説明

吸収式冷凍機

【課題】
再生器の熱源となる熱源温度が約70〜90℃まで変化してもコスト低減を図るために、1台で対応できる吸収式冷凍機を提供する。
【解決手段】
前記再生器と前記凝縮器と低温蒸発器と低温吸収器と高温蒸発器と高温吸収器とからなる2段吸収サイクルと、前記再生器と前記凝縮器と前記蒸発器と前記高温吸収器とからなる1段吸収サイクルとを備え、前記2段吸収サイクルと前記1段吸収サイクルとを切り替えて運転させる制御装置を設けてなり、この制御装置は前記2段吸収サイクルと前記1段吸収サイクルはそれぞれ前記再生器と前記凝縮器と前記高温吸収器とを共用して運転するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1段吸収サイクルと2段吸収サイクルを備えた吸収冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収式冷凍機は、1組の蒸発器と吸収器が対になった1段吸収サイクルで構成されている。また、特許文献1と2に示すように2段吸収サイクルを採用した吸収式冷凍機では、2組の蒸発器と吸収器が対になって構成されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−68816号公報(第8頁、第1図、第2図)
【特許文献2】特開2009−168358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再生器が1つで構成される吸収式冷凍機において、7℃の冷水を発生させるために必要な熱源温度は、1組の蒸発器と吸収器からなる一般的な1段吸収サイクルでは約90℃である。ところが、この1段吸収サイクルでは冷却水温度にもよるが、熱源温度が90℃未満であった場合には、発生できる冷水温度は7℃より高くなってしまう。
【0005】
一方、特許文献1や2に示す2組の蒸発器と吸収器からなる2段吸収サイクルでは、熱源温度が約70℃であっても7℃の冷水を発生させることができ、1段吸収サイクルよりも熱源温度を低くできる。
【0006】
しかし、熱源温度が約70〜90℃まで変化するような場合に対応しようとすると、1段吸収サイクルと2段吸収サイクルの2台の吸収式冷凍機で構成されたものが理想的である。しかしながら2台の吸収式冷凍機が組み合わされた場合は大型化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、熱源温度が変化しても1台で対応できるコンパクトな吸収式冷凍機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、水である媒体の蒸発による気化熱で伝熱管内の水を冷却する蒸発器と、この蒸発器で蒸発した水蒸気を溶液に吸収させる吸収器と、前記溶液を加熱して吸収された水蒸気を蒸発させて高い濃度の溶液に再生する再生器と、この再生器によって蒸発した前記水蒸気を冷却水と熱交換させて凝縮させる凝縮器とからなる吸収式冷凍機において、前記再生器と前記凝縮器と低温蒸発器と低温吸収器と高温蒸発器と高温吸収器とからなる2段吸収サイクルと、前記再生器と前記凝縮器と前記蒸発器と前記高温吸収器とからなる1段吸収サイクルとを備え、前記2段吸収サイクルと前記1段吸収サイクルとを切り替えて運転させる制御装置を設けてなり、この制御装置は前記2段吸収サイクルと前記1段吸収サイクルはそれぞれ前記再生器と前記凝縮器と前記高温吸収器とを共用して運転することにより達成される。
【0009】
前記1段吸収サイクルと前記2段吸収サイクルは冷媒ポンプと第1のバルブと第2のバルブとを備え、前記冷媒ポンプから吐出された冷媒は途中分岐させ、一方は第1のバルブを介して前記低温蒸発器と前記高温蒸発器とに供給できるように配管され、他方は第2のバルブを介して前記蒸発器に供給できるように配管されるとともに、前記制御装置は前記再生器の熱源入口部に設けた熱源温度を検出する熱源温度センサーで検出された温度を基に、前記第1のバルブと前記第2のバルブの開閉を制御することにより達成される。
【0010】
前記低温吸収器と前記高温吸収器の底部は第3のバルブを介した接続配管で接続され、
前記制御装置は前記再生器の熱源入口部に設けた熱源温度を検出する熱源温度センサーで検出された温度を基に、前記第3のバルブの開閉を制御することにより達成される。
【0011】
前記制御装置により前記熱源温度センサーで検出される熱源温度が所定温度より低い場合は前記第1のバルブを開け、前記第2のバルブを閉じることにより前記低温蒸発器と前記高温蒸発器とに冷媒を供給し、前記熱源温度センサーで検出される熱源温度が所定温度より高い場合には前記第1のバルブを閉じ、前記第2のバルブを開けることにより前記蒸発器に冷媒を供給することにより達成される。
【0012】
前記再生器と接続する熱源入口部の配管途中に熱源加熱器を設けてなり、
前記制御装置は任意に設定される冷水出口温度と冷水出口温度を検出する冷水温度センサーで検出される温度との温度差から前記熱源加熱器の加熱量を調節することにより達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱源温度が変化しても1台で対応できるコンパクトな吸収式冷凍機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を備えた吸収式サイクルの系統図である。
【図2】図1の一実施例である水冷循環経路と他の循環経路を示す図である。
【図3】本発明の他の実施例を備えた吸収式サイクルの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
さて、吸収式冷凍機は廃熱が発生する工場の空調機器等に利用されており、特に大量の廃熱が発生する製鉄所や製紙工場などではその需要が高い。この種吸収式冷凍機は廃熱を熱源とし、水を冷媒として空調機器に利用できるため、近年特に地球環境の面及び省エネの面からも注目されている。
【0016】
空調機器は吸収式冷凍サイクルで得られた冷水を冷却媒体とし、この冷却媒体をパイプに通して空調機器の内部に循環させ、ファンでパイプに風を吹付けることによって冷風を室内に導入するものである。このような吸収式冷凍機で発生させる冷水の温度は7℃であることが望ましい。
【0017】
しかし従来のように一組の蒸発器と吸収器とからなる1段吸収サイクルでは、90℃以下の廃熱を再生器の熱源とした場合、得られる冷水の温度が7℃以上となってしまい空調機器としては所望の室温を安定的に確保することができない。
【0018】
そこで、特許文献1と2にも示したように2組の蒸発器と吸収器からなる2段吸収サイクルを採用すると、再生に必要な熱源温度が約70℃であっても7℃の冷水を得ることができる。一方,2段吸収サイクルは,凝縮器で凝縮した冷媒を低温蒸発器と高温蒸発器に分けて供給する必要があるため,凝縮器で凝縮した冷媒を1つの蒸発器で利用できる1段吸収サイクルより効率が低下する。
【0019】
つまり,熱源温度が変化しても7℃の冷水を得るためには,熱源温度が低く約70℃では2段吸収サイクル,熱源温度が高い約90℃では効率の良い1段吸収サイクルで運転できることが望ましい。
【0020】
しかし,現状では1段吸収サイクルと2段吸収サイクルを1台で実現できる吸収式冷凍機はないため,再生に必要な熱源温度が約70℃〜90℃に変化するような条件下の場合に対応しようとすると、1段吸収サイクルと2段吸収サイクルの2台の吸収式冷凍機が必要となる。
【0021】
そこで発明者らは1段吸収サイクルと2段吸収サイクルを選択的に切替えることを検討した。その結果、再生器と凝縮器と高温吸収器を共用することによって1段吸収サイクルと2段吸収サイクルの切替え可能なコンパクトな吸収式冷凍機を考えたものである。
【0022】
以下本発明の実施例を図にしたがって説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の一実施例を備えた吸収式冷凍機のサイクル系統図である。
【0024】
図1において、吸収式冷凍機は再生器1、凝縮器4、高温吸収器7、高温蒸発器15と低温吸収器12からなる一体型蒸発吸収器11、低温蒸発器18、高温吸収器7に隣接する蒸発器50、溶液熱交換器32、33、溶液ポンプ29、30、31、冷媒ポンプ21などを備えている。
【0025】
再生器1内には複数本の伝熱管3が備えられており、伝熱管3の上部には溶液散布装置2が配置されている。凝縮器4の内部には複数本の伝熱管5が備えられており、再生器1と凝縮器4は蒸気通路6で連通されている。再生器1の底部は溶液ポンプ31と溶液熱交換器33を介して高温吸収器7の上部に設けられた溶液散布装置8と配管で接続されている。
【0026】
高温吸収器7の内部には水平配置された複数本の伝熱管9が配置されている。高温吸収器7下部には溶液貯留部35が配置され、溶液貯留部35の底部は溶液ポンプ30、溶液熱交換器32を介して低温吸収器12の上部に設けられた溶液散布装置13と配管で接続されている。
【0027】
高温蒸発器15は垂直に配置された複数本の伝熱管17の管内に構成されており、伝熱管17の上下とも開口し、エリミネータ10を介して高温吸収器7と連通する構成となっている。また、伝熱管17の上部開口部側に冷媒散布装置16が配置されている。また、高温蒸発器15下部には冷媒貯留部37が配置され、冷媒貯留部37の底部は配管22が冷媒ポンプ21の吸込側に接続され、冷媒ポンプ21の吐出側に接続された配管23が途中分岐し、一方が配管24で第1のバルブ25介して途中さらに分岐し、配管26で低温蒸発器18の冷媒散布装置19と配管27で高温蒸発器15の冷媒散布装置16に接続されている。もう一方は、配管54で第2のバルブ55を介して蒸発器50の冷媒散布装置51に接続されている。
【0028】
また、高温蒸発器15下部の冷媒貯留部37の底部は、絞り34を介して凝縮器4の底部と配管で接続されるとともに、連通管28を介して低温蒸発器18の底部と接続されている。さらに、冷媒貯留部37の底部は連通管56で蒸発器50の底部と接続されている。
【0029】
低温吸収器12は伝熱管17の管外に構成されており、上部には伝熱管17が貫通し伝熱管17の外面に溶液を供給する溶液散布装置13が備えられている。低温吸収器12下部には溶液貯留部36が設置され、溶液貯留部36の底部は溶液ポンプ29、溶液熱交換器32、33を介して、再生器1の上部に設けられた溶液散布装置2と配管で接続されている。さらに、溶液貯留部36の底部は第3のバルブ58を介した連通管57で高温吸収器7下部の溶液貯留部35の底部と接続されている。
【0030】
低温蒸発器18の内部には水平配置された複数本の伝熱管20が備えられており、上部には冷媒散布装置19が配置され、エリミネータ14を介して低温吸収器12と連通している。
【0031】
蒸発器50の内部には水平配置された複数本の伝熱管52が備えられており、上部には冷媒散布装置51が配置され、エリミネータ53を介して高温吸収器7と連通している。
【0032】
また、再生器1の熱源となる温水配管には三方弁62が設置され、伝熱管3に供給する温水流量を調節できるようになっている。
【0033】
また、低温蒸発器18の伝熱管20内を流れる冷水の出口配管に冷水温度センサー60、再生器1の伝熱管3内を流れる温水の入口配管に温水温度センサー61が設置される。
【0034】
また、蒸発器50の冷水出口Aと低温蒸発器18の冷水入口Aが配管で接続され、冷水は蒸発器50、低温蒸発器18の順で流れる。
【0035】
また、冷水温度センサー60と温水温度センサー61は制御装置80と接続するとともに、第1のバルブ25、第2のバルブ55、第3のバルブ58、三方弁62、溶液ポンプ30が制御装置80と接続されている。
【0036】
このように構成した吸収式冷凍機の動作は以下の通りである。
【0037】
先ず2段吸収サイクル運転について説明すると、2段吸収サイクルでは第1のバルブ25を開け、第2のバルブ55と第3のバルブ58を閉じる。
【0038】
再生器1の溶液散布装置2から散布された溶液は伝熱管3上で管内を流れる温水と熱交換して加熱され、冷媒蒸気を発生し、溶液は濃縮される。濃縮された溶液は、溶液ポンプ31により溶液熱交換器33に送られ、低温吸収器12からの溶液と熱交換して冷却され、高温吸収器7の溶液散布装置8に送られる。
【0039】
高温吸収器7において溶液散布装置8から散布された溶液は伝熱管9上で高温蒸発器15からの冷媒蒸気を吸収する。ここで、冷媒吸収により発生した吸収熱は伝熱管9内を流れる冷却水と熱交換し冷却される。冷媒蒸気を吸収して濃度が薄くなった溶液は高温吸収器7下部の溶液貯留部35に一旦溜められて、溶液ポンプ30により溶液熱交換器32に送られる。溶液熱交換器32で低温吸収器12からの溶液と熱交換して冷却され、低温吸収器12の溶液散布装置13に送られる。
【0040】
低温吸収器12において溶液散布装置13から伝熱管17の外面に供給された溶液は、垂直配置された伝熱管17の外面を流下し、低温蒸発器18からの冷媒蒸気を吸収する。冷媒吸収により発生した吸収熱は、伝熱管17内を流下する冷媒の加熱に利用される。冷媒蒸気を吸収して濃度がさらに薄くなった溶液は低温吸収器12下部の溶液貯留部36に一旦溜められて、溶液ポンプ29により溶液熱交換器32に送られる。溶液熱交換器32で高温吸収器7からの溶液と熱交換して温度上昇した溶液は、溶液熱交換器33で再生器1からの溶液と熱交換してさらに温度上昇したのち、再生器1の溶液散布装置2に送られる。
【0041】
一方、再生器1で発生した冷媒蒸気は、蒸気通路6を通って凝縮器4に送られ、伝熱管5の表面で凝縮液化する。凝縮液化で発生した凝縮熱は、伝熱管5内を流れる冷却水と熱交換し冷却される。凝縮液化した冷媒は凝縮器4の底部から絞り34を通って高温蒸発器15下部の冷媒貯留部37に一旦溜められる。
【0042】
高温蒸発器15下部の冷媒貯留部37に溜められた冷媒は、冷媒ポンプ21で配管23、24、第1のバルブ25を通り途中で分岐し、配管27、26で高温蒸発器15上部の冷媒散布装置16と低温蒸発器18上部の冷媒散布装置19に送られる。
【0043】
高温蒸発器15の冷媒散布装置16の冷媒は、伝熱管17の上部の開口部から管内壁に沿って流下し、管外を流下する溶液からの吸収熱で加熱され蒸発する。蒸発した冷媒蒸気は、伝熱管17の上下の開口部からエリミネータ10を通って高温吸収器7へ送られる。伝熱管17の内面で蒸発しきれなかった冷媒は高温蒸発器15下部の冷媒貯留部37に溜められる。
【0044】
低温蒸発器18の冷媒散布装置19の冷媒は、伝熱管20に散布され、伝熱管20内を流れる冷水から熱を奪って蒸発する。蒸発した冷媒蒸気はエリミネータ14を通って低温吸収器12に送られる。伝熱管20上で蒸発しきれなかった冷媒は、連通管28を通って高温蒸発器15の冷媒貯留部37に送られる。
【0045】
次に、1段吸収サイクルについて説明する。1段吸収サイクルでは、第1のバルブ25を閉じ、第2のバルブ55と第3のバルブ58を開けるとともに、溶液ポンプ30を停止する。再生器1と凝縮器4の動作は2段吸収サイクルと同じなので省略する。
【0046】
再生器1で濃縮された溶液は、溶液ポンプ31で溶液熱交換器33を介して高温吸収器7の溶液散布装置8に送られる。溶液散布装置8から散布された溶液は伝熱管9上で蒸発器50からの冷媒蒸気を吸収する。ここで、冷媒吸収により発生した吸収熱は伝熱管9内を流れる冷却水と熱交換し冷却される。冷媒蒸気を吸収して濃度が薄くなった溶液は高温吸収器7下部の溶液貯留部35に一旦溜められて、連通管57を通って低温吸収器12下部の溶液貯留部36に送られる。溶液貯留部36の溶液は、溶液ポンプ29で再生器1の溶液散布装置2に送られる。
【0047】
一方、凝縮器4で凝縮液化した冷媒は、絞り34を通り高温蒸発器15下部の冷媒貯留部37に送られる。冷媒貯留部37の冷媒は、配管22を通り冷媒ポンプ21で配管23、54を通り第2のバルブ55を通って蒸発器50の冷媒散布装置51に送られる。冷媒散布装置51で散布された冷媒は、伝熱管52内を流れる冷水から熱を奪って蒸発する。蒸発した冷媒はエリミネータ53を通って高温吸収器7に送られる。伝熱管52上で蒸発しきれなかった冷媒は、連通管56を通って高温蒸発器15下部の冷媒貯留部37に送られる。
【0048】
以上説明したように本発明に係る吸収式冷凍機は、第1のバルブ25、第2のバルブ55、第3のバルブ58の開閉、溶液ポンプ30の起動と停止を制御装置80で制御することで2段吸収サイクルと1段吸収サイクルを選択的に切替えて運転することができる。このとき、再生器4と凝縮器4と高温吸収器7は2段吸収サイクルと1段吸収サイクルの両サイクル運転においても共用されるようになっている。
【0049】
制御装置80は、温水入口温度を温水温度センサー61で検出し、例えば85℃以上であれば1段吸収サイクルで運転し、約70〜85℃の範囲であれば2段吸収サイクルで運転するように選択的に切替えられることになる。また、制御装置80は、冷水出口温度を冷水温度センサー60で検出し、例えば7℃になるように三方弁62で再生器1への温水流量を調節する。上記のように、本実施例の吸収式冷凍機では、再生器1の熱源となる温水温度が変化しても1台の吸収式冷凍機での対応が可能となる。
【0050】
このように本実施例によれば、1段吸収サイクルと2段吸収サイクルの2台の吸収冷凍機で対応する場合よりコスト低減を図れる。また、1段吸収サイクルでは連通管57の第3のバルブ58を開けることによって、溶液ポンプ30を停止させても、高温吸収器7の溶液貯留部35、連通管57、低温吸収器12の溶液貯留部36の順で溶液を循環させて溶液ポンプ29に送ることができるので溶液ポンプ30分の消費電力の低減が図れる。
【0051】
さらに図1に示す吸収式冷凍機では、3つの蒸発器に対して、高温蒸発器15の冷媒貯留部37出口部の冷媒ポンプ21の1台で対応している。これは、低温蒸発器18と蒸発器50の底部を、高温蒸発器15の底部より高くすることで、運転中は低温蒸発器18と蒸発器50には冷媒を溜めない構成とした。これにより、低温蒸発器18と蒸発器50の冷媒貯留部と冷媒ポンプが不要となり、コスト低減と消費電力の削減が図れる。しかし、これに限らず3つの蒸発器に冷媒散布するための冷媒ポンプは、低温蒸発器18の出口部とし、低温蒸発器18の底部より高温蒸発器15と蒸発器50の底部を高くすることで、図1と同様の動作と効果を得ることができる。さらに、3つの蒸発器に冷媒散布するための冷媒ポンプは、蒸発器50の出口部とし、蒸発器50の底部より低温蒸発器18と高温蒸発器15の底部を高くすることで、図1と同様の動作と効果を得ることができる。
【0052】
また、図1では冷水の循環経路を蒸発器50、低温蒸発器18の順で循環する構成としたが、冷水の圧力損失が増大するような場合には、これに限らず、図2に示すように制御装置80でバルブ92とバルブ93の開閉を調節して、1段吸収サイクル時には蒸発器50のみに冷水を流れるようにし、2段吸収サイクル時には低温蒸発器18のみに流れるようにしても良い。
【0053】
換言すると、1段吸収サイクル運転と2段吸収サイクル運転の両方を実現するために再生器と凝縮器と低温蒸発器と低温吸収器と高温蒸発器と高温吸収器による2段吸収サイクル運転と、再生器と凝縮器と蒸発器と高温吸収器とによる1段吸収サイクル運転とを選択的に切替えて1段吸収サイクル運転と2段吸収サイクルを同時に運転しないようにし、お互いの運転で再生器と凝縮器と高温吸収器を共有するようにしたものである。
【0054】
つまり、廃熱温度が70℃〜90℃に変化する条件であっても温度変化に応じて1段吸収サイクル運転と2段吸収サイクル運転を選択的に切替えられるのでコンパクトな吸収式冷凍機を実現できたものである。
【実施例2】
【0055】
図3は本発明の吸収式冷凍機の一実施例を示す他のサイクル系統図である。本実施例は、サイクルの主な構成要素は図1の実施例と同様であり、再生器1の温水配管部分が異なっている。以下の説明で図1と同様の部位については同一符号で示す。
【0056】
以下、図1の実施例と異なっている構成及び作用について説明する。
【0057】
再生器1の温水配管の入口部において、三方弁62と温水温度センサー61との間に温水加熱器70を設けた構成とした。また、温水加熱器70は制御装置80と接続されている。
【0058】
例えば、冷水出口温度を7℃と設定した場合に、冷水出口温度を検出する冷水温度センサー60が7℃より高くなり、設定温度と実測値に温度差が生じ冷凍能力不足が判断されると、冷水温度を7℃にするために必要な温水入口温度を制御装置80で算出し、算出した温水温度となるように温水温度センサー61で温水入口温度を検出しながら制御装置80で温水加熱器70の加熱量を調節する。
【0059】
これにより、1段吸収サイクルと2段吸収サイクルを切替える再生器1へ流入する温水温度を、実施例1の85℃より低くしても温水加熱器70を起動させることで、効率の良い1段吸収サイクルでの運転が可能となる。また、2段吸収サイクルでも温水温度が実施例1で示した下限の70℃より低くなっても、温水加熱器70を起動させることにより冷水出口温度7℃以上の設定に対応した運転が可能になる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・再生器、2、8、13・・・溶液散布装置、3、5、9、17、20、52・・・伝熱管、4・・・凝縮器、7・・・高温吸収器、10、14、53・・・エリミネータ、12・・・低温吸収器、15・・・高温蒸発器、16、19、51・・・冷媒散布装置、18・・・低温蒸発器、21・・・冷媒ポンプ、25・・・第1のバルブ、55・・・第2のバルブ、58・・・第3のバルブ、28、57・・・連痛管、29、30、31・・・溶液ポンプ、32、33・・・溶液熱交換器、35、36・・・溶液貯留部、37・・・冷媒貯留部、60・・・冷水温度センサー、61・・・温水温度センサー、62・・・三方弁、70・・・温水加熱器、80・・・制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水である媒体の蒸発による気化熱で伝熱管内の水を冷却する蒸発器と、この蒸発器で蒸発した水蒸気を溶液に吸収させる吸収器と、前記溶液を加熱して吸収された水蒸気を蒸発させて高い濃度の溶液に再生する再生器と、この再生器によって蒸発した前記水蒸気を冷却水と熱交換させて凝縮させる凝縮器とからなる吸収式冷凍機において、
前記再生器と前記凝縮器と低温蒸発器と低温吸収器と高温蒸発器と高温吸収器とからなる2段吸収サイクルと、前記再生器と前記凝縮器と前記蒸発器と前記高温吸収器とからなる1段吸収サイクルとを備え、
前記2段吸収サイクルと前記1段吸収サイクルとを切り替えて運転させる制御装置を設けてなり、
この制御装置は前記2段吸収サイクルと前記1段吸収サイクルはそれぞれ前記再生器と前記凝縮器と前記高温吸収器とを共用して運転することを特徴とする吸収式冷凍機。
【請求項2】
請求項1記載の吸収式冷凍機において、
前記1段吸収サイクルと前記2段吸収サイクルは冷媒ポンプと第1のバルブと第2のバルブとを備え、
前記冷媒ポンプから吐出された冷媒は途中分岐させ、一方は第1のバルブを介して前記低温蒸発器と前記高温蒸発器とに供給できるように配管され、他方は第2のバルブを介して前記蒸発器に供給できるように配管されるとともに、
前記制御装置は前記再生器の熱源入口部に設けた熱源温度を検出する熱源温度センサーで検出された温度を基に、前記第1のバルブと前記第2のバルブの開閉を制御することを特徴とする吸収式冷凍機。
【請求項3】
請求項2記載の吸収式冷凍機においおいて、
前記低温吸収器と前記高温吸収器の底部は第3のバルブを介した接続配管で接続され、
前記制御装置は前記再生器の熱源入口部に設けた熱源温度を検出する熱源温度センサーで検出された温度を基に、前記第3のバルブの開閉を制御することを特徴とする吸収式冷凍機。
【請求項4】
請求項2又は3のいずれかに記載の吸収式冷凍機において、
前記制御装置により前記熱源温度センサーで検出される熱源温度が所定温度より低い場合は前記第1のバルブを開け、前記第2のバルブを閉じることにより前記低温蒸発器と前記高温蒸発器とに冷媒を供給し、前記熱源温度センサーで検出される熱源温度が所定温度より高い場合には前記第1のバルブを閉じ、前記第2のバルブを開けることにより前記蒸発器に冷媒を供給することを特徴とする吸収式冷凍機。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の吸収式冷凍機において、
前記再生器と接続する熱源入口部の配管途中に熱源加熱器を設けてなり、
前記制御装置は任意に設定される冷水出口温度と冷水出口温度を検出する冷水温度センサーで検出される温度との温度差から前記熱源加熱器の加熱量を調節することを特徴とする吸収式冷凍機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−163615(P2011−163615A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25372(P2010−25372)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】