説明

吸収性物品の製造方法及び吸収性物品

【課題】潰れ癖がつき難く復元性及び形状維持性に優れる吸収性物品用棒状体及びその製造技術を提供する。
【解決手段】上記課題は、連続棒状の圧縮復元性芯材22を供給して長手方向に沿って搬送しつつ、ライン下流側に向かうにつれて棒状体直径まで直径が減少する裁頭円錐筒状のガイド体100の中心に沿って通す一方で、このガイド体100の外周面に沿って連続帯状の外周シート21を供給し、ガイド体100を抜け出た芯材22の外周面に外周シート21を螺旋状に巻き付けることにより連続棒状体20を形成し、吸収性物品の本体製造ラインに供給され、所定の切断予定個所20xで切断された後にトップシート30に固定し、しかる後に個々のおむつに切断する、製造方法により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の製造方法及び吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品においては、装着者の身体表面に柔軟にフィットして漏れ防止を図るため、あるいは吸収特性を改善するため等の目的で柔軟性を有する棒状体を用いることが提案されている。
【0003】
例えば前者の目的のものとして、背側端部に、シートを細長筒状に形成してなる外周シート内に圧縮復元性芯材を詰め入れてなる棒状のバリヤー体を幅方向に沿って設けたもの(特許文献1参照)や、側部立体ギャザーを棒状(筒状)にしたもの(特許文献2参照)があり、後者の目的のものとしては、吸収体として棒状体を内蔵したもの(特許文献3参照)がある。これらは、帯状部材又は部分を幅方向に丸めて筒状にし、重なり合う両側部を長手方向に沿って接合した構造を基本とし、必要に応じて内部に圧縮復元性を有する材料等を詰めたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−34270号公報
【特許文献2】特開2009−6065号公報
【特許文献3】特開2003−265526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の吸収性物品用棒状体は、潰れ癖がつき易く、所期の形状を維持し難いものであった。また、従来の吸収性物品用棒状体を製造する場合、棒状体の径を変更するためには外周部分を構成する資材の寸法を変える必要があり、資材コストが嵩むという問題点もあった。
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、潰れ癖がつき難く復元性及び形状維持性に優れる棒状体及びその製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
連続棒状の圧縮復元性芯材をその長手方向に沿って搬送しつつ、この芯材の外周面に連続帯状の外周シートを螺旋状に巻き付けて、前記芯材を螺旋状の外周シートで包装してなる連続棒状体を形成し、
この連続棒状体を吸収性物品構成部材に固定した後に所定長さに切断するか、又はこの連続棒状体を所定長さに切断した後に吸収性物品構成部材に固定する、
ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【0008】
(作用効果)
このように芯材に対して外周シートを螺旋状に巻き付けることにより棒状体を構成すると、外周シートがコイルばねのように長手方向及び周方向の双方に連続する結果、あらゆる方向に対する復元性が高まり、特に径方向の潰れ癖が付き難くなり、復元性及び形状維持性に優れたものとなる。また、供給する外周シートの幅を変更せずとも、芯材径の変更だけで棒状体の径を変更でき、資材コスト増を抑制することができるとともに、同一製造ラインを利用して寸法の異なる製品を製造する際、製造ラインの準備が容易となる。
【0009】
<請求項2記載の発明>
前記外周シートの巻き付けに際して、前記外周シートを先行外周シートの後縁部に対して後続外周シートの前縁部を重ね合わせて相互に直接的又は間接的に接合する、請求項1記載の吸収性物品の製造方法。
【0010】
(作用効果)
このように外周シートの縁部相互を重ねて接合することにより、外周シートの重なり合う部分がコシの強いコイル状骨格となり、柔軟でありながら形状維持性及び復元性に優れたものとなる。
【0011】
<請求項3記載の発明>
前記外周シートの巻き付けに際して、前記重なり合う先行外周シートの後縁部と後続外周シートの前縁部との間に、外周シートよりも幅の狭い補強シートを連続帯状の補強シートを巻き込み、前記重なり合う先行外周シートの後縁部と後続外周シートの前縁部との間に前記補強シートを挟持固定する、請求項1又は2記載の吸収性物品の製造方法。
【0012】
(作用効果)
このように、外周シートの重なり部分に、補強シートを巻き込むことで、より潰れ難く、より復元性及び形状維持性に優れるようになる。特に、補強シートとして高目付けの不織布やフィルムなどの腰のある素材を用いると、補強シートがコイル状の骨格となり、を復元性及び形状維持性がより一層のものとなる。
【0013】
<請求項4記載の発明>
前記外周シートの巻き付けに先立って、前記芯材の外周面における長手方向に沿って連続状の弾性伸縮部材を供給した後、その外側に前記外周シートの巻き付けを行い、前記弾性伸縮部材を前記外周シートと前記芯材の外周面との間に挟持固定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【0014】
(作用効果)
このように弾性伸縮部材をその連続方向に伸長した状態で外周シートと芯材の外周面との間に挟持固定すると、弾性伸縮部材を有する側からの潰れに対して弾性伸縮部材の収縮力が復元力として加勢し、棒状体の形状復元性がより一層のものとなるため好ましい。
【0015】
<請求項5記載の発明>
前記芯材は、短繊維の積繊体、連続繊維の束状体、シート状の発泡ウレタンフォーム、ゴム若しくは不織布を折り曲げる若しくは丸めてなるもの、又は筒状若しくは棒状の発泡ウレタンフォーム若しくはゴムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【0016】
(作用効果)
本発明の圧縮復元性芯材として本項記載のようなものを用いると、棒状体の弾力性が高くなり、動きに対する追従性が高まるため好ましい。
【0017】
<請求項6記載の発明>
肌当接面における排泄位置の前後左右の少なくとも一個所に、排泄物の移動を遮る棒状体が設けられた吸収性物品において、
前記棒状体は、棒状の圧縮復元性芯材の外周面に帯状の外周シートが螺旋状に巻き付けられ、前記芯材が螺旋状の外周シートで包装されて形成されたものである、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
このように芯材に対して外周シートを螺旋状に巻き付けることにより棒状体を構成すると、外周シートがコイルばねのように長手方向及び周方向の双方に連続する結果、あらゆる方向に対する復元性が高まり、特に径方向の潰れ癖が付き難くなり、復元性及び形状維持性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、潰れ癖がつき難く、復元性及び形状維持性に優れた吸収性物品用棒状体となる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】テープタイプ使い捨ておむつの製造フローの概略図である。
【図2】テープタイプ使い捨ておむつの製造フローの概略図である。
【図3】テープタイプ使い捨ておむつの製造フローの概略図である。
【図4】テープタイプ使い捨ておむつの断面概略図である。
【図5】テープタイプ使い捨ておむつの断面概略図である。
【図6】テープタイプ使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図7】図6の2−2線断面図である。
【図8】図6の3−3線断面図である。
【図9】図6の4−4線断面図である。
【図10】図6の5−5線断面図である。
【図11】棒状体の他の例を示す要部断面図である。
【図12】棒状体の他の例を示す要部断面図である。
【図13】棒状体の他の例を示す要部断面図である。
【図14】棒状体の他の例を示す要部断面図である。
【図15】棒状体の他の例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<製造方法の例について>
図1は、テープタイプ使い捨ておむつ(パッドタイプ使い捨ておむつ、あるいは生理用ナプキン等も略同様となる)を製造する際の製造方法の一例を示している。すなわち先ず、連続棒状の圧縮復元性芯材22を供給して長手方向に沿って搬送しつつ、ライン下流側に向かうにつれて棒状体直径まで直径が減少する裁頭円錐筒状のガイド体100の中心に沿って通す一方で、このガイド体100の外周面に沿って連続帯状の外周シート21を供給し、ガイド体100を抜け出た芯材22の外周面に外周シート21を螺旋状に巻き付けることにより、連続棒状体20を形成する。
【0022】
圧縮復元性芯材22の素材としては、連続繊維の束状体(特に捲縮フィラメントのトウを開繊して得られる嵩高な捲縮フィラメントの集合体)、パルプ等の短繊維を積繊等して得られる短繊維の積繊体、発泡ウレタンフォーム、ゴム、不織布等を用いることができる。連続繊維の束状体及び短繊維の積繊体としては、後述するテープタイプ使い捨ておむつの吸収体56に関して例示されるものを好適に用いることができる。
【0023】
圧縮復元性芯材22の形状は適宜定めることができ、図9及び図11に示すように棒状のものを用いる他、図12に示すようにシート状のものを折り曲げる若しくは丸めて用いたり、図13に示すように筒状のものを用いたりすることもできる。これらの形態のうち、棒状の形態に用いる素材としては、捲縮フィラメント集合体やステープル集合体等の繊維集合体、発泡ウレタンフォームが好適であり、シート状の形態に用いる素材としては、発泡ウレタンフォーム、ゴム、不織布が好適であり、筒状の形態に用いる素材としては、発泡ウレタンフォーム、ゴムが好適である。
【0024】
外周シート21としては、圧縮復元性芯材22の変形を阻害し難い程度に十分に柔軟なものが好ましく、この観点から、初期厚みT0が0.05〜1.0mm、特に0.1〜0.5mmであり、曲げ剛さBが1〜100gf・cm2/cm、特に4〜20gf・cm2/cmであり、且つ曲げヒステリシス2HBが1〜20gf・cm/cm、特に2〜10gf・cm/cmであるシートが好ましい。曲げ剛さBは大きい程曲げ剛いことを意味し、曲げヒステリシス2HBは大きい程曲げ回復性が悪いことを意味する。曲げ剛さBおよび曲げヒステリシス2HBは、KES(Kawabata's Evaluation System for Fabrics)に基づき、KES-FB2-AUTO-A 自動化純曲げ試験機を用いて計測する。測定は20cm×20cmの試料を間隔1cmのチャックに把持し、曲率K=−2.5〜+2.5cm-1の範囲で、変形速度0.50cm-1/secの等速度曲率の純曲げを行なう。Bは試料の単位長さ当りの曲げモ−メントMと曲率Kとの曲線の傾斜を表わす。ここでは、曲率K=0.5と1.5との間の傾斜、曲率K=−0.5と−1.5との間の傾斜を平均した値を用いる。また2HBは、曲率K=0.5〜1.5及び曲率K=−0.5〜−1.5の範囲におけるヒステリシス幅の平均値のことである。ここでは曲率K=0.5,1.5,−0.5,−1.5の平均値を用いる。
【0025】
外周シート21の素材としては、棒状体20を排泄物の遮断体とする場合には染み出しを防止する観点から撥水性の各種不織布(SMS、スパンボンド、メルトブローン、エアスルー等)が好ましいが、棒状体20を吸収要素の一部として用いたり、排泄物の遮断体に吸収性を持たせる場合には、親水性不織布等の液透過性シートを用いるとともに、圧縮復元性芯材22として液吸収性材料を用いることも可能である。この場合における親水性不織布としてはエアレイド不織布や、スパンボンド不織布、スパンレース不織布が好適であり、また、圧縮復元性芯材22としては連続繊維の束状体や短繊維の積繊体が好適であり、これに必要に応じて粒子状又は繊維状の高吸収性ポリマー(後述するテープタイプ使い捨ておむつで例示されるものを好適に用いることができる)を混合することができる。
【0026】
外周シート21は、図示例のように、芯材22に接合する他、先行外周シート21の後縁部に対して後続外周シート21の前縁部を重ね合わせて相互に直接的又は間接的に接合し、筒状に一体化することもでき、両者を併用することもできる。これらの接合は、対象素材が熱融着性素材である場合にはヒートシールや超音波シールを用いても良いが、ホットメルト接着剤で接合するのが好ましい。図示例では、外周シート21の巻き付けに先立って、塗布装置101により外周シート21の側縁部にホットメルト接着剤を塗布しておき、外周シート21の巻き付けにより先行外周シート21の後縁部と後続外周シート21の前縁部とをホットメルト接着剤で接着するようになっている。また、図中の符号102は外周シート21と芯材22とを接着するためのホットメルト接着剤の塗布装置を示している。
【0027】
棒状体20をいわゆる立体ギャザー等の漏れ防止壁として用いる場合、棒状体20の形状維持性及び形状復元性が重要となる。この点、図示例のように外周シート21の重なり合う部分を設けると、この部分がコシの強いコイル状骨格となり、柔軟でありながら形状維持性及び復元性に優れた棒状体20とすることができる。外周シート21だけでは棒状体20のコシが不足する場合には、図2に示すように、外周シート21の巻き付けに際して、重なり合う先行外周シート21の後縁部と後続外周シート21の前縁部との間に、連続帯状の補強シート24を巻き込み、重なり合う先行外周シート21の後縁部と後続外周シート21の前縁部との間に補強シート24を挟持固定することも可能である。この場合、補強シート24の固定手段としては、外周シート21の固定手段101を利用しても、また別途、ホットメルト接着剤やヒートシール等を適用して外周シート21又は芯材22に固定しても良い。
【0028】
また、棒状体20の形状復元性を高めるために、図1〜図3に示すように、外周シート21の巻き付けに先立って、芯材22の外周面における長手方向に沿って連続状の弾性伸縮部材25を供給した後、その外側に外周シート21の巻き付けを行い、弾性伸縮部材を外周シート21と芯材22の外周面との間に挟持固定するのも好ましい形態である。この場合、弾性伸縮部材25は、棒状体20の周方向範囲のうち吸収性物品に対する固定側に設けることもできるが、非固定側に設けるのが好ましい。また、弾性伸縮部材25はその連続方向に伸長した状態で固定する他、非伸長状態又は伸長率150〜400%程度の弱伸長状態(また、用語「伸長率」は自然長を100%としたときの値を意味する。)で固定することもできる。弾性伸縮部材25としては、糸状、紐状等の細長状のものの他、シート状やネット状のものを用いることができ、また、棒状体20の周方向に間隔を空けて又は開けずに複数設けることができる。弾性伸縮部材25を外周シート21と芯材22の外周面との間に挟持固定すると、弾性伸縮部材25を有する側からの潰れに対して弾性伸縮部材25の収縮力が復元力として加勢し、棒状体20の形状復元性がより一層のものとなるため好ましい。特に弾性伸縮部材25が伸長状態で固定されていると、弾性伸縮部材25の存在部分と非存在部分との収縮差により棒状体20が弧状になり、脚周りや腰回り等の身体曲面に対して良好にフィットするという利点もある。図示例には、弾性伸縮部材25を外周シート21及び芯材22に固定するために弾性伸縮部材25にホットメルト接着剤を塗布する塗布装置103が示されているが、これに代えて、前述の外周シート21と芯材22とを接着するためのホットメルト接着剤を利用して弾性伸縮部材25を固定しても良い。
【0029】
次いで、外周シート21の巻き付けにより形成された連続棒状体20は、長手方向に所定の間隔を空けて設定された切断予定個所20xにおいて、その長手方向両側近傍を含む長手方向範囲20cを、ヒートシールや超音波シール、加熱エンボス加工等により厚み方向に圧縮するとともに圧縮状態に固定する。この工程は、製品における棒状体20の端部のほつれや芯材22の漏出を防止するためには実施するのが好ましいが、省略しても良い。
【0030】
このようにして形成された連続棒状体20は、吸収性物品の本体製造ラインに供給され、所定の切断予定個所20xで切断された後に吸収性物品構成部材30に固定されるか、又は吸収性物品構成部材30に固定した後に所定長さに切断される。このように芯材22に対して外周シート21を螺旋状に巻き付けることにより棒状体20を構成すると、外周シート21がコイルばねのように長手方向及び周方向の双方に連続する結果、あらゆる方向に対する復元性が高まり、特に径方向の潰れ癖が付き難くなり、復元性及び形状維持性に優れたものとなる。また、供給する外周シート21の幅を変更せずとも、芯材22径の変更だけで棒状体20の径を変更でき、資材コスト増を抑制することができるとともに、同一製造ラインを利用して寸法の異なる製品を製造する際、製造ラインの準備が容易となる。
【0031】
図1に示す例は、背側上端部に幅方向に沿う棒状体20を有するテープタイプ使い捨ておむつ(詳細は後述する)の製造を想定したものであり、本体製造ラインにおいて予め形成されたトップシート30、中間シート40、吸収要素50、液不透過性シート11、外装シート12の積層体に対して、連続棒状体20を切断回転装置111により所定の切断予定個所20xで個々の棒状体20に切断するとともに、切断により得られる個々の棒状体20をライン流れ方向に対して90度回転して貼りつけるものである。符号104は、棒状体20をトップシート30上に固定するためのホットメルト接着剤の間欠塗布装置を示している。
【0032】
他方、図3に示す例は、いわゆる側部立体ギャザー(後述のテープタイプ使い捨ておむつ参照)に代わるものとして棒状体20を設ける場合の製造を想定したものであり、本体製造ラインにおいて予め形成されたトップシート30、吸収要素50、液不透過性シート11、外装シート12の積層体に対して、その幅方向(ラインCD方向)両側部に、連続棒状体20をライン流れ方向に沿って供給して貼り付けた後、長手方向に所定の間隔を空けて設定された個々のおむつへの切断予定個所20xにおいて、その長手方向両側近傍を含む長手方向範囲20cを、ヒートシールや超音波シール、加熱エンボス加工等により厚み方向に圧縮するとともに圧縮状態に固定した後、切断装置112により切断予定個所20xで個々のおむつに切断すると同時に、併せて連続棒状体20を個々の棒状体20に切断するものである。符号105は、棒状体20をトップシート上に固定するためのホットメルト接着剤の塗布装置を示している。また、この製造方法により製造されるテープタイプ使い捨ておむつの断面概略図が図4に示されている。
【0033】
<吸収性物品の例について>
次に、上記製造方法により製造可能である吸収性物品の一例として、テープタイプ使い捨ておむつの例を説明する。図6〜図9はテープタイプ使い捨ておむつの一例を示している。図7、図8及び図9及び図10は、図6における2−2線断面、3−3線断面、4−4線断面及び5−5線断面をそれぞれ示した図である。各図において、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの前身頃両側部と後身頃量側部を重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った際に胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト開口部WO側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
【0034】
このテープタイプ使い捨ておむつは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収体56が介在する部分である吸収性本体部10と、この吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分である腹側エンドフラップ部FE及び背側エンドフラップ部BEとを有するものである。
【0035】
また、このテープタイプ使い捨ておむつは、腹側Fの上縁F1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の腹側サイドフラップ部FF,FFと、背側Bの上縁B1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の背側サイドフラップ部BF,BFとを備えている。また、背側サイドフラップ部BF,BFには、係止部材としてのファスニング片130がそれぞれ設けられている。
【0036】
より詳細には、吸収性本体部10ならびに背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収性本体部10においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収要素50、中間シート40、およびトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30および液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収要素50よりも前後方向および幅方向において若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより固着されている。また液不透過性シート11は透湿性のポリエチレンフィルム等からなり、トップシート30よりも若干幅広に形成されている。
【0037】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する側部立体ギャザー60,60が設けられており、この側部立体ギャザー60,60を形成するギャザーシート62,62が、背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの内面を含め、吸収性本体部10の幅方向外側の全体にわたり延在されている。
【0038】
以下、各部の素材および特徴部分について順に説明する
(外装シート)
外装シート12は吸収要素50を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。
【0039】
外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布12相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m2、特に15〜30g/m2のものが望ましい。
【0040】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0041】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0042】
(中間シート)
トップシート30を透過した排泄物を吸収体へ移動させ、逆戻りを防ぐために、トップシート30と吸収要素50との間に中間シート(セカンドシートもいわれる)40を設けることができる。この中間シート40は、排泄物を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した排泄物の吸収体からの逆戻りを防止し、トップシート30表面を肌触りを良くするものである。中間シート40は省略することもできる。
【0043】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材を用いることができる。中間シート40はトップシート30に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート40の素材はトップシート30と同程度の融点をもつものが好ましい。また、便中の固形分を透過させることを考慮するならば中間シート40に用いる繊維の繊度は5.0〜7.0dtexであるのが好ましいが、トップシート30における液残りが多くなる。これに対して、中間シート40に用いる繊維の繊度が1.0〜2.0dtexであると、トップシート30の液残りは発生し難いが、便の固形分が透過し難くなる。よって、中間シート40に用いる不織布の繊維は繊度が2.0〜5.0dtex程度とするのが好ましい。
【0044】
図示の形態の中間シート40は、吸収要素50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0045】
(側部立体ギャザー)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側に、使用面側に突出(起立)する側部立体ギャザー60、60を設けるのは好ましい。
【0046】
この側部立体ギャザー60は、実質的に幅方向に連続するギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向に沿って伸張状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このギャザーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、図6及び図7に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0047】
ギャザーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、液不透過性シート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。この固着部分のうち固着始端近傍の幅方向外側において、ギャザーシート62と外装シート12とが対向する部分のシート間に、前後方向に沿って糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材64がそれぞれ設けられている。
【0048】
脚周りにおいては、側部立体ギャザー60の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が糸ゴム63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム63の収縮力が作用するので、糸ゴム63の収縮力により側部立体ギャザー60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0049】
図示形態と異なり、ギャザーシート62の幅方向内側の部分における前後方向両端部を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分とこの基端側部分の幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0050】
他方、前述したとおり、この側部立体ギャザー60の代わりに棒状体20を内面の幅方向両側部に前後方向に沿って設けることができる。
【0051】
(吸収要素)
吸収要素50は、尿や軟便などの液を吸収保持する部分である。吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包装シート58とを有している。包装シート58は省略することもできる。吸収要素50は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して液不透過性シート11の内面に接着することができる。
【0052】
(吸収体)
吸収体56は、繊維52,52の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0053】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56は、図7に示すように高吸収性ポリマー粒子54,54…を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維52,52…の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
【0054】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維52,52…の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維52,52…の集合体を通り抜けて包装シート58上にある形態も排除されるものではない。
【0055】
高吸収性ポリマー粒子54とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子54の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子54としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子54の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0056】
高吸収性ポリマー粒子54としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0057】
高吸収性ポリマー粒子54の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子54の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0058】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0059】
この包装シート58は、図7のように、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包装シートの構成要素となる)。必要ならば、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0060】
(ファスニング片)
ファスニング片130は、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材からなるファスニング基材130Cの基部がおむつに取り付けられており、おむつから突出する先端側部分に腹側に対する係止部として、メカニカルファスナーのフック要素130Aが設けられている。フック要素130Aはファスニング基材130Cに接着剤により剥離不能に接合されている。
【0061】
本発明を適用するのが特に好ましい、水様便、軟便を頻繁に排泄する新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、ファスニング片130の取り付け部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さX1は10〜50mm、特に20〜40mmであるのが好ましく、前後方向長さY1は、20〜100mm、特に40〜80mmであるのが好ましい。また、ファスニング片130の先端側部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さX2は30〜80mm、特に40〜60mmであるのが好ましく、前後方向の長さY2は20〜70mm、特に25〜50mmであるのが好ましい。なお、ファスニング片130の一部または全部が例えば略テーパ形状をなし、前後方向長さY1,Y2や幅方向長さX1,X2が一定でない場合は、上記数値範囲は平均値にて定める。ファスニング片130の形状は、矩形形状などの左右対称形状でもよいが、幅広の取り付け部分と細長状の先端側部分からなる凸型形状であると、先端側部分の摘み部が摘みやすく、かつ左右の基部間の張力が広範囲に作用するため、好ましい。フック要素130Aは、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。フック要素130Aに代えて、ファスニング片130の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0062】
おむつの装着に際しては、背側サイドフラップ部BFを腹側サイドフラップ部FFの外側に重ねた状態で、ファスニング片を腹側F外面の適所に係止する。ファスニング片130の係止箇所の位置及び寸法は任意に定めることができる。新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、係止箇所は、前後方向20〜80mm、幅方向150〜300mmの矩形範囲とし、その上端縁と腹側上縁F1との高さ方向離間距離を0〜60mm、特に20〜50mmとし、かつ製品の幅方向中央とするのが好ましい。
【0063】
腹側Fにおけるファスニング片130の係止箇所には、係止を容易にするためにターゲットテープ74を設けるのが好ましい。ターゲットテープ74は、係止部がフック要素130Aの場合、フック要素の係合突起が絡まるようなループ糸が表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なフィルム状のものを用いることができる。
【0064】
また、腹側Fにおけるファスニング片130の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合であって、ファスニング片130の係止部がフック要素130Aの場合には、ターゲットテープ74を省略し、フック要素130Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。
【0065】
ファスニング片130は、背側エンドフラップ部BEと吸収要素50の境界線上にファスニング片130の取り付け部分が重なるように取り付けられていると、おむつ装着時に左右のファスニング片130の取り付け部分間に働く張力により、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。また、ファスニング片130の取り付け部分が、おむつの背側端部(後端部)と離れすぎていると、おむつ装着時に左右のファスニング片130の取り付け部分間に働く張力がおむつの背側端部にまで及ばないため、おむつの背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすい。従って、背側エンドフラップBEの前後方向長さは、ファスニング片130の基部の前後方向長さと同じか又は短いことが好ましい。
【0066】
(エンドフラップ部)
エンドフラップ部は、吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分であり、前側の延出部分が腹側エンドフラップ部FEであり、後側の延出部分が背側エンドフラップ部BEである。
【0067】
背側エンドフラップBEの前後方向長さは、前述の理由によりファスニング片130の取り付け部分の前後方向長さと同じか短い寸法とすることが好ましく、また、おむつ背側端部と吸収体56とが近接しすぎると、吸収体56の厚みとコシによりおむつ背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすいため、10mm以上とすることが好ましい。
【0068】
腹側エンドフラップ部FE及び背側エンドフラップ部BEの前後方向長さは、おむつ全体の前後方向長さLの5〜20%程度とするのが好ましく、本発明を適用するのが特に好ましい、水様便、軟便を頻繁に排泄する新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、10〜60mm、特に20〜50mmとするのが適当である。
【0069】
(背側伸縮シート)
図示形態では、両ファスニング片130間に、幅方向に弾性伸縮する帯状の背側伸縮シート70が設けられ、おむつ背側部におけるフィット性を向上させている。背側伸縮シート70の両端部は両ファスニング片130の取り付け部分と重なる部位まで延在されているのが好ましいが、幅方向中央側に離間していても良い。背側伸縮シート70の前後方向寸法は、ファスニング片130の取り付け部分の前後方向寸法と概ね同じにするのが適当であるが、±20%程度の寸法差はあってもよい。背側伸縮シート70は、ゴムシート等のシート状弾性部材を用いても良いが、通気性の観点から、図8に示すように、二枚の不織布71をホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせるとともに、両不織布71間に有孔のシート状、網状、細長状(糸状又は紐状等)等の弾性伸縮部材72を幅方向に沿って伸張した状態で固定したものが好適に用いられる。この場合における不織布71としては、外装シート12と同様のものを用いることができる。弾性伸縮部材72の伸張率は150〜250%程度であるのが好ましい。また、弾性伸縮部材72として細長状(糸状又は紐状等)のものを用いる場合、太さ420〜1120dtexのものを3〜10mmの間隔72dで5〜15本程度設けるのが好ましい。
【0070】
また、図示のように弾性伸縮部材72の一部が吸収体56を横断するように配置すると、吸収体56のフィット性が向上するため好ましいが、この場合は、弾性伸縮部材72が吸収体56と重なる部分の一部又は全部を、切断等の手段により収縮力が働かないようにすると、吸収体56の背側端部が幅方向に縮まないため、フィット性がさらに向上する。
【0071】
なお、弾性伸縮部材72は、シートの長手方向(おむつの幅方向)に不織布71の全長にわたって固定されていてもよいが、おむつ本体への取り付け時の縮みやめくれ防止のため、シートの前後方向(おむつの幅方向)端部の5〜20mm程度の範囲においては、収縮力が働かないように、または弾性伸縮部材72が存在しないようにするとよい。
【0072】
背側伸縮シート70は、図示形態では、液不透過性シート11の幅方向両側ではギャザーシート62と外装シート12との間に挟まれ、且つ液不透過性シート11と重なる部位では、液不透過性シート11と吸収体56との間に挟まれるように設けられているが、トップシート30と吸収体56との間や液不透過性シート11と外装シート12との間に設けても良い。また、外装シート12を複数枚の不織布を重ねて形成する場合には、背側伸縮シート70全体を、外装シート12の不織布間に設けても良い。
【0073】
(棒状体20)
そして特徴的には、身体側に隆起する棒状体20が背側上端部に幅方向に沿って設けられている。図示形態では棒状体20が腹側上端部には設けられていないが、背側上端部だけでなく腹側上端部にも設けることもできる。
【0074】
棒状体20は身体側に隆起する限り、図9等に示す形態のようにトップシート30の身体側に設けるほか、トップシート30の裏面側に設けることもでき、例えば図14に示すようにトップシート30とその裏面側の液不透過性シート11との間に設けたり、図示しないが液不透過性シートと外装シート12との間に設けたりすることもできる。また、図示形態では、棒状体20は、両側の側部立体ギャザー60の上に跨るように設けられているが、側部立体ギャザー60間内に収めてトップシート上にのみ設けたり、幅方向の両端部を側部立体ギャザー60とトップシート30との間に挟み、これらの間の部分をトップシート30上に配置したりしてもよい。
【0075】
棒状体20は、前述の製造方法により形成される構造、すなわち棒状の圧縮復元性芯材22の外周面に帯状の外周シート21が螺旋状に巻き付けられるとともに、長手方向に隣接する外周シート21の縁部が重ね合わされて相互に直接的又は間接的に接合されて形成された構造を有するものである。このような棒状体20は、それ自体立体的な形状であるとともに、各部が独立的且つ自由に変形できるため、身体表面の複雑且つ立体的な凹凸に対して良好にフィットする。また、棒状体20の股間側に身体から離間した空間23が確保されるため、排泄物の堰き止め許容量が格段に多くなるとともに、外圧が加わっても棒状体20で堰き止めた排泄物がこの空間23内に逃がされて貯められ、排泄物が押し出されて漏出するといった事態が発生し難くなる。
【0076】
なお、図11は棒状体20内に弾性伸縮部材25を設けた形態を示し、図12は芯材22としてシート状のものを丸めて用いた形態を示し、図13は芯材22として筒状のものを用いた形態を示している。
【0077】
棒状体20の厚み20hや圧縮復元性は適宜定めることができるが、例えば吸収体56を有する部分の初期厚みT0が4〜8mmである乳児用のおむつにおける水様便や軟便の堰き止めを想定した場合、棒状体20は、初期厚みT0が5〜20mmであり、厚さ方向における圧縮剛さLCが0.75〜0.99であり、厚さ方向における圧縮エネルギーWCが6.000〜9.500gf・cm/cm2であり、厚さ方向における圧縮レジリエンスRCが40〜70%であるのが好ましい。また、棒状体20の初期厚みT0は、吸収体56を有する部分の初期厚みT0より厚いと、着用者に良好にフィットするため、好ましい。圧縮剛さLCは1に近い程圧縮剛いことを意味し、圧縮エネルギーWCは大きい程圧縮され易いことを意味し、圧縮レジリエンスRCは値が100に近い程圧縮に対する回復性がよいことを意味する。初期厚みT0、圧縮剛さLC、圧縮エネルギーWCおよび圧縮レジリエンスRCは、KES(Kawabata's Evaluation System for Fabrics)に基づき、KES-FB3-AUTO-A 自動化圧縮試験機を用いて計測する。測定は、圧縮面積2cm2の円形平面をもつ鋼板間で、0gf/cm2から最大圧縮荷重50gf/cm2まで試料を圧縮し、元に戻す間で行う。初期厚みT0は、圧力0.5gf/cm2における試料の厚みである。圧縮剛さLCは、圧縮変位の直線性を表わし、荷重と変位( 圧縮による厚さの減少)が比例するもの程数値が大きくなる。また、圧縮エネルギーWCは圧縮の仕事量を表し、数値が大きい程、膨らみ感、腰感に優れる。また、圧縮回復率RCは、圧縮回復性を表わし、数値が大きい程ヒステリシスが小さい。
【0078】
このような厚みや圧縮復元性は、外周シート21内に詰める圧縮復元性芯材22の素材、量、構造により調整することができる。圧縮復元性芯材22は、外周シート21内周面に隙間無く密着しているのが好ましいが、多少の隙間があっても良い。
【0079】
棒状体20の吸収体56に対する取付位置は適宜定めることができるが、棒状体20をエンドフラップ部BEに設け、棒状体20の股間側端と吸収体56の上端との間を離間させると、棒状体20の股間側に身体から離間した空間23がより多く確保されるため好ましい。また、この離間距離23Lが過度に狭いと効果が不十分となり、過度に広げても外圧により潰れてしまうため、適度な長さとするのが好ましい。具体的に、水様便、軟便を頻繁に排泄する新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつの場合、この離間距離23Lが5〜15mmであると好ましい。
【0080】
また、図15に示すように、棒状体20を、エンドフラップ部BEの股間側端部から吸収体56の上端部(棒状体20側端部)に跨るように設け、棒状体20で堰き止めた排泄物を吸収体56に吸収させるように構成するのも好ましい。この場合、同図に示すように、吸収体56の少なくとも上端部が、棒状体20に近づくにつれて厚さが増すような隆起形状を有していると、棒状体20で堰き止めた排泄物が股間側に戻りやすくなるため好ましい。
【0081】
棒状体20と、おむつ前後端との離間距離24Lは適宜定めることができるが、棒状体20の初期厚みT0以下であることが好ましく、さらに0〜15mmであるのが好ましい。離間距離24Lがあまり大きくなると、おむつの前後端が肌面から浮いてひらひらし、装着感及び外観が悪化する。
【0082】
棒状体20の取り付け構造は適宜定めることができるが、図示形態では、裏面側部材(トップシート30、ギャザーシート62等)に対して、ホットメルト接着剤HMを用いて接合されているが、ヒートシールや超音波シールにより固定しても良い。この棒状体20の固定幅(図示形態の場合、装着状態において股間部を下とした場合の上下方向幅)20Wは適宜定めることができるが、外周材21の理想円筒状態での外周の1/16〜1/2、特に1/8〜3/8程度とするのが好ましい。この場合、身体に対するフィット性を損ねずに、棒状体20の変形の自由度を高くすることができ、また、図9等に示すように、棒状体20における接合部分20Fより上側(装着状態において股間部を下とした場合)が股間側に迫り出し、この迫り出し部分の下側に排泄物を受け入れることができるため、堰き止め効果がより一層のものとなる。
【0083】
この棒状体20の固定幅20Wは、棒状体20の長手方向に一定とする他、長手方向両端に向かうにつれて拡大する等、棒状体20の長手方向に変化させることもできる。
【0084】
<その他>
(a)上記例は、棒状体20を排泄物遮断壁として利用しているが、外周シート21を液透過性とし、芯材22を吸収性材料で形成した棒状体20を、図5に示すように吸収体56の一部(又は全部でも良い)として設けることができる。
【0085】
(b)外周シート21を二本用いて、芯材22に対して二重螺旋状に巻き付けることもでき、その場合に外周シート21の素材を同じとする他、異ならしめることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、上記例のようなテープタイプ使い捨ておむつの他、パンツタイプ使い捨ておむつ、パッドタイプ使い捨ておむつ、生理用ナプキン等、吸収性物品全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
10…吸収性本体部、11…液不透過性シート、12…外装シート、20…棒状体、21…外周シート、22…圧縮復元性芯材、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、52…繊維、54…高吸収性ポリマー粒子、56…吸収体、58…包装シート、60…側部立体ギャザー、62…ギャザーシート、70…背側伸縮シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続棒状の圧縮復元性芯材をその長手方向に沿って搬送しつつ、この芯材の外周面に連続帯状の外周シートを螺旋状に巻き付けて、前記芯材を螺旋状の外周シートで包装してなる連続棒状体を形成し、
この連続棒状体を吸収性物品構成部材に固定した後に所定長さに切断するか、又はこの連続棒状体を所定長さに切断した後に吸収性物品構成部材に固定する、
ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
前記外周シートの巻き付けに際して、前記外周シートを先行外周シートの後縁部に対して後続外周シートの前縁部を重ね合わせて相互に直接的又は間接的に接合する、請求項1記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項3】
前記外周シートの巻き付けに際して、前記重なり合う先行外周シートの後縁部と後続外周シートの前縁部との間に、外周シートよりも幅の狭い補強シートを連続帯状の補強シートを巻き込み、前記重なり合う先行外周シートの後縁部と後続外周シートの前縁部との間に前記補強シートを挟持固定する、請求項1又は2記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項4】
前記外周シートの巻き付けに先立って、前記芯材の外周面における長手方向に沿って連続状の弾性伸縮部材を供給した後、その外側に前記外周シートの巻き付けを行い、前記弾性伸縮部材を前記外周シートと前記芯材の外周面との間に挟持固定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項5】
前記芯材は、短繊維の積繊体、連続繊維の束状体、シート状の発泡ウレタンフォーム、ゴム若しくは不織布を折り曲げる若しくは丸めてなるもの、又は筒状若しくは棒状の発泡ウレタンフォーム若しくはゴムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項6】
肌当接面における排泄位置の前後左右の少なくとも一個所に、排泄物の移動を遮る棒状体が設けられた吸収性物品において、
前記棒状体は、棒状の圧縮復元性芯材の外周面に帯状の外周シートが螺旋状に巻き付けられ、前記芯材が螺旋状の外周シートで包装されて形成されたものである、
ことを特徴とする吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−110590(P2012−110590A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264065(P2010−264065)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】