吸収体の製造方法
【課題】複数のフィラメント集合体を用いて吸収体を形成するにあたり、フィラメント集合体間の一体性に乏しく、後に分離したりズレを生じたりするおそれがある問題を解決しつつ、強度及びコシの向上も図る。
【解決手段】上記課題は、トウ52Xを開繊してフィラメント集合体を形成し、このフィラメント集合体を用いて吸収体56を製造するにあたり、開繊に際して、性質の異なる複数のトウ52X及び繊維相互が接着されておらず交絡だけで形成された不織布57を、トウ52X間に不織布57を挟むようにして上下に重ねた状態で単一の通路内に通しつつ通路内に圧縮エアーを吹き込み、複数のトウ52Xをまとめて開繊するとともに、不織布57についても繊維間隔の拡大により嵩を増加させ、隣接するトウ52Xのフィラメントと不織布57の繊維とを相互に絡み合わせ、一体的なフィラメント集合体を形成する、ことにより解決される。
【解決手段】上記課題は、トウ52Xを開繊してフィラメント集合体を形成し、このフィラメント集合体を用いて吸収体56を製造するにあたり、開繊に際して、性質の異なる複数のトウ52X及び繊維相互が接着されておらず交絡だけで形成された不織布57を、トウ52X間に不織布57を挟むようにして上下に重ねた状態で単一の通路内に通しつつ通路内に圧縮エアーを吹き込み、複数のトウ52Xをまとめて開繊するとともに、不織布57についても繊維間隔の拡大により嵩を増加させ、隣接するトウ52Xのフィラメントと不織布57の繊維とを相互に絡み合わせ、一体的なフィラメント集合体を形成する、ことにより解決される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウを用いた吸収体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幼児や大人のテープ式やパンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品は、使用面側のトップシートと、背面側の体液の透過を防止するバックシートと、これらのシート間に介在され、トップシートを透過した排泄された体液を受け入れ保持する吸収要素とを基本要素としている。
【0003】
この基本要素に対し、バックシートの裏面側にたとえば不織布などからなる外装シートを設け、バックシートとしてプラスチックシートを使用した場合における肌触りを改良する形態、製品の両側にいわゆるバリヤーカフスを形成する形態など、ウエスト周りや腹周りのフィット性を改良するために弾性伸縮性を付与する形態などが、適宜付加される。
【0004】
使用面側のトップシートを透過した体液を受け入れ保持する吸収要素としては、従来は、パルプ短繊維の積繊体が一般的に使用されている。また、体液に吸収量を高めるために高吸収性ポリマー粒子(以下「SAP」ともいう。)を使用することも知られている。
【0005】
SAPはパルプ短繊維の積繊体上に散布する場合のほか、パルプ短繊維のSAPを分散保持させ積繊体させる場合(特許文献1)がある。
【0006】
一方、近年では、特表2002―524399号(WO99/27879:特許文献2)及び特表2004―500165号(米国特許第6,646,180号:特許文献3)に示されるように、フィラメントを吸収要素として使用することが提案されている。
【0007】
特表2004―500165号は、SAPを主体としフィラメント集合体を添加した吸収要素を開示する。この吸収要素は、上層と下層との間に設けた、SAPを約50〜95重量%含み、スターチなどの非水溶性の親水性ポリマー及び繊維を約5〜50重量%含み吸収層からなるラミネート構造のものであり、これを横断面C型に折り畳み、中央にチャンネルを形成したものである。特表2004―500165号は、繊維の例としてフィラメントを使用することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004―65300号公報
【特許文献2】特表2002―524399号(WO99/27879)公報
【特許文献3】特表2004―500165号(米国特許第6,646,180号)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、トウを開繊して得られるフィラメント集合体を形成する場合、開繊によって、フィラメント集合体の目付け、厚さ、弾性、密度、剛性等の多数の性能が一度に変化してしまうため、これらの性能を個別かつ自由に設計することは不可能であった。そして、その結果、吸収体においても、目付け、厚さ、弾性、密度、剛性等の一定の性能を個別かつ自由に設計できなかった。
これに対して、トウの開繊により形成されたフィラメント集合体部分を複数用いて吸収体が形成されていると、吸収体の部位に応じて、各フィラメント集合体部分の開繊状態を異ならしめたり、各フィラメント集合体部分に性質の異なるトウを用いたりすることができるため、開繊や原料に左右されずに、吸収体の目付け、厚さ、弾性、密度、剛性等の一定の性能を自由に設計できるようになる。特に、複数のフィラメント集合体部分が物品の厚さ方向に蓄積された構造を採用することにより、物品の厚さ方向の各部における性能を自由に設計できるようになる。また複数のフィラメント集合体部分が物品の幅方向に並設された構造を採用することにより、物品の幅方向の各部における性能を自由に設計できるようになる。
【0010】
この場合、複数のトウを原料として複合吸収要素を製造する場合、複数のトウを個別に開繊した後、得られるフィラメント集合体を積層等により複合化して単一の複合吸収要素とするのが簡易である。しかしながら、このようにして得られるものはフィラメント集合体間の一体性に乏しく、後に分離したりズレを生じたりするおそれがある。
そこで、本発明の主たる課題は、この問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
【0012】
<請求項1記載の発明>
トウを開繊してフィラメント集合体を形成し、このフィラメント集合体を用いて吸収体を製造する方法であって、
前記開繊に際して、性質の異なる複数のトウ及び繊維相互が接着されておらず交絡だけで形成された不織布を、前記トウ間に前記不織布を挟むようにして上下に重ねた状態で単一の通路内に通しつつ通路内に圧縮エアーを吹き込み、前記複数のトウをまとめて開繊するとともに、前記不織布についても繊維間隔の拡大により嵩を増加させ、隣接するトウのフィラメントと不織布の繊維とを相互に絡み合わせ、一体的なフィラメント集合体を形成する、ことを特徴とする吸収体製造方法。
【0013】
(作用効果)
この場合、複数のトウだけでなく、不織布においても繊維間隔の拡大により嵩が増加し、隣接するトウのフィラメントと不織布の繊維とが相互に絡み合い、一体的なフィラメント集合体が形成される。したがって、本発明によれば、特別な工程を追加することなく、容易に、複数のトウを原料として、フィラメントの連続性を維持しつつ、強固に一体化されたフィラメント集合体を製造できるようになる。
また、このように、重なり合うフィラメント集合体部分の間に不織布が挟まれていると、不織布により、強度やコシの向上を図ることができる。またフィラメント集合体部分内に高吸収性ポリマー粒子が移動可能なように保持されている場合、不織布により高吸収性ポリマー粒子の移動を遮断することができるとともに、製品外面を手で触った時に高吸収性ポリマー粒子の凹凸により発生するジャリジャリした違和感を軽減できるようになる。
【0014】
<請求項2記載の発明>
前記一体的なフィラメント集合体を形成した後に、この一体的なフィラメント集合体の上に、高吸収性ポリマー粒子を散布供給する、請求項1記載の吸収体製造方法。
【0015】
<請求項3記載の発明>
前記複数のフィラメント集合体部分は、目付け、厚さ、弾性、密度、および剛性の少なくとも一つが異なる、請求項1または2記載の吸収体製造方法。
【0016】
(作用効果)
本項記載のように製造することによって、部分的に目付け、厚さ、弾性、密度、および剛性の少なくとも一つが異なる吸収体を製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によれば、トウを開繊して得られるフィラメント集合体を用いて吸収体を製造するに際して、目付け、厚さ、弾性、密度、剛性等の一定の性能を自由に設計できるようになる等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】パンツ型使い捨ておむつの斜視図である。
【図2】パンツ型使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図3】図2の3―3線矢視断面図である。
【図4】他の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図5】別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図6】変形例の3―3線矢視相当断面図である。
【図7】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図8】テープ式使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図9】図8のIX−IX断面図である。
【図10】パンツ型紙おむつの製造設備例を示す概要図である。
【図11】図10の要部概要図である。
【図12】拡幅装置の概要図である。
【図13】図12のXIII−XIII断面図である。
【図14】開繊装置の概要図である。
【図15】他のパンツ型紙おむつの製造設備例を示す概要図である。
【図16】図15の要部概要図である。
【図17】開繊装置の概要図である。
【図18】開繊工程の第2の形態を示す要部概要図である。
【図19】開繊工程の第3の形態を示す要部概要図である。
【図20】開繊工程の第3の形態を示す要部概要図である。
【図21】エアー噴射ノズルの概要図である。
【図22】高吸収性ポリマー粒子散布手段例の概要図である。
【図23】他の高吸収性ポリマー粒子散布形態の概要図である。
【図24】他の高吸収性ポリマー粒子散布形態の概要図である。
【図25】別の製造設備例を示す概要図である。
【図26】テープ式使い捨て紙おむつの製造設備例を示す概要図である。
【図27】テープ式使い捨て紙おむつの製造設備例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、紙おむつ並びにその製造設備を参照しつつ詳説する。
<パンツ型使い捨ておむつの例>
図1には、パンツ型使い捨ておむつの例が示されている。このパンツ型使い捨ておむつ10は、外面(裏面)側の外装シート12と内面(表面)側の吸収性本体20とを備え、外装シート12に吸収性本体20が固定されている。吸収性本体20は、尿や軟便などの体液(後述する生理用ナプキンでは経血)を受け止めて吸収保持する部分である。外装シート12は着用者に装着するための部分である。
【0020】
外装シート12はたとえば図示のように砂時計形状となり、両側が括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。吸収性本体20は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。
【0021】
外装シート12は、図2に示すように、吸収性本体20が所定位置に設置され固定された後、前後に折り畳まれ、外装シート12の前身頃12F及び後身頃12Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。これによって、図1に示す構造の、ウエスト開口部WOと一対のレッグ開口部LOを有するパンツ型使い捨ておむつが得られる。
【0022】
図示の吸収性本体20の長手方向(すなわち図2の上下方向。製品の前後方向でもある。)の中間の幅は、外装シート12の括れた部分を繋ぐ幅より短い形態が示されている。この幅の関係は逆でもよいし、同一の幅でもよい。
【0023】
外装シート12は望ましくは2枚のたとえば撥水性不織布のシートからなり、これらのシート間に弾性伸縮部材を介在させて、その収縮力により着用者にフィットさせる形態が望ましい。前記弾性伸縮部材としては、糸ゴムや弾性発泡体の帯状物などを使用できるが、多数の糸ゴムを使用するのが望ましい。図示の形態では、糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域Wにおいては幅方向に連続して設けられ、腰下領域Uにおいては両側部分のみに設けられ、股下領域Lにおいては設けられていない。糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域W及び腰下領域Uの両者に設けられていることで、糸ゴム12C自体の収縮力が弱いとしても、全体としては腰下領域Uにおいても着用者に当たるので、製品が着用者に好適にフィットする。
【0024】
(吸収性本体)
実施の形態の吸収性本体20は、図3に示されるように、体液を透過させるたとえば不織布などからなるトップシート30と、中間シート(セカンドシート)40と吸収要素50とを備えている。また、吸収体56の裏面側にはプラスチックシートなどからなる体液不透過性シート(バックシートとも呼ばれる)70が設けられている。この体液不透過性シート70の裏面側には、前記の外装シート12が設けられている。さらに、両側にバリヤーカフス60、60を備えている。
【0025】
(トップシート)
トップシート30は、体液を透過する性質を有する。したがって、トップシート30の素材は、この体液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0026】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0027】
(中間シート)
トップシート30を透過した体液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より体液の透過速度が速い、通常「セカンドシート」と呼ばれる中間シート40を設けることができる。この中間シートは、体液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した体液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、トップシート30上を常に乾燥した状態とすることができる。
【0028】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布及びスパンボンド不織布が好ましい。
【0029】
中間シート(セカンドシート)40は、トップシート30と包被シート58との間に介在されている。図5に示すように、中間シート(セカンドシート)40を設けない形態も使用可能である。
【0030】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、体液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。中間シート40の代表的な素材は体液の透過性に優れる不織布である。
【0031】
(吸収要素)
吸収要素50は、トウを開繊したフィラメント52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…を有する吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有する。さらに、吸収体56と包被シート58の裏面側部位(下側の部分)との間に保持シート80が設けられている。
【0032】
(吸収体)
吸収体56は、トウを開繊して形成されるフィラメント(実質的に連続する長繊維)の集合体で形作られており、特徴的には別々のトウから形成される複数のフィラメント集合体部分52A,52Bを有している。
【0033】
本発明の吸収体56は、フィラメント集合体部分の配置や数が限定されるものではない。したがって、図3に示すように、物品の厚さ方向上下にフィラメント集合体部分52A,52Bを二層重ねて配置する他、図5に示すように積層数を三層52A,52C,52Bにしたり、図7に示すように、物品の幅方向に三本のフィラメント集合体部分52D,52E,52Fを並べて配置したり、図示しないが長手方向や斜め方向等、厚さ方向と直交する表面方向に複数のフィラメント集合体部分を並設することができる。また、積層と並設とを組み合わせることもできる。
【0034】
各フィラメント集合体部分52A,52Bの幅は同一であっても良いが、複数のフィラメント集合体部分52A,52Bを積層する場合等、必要に応じて、各フィラメント集合体部分52A,52Bの幅を異ならしめることもできる。例えば、図3等に示すような2層構造の場合、図示しないが上層52Aの幅を下層52Bの幅よりも狭くすることができる。
【0035】
複数のフィラメント集合体部分52A,52Bは、少なくとも二本のトウに関して開繊状態を異ならしめることができる。
【0036】
また、各フィラメント集合体部分52A,52Bの原料として、同種のトウを複数用いても良いが、性質の異なるトウを複数種用いるのが好ましく、例えば、材質の異なるもの、繊度の異なるもの、断面形状の異なるもの、アセチル化度の異なるもの、親水性の異なるもの等を用いることができる。性質の異なるトウを複数種用いる場合、吸収体56における部位に応じてトウの種類を選択するのが好ましい。より具体的には、図3に示す形態において、下層部分52Bを液保持性能に優れる太さ、例えば繊度1〜3dtex程度のフィラメントで構成し、上層部分52Aは下層部分53Bよりも太く液拡散性能に優れるフィラメント、例えば繊度4〜6dtexのフィラメントで構成するのは、一つの好ましい形態である。この場合、トップシート30側から供給された液は上層部分52A内で広い範囲に拡散した後、下層部分52Bに吸収保持されるようになる。
【0037】
また、複数のフィラメント集合体部分52A,52Bは、開繊状態や種類を異ならしめることによって、目付け、厚さ、弾性、密度、および剛性の少なくとも一つが異なるようにすることができる。
【0038】
隣接するフィラメント集合体部分52A,52Bは、図3の拡大部分に示されるように、単に重ねられている或いは並べられているだけでも良く、図4の拡大部分に示されるように一方の部分52Aのフィラメント52aと他方の部分52Bのフィラメント52bとの絡み合いにより一体化されていても良い。この場合、両部分52A,52Bは境界部分近傍において各フィラメント52a,52bが絡み合って一体化しており、明確な境界は生じない。また、隣接するフィラメント集合体部分52A,52B相互をホットメルト接着剤やヒートシール等の接合手段により接合することができる。ホットメルト接着剤を用いる場合、隣接するフィラメント集合体部分52A,52Bの継ぎ目に接着剤を集中的に付与すると、排泄部の液分が継ぎ目によって遮断される結果、継ぎ目の延在方向に沿う液の拡散が促進されるようになる。
【0039】
図6に示すように、隣り合うフィラメント集合体部分52A,52Bの間に不織布57を挟むのも好ましい形態である。符号57fは不織布繊維を表している。この場合、不織布57としてはフィラメント集合体部分52A,52Bよりも剛性の高いものが好ましい。具体的には、構成繊維57fの繊度が2.0〜6.0dtex程度、坪量が15〜50g/m2程度、厚みが0.2〜2.0mm程度のものが好ましい。不織布57の種類は特に限定されないが、繊維の絡み合いによりフィラメント集合体部分52A,52Bと一体化し易い点で、スパンレース不織布等のように、繊維相互が接着されておらず、交絡だけで形成されているものが好ましい。
【0040】
フィラメント52a,52bの材質としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステルおよびセルロースが好ましい。
【0041】
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸されたものであってもよい。
【0042】
好適に採用できるセルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは単独で又は二種類以上混合して使用できる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
【0043】
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
【0044】
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。特に好ましいセルロースエステルは、セルロースジアセテートである。
【0045】
フィラメント52a,52bは、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
【0046】
フィラメント52a,52bの繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexが望ましい。フィラメント52a,52bは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造できるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。フィラメント52a,52bの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。フィラメントは、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用される。繊維束は、3,000〜1,000,000本程度のフィラメントを集束して構成するのが好ましい。
【0047】
トウは、フィラメント間の絡み合いが弱いため、形状を維持する、高吸収性ポリマー粒子の移動防止、吸収体のコシを確保、尿の拡散防止などの目的で、フィラメントの接触部分を接着または融着する作用を有するバインダーまたはホットメルト接着剤を用いることができる。バインダーとしては、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステルなどのエステル系可塑剤の他、各種の樹脂接着剤、特に熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0048】
バインダーまたはホットメルト接着剤として使用する熱可塑性樹脂には、溶融・固化により接着力が発現する樹脂であり、水不溶性または水難溶性樹脂、および水溶性樹脂が含まれる。水不溶性または水難溶性樹脂と水溶性樹脂とは、必要に応じて併用することもできる。
【0049】
水不溶性または水難溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の単独又は共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などのスチレン系重合体、変性されていてもよいポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド、ロジン誘導体(例えば、ロジンエステルなど)、炭化水素樹脂(例えば、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂など)、水素添加炭化水素樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種又は二種以上使用できる。
【0050】
水溶性樹脂としては、種々の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニル単量体と、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩を有する共重合性単量体との共重合体などのビニル系水溶性樹脂、アクリル系水溶性樹脂、ポリアルキレンオキサイド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミドなどを用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で使用できるとともに二種以上組合せて使用してもよい。
【0051】
熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を添加してもよい。
【0052】
トウは公知の方法により製造できるので詳説はしない。吸収要素50に好適に使用できるセルロースジアセテートのトウのベールは、セラニーズ社やダイセル化学工業などにより市販されている。セルロースジアセテートのトウのベールは、密度は約0.5g/cm3であり、総重量は400〜600kgである。
【0053】
このベールから、トウを引き剥がし、所望のサイズ、嵩となるように広い帯状に開繊する。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは製品の吸収体の幅の100〜300mm程度とすることができる。また、トウの開繊状態を調整することにより、吸収体の密度を調整することができる。
【0054】
(高吸収性ポリマー粒子)
好適には、図3に示すように、吸収体56中に高吸収性ポリマー粒子54,54…を含ませる。そして、少なくとも体液受け入れ領域において、フィラメント52,52…の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。この実質的に厚み方向全体に分散されている状態を図3の要部拡大図として概念的に示した。
【0055】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、フィラメントの集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子がフィラメント52,52…の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子がフィラメント52,52…の集合体を通り抜けて包被シート58上にある形態や図6に示されるように保持シート80上にある形態も排除されるものではない。
【0056】
高吸収性ポリマー粒子54を用いる場合、各フィラメント集合体部分52A,52Bにおける高吸収性ポリマー粒子54の種類、付与量(付与量がゼロの場合を含む)、分散態様、密度等は個別に定めることができ、全て同じにすることも、またいずれかのフィラメント集合体部分52A,52Bにおける高吸収性ポリマー粒子54の種類や付与量等を他のフィラメント集合体部分52A,52Bに対して異ならしめることもできる。特に、いずれか一方のフィラメント集合体部分の層(特に下層52B)に高吸収性ポリマーを含有させるとともに、他方のフィラメント集合体部分の層(特に上層52A)に高吸収性ポリマーを含有させないのは好ましい。
【0057】
ここで、高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む意味である。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、100〜1000μm、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が60g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0058】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体内に供給された体液が吸収体外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0059】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、トウを用いることにより嵩高な吸収体とした場合であっても、体液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0060】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量を50g/m2以下とすることにより、ポリマーの重量によって、トウからなるフィラメントの集合体を採用することにより軽量化効果が発揮されにくくなるのを防止できる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰により前述のジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0061】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、体液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0062】
必要により、高吸収性ポリマー粒子として、粒径分布が異なる複数用意し、厚み方向に順次散布・投射できる。たとえば、前記の高吸収性ポリマー粒子散布手段90を複数ライン方向に間隔をおいて配置し、先に粒径分布が小さいものを散布・投射した後に、粒径分布が大きいものを散布・投射することで、吸収体56内の下側に粒径分布が小さいものを、上側に粒径分布が大きいものを分布させることができる。この形態は、粒径分布が小さいものは、フィラメントの集合体内に奥深く侵入させるために有効である。
【0063】
高吸収性ポリマー粒子とフィラメントの集合体との割合は吸収特性を左右する。吸収体56における体液を直接受ける領域での5cm×5cmの平面面積内における重量比としては、高吸収性ポリマー粒子/フィラメント重量が、1〜14、特に3〜9であることが望ましい。
【0064】
(他の吸収素材の組み合わせ)
【0065】
複数のフィラメント集合体部分を備える限り、他の公知の吸収素材、例えばパルプとエアレイド等の短繊維を積繊し、必要に応じて高吸収性ポリマー粒子を添加して形成される短繊維吸収素材を組み合わせることができる。
【0066】
(吸収体のサイズ・重量)
【0067】
他方、吸収体56のサイズは、平面投影面積が400cm2以上であり、かつ厚さが1〜10mm、特に1〜5mmであるのが好ましい。吸収体のサイズがこの範囲内にあると、重量や厚さ、コストの増加を来たさずに復元性を向上する上で、極めて有利である。また、吸収体の重量は25g以下、特に10〜20gとなるように構成するのが好ましい。吸収体の重量がこの範囲内にあると、専用部材を用いないことによる利点が特に顕著になる。
【0068】
(吸収体の圧縮特性)
【0069】
吸収体56の圧縮レジリエンスRCは、40〜60%、特に50〜60%とするのが好ましい。これにより、吸収体自体で十分な復元性を発揮できるようになる。
【0070】
さらに、吸収体56の圧縮エネルギーWCは4.0〜10.0gf・cm/cm2であると、包装に際して従来と同レベルあるいはそれ以上にコンパクトに圧縮することができるため好ましい。
【0071】
これらの圧縮特性は、開繊等によるフィラメント密度の調整、フィラメント素材の選定、可塑剤等のバインダーの種類の選定・処理の程度の調整、あるいはこれらの組み合わせ等により調整できる。
【0072】
ここで、圧縮エネルギー(WC)とは、長さ200mm、幅50mmに断裁した試験片(保持シート)の中央部を、50gまで押す場合のエネルギー消費量である。
【0073】
この圧縮エネルギーは、ハンディー圧縮試験機(KES−G5、カトーテック社製)によって、測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、SENS:2、力計の種類:1kg、SPEED RANGE:STD、DEF感度:20、加圧面積:2cm2、取り込間隔:0.1(標準)、STROKE SET:5.0、上限荷重:50gf/cm2である。
【0074】
一方、圧縮レジリエンス(RC)とは、圧縮時の回復性を表すパラメータである。したがって、回復性がよければ、圧縮レジリエンスが大きくなる。この圧縮レジリエンスは、ハンディー圧縮試験機(KES−G5、カトーテック社製)によって、測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、上記圧縮エネルギーの場合と同様である。
【0075】
(包被シート)
【0076】
包被シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、5〜50g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0077】
この包被シート58は、図3のように、フィラメント52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層全体を包む形態のほか、たとえば図4に示すように、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの体液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの体液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、フィラメント52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0078】
(保持シート)
【0079】
保持シート80と吸収体56上との間には、高吸収性ポリマー粒子54をその散布などにより介在させることができる。高吸収性ポリマー粒子54は、フィラメント52の集合体への散布・投射時に又はその後の工程、あるいは消費者が使用するまでの流通過程で、フィラメント52の集合体を通り抜けることがある。フィラメント集合体を通り抜けた高吸収性ポリマー粒子群の凹凸は、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与える。そこで、吸収体56と包被シート58との間に吸収性ポリマーの保持性能を有する保持シート80を介在させるのである。この保持シート80は、ティッシュペーパ(クレープ紙)などの包被シート58のみでは足りないコシを補強して、消費者が使用する際に手で触ったとき違和感を軽減又は防止する。
【0080】
なお、図6には、吸収体56の下方に高吸収性ポリマー粒子54を設けた場合、あるいは吸収体56中に含ませた高吸収性ポリマー粒子54が、製造から消費者が使用するまでの段階で、フィラメント52の集合体から抜け出て、保持シート80上に集まった場合を概念的に示した。
【0081】
保持シート80の素材は、特に限定されず、高吸収性ポリマー粒子54の保持性能を有するものであれば足りる。具体的には、例えば、不織布、捲縮パルプ、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、絹、綿、麻、ナイロン、ポリウレタン、アセテート繊維、エアレイド(高吸収性ポリマー粒子混在)シート等を例示することができる。
【0082】
保持シート80を不織布とする場合、その保持シート80は、KES試験に基づく圧縮エネルギーが0.01〜10.00gfcm/cm2、好ましくは、0.01〜1.00gfcm/cm2で、かつ圧縮レジリエンスが10〜100%、好ましくは、70〜100%の不織布であるとよい。
【0083】
保持シート80を設ける理由は先にも触れたように、たとえば吸収体56から下方に抜け落ちた(抜け出た)高吸収性ポリマー粒子54を保持することにある。したがって、抜け出た高吸収性ポリマー粒子54に対して、包被シート58及び保持シート80を介して使用者に接触するので、使用者にジャリジャリした違和感として、伝わるおそれがない。特に上記の縮エネルギー及び圧縮レジリエンスである不織布であると、保持機能が十分に発揮される。
【0084】
また、抜け出た高吸収性ポリマー粒子54は、保持シート80によって保持され、包被シート58上を移動することがないため、吸収能力の偏在が生じるおそれもない。特に、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを保持シート80上に塗布することができる。また、保持シート80の上面(使用面側に向かう面)を粗面とすることで、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するようにしてもよい。このための粗面化又は毛羽立ち手段としては、不織布の製造時におけるネット面でない非ネット面とする、マーブル加工を行う、ニードルパンチにより加工する、ブラシッング加工するなどを挙げることができる。
【0085】
保持シート80は、図3等に示すように吸収体56の下方にのみ設けても、また図6に示すように、吸収体56の側面を通り吸収体56の上面にまで巻き上げて延在させてもよい。また、保持シート80を複数枚重ねて使用することも可能である。
【0086】
上記例は、吸収体56と包被シート58の裏面側部位との間に保持シート80を設ける例であるが、保持シート80は、包被シート58より裏面側であってもよく(その形態は図示していない)、要は、吸収体56に対して裏面側に保持シート80を設ければ、製品の裏面から触る場合におけるジャリジャリした違和感を軽減させるあるいは生じさせないものとなる。
【0087】
(体液不透過性シート)
体液不透過性シート70は、単に吸収体56の裏面側に配されるシートを意味し、本実施の形態においては、トップシート30との間に吸収体56を介在させるシートとなっている。したがって、本体液不透過性シートは、その素材が、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで体液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。
【0088】
体液不透過性シート70は、いわゆる額巻きする形態で使用面に延在させる(図示せず)ことで、体液の横漏れを防止できるが、実施の形態においては、横漏れについては、バリヤーカフス60を形成する二重のバリヤーシート64間に第2体液不透過性シート72を介在させることにより防止している。この形態によれば、バリヤーカフス60の起立まで第2体液不透過性シート72が延在しているので、トップシート30を伝わって横に拡散した体液やバリヤーカフス60、60間の軟便の横漏れを防止できる利点もある。
【0089】
(バリヤーカフス)
【0090】
製品の両側に設けられたバリヤーカフス60、60は、トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために設けられているが、付加的な要素である。
【0091】
図示のバリヤーカフス60は、撥水性不織布シートを二重にしたものであり、吸収体56の裏面側からトップシート30の下方への折り込み部分を覆って、表面側に突出するように形成されている。トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿を阻止するために、特に、二重の不織布シート間に体液不透過性シート70の側部が挿入され、表面側に突出するバリヤーカフス60の途中まで延在している。
【0092】
また、バリヤーカフス60自体の形状は適宜に設計可能であるが、図示の例では、バリヤーカフス60の突出部の先端部及び中間部に弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム62が伸張下で固定され、使用状態においてその収縮力により、バリヤーカフス60が起立するようになっている。中間部の糸ゴム62が先端部の糸ゴム62、62よりも中央側に位置してトップシート30の前後端部に固定される関係で、図3のように、バリヤーカフス60の基部側は中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端部は外側に斜めに起立する形態となる。
【0093】
(エンボス加工)
【0094】
トップシート30の表面側から厚み方向にエンボスによる凹部Eを形成してもよい。この場合、トップシート30のみにエンボスによる凹部Eを形成するほか、図7に示すように、トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成方したり、トップシート30の表面側から吸収体56の厚さ方向一部または略全体に達するようにエンボスによる凹部を形成したり(図示せず)することができる。トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成させるためには、中間シート40としては、坪量が5〜50g/m2、厚さ0.2〜1.5mm、トップシート30としては、坪量が15〜80g/m2、厚さ0.2〜3.5mmの範囲にあるのが、透液性を阻害しない条件で、エンボス加工を充分に行える点で望ましい。
【0095】
また、トップシート30に凹部を形成することなく、中間シート40のみにエンボスによる凹部を形成してもよく、さらにトップシート30及び中間シート40に凹部を形成することなく、吸収要素56のみにエンボスによる凹部を形成しても、また、トップシート30、中間シート40および包被シート58に凹部を形成することなく、吸収体58のみにエンボスによる凹部を形成してもよい。
【0096】
凹部Eはこれが延在する方向に、体液を誘導し拡散させる効果がある。よって、凹部Eを実質的に溝状に連続させる(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)と、体液は、吸収体に到達する前に表面側層の凹部Eを伝って拡散するようになり、吸収体のより広範な部分を吸収に利用できるようになる。よって、製品全体の吸収容量が増大し、吸収容量不足に基づく側方からの漏れや逆戻りが発生し難い吸収性物品となる。
【0097】
一方、トウからなる吸収体56は従来のパルプ物と比べて剛性が低下し易いが、吸収体56にエンボスによる凹部を形成すると剛性を高めることができるため好ましい。図示しないが、吸収要素50の剛性を高めるために、吸収体56の裏面側(トップシート30側に対して反対側)から厚み方向にエンボスによる凹部を形成するのも好ましい形態である。この裏面側の凹部を形成するために、保持シート80、包被シート58、体液不透過性シート70または外装シート12の裏面側から、吸収体56まで達するように一体的にエンボス加工を施すことができる。また、このような裏面側の凹部は、表面側の凹部Eとともに形成するのが好ましいが、表面側の凹部Eを形成せずに裏面側の凹部のみ形成することもできる。凹部を表裏両側に設ける場合には、凹部の形態を表裏共通にしても良く、また表裏異なるものとしても良い。
【0098】
エンボスによる凹部はその延在方向に体液を誘導し拡散させる効果がある。また剛性を高める効果もある。よって、エンボスによる凹部の形態はこれらの効果を考慮して決定するのが望ましい。例えば、凹部は、実質的に溝状に連続するもの(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)の他、複数の凹部が間隔を空けて点状に配置されるものであっても良い。また、平面パターンとしては、溝状または点状の凹部が、製品の長手方向、幅方向、これらを組み合わせた格子状、幅方向に往復するジグザグ状(千鳥状)、あるいは不規則に配置された形態等を採ることができる。さらに、ピン状、富士山状、蛇腹状等、適宜の形態を採用することができる。
【0099】
(その他)
【0100】
なお、図示しないが、吸収性本体20の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などの適宜の塗布形態により相互に固定される。
【0101】
(テープ式使い捨ておむつの例)
【0102】
一方、図8及び図9はテープ式使い捨ておむつの例を示している。図9は図8におけるIX−IX線矢視図であるが、吸収性本体20についてはやや誇張して図示してある。
【0103】
テープ式使い捨ておむつ10Aは、おむつの背側両側端部に取り付けられたファスニング片を有し、このファスニング片の止着面にフック要素を有するとともに、前記おむつの裏面を構成するバックシートを不織布積層体とし、おむつの装着に当り、前記ファスニング片のフック要素を前記バックシートの表面の任意個所に係合可能となしたおむつである。
【0104】
吸収性本体20は、トップシート30と、体液不透過性シート70との間に、吸収体56を介在させたものとなっている。この吸収体56は、ティッシュペーパによる包被シート58により全体が包まれており、平面的に視て長方形をなしている。吸収体56と包被シート58との間には保持シート80が設けられている。
【0105】
さらに、トップシート30と吸収体56との間には、中間シート40が介在されている。体液不透過性シート70は吸収体56より幅広の長方形をなし、その外方に砂時計形状の不織布からなるバックシート12Aが設けられている。
【0106】
トップシート30は吸収体56より幅広の長方形をなし、吸収体56の側縁より若干外方に延在し、体液不透過性シート70とホットメルト接着剤などにより固着されている。
【0107】
おむつの両側部には、使用面側に突出するバリヤーカフス60Aが形成され、このバリヤーカフス60Aは、実質的に幅方向に連続した不織布からなるバリヤーシート64と、弾性伸縮部材、例えば糸ゴムからなる1本の又は複数本の脚周り用弾性伸縮部材としての糸ゴム62とにより構成されている。130は面ファスナーによるファスニング片である。
【0108】
バリヤーシート64の内面は、トップシート30の側縁と離間した位置において固着始端を有し、この固着始端から体液不透過性シート70の延在縁にかけて、幅方向外方部分がホットメルト接着剤などにより固着されている。バリヤーシート64の外面は、その下面においてバックシート12Aにホットメルト接着剤などにより固着されている。さらに、ガスケットカフス用弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム66が設けられている。
【0109】
バリヤーシート64の内面の、体液不透過性シート70への固着始端は、バリヤーカフス60Aの起立端を形成している。脚周りにおいては、この起立端より内側は、製品本体に固定されていない自由部分であり、この自由部分が糸ゴム62の収縮力により起立するようになる。
【0110】
本例では、ファスニング片130として、面ファスナーを用いることで、バックシート12Aに対して、メカニカルに止着できる。したがって、いわゆるターゲットテープを省略することもでき、かつ、ファスニング片130による止着位置を自由に選択できる。
【0111】
ファスニング片130は、プラスチック、ポリラミ不織布、紙製などのファスニング基材の基部がバックシート12Aに、例えば接着剤により接合されており、先端側にフック要素130Aを有する。フック要素130Aはファスニング基材に接着剤により接合されている。フック要素130Aは、その外面側に多数の係合片を有する。フック要素130Aより先端側に仮止め接着剤部130Bを有する。製品の組立て末期において、仮止め接着剤部130Bがバリヤーシート64に接着されることによりファスニング片130の先端側の剥離を防止するようにしている。使用時には、その接着力に抗して剥離し、ファスニング片130の先端側を前身頃に持ち込むものである。仮止め接着剤部130Bより先端側はファスニング基材が露出して摘みタブ部とされている。
【0112】
前身頃の開口部側には、バックシート12Aの内面側に、デザインシートとしてのターゲット印刷シート74が設けられ、ファスニング片130のフック要素130Aを止着する位置の目安となるデザインが施されたターゲット印刷がなされ、外部からバックシート12Aを通して視認可能なように施されている。
【0113】
おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム62の収縮力が作用するので、脚周りでは、糸ゴム62の収縮力によりバリヤーカフス60Aが起立する。
【0114】
起立部で囲まれる空間は、尿又は軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿はトップシート30を通って吸収体56内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、バリヤーカフス60Aの起立部がバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。万一、起立部の起立遠位側縁を乗り越えて横に漏れた尿は、平面当り部によるストップ機能により横漏れが防止される。
【0115】
本形態において、各起立カフスを形成するバリヤーシート64は、透液性でなく実質的に不透液性(半透液性でもよい)であるのが望ましい。また、本発明の表面シート(不織布積層体)に対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。いずれにしても、バリヤーシート64及びバックシート12Aは、それぞれ通気性があり、かつバリヤーシート64及びバックシート12Aは、それぞれ耐水圧が100mmH2O以上のシートであるのが好適である。これによって、製品の幅方向側部において通気性を示すものとなり、着用者のムレを防止できる。
【0116】
その他の点、例えば各部の使用素材等については、前述のパンツ型紙おむつの場合と同じであるため、敢えて説明を省略する。
【0117】
<紙おむつの製造方法例>
次に、上述の紙おむつの製造例について説明する。
(パンツ型おむつの場合)
図10及び図11に示す例は、図1、図2及び図6に示すパンツ型の使い捨ておむつの製造設備例を示している。
【0118】
ラインに上流側から包被シート58が供給され、次いで保持シート80が供給される。この保持シート80に対しては、後に供給される高吸収性ポリマー粒子の移動を防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを塗布することができる。図11にはこのための粘着剤塗布装置104が図示されている。
【0119】
続いて、トウを開繊することにより形成される(詳細は後述する)フィラメント集合体52Zが上方から供給され、その上に、高吸収性ポリマー粒子散布手段90により高吸収性ポリマー粒子54が散布供給される。その後、セーラ92を通すことにより包被シート58により包み込まれ、吸収要素50とされる。次に、カッター装置94によりライン方向に分割され、個別の吸収要素50とされる。
【0120】
さらに、中間シート(セカンドシート)40が上方から、実施の形態では吸収要素50全長に対して短い構造であるので、間欠的に供給される。
【0121】
続いて上方からバリヤーカフス60の構成要素及びトップシート30が、下方から体液不透過性シート70がそれぞれ供給される。ここで、バリヤーカフス60を構成するバリヤーシート64の供給ラインでは、予め、図示しない装置により2枚の不織布間に糸ゴム62が伸張下で、かつ第2体液不透過性シート72が固定された状態での供給がなされ、トップシート30と共に主ラインに供給される。主ラインに供給されたバリヤーカフス60の構成要素、トップシート30及び体液不透過性シート70は、図6に示す形状に、セーラ96により折り畳みがなされる。
【0122】
吸収性本体20のラインの最後では、カッター装置98により切断され、長手方向をラインに沿わせた長方形の吸収性本体20が得られる。得られた吸収性本体20は、転回装置100により吸収性本体20の長手方向がラインと直交するように90度転回される。
【0123】
一方、外装シート12のラインでは、予め2枚の不織布シート間に糸ゴム12Cが介在された(図10では図示を省略してある)状態で流れ、かつ、脚周り部分を形成するためにカッター(図示せず)により楕円形にくりぬかれ、組合せステーション102に達すると、その上で、かつ、くりぬき部位間に転回済みの吸収性本体20が設置され、ホットメルト接着剤などにより固定され、外装シート12と結合される。その後、図10の水平ラインを境にして上下に折り畳まれ、外装シート12の前身頃12F及び後身頃12Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。その後、ライン方向に分断して(分断手段は図示していない)個別製品を得る。
【0124】
(開繊工程の第1の形態)
開繊工程は、例えば図11に示す形態(参考形態)のラインにより実施できる。すなわち、単一の吸収体内に具備させるフィラメント集合体部分の数(図示例では2本)に合わせて、開繊ラインL1,L2を個別に設け、各ラインL1,L2でトウ52Yを個別に開繊してフィラメント集合体52Zをそれぞれ形成し、これら複数のフィラメント集合体52Zを所定の配置(図示例では上下積層配置であるが、CD方向に並設する、あるいはこれらを組み合わせることもできる)に集合した後、その上に、高吸収性ポリマー粒子散布手段90により高吸収性ポリマー粒子54を散布供給し、しかる後にセーラ92へと送り込むようになっている。これらのフィラメント集合体52Zは、それぞれ前述の吸収体56におけるフィラメント集合体部分52A,52Bとなる。
【0125】
各ラインL1,L2のトウ52Yは、同じものであっても、また繊度等の種類が異なるものであっても良い。また、各ラインL1,L2における開繊の度合いは個別に設定することができ、同程度とすることもできるが、異ならしめることもできる。そして、これらによって、得られるフィラメント集合体52Z(フィラメント集合体部分52A,52B)の目付け、厚さ、弾性、密度、および剛性の少なくとも一つが異なるようにすることができる。
【0126】
より詳細には、各開繊ラインL1,L2では、ベール52Xからトウ52Yが引き出され、必要に応じて、拡幅装置120を介して段階的に拡幅されながら第1ニップ126A、第2ニップ126B、及び第3ニップ126Cを通り、拡厚装置110に導かれる。
【0127】
ベール52Xからのトウの引き出しは、第1ニップ126A(駆動ニップロールに相当)による引き込みにより行われるようになっている。特徴的には、ベール52Xから引き出されたトウ52Yは、ターン部122により角度変えが行われた後、回転自由に構成された一対のニップロールからなるフリーニップロール124のニップを介して、第1ニップ126Aにより引き込まれるようになっている。このような構成では、フリーニップロール124の移送抵抗(ニップ圧力やロール自重に応じて定まる)があたかもトウ52Yの引き込み速度を抑えるブレーキとして機能し、フリーニップロール124以降における張力が安定するようになる。これは、フリーニップロール124の回転がトウの通過のみで発生するようになっていることに起因するものである。この結果、吸収体のサイズ、重量、品質が安定するようになる。
【0128】
フリーニップロール124のニップ圧や自重は適宜定めればよいが、通常の場合、ニップ圧は0MPa超10MPa以下とするのが好ましく、また、ロール自重は、ロール一本あたり0kg超10kg以下とするのが好ましい。この範囲内であれば、張力の安定化を容易に実現できる。
【0129】
また、ベール52Xから引き出されたトウ52Yは、ベール52Xとフリーニップロール124との間、フリーニップロール124と第1ニップ126Aとの間、第1ニップ126Aと第2ニップ126Bとの間、ならびに第2ニップ126Bと第3ニップ126Cとの間にそれぞれ設けられた拡幅装置120により、段階的に所望の幅まで拡幅される。この際、併せて厚さ方向にも拡大することができる。
【0130】
図12及び図13は拡幅装置の例120を示している。この拡幅装置120は、トウ52Yを通す所定幅Xの角筒状通路120Aと、この通路120A内面における幅方向に沿う面に形成された圧縮エアーの噴出口120Bとを有し、通路120A内に導入されるトウ52Yを圧縮エアーの力により通路幅一杯に拡幅するものである。通路の高さは、導入されるトウ52Yの厚さ以上とされており、トウ52Yの厚さよりも高い場合には、トウ52Yは厚さ方向にも拡大される。
【0131】
噴出口120Bは、図13に示されるように、通路120Aの幅方向中央に関して線対称をなし且つ通路120Aの幅方向中央に向かうにつれてトウ通過方向下流側に位置するくの字状(もしくはV字状)スリットとされている。
【0132】
このようなスリット120Bからエアーを噴出させた状態で、トウが通路120A内に進入すると、進入位置が幅方向中央からずれていたとしても、トウ52Yが圧縮エアーの力をバランス良く受けるように幅方向中央側(図13中の矢印方向)に逃げ、自然にトウ52Yが通路120Aの幅方向中央に案内される。つまり、拡幅のための圧縮エアーを利用してトウ52Yの導入位置のセンタリングも可能になるのである。また、この形態では、トウ52Yを非接触で案内するため、ガイド部材等のように接触により案内するのと比べて、トウの傷みや崩れも発生し難い利点もある。また、このようなセンタリング機能を有する拡幅装置120は、拡幅におけるセンタリングだけでなく移送位置の補正機能をも発揮する。
【0133】
上述のような圧縮エアーを利用したセンタリングを行う場合、スリットの形状はくの字状に限られず、通路120Aの幅方向中央に関して線対称をなし且つ通路120Aの幅方向中央に向かうにつれてトウ通過方向下流側に位置する条件を満足する限り、曲線状、円弧状等に形成することもできる。
【0134】
一方、第1ニップ126Aと第2ニップ126Bとの間では、トウ52Yにテンションをかけるように張力が付与されており、逆に第2ニップ126Bと第3ニップ126Cとの間は弛緩されるように、各ニップロールの周速度が設定されている。この結果、第1ニップ126Aと第2ニップ126Bとの間でトウ52Yにテンションがかけられることで、フィラメント相互の絡み合い等がある程度まで強制的に除去され、フィラメントの分離が促進されるとともに、この分離に伴って拡幅装置120によりトウ52Yを拡幅することで、トウ52Yの更なる均一な拡幅が可能となっている。また、第2ニップ126Bと第3ニップ126Cとの間でトウ52Yの弛緩を行いつつ、拡幅装置120によりトウ52Yを拡幅することで、トウ52Yの更なる均一な拡幅が可能となっている。この部分における開繊状態は、主にテンションの変更によって変化させることができる。
【0135】
より好ましい形態では、第2ニップ126Bの一方のローラは、長手方向に小さな間隔を置いて周方向に連続する溝が多数形成される。この溝は、フィラメントが多数の溝内に入り込むことで、トウの解しを促進させる機能がある。さらに、この場合、溝の効果を高めるために、第2ニップ126Bの一方の溝付ローラにおけるトウ52Yの抱き角度(トウ接触部分の回転方向角度)を大きくし、トウ52Yと溝付ローラとの接触面積を大きくするのも好ましい形態である。具体的には、第2ニップ126B上流側のトウ52Yと下流側のトウ52Yとのなす角度、つまり溝付ローラによる方向転換角度が180度未満、特に鋭角(90度よりも小)となるように構成するのが好ましい。この溝付ローラの採用によっても開繊状態が変化する。
【0136】
また、第1ニップ126A、第2ニップ126B及び第3ニップ126Cは、対をなすロールの径の組み合わせが相違しても良いが、その場合、周速度差によりロール間でトウ52Yに加わる張力やロールとトウ52Yとの接触抵抗などが、トウ幅方向において不均一になるおそれがあるため、全て共通するように構成するのが好ましい。
【0137】
次に、第3ニップ126Cを通過したトウ52Yは、拡厚装置110に導かれる。拡厚装置110は、たとえば、特開昭59−500422号公報(WO 83/03267)に開示されたものと同様な構造であり、概略的には図14に示すように、入口110Aと出口110Bとの間にベンチュリー部110bが形成されるとともに、入口側に圧空の吹き込み口110aを備えるとともに、ベンチュリー部110bに空気の排気孔110cを有するものである。平面的にはほぼ長方形をなし、図14の紙面を貫通する方向に扁平な形状である。
【0138】
吹き込み口110aからの圧空の吹き込みによって、エジェクター効果によって入口110Aから空気が入り込み、その結果、各トウ52Yは通路内に引き込まれ、前進力が与えられる。各トウ52Yはベンチュリー部110bを過ぎた位置において、空気の排気孔110cから排気が行われ、かつ、ベンチュリー部110bの空間が拡大するために、主にトウ52Yの嵩が厚み方向に増加し、厚さが拡大される。なお、通路の幅を、導入されるトウ52Yの幅よりも広くすることにより、図14の下方に示すように拡幅も可能である。この拡厚装置110においても、開繊状態は、主に通路サイズの変更、圧縮空気の量、幅方向でのエア分布などにより変化させることができる。
【0139】
(開繊工程の第2の形態)
図15及び図16は、図4に示す吸収体構造を形成するのに適した製造ライン例(参考形態)を示している。すなわち、複合するトウの数(図示例では2本)に合わせて供給ラインL1,L2を個別に設け、各ラインL1,L2から供給される複数のトウ52Yをまとめて拡厚装置110に導入し、一体的なフィラメント集合体52Zを形成する点以外は、第1の形態と基本的に同様のものである。図示例では、複数のトウ52Yを上下に重ねているが、CD方向に並べる、あるいはこれらを組み合わせることもできる。
【0140】
より詳細には、各ラインL1,L2の第3ニップ126Cを通過したトウ52Yは、上下に積層する等の所望の相互配置でまとめて拡厚装置110に導入される。吹き込み口110aからの圧空の吹き込みによって、エジェクター効果によって入口110Aから空気が入り込み、その結果、各トウ52Yは通路内に引き込まれ、前進力が与えられる。各トウ52Yはベンチュリー部110bに至ると、空気の排気孔110cから排気が行われ、かつ、ベンチュリー部110bの空間が拡大するために、図17に示すように、主にトウ52Yの嵩が厚み方向に増加し、厚さが拡大される。なお、通路の幅を、導入されるトウ52Yの幅よりも広くすることにより拡幅も可能である。そして、この際、各トウ52Yにおけるフィラメント52,52相互の間隔が広がり且つ嵩が増加するのに伴って、隣接するトウのフィラメント52,52が相互に絡み合い、一体的なフィラメント集合体52Zが形成される。
【0141】
各ラインL1,L2から供給される複数本のトウ52Yは、そのまま拡厚装置110の通路に通しても良いが、図18に示すように、通路の入側で、複数本のトウ52Yをまとめて単一のニップロール126D間に挟み、隣接するトウ52Y相互を圧接すると、複数本のトウ52Yを予めまとめておくことができ、通路への導入が円滑になるとともに、隣接するトウ52Yのフィラメントがより絡み易くなるため好ましい。
【0142】
(開繊工程の第3の形態)
図6に示すように、隣り合うフィラメント集合体部分52A,52Bの間に不織布を挟む場合、図19に示すように、第2の形態において、各ラインL1,L2から供給される複数のトウ52Yをまとめて拡厚装置110に導入する際に、図示しないロールから繰り出される不織布57を供給して、トウ52Yの間に挟み込む(本発明の実施形態)。この場合、複数のトウ52Yだけでなく、不織布57においても繊維間隔の拡大により嵩が増加し、隣接するトウ52Yのフィラメントと不織布57の繊維とが相互に絡み合い、一体的なフィラメント集合体52Zが形成される。また、図20に示すように、第1の形態においても、各ラインL1,L2で個別に開繊形成した複数のフィラメント集合体52Zを所定の配置に集合する際、図示しないロールから繰り出される不織布57を供給して、フィラメント集合体52Zの間に挟み込むことができる(参考形態)。
【0143】
(開繊工程の第4の形態)
図21は第4の形態(参考形態)を示している。すなわち、この形態は、第1の形態で述べたように、各ラインL1,L2で個別に開繊した複数のフィラメント集合体52Zを集合配置した後、第2の形態で述べたようにまとめて拡厚装置110に導入し、複数のフィラメント集合体52Zを単一の通路内に通しつつ通路内に圧縮エアーを吹き込むことにより一体化するものである。
【0144】
(高吸収性ポリマー粒子散布手段)
フィラメント集合体52Zに対して高吸収性ポリマー粒子を散布する手段90としては、フィラメントの集合体52Zにおける実質的に厚み方向全体に高吸収性ポリマー粒子を分散させるものが好ましい。このような高吸収性ポリマー粒子散布手段90としては、高吸収性ポリマー粒子自体の自重よる落下力のみならず、加速力を与える手段が望ましい。この例を図22に示した。すなわち、下部に開口を有するケーシング90a内に投射孔90dを有する回転ドラム90bがウェブの移動方向(図22での反時計方向)に回転するように構成され、その内部にシャッタドラム90cが設けられたものである。これらを要素とする投射部90Aは、ホッパー90Bと連結され(図11参照)、高吸収性ポリマー粒子散布手段90が構成されている。
【0145】
ホッパー90Bからの高吸収性ポリマー粒子54は回転ドラム90b内に供給されるように構成されている。ここに、予め、ケーシング90aの開口位置に対し、シャッタドラム90cの開口の位置調整が行われる。図22の状態では完全一致した全開状態を示してある。また、回転ドラム90bの投射孔90dは、周方向に分割された群として、図示では周方向に4つの群として分割され、したがって図示では回転ドラム90bが一回転する過程で、4枚分の紙おむつに対して高吸収性ポリマー粒子を散布・投射するようにしてある。
【0146】
フィラメント52の集合体上に高吸収性ポリマー粒子54を連続的に散布・投射してもよいが、図10が参照されるように、吸収要素50をカッター装置94によりライン方向に分割し、個別の吸収要素50とするときに、高吸収性ポリマー粒子54の存在によりカッター装置94の刃が短時間のうちに磨耗してしまう。そこで、高吸収性ポリマー粒子54を連続的に散布・投射するのではなく、図22に示すように、ゾーンZのみに間欠的に散布・投射するようにすることが望ましい。
【0147】
このために、前述のように、回転ドラム90bの投射孔90dは、周方向に分割された群として、図示では周方向に4つの群として分割して形成することにより、高吸収性ポリマー粒子54をゾーンZのみに間欠的に散布・投射するようにしてあるのである。その結果、ゾーンZ、Z間でカッター装置94により分断でき、カッター装置94の刃の磨耗を抑制できる。
【0148】
なお、高吸収性ポリマー粒子の散布量は、主に投射孔90dの孔径の大小、ケーシング90aの開口位置に対するシャッタドラム90cの開口の位置調整によって調節でき、加工ラインの速度に合わせて前記開口の位置は追従させると良い。また、高吸収性ポリマー粒子の散布パターンは、分割された投射孔90d群の配置によって調節できる。
【0149】
一方、必要ならば、高吸収性ポリマー粒子54を圧力空気とともに、フィラメント52の集合体上に散布・投射することで、フィラメントの集合体に対して高吸収性ポリマー粒子が実質的に厚み方向全体に分散させることも可能である。しかし、フィラメント52の集合体上に散布・投射した高吸収性ポリマー粒子が、圧力空気によって散乱し、所定領域外に散布される難点があるので、あまり推奨できない。
【0150】
さらに、高吸収性ポリマー粒子散布手段90と共に、あるいはこれに換えて、フィラメントの集合体上に散布された高吸収性ポリマー粒子54をフィラメントの集合体の下方から、吸引するようにしてもよい。
【0151】
また、図23に示すように、図10の転回ロールをバキュームロール106に換え、前述の遠心分力をも加えて高吸収性ポリマー粒子を散布する散布手段90でなく、単に高吸収性ポリマー粒子を自重による落下させる形式の汎用の高吸収性ポリマー粒子散布手段90により、バキュームロール106上方からフィラメント52の集合体52Z上に、高吸収性ポリマー粒子54を散布することもできる。この場合には、バキュームロール106による吸引力によりフィラメント52の集合体を高吸収性ポリマー粒子が侵入するので、製品段階では、吸収体56の下部に高吸収性ポリマー粒子が分散される。図24は、図15の例における転回ロールをバキュームロール106に換えた場合を示している。
【0152】
フィラメント52の集合体52Zは、転回ロールまたはバキュームロール106において、包被シート58上に配置された保持シート80上(保持シートを省略する場合は包被シート58上)に転移された後、セーラ92に通すことにより包被シート58により包み込まれる。
【0153】
他方、フィラメント集合体52Zに高吸収性ポリマー粒子54を含有させる場合、図11や図23に示されるように、複数のフィラメント集合体52Zを集合配置した後に、これらに対して一体的に高吸収性ポリマー粒子を供給する他、図25に示すように、各ラインL1,L2に、個別に高吸収性ポリマー粒子散布手段90を設け、各フィラメント集合体52Zに対して予め個別に高吸収性ポリマー粒子を供給した後、集合させることもできる。図示しないが、いずれかのラインには高吸収性ポリマー粒子散布手段90を設けるものの、他のラインには高吸収性ポリマー粒子散布手段90を設けないようにし、高吸収性ポリマー粒子を含むフィラメント集合体52Zと、含まないフィラメント集合体52Zとを形成した後、これらを集合配置することもできる。また、図示しないが、図25に示すような、各フィラメント集合体52Zに対する高吸収性ポリマーの個別供給と、図11等に示すような、各フィラメント集合体52Zを集合配置した後の高吸収性ポリマーの一体供給とを組み合わせることもできる。
【0154】
各フィラメント集合体52Zに対する高吸収性ポリマーの個別供給を行う場合、各フィラメント集合体52Zにおける高吸収性ポリマー粒子の種類、付与量(付与量がゼロの場合を含む)、分散態様、密度等は個別に定めることができ、全て同じにすることも、またいずれかのフィラメント集合体52Zにおける高吸収性ポリマー粒子の種類や付与量等を他のフィラメント集合体52Zに対して異ならしめることもできる。
【0155】
また、上記いずれの形態においても、フィラメント52の集合体52Zは、転回ロールまたはバキュームロール106において、包被シート58上に配置された保持シート80上(保持シートを省略する場合は包被シート58上)に転移された後、セーラ92に通すことにより包被シート58により包み込まれる。したがって、フィラメント52の集合体52Zの最終的な調整を行う場合、フィラメント集合体52Zの形成後、セーラ92による包み込みに先立って、具体的に図示形態の場合には転移直前または転移後からセーラ92までの間に行うのが望ましい。
【0156】
例えば、上記転移に際して、フィラメント52の集合体52Zは転移力およびラインの引張力によって僅かに潰され、起毛の減少によりふんわり感が減少する。しかし、転移を確実なものとするためには転移力は必要十分に加える必要がある。そこで、エアー噴射ノズル127を、例えば転回ロールまたはバキュームロール106の直後に設け、フィラメント52の集合体52Zの上面にエアーを吹き付けるのは好ましい形態である。これにより、繊維の絡み合いが強くなりフィラメント集合体52Zの一体性が向上する。このエアー噴射ノズル127の向き・角度はその目的に応じて自由に設定・調整することができる。また、このノズル127は幅方向に均一にエアーを吹き付けるために、図21(a)の平面図に示すように、吹出し口127xを幅方向に所定の間隔で複数設けるのが好ましい。この場合、共通のエアー供給管路127sから各吹出し口127xにエアーを分配供給するように構成することができる。
【0157】
別の最終的な調整として、フィラメント52の集合体52Zの両端部のみにエアーを噴射するエアー噴射ノズル128を、例えばセーラ92の直前に設けることができる。これにより、フィラメント52の集合体52Zの両端部のみを拡幅し、吸収体の形を整えることができ、また端部における繊維相互の絡み合いも強くなる。このエアー噴射ノズル128は、前述のエアー噴射ノズル127と組み合わせてまたはこれに代えて適用することができる。このエアー噴射ノズル128による拡幅は、単なる幅出しの他、例えば粘着剤塗布装置104で塗布されたポリマー移動防止粘着剤が、集合体52Zの端からはみ出ず確実に隠れるようにするため等、適宜の目的で行うことができる。この拡幅のためのエアー噴射ノズル128の向き・角度はその目的に応じて自由に設定・調整することができる。また、この拡幅のためのノズル128は、図21(b)の平面図に示すように、フィラメント52の集合体52Zの幅に合わせて幅方向に離間された一対の吹出し口128xを有し、共通のエアー供給管路128sから各吹出し口128xにエアーを分配供給する構成とすることができる。
【0158】
(テープ式使い捨ておむつの例)
図26は、図8及び図9に示すテープ式の使い捨ておむつの製造方法例を示しており、この例は前述した第1の形態の開繊工程を採用したものである。また、図27は第2の形態の開繊工程を採用したものである。いずれも、中間シート(セカンドシート)40の供給までは、パンツ型の場合と同様である。中間シート40が間欠供給された後は、続いて上方からトップシート30が、下方から体液不透過性シート70がそれぞれ供給され、その後にバリヤーカフス60を構成するバリヤーシート64が供給される。バリヤーシート64の供給ラインでは、予め、図示しない装置により2枚の不織布間に糸ゴム62が伸張下で固定された状態での供給がなされる。ラインの最後では、吸収性本体を備える半製品がカッター装置98により分断され、製品10が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、おむつカバーと併用する吸収パッド等の吸収性物品に好適なものである。
【符号の説明】
【0160】
10…パンツ型使い捨ておむつ、10A…テープ式使い捨ておむつ、12…外装シート、12A…バックシート、20…吸収性本体、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、52…フィラメント、52X…ベール、52Y…トウ、52Z…フィラメントの集合体、54…高吸収性ポリマー粒子、56…吸収体、57…不織布、58…包被シート、60、60A…バリヤーカフス、64…バリヤーシート、70…体液不透過性シート、72…第2体液不透過性シート、80…保持シート、90…高吸収性ポリマー粒子散布手段、90A…投射部、90a…ケーシング、90b…回転ドラム、90c…シャッタドラム、92…セーラ、94…カッター装置、98…カッター装置、100…転回装置、102…組合せステーション、104…粘着剤塗布装置、110…複合開繊装置、110a…圧空の吹き込み口、110b…ベンチュリー部、120…拡幅装置、124…フリーニップロール、126A…第1ニップ、126B…第2ニップ、126C…第3ニップ、130…ファスニング片、E…凹部、Z…高吸収性ポリマー粒子散布ゾーン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウを用いた吸収体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幼児や大人のテープ式やパンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品は、使用面側のトップシートと、背面側の体液の透過を防止するバックシートと、これらのシート間に介在され、トップシートを透過した排泄された体液を受け入れ保持する吸収要素とを基本要素としている。
【0003】
この基本要素に対し、バックシートの裏面側にたとえば不織布などからなる外装シートを設け、バックシートとしてプラスチックシートを使用した場合における肌触りを改良する形態、製品の両側にいわゆるバリヤーカフスを形成する形態など、ウエスト周りや腹周りのフィット性を改良するために弾性伸縮性を付与する形態などが、適宜付加される。
【0004】
使用面側のトップシートを透過した体液を受け入れ保持する吸収要素としては、従来は、パルプ短繊維の積繊体が一般的に使用されている。また、体液に吸収量を高めるために高吸収性ポリマー粒子(以下「SAP」ともいう。)を使用することも知られている。
【0005】
SAPはパルプ短繊維の積繊体上に散布する場合のほか、パルプ短繊維のSAPを分散保持させ積繊体させる場合(特許文献1)がある。
【0006】
一方、近年では、特表2002―524399号(WO99/27879:特許文献2)及び特表2004―500165号(米国特許第6,646,180号:特許文献3)に示されるように、フィラメントを吸収要素として使用することが提案されている。
【0007】
特表2004―500165号は、SAPを主体としフィラメント集合体を添加した吸収要素を開示する。この吸収要素は、上層と下層との間に設けた、SAPを約50〜95重量%含み、スターチなどの非水溶性の親水性ポリマー及び繊維を約5〜50重量%含み吸収層からなるラミネート構造のものであり、これを横断面C型に折り畳み、中央にチャンネルを形成したものである。特表2004―500165号は、繊維の例としてフィラメントを使用することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004―65300号公報
【特許文献2】特表2002―524399号(WO99/27879)公報
【特許文献3】特表2004―500165号(米国特許第6,646,180号)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、トウを開繊して得られるフィラメント集合体を形成する場合、開繊によって、フィラメント集合体の目付け、厚さ、弾性、密度、剛性等の多数の性能が一度に変化してしまうため、これらの性能を個別かつ自由に設計することは不可能であった。そして、その結果、吸収体においても、目付け、厚さ、弾性、密度、剛性等の一定の性能を個別かつ自由に設計できなかった。
これに対して、トウの開繊により形成されたフィラメント集合体部分を複数用いて吸収体が形成されていると、吸収体の部位に応じて、各フィラメント集合体部分の開繊状態を異ならしめたり、各フィラメント集合体部分に性質の異なるトウを用いたりすることができるため、開繊や原料に左右されずに、吸収体の目付け、厚さ、弾性、密度、剛性等の一定の性能を自由に設計できるようになる。特に、複数のフィラメント集合体部分が物品の厚さ方向に蓄積された構造を採用することにより、物品の厚さ方向の各部における性能を自由に設計できるようになる。また複数のフィラメント集合体部分が物品の幅方向に並設された構造を採用することにより、物品の幅方向の各部における性能を自由に設計できるようになる。
【0010】
この場合、複数のトウを原料として複合吸収要素を製造する場合、複数のトウを個別に開繊した後、得られるフィラメント集合体を積層等により複合化して単一の複合吸収要素とするのが簡易である。しかしながら、このようにして得られるものはフィラメント集合体間の一体性に乏しく、後に分離したりズレを生じたりするおそれがある。
そこで、本発明の主たる課題は、この問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
【0012】
<請求項1記載の発明>
トウを開繊してフィラメント集合体を形成し、このフィラメント集合体を用いて吸収体を製造する方法であって、
前記開繊に際して、性質の異なる複数のトウ及び繊維相互が接着されておらず交絡だけで形成された不織布を、前記トウ間に前記不織布を挟むようにして上下に重ねた状態で単一の通路内に通しつつ通路内に圧縮エアーを吹き込み、前記複数のトウをまとめて開繊するとともに、前記不織布についても繊維間隔の拡大により嵩を増加させ、隣接するトウのフィラメントと不織布の繊維とを相互に絡み合わせ、一体的なフィラメント集合体を形成する、ことを特徴とする吸収体製造方法。
【0013】
(作用効果)
この場合、複数のトウだけでなく、不織布においても繊維間隔の拡大により嵩が増加し、隣接するトウのフィラメントと不織布の繊維とが相互に絡み合い、一体的なフィラメント集合体が形成される。したがって、本発明によれば、特別な工程を追加することなく、容易に、複数のトウを原料として、フィラメントの連続性を維持しつつ、強固に一体化されたフィラメント集合体を製造できるようになる。
また、このように、重なり合うフィラメント集合体部分の間に不織布が挟まれていると、不織布により、強度やコシの向上を図ることができる。またフィラメント集合体部分内に高吸収性ポリマー粒子が移動可能なように保持されている場合、不織布により高吸収性ポリマー粒子の移動を遮断することができるとともに、製品外面を手で触った時に高吸収性ポリマー粒子の凹凸により発生するジャリジャリした違和感を軽減できるようになる。
【0014】
<請求項2記載の発明>
前記一体的なフィラメント集合体を形成した後に、この一体的なフィラメント集合体の上に、高吸収性ポリマー粒子を散布供給する、請求項1記載の吸収体製造方法。
【0015】
<請求項3記載の発明>
前記複数のフィラメント集合体部分は、目付け、厚さ、弾性、密度、および剛性の少なくとも一つが異なる、請求項1または2記載の吸収体製造方法。
【0016】
(作用効果)
本項記載のように製造することによって、部分的に目付け、厚さ、弾性、密度、および剛性の少なくとも一つが異なる吸収体を製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によれば、トウを開繊して得られるフィラメント集合体を用いて吸収体を製造するに際して、目付け、厚さ、弾性、密度、剛性等の一定の性能を自由に設計できるようになる等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】パンツ型使い捨ておむつの斜視図である。
【図2】パンツ型使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図3】図2の3―3線矢視断面図である。
【図4】他の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図5】別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図6】変形例の3―3線矢視相当断面図である。
【図7】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図8】テープ式使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図9】図8のIX−IX断面図である。
【図10】パンツ型紙おむつの製造設備例を示す概要図である。
【図11】図10の要部概要図である。
【図12】拡幅装置の概要図である。
【図13】図12のXIII−XIII断面図である。
【図14】開繊装置の概要図である。
【図15】他のパンツ型紙おむつの製造設備例を示す概要図である。
【図16】図15の要部概要図である。
【図17】開繊装置の概要図である。
【図18】開繊工程の第2の形態を示す要部概要図である。
【図19】開繊工程の第3の形態を示す要部概要図である。
【図20】開繊工程の第3の形態を示す要部概要図である。
【図21】エアー噴射ノズルの概要図である。
【図22】高吸収性ポリマー粒子散布手段例の概要図である。
【図23】他の高吸収性ポリマー粒子散布形態の概要図である。
【図24】他の高吸収性ポリマー粒子散布形態の概要図である。
【図25】別の製造設備例を示す概要図である。
【図26】テープ式使い捨て紙おむつの製造設備例を示す概要図である。
【図27】テープ式使い捨て紙おむつの製造設備例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、紙おむつ並びにその製造設備を参照しつつ詳説する。
<パンツ型使い捨ておむつの例>
図1には、パンツ型使い捨ておむつの例が示されている。このパンツ型使い捨ておむつ10は、外面(裏面)側の外装シート12と内面(表面)側の吸収性本体20とを備え、外装シート12に吸収性本体20が固定されている。吸収性本体20は、尿や軟便などの体液(後述する生理用ナプキンでは経血)を受け止めて吸収保持する部分である。外装シート12は着用者に装着するための部分である。
【0020】
外装シート12はたとえば図示のように砂時計形状となり、両側が括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。吸収性本体20は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。
【0021】
外装シート12は、図2に示すように、吸収性本体20が所定位置に設置され固定された後、前後に折り畳まれ、外装シート12の前身頃12F及び後身頃12Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。これによって、図1に示す構造の、ウエスト開口部WOと一対のレッグ開口部LOを有するパンツ型使い捨ておむつが得られる。
【0022】
図示の吸収性本体20の長手方向(すなわち図2の上下方向。製品の前後方向でもある。)の中間の幅は、外装シート12の括れた部分を繋ぐ幅より短い形態が示されている。この幅の関係は逆でもよいし、同一の幅でもよい。
【0023】
外装シート12は望ましくは2枚のたとえば撥水性不織布のシートからなり、これらのシート間に弾性伸縮部材を介在させて、その収縮力により着用者にフィットさせる形態が望ましい。前記弾性伸縮部材としては、糸ゴムや弾性発泡体の帯状物などを使用できるが、多数の糸ゴムを使用するのが望ましい。図示の形態では、糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域Wにおいては幅方向に連続して設けられ、腰下領域Uにおいては両側部分のみに設けられ、股下領域Lにおいては設けられていない。糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域W及び腰下領域Uの両者に設けられていることで、糸ゴム12C自体の収縮力が弱いとしても、全体としては腰下領域Uにおいても着用者に当たるので、製品が着用者に好適にフィットする。
【0024】
(吸収性本体)
実施の形態の吸収性本体20は、図3に示されるように、体液を透過させるたとえば不織布などからなるトップシート30と、中間シート(セカンドシート)40と吸収要素50とを備えている。また、吸収体56の裏面側にはプラスチックシートなどからなる体液不透過性シート(バックシートとも呼ばれる)70が設けられている。この体液不透過性シート70の裏面側には、前記の外装シート12が設けられている。さらに、両側にバリヤーカフス60、60を備えている。
【0025】
(トップシート)
トップシート30は、体液を透過する性質を有する。したがって、トップシート30の素材は、この体液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0026】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0027】
(中間シート)
トップシート30を透過した体液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より体液の透過速度が速い、通常「セカンドシート」と呼ばれる中間シート40を設けることができる。この中間シートは、体液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した体液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、トップシート30上を常に乾燥した状態とすることができる。
【0028】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布及びスパンボンド不織布が好ましい。
【0029】
中間シート(セカンドシート)40は、トップシート30と包被シート58との間に介在されている。図5に示すように、中間シート(セカンドシート)40を設けない形態も使用可能である。
【0030】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、体液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。中間シート40の代表的な素材は体液の透過性に優れる不織布である。
【0031】
(吸収要素)
吸収要素50は、トウを開繊したフィラメント52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…を有する吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有する。さらに、吸収体56と包被シート58の裏面側部位(下側の部分)との間に保持シート80が設けられている。
【0032】
(吸収体)
吸収体56は、トウを開繊して形成されるフィラメント(実質的に連続する長繊維)の集合体で形作られており、特徴的には別々のトウから形成される複数のフィラメント集合体部分52A,52Bを有している。
【0033】
本発明の吸収体56は、フィラメント集合体部分の配置や数が限定されるものではない。したがって、図3に示すように、物品の厚さ方向上下にフィラメント集合体部分52A,52Bを二層重ねて配置する他、図5に示すように積層数を三層52A,52C,52Bにしたり、図7に示すように、物品の幅方向に三本のフィラメント集合体部分52D,52E,52Fを並べて配置したり、図示しないが長手方向や斜め方向等、厚さ方向と直交する表面方向に複数のフィラメント集合体部分を並設することができる。また、積層と並設とを組み合わせることもできる。
【0034】
各フィラメント集合体部分52A,52Bの幅は同一であっても良いが、複数のフィラメント集合体部分52A,52Bを積層する場合等、必要に応じて、各フィラメント集合体部分52A,52Bの幅を異ならしめることもできる。例えば、図3等に示すような2層構造の場合、図示しないが上層52Aの幅を下層52Bの幅よりも狭くすることができる。
【0035】
複数のフィラメント集合体部分52A,52Bは、少なくとも二本のトウに関して開繊状態を異ならしめることができる。
【0036】
また、各フィラメント集合体部分52A,52Bの原料として、同種のトウを複数用いても良いが、性質の異なるトウを複数種用いるのが好ましく、例えば、材質の異なるもの、繊度の異なるもの、断面形状の異なるもの、アセチル化度の異なるもの、親水性の異なるもの等を用いることができる。性質の異なるトウを複数種用いる場合、吸収体56における部位に応じてトウの種類を選択するのが好ましい。より具体的には、図3に示す形態において、下層部分52Bを液保持性能に優れる太さ、例えば繊度1〜3dtex程度のフィラメントで構成し、上層部分52Aは下層部分53Bよりも太く液拡散性能に優れるフィラメント、例えば繊度4〜6dtexのフィラメントで構成するのは、一つの好ましい形態である。この場合、トップシート30側から供給された液は上層部分52A内で広い範囲に拡散した後、下層部分52Bに吸収保持されるようになる。
【0037】
また、複数のフィラメント集合体部分52A,52Bは、開繊状態や種類を異ならしめることによって、目付け、厚さ、弾性、密度、および剛性の少なくとも一つが異なるようにすることができる。
【0038】
隣接するフィラメント集合体部分52A,52Bは、図3の拡大部分に示されるように、単に重ねられている或いは並べられているだけでも良く、図4の拡大部分に示されるように一方の部分52Aのフィラメント52aと他方の部分52Bのフィラメント52bとの絡み合いにより一体化されていても良い。この場合、両部分52A,52Bは境界部分近傍において各フィラメント52a,52bが絡み合って一体化しており、明確な境界は生じない。また、隣接するフィラメント集合体部分52A,52B相互をホットメルト接着剤やヒートシール等の接合手段により接合することができる。ホットメルト接着剤を用いる場合、隣接するフィラメント集合体部分52A,52Bの継ぎ目に接着剤を集中的に付与すると、排泄部の液分が継ぎ目によって遮断される結果、継ぎ目の延在方向に沿う液の拡散が促進されるようになる。
【0039】
図6に示すように、隣り合うフィラメント集合体部分52A,52Bの間に不織布57を挟むのも好ましい形態である。符号57fは不織布繊維を表している。この場合、不織布57としてはフィラメント集合体部分52A,52Bよりも剛性の高いものが好ましい。具体的には、構成繊維57fの繊度が2.0〜6.0dtex程度、坪量が15〜50g/m2程度、厚みが0.2〜2.0mm程度のものが好ましい。不織布57の種類は特に限定されないが、繊維の絡み合いによりフィラメント集合体部分52A,52Bと一体化し易い点で、スパンレース不織布等のように、繊維相互が接着されておらず、交絡だけで形成されているものが好ましい。
【0040】
フィラメント52a,52bの材質としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステルおよびセルロースが好ましい。
【0041】
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸されたものであってもよい。
【0042】
好適に採用できるセルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは単独で又は二種類以上混合して使用できる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
【0043】
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
【0044】
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。特に好ましいセルロースエステルは、セルロースジアセテートである。
【0045】
フィラメント52a,52bは、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
【0046】
フィラメント52a,52bの繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexが望ましい。フィラメント52a,52bは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造できるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。フィラメント52a,52bの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。フィラメントは、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用される。繊維束は、3,000〜1,000,000本程度のフィラメントを集束して構成するのが好ましい。
【0047】
トウは、フィラメント間の絡み合いが弱いため、形状を維持する、高吸収性ポリマー粒子の移動防止、吸収体のコシを確保、尿の拡散防止などの目的で、フィラメントの接触部分を接着または融着する作用を有するバインダーまたはホットメルト接着剤を用いることができる。バインダーとしては、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステルなどのエステル系可塑剤の他、各種の樹脂接着剤、特に熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0048】
バインダーまたはホットメルト接着剤として使用する熱可塑性樹脂には、溶融・固化により接着力が発現する樹脂であり、水不溶性または水難溶性樹脂、および水溶性樹脂が含まれる。水不溶性または水難溶性樹脂と水溶性樹脂とは、必要に応じて併用することもできる。
【0049】
水不溶性または水難溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の単独又は共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などのスチレン系重合体、変性されていてもよいポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド、ロジン誘導体(例えば、ロジンエステルなど)、炭化水素樹脂(例えば、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂など)、水素添加炭化水素樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種又は二種以上使用できる。
【0050】
水溶性樹脂としては、種々の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニル単量体と、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩を有する共重合性単量体との共重合体などのビニル系水溶性樹脂、アクリル系水溶性樹脂、ポリアルキレンオキサイド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミドなどを用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で使用できるとともに二種以上組合せて使用してもよい。
【0051】
熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を添加してもよい。
【0052】
トウは公知の方法により製造できるので詳説はしない。吸収要素50に好適に使用できるセルロースジアセテートのトウのベールは、セラニーズ社やダイセル化学工業などにより市販されている。セルロースジアセテートのトウのベールは、密度は約0.5g/cm3であり、総重量は400〜600kgである。
【0053】
このベールから、トウを引き剥がし、所望のサイズ、嵩となるように広い帯状に開繊する。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは製品の吸収体の幅の100〜300mm程度とすることができる。また、トウの開繊状態を調整することにより、吸収体の密度を調整することができる。
【0054】
(高吸収性ポリマー粒子)
好適には、図3に示すように、吸収体56中に高吸収性ポリマー粒子54,54…を含ませる。そして、少なくとも体液受け入れ領域において、フィラメント52,52…の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。この実質的に厚み方向全体に分散されている状態を図3の要部拡大図として概念的に示した。
【0055】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、フィラメントの集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子がフィラメント52,52…の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子がフィラメント52,52…の集合体を通り抜けて包被シート58上にある形態や図6に示されるように保持シート80上にある形態も排除されるものではない。
【0056】
高吸収性ポリマー粒子54を用いる場合、各フィラメント集合体部分52A,52Bにおける高吸収性ポリマー粒子54の種類、付与量(付与量がゼロの場合を含む)、分散態様、密度等は個別に定めることができ、全て同じにすることも、またいずれかのフィラメント集合体部分52A,52Bにおける高吸収性ポリマー粒子54の種類や付与量等を他のフィラメント集合体部分52A,52Bに対して異ならしめることもできる。特に、いずれか一方のフィラメント集合体部分の層(特に下層52B)に高吸収性ポリマーを含有させるとともに、他方のフィラメント集合体部分の層(特に上層52A)に高吸収性ポリマーを含有させないのは好ましい。
【0057】
ここで、高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む意味である。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、100〜1000μm、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が60g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0058】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体内に供給された体液が吸収体外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0059】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、トウを用いることにより嵩高な吸収体とした場合であっても、体液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0060】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量を50g/m2以下とすることにより、ポリマーの重量によって、トウからなるフィラメントの集合体を採用することにより軽量化効果が発揮されにくくなるのを防止できる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰により前述のジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0061】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、体液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0062】
必要により、高吸収性ポリマー粒子として、粒径分布が異なる複数用意し、厚み方向に順次散布・投射できる。たとえば、前記の高吸収性ポリマー粒子散布手段90を複数ライン方向に間隔をおいて配置し、先に粒径分布が小さいものを散布・投射した後に、粒径分布が大きいものを散布・投射することで、吸収体56内の下側に粒径分布が小さいものを、上側に粒径分布が大きいものを分布させることができる。この形態は、粒径分布が小さいものは、フィラメントの集合体内に奥深く侵入させるために有効である。
【0063】
高吸収性ポリマー粒子とフィラメントの集合体との割合は吸収特性を左右する。吸収体56における体液を直接受ける領域での5cm×5cmの平面面積内における重量比としては、高吸収性ポリマー粒子/フィラメント重量が、1〜14、特に3〜9であることが望ましい。
【0064】
(他の吸収素材の組み合わせ)
【0065】
複数のフィラメント集合体部分を備える限り、他の公知の吸収素材、例えばパルプとエアレイド等の短繊維を積繊し、必要に応じて高吸収性ポリマー粒子を添加して形成される短繊維吸収素材を組み合わせることができる。
【0066】
(吸収体のサイズ・重量)
【0067】
他方、吸収体56のサイズは、平面投影面積が400cm2以上であり、かつ厚さが1〜10mm、特に1〜5mmであるのが好ましい。吸収体のサイズがこの範囲内にあると、重量や厚さ、コストの増加を来たさずに復元性を向上する上で、極めて有利である。また、吸収体の重量は25g以下、特に10〜20gとなるように構成するのが好ましい。吸収体の重量がこの範囲内にあると、専用部材を用いないことによる利点が特に顕著になる。
【0068】
(吸収体の圧縮特性)
【0069】
吸収体56の圧縮レジリエンスRCは、40〜60%、特に50〜60%とするのが好ましい。これにより、吸収体自体で十分な復元性を発揮できるようになる。
【0070】
さらに、吸収体56の圧縮エネルギーWCは4.0〜10.0gf・cm/cm2であると、包装に際して従来と同レベルあるいはそれ以上にコンパクトに圧縮することができるため好ましい。
【0071】
これらの圧縮特性は、開繊等によるフィラメント密度の調整、フィラメント素材の選定、可塑剤等のバインダーの種類の選定・処理の程度の調整、あるいはこれらの組み合わせ等により調整できる。
【0072】
ここで、圧縮エネルギー(WC)とは、長さ200mm、幅50mmに断裁した試験片(保持シート)の中央部を、50gまで押す場合のエネルギー消費量である。
【0073】
この圧縮エネルギーは、ハンディー圧縮試験機(KES−G5、カトーテック社製)によって、測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、SENS:2、力計の種類:1kg、SPEED RANGE:STD、DEF感度:20、加圧面積:2cm2、取り込間隔:0.1(標準)、STROKE SET:5.0、上限荷重:50gf/cm2である。
【0074】
一方、圧縮レジリエンス(RC)とは、圧縮時の回復性を表すパラメータである。したがって、回復性がよければ、圧縮レジリエンスが大きくなる。この圧縮レジリエンスは、ハンディー圧縮試験機(KES−G5、カトーテック社製)によって、測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、上記圧縮エネルギーの場合と同様である。
【0075】
(包被シート)
【0076】
包被シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、5〜50g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0077】
この包被シート58は、図3のように、フィラメント52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層全体を包む形態のほか、たとえば図4に示すように、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの体液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの体液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、フィラメント52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0078】
(保持シート)
【0079】
保持シート80と吸収体56上との間には、高吸収性ポリマー粒子54をその散布などにより介在させることができる。高吸収性ポリマー粒子54は、フィラメント52の集合体への散布・投射時に又はその後の工程、あるいは消費者が使用するまでの流通過程で、フィラメント52の集合体を通り抜けることがある。フィラメント集合体を通り抜けた高吸収性ポリマー粒子群の凹凸は、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与える。そこで、吸収体56と包被シート58との間に吸収性ポリマーの保持性能を有する保持シート80を介在させるのである。この保持シート80は、ティッシュペーパ(クレープ紙)などの包被シート58のみでは足りないコシを補強して、消費者が使用する際に手で触ったとき違和感を軽減又は防止する。
【0080】
なお、図6には、吸収体56の下方に高吸収性ポリマー粒子54を設けた場合、あるいは吸収体56中に含ませた高吸収性ポリマー粒子54が、製造から消費者が使用するまでの段階で、フィラメント52の集合体から抜け出て、保持シート80上に集まった場合を概念的に示した。
【0081】
保持シート80の素材は、特に限定されず、高吸収性ポリマー粒子54の保持性能を有するものであれば足りる。具体的には、例えば、不織布、捲縮パルプ、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、絹、綿、麻、ナイロン、ポリウレタン、アセテート繊維、エアレイド(高吸収性ポリマー粒子混在)シート等を例示することができる。
【0082】
保持シート80を不織布とする場合、その保持シート80は、KES試験に基づく圧縮エネルギーが0.01〜10.00gfcm/cm2、好ましくは、0.01〜1.00gfcm/cm2で、かつ圧縮レジリエンスが10〜100%、好ましくは、70〜100%の不織布であるとよい。
【0083】
保持シート80を設ける理由は先にも触れたように、たとえば吸収体56から下方に抜け落ちた(抜け出た)高吸収性ポリマー粒子54を保持することにある。したがって、抜け出た高吸収性ポリマー粒子54に対して、包被シート58及び保持シート80を介して使用者に接触するので、使用者にジャリジャリした違和感として、伝わるおそれがない。特に上記の縮エネルギー及び圧縮レジリエンスである不織布であると、保持機能が十分に発揮される。
【0084】
また、抜け出た高吸収性ポリマー粒子54は、保持シート80によって保持され、包被シート58上を移動することがないため、吸収能力の偏在が生じるおそれもない。特に、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを保持シート80上に塗布することができる。また、保持シート80の上面(使用面側に向かう面)を粗面とすることで、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するようにしてもよい。このための粗面化又は毛羽立ち手段としては、不織布の製造時におけるネット面でない非ネット面とする、マーブル加工を行う、ニードルパンチにより加工する、ブラシッング加工するなどを挙げることができる。
【0085】
保持シート80は、図3等に示すように吸収体56の下方にのみ設けても、また図6に示すように、吸収体56の側面を通り吸収体56の上面にまで巻き上げて延在させてもよい。また、保持シート80を複数枚重ねて使用することも可能である。
【0086】
上記例は、吸収体56と包被シート58の裏面側部位との間に保持シート80を設ける例であるが、保持シート80は、包被シート58より裏面側であってもよく(その形態は図示していない)、要は、吸収体56に対して裏面側に保持シート80を設ければ、製品の裏面から触る場合におけるジャリジャリした違和感を軽減させるあるいは生じさせないものとなる。
【0087】
(体液不透過性シート)
体液不透過性シート70は、単に吸収体56の裏面側に配されるシートを意味し、本実施の形態においては、トップシート30との間に吸収体56を介在させるシートとなっている。したがって、本体液不透過性シートは、その素材が、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで体液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。
【0088】
体液不透過性シート70は、いわゆる額巻きする形態で使用面に延在させる(図示せず)ことで、体液の横漏れを防止できるが、実施の形態においては、横漏れについては、バリヤーカフス60を形成する二重のバリヤーシート64間に第2体液不透過性シート72を介在させることにより防止している。この形態によれば、バリヤーカフス60の起立まで第2体液不透過性シート72が延在しているので、トップシート30を伝わって横に拡散した体液やバリヤーカフス60、60間の軟便の横漏れを防止できる利点もある。
【0089】
(バリヤーカフス)
【0090】
製品の両側に設けられたバリヤーカフス60、60は、トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために設けられているが、付加的な要素である。
【0091】
図示のバリヤーカフス60は、撥水性不織布シートを二重にしたものであり、吸収体56の裏面側からトップシート30の下方への折り込み部分を覆って、表面側に突出するように形成されている。トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿を阻止するために、特に、二重の不織布シート間に体液不透過性シート70の側部が挿入され、表面側に突出するバリヤーカフス60の途中まで延在している。
【0092】
また、バリヤーカフス60自体の形状は適宜に設計可能であるが、図示の例では、バリヤーカフス60の突出部の先端部及び中間部に弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム62が伸張下で固定され、使用状態においてその収縮力により、バリヤーカフス60が起立するようになっている。中間部の糸ゴム62が先端部の糸ゴム62、62よりも中央側に位置してトップシート30の前後端部に固定される関係で、図3のように、バリヤーカフス60の基部側は中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端部は外側に斜めに起立する形態となる。
【0093】
(エンボス加工)
【0094】
トップシート30の表面側から厚み方向にエンボスによる凹部Eを形成してもよい。この場合、トップシート30のみにエンボスによる凹部Eを形成するほか、図7に示すように、トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成方したり、トップシート30の表面側から吸収体56の厚さ方向一部または略全体に達するようにエンボスによる凹部を形成したり(図示せず)することができる。トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成させるためには、中間シート40としては、坪量が5〜50g/m2、厚さ0.2〜1.5mm、トップシート30としては、坪量が15〜80g/m2、厚さ0.2〜3.5mmの範囲にあるのが、透液性を阻害しない条件で、エンボス加工を充分に行える点で望ましい。
【0095】
また、トップシート30に凹部を形成することなく、中間シート40のみにエンボスによる凹部を形成してもよく、さらにトップシート30及び中間シート40に凹部を形成することなく、吸収要素56のみにエンボスによる凹部を形成しても、また、トップシート30、中間シート40および包被シート58に凹部を形成することなく、吸収体58のみにエンボスによる凹部を形成してもよい。
【0096】
凹部Eはこれが延在する方向に、体液を誘導し拡散させる効果がある。よって、凹部Eを実質的に溝状に連続させる(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)と、体液は、吸収体に到達する前に表面側層の凹部Eを伝って拡散するようになり、吸収体のより広範な部分を吸収に利用できるようになる。よって、製品全体の吸収容量が増大し、吸収容量不足に基づく側方からの漏れや逆戻りが発生し難い吸収性物品となる。
【0097】
一方、トウからなる吸収体56は従来のパルプ物と比べて剛性が低下し易いが、吸収体56にエンボスによる凹部を形成すると剛性を高めることができるため好ましい。図示しないが、吸収要素50の剛性を高めるために、吸収体56の裏面側(トップシート30側に対して反対側)から厚み方向にエンボスによる凹部を形成するのも好ましい形態である。この裏面側の凹部を形成するために、保持シート80、包被シート58、体液不透過性シート70または外装シート12の裏面側から、吸収体56まで達するように一体的にエンボス加工を施すことができる。また、このような裏面側の凹部は、表面側の凹部Eとともに形成するのが好ましいが、表面側の凹部Eを形成せずに裏面側の凹部のみ形成することもできる。凹部を表裏両側に設ける場合には、凹部の形態を表裏共通にしても良く、また表裏異なるものとしても良い。
【0098】
エンボスによる凹部はその延在方向に体液を誘導し拡散させる効果がある。また剛性を高める効果もある。よって、エンボスによる凹部の形態はこれらの効果を考慮して決定するのが望ましい。例えば、凹部は、実質的に溝状に連続するもの(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)の他、複数の凹部が間隔を空けて点状に配置されるものであっても良い。また、平面パターンとしては、溝状または点状の凹部が、製品の長手方向、幅方向、これらを組み合わせた格子状、幅方向に往復するジグザグ状(千鳥状)、あるいは不規則に配置された形態等を採ることができる。さらに、ピン状、富士山状、蛇腹状等、適宜の形態を採用することができる。
【0099】
(その他)
【0100】
なお、図示しないが、吸収性本体20の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などの適宜の塗布形態により相互に固定される。
【0101】
(テープ式使い捨ておむつの例)
【0102】
一方、図8及び図9はテープ式使い捨ておむつの例を示している。図9は図8におけるIX−IX線矢視図であるが、吸収性本体20についてはやや誇張して図示してある。
【0103】
テープ式使い捨ておむつ10Aは、おむつの背側両側端部に取り付けられたファスニング片を有し、このファスニング片の止着面にフック要素を有するとともに、前記おむつの裏面を構成するバックシートを不織布積層体とし、おむつの装着に当り、前記ファスニング片のフック要素を前記バックシートの表面の任意個所に係合可能となしたおむつである。
【0104】
吸収性本体20は、トップシート30と、体液不透過性シート70との間に、吸収体56を介在させたものとなっている。この吸収体56は、ティッシュペーパによる包被シート58により全体が包まれており、平面的に視て長方形をなしている。吸収体56と包被シート58との間には保持シート80が設けられている。
【0105】
さらに、トップシート30と吸収体56との間には、中間シート40が介在されている。体液不透過性シート70は吸収体56より幅広の長方形をなし、その外方に砂時計形状の不織布からなるバックシート12Aが設けられている。
【0106】
トップシート30は吸収体56より幅広の長方形をなし、吸収体56の側縁より若干外方に延在し、体液不透過性シート70とホットメルト接着剤などにより固着されている。
【0107】
おむつの両側部には、使用面側に突出するバリヤーカフス60Aが形成され、このバリヤーカフス60Aは、実質的に幅方向に連続した不織布からなるバリヤーシート64と、弾性伸縮部材、例えば糸ゴムからなる1本の又は複数本の脚周り用弾性伸縮部材としての糸ゴム62とにより構成されている。130は面ファスナーによるファスニング片である。
【0108】
バリヤーシート64の内面は、トップシート30の側縁と離間した位置において固着始端を有し、この固着始端から体液不透過性シート70の延在縁にかけて、幅方向外方部分がホットメルト接着剤などにより固着されている。バリヤーシート64の外面は、その下面においてバックシート12Aにホットメルト接着剤などにより固着されている。さらに、ガスケットカフス用弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム66が設けられている。
【0109】
バリヤーシート64の内面の、体液不透過性シート70への固着始端は、バリヤーカフス60Aの起立端を形成している。脚周りにおいては、この起立端より内側は、製品本体に固定されていない自由部分であり、この自由部分が糸ゴム62の収縮力により起立するようになる。
【0110】
本例では、ファスニング片130として、面ファスナーを用いることで、バックシート12Aに対して、メカニカルに止着できる。したがって、いわゆるターゲットテープを省略することもでき、かつ、ファスニング片130による止着位置を自由に選択できる。
【0111】
ファスニング片130は、プラスチック、ポリラミ不織布、紙製などのファスニング基材の基部がバックシート12Aに、例えば接着剤により接合されており、先端側にフック要素130Aを有する。フック要素130Aはファスニング基材に接着剤により接合されている。フック要素130Aは、その外面側に多数の係合片を有する。フック要素130Aより先端側に仮止め接着剤部130Bを有する。製品の組立て末期において、仮止め接着剤部130Bがバリヤーシート64に接着されることによりファスニング片130の先端側の剥離を防止するようにしている。使用時には、その接着力に抗して剥離し、ファスニング片130の先端側を前身頃に持ち込むものである。仮止め接着剤部130Bより先端側はファスニング基材が露出して摘みタブ部とされている。
【0112】
前身頃の開口部側には、バックシート12Aの内面側に、デザインシートとしてのターゲット印刷シート74が設けられ、ファスニング片130のフック要素130Aを止着する位置の目安となるデザインが施されたターゲット印刷がなされ、外部からバックシート12Aを通して視認可能なように施されている。
【0113】
おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム62の収縮力が作用するので、脚周りでは、糸ゴム62の収縮力によりバリヤーカフス60Aが起立する。
【0114】
起立部で囲まれる空間は、尿又は軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿はトップシート30を通って吸収体56内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、バリヤーカフス60Aの起立部がバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。万一、起立部の起立遠位側縁を乗り越えて横に漏れた尿は、平面当り部によるストップ機能により横漏れが防止される。
【0115】
本形態において、各起立カフスを形成するバリヤーシート64は、透液性でなく実質的に不透液性(半透液性でもよい)であるのが望ましい。また、本発明の表面シート(不織布積層体)に対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。いずれにしても、バリヤーシート64及びバックシート12Aは、それぞれ通気性があり、かつバリヤーシート64及びバックシート12Aは、それぞれ耐水圧が100mmH2O以上のシートであるのが好適である。これによって、製品の幅方向側部において通気性を示すものとなり、着用者のムレを防止できる。
【0116】
その他の点、例えば各部の使用素材等については、前述のパンツ型紙おむつの場合と同じであるため、敢えて説明を省略する。
【0117】
<紙おむつの製造方法例>
次に、上述の紙おむつの製造例について説明する。
(パンツ型おむつの場合)
図10及び図11に示す例は、図1、図2及び図6に示すパンツ型の使い捨ておむつの製造設備例を示している。
【0118】
ラインに上流側から包被シート58が供給され、次いで保持シート80が供給される。この保持シート80に対しては、後に供給される高吸収性ポリマー粒子の移動を防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを塗布することができる。図11にはこのための粘着剤塗布装置104が図示されている。
【0119】
続いて、トウを開繊することにより形成される(詳細は後述する)フィラメント集合体52Zが上方から供給され、その上に、高吸収性ポリマー粒子散布手段90により高吸収性ポリマー粒子54が散布供給される。その後、セーラ92を通すことにより包被シート58により包み込まれ、吸収要素50とされる。次に、カッター装置94によりライン方向に分割され、個別の吸収要素50とされる。
【0120】
さらに、中間シート(セカンドシート)40が上方から、実施の形態では吸収要素50全長に対して短い構造であるので、間欠的に供給される。
【0121】
続いて上方からバリヤーカフス60の構成要素及びトップシート30が、下方から体液不透過性シート70がそれぞれ供給される。ここで、バリヤーカフス60を構成するバリヤーシート64の供給ラインでは、予め、図示しない装置により2枚の不織布間に糸ゴム62が伸張下で、かつ第2体液不透過性シート72が固定された状態での供給がなされ、トップシート30と共に主ラインに供給される。主ラインに供給されたバリヤーカフス60の構成要素、トップシート30及び体液不透過性シート70は、図6に示す形状に、セーラ96により折り畳みがなされる。
【0122】
吸収性本体20のラインの最後では、カッター装置98により切断され、長手方向をラインに沿わせた長方形の吸収性本体20が得られる。得られた吸収性本体20は、転回装置100により吸収性本体20の長手方向がラインと直交するように90度転回される。
【0123】
一方、外装シート12のラインでは、予め2枚の不織布シート間に糸ゴム12Cが介在された(図10では図示を省略してある)状態で流れ、かつ、脚周り部分を形成するためにカッター(図示せず)により楕円形にくりぬかれ、組合せステーション102に達すると、その上で、かつ、くりぬき部位間に転回済みの吸収性本体20が設置され、ホットメルト接着剤などにより固定され、外装シート12と結合される。その後、図10の水平ラインを境にして上下に折り畳まれ、外装シート12の前身頃12F及び後身頃12Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。その後、ライン方向に分断して(分断手段は図示していない)個別製品を得る。
【0124】
(開繊工程の第1の形態)
開繊工程は、例えば図11に示す形態(参考形態)のラインにより実施できる。すなわち、単一の吸収体内に具備させるフィラメント集合体部分の数(図示例では2本)に合わせて、開繊ラインL1,L2を個別に設け、各ラインL1,L2でトウ52Yを個別に開繊してフィラメント集合体52Zをそれぞれ形成し、これら複数のフィラメント集合体52Zを所定の配置(図示例では上下積層配置であるが、CD方向に並設する、あるいはこれらを組み合わせることもできる)に集合した後、その上に、高吸収性ポリマー粒子散布手段90により高吸収性ポリマー粒子54を散布供給し、しかる後にセーラ92へと送り込むようになっている。これらのフィラメント集合体52Zは、それぞれ前述の吸収体56におけるフィラメント集合体部分52A,52Bとなる。
【0125】
各ラインL1,L2のトウ52Yは、同じものであっても、また繊度等の種類が異なるものであっても良い。また、各ラインL1,L2における開繊の度合いは個別に設定することができ、同程度とすることもできるが、異ならしめることもできる。そして、これらによって、得られるフィラメント集合体52Z(フィラメント集合体部分52A,52B)の目付け、厚さ、弾性、密度、および剛性の少なくとも一つが異なるようにすることができる。
【0126】
より詳細には、各開繊ラインL1,L2では、ベール52Xからトウ52Yが引き出され、必要に応じて、拡幅装置120を介して段階的に拡幅されながら第1ニップ126A、第2ニップ126B、及び第3ニップ126Cを通り、拡厚装置110に導かれる。
【0127】
ベール52Xからのトウの引き出しは、第1ニップ126A(駆動ニップロールに相当)による引き込みにより行われるようになっている。特徴的には、ベール52Xから引き出されたトウ52Yは、ターン部122により角度変えが行われた後、回転自由に構成された一対のニップロールからなるフリーニップロール124のニップを介して、第1ニップ126Aにより引き込まれるようになっている。このような構成では、フリーニップロール124の移送抵抗(ニップ圧力やロール自重に応じて定まる)があたかもトウ52Yの引き込み速度を抑えるブレーキとして機能し、フリーニップロール124以降における張力が安定するようになる。これは、フリーニップロール124の回転がトウの通過のみで発生するようになっていることに起因するものである。この結果、吸収体のサイズ、重量、品質が安定するようになる。
【0128】
フリーニップロール124のニップ圧や自重は適宜定めればよいが、通常の場合、ニップ圧は0MPa超10MPa以下とするのが好ましく、また、ロール自重は、ロール一本あたり0kg超10kg以下とするのが好ましい。この範囲内であれば、張力の安定化を容易に実現できる。
【0129】
また、ベール52Xから引き出されたトウ52Yは、ベール52Xとフリーニップロール124との間、フリーニップロール124と第1ニップ126Aとの間、第1ニップ126Aと第2ニップ126Bとの間、ならびに第2ニップ126Bと第3ニップ126Cとの間にそれぞれ設けられた拡幅装置120により、段階的に所望の幅まで拡幅される。この際、併せて厚さ方向にも拡大することができる。
【0130】
図12及び図13は拡幅装置の例120を示している。この拡幅装置120は、トウ52Yを通す所定幅Xの角筒状通路120Aと、この通路120A内面における幅方向に沿う面に形成された圧縮エアーの噴出口120Bとを有し、通路120A内に導入されるトウ52Yを圧縮エアーの力により通路幅一杯に拡幅するものである。通路の高さは、導入されるトウ52Yの厚さ以上とされており、トウ52Yの厚さよりも高い場合には、トウ52Yは厚さ方向にも拡大される。
【0131】
噴出口120Bは、図13に示されるように、通路120Aの幅方向中央に関して線対称をなし且つ通路120Aの幅方向中央に向かうにつれてトウ通過方向下流側に位置するくの字状(もしくはV字状)スリットとされている。
【0132】
このようなスリット120Bからエアーを噴出させた状態で、トウが通路120A内に進入すると、進入位置が幅方向中央からずれていたとしても、トウ52Yが圧縮エアーの力をバランス良く受けるように幅方向中央側(図13中の矢印方向)に逃げ、自然にトウ52Yが通路120Aの幅方向中央に案内される。つまり、拡幅のための圧縮エアーを利用してトウ52Yの導入位置のセンタリングも可能になるのである。また、この形態では、トウ52Yを非接触で案内するため、ガイド部材等のように接触により案内するのと比べて、トウの傷みや崩れも発生し難い利点もある。また、このようなセンタリング機能を有する拡幅装置120は、拡幅におけるセンタリングだけでなく移送位置の補正機能をも発揮する。
【0133】
上述のような圧縮エアーを利用したセンタリングを行う場合、スリットの形状はくの字状に限られず、通路120Aの幅方向中央に関して線対称をなし且つ通路120Aの幅方向中央に向かうにつれてトウ通過方向下流側に位置する条件を満足する限り、曲線状、円弧状等に形成することもできる。
【0134】
一方、第1ニップ126Aと第2ニップ126Bとの間では、トウ52Yにテンションをかけるように張力が付与されており、逆に第2ニップ126Bと第3ニップ126Cとの間は弛緩されるように、各ニップロールの周速度が設定されている。この結果、第1ニップ126Aと第2ニップ126Bとの間でトウ52Yにテンションがかけられることで、フィラメント相互の絡み合い等がある程度まで強制的に除去され、フィラメントの分離が促進されるとともに、この分離に伴って拡幅装置120によりトウ52Yを拡幅することで、トウ52Yの更なる均一な拡幅が可能となっている。また、第2ニップ126Bと第3ニップ126Cとの間でトウ52Yの弛緩を行いつつ、拡幅装置120によりトウ52Yを拡幅することで、トウ52Yの更なる均一な拡幅が可能となっている。この部分における開繊状態は、主にテンションの変更によって変化させることができる。
【0135】
より好ましい形態では、第2ニップ126Bの一方のローラは、長手方向に小さな間隔を置いて周方向に連続する溝が多数形成される。この溝は、フィラメントが多数の溝内に入り込むことで、トウの解しを促進させる機能がある。さらに、この場合、溝の効果を高めるために、第2ニップ126Bの一方の溝付ローラにおけるトウ52Yの抱き角度(トウ接触部分の回転方向角度)を大きくし、トウ52Yと溝付ローラとの接触面積を大きくするのも好ましい形態である。具体的には、第2ニップ126B上流側のトウ52Yと下流側のトウ52Yとのなす角度、つまり溝付ローラによる方向転換角度が180度未満、特に鋭角(90度よりも小)となるように構成するのが好ましい。この溝付ローラの採用によっても開繊状態が変化する。
【0136】
また、第1ニップ126A、第2ニップ126B及び第3ニップ126Cは、対をなすロールの径の組み合わせが相違しても良いが、その場合、周速度差によりロール間でトウ52Yに加わる張力やロールとトウ52Yとの接触抵抗などが、トウ幅方向において不均一になるおそれがあるため、全て共通するように構成するのが好ましい。
【0137】
次に、第3ニップ126Cを通過したトウ52Yは、拡厚装置110に導かれる。拡厚装置110は、たとえば、特開昭59−500422号公報(WO 83/03267)に開示されたものと同様な構造であり、概略的には図14に示すように、入口110Aと出口110Bとの間にベンチュリー部110bが形成されるとともに、入口側に圧空の吹き込み口110aを備えるとともに、ベンチュリー部110bに空気の排気孔110cを有するものである。平面的にはほぼ長方形をなし、図14の紙面を貫通する方向に扁平な形状である。
【0138】
吹き込み口110aからの圧空の吹き込みによって、エジェクター効果によって入口110Aから空気が入り込み、その結果、各トウ52Yは通路内に引き込まれ、前進力が与えられる。各トウ52Yはベンチュリー部110bを過ぎた位置において、空気の排気孔110cから排気が行われ、かつ、ベンチュリー部110bの空間が拡大するために、主にトウ52Yの嵩が厚み方向に増加し、厚さが拡大される。なお、通路の幅を、導入されるトウ52Yの幅よりも広くすることにより、図14の下方に示すように拡幅も可能である。この拡厚装置110においても、開繊状態は、主に通路サイズの変更、圧縮空気の量、幅方向でのエア分布などにより変化させることができる。
【0139】
(開繊工程の第2の形態)
図15及び図16は、図4に示す吸収体構造を形成するのに適した製造ライン例(参考形態)を示している。すなわち、複合するトウの数(図示例では2本)に合わせて供給ラインL1,L2を個別に設け、各ラインL1,L2から供給される複数のトウ52Yをまとめて拡厚装置110に導入し、一体的なフィラメント集合体52Zを形成する点以外は、第1の形態と基本的に同様のものである。図示例では、複数のトウ52Yを上下に重ねているが、CD方向に並べる、あるいはこれらを組み合わせることもできる。
【0140】
より詳細には、各ラインL1,L2の第3ニップ126Cを通過したトウ52Yは、上下に積層する等の所望の相互配置でまとめて拡厚装置110に導入される。吹き込み口110aからの圧空の吹き込みによって、エジェクター効果によって入口110Aから空気が入り込み、その結果、各トウ52Yは通路内に引き込まれ、前進力が与えられる。各トウ52Yはベンチュリー部110bに至ると、空気の排気孔110cから排気が行われ、かつ、ベンチュリー部110bの空間が拡大するために、図17に示すように、主にトウ52Yの嵩が厚み方向に増加し、厚さが拡大される。なお、通路の幅を、導入されるトウ52Yの幅よりも広くすることにより拡幅も可能である。そして、この際、各トウ52Yにおけるフィラメント52,52相互の間隔が広がり且つ嵩が増加するのに伴って、隣接するトウのフィラメント52,52が相互に絡み合い、一体的なフィラメント集合体52Zが形成される。
【0141】
各ラインL1,L2から供給される複数本のトウ52Yは、そのまま拡厚装置110の通路に通しても良いが、図18に示すように、通路の入側で、複数本のトウ52Yをまとめて単一のニップロール126D間に挟み、隣接するトウ52Y相互を圧接すると、複数本のトウ52Yを予めまとめておくことができ、通路への導入が円滑になるとともに、隣接するトウ52Yのフィラメントがより絡み易くなるため好ましい。
【0142】
(開繊工程の第3の形態)
図6に示すように、隣り合うフィラメント集合体部分52A,52Bの間に不織布を挟む場合、図19に示すように、第2の形態において、各ラインL1,L2から供給される複数のトウ52Yをまとめて拡厚装置110に導入する際に、図示しないロールから繰り出される不織布57を供給して、トウ52Yの間に挟み込む(本発明の実施形態)。この場合、複数のトウ52Yだけでなく、不織布57においても繊維間隔の拡大により嵩が増加し、隣接するトウ52Yのフィラメントと不織布57の繊維とが相互に絡み合い、一体的なフィラメント集合体52Zが形成される。また、図20に示すように、第1の形態においても、各ラインL1,L2で個別に開繊形成した複数のフィラメント集合体52Zを所定の配置に集合する際、図示しないロールから繰り出される不織布57を供給して、フィラメント集合体52Zの間に挟み込むことができる(参考形態)。
【0143】
(開繊工程の第4の形態)
図21は第4の形態(参考形態)を示している。すなわち、この形態は、第1の形態で述べたように、各ラインL1,L2で個別に開繊した複数のフィラメント集合体52Zを集合配置した後、第2の形態で述べたようにまとめて拡厚装置110に導入し、複数のフィラメント集合体52Zを単一の通路内に通しつつ通路内に圧縮エアーを吹き込むことにより一体化するものである。
【0144】
(高吸収性ポリマー粒子散布手段)
フィラメント集合体52Zに対して高吸収性ポリマー粒子を散布する手段90としては、フィラメントの集合体52Zにおける実質的に厚み方向全体に高吸収性ポリマー粒子を分散させるものが好ましい。このような高吸収性ポリマー粒子散布手段90としては、高吸収性ポリマー粒子自体の自重よる落下力のみならず、加速力を与える手段が望ましい。この例を図22に示した。すなわち、下部に開口を有するケーシング90a内に投射孔90dを有する回転ドラム90bがウェブの移動方向(図22での反時計方向)に回転するように構成され、その内部にシャッタドラム90cが設けられたものである。これらを要素とする投射部90Aは、ホッパー90Bと連結され(図11参照)、高吸収性ポリマー粒子散布手段90が構成されている。
【0145】
ホッパー90Bからの高吸収性ポリマー粒子54は回転ドラム90b内に供給されるように構成されている。ここに、予め、ケーシング90aの開口位置に対し、シャッタドラム90cの開口の位置調整が行われる。図22の状態では完全一致した全開状態を示してある。また、回転ドラム90bの投射孔90dは、周方向に分割された群として、図示では周方向に4つの群として分割され、したがって図示では回転ドラム90bが一回転する過程で、4枚分の紙おむつに対して高吸収性ポリマー粒子を散布・投射するようにしてある。
【0146】
フィラメント52の集合体上に高吸収性ポリマー粒子54を連続的に散布・投射してもよいが、図10が参照されるように、吸収要素50をカッター装置94によりライン方向に分割し、個別の吸収要素50とするときに、高吸収性ポリマー粒子54の存在によりカッター装置94の刃が短時間のうちに磨耗してしまう。そこで、高吸収性ポリマー粒子54を連続的に散布・投射するのではなく、図22に示すように、ゾーンZのみに間欠的に散布・投射するようにすることが望ましい。
【0147】
このために、前述のように、回転ドラム90bの投射孔90dは、周方向に分割された群として、図示では周方向に4つの群として分割して形成することにより、高吸収性ポリマー粒子54をゾーンZのみに間欠的に散布・投射するようにしてあるのである。その結果、ゾーンZ、Z間でカッター装置94により分断でき、カッター装置94の刃の磨耗を抑制できる。
【0148】
なお、高吸収性ポリマー粒子の散布量は、主に投射孔90dの孔径の大小、ケーシング90aの開口位置に対するシャッタドラム90cの開口の位置調整によって調節でき、加工ラインの速度に合わせて前記開口の位置は追従させると良い。また、高吸収性ポリマー粒子の散布パターンは、分割された投射孔90d群の配置によって調節できる。
【0149】
一方、必要ならば、高吸収性ポリマー粒子54を圧力空気とともに、フィラメント52の集合体上に散布・投射することで、フィラメントの集合体に対して高吸収性ポリマー粒子が実質的に厚み方向全体に分散させることも可能である。しかし、フィラメント52の集合体上に散布・投射した高吸収性ポリマー粒子が、圧力空気によって散乱し、所定領域外に散布される難点があるので、あまり推奨できない。
【0150】
さらに、高吸収性ポリマー粒子散布手段90と共に、あるいはこれに換えて、フィラメントの集合体上に散布された高吸収性ポリマー粒子54をフィラメントの集合体の下方から、吸引するようにしてもよい。
【0151】
また、図23に示すように、図10の転回ロールをバキュームロール106に換え、前述の遠心分力をも加えて高吸収性ポリマー粒子を散布する散布手段90でなく、単に高吸収性ポリマー粒子を自重による落下させる形式の汎用の高吸収性ポリマー粒子散布手段90により、バキュームロール106上方からフィラメント52の集合体52Z上に、高吸収性ポリマー粒子54を散布することもできる。この場合には、バキュームロール106による吸引力によりフィラメント52の集合体を高吸収性ポリマー粒子が侵入するので、製品段階では、吸収体56の下部に高吸収性ポリマー粒子が分散される。図24は、図15の例における転回ロールをバキュームロール106に換えた場合を示している。
【0152】
フィラメント52の集合体52Zは、転回ロールまたはバキュームロール106において、包被シート58上に配置された保持シート80上(保持シートを省略する場合は包被シート58上)に転移された後、セーラ92に通すことにより包被シート58により包み込まれる。
【0153】
他方、フィラメント集合体52Zに高吸収性ポリマー粒子54を含有させる場合、図11や図23に示されるように、複数のフィラメント集合体52Zを集合配置した後に、これらに対して一体的に高吸収性ポリマー粒子を供給する他、図25に示すように、各ラインL1,L2に、個別に高吸収性ポリマー粒子散布手段90を設け、各フィラメント集合体52Zに対して予め個別に高吸収性ポリマー粒子を供給した後、集合させることもできる。図示しないが、いずれかのラインには高吸収性ポリマー粒子散布手段90を設けるものの、他のラインには高吸収性ポリマー粒子散布手段90を設けないようにし、高吸収性ポリマー粒子を含むフィラメント集合体52Zと、含まないフィラメント集合体52Zとを形成した後、これらを集合配置することもできる。また、図示しないが、図25に示すような、各フィラメント集合体52Zに対する高吸収性ポリマーの個別供給と、図11等に示すような、各フィラメント集合体52Zを集合配置した後の高吸収性ポリマーの一体供給とを組み合わせることもできる。
【0154】
各フィラメント集合体52Zに対する高吸収性ポリマーの個別供給を行う場合、各フィラメント集合体52Zにおける高吸収性ポリマー粒子の種類、付与量(付与量がゼロの場合を含む)、分散態様、密度等は個別に定めることができ、全て同じにすることも、またいずれかのフィラメント集合体52Zにおける高吸収性ポリマー粒子の種類や付与量等を他のフィラメント集合体52Zに対して異ならしめることもできる。
【0155】
また、上記いずれの形態においても、フィラメント52の集合体52Zは、転回ロールまたはバキュームロール106において、包被シート58上に配置された保持シート80上(保持シートを省略する場合は包被シート58上)に転移された後、セーラ92に通すことにより包被シート58により包み込まれる。したがって、フィラメント52の集合体52Zの最終的な調整を行う場合、フィラメント集合体52Zの形成後、セーラ92による包み込みに先立って、具体的に図示形態の場合には転移直前または転移後からセーラ92までの間に行うのが望ましい。
【0156】
例えば、上記転移に際して、フィラメント52の集合体52Zは転移力およびラインの引張力によって僅かに潰され、起毛の減少によりふんわり感が減少する。しかし、転移を確実なものとするためには転移力は必要十分に加える必要がある。そこで、エアー噴射ノズル127を、例えば転回ロールまたはバキュームロール106の直後に設け、フィラメント52の集合体52Zの上面にエアーを吹き付けるのは好ましい形態である。これにより、繊維の絡み合いが強くなりフィラメント集合体52Zの一体性が向上する。このエアー噴射ノズル127の向き・角度はその目的に応じて自由に設定・調整することができる。また、このノズル127は幅方向に均一にエアーを吹き付けるために、図21(a)の平面図に示すように、吹出し口127xを幅方向に所定の間隔で複数設けるのが好ましい。この場合、共通のエアー供給管路127sから各吹出し口127xにエアーを分配供給するように構成することができる。
【0157】
別の最終的な調整として、フィラメント52の集合体52Zの両端部のみにエアーを噴射するエアー噴射ノズル128を、例えばセーラ92の直前に設けることができる。これにより、フィラメント52の集合体52Zの両端部のみを拡幅し、吸収体の形を整えることができ、また端部における繊維相互の絡み合いも強くなる。このエアー噴射ノズル128は、前述のエアー噴射ノズル127と組み合わせてまたはこれに代えて適用することができる。このエアー噴射ノズル128による拡幅は、単なる幅出しの他、例えば粘着剤塗布装置104で塗布されたポリマー移動防止粘着剤が、集合体52Zの端からはみ出ず確実に隠れるようにするため等、適宜の目的で行うことができる。この拡幅のためのエアー噴射ノズル128の向き・角度はその目的に応じて自由に設定・調整することができる。また、この拡幅のためのノズル128は、図21(b)の平面図に示すように、フィラメント52の集合体52Zの幅に合わせて幅方向に離間された一対の吹出し口128xを有し、共通のエアー供給管路128sから各吹出し口128xにエアーを分配供給する構成とすることができる。
【0158】
(テープ式使い捨ておむつの例)
図26は、図8及び図9に示すテープ式の使い捨ておむつの製造方法例を示しており、この例は前述した第1の形態の開繊工程を採用したものである。また、図27は第2の形態の開繊工程を採用したものである。いずれも、中間シート(セカンドシート)40の供給までは、パンツ型の場合と同様である。中間シート40が間欠供給された後は、続いて上方からトップシート30が、下方から体液不透過性シート70がそれぞれ供給され、その後にバリヤーカフス60を構成するバリヤーシート64が供給される。バリヤーシート64の供給ラインでは、予め、図示しない装置により2枚の不織布間に糸ゴム62が伸張下で固定された状態での供給がなされる。ラインの最後では、吸収性本体を備える半製品がカッター装置98により分断され、製品10が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、おむつカバーと併用する吸収パッド等の吸収性物品に好適なものである。
【符号の説明】
【0160】
10…パンツ型使い捨ておむつ、10A…テープ式使い捨ておむつ、12…外装シート、12A…バックシート、20…吸収性本体、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、52…フィラメント、52X…ベール、52Y…トウ、52Z…フィラメントの集合体、54…高吸収性ポリマー粒子、56…吸収体、57…不織布、58…包被シート、60、60A…バリヤーカフス、64…バリヤーシート、70…体液不透過性シート、72…第2体液不透過性シート、80…保持シート、90…高吸収性ポリマー粒子散布手段、90A…投射部、90a…ケーシング、90b…回転ドラム、90c…シャッタドラム、92…セーラ、94…カッター装置、98…カッター装置、100…転回装置、102…組合せステーション、104…粘着剤塗布装置、110…複合開繊装置、110a…圧空の吹き込み口、110b…ベンチュリー部、120…拡幅装置、124…フリーニップロール、126A…第1ニップ、126B…第2ニップ、126C…第3ニップ、130…ファスニング片、E…凹部、Z…高吸収性ポリマー粒子散布ゾーン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウを開繊してフィラメント集合体を形成し、このフィラメント集合体を用いて吸収体を製造する方法であって、
前記開繊に際して、性質の異なる複数のトウ及び繊維相互が接着されておらず交絡だけで形成された不織布を、前記トウ間に前記不織布を挟むようにして上下に重ねた状態で単一の通路内に通しつつ通路内に圧縮エアーを吹き込み、前記複数のトウをまとめて開繊するとともに、前記不織布についても繊維間隔の拡大により嵩を増加させ、隣接するトウのフィラメントと不織布の繊維とを相互に絡み合わせ、一体的なフィラメント集合体を形成する、ことを特徴とする吸収体製造方法。
【請求項2】
前記一体的なフィラメント集合体を形成した後に、この一体的なフィラメント集合体の上に、高吸収性ポリマー粒子を散布供給する、請求項1記載の吸収体製造方法。
【請求項3】
前記複数のフィラメント集合体部分は、目付け、厚さ、弾性、密度、および剛性の少なくとも一つが異なる、請求項1または2記載の吸収体製造方法。
【請求項1】
トウを開繊してフィラメント集合体を形成し、このフィラメント集合体を用いて吸収体を製造する方法であって、
前記開繊に際して、性質の異なる複数のトウ及び繊維相互が接着されておらず交絡だけで形成された不織布を、前記トウ間に前記不織布を挟むようにして上下に重ねた状態で単一の通路内に通しつつ通路内に圧縮エアーを吹き込み、前記複数のトウをまとめて開繊するとともに、前記不織布についても繊維間隔の拡大により嵩を増加させ、隣接するトウのフィラメントと不織布の繊維とを相互に絡み合わせ、一体的なフィラメント集合体を形成する、ことを特徴とする吸収体製造方法。
【請求項2】
前記一体的なフィラメント集合体を形成した後に、この一体的なフィラメント集合体の上に、高吸収性ポリマー粒子を散布供給する、請求項1記載の吸収体製造方法。
【請求項3】
前記複数のフィラメント集合体部分は、目付け、厚さ、弾性、密度、および剛性の少なくとも一つが異なる、請求項1または2記載の吸収体製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−55744(P2012−55744A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277482(P2011−277482)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【分割の表示】特願2007−532209(P2007−532209)の分割
【原出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【分割の表示】特願2007−532209(P2007−532209)の分割
【原出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
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