吸収体
【課題】本発明は、従来の吸収体が持つ優れた体型適合性を維持しつつ、装着感を向上させるとともに、液拡散性と液吸収性を向上させることを課題とする。
【解決手段】液体を吸収して平面方向に拡散する受液層部11と、該受液層部11の一面側に該受液層部11に連続して複数に分立して配され液体を吸収して貯える突出液吸収貯蔵部12とを有し、前記複数の突出液吸収貯蔵部12は前記突出液吸収貯蔵部12間に配される凹部13よりも面積率が高く、前記凹部13底部の前記受液層部11は前記突出液吸収貯蔵部12より坪量および密度が低い吸収体10を提供する。
【解決手段】液体を吸収して平面方向に拡散する受液層部11と、該受液層部11の一面側に該受液層部11に連続して複数に分立して配され液体を吸収して貯える突出液吸収貯蔵部12とを有し、前記複数の突出液吸収貯蔵部12は前記突出液吸収貯蔵部12間に配される凹部13よりも面積率が高く、前記凹部13底部の前記受液層部11は前記突出液吸収貯蔵部12より坪量および密度が低い吸収体10を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品においては、各部材の材料や構造を改良し、その機能や着用感の向上が図られてきた。この吸収性物品に適用される吸収体についても、かかる改良を企図して開発がなされ、特に最近では使用状況や物品の種類に応じた機能性を有するものが種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、表面シートと裏面シートとの間でかつ平面方向にわたって、個々に独立した多数の吸収部からなる吸収体が配置され、さらに吸収体と裏面シートとの間に中間シートが配されている吸収性物品が開示されている。この中間シートは、吸収性物品に排せつされた液の引き込みおよび液の拡散機能を有していて、固定点を介して吸収部を固定している。この固定点は、例えば超音波エンボスやホットメルト接着剤等である。したがって、吸収体と中間シートとは、その間に界面が存在し、一体成型されたものになっていない。
【0004】
また、特許文献2には、実質的に緻密化されていない低密度の区域であるタフト区域と、このタフト区域を相互に分離し包囲するチャンネルとを含み、タフト区域とチャンネルとが連続している吸収性パッドが開示されている。このチャンネルは貯蔵区域と輸送区域とを含み、貯蔵区域はタフト区域より大なる密度を有し、輸送区域は貯蔵区域より大なる密度を有している。また輸送区域は貯蔵区域によって相互に分離され包囲されている。
【0005】
特許文献1に開示された吸収性物品では、中間シートに吸収部よりも小面積の固定部を介して吸収部が配置固定されているので、吸収性物品を装着して歩行等の動作を行った場合に、吸収体に「よれ」を生じる場合があり、また吸収部が浮き上がる場合があり、いずれの場合も違和感があった。また、中間シートと吸収部との間に固定部が介在するとともに界面を有しているので、中間シートから吸収体への拡散が固定部や界面に阻害されて不十分になる場合があり、吸収体の吸収性能が十分に引き出されていなかった。また特許文献2に開示された吸収性パッドでは、タフト区域の密度が低く、チャンネル区域の密度が高いため、チャンネル区域からタフト区域への液の拡散が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−273868号公報
【特許文献2】特開平01−045801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の吸収体が持つ優れた体型適合性を維持しつつ、装着感を向上させるとともに、液拡散性と液吸収性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体を吸収して平面方向に拡散する受液層部と、該受液層部の一面側に該受液層部に連続して複数に分立して配され液体を吸収して貯える突出液吸収貯蔵部とを有し、前記突出液吸収貯蔵部は前記突出液吸収貯蔵部間に配される凹部よりも面積率が高く、前記凹部底部の前記受液層部は前記突出液吸収貯蔵部より坪量および密度が低い吸収体を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収体は、吸収体に供給された液体を主に密度の低い受液層部で平面方向に拡散し、その拡散した液体を受液層部に連続している密度の高い突出液吸収貯蔵部に吸収させて貯えることができるので、液体の吸収量が多くなり、吸収性能を高めることができる。また、本発明の吸収体をおむつ等の吸収性物品に適用した場合、肌への密着性(フィット感)が向上できる利点を維持しつつ、突出液吸収貯蔵部の上面側を肌当接面側に配置し、受液層部側を非肌当接面側に配置することで、肌へのべとつき感が低減できる。さらに、突出液吸収貯蔵部は受液層部に連続していることから、着用時の歩行等の動作によってよれることが低減され、突出液吸収貯蔵部が浮き上がることも無くなり、装着時の違和感が解消され、装着感がより良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の吸収体の好ましい一実施形態の第1実施形態を示した縦断面図である。
【図2】吸収体の密度の測定方法を説明する断面図である。
【図3】吸収体に供給された液体の通液、拡散状態を示した(1)斜視図および(2)縦断面図である。
【図4】連続吸収体に供給された液体の通液、拡散状態を示した縦断面図である。
【図5】本発明の吸収体の好ましい一実施形態の第2実施形態を示した縦断面図である。
【図6】本発明の吸収体の好ましい一実施形態の第3実施形態を示した縦断面図である。
【図7】本発明の吸収体の好ましい一実施形態の第4実施形態を示した平面図である。
【図8】本発明の吸収体を用いた吸収性本体の一例を示した概略構成断面図である。
【図9】本発明の吸収体の製造に好ましく使用される製造装置の一例を示した概略構成図である。
【図10】吸収体の好ましい製造方法の一例を示した製造工程断面図である。
【図11】凹部底部の受液層部の坪量を変化させた一例を示した斜視図である。
【図12】凹部底部の受液層部の坪量を変化させた一例および比較例を示した平面図である。
【図13】本発明の吸収体を用いた吸収性物品の好ましい一例を示した平面展開図である。
【図14】歩行試験装置の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る吸収体の好ましい一実施形態の第1実施形態について、図1を参照しながら、以下に説明する。
【0012】
図1に示すように、本発明の吸収体10(10A)は、液体を一旦受け取る受液層部11と、この受液層部11の一面側に該受液層部11に連続して、かつ複数に分立して配された突出液吸収貯蔵部12とを有する。したがって、それぞれの突出液吸収貯蔵部12と隣接する別の突出液吸収貯蔵部12との間に多量の液体を平面方向に拡散する凹部13が配される。この突出液吸収貯蔵部12と凹部13とは、複数の突出液吸収貯蔵部12の面積率が上記凹部13の面積率よりも高くなるように配される。面積率については、後に詳述する。上記複数の突出液吸収貯蔵部12は、主として受液層部11中を拡散してきた液体を吸収して貯えるものである。もちろん、複数の突出液吸収貯蔵部12は、液体に直接接触する部分からも液体を吸収して貯える。また上記突出液吸収貯蔵部12の密度は突出液吸収貯蔵部12下部の受液層部11の密度よりも高くなっている。したがって、上記突出液吸収貯蔵部12は毛管力により受液層部11から液体を吸収する。
【0013】
上記受液層部11の坪量は、好ましくは10g/m2以上300g/m2以下であり、より好ましくは30g/m2以上200g/m2以下であり、特に好ましくは40g/m2以上150g/m2以下である。
また、上記突出液吸収貯蔵部12の坪量は、突出液吸収貯蔵部12と接している受液層部11の合計の坪量として凹部にある受液層部11の坪量より高く、好ましくは200g/m2以上、800g/m2以下、より好ましくは300g/m2以上700g/m2以下であり、特に好ましくは400g/m2以上600g/m2以下である。突出液吸収貯蔵部12の坪量は、凹部における受液層部11の坪量の差分より算出できる。
上記突出液吸収貯蔵部12の坪量は、100g/m2以上、600g/m2以下、好ましくは200g/m2以上600g/m2以下であり、より好ましくは300g/m2以上600g/m2以下である。
【0014】
上記受液層部11の密度は、好ましくは0.01g/cm3以上0.09g/cm3以下であり、より好ましくは0.02g/cm3以上0.07g/cm3以下である。この受液層部11の坪量が低すぎると受液層部11での拡散性が低く、排尿部近傍に液が溜まり、液戻り量が大きくなったり、液漏れしやすくなり、受液層部11の坪量が高すぎると、液が突出液吸収貯蔵部12へ移動しにくくなり、液戻りしやすい。また、受液層部11の密度が低すぎると、毛管力が十分に働かず受液層部での拡散性が低下し、排尿部近傍に液が溜まり、液戻り量が大きくなったり、漏れやすくなる。一方、受液層部11の密度が高すぎると、受液層部11内の空隙が減少するため、拡散させる液の量が減少し、突出液吸収貯蔵部12への液の受け渡し量が低下して、液漏れしやすくなる。
また、上記突出液吸収貯蔵部12の密度は、受液層部11の密度より高く、好ましくは0.03g/cm3以上0.3g/cm3以下であり、より好ましくは0.05g/cm3以上0.2g/cm3以下であり、特に好ましくは0.06g/cm3以上0.15g/cm3以下である。この突出液吸収貯蔵部12の密度が低すぎる場合、毛管力が作用しにくくなり受液層部11中を通ってきた液体を突出液吸収貯蔵部12へ導き難くなり液体の保持が困難となる。一方、突出液吸収貯蔵部12の密度が高すぎる場合も、超吸収性ポリマー(SAP)が膨潤阻害を起こしやすくなり、受液層部11中を通ってきた液体を保持することが困難となる。よって、突出液吸収貯蔵部12の密度は受液層部11よりも高く上記範囲に設定することが望ましい。なお、坪量および密度の測定方法については、後述する。
【0015】
上記突出液吸収貯蔵部12の形状は特に限定されず任意の形状のものを採用することができる。本実施形態において受液層部11と突出液吸収貯蔵部12とはパルプ繊維と超吸収性ポリマー(SAP)とから構成されており、その輪郭は図示したもののように定形的なものでなくてもよく、全体として立体形状のものとされていることが好ましい。また、突出液吸収貯蔵部12の縦横の配列も限定されず用途に合わせ適宜決められるのが好ましい。
【0016】
突出液吸収貯蔵部12は、その縦断面において幅方向に長い長方形または台形を有しており、その肌当接面側である表面12Sの面積は非肌当接面側である裏面12Bの面積に対して同一または小さくなっている。
【0017】
本実施形態の吸収体10は、分立した多数の突出液吸収貯蔵部12の集合で構成されているため肌面の起伏にフィットする「身体適合性」が通常の一体型の大きな吸収体(連続吸収体)に比べ大幅に高まる。また着用者の動作にも良好に追随し、肌に対して部分的な隙間が生じたりすることが防止される「動作追随性」が極めて良好である。本実施形態によればこのような良好な変形性と該変形に左右されない良好な液体等の吸収保持との両立を図ることができる。
【0018】
また、吸収体10は、初回の排せつから排せつを繰り返すことにより、排せつ部から受液層部11の拡散作用により、液をより広い範囲、例えば受液層部11の全域または全域に近い領域まで拡散させる。そして、拡散させた領域の突出液吸収貯蔵部12を利用して受液層部11から液体を吸収することができる。したがって、吸収体10の液体の吸収量が大幅に向上する。
【0019】
一方、突出液吸収貯蔵部が独立に配された従来の吸収体(前記特許文献1参照)は、初回の排せつから排せつを繰り返すことにより、その吸収量が低下していく。これは突出液吸収貯蔵部12どうしが離間していることにより突出液吸収貯蔵部12間の液の移行がしにくく、それにより通液性が低下し、特に排せつ部からその他部位への液体の移行が十分に行われない場合があるためと考えられる。その結果、排せつ部およびその周囲の狭い範囲に利用範囲が留まり、吸収量を越えた液が多量に存在して液戻りや漏れを起こしやすくなる。
なお排せつ部とは、吸収体において、尿、軟便、経血もしくはおりもの等の排せつを直接受ける部分およびその近傍である。
【0020】
上述の吸収体10の各部の坪量および密度は、以下のようにして求める。
図2に示すように、吸収体10の平面方向の坪量は以下のように求める。まず、吸収体10を平面視して、突出液吸収貯蔵部12とその下部の受液層部11を一体に切り出し、また凹部13の受液層部11を切り出し、質量と平面的な大きさ(面積)を測定し坪量を算出する。
また、吸収体10の厚み方向の坪量は以下のように求める。まず、受液層部11上の突出液吸収貯蔵部12を切り出して質量と平面的な大きさ(面積)を計測し坪量を算出する。先に計測した凹部13の受液層部11の坪量との差が突出液吸収貯蔵部12の坪量となる。ここでは、突出液吸収貯蔵部12の下部の受液層部11の坪量とそれに隣接する凹部13の下部の受液層部11の坪量が同等であるとしている。受液層部11および突出液吸収貯蔵部12の厚さは、マイクロスコープ[キーエンス社製マイクロスコープ(商品名VHX-1000))を使用した断面観察より凹部13における受液層部11と受液層部11と重なった突出液吸収貯蔵部12の厚みを各々計測する。
上記測定結果に基づいて、密度=坪量/厚みなる計算により密度を算出する。
【0021】
上述の複数の突出液吸収貯蔵部12および凹部13のそれぞれの面積率は以下のように求める。上記マイクロスコープを用いて、凹部13に焦点を合わせて、突出液吸収貯蔵部12と凹部13を1箇所以上含む範囲を計測し、画像から凹部部分を二値化して画像処理装置により凹部の面積率を導き、その差分が突出液吸収貯蔵部12の面積率となる。必要であれば、画像解析装置の手動補正等を使用する。吸収体全体を一度に画像化して画像解析装置により面積率を求めることが好ましいが、複数の画像により計測を行う場合には、例えば、所定領域における突出液吸収貯蔵部12の画素(ピクセル)Sbの総和ΣSb、凹部13の画素(ピクセル)Stの総和ΣSt、吸収体の画素(ピクセル)の総和ΣSb+ΣStのいずれか2つを求め、面積率を算出するか、異なる面積率の部位の代表面積率と各々の部分の面積の全体面積における割合を乗じた数値の合計より求めることができる。突出液吸収貯蔵部12の面積率はΣSb/(ΣSb+ΣSt)となり、凹部13の面積率はΣSt/(ΣSb+ΣSt)で算出できる。
【0022】
上記面積率は、突出液吸収貯蔵部12の面積率が凹部13の面積率より高くなるように設定される。凹部13の面積率は100%−[突出液吸収貯蔵部12の面積率(%)]となる。例えば、突出液吸収貯蔵部12の面積率は、60%以上95%以下に設定され、好ましくは65%以上90%以下に設定され、より好ましくは70%以上85%以下に設定される。上記突出液吸収貯蔵部12の面積率が高すぎると、凹部13の面積率が低くなりすぎて、凹部13の底部から受液層部11への液体の吸収量が少なくなり、受液層部11全域への液体の拡散が不十分となる。一方、突出液吸収貯蔵部12の面積率が低すぎると、突出液吸収貯蔵部12に貯えることができる液体の量が少なくなり、吸収体10としての液体の吸収量が低下することになる。したがって、突出液吸収貯蔵部12の面積率は上記範囲とするのが望ましい。
【0023】
ここで、上記吸収体10に供給された液体(例えば尿等)の通液、拡散状態について、図3によって詳しく説明する。
【0024】
図3(1)、(2)に示すように、吸収体10の上方より液体Lが供給されると、液体Lの大部分は突出液吸収貯蔵部12表面から凹部13内部に流れ込み、凹部13を通って四方に通液される。そのとき、突出液吸収貯蔵部12表面に供給された液体Lの一部は突出液吸収貯蔵部12内に直接吸収される。また凹部13を通る液体Lの大部分は、凹部13の底部より受液層部11に浸透し、受液層部11内を四方に拡散されて行く。さらに、凹部13を通る液体Lの一部は突出液吸収貯蔵部12の側面より突出液吸収貯蔵部12の内部に拡散され吸収される。受液層部11内を拡散した液体Lは、毛管力によって受液層部11から突出液吸収貯蔵部12の内部に拡散される。このようにして液体Lは突出液吸収貯蔵部12の内部に貯えられる。
吸収体10の表面に供給された液体Lの大部分は、上記受液層部11の内部を拡散するので、突出液吸収貯蔵部12側を肌当接面側とし、受液層部11側を非肌当接面側として、吸収体10を用いることにより、肌側から遠い受液層部11で液体Lを拡散させることができる。これによって、肌へのべとつき感が少なくなるという効果が得られる。
【0025】
一方、図4に示すように、連続吸収体20では、その表面に液体Lが供給された場合、液体Lの一部は肌当接面側の表面20Sを流れて四方に拡がっていく。その他の液体Lは、連続吸収体20内部に拡散されていく。このため、連続吸収性20では、尿等の液体Lが肌当接面側の表面20Sに供給された場合、肌へのべとつき感が生じやすくなる。
【0026】
上記実施形態の吸収体10では、突出液吸収貯蔵部12の密度が受液層部11の密度よりも高いことから、吸収体10に供給された液体の大部分は、密度の低い受液層部11に浸透して受液層部11内を拡散し、この受液層部11から密度の高い突出液吸収貯蔵部12に毛管力により吸収されて貯えられる。しかも受液層部11から連続して突出液吸収貯蔵部12が配されていることから、受液層部11から突出液吸収貯蔵部12へ液体が拡散するときに界面の存在による拡散性の低下がなく、受液層部11に取り込まれた液体は密度の高い突出液吸収貯蔵部12に毛管力により円滑に吸収され、貯えられていく。これにより、吸収体10の吸収性能の向上が図れる。
また複数の突出液吸収貯蔵部12の面積率はそれぞれの突出液吸収貯蔵部12間に配される凹部13の面積率よりも高くしたことから、突出液吸収貯蔵部12における液体の吸収量を十分に確保することができる。
また、複数の突出液吸収貯蔵部12を配することによって吸収体10の一部がブロック化されていることにより、この吸収体10が配された吸収性物品(図示せず)を装着した際の肌への密着性(フィット感)が向上されるという利点が維持される。さらに、突出液吸収貯蔵部12と受液層部11とが連続体を成すことから、装着者の歩行等の動作によって、突出液吸収貯蔵部12がよれることが低減され、浮き上がることが防止されて、装着時の違和感が解消され、装着感が格段に向上する。
【0027】
次に本発明に係る吸収体の第2実施形態について、図5を参照しながら、以下に説明する。
【0028】
図5に示すように、第2実施形態の吸収体10(10B)は、前述の第1実施形態の吸収体10(10A)と同様に、受液層部11、突出液吸収貯蔵部12および凹部13が配される。また複数の突出液吸収貯蔵部12の面積率が上記凹部13の面積率よりも高くなるように、突出液吸収貯蔵部12および凹部13が配される。さらに上記突出液吸収貯蔵部12の密度はその下部の受液層部11の密度よりも高く、第1実施形態における受液層部より凹部13の底部における受液層部11の密度により近くなっている。したがって、上記突出液吸収貯蔵部12は毛管力を利用して受液層部11から液体をより受け入れ易く、さらにはより吸収しやすくなっている。さらにまた、凹部13の底部の受液層部11の密度が突出液吸収貯蔵部12の密度より低くなっている。受液層部11および突出液吸収貯蔵部12の密度は、上述の第1実施形態の吸収体10と同様の値とすることが好ましい。
これにより、凹部13の底部の受液層部11からも液体を吸収しやすくなる。そして吸収された液体は受液層部11内を拡散し、突出液吸収貯蔵部12の下部から突出液吸収貯蔵部12中へ吸収されるので、吸収体10Bの液体の吸収性がさらに向上する。
【0029】
次に本発明に係る吸収体の第3実施形態について、図6を参照しながら、以下に説明する。
【0030】
図6に示すように、第3実施形態の吸収体10(10C)は、前述の第1実施形態の吸収体10(10A)と同様に、受液層部11、突出液吸収貯蔵部12および凹部13が配される。また複数の突出液吸収貯蔵部12の面積率が上記凹部13の面積率よりも高くなるように、突出液吸収貯蔵部12および凹部13が配される。さらに上記突出液吸収貯蔵部12の密度はその下部の受液層部11の密度よりも高くなっている。したがって、上記突出液吸収貯蔵部12は毛管力を利用して受液層部11から液体を吸収しやすくなっている。さらに、突出液吸収貯蔵部12の側面の密度は突出液吸収貯蔵部12の中央部の密度より低くなっている。受液層部11および突出液吸収貯蔵部12の中央部の密度は、上述の第1実施形態の吸収体10と同様の値とすることが好ましい。また、上記突出液吸収貯蔵部12の側面の密度は、前述の受液層部11の密度と同等の値とするか、または、受液層部11の密度より高く前述の突出液吸収貯蔵部12の中央部の密度よりも低い値とすることが好ましい。
これにより、突出液吸収貯蔵部12の側面からも液体を吸収しやすくなる。そして突出液吸収貯蔵部12の側面から吸収された液体は突出液吸収貯蔵部12の中央部へ拡散し貯えられるので、吸収体10Cの液体を貯える速度が高められる。
【0031】
この吸収体10Cの構成では、突出液吸収貯蔵部12の縦断面形状が台形になっているが、長方形であってもよい。また、断面でみた突出液吸収貯蔵部12側面の低密度の領域は、突出液吸収貯蔵部12の表面側に向うにしたがって厚みが薄くなるように配することが好ましい。これによって、表面側での液体の拡散が低減される。また、断面でみた突出液吸収貯蔵部12側面の低密度の領域は、受液層部11側のみに配することが好ましい。これによって、突出液吸収貯蔵部12側面での液体の拡散が受液層部11に近い領域で行えるようになる。
【0032】
次に本発明に係る吸収体の第4実施形態について、図7を参照しながら、以下に説明する。
【0033】
図7に示すように、第4実施形態の吸収体10(10D)は、前述の第1実施例の吸収体10(10A)と同様に、受液層部11、突出液吸収貯蔵部12および凹部13が配される。また複数の突出液吸収貯蔵部12の面積率が上記凹部13の面積率よりも高くなるように、突出液吸収貯蔵部12および凹部13が配される。さらに上記突出液吸収貯蔵部12の上部側の密度はその下部の受液層部11の密度よりも高くなっている。したがって、上記突出液吸収貯蔵部12は毛管力を利用して受液層部11から液体を吸収しやすくなっている。さらに凹部13の底部の受液層部11は、長手方向の中央部より外側部の坪量が大きくなっている。長手方向の外側部の凹部13の底部の受液層部11の坪量は、長手方向の中央部の坪量より10〜300g/m2、より好ましくは20〜250g/m2、さらに好ましくは30〜200g/m2以上高いことが好ましい。
【0034】
具体的には、凹部13の底部の受液層部11の厚さを変えることによって、言い換えれば、凹部13の深さを変えることによって、長手方向の中央部より外側部の坪量が大きくなるようにしてある。例えば、坪量を大きくするには受液層部11の厚さを厚く(凹部13の深さを浅く)すればよく、坪量を小さくするには受液層部11の厚さを薄く(凹部13の深さを深く)すればよい。
【0035】
これにより、受液層部11に取り込まれた液体は、吸収体10Dの外側部に引き込まれやすくなる。このため、吸収体10Dを吸収性物品としてのおむつに適用した場合、受液層部11の中央部で排せつ液体を取り込み、それを両外側部に引き込むので、排せつ液体の取り込み量を多くすることができ、その取り込んだ液体を吸収体10D全域の突出液吸収貯蔵部12に吸収させることができるので、吸収量を向上させることができる。
【0036】
この吸収体10Dの構成では、前述の第2実施形態のように、凹部13の底部の受液層部11の密度が突出液吸収貯蔵部12の密度より低くなっていることが好ましい。また、前述の第3実施形態のように、突出液吸収貯蔵部12の側面の密度は突出液吸収貯蔵部12の中央部の密度より低くなっていてもよい。
【0037】
上記吸収体10は、突出液吸収貯蔵部12側より液体が供給されるようにして用いられた場合、多量に液(特に尿等5mm・Pa・sec以下の粘性の低い液)が排出されたときには、凹部13に沿って液が長手方向に導かれる。これは、吸収体10の一面から窪んだ形状(凹部)による効果であり、凹部13に液が流れ込み水路としての機能を主として発現した結果である(図8(1)参照。)。一方、受液層部11側より液体が供給されるようにして用いられた場合、同様に多量の尿等5mm・Pa・sec以下の粘性の低い液が排出された場合には、窪み部分(凹部)に液が達することで液が凹部13により形成された空間に溢れ、凹部13の壁面によって、凹部13内の液移動が主として発現する(図8(2)参照。)。どちらの効果が主として発現した場合であっても、同じ構造、組成で形成された吸収体の第1凹部21を有すると、粘性の低い液では同等の導液効果を奏する。
【0038】
図8(1)に示すように、本発明の吸収体10を用いて突出液吸収貯蔵部12側より液体が供給されるように吸収性本体15を構成するには、吸収体10の突出液吸収貯蔵部12側に表面シート16を配し、この表面シート16の周囲に接合するようにして、かつ吸収体10の受液層部11側を包み込むように裏面シート17を配するように構成すればよい。
【0039】
上記表面シート16は親水性不織布で形成されることが好ましい。親水性不織布としては、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、立体賦形不織布と呼ばれている不織布で、その繊維がポリプロピレンの単繊維や、ポリプロピレンとポリエチレンの複合繊維、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンの複合繊維等で親水化処理が施された繊維が好ましく使用できる。
【0040】
上記裏面シート17は、防水性があり透湿性を有していれば特に限定されない。例えば疎水性の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等からなる微小な無機フィラーまたは相溶性のない有機高分子等とを溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸または二軸延伸して得られる多孔性フィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが挙げられる。該ポリオレフィンとしては、高〜低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられ、これらを単独でまたは混合して用いることができる。
【0041】
また、吸収性本体15では、図示しないが、吸収体10の肌当接面側が被覆シートにより被覆されていることが好ましい。さらに、肌当接面側のみならず、非肌当接面側も被覆シートにより被覆されていてもよく、吸収体15を被覆シートで包んだ状態のものでもよい。またさらに、上記表面シート16の肌当接面側には内側立体ギャザーをなす一対のサイドシートが積層されていることが好ましい。またさらに、非肌当接面側には順に上記裏面シート17と防漏シートとが設けられていることが好ましい。
【0042】
次に、本発明の吸収体10の製造に好ましく使用される製造装置の一例を、図9を参照しながら、以下に説明する。
【0043】
図9に示すように、吸収体の製造装置100は、回転可能の積繊ドラム101を有している。この積繊ドラム101内には吸引部102が配されている。また、積繊ドラム101の外周面に吸収体10の構成材料となるパルプおよび高吸水性ポリマー(SAP)を空気に乗せて供給する供給部103が備えられている。この供給部103は、パルプを破砕して供給するパルプ供給部104と高吸水性ポリマーを供給するポリマー供給管105とが備えられ、供給されたパルプおよび高吸水性ポリマーを積繊ドラム101の外周面にエアー搬送するダクト106を有するものである。上記積繊ドラム101は、そのドラム面に吸収体の形状に区画されていて吸収体を積繊する積繊キャビティ107が配されている。積繊キャビティ107の底面は多数の通気孔(図示せず)を有しており、積繊キャビティ107内に供給された空気は通気孔を通して上記吸引部102により吸引される。また積繊キャビティ107の底面には、吸収体に凹部を配する非吸引の突起部108が配されている。この突起部108は、吸収体に配される凹部の形状を転写した形状を成すものである。さらに積繊ドラム101の下部には、積繊された吸収体を搬出する搬出手段(図示せず)が配されている。
【0044】
上記構成の吸収体の製造装置100では、供給部103により搬送気体(例えば空気)とともに供給された粉砕パルプおよび高吸水性ポリマーが積繊キャビティ107内に供給され、吸引部102の吸引力によって所定形状に堆積されることによって吸収体が製造される。粉砕パルプおよび高吸水性ポリマーの時間当たりの供給量、供給時の風速(風圧)等を調整することによって吸収体の密度を所望の密度にすることができる。
【0045】
具体的には、図10(1)に示すように、積繊ドラム101の外周に配された積繊キャビティ107内に、例えば粉砕パルプ111および高吸水性ポリマー112を堆積させる。なお、積繊キャビティ107は、積繊ドラム101の外周に配されているので、その外周面にそって底面が湾曲した形状になっていてもよい。続けて、図10(2)に示すように、さらに積繊キャビティ107内に粉砕パルプ111および高吸水性ポリマー112を堆積させて、突出液吸収貯蔵部12を成す。そして積繊キャビティ107内の突出液吸収貯蔵部12が突起部108と同等の高さになったところで、高吸水性ポリマー112の供給を抑制しつつ、粉砕パルプ111を供給して堆積し、図10(3)に示すように、受液層部11を成す。このように突出液吸収貯蔵部12と受液層部11とを連続して堆積するので、突出液吸収貯蔵部12と受液層部11との間に界面を生じることなく堆積を完了して吸収体10を製造することができる。その後、積繊キャビティ107内から堆積した吸収体10を剥離して、厚みの大きい突出液吸収貯蔵部12のみが圧力を受けるように加圧し圧縮するプレス工程を行い、突出液吸収貯蔵部12が高密度になるように凹部13底部の受液層部11とに密度差が生じる。さらに、上下を反転することで、図10(4)に示すように、吸収体10が完成する。
したがって、上記吸収体の製造装置100では、先に突出液吸収貯蔵部12が構成され、その後連続して受液層部11が構成される。
【0046】
積繊(堆積)により製造される吸収体10は、その構成材料として、特に制限はないが、繊維材料、多孔質体、それらの組み合わせなどを用いることができる。繊維材料としては例えば、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。合成樹脂からなる繊維を用いる場合、該繊維は熱によって形状変化する熱収縮繊維であっても良い。例えば、熱によって繊度が太くなるが繊維長が短くなるもの、または、熱によって繊度はほとんど変化しないが、形状がコイル状に変形することで見かけの繊維の占有する長さが短くなるものであってもよい。多孔質体としては、スポンジ、不織布、高吸水性ポリマーの凝集物などを用いることができる。
【0047】
吸収体10に含まれる高吸収性ポリマーとしては、自重の5倍以上の液体を吸収、保持でき、かつゲル化し得るものが好ましい。形状は特に問わず、球状、塊状、ブドウ状、粉末状または繊維状であってよい。好ましくは大きさが1μm〜1000μm、より好ましくは10μm〜500μmの粒子状のものである。そのような高吸収性ポリマーの例としては、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸またはアクリル酸アルカリ金属塩の重合体または共重合体等、ポリアクリル酸およびその塩ならびにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたはスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合体も好ましく使用することができる。
【0048】
吸収体10に高吸収性ポリマーが含まれていることは本発明において必須ではないが、吸収体10に高吸収性ポリマーが含まれている場合、吸収体10の質量に占める高吸収性ポリマーの割合は、5質量%〜95質量%が好ましい。特に、生理用ナプキンや軽失禁などの低排せつ量の液を吸収する物品の場合では10質量%〜30質量%が好ましく、おむつなどの高排せつ量の液を吸収する物品の場合では50質量%〜80質量%であることが好ましい。
【0049】
吸収体10が高吸収性ポリマーを含むか含まないかを問わず、吸収体10は、0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液の保持量が吸収体1g当たり0.1g以上、特に1g以上であることが安定した吸収性能を発現する点から好ましい。このような保持量を実現するためには、吸収体10の構成材料として、親水性が高く毛管力の高い繊維(例えばパルプやレーヨン等)と、湿潤時でもへたらない(可塑化しないまたは湿潤強度が低下しない)合成繊維と、高吸収性ポリマーとの組み合わせを用いることが有利である。
【0050】
上記吸収体10(10A,10B)を製造するには、初めは、密度が高くなる状態に突出液吸収貯蔵部12を積繊する。具体例として、例えば、積繊キャビティ107の深さよりも高さの小さい突起部108を、図12に示す形状が得られるように設置し、フラッフパルプおよび超吸収性ポリマーを積繊キャビティ107に堆積させる。初めに突出液吸収貯蔵部12が堆積し、その後受液層部11が堆積する。これにより、受液層部11の堆積時の吸引力は突出液吸収貯蔵部12に堆積した堆積物の影響により吸引力が低下し、突出液吸収貯蔵部12に比べて密度が低くなることで、突出液吸収貯蔵部12頂部から受液層部11にかけて密度差が生じる。さらに、パルプおよび超吸収性ポリマーを堆積させた後、積繊キャビティ107内から堆積した吸収体10を剥離し、プレス加工する。この時、坪量および厚みの大きな突出液吸収貯蔵部12に積極的に圧力がかかることで、この突出液吸収貯蔵部12と凹部13底部の受液層部11とに密度差が生じ、突出液吸収貯蔵部12は凹部13底部の受液層部11に比べて密度が高くなる。最後に、吸収体10を反転させ、非肌当接面側に受液層部11を有する吸収体10が作製される。
【0051】
また、前記第3実施形態の吸収体10(10C)は、突起部108の断面形状を、積繊ドラム101側が長辺となるような台形形状にし、上記吸収体10Aおよび10Bと同様の方法で積繊を行う。突起部108の断面形状が台形形状であることにより、堆積した突出液吸収貯蔵部12の断面が受液層部11側を長辺とする台形形状となる。これにより、突出液吸収貯蔵部12の頂部が台形形状の上面となり、頂部から底部にかけて坪量および厚みの差が生じる。さらに、吸収体10を積繊キャビティ107から剥離した後にプレス加工を行うことで、突出液吸収貯蔵部12の頂部である台形上面が積極的に圧力を受け、突出液吸収貯蔵部12の中央部と突出液吸収貯蔵部12の側部とに密度差が生じる。最後に、吸収体10を反転させることで、非肌当接面側に受液層部11を有する吸収体10が作製される。
【0052】
次に、凹部13底部の受液層部11の坪量を変化させて粉砕パルプ111および高吸水性ポリマー112を堆積させる方法について、図11によって説明する。
【0053】
図11(1)に示す積繊キャビティ107内に配された突起部108の高さについて、以下に説明する。なお、以下に説明する吸収体10の中央部および外側部は、前記図7によって説明した通りである。
図11(2)に示すように、吸収体10の中央部における凹部13底部の受液層部11の坪量を小さくするには、その凹部13が配される部分に対応する積繊キャビティ107内の突起部108の高さを外側部より高くして、受液層部11が外側部より薄く堆積されるようにする。
一方、図11(3)に示すように、吸収体10の外側部における凹部13底部の受液層部11の坪量を大きくするには、その凹部13が配される部分に対応する積繊キャビティ107内の突起部108の高さを外側部より低くして、受液層部11が厚く堆積されるようにする。
また、図11(4)に示すように、吸収体10の中央部から外側部になる境界付近は、突起部108の高さを中央部から外側部に向かうにしたがって徐々に低くしてもよい。こうすることによって、中央部と外側部との境界の突起部108に段差が生じないので、段差のない凹部13が配される。よって、吸収体10に供給された液体が凹部13を通ってスムーズに吸収体10の外側部に通液され、しかも外側部に向かうにしたがって、凹部13底部の受液層部11の厚さが厚くなるので拡散量を多くすることができる。
【0054】
例えば、上記のように突起部108を吸収体10の長手方向の中央部の厚みを2mm、外周部の厚みを1mmに形成した積繊キャビティ107内に粉砕パルプ111および高吸水性ポリマー112を堆積させることにより、図12(1)に示すように、吸収体10の中央部における凹部13底部の受液層部11の坪量が50g/m2となるように薄く堆積させることができ、吸収体10の外側部における凹部13底部の受液層部11の坪量が100g/m2となるように厚く堆積させることができる。
一方、突起部108の高さを変化さない場合には、図12(2)に示すように、吸収体10の全域にわたって凹部13底部の受液層部11の厚さが一定になるので、坪量も一定になる。
【0055】
次に、上述の吸収体10を使い捨ておむつ(以下、おむつという)50に適用した一例について図13を参照して説明する。なお、図13においてはおむつ50の長手方向中央部分の表面シート16を切欠している。
【0056】
図13に示すように、おむつ50は、全体として股下部に相当する長手方向中央部がくびれた形状となっている。表面シート16および裏面シート17はそれぞれ、吸収体10の左右両側縁および前後両端部から外方に延出している。表面シート16は、その幅方向Sの寸法が、裏面シート17の幅方向の寸法より小さくなっている。おむつ50は、展開型のおむつであり、長手方向Lの一方の端部においては、その両側縁部に一対のファスニングテープFTが取り付けられている。また、他方の端部においては、裏面シート17上にランディングテープLTが取り付けられている。
【0057】
おむつ50は、吸収体10の幅方向側縁部の上方に立ち上がることができる立体ギャザーを備えている。すなわち、おむつ50における長手方向Lの両側のそれぞれには、ギャザー弾性部材56を有する立体ギャザー用のシート材(サイドシート)18が配されて、立体ギャザーが構成されている。また、おむつ50における長手方向Lの両側には、レッグギャザー用の左右一対の一本または複数本(本図面では2本)のレッグ弾性部材58、58が配されて、レッグギャザーが構成されている。レッグギャザー用のレッグ弾性部材58は、吸収体10の長手方向両側縁それぞれの外方に延出するレッグフラップにおいて、伸長状態で略直線状に配されている。
【0058】
立体ギャザー用のシート材18は、その一側縁に、ギャザー弾性部材56が一本または複数本(本図面では3本)、伸長状態で固定されている。シート材18は、吸収体10の左右両側縁よりも幅方向Sの外方の位置において、おむつ50の長手方向Lに沿って表面シート16に接合されており、その接合部が、立体ギャザーの立ち上がり基端部となっている。シート材18は、立ち上がり基端部からおむつ50の幅方向Sの外方に延出し、その延出部において裏面シート17と接合されている。シート材18は、おむつ50の長手方向Lの前後端部において、表面シート16上に接合されている。
【0059】
立体ギャザー用のシート材18としては、液不透過性または撥水性で且つ透湿性のものが好ましく用いられる。シート材18としては、例えば、液不透過性または撥水性の多孔性樹脂フィルム、液不透過性又は撥水性の不織布、もしくは該多孔性樹脂フィルムと該不織布との積層体等が挙げられる。該不織布としては、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、SMMS不織布等が挙げられる。シート材18の坪量は、好ましくは5g/m2〜30g/m2、さらに好ましくは10g/m2〜20g/m2である。
【0060】
表面シート16としては、この種のおむつにおいて従来用いられている各種のものを用いることができ、尿などの液体を透過させることができるものであれば制限はなく、例えば、合成繊維または天然繊維からなる織布や不織布、多孔性シート等が挙げられる。表面シート16の一例として、芯成分にポリプロピレンやポリエステル、鞘成分にポリエチレンを用いた、芯鞘構造型(サイドバイサイド型含む)複合繊維をカーディングによりウエブ化した後、エアースルー法によって不織布(この後所定箇所に開孔処理を施しても良い)としたものが挙げられる。また、透液性の高さの点(ドライ感)から、低密度ポリエチレン等のポリオレフィンからなる開孔シートも好ましく用いることができる。
裏面シート17としては、この種のおむつにおいて従来用いられている各種のものを用いることができ、液不透過性または撥水性で、かつ透湿性のものが好ましく用いられる。裏面シート17としては、例えば、上述した立体ギャザー形成用のシート材18として使用可能なものを用いることができる。また、裏面シート17の幅を吸収体10の幅と同程度にして該吸収体10の非肌当接面側に配置し、さらに、該裏面シート17の非肌当接面側に、不織布や不織布とフィルムとの積層体等を、おむつの外形を構成するシートとして設けてもよい。
上記非肌当接面は、おむつ装着時に着衣側(装着者の肌側とは反対側)に向けられる面である。また、以下、肌当接面という語句を使用することがあるが、肌当接面は、おむつ装着時に装着者の肌側に向けられる面である。
【0061】
このおむつ50は、通常の展開型のおむつと同様に使用できる。このおむつ50は、吸収体10の作用により、高吸収量と快適な装着感とを両立し、基盤シートとなる受液層部11に伸縮性のシートを用いることにより、複雑に起伏する肌面に合わせて変形し、隙間なく面で当接する人体適合性と、着用者の身体の動きに合わせて変形し、その肌面と面で当接した状態を維持する動作追随性とを持ち合わせている。
【0062】
表面シート16は、液透過性であり肌への当りのソフトな材料からなることが好ましい。例えばコットン等の天然繊維を材料とする不織布や、各種合成繊維に親水化処理を施したものを材料とする不織布を用いることができる。裏面シート17は液不透過性のシート材からなることが好ましい。裏面シート17は必要に応じて水蒸気の透過性のものであってもよい。具体的に十分な水蒸気透過性を得るために、炭酸カルシウム等のフィラーからなる微粉を分散させたポリエチレン等の合成樹脂製のフィルムを延伸し、微細な孔をあけた多孔質フィルムを用いることが好ましい。サイドシートとしては、不織布、フィルムシート、紙等が挙げられる。防漏性の観点からは、サイドシートを液不透過性または難透過性である疎水性不織布、防漏性のフィルムシート等により形成することが好ましい。上記シートは一枚でもよいし、さらに機能性のシート等と組み合わせて2枚以上のものとしてもよい。
【0063】
上記吸収性物品は、上記の実施形態に制限されるものではなく、この種の吸収性物品、例えば使い捨ておむつ、失禁パッド、失禁ライナ等に適用することができる。また、尿に限らずその他、経血、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。また、表面シート16、吸収体10、裏面シート17およびサイドシートの他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。なお、上記実施形態の表面シート16、吸収体10および裏面シート17の材料、製法における条件や、製品の寸法諸元は特に限定されず、通常に用いられている各種材料を用いることができる。
【0064】
実施例および比較例を以下に説明する。
[実施例1]
実施例1の吸収体10を以下のように作製した。まず、深さ6mmの積繊キャビティ107に対し、高さ2mmの突起部108を図12に示す形状が得られるように配置した。突起部108の断面形状は矩形である。そして、フラッフパルプ(ウェアハウザー社製、商品名NB416)と超吸収性ポリマー(日本触媒社製、商品名アクアリックCA W101)を積繊キャビティ107内に堆積させた。この時、突出液吸収貯蔵部12の坪量は、パルプが200g/m2、超吸収性ポリマーが320g/m2であり、凹部13底部の受液層部11の坪量は、パルプが50g/m2、超吸収性ポリマーが50g/m2である。堆積後、積繊キャビティ107内から堆積した吸収体10を剥離し、圧力0.025MPaでプレス加工した。この吸収体10を反転させて、非肌当接面側に受液層部11を有するよう配置し、坪量16g/m2のティッシュで全体を被覆して作製した。
[実施例2]
実施例2の吸収体10は、突起部108の高さを、吸収体長手方向の中央部を2mm、外側部を1mmとした以外は実施例1と同様の手順で作製した。
[比較例1]
比較例1の吸収体は、深さ6mmの積繊キャビティ107に対し、突起部108の高さを6mmとした以外は実施例1と同様に積繊を行い、受液層部を有さず、独立したブロックを得た。得られたブロックを、図12に示す形状に配置させた後、坪量16g/m2のティッシュで全体を被覆して作製した。
[比較例2]
比較例2の吸収体は、比較例1と同様、深さ6mmの積繊キャビティ107に対し、突起部108の高さを6mmとした以外は実施例1と同様に積繊を行い、受液層部を有さず、独立したブロックを得た。得られたブロックを、別工程で作製した坪量50g/m2のパルプシートの上に、図12に示す形状に配置させた後、坪量16g/m2のティッシュで全体を被覆して作製した。
【0065】
次に、本発明の吸収体10の性能評価として、よれ率と液戻り量を調べた。
吸収体10のよれ率は、以下のようにして求めた。
図14に示すように、以下に述べる吸収体を備えた上述のおむつ50をそれぞれ歩行試験装置200に装着して、歩行と吸収体への生理食塩水の注入を繰り返し行うことで、よれ率を求める試験を行った。歩行試験装置200は、人間の体型を模して造られたもので、例えば上腹部から大腿部までを模して造られており、大腿部が人間の歩行と同等の動作をするものである。
歩行条件は、最初に毎分120歩の歩行速度で1分間の歩行を行った。直後、生理食塩水を毎秒8gの供給速度で吸収体に供給し、さらに毎分120歩の歩行速度で10分間の歩行を行った。この生理食塩水の供給と10分間の歩行を1セットにして、5セットを連続的に繰り返し行った。この結果、吸収体には合計40gの生理食塩水が供給されたことになる。
その後、股間部の吸収体のよれ率(%)を以下の式により求めた。
よれ率=[1−(歩行後の吸収体幅)/(歩行前の吸収体幅)]×100(%)
また、目視によって、特に吸収体の突出液吸収貯蔵部の浮き状態を確認した。
【0066】
前記図4に示した連続吸収体、前記特許文献1に開示された突出液吸収貯蔵部が独立に配された吸収体、本発明の吸収体10の3種の吸収体について、上記試験方法によって股間部のよれ率を調べた。
【0067】
【表1】
【0068】
吸収体の液戻り量は、以下のようにして求めた。
吸収体の長手方向中央部、幅方向中央部に内径35mmの円筒を置き、液が注入される吸収体の位置からの高さが10mmになるように液を維持しながら、液として生理食塩水40gを注入した。円筒最下部には製品全体を覆うことのできる大きさでアクリル板(厚さ5mm、長さ250mm、幅100mm)が備えられている。吸収開始から10分後に、同様の方法にて再度40gを注入する。この操作を4回繰り返し、合計160gの生理食塩水を吸収体に吸収させた。予め、ろ紙(アドヴァンテックNo.5A)を100mm×100mmに切断し、20枚重ねにしたものを準備し(測定質量W1)、4回目の注入開始から10分後に、注入点を中心として吸収体上に載せ、3.5kPaの圧力を掛け、2分後にろ紙の質量を測定(測定質量W2)し、次式のようにして、液戻り量を算出した。
液戻り量(g)=加圧後のろ紙の質量(W2)−最初のろ紙の質量(W1)
表1に、よれ率、突出液吸収貯蔵部の浮き上がり状態および測定した液戻り量を示した。
【0069】
この結果、表1に示すように、本発明の吸収体10は、突出液吸収貯蔵部が独立に配された吸収体よりも、よれ率が低減され、突出液吸収貯蔵部の浮き上がりも発生することなく、液戻り量の33%ないし77%に低減され、液体を吸収した後であっても、装着時のさらさら感が持続するという効果が得られることがわかった。また、実施例2では、長手方向外側部の坪量を中央部の坪量よりも高くしたことにより、液戻り量がさらに低減した。
【0070】
本発明の吸収体10は、上記の実施形態に制限されるものではなく、上述のような展開型おむつのほか、パンツ型おむつ、生理用ショーツ、ショーツ型ナプキン、生理用ナプキン、失禁パッド、失禁ライナ等の吸収性物品に含まれる吸収体に用いることができる。また、上記吸収性物品が乳幼児用のものであっても、成人用のものであっても適用することができる。さらに、尿に限らずその他、経血、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。
【符号の説明】
【0071】
10 吸収体
11 受液層部
12 突出液吸収貯蔵部
13 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品においては、各部材の材料や構造を改良し、その機能や着用感の向上が図られてきた。この吸収性物品に適用される吸収体についても、かかる改良を企図して開発がなされ、特に最近では使用状況や物品の種類に応じた機能性を有するものが種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、表面シートと裏面シートとの間でかつ平面方向にわたって、個々に独立した多数の吸収部からなる吸収体が配置され、さらに吸収体と裏面シートとの間に中間シートが配されている吸収性物品が開示されている。この中間シートは、吸収性物品に排せつされた液の引き込みおよび液の拡散機能を有していて、固定点を介して吸収部を固定している。この固定点は、例えば超音波エンボスやホットメルト接着剤等である。したがって、吸収体と中間シートとは、その間に界面が存在し、一体成型されたものになっていない。
【0004】
また、特許文献2には、実質的に緻密化されていない低密度の区域であるタフト区域と、このタフト区域を相互に分離し包囲するチャンネルとを含み、タフト区域とチャンネルとが連続している吸収性パッドが開示されている。このチャンネルは貯蔵区域と輸送区域とを含み、貯蔵区域はタフト区域より大なる密度を有し、輸送区域は貯蔵区域より大なる密度を有している。また輸送区域は貯蔵区域によって相互に分離され包囲されている。
【0005】
特許文献1に開示された吸収性物品では、中間シートに吸収部よりも小面積の固定部を介して吸収部が配置固定されているので、吸収性物品を装着して歩行等の動作を行った場合に、吸収体に「よれ」を生じる場合があり、また吸収部が浮き上がる場合があり、いずれの場合も違和感があった。また、中間シートと吸収部との間に固定部が介在するとともに界面を有しているので、中間シートから吸収体への拡散が固定部や界面に阻害されて不十分になる場合があり、吸収体の吸収性能が十分に引き出されていなかった。また特許文献2に開示された吸収性パッドでは、タフト区域の密度が低く、チャンネル区域の密度が高いため、チャンネル区域からタフト区域への液の拡散が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−273868号公報
【特許文献2】特開平01−045801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の吸収体が持つ優れた体型適合性を維持しつつ、装着感を向上させるとともに、液拡散性と液吸収性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体を吸収して平面方向に拡散する受液層部と、該受液層部の一面側に該受液層部に連続して複数に分立して配され液体を吸収して貯える突出液吸収貯蔵部とを有し、前記突出液吸収貯蔵部は前記突出液吸収貯蔵部間に配される凹部よりも面積率が高く、前記凹部底部の前記受液層部は前記突出液吸収貯蔵部より坪量および密度が低い吸収体を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収体は、吸収体に供給された液体を主に密度の低い受液層部で平面方向に拡散し、その拡散した液体を受液層部に連続している密度の高い突出液吸収貯蔵部に吸収させて貯えることができるので、液体の吸収量が多くなり、吸収性能を高めることができる。また、本発明の吸収体をおむつ等の吸収性物品に適用した場合、肌への密着性(フィット感)が向上できる利点を維持しつつ、突出液吸収貯蔵部の上面側を肌当接面側に配置し、受液層部側を非肌当接面側に配置することで、肌へのべとつき感が低減できる。さらに、突出液吸収貯蔵部は受液層部に連続していることから、着用時の歩行等の動作によってよれることが低減され、突出液吸収貯蔵部が浮き上がることも無くなり、装着時の違和感が解消され、装着感がより良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の吸収体の好ましい一実施形態の第1実施形態を示した縦断面図である。
【図2】吸収体の密度の測定方法を説明する断面図である。
【図3】吸収体に供給された液体の通液、拡散状態を示した(1)斜視図および(2)縦断面図である。
【図4】連続吸収体に供給された液体の通液、拡散状態を示した縦断面図である。
【図5】本発明の吸収体の好ましい一実施形態の第2実施形態を示した縦断面図である。
【図6】本発明の吸収体の好ましい一実施形態の第3実施形態を示した縦断面図である。
【図7】本発明の吸収体の好ましい一実施形態の第4実施形態を示した平面図である。
【図8】本発明の吸収体を用いた吸収性本体の一例を示した概略構成断面図である。
【図9】本発明の吸収体の製造に好ましく使用される製造装置の一例を示した概略構成図である。
【図10】吸収体の好ましい製造方法の一例を示した製造工程断面図である。
【図11】凹部底部の受液層部の坪量を変化させた一例を示した斜視図である。
【図12】凹部底部の受液層部の坪量を変化させた一例および比較例を示した平面図である。
【図13】本発明の吸収体を用いた吸収性物品の好ましい一例を示した平面展開図である。
【図14】歩行試験装置の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る吸収体の好ましい一実施形態の第1実施形態について、図1を参照しながら、以下に説明する。
【0012】
図1に示すように、本発明の吸収体10(10A)は、液体を一旦受け取る受液層部11と、この受液層部11の一面側に該受液層部11に連続して、かつ複数に分立して配された突出液吸収貯蔵部12とを有する。したがって、それぞれの突出液吸収貯蔵部12と隣接する別の突出液吸収貯蔵部12との間に多量の液体を平面方向に拡散する凹部13が配される。この突出液吸収貯蔵部12と凹部13とは、複数の突出液吸収貯蔵部12の面積率が上記凹部13の面積率よりも高くなるように配される。面積率については、後に詳述する。上記複数の突出液吸収貯蔵部12は、主として受液層部11中を拡散してきた液体を吸収して貯えるものである。もちろん、複数の突出液吸収貯蔵部12は、液体に直接接触する部分からも液体を吸収して貯える。また上記突出液吸収貯蔵部12の密度は突出液吸収貯蔵部12下部の受液層部11の密度よりも高くなっている。したがって、上記突出液吸収貯蔵部12は毛管力により受液層部11から液体を吸収する。
【0013】
上記受液層部11の坪量は、好ましくは10g/m2以上300g/m2以下であり、より好ましくは30g/m2以上200g/m2以下であり、特に好ましくは40g/m2以上150g/m2以下である。
また、上記突出液吸収貯蔵部12の坪量は、突出液吸収貯蔵部12と接している受液層部11の合計の坪量として凹部にある受液層部11の坪量より高く、好ましくは200g/m2以上、800g/m2以下、より好ましくは300g/m2以上700g/m2以下であり、特に好ましくは400g/m2以上600g/m2以下である。突出液吸収貯蔵部12の坪量は、凹部における受液層部11の坪量の差分より算出できる。
上記突出液吸収貯蔵部12の坪量は、100g/m2以上、600g/m2以下、好ましくは200g/m2以上600g/m2以下であり、より好ましくは300g/m2以上600g/m2以下である。
【0014】
上記受液層部11の密度は、好ましくは0.01g/cm3以上0.09g/cm3以下であり、より好ましくは0.02g/cm3以上0.07g/cm3以下である。この受液層部11の坪量が低すぎると受液層部11での拡散性が低く、排尿部近傍に液が溜まり、液戻り量が大きくなったり、液漏れしやすくなり、受液層部11の坪量が高すぎると、液が突出液吸収貯蔵部12へ移動しにくくなり、液戻りしやすい。また、受液層部11の密度が低すぎると、毛管力が十分に働かず受液層部での拡散性が低下し、排尿部近傍に液が溜まり、液戻り量が大きくなったり、漏れやすくなる。一方、受液層部11の密度が高すぎると、受液層部11内の空隙が減少するため、拡散させる液の量が減少し、突出液吸収貯蔵部12への液の受け渡し量が低下して、液漏れしやすくなる。
また、上記突出液吸収貯蔵部12の密度は、受液層部11の密度より高く、好ましくは0.03g/cm3以上0.3g/cm3以下であり、より好ましくは0.05g/cm3以上0.2g/cm3以下であり、特に好ましくは0.06g/cm3以上0.15g/cm3以下である。この突出液吸収貯蔵部12の密度が低すぎる場合、毛管力が作用しにくくなり受液層部11中を通ってきた液体を突出液吸収貯蔵部12へ導き難くなり液体の保持が困難となる。一方、突出液吸収貯蔵部12の密度が高すぎる場合も、超吸収性ポリマー(SAP)が膨潤阻害を起こしやすくなり、受液層部11中を通ってきた液体を保持することが困難となる。よって、突出液吸収貯蔵部12の密度は受液層部11よりも高く上記範囲に設定することが望ましい。なお、坪量および密度の測定方法については、後述する。
【0015】
上記突出液吸収貯蔵部12の形状は特に限定されず任意の形状のものを採用することができる。本実施形態において受液層部11と突出液吸収貯蔵部12とはパルプ繊維と超吸収性ポリマー(SAP)とから構成されており、その輪郭は図示したもののように定形的なものでなくてもよく、全体として立体形状のものとされていることが好ましい。また、突出液吸収貯蔵部12の縦横の配列も限定されず用途に合わせ適宜決められるのが好ましい。
【0016】
突出液吸収貯蔵部12は、その縦断面において幅方向に長い長方形または台形を有しており、その肌当接面側である表面12Sの面積は非肌当接面側である裏面12Bの面積に対して同一または小さくなっている。
【0017】
本実施形態の吸収体10は、分立した多数の突出液吸収貯蔵部12の集合で構成されているため肌面の起伏にフィットする「身体適合性」が通常の一体型の大きな吸収体(連続吸収体)に比べ大幅に高まる。また着用者の動作にも良好に追随し、肌に対して部分的な隙間が生じたりすることが防止される「動作追随性」が極めて良好である。本実施形態によればこのような良好な変形性と該変形に左右されない良好な液体等の吸収保持との両立を図ることができる。
【0018】
また、吸収体10は、初回の排せつから排せつを繰り返すことにより、排せつ部から受液層部11の拡散作用により、液をより広い範囲、例えば受液層部11の全域または全域に近い領域まで拡散させる。そして、拡散させた領域の突出液吸収貯蔵部12を利用して受液層部11から液体を吸収することができる。したがって、吸収体10の液体の吸収量が大幅に向上する。
【0019】
一方、突出液吸収貯蔵部が独立に配された従来の吸収体(前記特許文献1参照)は、初回の排せつから排せつを繰り返すことにより、その吸収量が低下していく。これは突出液吸収貯蔵部12どうしが離間していることにより突出液吸収貯蔵部12間の液の移行がしにくく、それにより通液性が低下し、特に排せつ部からその他部位への液体の移行が十分に行われない場合があるためと考えられる。その結果、排せつ部およびその周囲の狭い範囲に利用範囲が留まり、吸収量を越えた液が多量に存在して液戻りや漏れを起こしやすくなる。
なお排せつ部とは、吸収体において、尿、軟便、経血もしくはおりもの等の排せつを直接受ける部分およびその近傍である。
【0020】
上述の吸収体10の各部の坪量および密度は、以下のようにして求める。
図2に示すように、吸収体10の平面方向の坪量は以下のように求める。まず、吸収体10を平面視して、突出液吸収貯蔵部12とその下部の受液層部11を一体に切り出し、また凹部13の受液層部11を切り出し、質量と平面的な大きさ(面積)を測定し坪量を算出する。
また、吸収体10の厚み方向の坪量は以下のように求める。まず、受液層部11上の突出液吸収貯蔵部12を切り出して質量と平面的な大きさ(面積)を計測し坪量を算出する。先に計測した凹部13の受液層部11の坪量との差が突出液吸収貯蔵部12の坪量となる。ここでは、突出液吸収貯蔵部12の下部の受液層部11の坪量とそれに隣接する凹部13の下部の受液層部11の坪量が同等であるとしている。受液層部11および突出液吸収貯蔵部12の厚さは、マイクロスコープ[キーエンス社製マイクロスコープ(商品名VHX-1000))を使用した断面観察より凹部13における受液層部11と受液層部11と重なった突出液吸収貯蔵部12の厚みを各々計測する。
上記測定結果に基づいて、密度=坪量/厚みなる計算により密度を算出する。
【0021】
上述の複数の突出液吸収貯蔵部12および凹部13のそれぞれの面積率は以下のように求める。上記マイクロスコープを用いて、凹部13に焦点を合わせて、突出液吸収貯蔵部12と凹部13を1箇所以上含む範囲を計測し、画像から凹部部分を二値化して画像処理装置により凹部の面積率を導き、その差分が突出液吸収貯蔵部12の面積率となる。必要であれば、画像解析装置の手動補正等を使用する。吸収体全体を一度に画像化して画像解析装置により面積率を求めることが好ましいが、複数の画像により計測を行う場合には、例えば、所定領域における突出液吸収貯蔵部12の画素(ピクセル)Sbの総和ΣSb、凹部13の画素(ピクセル)Stの総和ΣSt、吸収体の画素(ピクセル)の総和ΣSb+ΣStのいずれか2つを求め、面積率を算出するか、異なる面積率の部位の代表面積率と各々の部分の面積の全体面積における割合を乗じた数値の合計より求めることができる。突出液吸収貯蔵部12の面積率はΣSb/(ΣSb+ΣSt)となり、凹部13の面積率はΣSt/(ΣSb+ΣSt)で算出できる。
【0022】
上記面積率は、突出液吸収貯蔵部12の面積率が凹部13の面積率より高くなるように設定される。凹部13の面積率は100%−[突出液吸収貯蔵部12の面積率(%)]となる。例えば、突出液吸収貯蔵部12の面積率は、60%以上95%以下に設定され、好ましくは65%以上90%以下に設定され、より好ましくは70%以上85%以下に設定される。上記突出液吸収貯蔵部12の面積率が高すぎると、凹部13の面積率が低くなりすぎて、凹部13の底部から受液層部11への液体の吸収量が少なくなり、受液層部11全域への液体の拡散が不十分となる。一方、突出液吸収貯蔵部12の面積率が低すぎると、突出液吸収貯蔵部12に貯えることができる液体の量が少なくなり、吸収体10としての液体の吸収量が低下することになる。したがって、突出液吸収貯蔵部12の面積率は上記範囲とするのが望ましい。
【0023】
ここで、上記吸収体10に供給された液体(例えば尿等)の通液、拡散状態について、図3によって詳しく説明する。
【0024】
図3(1)、(2)に示すように、吸収体10の上方より液体Lが供給されると、液体Lの大部分は突出液吸収貯蔵部12表面から凹部13内部に流れ込み、凹部13を通って四方に通液される。そのとき、突出液吸収貯蔵部12表面に供給された液体Lの一部は突出液吸収貯蔵部12内に直接吸収される。また凹部13を通る液体Lの大部分は、凹部13の底部より受液層部11に浸透し、受液層部11内を四方に拡散されて行く。さらに、凹部13を通る液体Lの一部は突出液吸収貯蔵部12の側面より突出液吸収貯蔵部12の内部に拡散され吸収される。受液層部11内を拡散した液体Lは、毛管力によって受液層部11から突出液吸収貯蔵部12の内部に拡散される。このようにして液体Lは突出液吸収貯蔵部12の内部に貯えられる。
吸収体10の表面に供給された液体Lの大部分は、上記受液層部11の内部を拡散するので、突出液吸収貯蔵部12側を肌当接面側とし、受液層部11側を非肌当接面側として、吸収体10を用いることにより、肌側から遠い受液層部11で液体Lを拡散させることができる。これによって、肌へのべとつき感が少なくなるという効果が得られる。
【0025】
一方、図4に示すように、連続吸収体20では、その表面に液体Lが供給された場合、液体Lの一部は肌当接面側の表面20Sを流れて四方に拡がっていく。その他の液体Lは、連続吸収体20内部に拡散されていく。このため、連続吸収性20では、尿等の液体Lが肌当接面側の表面20Sに供給された場合、肌へのべとつき感が生じやすくなる。
【0026】
上記実施形態の吸収体10では、突出液吸収貯蔵部12の密度が受液層部11の密度よりも高いことから、吸収体10に供給された液体の大部分は、密度の低い受液層部11に浸透して受液層部11内を拡散し、この受液層部11から密度の高い突出液吸収貯蔵部12に毛管力により吸収されて貯えられる。しかも受液層部11から連続して突出液吸収貯蔵部12が配されていることから、受液層部11から突出液吸収貯蔵部12へ液体が拡散するときに界面の存在による拡散性の低下がなく、受液層部11に取り込まれた液体は密度の高い突出液吸収貯蔵部12に毛管力により円滑に吸収され、貯えられていく。これにより、吸収体10の吸収性能の向上が図れる。
また複数の突出液吸収貯蔵部12の面積率はそれぞれの突出液吸収貯蔵部12間に配される凹部13の面積率よりも高くしたことから、突出液吸収貯蔵部12における液体の吸収量を十分に確保することができる。
また、複数の突出液吸収貯蔵部12を配することによって吸収体10の一部がブロック化されていることにより、この吸収体10が配された吸収性物品(図示せず)を装着した際の肌への密着性(フィット感)が向上されるという利点が維持される。さらに、突出液吸収貯蔵部12と受液層部11とが連続体を成すことから、装着者の歩行等の動作によって、突出液吸収貯蔵部12がよれることが低減され、浮き上がることが防止されて、装着時の違和感が解消され、装着感が格段に向上する。
【0027】
次に本発明に係る吸収体の第2実施形態について、図5を参照しながら、以下に説明する。
【0028】
図5に示すように、第2実施形態の吸収体10(10B)は、前述の第1実施形態の吸収体10(10A)と同様に、受液層部11、突出液吸収貯蔵部12および凹部13が配される。また複数の突出液吸収貯蔵部12の面積率が上記凹部13の面積率よりも高くなるように、突出液吸収貯蔵部12および凹部13が配される。さらに上記突出液吸収貯蔵部12の密度はその下部の受液層部11の密度よりも高く、第1実施形態における受液層部より凹部13の底部における受液層部11の密度により近くなっている。したがって、上記突出液吸収貯蔵部12は毛管力を利用して受液層部11から液体をより受け入れ易く、さらにはより吸収しやすくなっている。さらにまた、凹部13の底部の受液層部11の密度が突出液吸収貯蔵部12の密度より低くなっている。受液層部11および突出液吸収貯蔵部12の密度は、上述の第1実施形態の吸収体10と同様の値とすることが好ましい。
これにより、凹部13の底部の受液層部11からも液体を吸収しやすくなる。そして吸収された液体は受液層部11内を拡散し、突出液吸収貯蔵部12の下部から突出液吸収貯蔵部12中へ吸収されるので、吸収体10Bの液体の吸収性がさらに向上する。
【0029】
次に本発明に係る吸収体の第3実施形態について、図6を参照しながら、以下に説明する。
【0030】
図6に示すように、第3実施形態の吸収体10(10C)は、前述の第1実施形態の吸収体10(10A)と同様に、受液層部11、突出液吸収貯蔵部12および凹部13が配される。また複数の突出液吸収貯蔵部12の面積率が上記凹部13の面積率よりも高くなるように、突出液吸収貯蔵部12および凹部13が配される。さらに上記突出液吸収貯蔵部12の密度はその下部の受液層部11の密度よりも高くなっている。したがって、上記突出液吸収貯蔵部12は毛管力を利用して受液層部11から液体を吸収しやすくなっている。さらに、突出液吸収貯蔵部12の側面の密度は突出液吸収貯蔵部12の中央部の密度より低くなっている。受液層部11および突出液吸収貯蔵部12の中央部の密度は、上述の第1実施形態の吸収体10と同様の値とすることが好ましい。また、上記突出液吸収貯蔵部12の側面の密度は、前述の受液層部11の密度と同等の値とするか、または、受液層部11の密度より高く前述の突出液吸収貯蔵部12の中央部の密度よりも低い値とすることが好ましい。
これにより、突出液吸収貯蔵部12の側面からも液体を吸収しやすくなる。そして突出液吸収貯蔵部12の側面から吸収された液体は突出液吸収貯蔵部12の中央部へ拡散し貯えられるので、吸収体10Cの液体を貯える速度が高められる。
【0031】
この吸収体10Cの構成では、突出液吸収貯蔵部12の縦断面形状が台形になっているが、長方形であってもよい。また、断面でみた突出液吸収貯蔵部12側面の低密度の領域は、突出液吸収貯蔵部12の表面側に向うにしたがって厚みが薄くなるように配することが好ましい。これによって、表面側での液体の拡散が低減される。また、断面でみた突出液吸収貯蔵部12側面の低密度の領域は、受液層部11側のみに配することが好ましい。これによって、突出液吸収貯蔵部12側面での液体の拡散が受液層部11に近い領域で行えるようになる。
【0032】
次に本発明に係る吸収体の第4実施形態について、図7を参照しながら、以下に説明する。
【0033】
図7に示すように、第4実施形態の吸収体10(10D)は、前述の第1実施例の吸収体10(10A)と同様に、受液層部11、突出液吸収貯蔵部12および凹部13が配される。また複数の突出液吸収貯蔵部12の面積率が上記凹部13の面積率よりも高くなるように、突出液吸収貯蔵部12および凹部13が配される。さらに上記突出液吸収貯蔵部12の上部側の密度はその下部の受液層部11の密度よりも高くなっている。したがって、上記突出液吸収貯蔵部12は毛管力を利用して受液層部11から液体を吸収しやすくなっている。さらに凹部13の底部の受液層部11は、長手方向の中央部より外側部の坪量が大きくなっている。長手方向の外側部の凹部13の底部の受液層部11の坪量は、長手方向の中央部の坪量より10〜300g/m2、より好ましくは20〜250g/m2、さらに好ましくは30〜200g/m2以上高いことが好ましい。
【0034】
具体的には、凹部13の底部の受液層部11の厚さを変えることによって、言い換えれば、凹部13の深さを変えることによって、長手方向の中央部より外側部の坪量が大きくなるようにしてある。例えば、坪量を大きくするには受液層部11の厚さを厚く(凹部13の深さを浅く)すればよく、坪量を小さくするには受液層部11の厚さを薄く(凹部13の深さを深く)すればよい。
【0035】
これにより、受液層部11に取り込まれた液体は、吸収体10Dの外側部に引き込まれやすくなる。このため、吸収体10Dを吸収性物品としてのおむつに適用した場合、受液層部11の中央部で排せつ液体を取り込み、それを両外側部に引き込むので、排せつ液体の取り込み量を多くすることができ、その取り込んだ液体を吸収体10D全域の突出液吸収貯蔵部12に吸収させることができるので、吸収量を向上させることができる。
【0036】
この吸収体10Dの構成では、前述の第2実施形態のように、凹部13の底部の受液層部11の密度が突出液吸収貯蔵部12の密度より低くなっていることが好ましい。また、前述の第3実施形態のように、突出液吸収貯蔵部12の側面の密度は突出液吸収貯蔵部12の中央部の密度より低くなっていてもよい。
【0037】
上記吸収体10は、突出液吸収貯蔵部12側より液体が供給されるようにして用いられた場合、多量に液(特に尿等5mm・Pa・sec以下の粘性の低い液)が排出されたときには、凹部13に沿って液が長手方向に導かれる。これは、吸収体10の一面から窪んだ形状(凹部)による効果であり、凹部13に液が流れ込み水路としての機能を主として発現した結果である(図8(1)参照。)。一方、受液層部11側より液体が供給されるようにして用いられた場合、同様に多量の尿等5mm・Pa・sec以下の粘性の低い液が排出された場合には、窪み部分(凹部)に液が達することで液が凹部13により形成された空間に溢れ、凹部13の壁面によって、凹部13内の液移動が主として発現する(図8(2)参照。)。どちらの効果が主として発現した場合であっても、同じ構造、組成で形成された吸収体の第1凹部21を有すると、粘性の低い液では同等の導液効果を奏する。
【0038】
図8(1)に示すように、本発明の吸収体10を用いて突出液吸収貯蔵部12側より液体が供給されるように吸収性本体15を構成するには、吸収体10の突出液吸収貯蔵部12側に表面シート16を配し、この表面シート16の周囲に接合するようにして、かつ吸収体10の受液層部11側を包み込むように裏面シート17を配するように構成すればよい。
【0039】
上記表面シート16は親水性不織布で形成されることが好ましい。親水性不織布としては、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、立体賦形不織布と呼ばれている不織布で、その繊維がポリプロピレンの単繊維や、ポリプロピレンとポリエチレンの複合繊維、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンの複合繊維等で親水化処理が施された繊維が好ましく使用できる。
【0040】
上記裏面シート17は、防水性があり透湿性を有していれば特に限定されない。例えば疎水性の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等からなる微小な無機フィラーまたは相溶性のない有機高分子等とを溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸または二軸延伸して得られる多孔性フィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが挙げられる。該ポリオレフィンとしては、高〜低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられ、これらを単独でまたは混合して用いることができる。
【0041】
また、吸収性本体15では、図示しないが、吸収体10の肌当接面側が被覆シートにより被覆されていることが好ましい。さらに、肌当接面側のみならず、非肌当接面側も被覆シートにより被覆されていてもよく、吸収体15を被覆シートで包んだ状態のものでもよい。またさらに、上記表面シート16の肌当接面側には内側立体ギャザーをなす一対のサイドシートが積層されていることが好ましい。またさらに、非肌当接面側には順に上記裏面シート17と防漏シートとが設けられていることが好ましい。
【0042】
次に、本発明の吸収体10の製造に好ましく使用される製造装置の一例を、図9を参照しながら、以下に説明する。
【0043】
図9に示すように、吸収体の製造装置100は、回転可能の積繊ドラム101を有している。この積繊ドラム101内には吸引部102が配されている。また、積繊ドラム101の外周面に吸収体10の構成材料となるパルプおよび高吸水性ポリマー(SAP)を空気に乗せて供給する供給部103が備えられている。この供給部103は、パルプを破砕して供給するパルプ供給部104と高吸水性ポリマーを供給するポリマー供給管105とが備えられ、供給されたパルプおよび高吸水性ポリマーを積繊ドラム101の外周面にエアー搬送するダクト106を有するものである。上記積繊ドラム101は、そのドラム面に吸収体の形状に区画されていて吸収体を積繊する積繊キャビティ107が配されている。積繊キャビティ107の底面は多数の通気孔(図示せず)を有しており、積繊キャビティ107内に供給された空気は通気孔を通して上記吸引部102により吸引される。また積繊キャビティ107の底面には、吸収体に凹部を配する非吸引の突起部108が配されている。この突起部108は、吸収体に配される凹部の形状を転写した形状を成すものである。さらに積繊ドラム101の下部には、積繊された吸収体を搬出する搬出手段(図示せず)が配されている。
【0044】
上記構成の吸収体の製造装置100では、供給部103により搬送気体(例えば空気)とともに供給された粉砕パルプおよび高吸水性ポリマーが積繊キャビティ107内に供給され、吸引部102の吸引力によって所定形状に堆積されることによって吸収体が製造される。粉砕パルプおよび高吸水性ポリマーの時間当たりの供給量、供給時の風速(風圧)等を調整することによって吸収体の密度を所望の密度にすることができる。
【0045】
具体的には、図10(1)に示すように、積繊ドラム101の外周に配された積繊キャビティ107内に、例えば粉砕パルプ111および高吸水性ポリマー112を堆積させる。なお、積繊キャビティ107は、積繊ドラム101の外周に配されているので、その外周面にそって底面が湾曲した形状になっていてもよい。続けて、図10(2)に示すように、さらに積繊キャビティ107内に粉砕パルプ111および高吸水性ポリマー112を堆積させて、突出液吸収貯蔵部12を成す。そして積繊キャビティ107内の突出液吸収貯蔵部12が突起部108と同等の高さになったところで、高吸水性ポリマー112の供給を抑制しつつ、粉砕パルプ111を供給して堆積し、図10(3)に示すように、受液層部11を成す。このように突出液吸収貯蔵部12と受液層部11とを連続して堆積するので、突出液吸収貯蔵部12と受液層部11との間に界面を生じることなく堆積を完了して吸収体10を製造することができる。その後、積繊キャビティ107内から堆積した吸収体10を剥離して、厚みの大きい突出液吸収貯蔵部12のみが圧力を受けるように加圧し圧縮するプレス工程を行い、突出液吸収貯蔵部12が高密度になるように凹部13底部の受液層部11とに密度差が生じる。さらに、上下を反転することで、図10(4)に示すように、吸収体10が完成する。
したがって、上記吸収体の製造装置100では、先に突出液吸収貯蔵部12が構成され、その後連続して受液層部11が構成される。
【0046】
積繊(堆積)により製造される吸収体10は、その構成材料として、特に制限はないが、繊維材料、多孔質体、それらの組み合わせなどを用いることができる。繊維材料としては例えば、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。合成樹脂からなる繊維を用いる場合、該繊維は熱によって形状変化する熱収縮繊維であっても良い。例えば、熱によって繊度が太くなるが繊維長が短くなるもの、または、熱によって繊度はほとんど変化しないが、形状がコイル状に変形することで見かけの繊維の占有する長さが短くなるものであってもよい。多孔質体としては、スポンジ、不織布、高吸水性ポリマーの凝集物などを用いることができる。
【0047】
吸収体10に含まれる高吸収性ポリマーとしては、自重の5倍以上の液体を吸収、保持でき、かつゲル化し得るものが好ましい。形状は特に問わず、球状、塊状、ブドウ状、粉末状または繊維状であってよい。好ましくは大きさが1μm〜1000μm、より好ましくは10μm〜500μmの粒子状のものである。そのような高吸収性ポリマーの例としては、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸またはアクリル酸アルカリ金属塩の重合体または共重合体等、ポリアクリル酸およびその塩ならびにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたはスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合体も好ましく使用することができる。
【0048】
吸収体10に高吸収性ポリマーが含まれていることは本発明において必須ではないが、吸収体10に高吸収性ポリマーが含まれている場合、吸収体10の質量に占める高吸収性ポリマーの割合は、5質量%〜95質量%が好ましい。特に、生理用ナプキンや軽失禁などの低排せつ量の液を吸収する物品の場合では10質量%〜30質量%が好ましく、おむつなどの高排せつ量の液を吸収する物品の場合では50質量%〜80質量%であることが好ましい。
【0049】
吸収体10が高吸収性ポリマーを含むか含まないかを問わず、吸収体10は、0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液の保持量が吸収体1g当たり0.1g以上、特に1g以上であることが安定した吸収性能を発現する点から好ましい。このような保持量を実現するためには、吸収体10の構成材料として、親水性が高く毛管力の高い繊維(例えばパルプやレーヨン等)と、湿潤時でもへたらない(可塑化しないまたは湿潤強度が低下しない)合成繊維と、高吸収性ポリマーとの組み合わせを用いることが有利である。
【0050】
上記吸収体10(10A,10B)を製造するには、初めは、密度が高くなる状態に突出液吸収貯蔵部12を積繊する。具体例として、例えば、積繊キャビティ107の深さよりも高さの小さい突起部108を、図12に示す形状が得られるように設置し、フラッフパルプおよび超吸収性ポリマーを積繊キャビティ107に堆積させる。初めに突出液吸収貯蔵部12が堆積し、その後受液層部11が堆積する。これにより、受液層部11の堆積時の吸引力は突出液吸収貯蔵部12に堆積した堆積物の影響により吸引力が低下し、突出液吸収貯蔵部12に比べて密度が低くなることで、突出液吸収貯蔵部12頂部から受液層部11にかけて密度差が生じる。さらに、パルプおよび超吸収性ポリマーを堆積させた後、積繊キャビティ107内から堆積した吸収体10を剥離し、プレス加工する。この時、坪量および厚みの大きな突出液吸収貯蔵部12に積極的に圧力がかかることで、この突出液吸収貯蔵部12と凹部13底部の受液層部11とに密度差が生じ、突出液吸収貯蔵部12は凹部13底部の受液層部11に比べて密度が高くなる。最後に、吸収体10を反転させ、非肌当接面側に受液層部11を有する吸収体10が作製される。
【0051】
また、前記第3実施形態の吸収体10(10C)は、突起部108の断面形状を、積繊ドラム101側が長辺となるような台形形状にし、上記吸収体10Aおよび10Bと同様の方法で積繊を行う。突起部108の断面形状が台形形状であることにより、堆積した突出液吸収貯蔵部12の断面が受液層部11側を長辺とする台形形状となる。これにより、突出液吸収貯蔵部12の頂部が台形形状の上面となり、頂部から底部にかけて坪量および厚みの差が生じる。さらに、吸収体10を積繊キャビティ107から剥離した後にプレス加工を行うことで、突出液吸収貯蔵部12の頂部である台形上面が積極的に圧力を受け、突出液吸収貯蔵部12の中央部と突出液吸収貯蔵部12の側部とに密度差が生じる。最後に、吸収体10を反転させることで、非肌当接面側に受液層部11を有する吸収体10が作製される。
【0052】
次に、凹部13底部の受液層部11の坪量を変化させて粉砕パルプ111および高吸水性ポリマー112を堆積させる方法について、図11によって説明する。
【0053】
図11(1)に示す積繊キャビティ107内に配された突起部108の高さについて、以下に説明する。なお、以下に説明する吸収体10の中央部および外側部は、前記図7によって説明した通りである。
図11(2)に示すように、吸収体10の中央部における凹部13底部の受液層部11の坪量を小さくするには、その凹部13が配される部分に対応する積繊キャビティ107内の突起部108の高さを外側部より高くして、受液層部11が外側部より薄く堆積されるようにする。
一方、図11(3)に示すように、吸収体10の外側部における凹部13底部の受液層部11の坪量を大きくするには、その凹部13が配される部分に対応する積繊キャビティ107内の突起部108の高さを外側部より低くして、受液層部11が厚く堆積されるようにする。
また、図11(4)に示すように、吸収体10の中央部から外側部になる境界付近は、突起部108の高さを中央部から外側部に向かうにしたがって徐々に低くしてもよい。こうすることによって、中央部と外側部との境界の突起部108に段差が生じないので、段差のない凹部13が配される。よって、吸収体10に供給された液体が凹部13を通ってスムーズに吸収体10の外側部に通液され、しかも外側部に向かうにしたがって、凹部13底部の受液層部11の厚さが厚くなるので拡散量を多くすることができる。
【0054】
例えば、上記のように突起部108を吸収体10の長手方向の中央部の厚みを2mm、外周部の厚みを1mmに形成した積繊キャビティ107内に粉砕パルプ111および高吸水性ポリマー112を堆積させることにより、図12(1)に示すように、吸収体10の中央部における凹部13底部の受液層部11の坪量が50g/m2となるように薄く堆積させることができ、吸収体10の外側部における凹部13底部の受液層部11の坪量が100g/m2となるように厚く堆積させることができる。
一方、突起部108の高さを変化さない場合には、図12(2)に示すように、吸収体10の全域にわたって凹部13底部の受液層部11の厚さが一定になるので、坪量も一定になる。
【0055】
次に、上述の吸収体10を使い捨ておむつ(以下、おむつという)50に適用した一例について図13を参照して説明する。なお、図13においてはおむつ50の長手方向中央部分の表面シート16を切欠している。
【0056】
図13に示すように、おむつ50は、全体として股下部に相当する長手方向中央部がくびれた形状となっている。表面シート16および裏面シート17はそれぞれ、吸収体10の左右両側縁および前後両端部から外方に延出している。表面シート16は、その幅方向Sの寸法が、裏面シート17の幅方向の寸法より小さくなっている。おむつ50は、展開型のおむつであり、長手方向Lの一方の端部においては、その両側縁部に一対のファスニングテープFTが取り付けられている。また、他方の端部においては、裏面シート17上にランディングテープLTが取り付けられている。
【0057】
おむつ50は、吸収体10の幅方向側縁部の上方に立ち上がることができる立体ギャザーを備えている。すなわち、おむつ50における長手方向Lの両側のそれぞれには、ギャザー弾性部材56を有する立体ギャザー用のシート材(サイドシート)18が配されて、立体ギャザーが構成されている。また、おむつ50における長手方向Lの両側には、レッグギャザー用の左右一対の一本または複数本(本図面では2本)のレッグ弾性部材58、58が配されて、レッグギャザーが構成されている。レッグギャザー用のレッグ弾性部材58は、吸収体10の長手方向両側縁それぞれの外方に延出するレッグフラップにおいて、伸長状態で略直線状に配されている。
【0058】
立体ギャザー用のシート材18は、その一側縁に、ギャザー弾性部材56が一本または複数本(本図面では3本)、伸長状態で固定されている。シート材18は、吸収体10の左右両側縁よりも幅方向Sの外方の位置において、おむつ50の長手方向Lに沿って表面シート16に接合されており、その接合部が、立体ギャザーの立ち上がり基端部となっている。シート材18は、立ち上がり基端部からおむつ50の幅方向Sの外方に延出し、その延出部において裏面シート17と接合されている。シート材18は、おむつ50の長手方向Lの前後端部において、表面シート16上に接合されている。
【0059】
立体ギャザー用のシート材18としては、液不透過性または撥水性で且つ透湿性のものが好ましく用いられる。シート材18としては、例えば、液不透過性または撥水性の多孔性樹脂フィルム、液不透過性又は撥水性の不織布、もしくは該多孔性樹脂フィルムと該不織布との積層体等が挙げられる。該不織布としては、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、SMMS不織布等が挙げられる。シート材18の坪量は、好ましくは5g/m2〜30g/m2、さらに好ましくは10g/m2〜20g/m2である。
【0060】
表面シート16としては、この種のおむつにおいて従来用いられている各種のものを用いることができ、尿などの液体を透過させることができるものであれば制限はなく、例えば、合成繊維または天然繊維からなる織布や不織布、多孔性シート等が挙げられる。表面シート16の一例として、芯成分にポリプロピレンやポリエステル、鞘成分にポリエチレンを用いた、芯鞘構造型(サイドバイサイド型含む)複合繊維をカーディングによりウエブ化した後、エアースルー法によって不織布(この後所定箇所に開孔処理を施しても良い)としたものが挙げられる。また、透液性の高さの点(ドライ感)から、低密度ポリエチレン等のポリオレフィンからなる開孔シートも好ましく用いることができる。
裏面シート17としては、この種のおむつにおいて従来用いられている各種のものを用いることができ、液不透過性または撥水性で、かつ透湿性のものが好ましく用いられる。裏面シート17としては、例えば、上述した立体ギャザー形成用のシート材18として使用可能なものを用いることができる。また、裏面シート17の幅を吸収体10の幅と同程度にして該吸収体10の非肌当接面側に配置し、さらに、該裏面シート17の非肌当接面側に、不織布や不織布とフィルムとの積層体等を、おむつの外形を構成するシートとして設けてもよい。
上記非肌当接面は、おむつ装着時に着衣側(装着者の肌側とは反対側)に向けられる面である。また、以下、肌当接面という語句を使用することがあるが、肌当接面は、おむつ装着時に装着者の肌側に向けられる面である。
【0061】
このおむつ50は、通常の展開型のおむつと同様に使用できる。このおむつ50は、吸収体10の作用により、高吸収量と快適な装着感とを両立し、基盤シートとなる受液層部11に伸縮性のシートを用いることにより、複雑に起伏する肌面に合わせて変形し、隙間なく面で当接する人体適合性と、着用者の身体の動きに合わせて変形し、その肌面と面で当接した状態を維持する動作追随性とを持ち合わせている。
【0062】
表面シート16は、液透過性であり肌への当りのソフトな材料からなることが好ましい。例えばコットン等の天然繊維を材料とする不織布や、各種合成繊維に親水化処理を施したものを材料とする不織布を用いることができる。裏面シート17は液不透過性のシート材からなることが好ましい。裏面シート17は必要に応じて水蒸気の透過性のものであってもよい。具体的に十分な水蒸気透過性を得るために、炭酸カルシウム等のフィラーからなる微粉を分散させたポリエチレン等の合成樹脂製のフィルムを延伸し、微細な孔をあけた多孔質フィルムを用いることが好ましい。サイドシートとしては、不織布、フィルムシート、紙等が挙げられる。防漏性の観点からは、サイドシートを液不透過性または難透過性である疎水性不織布、防漏性のフィルムシート等により形成することが好ましい。上記シートは一枚でもよいし、さらに機能性のシート等と組み合わせて2枚以上のものとしてもよい。
【0063】
上記吸収性物品は、上記の実施形態に制限されるものではなく、この種の吸収性物品、例えば使い捨ておむつ、失禁パッド、失禁ライナ等に適用することができる。また、尿に限らずその他、経血、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。また、表面シート16、吸収体10、裏面シート17およびサイドシートの他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。なお、上記実施形態の表面シート16、吸収体10および裏面シート17の材料、製法における条件や、製品の寸法諸元は特に限定されず、通常に用いられている各種材料を用いることができる。
【0064】
実施例および比較例を以下に説明する。
[実施例1]
実施例1の吸収体10を以下のように作製した。まず、深さ6mmの積繊キャビティ107に対し、高さ2mmの突起部108を図12に示す形状が得られるように配置した。突起部108の断面形状は矩形である。そして、フラッフパルプ(ウェアハウザー社製、商品名NB416)と超吸収性ポリマー(日本触媒社製、商品名アクアリックCA W101)を積繊キャビティ107内に堆積させた。この時、突出液吸収貯蔵部12の坪量は、パルプが200g/m2、超吸収性ポリマーが320g/m2であり、凹部13底部の受液層部11の坪量は、パルプが50g/m2、超吸収性ポリマーが50g/m2である。堆積後、積繊キャビティ107内から堆積した吸収体10を剥離し、圧力0.025MPaでプレス加工した。この吸収体10を反転させて、非肌当接面側に受液層部11を有するよう配置し、坪量16g/m2のティッシュで全体を被覆して作製した。
[実施例2]
実施例2の吸収体10は、突起部108の高さを、吸収体長手方向の中央部を2mm、外側部を1mmとした以外は実施例1と同様の手順で作製した。
[比較例1]
比較例1の吸収体は、深さ6mmの積繊キャビティ107に対し、突起部108の高さを6mmとした以外は実施例1と同様に積繊を行い、受液層部を有さず、独立したブロックを得た。得られたブロックを、図12に示す形状に配置させた後、坪量16g/m2のティッシュで全体を被覆して作製した。
[比較例2]
比較例2の吸収体は、比較例1と同様、深さ6mmの積繊キャビティ107に対し、突起部108の高さを6mmとした以外は実施例1と同様に積繊を行い、受液層部を有さず、独立したブロックを得た。得られたブロックを、別工程で作製した坪量50g/m2のパルプシートの上に、図12に示す形状に配置させた後、坪量16g/m2のティッシュで全体を被覆して作製した。
【0065】
次に、本発明の吸収体10の性能評価として、よれ率と液戻り量を調べた。
吸収体10のよれ率は、以下のようにして求めた。
図14に示すように、以下に述べる吸収体を備えた上述のおむつ50をそれぞれ歩行試験装置200に装着して、歩行と吸収体への生理食塩水の注入を繰り返し行うことで、よれ率を求める試験を行った。歩行試験装置200は、人間の体型を模して造られたもので、例えば上腹部から大腿部までを模して造られており、大腿部が人間の歩行と同等の動作をするものである。
歩行条件は、最初に毎分120歩の歩行速度で1分間の歩行を行った。直後、生理食塩水を毎秒8gの供給速度で吸収体に供給し、さらに毎分120歩の歩行速度で10分間の歩行を行った。この生理食塩水の供給と10分間の歩行を1セットにして、5セットを連続的に繰り返し行った。この結果、吸収体には合計40gの生理食塩水が供給されたことになる。
その後、股間部の吸収体のよれ率(%)を以下の式により求めた。
よれ率=[1−(歩行後の吸収体幅)/(歩行前の吸収体幅)]×100(%)
また、目視によって、特に吸収体の突出液吸収貯蔵部の浮き状態を確認した。
【0066】
前記図4に示した連続吸収体、前記特許文献1に開示された突出液吸収貯蔵部が独立に配された吸収体、本発明の吸収体10の3種の吸収体について、上記試験方法によって股間部のよれ率を調べた。
【0067】
【表1】
【0068】
吸収体の液戻り量は、以下のようにして求めた。
吸収体の長手方向中央部、幅方向中央部に内径35mmの円筒を置き、液が注入される吸収体の位置からの高さが10mmになるように液を維持しながら、液として生理食塩水40gを注入した。円筒最下部には製品全体を覆うことのできる大きさでアクリル板(厚さ5mm、長さ250mm、幅100mm)が備えられている。吸収開始から10分後に、同様の方法にて再度40gを注入する。この操作を4回繰り返し、合計160gの生理食塩水を吸収体に吸収させた。予め、ろ紙(アドヴァンテックNo.5A)を100mm×100mmに切断し、20枚重ねにしたものを準備し(測定質量W1)、4回目の注入開始から10分後に、注入点を中心として吸収体上に載せ、3.5kPaの圧力を掛け、2分後にろ紙の質量を測定(測定質量W2)し、次式のようにして、液戻り量を算出した。
液戻り量(g)=加圧後のろ紙の質量(W2)−最初のろ紙の質量(W1)
表1に、よれ率、突出液吸収貯蔵部の浮き上がり状態および測定した液戻り量を示した。
【0069】
この結果、表1に示すように、本発明の吸収体10は、突出液吸収貯蔵部が独立に配された吸収体よりも、よれ率が低減され、突出液吸収貯蔵部の浮き上がりも発生することなく、液戻り量の33%ないし77%に低減され、液体を吸収した後であっても、装着時のさらさら感が持続するという効果が得られることがわかった。また、実施例2では、長手方向外側部の坪量を中央部の坪量よりも高くしたことにより、液戻り量がさらに低減した。
【0070】
本発明の吸収体10は、上記の実施形態に制限されるものではなく、上述のような展開型おむつのほか、パンツ型おむつ、生理用ショーツ、ショーツ型ナプキン、生理用ナプキン、失禁パッド、失禁ライナ等の吸収性物品に含まれる吸収体に用いることができる。また、上記吸収性物品が乳幼児用のものであっても、成人用のものであっても適用することができる。さらに、尿に限らずその他、経血、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。
【符号の説明】
【0071】
10 吸収体
11 受液層部
12 突出液吸収貯蔵部
13 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸収して平面方向に拡散する受液層部と、該受液層部の一面側に該受液層部に連続して複数に分立して配され液体を吸収して貯える突出液吸収貯蔵部とを有し、
前記突出液吸収貯蔵部は前記突出液吸収貯蔵部間に配される凹部よりも面積率が高く、
前記凹部底部の前記受液層部は前記突出液吸収貯蔵部より坪量および密度が低い
吸収体。
【請求項2】
前記突出液吸収貯蔵部はその下部の前記受液層部よりも密度が高い
請求項1記載の吸収体。
【請求項3】
前記突出液吸収貯蔵部の側面は前記突出液吸収貯蔵部の中央部より密度が低い
請求項1または請求項2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記凹部底部の前記受液層部は前記吸収体の長手方向の中央部より外側部の坪量が大きい
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項5】
前記請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の吸収体を有する吸収性物品。
【請求項6】
前記請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の吸収体を有し、該吸収体は前記受液層部を非肌当接面側に配する吸収性物品。
【請求項1】
液体を吸収して平面方向に拡散する受液層部と、該受液層部の一面側に該受液層部に連続して複数に分立して配され液体を吸収して貯える突出液吸収貯蔵部とを有し、
前記突出液吸収貯蔵部は前記突出液吸収貯蔵部間に配される凹部よりも面積率が高く、
前記凹部底部の前記受液層部は前記突出液吸収貯蔵部より坪量および密度が低い
吸収体。
【請求項2】
前記突出液吸収貯蔵部はその下部の前記受液層部よりも密度が高い
請求項1記載の吸収体。
【請求項3】
前記突出液吸収貯蔵部の側面は前記突出液吸収貯蔵部の中央部より密度が低い
請求項1または請求項2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記凹部底部の前記受液層部は前記吸収体の長手方向の中央部より外側部の坪量が大きい
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項5】
前記請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の吸収体を有する吸収性物品。
【請求項6】
前記請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の吸収体を有し、該吸収体は前記受液層部を非肌当接面側に配する吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−143544(P2012−143544A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−269312(P2011−269312)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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