説明

吸収性物品

【課題】 肌に近い領域での湿度を有効に下げることができ、蒸れによるかぶれを防止することができる吸収性物品を提供すること。
【解決手段】 本発明の吸収性物品1は、吸湿剤13が密封されてなる吸湿剤封入体9を有する。吸湿剤封入体9は、その一面が着用者の肌に直接に接触しうる状態、又は透湿性シートを介して接触しうる状態で配されている。吸湿剤封入体9の肌側面は疎水性透湿層によって構成されていると共に、その反対の面は該疎水性透湿層よりも透湿度が低い層によって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、吸湿性が高く、装着中における蒸れやべたつき等の不快感の発生が防止された吸収性物品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】吸収性物品の着用中における蒸れやべたつきを防止するための技術が種々提案されている。例えば、特開昭58−180602号では、トップシートとして疎水性の微細繊維集合体からなる不織布を用い、身体と吸収性物品との間に疎水雰囲気の空間を形成することで、排泄された液の透過性を損なわずに液戻りの発生を防止した吸収性物品が提案されている。しかし、この吸収性物品は身体と液との接触に起因するべたつき感を低減させることは出来るものの、吸収体に吸収された液から発生する水蒸気や、身体から発生する水蒸気に起因する蒸れを防止することはできない。トップシートと吸収体との間にサブレイヤーシートを配し、該サブレイヤーシートによって液戻りの発生を防止した吸収性物品も知られているが、吸収体に吸収された液から発生する水蒸気や、身体から発生する水蒸気に起因する蒸れに関しては、前述の吸収性物品と同様の欠点を有する。
【0003】透湿性のバックシートを用い、吸収体に吸収された液から発生する水蒸気や、身体から発生する水蒸気を外部に放出することで蒸れを防止した吸収性物品も提案されている。しかし斯かる吸収性物品は、発生した水蒸気を積極的に捕捉するものではないので、蒸れ防止の効果を十分に発現させることが容易でない。
【0004】本出願人は先に特開平7−132126号公報において、特定の値以上の透湿度を有する透湿性バックシートを用いると共に吸収性物品に吸湿剤を具備させることでその吸湿量を特定の値以上とした吸収性物品を提案した。この吸収性物品によれば、吸収体に吸収された液から発生する水蒸気や、身体から発生した水蒸気が吸湿剤の作用によって積極的に捕捉されるので、蒸れ防止の効果が十分に発現する。この公報においては、吸収体に吸湿剤を含有させる形態及び吸湿剤を透湿性シートで包む形態を採用することが開示されている。しかし、これらの形態ではおむつのように多量の排泄物が接する場合には蒸れを抑える効果が十分でなく、また吸収性能が不足する。更に、吸湿剤が吸液部として機能してしまうので、吸湿効果は望めない。そのため、吸湿性能を維持するには、多量の吸湿剤を含有させる必要がある。
【0005】従って、本発明は、排泄された液による吸湿剤の吸湿性能の低下が防止され、肌に近い領域での湿度を有効に下げることができ、装着中における蒸れやべたつき等の不快感の発生が防止された吸収性物品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート及び両シート間に介在された液保持性の吸収体を有する吸収性物品において、少なくとも一面が透湿層で構成されており且つ所定の吸湿剤が密封されてなる吸湿剤封入体を有し、該吸湿剤封入体は、その一面が着用者の肌に直接に接触しうる状態、又は他の透湿性シートを介して接触しうる状態で配されており、前記吸湿剤封入体の肌側面は疎水性透湿層によって構成されていると共に、その反対の面は該疎水性透湿層よりも透湿度が低い層によって構成されている吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである(以下、第1発明というときにはこの発明をいう)。
【0007】また本発明は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート及び両シート間に介在された液保持性の吸収体を有する吸収性物品において、所定の吸湿剤を含有する発泡シートを有し、該発泡シートは、その一面が着用者の肌に直接に接触しうる状態、又は透湿性シートを介して接触しうる状態で配されている吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである(以下、第2発明というときにはこの発明をいう)。
【0008】
【発明の実施の形態】まず、第1発明の吸収性物品の好ましい実施形態を、該吸収性物品として使い捨ておむつを例にとり図面を参照して説明する。図1には、第1発明の第1の実施形態の使い捨ておむつをトップシート側からみた一部破断平面図が示されている。
【0009】図1に示すように、本実施形態の使い捨ておむつ1は、液透過性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、トップシート2及びバックシート3間に介在された液保持性の吸収体4とを有して構成されている。吸収体4は、おむつ1の股下領域に対応する領域がくびれた砂時計形状に湾曲形成され、トップシート2及びバックシート3も、吸収体4の形状に即しておむつ1の股下領域に対応する領域が湾曲形成されている。そして、吸収体4は、トップシート2及びバックシート3によって挟持固定されている。
【0010】吸収体4の前後から外方に延出するトップシート2及びバックシート3によって形成される背側及び腹側のウエスト部5,5’には、おむつ1を着用した際に、ウエスト部5,5’を着用者の身体にフィットさせるための帯状の弾性伸縮部材5a,5a’が配されており、該弾性伸縮部材5a,5a’はトップシート2及びバックシート3によって固定されている。また吸収体4の左右側縁部から側方に延出するトップシート2及びバックシート3によって形成される一対のレッグ部6,6には、糸状の3本の弾性伸縮部材6a,6aが配されており、該弾性伸縮部材6aはトップシート2及びバックシート3によって固定されている。そして、これらの弾性伸縮部材5a,6aが収縮することで、ウエストギャザー及びレッグギャザーが形成される。
【0011】おむつ1の左右両側部それぞれには、トップシート2の側部を覆うように立体ギャザー形成用シート7,7が配されている。各立体ギャザー形成用シート7は、その外側部及び前後端部がトップシート2に固着されていると共にその内側部が自由状態となっている。そして、該内側部の側縁に、その長手方向に沿って弾性伸縮部材7a,7aが固定されている。そして弾性伸縮部材7aが収縮することで、立体ギャザー形成用シート7の前記内側部が立ち上がり、おむつ1における着用者の肌当接面側に立体ギャザーが形成される。
【0012】背側のウエスト部5の幅方向両側縁にはそれぞれテープファスナー等からなる一対の止着具8が取り付けられており、また、腹側のウエスト部5’におけるバックシート3上には矩形状のランディングテープ等からなる被着具(図示せず)が貼付されている。そして、本実施形態の使い捨ておむつ1が着用される際に、止着具8,8が被着具上に止着するようになされている。
【0013】おむつ1を構成するこれらの部材としては、当該技術分野において通常用いられているものを適宜用いることができる。例えばトップシート2としては各種不織布や開孔フィルムを用いることができ、バックシート3としては熱可塑性樹脂のフィルムを用いることができる。このフィルムは後述するように透湿性を有していてもよい。吸収体4としては、パルプ繊維及び高吸収性ポリマーの粒子の混合体をティッシュペーパー等の紙で包んだものを用いることができる。
【0014】本実施形態のおむつ1においては、トップシート2と吸収体4との間に、吸収体より小面積で且つの所定の吸湿剤が密封されてなる吸湿剤封入体9が介在配置されている。つまり、吸湿剤封入体9は吸収体4よりも着用者の肌側に配されている。吸湿剤封入体9は、図2及び図3に示すように、疎水性である透湿性シート(以下、高透湿性シートという)10と高透湿性シートよりも透湿度が低い疎水性シート(以下、低透湿性シートという)11とを接合して両シート10,11間に形成された密閉空間12内に吸湿剤13が密封されて構成されている。また吸湿剤封入体9は、該吸湿剤封入体9における高透湿性シート10の側が着用者の身体に向き、トップシート2を介して着用者の肌に接触し得る状態で配されている。これによって、吸湿剤と排泄された液との接触が最小限に止められ、吸湿剤の吸湿性能の低下が効果的に防止されると共に着用者肌近傍での湿度が有効に低下し、蒸れが防止される。また吸湿剤封入体9における低透湿性シート11の側が吸収体4に向くように配されているので、吸収体4に一旦吸収された液が逆戻りして吸湿剤13と接触することも防止される。前述の通り、吸湿剤封入体9は吸収体4よりも小面積なので、吸湿剤封入体9の配されていない部位から蒸気が上昇し肌へ接触しようとする。しかし、吸湿剤封入体9の下面側を低吸湿性としているので、下面側からの吸湿は抑えられ、周囲から上昇した蒸気は肌近傍で上面側から有効に吸湿されるので蒸れが起こりにくい。これらの作用によって、液と吸湿剤との接触が防止されると共に、吸収体4に吸収された液から発生する水蒸気及び着用者から発生する水蒸気に起因する着装内の湿度上昇が、吸湿剤を有効に利用することによる吸湿作用で抑えられ、おむつ1の装着中における蒸れやべたつき等の不快感の発生が効果的に防止される。
【0015】吸湿剤封入体9を構成する2枚のシート10,11は、縦長矩形の同形をしている。両シート10,11の四辺は所定幅で接合され、これにより周縁接合部14が形成されている。また両シート10,11は、長手方向に所定の間隔を置いて幅方向に亘って複数箇所で接合され、これにより横断接合部15が形成されている。そして、これらの接合部14,15によって、吸湿剤封入体9には、小区画に区分された複数の密閉空間12が形成されている。各密閉空間12内には前述の通り吸湿剤13が密封されている。密閉空間12を小区画に区分することで、吸湿剤13として粒状のものを用いた場合に、その偏在が防止されるという利点がある。従って、吸湿剤13として偏在が起こりにくい形状のものを用いる場合、例えば繊維状やシート状の吸湿剤を用いる場合には、密閉空間を小区画に区分する必要はなく、例えば図4に示すように2枚のシート10,11の周縁のみを接合して密閉空間12を形成してもよい。
【0016】吸湿剤封入体9は、図1に示すように着用者の排泄部位に対応する部位である股下部に、その長手方向をおむつ1の長手方向と一致させて配されている。従って、各小区画はおむつの長手方向に沿って一列に配列している。おむつ1の股下部は、液が集中して排泄され且つ吸収保持される部位なので、斯かる部位に吸湿剤封入体9を配することで、吸収体4に吸収された液から発生する水蒸気が効果的に捕捉され、着装内が低湿度に保たれる。本実施形態のように吸湿剤封入体9がおむつ1の股下部に配される場合には、各小区画の長手方向の長さの総和は50〜150mm程度、各小区画の幅は10〜20mm程度であることが好ましい。吸湿剤封入体9は、その面積が吸収体4の面積1〜50%、特に5〜25%であると吸水性能と吸湿性能のバランスが良いので好ましい。
【0017】吸湿剤封入体9における接合部14,15には、排泄された液の透過が可能な円形の開孔16が多数形成されている。前述の通り吸湿剤封入体9を構成するシート10,11は何れも疎水性であることから、吸湿剤封入体9が、吸収体4の上面全域又はその大部分を覆うような大面積のものであると、吸湿剤封入体9によって吸収体4への液の移行が妨げられるおそれがある。しかし、吸湿剤封入体9に開孔16を多数形成しておくことで、該開孔16を通じて吸収体4への液の移行が円滑に進む。尤も、本実施形態においては、前述した通り吸湿剤封入体9はおむつ1の股下部にのみ配されているので、該吸湿剤封入体9によっては吸収体4への液の移行は妨げられにくいが、開孔16が形成されていることで、これが形成されていない場合によりも液の移行が一層円滑となる。開孔16の大きさは、液の透過性を十分に高める点から直径0.1〜10mm、特に1〜5mmであることが好ましい。また吸湿剤封入体9全体の面積に対する開孔の割合、即ち開孔率は、接合部14,15の面積にもよるが、1〜50%、特に10〜30%であることが、十分な液透過性の確保及び接合部14,15の接合強度の確保の点から好ましい。
【0018】吸湿剤封入体9に密封保持される吸湿剤13としては、従来公知のものを特に制限なく用いることができる。吸湿剤13は、人体に対して有害又は刺激性のある成分を含まないことが好ましい。特に、吸湿剤13が水に可溶な成分を含む場合には、該成分が排泄された液に接触すると、溶解して肌に接触するおそれがあるので、該吸湿剤13は実用上水不溶性のものであることが好ましい。水可溶性である場合には不溶化処理を施したものであることが好ましい。水不溶性の吸湿剤としては次の(1)〜(3)のものが挙げられる。(1)活性炭、天然又は合成シリカ、合成ゼオライト等の水分をその表面に物理化学的に吸着する無機/有機多孔体。(2)ポリアクリル酸ソーダ架橋体;デンプン−ポリアクリル酸グラフト重合体;親水性ポリウレタン;カルボキシレート、スルホネート若しくはサルフェート基を有するモノマーと、ホスフェート若しくはホスホネート基を有するモノマーとの共重合体等の高吸収性ポリマー。(3)ポリビニルアルコール。(4)ペクチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等の多糖類。(5)羊毛、レーヨン、テンセル、ポリビニルアルコール繊維等の天然又は合成の親水性繊維。
【0019】吸湿剤13は一般に粒状のものである。また前述した通り繊維状やシート状の吸湿剤を用いてもよい。また吸湿剤として高吸収性ポリマーを用いる場合には、所定の繊維に高吸収性ポリマーの原料単量体を付着させておき、該繊維上で該単量体の重合を行うことで得られる繊維状の吸湿剤を用いることができる。一方、シート状の吸湿剤としては、前述の繊維状吸湿剤を含む不織布などの繊維シート、不織布に高吸収性ポリマーを固定化したシート、パルプ繊維と高吸収性ポリマーとを混合してシート化したものなどを用いることができる。
【0020】吸湿剤封入体9における吸湿剤13の封入量は、50〜1000g/m2、特に100〜500g/m2であることが、十分な吸湿効果の発現及び経済性の点から好ましい。
【0021】吸湿剤封入体9における高透湿性シート10は、疎水性であるが、水蒸気透過性のものであり、その例としては、熱可塑樹脂と、無機粒子又は該熱可塑樹脂と相溶性のない有機粒子とを溶融混練し、シート状に成形した後、一軸又は二軸延伸して得られる微多孔性シートが挙げられる。斯かる微多孔性シートは、使い捨ておむつ等の吸収性物品の技術分野において透湿性バックシートとして用いられているものと同様のものである。また高透湿性シート10として、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布積層シートや、造膜性シリコーンからなるシートを用いることもできる。高透湿性シート10の透湿度(JIS Z 0208、以下、透湿度というときにはこの方法で測定されたものをいう)は、水蒸気の十分な透過を確保すると共に排泄された液の透過を阻止する点から、0.8g/(100cm2hr)以上、特に1.2g/(100cm2hr)以上であることが好ましい。特に、高透湿性シートとして無機フィラー/ポリオレフィン系樹脂からなる造膜シートを少なくとも一軸方向に延伸した開孔フィルム、例えば、炭酸カルシウム/ポリエチレンからなる縦方向一軸延伸フィルムを用いる場合には透湿度は0.8〜2.8g/(100cm2hr)、特に1.2〜2.5g/(100cm2hr)であることが好ましい。高透湿性シート10の坪量に特に制限はないが、5〜50g/m2、特に10〜30g/m2程度であることが、強度の維持及び経済性の点から好ましい。なお無機フィラーが分散されたポリオレフィン系樹脂からなる透湿性シートは通常白色であるが、その一部をエンボス加工等によって光透過度を高める(例えば全光線透過率が50%以上)と、吸湿剤として吸湿によって色相が変化する剤(例えばシリカゲル)を用いた場合に、吸湿の程度を外部から視認することができ、おむつ交換時期の目安になるという利点がある。
【0022】吸湿剤封入体9における低透湿性シート11は、高透湿度性シート10よりも水蒸気透過性が低く且つ疎水性のものである。低透湿性シート11の透湿度は、高透湿性シート10の透湿度の95%以下、特に50%以下であることが、吸湿剤封入体9の下面側からの吸湿を防止する点から好ましい。下限値は0%でもよい。同様の理由により、低透湿性シート11の透湿度(JIS Z 0208)は、0〜3g/(100cm2hr)、特に0〜1.6g/(100cm2hr)であることが好ましい。低透湿性シート11の典型的な例としては熱可塑性樹脂からなるフィルムが挙げられる。低透湿性シート11の坪量は、5〜50g/m2、特に10〜30g/m2程度であることが、強度の維持及び経済性の点から好ましい。
【0023】高透湿性シート10と低透湿性シート11とを接合して接合部14,15を形成する手段としては、熱による有着、超音波による接着、接着剤による接着などが挙げられる。高透湿性シート10と低透湿性シート11とを接合して形成される接合部14,15は、該接合部14,15を通じて密閉空間12内に液が滲入しない程度に且つ接合部14,15を通じて吸湿剤13が漏れ出ない程度に接合されていればよい。また、接合部14,15に開孔16を形成する手段としては、加熱されているか又はされていない穿孔ピンを用いた穿孔が挙げられる。
【0024】次に、第1発明の第2〜第5の実施形態について図5〜図9を参照しながら説明する。これらの実施形態については、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については、第1の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図5R>5〜図9において、図1〜図4と同じ部材に同じ符号を付してある。第2の実施形態のおむつ1においては、おむつ股下部における左右の立体ギャザー形成用シート7の内面それぞれに、縦長で矩形の吸湿剤封入体9が配されている。吸湿剤封入体9は、接着剤による接着などの適宜の接合手段によって、立体ギャザー形成用シート7の内面に固着されている。吸湿剤封入体9は第1の実施形態と同様の構造となっている。吸湿剤封入体9の肌側面は高透湿性シート10によって構成されている。一方、立体ギャザー形成用シート7の対向面は、低透湿性シート11によって構成されている。本実施形態のおむつでは、吸湿剤封入体9は、おむつ1の着用中に、着用者の肌と直接接することとなる。その結果、第1の実施形態と同様に、吸湿剤と排泄された液との接触が最小限に止められ、吸湿剤の吸湿性能の低下が効果的に防止されると共に着用者の肌近傍での湿度が有効に低下し、蒸れが防止される。
【0025】図7に示す第3の実施形態のおむつは、第2の実施形態のおむつに類似している。両者が異なる点は、第2の実施形態においては、立体ギャザー形成用シート7に、該シート7とは別材から構成される吸湿剤封入体9が配されているのに対し、第3の実施形態においては、立体ギャザー形成用シート7の一部から吸湿剤封入体9が構成されている点である。詳細には、縦長の矩形状をした立体ギャザー形成用シート7は、その長手方向に沿って二つ折りにされて二重となっている。以下、二重となった立体ギャザー形成用シート7のうち、内側に位置する部分を内側シート10aと呼び、外側に位置する部分を外側シート11aと呼ぶ。立体ギャザー形成用シート7は、その折曲部にスリーブが形成されている。スリーブの内側には弾性伸縮部材7a,7aが伸張状態で固定されている。更にスリーブに隣接する位置に、内側シート10aと外側シート11aとが接合されて画成された複数の密閉空間が形成されている。各密閉空間は、立体ギャザー形成用シート7の長手方向に一列に配されている。各密閉空間内には吸湿剤13が密封されている。吸湿剤13は、外側シート11aの内面に塗布されたホットメルト粘着剤17によって保持されている。このホットメルト粘着剤17は、外側シート11aの透湿度を、内側シート10aの透湿度よりも低下させる目的でも用いられている。このように、本実施形態のおむつでは、立体ギャザー形成用シート7から立体ギャザーが形成されると共に吸湿剤封入体9が形成される。本実施形態のおむつも第2の実施形態のおむつと同様に、吸湿剤封入体9が、おむつ1の着用中に、着用者の肌と直接接することとなり、第2の実施形態のおむつと同様の効果が奏される。
【0026】図8に示す第4の実施形態のおむつでは、背側のウエスト部5におけるトップシート2上に、縦長で矩形の吸湿剤封入体9が配されている。吸湿剤封入体9はその長手方向が、ウエスト部5の幅方向と一致するように配されている。これ以外の点は第2の実施形態のおむつと同様になっている。本実施形態のおむつでも、吸湿剤封入体9は、おむつの着用中に、着用者の肌と直接接することとなる。その結果、第2の実施形態と同様の効果が奏される。更に、本実施形態においては、吸湿剤封入体9の剛性によってウエストギャザーによる身体への締め付けが緩和されるので、該締め付け及び湿度による肌のかぶれを有効に防止できるという利点がある。尚、本実施形態の変形として、腹側のウエスト部5’に吸湿剤封入体を配しても良く、或いは背側及び腹側双方のウエスト部に吸湿剤封入体を配してもよい。
【0027】図9は第5の実施形態を示すものであり、おむつの背側のウエスト部における縦中心線断面図である。本実施形態のおむつは、第4の実施形態のおむつに類似している。両者が異なる点は、第4の実施形態においては、背側のウエスト部5に、該ウエスト部5の構成材料とは別材から構成される吸湿剤封入体9が配されているのに対し、第5の実施形態においては、ウエスト部5の構成材料の一部から吸湿剤封入体9が構成されている点である。詳細には、不織布製のバックシート3が吸収体4の背側端部から外方に延出しており、延出したバックシート3が折り返されて二重となっている。二重となったバックシート3のうち、内側に位置する部分を内側シート10aと呼び、外側に位置する部分を外側シート11aと呼ぶ。内側シート10aの端部はトップシート2の背側端部を越えて吸収体上まで延びている。バックシート3の折り返し部近傍には、ウエストギャザーを形成する弾性伸縮部材5aが伸張状態で配されている。弾性伸縮部材5aが配されている位置と、吸収体4の背側端部との間の位置には、内側シート10aと外側シート11aとが接合されて画成された複数の密閉空間が形成されている。各密閉空間は、ウエスト部5の幅方向に一列に配されている。各密閉空間内には吸湿剤13が密封されている。外側シート11aの内面には多孔性フィルムからなる透湿性シート18がラミネートされている。透湿性シート18は、外側シート11aの透湿度を、内側シート10aの透湿度よりも低下させる目的で用いられている。このように、本実施形態のおむつでは、バックシート3からウエスト部5が形成されると共に吸湿剤封入体9が形成される。本実施形態のおむつも第4の実施形態のおむつと同様に、吸湿剤封入体9が、おむつの着用中に、着用者の肌と直接接することとなり、第4の実施形態のおむつと同様の効果が奏される。尚、本実施形態においても第4の実施形態と同様に、腹側のウエスト部5’に吸湿剤封入体を形成しても良く、或いは背側及び腹側双方のウエスト部に吸湿剤封入体を形成してもよい。
【0028】次に、第2発明について説明する。第2発明については、第1発明と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については、第1発明に関して詳述した説明が適宜適用される。
【0029】第2発明においては、第1発明で用いた吸湿剤封入体9に代えて、所定の吸湿剤を含有する発泡シートが用いられる。該発泡シートは、発泡体内に吸湿剤が混合されて構成されている。発泡シートは疎水性である。これによって、排泄された液の透過が阻止される。その結果、吸湿剤と液との接触及びこれに起因する吸湿剤の吸湿性能の低下が防止される。また発泡シートにおける気泡が連続気泡であると、発生した水蒸気は発泡シート内に達することができ、これによって発泡シート内に保持されている吸湿剤が水蒸気を捕捉することができる。このように、第2発明では第1発明と同様に、吸湿剤と排泄された液との接触及びこれに起因する吸湿剤の吸湿性能の低下を防止しつつ水蒸気の捕捉が可能になっている。
【0030】発泡シートにおける気泡の径は0.5〜5mm、特に1〜3mmであることが、気泡内への液の滲入を防止しつつ水蒸気の進入を容易にする点から好ましい。発泡シートの密度は、0.5g/cm3以下、特に0.35g/cm3以下であり、気泡数は5個/cm2以上、特に7個/cm2以上であることが、蒸気の進入に十分な空間の確保及び発泡シートの強度維持の点から好ましい。
【0031】発泡シートに含まれる吸湿剤の含有量は、50〜1000g/m2、特に100〜500g/m2であることが、十分な吸湿性能を発現させる点及び経済性の点から好ましい。吸湿剤としては第1発明と同様のものを用いることができる。その形状は粒状であることが、吸湿のための表面積を十分に大きく確保できることから好ましい。
【0032】発泡シートは、第1発明と同様に小片状のシート形状で、吸収体の上面の一部、例えば股下部を覆うように、トップシートと吸収体との間に配されることが好ましい。また第1発明と同様に、発泡シートには、排泄された液の透過が可能な多数の開孔が形成されていてもよい。開孔径や開孔率は第1発明と同様とすることができる。
【0033】発泡シートを構成する樹脂としてはシリコーン樹脂やウレタン樹脂など、発泡体として従来用いられている樹脂を用いることができる。また発泡方法にも特に制限はない。
【0034】本発明は前記実施形態に制限されない。例えば第1発明の第1の実施形態及び第2発明の実施形態においては、トップシート2と吸収体4との間に吸湿剤封入体又は発泡シートが配されていたが、これに代えてトップシート上にこれらを配してもよい。この場合、吸湿剤封入体又は発泡シートは、接着剤による接着などの接合手段によってトップシート2に接合固定されている。また、第2発明においては、第1発明の第2の実施形態のように、立体ガード形成用シートの内面に発泡シートを配してもよく、或いは第1発明の第4の実施形態のように、ウエスト部のトップシート2上に発泡シートを配してもよい。
【0035】また第1発明においては、吸湿剤封入体9として、吸湿剤を密封した小区画が多列に配列されたものを用いてもよい。
【0036】また第1発明においては、吸湿剤封入体9の上下面は何れもシート材から構成されていたが、これに代えて、吸湿剤封入体9の上面及び/又は下面を塗布層から構成してもよい。例えば、透湿性を有する2枚のシート材を接合し、内部に吸湿剤を密封した後に、何れか一方のシート材、具体的には肌面側と反対側の面となるべきシート材の表面にホットメルト粘着剤を塗布して、該シート材の透湿量を低下或いは0にしてもよい。
【0037】また、本発明の吸収性物品は、前述した使い捨ておむつに限られず、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー、おりものシート等の他の吸収性物品にも同様に適用できる。
【0038】〔実施例1〕
(1)吸湿剤封入体の製造図2に示す吸湿剤封入体を製造した。但し、吸湿剤を密封する空間は3つの小区画とし且つ開孔は形成しなかった。吸湿剤封入体を構成する2枚のシートは何れもポリプロピレン製のSMS不織布であった。この不織布の坪量は15g/m2であり、スパンボンド部分の坪量は6.5g/m2、メルトブローン部分の坪量は2g/m2であった。各小区画の大きさは10mm×10mmで、各小区画間の横断接合部の幅は5mm、周縁接合部の幅も5mmであった。吸湿剤として吸水ポリマーを用い、3つの小区画全体の坪量は500g/m2であった。一方のSMS不織布には、固定用のホットメルト粘着剤を10g/m2の坪量で塗工した。このホットメルト粘着剤が塗工されている面を吸収体側の面とし、塗工されていない面を肌側の面とした。肌側の透湿度は3.3g/(100cm2hr)以上、吸収体側の透湿度は0.5g/(100cm2hr)であった。
【0039】(2)使い捨ておむつの製造得られた吸湿剤封入体を用い、図1に示す使い捨ておむつを製造した。おむつにおける吸収体は、粉砕パルプ250g/m2と吸水ポリマー250g/m2を均一に混合したものを、坪量16g/m2のティッシュペーパーで包んだものであった。トップシートは、芯がポリプロピレンで、鞘がポリエチレンからなる複合繊維(2.2dtex×51mm)を原料としたエアスルー不織布であった。
【0040】〔実施例2〕ポリエチレン/炭酸カルシウム混合フィルムを延伸して得られた透湿フィルム(延伸倍率1.5倍)を吸収体側のシートとして用いた。またポリエチレン/炭酸カルシウム混合フィルムを延伸して得られた透湿フィルム(延伸倍率2.3倍)を肌側のシートとして用いた。これ以外は実施例1と同様にして吸湿剤封入体を製造した。肌側の透湿度は1.8g/(100cm2hr)、吸収体側の透湿度は0.8g/(100cm2hr)であった。得られた吸湿剤封入体を用いて実施例1と同様にして使い捨ておむつを製造した。
【0041】〔実施例3〕ポリエチレンフィルムを吸収体側のシートとして用いた。またポリエチレン/炭酸カルシウム混合フィルムを延伸して得られた透湿フィルム(延伸倍率2.3倍)を肌側のシートとして用いた。これ以外は実施例1と同様にして吸湿剤封入体を製造した。肌側の透湿度は1.8g/(100cm2hr)、吸収体側の透湿度は0g/(100cm2hr)であった。得られた吸湿剤封入体を用いて実施例1と同様にして使い捨ておむつを製造した。
【0042】〔実施例4〕ポリエチレン/炭酸カルシウム混合フィルムを延伸して得られた透湿フィルム(延伸倍率1.5倍)を吸収体側のシートとして用いた。またポリエチレン/炭酸カルシウム混合フィルムを延伸して得られた透湿フィルム(延伸倍率2.3倍)に、ポリプロピレン繊維からなる不織布を、ホットメルト粘着剤1.5g/m2を介して貼り合わせた複合シートを肌側のシートとして用いた。該複合シートの透湿度は1.6g/(100cm2hr)であった。これ以外は実施例1と同様にして吸湿剤封入体を製造した。肌側の透湿度は1.6g/(100cm2hr)、吸収体側の透湿度は0.8g/(100cm2hr)であった。得られた吸湿剤封入体を用いて実施例1と同様にして使い捨ておむつを製造した。
【0043】〔実施例5〕吸水ポリマーに代えて、吸湿剤としてシリカゲルを用いた以外は、実施例4と同様に吸湿剤封入体を製造した。これ以外は実施例1と同様に使い捨て紙おむつを製造した。
【0044】〔比較例1〕吸湿剤封入体を用いない以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを製造した。
【0045】〔比較例2〕実施例1で使用したのと同量の吸収ポリマーを吸収体中に分散させ且つ吸湿剤封入体を用いない以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを製造した。
【0046】〔比較例3〕ポリエチレン/炭酸カルシウム混合フィルムを延伸して得られた透湿フィルム(延伸倍率2.3倍)を肌側のシートとして用いた。またポリエチレンフィルムを吸収体側のシートとして用いた。これ以外は実施例1と同様にして吸湿剤封入体を製造した。肌側の透湿度は0g/(100cm2hr)、吸収体側の透湿度は1.8g/(100cm2hr)であった。得られた吸湿剤封入体を用いて実施例1と同様にして使い捨ておむつを製造した。
【0047】実施例及び比較例で得られたおむつについて、以下の方法でおむつ内の湿度を測定した。その結果を表1に示す。
〔おむつ内の湿度の測定〕20℃・65%RH環境下、ベビーモデル排尿部に温湿度センサーを取り付け、おむつを装着した。排尿部から、37℃の生理食塩水40gを注入し、1時間後の湿度を測定した。
【0048】
【表1】


【0049】表1に示す結果から明らかな通り、実施例のおむつは、比較例のおむつに比べておむつ内の湿度が10ポイント以上低下し、おむつ内の環境が改善されていることが判る。尚、着用者の肌水分率は、おむつ内の湿度が80%RHとなるのを境に大きく変化し、80%RH以上では肌水分率が極端に高くなってかぶれが起こり易くなり、80%RH未満では適度な肌水分率(つまり乾燥肌でも蒸れた肌でもない)となり、かぶれが生じないことが本発明者らの検討により判明している。
【0050】
【発明の効果】本発明の吸収性物品では、着用者側に高透湿性層を有し、反対面に低透湿性層を有する吸湿剤封入体を配するので、肌に近い領域での湿度を有効に下げることができ、蒸れによるかぶれを防止することができる。特に、吸収体よりも着用者肌側に、吸収体よりも小さい面積の吸湿剤封入体を配することによって、吸収性能を損ねることなく、肌側の湿度を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1発明の吸収性物品の第1の実施形態としての使い捨ておむつをトップシート側から見た一部破断平面図である。
【図2】吸湿剤封入体を示す斜視図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】別の吸湿剤封入体を示す斜視図である。
【図5】第1発明の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図6】図5におけるVI−VI線断面図である。
【図7】第1発明の第3の実施形態を示す断面図(図6相当図)である。
【図8】第1発明の第4の実施形態を示す斜視図である。
【図9】第1発明の第4の実施形態を示す、おむつの縦中心線断面図である。
【符号の説明】
1 使い捨ておむつ(吸収性物品)
2 トップシート
3 バックシート
4 吸収体
9 吸湿剤封入体
10 高透湿性シート
11 低透湿性シート
12 密閉空間
13 吸湿剤
14 周縁接合部
15 横断接合部
16 開孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート及び両シート間に介在された液保持性の吸収体を有する吸収性物品において、少なくとも一面が透湿層で構成されており且つ所定の吸湿剤が密封されてなる吸湿剤封入体を有し、該吸湿剤封入体は、その一面が着用者の肌に直接に接触しうる状態、又は他の透湿性シートを介して接触しうる状態で配されており、前記吸湿剤封入体の肌側面は疎水性透湿層によって構成されていると共に、その反対の面は該疎水性透湿層よりも透湿度が低い層によって構成されている吸収性物品。
【請求項2】 前記吸湿剤封入体が前記吸収体よりも着用者の肌側に配されており、該吸湿剤封入体は該吸収体よりも小さい面積である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】 前記疎水性透湿層と、該疎水性透湿層よりも透湿度が低い前記層とが接合されて両層間に前記吸湿剤が密封されており、また両層の接合部に、排泄された液の透過が可能な開孔が多数形成されている請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】 前記吸湿剤封入体が、小区画に区分された複数の密閉空間を有し、各密閉空間に前記吸湿剤が密封されている請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】 前記吸湿剤封入体が、着用者の排泄部位に対応する部位に配されている請求項1〜4の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項6】 液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート及び両シート間に介在された液保持性の吸収体を有する吸収性物品において、所定の吸湿剤を含有する発泡シートを有し、該発泡シートは、その一面が着用者の肌に直接に接触しうる状態、又は透湿性シートを介して接触しうる状態で配されている吸収性物品。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2003−116912(P2003−116912A)
【公開日】平成15年4月22日(2003.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−317207(P2001−317207)
【出願日】平成13年10月15日(2001.10.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】