ
る。
【0116】
上記の実施例は、有意な薬物分解を伴わずにエアロゾルを作製することができる。これ
は短時間の加熱サイクルを使用することによって粒径制御のために必要な気化速度を維持
しながら達成される。前記化合物の表面の上方の空気流は、前記化合物が加熱されて気化
が最初に可能になる温度に到達したときに、結果として生じる化合物蒸気が直ちに空気中
で冷却されるように確立される。好ましい実施例では、これは増加した速度および加熱帯
領域より大きい面積に渡る混合領域を拡張することによって達成される。その結果として
、前記化合物は気化温度に到達したその瞬間に気化するので、精密な温度制御が必要とさ
れない。さらに混合はさらにまた気化点で存在するので、冷却は気化すると直ちに達成さ
れる。
【0117】
本発明をヒト吸入薬送出へ適用するためにはヒトの身体および呼吸生理学の制約に適合
させなければならない。公衆衛生、環境毒物学および放射線安全性の分野では肺内への粒
子沈着に関する多数の試験が実施されてきた。大多数のモデルおよびそれらの試験から収
集されたin vivoデータは、被検者が肺内の粒子沈着を最小化または最大化するた
めに積極的には何もしない、呼吸する空気中に均質に分散しているエアロゾルへの人々の
曝露に関連している。国際放射線防護委員会(ICRP)モデルがこの例である。例えば
、James AC, Stahlhofen W, Rudolph G, Egan
MJ, Nixon W, Gehr P, Briant JK,「ICRP作業班
によって提案された気道沈着モデル(The respiratory tract d
eposition model proposed by the ICRP Tas
k Group)」, Radiation Protection Dosimetr
y, 1991年;第38巻:第157−168頁を参照されたい。
【0118】
しかし、エアロゾル薬物送出の分野では、患者は肺内の薬物の沈着を最高化する方法で
呼吸するように指示される。この種類の呼吸は、通常は十分な息の吐き出し、その後に時
々は例えば約10〜150リットル/分の規定の吸気流量範囲でのその後の深い吸息、さ
らにその後に数秒間の息こらえを含んでいる。さらに、理想的にはエアロゾルは吸入され
る空気中に一様には分散しておらず、エアロゾルのボーラスとして呼吸の早期部分内に取
り込まれ、その後にある容積のきれいな空気が続くので、その結果としてエアロゾルは肺
胞内へ引き込まれ、それに続くきれいな空気によって誘導気道、気管支および気管から追
い出される。成人の典型的な深呼吸の容積は約2〜5リットルである。全集団の成人患者
において一貫した送出を保証するためには、薬物ボーラスの送出は吸入される空気の最初
の1〜11/2リットル位で完了されなければならない。
【0119】
ヒト吸入薬送出の制約の結果として、前記化合物は好ましくは1〜2秒間を超えない最
小量の時間で気化しなければならない。上記で考察したように、さらにまた気化の温度を
低く維持することも有益である。化合物を2秒間以下で気化させ、温度を低く維持するた
めには、前記化合物の表面を越えて約10〜約120リットル/分の範囲内の迅速な空気
移動が流れなければならない。
【0120】
本発明の装置を使用する際には、ヒトの肺の生理、粒子成長の物理学、および所望の化
合物の物理化学を背景として下記のパラメータが最適である。
(1)前記化合物は、超微細範囲内の粒子を作製するためにおよそ1〜2秒間で気化され
なければならない。
(2)前記化合物は可能な限り高速で気化温度へ上昇させられなければならない。
(3)前記化合物は、いったん気化したらできる限り迅速に冷却させられなければならな
い。
(4)前記化合物は、分解を最小限に抑えるために最小時間で最高温度へ上昇させられな
ければならない。
(5)空気または他のガスは、最高気化速度を達成するために前記化合物の表面を迅速に
越えて移動させられなければならない。
(6)空気またはその他のガスの加熱は、低く、すなわち周囲温度の約15℃以上を超え
ない温度上昇で維持されなければならない。
(7)前記化合物は、再現性の一貫した粒径を有するために一貫した速度で空気またはそ
の他のガス内へ混合されなければならない。
(8)ガスの速度は気化中の化合物を超えると増加するので、装置を通過する断面積は減
少するはずである。さらに、前記化合物の表面積が増加するにつれて、ガスの加熱が増加
する。
【0121】
図2〜5、図7および図8に示した実施例の1つのデザインのパラメータは、上記に列
挙した競合する必要条件を満たして平衡を保たせた結果である。10nm〜100nmの
MMADを備える粒子を含有するエアロゾルのために特に重要な必要条件の1つは、前記
化合物が、少なくとも1秒間の期間内に気化される必要がある上に、さらにまた前記化合
物の各部分をできる限り短い加熱時間に曝させる必要があることである。この実施例では
、前記化合物は箔基質上に置かれ、前記化合物が約1秒間以下にわたり連続して気化され
るように前記基質を加熱しながら箔基質に沿って交流磁場が掃引される。磁場の掃引作用
のために、前記化合物の各セグメントは1秒間よりはるかに短い昇温時間を有している。
【0122】
上記で直接的に言及した実施例では、前記化合物は薄い金属箔上に置かれる。下記で陳
述する実施例の1つでは、目の粗いテクスチャーを作り出すように表面処理が施されたス
テンレススチール(302、304または316の合金)を使用した。他の箔材料を使用
することもできるが、材料の表面およびテクスチャーは、前記化合物が液相中に含まれて
いる場合にはそれが前記化合物によって「湿らされる」ことが重要で、さもなければ液体
化合物は「丸まって」、本装置の設計が無効になり、気化パラメータは有意に変化してし
まうであろう。液体化合物が「丸まると」、前記化合物は全く気化することなく空気流内
へ吹き入れられて取り込まれる可能性がある。これは制御されていない望ましくない粒径
の送出をもたらす。
【0123】
ステンレススチールは、低い熱伝導性値を有しており、感知できるほどの熱質量の増加
を生じさせないので、アルミニウムのような材料に優る利点を有している。低い熱伝導性
が有用であるのは、プロセスによって発生した熱が当前記領域周辺に留まっている必要が
あるからである。
【実施例】
【0124】
以下の実施例では、さらに本発明の方法および様々な例を具体的に説明する。これらの
実施例は例示を目的としており、決して特許請求の範囲を限定することは意図されていな
い。
[実施例1] 実施例1を使用したIn Vivo試験の結果
この実施例において、実施例1は、約800ccの空気中に超微細粒径の範囲内にある
フェンタニル20μg〜500μgの実験用量を体重10kgのイヌに送出するために設
計された。実験下の各イヌの肺容量はおよそ600〜700ccであり、本装置は吸入の
最初の半分で肺へ前記化合物を送出するように設計された。これらのパラメータの数値か
ら、この実験における装置1はヒトへ1回量を投与するための縮尺1/4の装置と見なす
ことができる。ヒト被験者に応用するために装置を拡大することには、主として本装置を
通る空気流を増加させることが含まれると考えられる。前記化合物を加熱/気化/混合帯
内へ導入するタイム・スケジュールは、前記化合物がイヌの肺の構造によって必要とされ
る容積(600〜700cc)および前記化合物対空気の比率を制御するために必要とさ
れる容積の両方にとって適切な空気の容積へ気化するように設定された。
【0125】
以下は、各作業中に発生した事象の順序である。
1.ランの開始時に、オペレータは吸入コントローラ30を始動させて圧トランスデュー
サ240および吸気流量計4からのデータ監視を開始した。
2.コントローラ30は、コントローラ20へ信号を送信して実施例1を始動させ、さら
に2個の温度センサおよび流量計4からのデータ収集を開始した。
3.事前プログラミングされた遅延時間後、実施例1はエアロゾルの発生を開始した。(
注:コントローラ30の始動とエアロゾルの発生の開始との間には約0.4秒間の遅延時
間があった。)
4.独立して事前プログラミングされた遅延時間(最初のトリガー信号から)後、コント
ローラ30は吸気弁58を開放して実験下のイヌの強制吸入を始動させた。
5.実施例1は吸入中のエアロゾル発生を完了した。
6.コントローラ30は、吸入時間を通して流量計4および圧トランスデューサ240を
監視し、規定の容積または圧力が満たされると吸気弁58での流れを遮断した。(注:事
前に規定された圧力は、被験動物への傷害を防止するための安全機能である。事前に規定
された容積での呼吸の終了は、本実験の所望の発生である。)
7.息こらえ遅延時間(5秒間)後に、排気弁40が開かれ、イヌは息を吐き出すことが
できた。
8.排気されたエアロゾルは、後に解析するために排気フィルタ40上に捕捉された。コ
ントローラ30は以下についての数値を記録した。すなわち、投薬された容積、終圧、エ
アパルス時間、および平均流量である。コントローラ20は、ミリ秒分解能で吸気流量、
排気流量、箔温度、マウスピース温度、スライド位置、加熱装置オン/オフ時間、および
その他の内部診断電気パラメータを持続的に記録した。
【0126】
体重が同等の3匹の雌ビーグルイヌに100μgの静脈内ボーラス投与でフェンタニル
を摂取させた。同一のイヌに、吸入のために80nmの粒径(MMAD)でフェンタニル
UFを摂取させた(100μgをエアロゾル化し、約50μgのフェンタニル基剤を含有
する装置1の連続2回の作動として投与した)。エアロゾルは、空気600〜700cc
の標的送出容積で図1に略図により示したシステムを介して麻酔を施したイヌへ投与し、
その後に5秒間の息こらえが続いた。投与後、薬物動態学的解析のために投与2分〜24
時間の間の様々な時点に血漿サンプルを入手した。装置1内に残っているフェンタニルは
回収して計量した。フェンタニル濃度は、0.2ng/mLの検出限界で妥当性を確認し
たGC法を使用して測定した。
【0127】
この実施例からの血漿中薬物動態を同一のイヌで実施した静脈内(IV)フェンタニル
(100μg)と比較した。フェンタニルの吸入は、迅速な吸収(Cmax、血漿中最高
濃度、11.6ng/mLおよびTmax、最高時間、2分間)および高いバイオアベイ
ラビリティ(84%)を生じさせた。吸入されたフェンタニルの時間経過は、IVフェン
タニルの時間経過とほぼ同一であった。したがって、吸入用のフェンタニルUFはIV注
射の曝露プロフィールに類似する曝露プロフィールを有していた。
【0128】
各動物についての薬物動態パラメータを計算するために、標準ノンコンパートメント薬
物動態試験法を使用した。血漿中最高濃度(Cmax)およびそれが発生した最高時間(
max)はデータの調査によって決定した。血漿濃度対時間曲線下面積(AUC)を決
定した。吸入されたフェンタニルのバイオアベイラビリティ(F)は以下のように決定し
た。
【0129】
F= (DIV/DINHAL)*(AUCINHAL/AUCIV)
式中、Dは用量、AUCは測定可能な最終時点に決定したAUCであった。
【0130】
図26は、実施例1の下で上記に説明したような装置1を使用してIV投与および吸入
投与の両方について、イヌによる血中レベルについて入手したデータをプロットしたもの
である。
【0131】
フェンタニルエアロゾルは迅速に吸収され、両方の投与経路について同一Tmax(2
分間、最も初期の時点)が観察された。フェンタニルエアロゾルの最高血漿中濃度(11
.6±1.9ng/mL)は、IVフェンタニル(17.6±3.6ng/mL)のほぼ
3分の2であった。血漿中濃度はIV投与の6〜8時間後およびエアロゾル吸入の3〜4
時間後までにアッセイ定量限界より下へ低下した。バイオアベイラビリティの計算は、吸
入投与について測定可能な最終時点に観察されたAUCに基づいていた。吸入試験につい
てのバイオアベイラビリティは、公称(未修正)フェンタニル用量に基づくと84%であ
った。
【0132】
平均血漿排出半減期はIV後(75.4分間)および吸入投与後で類似であった。分布
相半減期(3〜4分間)もまた両方の投与経路後に類似であった。吸入投与後の薬物動態
パラメータの動物間変動性は低く、相対標準偏差(RSD<25%)はIV投与について
観察された相対標準偏差より低かった。
[実施例2] 実施例1を使用したIn Vitro試験の結果
下記の表2には、フェンタニルのin vitro試験について実施例1の使用から収
集したデータを要約した。粒径はMoudiカスケード・インパクタを用いて計測した。
【0133】
【表2】

【0134】
[実施例3] 微細なエアロゾル粒子を作製するための実施例1の使用
この実施例では、下記に説明するように1〜3ミクロンの粒径範囲にある微細なエアロ
ゾルを作製するために実施例1をわずかに変更し、流量を変更した。
【0135】
空気通路区間140を取り外し、空気チャネル加熱/気化帯70を変更した。空気通路
インサート(図示していない)は、箔の0.25インチ上方である「天井」を有するもの
とした。この実施例では高速混合は望ましくないので混合用ロッドはなかった。これらの
2つの装置の変更のために、空気との混合ははるかに少ないので、したがって蒸気/エア
ロゾル・クラウドはより少ない空気と混合され、より粒径の大きなエアロゾルを作り出し
た。この実施例では、空気流量は1リットル/分減少した。同様に、これにより蒸気はは
るかに少ない空気と混合され、その結果より粒径の大きなエアロゾルが発生した。
【0136】
実施例1における箔64上への高い化合物負荷に関して幾つかの操作上の問題に遭遇し
た。試験した化合物であるジオクチルフタレート(DOP)は油であり、エアロゾル化プ
ロセス中に実質的な量が風下へ吹き飛ばされてエアロゾル化されなかった。この問題に対
処するために、化合物が置かれる基質表面の変更を含む3つの追加の代替設計を作成した
。3つの代替設計では、基質はテクスチャーを使用することにより前記化合物を「保持す
る」ように作成した。それらは次の通りであった。a)箔をテクスチャー化すること、b
)箔の上部にステンレススチール・スクリーンを追加すること、およびc)箔を目の細か
いステンレススチール・スクリーンと取り替えること、である。
【0137】
この実施例からの結果を以下の表3に記載した。
【0138】
【表3】

【0139】
上述したように、微細な粒径は単に化合物対混合気の比率を変化させることによって装
置1を用いて作製することができる。
[実施例4] 実施例700を使用したIn Vitro試験の結果
タンクにDOPを部分的に充填し、吸気口および排気口を有するオーブン(図示してい
ない)の内側に配置した。DOPは試験化合物として使用した。タンクは、タンクおよび
その内容物を350℃の温度へ加熱する前にヘリウムを用いてパージした。ヘリウムはタ
ンクにポンプで送り込み、これを使用して排気口からDOP蒸気を排気した。ヘリウムお
よび気化した化合物60のガス状混合物はノズルを通して様々なサイズの混合用チューブ
内へ導入した。各チューブは、14リットル/分でそれらを通過する空気を有していた。
ノズルは流動方向に垂直であった。このガス状混合物が空気と混合された後、結果として
生じたエアロゾルを粒径解析のために並流型拡散バッテリ内へ導入された。結果を以下の
表4に記載した。
【0140】
【表4】

【0141】
上記から明らかなように、チューブ径が大きくなるにつれて粒径も大きくなった。さら
に、径が大きくなるにつれて、GSDもまた大きくなった。チューブが大きくなるにつれ
て、気化したガスが混合ガスのより小さな区間内に導入されると考えられるが、それはこ
のガスは不均一な混合をもたらす点源として導入されており、それが大きなGSDを生じ
させるためである。
[実施例5] 実施例800を使用したIn Vitro試験の結果
実施例800の有効性を証明するために、長さ4インチのアルミニウム片の一端に15
0ワットのカートリッジ式加熱装置を装備した。この加熱装置にはバリアック(vari
ac)AC電源変圧器から電力供給された。アルミニウムの厚さは、熱がアルミニウムの
一端から他方の端へ約30秒間で横断することを保証するように設計した。
【0142】
アルミニウムの上側には、前記化合物を保持して2つの上蓋の1つを保持するようにく
ぼみを機械加工した。前記化合物のためのくぼみは、長さ約3.5インチおよび幅0.4
インチであった。くぼみは深さ0.025インチで、1mgのDOPが充填された。
【0143】
第1トップは、空気通路を作り出す加熱された表面の0.04インチ上方に置かれた1
枚の平板ガラスから構成された。排気口端では、空気が分析用計測装置内に引き込まれる
ように排気口が装備された。空気は15リットル/分の速度で空気通路内を流れさせた。
【0144】
第2構成では、トップはガラス製の半円筒と取り替えた。これは空気通路の断面積を1
桁増加させた。
【0145】
粒径を、両方の構成を用いて測定したところ、空気通路の断面積によって影響を受ける
ことが証明された。
【0146】
温度勾配試験の結果は以下の表5に記載した。
【0147】
【表5】

【0148】
上記のように、これらの結果は断面積が大きくなるほど粒径も大きくなることを確証し
ている。
[実施例6] 実施例900を使用したIn Vitro試験の結果
エアロゾルを生成するためのこの実施例では、空気通路910は18mm径ガラスチュ
ーブから構成した。しかし、この通路は匹敵する断面積を備えるあらゆる形状で、そして
あらゆる適切な材料から作製することができる。この実施例におけるスクリーンのサイズ
、メッシュおよび前記化合物の量は、前記化合物がその上に配置されると妨害されずにガ
スがスクリーンを通過できるように選択した。
【0149】
スクリーンの内部抵抗は小さかったので、すなわち0.01〜0.2Ωであったので、
キャパシタの放電率(RC時間定数)は高速で、約数ミリ秒間、すなわち20ミリ秒間未
満、好ましくは約2〜約10ミリ秒間の範囲内であった。キャパシタ902が放電し、引
き続いてスクリーン902が加熱されると、配置された化合物は高速に気化した。空気は
スクリーン902を通って移動したので、気化した化合物は空気と迅速に混合され、冷却
された。
【0150】
前記化合物はサイズが2.54cm×2.54cmである316ステンレススチールか
ら作られた約200メッシュの目の細かいステンレススチール・スクリーン上に置いた。
キャパシタ電流は、一方の端部から他方の端部の間に通された。前記化合物は迅速な空気
移動のためにより低温で気化したので、スクリーンを実施例1における薄い箔に匹敵する
温度へ加熱する必要はなかった。空気流は化合物の蒸気が形成されるとすぐにそれらを表
面から除去したので、迅速な空気移動により前記化合物はより低い蒸気圧で気化すること
ができた。そこで、前記化合物は分解することなく低温で気化した。
【0151】
スクリーン上への前記化合物の配置は、前記化合物が溶解するまで前記化合物を有機溶
媒と混合することによって達成された。その後結果として生じた溶液を目の細かいステン
レススチール・スクリーン902上に適用し、溶媒を蒸発させた。その後スクリーンを、
スクリーン902の両側を上記の電源回路へ電気接続するホルダ940内に挿入した。
【0152】
10,000mFキャパシタは、ガスがスクリーン902を通過する間に放電させた。
スクリーンの高速の昇温はガス内への前記化合物の高速の気化を生じさせた。こうして生
じた気化した化合物は少量のガス内へ混合された。前記化合物の質量対混合ガスの容積の
比率が大きかったので、微細(1〜3ミクロン径)の粒子のエアロゾルが作製された。
[実施例7] エアロゾル化の好ましさを決定するための薬物スクリーニングについての
一般的方法
薬物(1mg)を極めて少量の溶媒(例、ジクロロメタンまたはメタノール)中に溶解
または懸濁させる。この溶液または懸濁液を3cm×3cmのアルミニウム箔片の中央部
分上にピペットで移す。塗布された箔を11/2cm径のバイアルの端部周囲に巻き付け
、パラフィルムで固定する。ホットプレートを約300℃へ予備加熱し、箔の側を下にし
てバイアルをその上に置く。バイアルは、気化または分解が始まってから10秒間はホッ
トプレート上に置いておく。ホットプレートから取り除いた後、バイアルを室温へ冷却さ
せる。箔を取り外し、ジクロロメタン、およびその後に飽和水性NaHCOを用いてバ
イアルを抽出する。有機および水性抽出液を一緒に振とうし、分離し、その後有機抽出液
はNaSOの上方を通して乾燥させる。有機液のアリコートを除去し、逆相HPLC
内へ注入し、225nm光線の吸収により検出する。薬物は、この方法によって単離され
た薬物の純度が85%より大きい場合にエアロゾル化のために好ましい。このような薬物
は0.15未満の分解指数を有する。この分解指数は、1から純度(すなわち、0.85
)を減じることによって到達する。
【0153】
当業者であれば、上記の実施例を組み合わせることができる、または本発明の方法およ
び装置を特定の使用および条件に適応させるためにそれらの種々の他の実施例および態様
を作成することができる。したがって、これらの変更および修正は適正、公正であり、そ
して上記のクレームの均等物の全範囲内に含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入療法のための薬物含有エアロゾルを送出する装置であって、
(a)入口と出口とを備えるハウジングと、
(b)前記入口から前記出口へ延びる空気通路と、
(c)表面を有する基質を備える、前記空気通路のサブアッセンブリと、
(d)前記基質の表面上に配置された薬物含有組成物と、
(e)前記基質の表面の領域を加熱する加熱システムと、
(f)患者によって吸入されるとき、空気が前記入口を通って前記装置に入り、前記配置された組成物の表面上を前記空気通路を通過し、
(g)前記空気通路が、前記配置された組成物の表面上を通過する空気の速度を増加させるように構成された、前記基質の表面の前記加熱される領域に沿って限定された断面積を含み、それにより、前記組成物の気化を開始させるために前記組成物を気化温度まで加熱するとき、形成された組成物の蒸気は前記加熱される領域から取り除かれ、前記気化した組成物の有意な分解を伴わずに気化温度以下に冷却される、装置。
【請求項2】
前記加熱システムが抵抗加熱である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基質がステンレススチールを含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記加熱システムは、前記基質を少なくとも1000℃/秒の割合で加熱することができる請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記配置された組成物が10nm〜10μmの間の厚みを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
吸入療法のための薬物含有エアロゾルを送出する装置であって、
ハウジング(10)と、
前記ハウジング内の空気通路(102)であって、金属製基質(64)を有するサブアッセンブリ(80)を備える、空気通路(102)と、
前記基質上に被覆された薬物含有組成物(60)と、
薬物含有蒸気を形成するために前記基質を加熱する加熱システムとを備え、
前記空気通路は、前記薬物含有蒸気から、選択された大きさ幅の安定したエアロゾル粒子を形成するように構成された、エアロゾル形成のためのガス/蒸気混合領域を更に備える、装置。
【請求項7】
前記空気通路が、前記薬物の表面上を通過する空気の速度を増加させるように構成された、前記基質の表面の前記加熱される領域に沿って限定された断面積を含み、それにより、前記薬物の気化を開始させるために前記薬物を気化温度まで加熱するとき、形成された薬物の蒸気は前記加熱される領域から取り除かれ、気化した薬物の有意な分解を伴わずに気化温度以下に冷却される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記加熱システムが抵抗加熱である、請求項6又は7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記加熱システムは、前記基質を少なくとも1000℃/秒の割合で加熱することができる請求項6〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記配置された組成物が10nm〜10μmの間の厚みを有する、請求項6〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
吸入療法のための薬物含有エアロゾルを送出する装置であって、
ハウジングと、
ガス/蒸気混合空気通路を含む空気通路と、
を含み、前記空気通路にはサブアッセンブリが含まれており、前記サブアッセンブリには
金属製基質が含まれており、前記基質上には薬物含有組成物が塗布されている装置。
【請求項12】
さらに加熱システムを含む、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記空気通路がガス/蒸気混合空気通路に沿って限定された断面積を含む、請求項11記
載の装置。
【請求項14】
前記金属製基質がステンレススチールを含む、請求項11記載の装置。
【請求項15】
前記加熱システムが誘導加熱システムである、請求項12記載の装置。
【請求項16】
前記空気通路が、空気が前記空気通路を通過するにつれて渦を惹起するための手段を含
む、請求項13記載の装置。
【請求項17】
前記誘導加熱システムがフェライト・トロイドを含む、請求項15記載の装置。
【請求項18】
さらに誘導加熱システムを含む、請求項16記載の装置。
【請求項19】
組成物中の前記薬物が抗パーキンソン薬である、請求項18記載の装置。
【請求項20】
組成物中の前記薬物がオピオイドである、請求項18記載の装置。
【請求項21】
組成物中の前記薬物が抗不安薬である、請求項18記載の装置。
【請求項22】
吸入療法に使用するための薬物含有エアロゾルを形成する方法であって、
(a)蒸気を形成するために薬物を含む組成物で被覆された基質を加熱するステップと、
(b)粒子を有するエアロゾルが形成されるように前記蒸気をある量の空気と混合するス
テップであって、前記粒子のMMADが少なくとも1秒間は安定性であるステップと、
を含む方法。
【請求項23】
前記基質がそれを加熱帯に通して移動させることによって加熱される、請求項22記載
の方法。
【請求項24】
約10粒子/ccを有するエアロゾルが形成される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記加熱帯が主として交流磁場によって誘導された渦電流によって作り出される、請求
項23記載の方法。
【請求項26】
組成物中の前記薬物が抗パーキンソン薬である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
組成物中の前記薬物がオピオイドである、請求項25記載の方法。
【請求項28】
組成物中の前記薬物が抗不安薬である、請求項25記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−57950(P2010−57950A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259070(P2009−259070)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【分割の表示】特願2003−501533(P2003−501533)の分割
【原出願日】平成14年5月13日(2002.5.13)
【出願人】(503412296)アレックザ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (15)