説明

吸入療法装置用圧縮機

【課題】コストを削減し、構造がコンパクトで、製造が経済的であり、しかも、治療液を霧化する圧力ガス流により発生されたエアゾルに重畳する圧力変動を生ぜしめるために使用できる圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮機は、基本エアゾル流を発生するための圧力媒体連続流を発生させるスペースと圧力変動を発生させるスペースからなる、互いに隔離された2つの圧縮スペース1,5を有する。例えばピストン等の共用圧縮手段4は、移動手段7によって、振り子式に運動されそれによりガスが第1圧縮スペース1を通り、圧力変動が第2の圧縮スペース5を通してガスに加えられる。移動手段7は圧縮スペース1,5に配置される。圧縮機に必要なスペースが有効に利用される。好ましい実施例においては、移動手段7は圧力変動を発生させるために使われる第2の圧縮スペース5に位置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用液体が圧力下に供給されるガスにより霧状にされる吸入療法装置用の圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、EP0170715Aに記載されているように、このタイプの吸入療法装置は、液体を霧状にするために、圧力媒体の作用によるノズルを有しており、このノズルに圧力媒体が供給される。EP0170715Aは患者がマウスピースを通して発生されたエアゾルを吸引する吸入療法装置を記載している。鼻孔を治療するために、発生されたエアゾルが患者の鼻に直接供給されることは公知である。DE10239321Bは、圧力媒体により発生された基本のエアゾル流に、追加的変動圧力を加えて、エアゾルが副鼻洞に到達するのを助けることを記載している。このためには、圧力空気を発生するためと、圧力変動を発生するための2つの圧縮機が必要である。両圧縮機は、噴霧ノズルを有する吸入療法装置により、圧力変動が加えられた基本エアゾル流が発生されるように協働する。噴霧ノズルを有する吸入療法装置に使用される圧縮機は、DE19927528又はDE10239321Bに記載されているように、一般的に電動モータ駆動のピストン式またはダイアフラム式圧縮機である。
【0003】
2つの圧縮機を準備し、装着することはかなりコストがかかるので、すでに両圧縮機を駆動する一つの電動モータを使用すること及び圧縮機と電動モータを一つのハウジングに収納することにより製造コスト削減と作業の単純化をはかることが提案されている。
【発明の開示】
【0004】
この背景を考えて、本発明の目的は、上述の分野におけるコストをさらに削減し、構造がコンパクトで、製造が経済的であり、しかも、治療液を霧化する圧力ガス流を発生すると共に、圧縮ガス流により発生されたエアゾルに重畳する圧力変動を生ぜしめるために使用できる圧縮機を提供することである。さらに、治療目的に使用できる圧縮機でなければならない。
【0005】
この目的は、以下の構成を有する吸入療法用圧縮機により達成される。
【0006】
第1の圧縮スペース;
第1圧縮スペースに第1のガスを流入させるガス流入手段;
第1の圧縮スペースから第1のガスを流出させるガス流出手段;
移動により、ガス流入手段を通して、第1のガスが第1の圧縮スペースに流入され、ガス流出手段を通してガスを流出させるよう第1の圧縮スペースを閉鎖する圧縮手段;
第2の圧縮スペース;
第2の圧縮スペースから第2のガスを逃がすガス通路;及び
2つの圧縮スペースの一つ内に設けられ圧縮手段に関連しそれを移動する移動手段。
【0007】
本発明による構造として、圧縮機は互いに隔離された2つの圧縮スペースを有し、その一つが主エアゾルを生じるための連続圧縮流を発生させ、他の一つが圧力変動を生ぜしめる。ピストン等の共用の圧縮手段は、振り子式に駆動され、ガスが第1の圧縮スペースを通して移動され、圧力変動が第2の圧縮スペース内のガスに加えられる。
【0008】
本発明によれば、移動手段は圧縮スペースに配置される。これにより、圧縮機により占有されるスペースを有効に利用できる。本発明に好ましい実施例においては、移動手段は圧力変動を発生する圧縮スペースに収納される。連続圧力媒体流を発生する圧縮スペースは特に密閉状にしなければならず、一方、移動手段のために必要なダクトを圧縮機のハウジングの壁を通して移動手段が設けられている低圧力の個所即ち圧力変動を生ぜしめる圧縮スペースに設けることは容易であるから、このような構成が好ましい。しかしながら、穴部と例えば電動モータのシャフトのダクト部に密閉性が保たれれば基本的には、移動手段を圧力媒体流が通る圧縮スペースに配置することも可能である。
【0009】
その他の利点はサブクレームから分かる。
【0010】
以下に、添付の図面参照し、発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の吸入療法装置用圧縮機の第1の実施例を示す。この実施例において、圧縮機はハウジング100に囲まれた第1の圧縮スペース1を有する。ハウジング100内には、ピストンという形態の圧縮手段4が設けられている。このピストンにはハウジング100に向く外周部に、例としてテフロン(登録商標)等のシール101が設けられ、ハウジング100内の第1圧縮スペース1を密閉している。第1圧縮スペース1を参照して、図1の圧縮機は、本発明に従えば、さらにガス流入手段2を有している。この流入手段は周囲空気のようなガスを第1圧縮スペースに流入するのを許す一方、第1の圧縮スペースからのガス流出を防ぐ。この目的のために、ガス流入手段2は以下に詳説する流入バルブを有する。第1の圧縮スペース1を参照して、このスペースからのガスの流出のために、第1の圧縮スペースからガスの流出を可能とし、第1の圧縮スペース1にガスが流入するのを防ぐガス流出手段3が設けられている。この目的のために、ガス流出手段3は以下に詳説するガス流出バルブを有する。ピストン4が本発明の圧縮機のハウジング内で、図1の2重矢印に示すように前後に動くと、周囲空気のような第1のガスは最初ガス流入手段2を通して第1の圧縮スペース1に通され、その後、ピストン4の反転運動により、ガス流出手段3を通して圧縮スペース1から排出される。
【0012】
ピストン4をハウジング内で動かせるために、移動手段が設けられている。図1は連結ロッド7aと偏芯板7bの形態の移動手段7を示す。偏芯板7bは電動モータ(図示なし)により駆動され、偏芯板7bの回転運動が、連結ロッド7aがピストンを前後に振り子式に運動させる。シール101が、連結ロッドと偏芯板の相互作用により生じるピストンの傾きを補償できれば、連結ロッドはピストンに固定することができる。そうでない場合には、連結ロッドはピストンに可動的に取付られる。この場合シール101がハウジング内でピストン4を安定的に案内する。
【0013】
本発明に従えば、図1に示された移動手段7は、ハウジング100により形成されピストン4により閉鎖された第2の圧縮スペース5に配置される。換言すれば、移動手段、この場合ピストン4、は本発明の圧縮機のハウジング100を第1圧縮室と第2圧縮室に分割し、圧縮手段4は、移動手段7により運動させられると双方の圧縮室のガスに作用する。
【0014】
第2圧縮スペース5を参照して、本発明に従えば、ピストン4が第2圧縮スペース5の容積を減らせば、ガス、例えば周囲空気、を第2圧縮スペースから排出し、ピストン4が第2圧縮スペースを拡大すればガスを流入させるガス通路6を備えている。圧力変動は、図1の二重矢印のように前後にピストンが動くとき、第2圧縮スペース5内のガス及び、後で詳説する選択的に第2圧縮スペースに連結されたガスに加えられる。
【0015】
本発明に従えば、図1に示された圧縮機はエアゾル発生用の圧力媒体流を発生するために使用されると共に、他方、連続圧力媒体流により発生される主エアゾル流に加重される変動ガスを発生するためにも使用される。
【0016】
吸入療法装置に適切に接続するために、ガス流出手段3はホースを吸入療法装置の噴霧ノズルに接続できるよう、接続スリーブ3aを有している。ホースのための接続スリーブ6aはさらに、第2圧縮室5のガス通路6に設けられている。これを通して圧力変動が吸入療法装置のエアゾル流に加重される。
【0017】
本発明に従って、移動手段を一つの圧縮室に一体化することにより、図1の第2の圧縮室5、一つのユニット内の二つの圧力媒体源を提供するコンパクトな圧縮機が実現できる。二つの圧縮手段を駆動するのに、一つの電動モータ(図示無し) が必要となる。本発明の圧縮機のピストン4を駆動する電動モータの能力を活用し、治療に求められる周波数レンジのどの周波数の圧力変動も発生できる。同時に第1圧縮スペースとガス流入手段2、ガス流出手段3により十分な圧力媒体流が発生できる。
【0018】
連結ロッド7aと偏芯板7bの材料を適切に選択することにより、圧縮スペース内の摩擦物質や潤滑物質の汚染がない低摩擦と低摩擦損失による運転を実現できる。このことは圧縮スペース内において生じる圧力反動は治療のため患者に供給されるエアゾル流に加えられるので必要である。このため、汚染が常に防止できる。連結ロッドのためには色々なプラスチックが適当である。偏芯板のためには亜鉛が適当である。
【0019】
図2は、本発明による吸入療法用圧縮機の他の実施例をしめし、実質的に第1の実施例に相当し、その説明は上述の第1実施例の説明を引用する。従って、図2は、同一の参照符号を使用する。第1の実施例から明らかなように、第2の実施例は、圧力変動を有するガスが失われたり排出された場合に、周囲空気などの第2ガスの第2圧力室への制御された浸入を許すガス流入手段8を備えている。ガス流入手段8を通して第2ガスの進入の制御は、例えば、後で述べる上流流入バルブにより行われる。変動圧力下にあるガスの意図された排出や、損失がある場合には、流入バルブの上流の位置が所定の圧力より高くなるよう、第2ガス、例えば周囲空気、が第2圧縮室5に流入して、ガス損失を補償する。
【0020】
図3は、本発明による吸入療法用圧縮機の他の実施例を示し、実質的に第1の実施例構成に相当し、その説明は上述の図1の説明を引用する。図3は、同一の参照符号を使用する。第1の実施例から明らかなように、第3実施例の圧縮機は圧縮手段4としてダイアフラムが備わっている。ダイアフラムはハウジングに固定されハウジング100を第1と第2の圧縮スペース1,5に分割している。ダイアフラムは、移動手段7の一部と考えてもよい2枚の板7c、7dの間に設けられている。図3の二重矢印に従って、連結ロッド7aにより2枚の板7c、7dが前後に動かされると、ダイアフラムも休止位置から動かされ第1圧縮室1と第2圧縮室5の圧縮および膨張運動を起こす。第3実施例のその他の運動形式は、第1実施例に相当するので、運動形式については、第1実施例の説明を引用する。
【0021】
第2実施例に関連して説明されたガス流入手段8は、第3実施例の圧縮機においても用いることができることは明らかである。
【0022】
図4は、本発明の第4の実施例を示し、その構造は第2実施例に実質的に一致するので、図2に関連してされた上述の説明を引用する。図4は同一の参照符号を使用する。第2実施例から明らかなように、ガス流入手段8は、ホースのための接続部材8aを有している。この部材により、治療用ガスが第2ガスとして、第2圧縮室5に供給することができる。この場合にも、治療ガスは、ガス流入手段8を通して、例えば所定圧からというように、制御下で、流入できる。これはすでに述べた上流流入バルブにより可能である。
【0023】
全ての実施例において、本発明の圧縮機により供給される治療用ガス又はその混合ガスを連続圧力媒体流として、ガス流出手段3に流すように、ホースをガス流入手段2に接続することが可能であることに注意すべきである。この目的のために、ガス流入手段2は例えば接続管2aを備えている。
【0024】
図5は、本発明の吸入療法装置用圧縮機のガス流入手段2に配置するのに適した、流入バルブを例示している。図5に例示された流入バルブは固定手段22により弁座に対して固定された弁体を有し、周囲空気などの第1ガスまたは、上述のガス/空気混合気体がガス流入手段に流入した時、弁体の自由端20aが、弁座から離れるようになっている。このことは、本発明の圧縮機の圧縮手段4が第1圧縮室1内に負圧を生じたときに起こる。
【0025】
図5に示された流入バルブの対応例として、図6は、本発明の圧縮機のガス流出手段3に設けられた流出バルブを示す。このバルブは、弁座31に当接し、保持部32に保持されている弁体30を有する。圧縮手段4が圧縮室1に過圧力を生じると、流出バルブの弁体30の自由端30aは弁座31から離間され、圧縮ガス又はガス/空気混合気体はガス流出手段3を通して逃れる。
【0026】
図7は、本発明の圧縮機の第2圧縮室5に装着できるガス流入手段8に設けられた上流流入バルブを例示している。弁体80はドーム状に膨らむ円形の基本形状を有し、弁座81に対してスタッド82により固定されている。圧縮手段4の運動及びガスの排出や損失の結果、初期負荷に相当する圧以下に第2圧縮室5の負圧が低下した時、第2ガス、例えば上述のガス/に混合ガスが第2圧縮室5に流入する。
【0027】
最初に既に述べたように、移動手段7は、既に説明した4つの実施例においては、第2圧縮室5に配置されているが、第1圧縮スペース1が十分密閉されていれば、第1圧縮スペース1に設けることができる。これに関連して、次のことに注目すべきである。すなわち、達成される圧力と流量が第2圧縮スペースの場合に比較して非常に高いので、密閉性に対する要求は、第2圧縮スペースに対する要求よりも第1圧縮スペースに対する要求が高く又異なっていることである。しかしながら、当業者に知られた技術的手段により密閉性が保障されれば、第1圧縮スペースに移動手段を配置することに何の問題もない。
【0028】
本発明の圧縮機は噴霧ノズルを有する吸入療法装置に用いることができるのみならず、例えば、EP1304130Aに記載されているような、ダイアフラム式噴霧装置などの他の噴霧装置にも用いることができる。この場合には、エアゾルを発生させるために、連続圧力媒体流を用いるのでなく、ダイアフラム又は超音波噴霧装置により発生されたエアゾルを圧力媒体流に混ぜることにより基本エアゾル流を発生させるために用いる。本発明の圧縮機により発生された圧力変動はこれにより発生された基本エアゾル流に重畳される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、第1の実施例を概略的に示している。
【図2】図2は、第2の実施例を概略的に示している。
【図3】図3は、第3の実施例を概略的に示している。
【図4】図4は、第4の実施例を概略的に示している。
【図5】図5は、本発明のガス流入手段と流入バルブの詳細を示している。
【図6】図6は、本発明のガス流出手段と流出バルブの詳細を示している。
【図7】図7は、本発明のガス流入手段と流入バルブを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧縮スペース(1);
第1圧縮スペース(1)に第1のガスを流入させるためのガス流入手段(2);
第1の圧縮スペース(1)から第1のガスを流出させるためのガス流出手段(3);
移動により、ガス流入手段(2)を介して第1のガスが第1の圧縮スペース(1)に流入され、ガス流出手段(3)を介してガスを流出させるように作用する第1の圧縮スペース(1)を閉鎖する圧縮手段(4);
第2の圧縮スペース(5);
第2の圧縮スペース(5)から第2のガスを逃がすガス通路(6);及び
第1の圧縮スペース(1)の外で第2の圧縮スペース(5)の内部に配置され圧縮手段(4)に関連し圧縮手段(4)を動かせる移動手段(7)から成る吸入療法装置用圧縮機。
【請求項2】
前記ガス流入手段(2)は、流入バルブ(20,20a,21,22)からなることを特徴とする請求項1による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項3】
前記圧縮機に第1ガスを供給するために、接続部材(2a)が前記ガス流入手段(2)に設けられていることを特徴とする請求項2による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項4】
前記接続部材が接続スリーブ(2a)であることを特徴とする請求項3による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項5】
前記ガス流出手段(3)は、流出バルブ(30,30a,31,32)から成ることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項6】
前記圧縮機から第1ガスを除去するために、接続部材(3a)がガス流出手段(3)に設けられていることを特徴とする請求項5による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項7】
接続部材はホース用の接続スリーブ(3a)であることを特徴とする請求項6による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項8】
第2ガスが第2圧縮スペース(5)に制御されて流入するのを許すガス流入手段(8)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項9】
前記ガス流入手段(8)は流入バルブ(80,81,82)からなることを特徴とする請求項8による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項10】
第2ガスを圧縮機に供給するために、前記ガス流入手段(8)に接続部材(8a)が設けられていることを特徴とする請求項8または9による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項11】
前記接続部材はホース用の接続スリーブ(8a)であることを特徴とする請求項10による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項12】
前記圧縮手段(4)はピストンであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項13】
前記圧縮手段(4)は、ダイアフラムであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項14】
前記移動手段は、連結ロッド(7a)と偏芯板(7b)から成ることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項による吸入療法装置用圧縮機。
【請求項15】
前記第1ガスおよび/又は前記第2ガスは、空気又は治療作用のあるガス又はガスと空気の混合気体であることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項による吸入療法装置用圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−244876(P2007−244876A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−68151(P2007−68151)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(505475046)パリ ゲーエムベーハー シュペツィアリステン フューア エフェクティブ インハレツィオーン (7)
【氏名又は名称原語表記】PARI GMBH SPEZIALISTEN FUR EFFEKTIVE INHALATION