説明

吸収性物品

【課題】吸収体のより広範な部分を吸収に利用できるようになし、もって漏れや逆戻りを抑制する。
【解決手段】トウからなる繊維集合体10をシート3sで包んでなる吸収体3が、表面シート1と裏面シート2との間に設けられ、表面シート1と吸収体3との間にセカンドシート8が設けられた紙おむつにおいて、表面シート1、セカンドシート8、および繊維集合体10を包むシート3sのいずれか一つ若しくは二つ以上、または全てに連続線状の溝20を、エンボス加工等により形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収物品に用いられる吸収体は、パルプ短繊維及び高吸収性ポリマー粒子を積繊ドラム上に積繊した後、これをクレープ紙等の吸収性シートにより包装して形成していた。一方、近年では、短繊維の積繊体に代えて、繊維で構成されたトウ(繊維束)を吸収体に用いることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、トウは液の透過性に非常に優れるが、透過性に比べて液の拡散性は劣る(液が保持されている状態ではある程度の拡散性は発揮される)。このため、従来のトウを用いた吸収体では、吸収に利用される部分が限定されてしまうおそれがあり、さらにこの場合、吸収容量が少ないことによる漏れや、吸収体内から装着者の肌側への逆戻りが発生し易くなる。
【特許文献1】特表2001−524399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、吸収体のより広範な部分を吸収に利用できるようになし、もって漏れや逆戻りを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
トウからなる繊維集合体を含む吸収体と、吸収体の表面側に設けられた表面側層とを有する吸収性物品において、
少なくとも前記表面側層に、連続線状の溝を形成してなることを特徴とする吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
このように表面側層に連続線状の溝を設けると、装着者から排泄された液は、拡散性に劣る吸収体に到達する前に表面側層の溝を伝って拡散するようになり、吸収体のより広範な部分を吸収に利用できるようになる。よって、吸収容量が増大し、漏れや逆戻りが発生し難い吸収性物品となる。
【0007】
また見方を変えると、本発明では表面側層における拡散性が向上するため、吸収体内での拡散性を低下させることができ、例えば、繊維集合体の繊維密度を下げる又は高吸収性ポリマーを多量に使用することにより、吸収容量を増加させることができる。
【0008】
なお、本発明において「表面側」とは装着者の肌に接触する面側を意味する。
【0009】
<請求項2記載の発明>
前記表面側層は、装着者の肌に接触する表面シート、表面シートと吸収体との間に設けられたセカンドシート、および前記繊維集合体を包むシートの少なくとも一つである、請求項1記載の吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
吸収性物品においては、一般に繊維集合体の表面側には、肌と接触する表面シートが設けられる。また吸収性能に意図する変化、例えば素材の内部構造による拡散性の向上等をもたらすために、表面シートと吸収体との間にセカンドシートを設ける場合がある。さらに、繊維集合体を吸水紙により包んで吸収体を構成する場合もある。本発明は、これらのシートの少なくとも一つに溝を形成することにより、上記作用効果を発揮させることができる。
【0011】
<請求項3記載の発明>
前記溝は、物品の前後方向及び物品の幅方向の少なくとも一方に沿って一本以上設けられている、請求項1または2記載の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
吸収性物品においては、物品の前後端部が特に吸収に利用され難い。したがって、本発明の溝が物品の前後方向に沿って形成されていると、吸収体のより広範な部分を吸収に利用できるようになるとともに、幅方向への拡散量が低減するため所謂横漏れを抑制する効果もある。
【0013】
また、吸収性物品は、装着状態では排泄位置が低い位置にあり、その前後側は高所に位置するため、排泄位置から離れた位置においては、幅方向へ拡散しようとする液は、排泄位置側へ下降することになる。つまり、吸収性物品においては、位置によって幅方向への拡散が困難になる。よって、本発明の溝を、物品の幅方向に沿って設けるのも好ましい形態である。
【0014】
<請求項4記載の発明>
前記溝は、前記表面側層に圧縮加工を施すことにより形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
圧縮加工により形成される溝は、特に底部において、素材密度が高くなることによる透液性の低下をもたらすため、液が透過せずに溝伝いに拡散し易い。よって、本項記載の発明によれば、拡散性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明によれば、吸収体のより広範な部分を吸収に利用できるようになり、もって漏れや逆戻りを抑制できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、テープ止着式紙おむつへの適用例に基づき詳説するが、本発明はパンツ型紙おむつ、生理用ナプキン等、他の吸収性物品にも適用できることはいうまでもない。
【0018】
(吸収性物品の構造例)
図1及び図2は、本発明が対象とする止着式紙おむつを示している。この紙おむつ例では、使用者の肌側に位置する透液性の表面シート1と、製品の外側に位置し、実質的に液を透過させない不透液性裏面シート2との間に、例えば長方形又は好ましくは図示のように砂時計型のある程度剛性を有する吸収体3が設けられている。
【0019】
裏面シート2は吸収体3より幅広の長方形をなしており、その外面に、肌触り性向上のために不織布等からなる外装シート6が設けられている。裏面シート2はポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムにより形成することができる。
【0020】
一方、表面シート1は吸収体3より幅広の長方形をなし、吸収体3の側縁より若干外方に延在し、裏面シート2とホットメルト接着剤などにより接着されている(この固着部分を含めて本形態に関係する固着部分を符号*で示す)。表面シート1は、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、SMS不織布、ポイントボンド不織布等の各種不織布の他、ポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムや、プラスチックフィルムと不織布とをラミネートしたラミネート不織布も用いることができる。また、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の糸を平織り等したネット状の素材を用いることもできる。
【0021】
吸収体3は、少なくとも液透過性を有するシート3s、例えばクレープ紙、不織布、孔開きシート等の液透過性シートにより包むことができる。特に、クレープ紙のように吸収性を有するシート3sが好適に用いられる。
【0022】
表面シート1と吸収体3との間には、表面シート1を通過した体液を広い範囲にすばやく拡散させる、あるいは吸収体3にすばやく移行させる等の目的で、不織布からなるセカンドシート8を設けることができる。セカンドシート8としては、無孔又は孔開きの不織布、短繊維又は長繊維不織布、メッシュ状のフィルム等を用いることができる。不織布を用いる場合、不織布にレーヨンやセルロース誘導体などの保水性繊維を含ませたり、親水剤を添加したりすることができる。不織布を用いる場合、繊維密度が表面シート1の繊維密度より小さいものが好適であり、例えば繊度が2.1dtexを超えるもの、特に2.1dtexを超え11.0dtex以下のものを使用できる。セカンドシート1Xに用いうる不織布の材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ナイロン、レーヨン、ビニロン、アクリルなどを挙げることができ、直接法による場合には、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン繊維からなるものが好適に採用できる。短繊維の接合には、湿式法、乾式法(エアレイ法やカード法)、スパンレース法などにより、熱や接着剤により点接着、水流や針等で交絡させる形態を挙げることができる。コア/シェル、サイドバイサイド構造の複合繊維からなる不織布も挙げることができ、この複合繊維として、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリプロピレン/ポリプロピレンなどを挙げることができる。
【0023】
他方、紙おむつの両脇部には、使用面側に突出する脚周り用起立カフス9を設けることができる。この起立カフス9は、実質的に幅方向に連続した不織布からなるサイドシート4と、1本の又は図示のように複数本の糸ゴム等の弾性伸縮部材5とにより形成できる。サイドシート4は、透液性でなく実質的に不透液性(半透液性でもよい)であるのが望ましく、例えば不織布に対してシリコン処理などにより撥水処理を施してなるシート等を用いることができる。おむつの装着時には、おむつが体に沿って舟形をなすこと、及び各弾性伸縮部材5,5…の収縮力が作用することにより、脚周りに起立カフス9が起立してバリヤーとなり、排泄物の横漏れが防止される。
【0024】
また、図示例の紙おむつは、テープ止着式の紙おむつであり、背側部分の両側端部に止着片7Aをそれぞれ有し、この止着片7Aを腹側部分表面に設けたターゲットテープ7Bに止着することにより、胴回り開口部および一対の脚周り開口部が形成されるものである。パンツ型の紙おむつの場合、これらの止着手段が省略される代わりに、腹側部分及び背側部分の両側縁部がヒートシール等の接合手段により予め接合される。
【0025】
(吸収体について)
本発明は、吸収体3としてトウからなる繊維集合体10を含むことを前提とするものである。トウからなる繊維集合体10を構成する繊維(以下、単にトウ構成繊維という)としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステルおよびセルロースが好ましい。
【0026】
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸された繊維であってもよい。セルロースの形状と大きさは、実質的に無限長とみなし得る連続繊維から長径が数ミリ〜数センチ(例えば、1mm〜5cm)程度のもの、粒径が数ミクロン(例えば、1〜100μm)程度の微粉末状のものまで、様々な大きさから選択できる。セルロースは、叩解パルプなどのように、フィブリル化していてもよい。
【0027】
セルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは単独で又は二種類以上混合して使用できる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
【0028】
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
【0029】
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。
【0030】
トウ構成繊維は、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
【0031】
トウ構成繊維の繊度は、例えば、1〜16デニール、好ましくは1〜10デニール、さらに好ましくは2〜8デニール程度とすることができる。トウ構成繊維は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造できるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。トウ構成繊維の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。トウ構成繊維は、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用することができる。繊維束は、3,000〜1,000,000本程度の連続繊維を集束して構成するのが好ましい。
【0032】
トウは、繊維間の絡み合いが弱いため、主に形状を維持する目的で、繊維の接触部分を接着または融着する作用を有するバインダーを用いることができる。バインダーとしては、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステルなどのエステル系可塑剤の他、各種の樹脂接着剤、特に熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0033】
熱可塑性樹脂には、溶融・固化により接着力が発現する樹脂であり、水不溶性または水難溶性樹脂、および水溶性樹脂が含まれる。水不溶性または水難溶性樹脂と水溶性樹脂とは、必要に応じて併用することもできる。
【0034】
水不溶性または水難溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の単独又は共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などのスチレン系重合体、変性されていてもよいポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド、ロジン誘導体(例えば、ロジンエステルなど)、炭化水素樹脂(例えば、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂など)、水素添加炭化水素樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種又は二種以上使用できる。
【0035】
水溶性樹脂としては、種々の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニル単量体と、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩を有する共重合性単量体との共重合体などのビニル系水溶性樹脂、アクリル系水溶性樹脂、ポリアルキレンオキサイド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミドなどを用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で使用できるとともに二種以上組合せて使用してもよい。
【0036】
熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を添加してもよい。
【0037】
トウからなる本発明の繊維集合体10は公知の方法により製造でき、その際、本発明では所望のサイズ、嵩となるように開繊される。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは150〜1500mm程度とすることができる。トウを開繊すると、後述する高吸収性ポリマーの移動がより容易になるため好ましい。
【0038】
トウの開繊度合いを調整することにより、繊維集合体10の密度を調整することができる。 本発明の繊維集合体10としては、厚さを10mmとしたときの繊維密度が0.0075g/cm3以下、特に0.0060〜0.0070g/cm3であるものが好適である。過度に繊維密度が高くなると、トウからなる繊維集合体10を用いることによる利点が少なくなり、例えば軽量化や薄型化を図り難くなる。また、本発明の繊維集合体10の目付けは、0.0075g/cm2以下、特に0.0060〜0.0070g/cm2であるものが好適である。繊維目付けは、原反となるトウの選択、あるいはその製造条件により調整できる。
【0039】
トウの開繊方法としては、例えば、トウを複数の開繊ロールに掛渡し、トウの進行に伴なって次第にトウの幅を拡大して開繊する方法、トウの緊張(伸長)と弛緩(収縮)とを繰返して開繊する方法、圧縮エアーを用いて拡幅・開繊する方法などを用いることができる。
【0040】
図3は開繊設備例を示す概略図である。この例では、原反となるトウ11が順次繰り出され、その搬送過程で、圧縮エアーを用いる拡幅手段12と下流側のロールほど周速の速い複数の開繊ニップロール13,14,15とを組み合わせた開繊部を通過され拡幅・開繊された後、バインダー添加ボックス16に通され、バインダーを付与(例えばトリアセチンのミストをボックス中に充満させる)され、所望の幅・密度のトウからなる繊維集合体10として形成されるようになっている。
【0041】
トウからなる繊維集合体10には、高吸収性ポリマーを含有させることができる。この高吸収性ポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸およびその塩類、アクリル酸塩重合体架橋物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、ポリオキシエチレン架橋物、カルボキシメチルセルロース架橋物、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド等の水膨欄性ポリマーを部分架橋したもの、あるいはイソブチレンとマレイン酸との共重合体等が好適に用いられる。製品の吸湿によるブロッキング性を抑制するためにブロッキング防止剤が添加されたものも用いることができる。また高吸収性ポリマーとしては、粉体状、粒子状、顆粒状、ペレット状、ゾル状、サスペンジョン状、ゲル状、フィルム状、不織布状等のさまざまな形態をもったものがあるが、これらはいずれも本発明において使用可能であり、特に粒子状のものが好適に使用される。
【0042】
高吸収性ポリマーを含有させる方法としては、トウからなる繊維集合体10に対して粉粒状の高吸収性ポリマーを散布する付与する方法、トウからなる繊維集合体10にモノマー(高吸収性ポリマーとなるもの)を含浸した後に重合する方法や、未架橋のゲル状高吸収性ポリマーをトウからなる繊維集合体10にコートした後に架橋処理を施す方法等を採用することができる。高吸収性ポリマーの目付け量は、吸収体の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、一般的には0.03g/cm2以下、特に好適には0.01〜0.025g/cm2とすることができる。
【0043】
また、繊維集合体10中に高吸収性ポリマーを含有させるのに代えて、あるいは繊維集合体10中に高吸収性ポリマーを含有させるのとともに、トウからなる繊維集合体10の表面側および裏面側の少なくとも一方に高吸収性ポリマーを層状に設けることもできる。特に繊維集合体10の裏面側に高吸収性ポリマー層を設けるのは好ましい。これらの場合において、高吸収性ポリマーは繊維集合体10を包むシート3sに接着剤により接着することができる。この場合の接着剤としては前述の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0044】
また、繊維集合体10は、図4(a)(b)に示すように、そのトウの繊維連続方向(直線で表している)が物品の前後方向に沿うように設けるのが望ましいが、図4(c)(d)に示すようにトウの繊維連続方向が物品の幅方向に沿うように設けることもできる。なお、図10中における符号DPは紙おむつを、及び符号NPは生理用ナプキンを示している。
【0045】
(溝を有する表面側層について)
また、本発明では、吸収体3の表面側に設けられた表面側層に連続線状の溝を設ける。この表面側層としては、上記実施形態の紙おむつでは、表面シート1、セカンドシート8、および繊維集合体10を包むシート3sが該当する。そして本発明ではこれらのいずれか一つ若しくは二つ以上、または全てに連続線状の溝20が形成される。表面シート1に溝20を設けると、より早期に体液を拡散させることができる点で有利である。またセカンドシート8や繊維集合体10を包むシート3sに溝を設けると、肌からより遠い位置で液を拡散させることができるため、ウェット感が和らぐ点で有利である。製造の容易性と効果とのバランスを考慮すると、表面シート1またはセカンドシート8のみか、あるいは両シート1,8に溝20を設けるのが好ましい。
【0046】
本発明の溝20の形態としては、主に体液の拡散方向を考慮して適宜定めることができ、例えば、次のような形態を採用することができる。
(1) 図1に示すように、物品前後方向に沿って溝20を設ける形態。
(2) 図5に示すように、物品幅方向に沿って溝20を設ける形態。
(3) 図1や図2に示すように、溝20を適切な間隔をもって複数列設ける形態。
(4) 図6に示すように、物品前後方向に沿う複数列の溝20と物品幅方向に沿う複数列の溝20を交差させて設ける形態(すなわち格子状に溝20を設ける形態)
(5) 図7に示すように、物品前後方向に沿って複数列の溝20を設けるとともに、物品前後側部分にのみ物品幅方向に沿う溝20を設けた形態。
(6) 図8に示すように、排泄位置を囲むように環状に溝20を設けた形態。
【0047】
本発明の溝20を設ける範囲は、体液の拡散範囲を考慮して適宜定めることができ、例えば、次のような形態を採用することができる。
(1) 対象シートの全体または略全体(例えば面積率で80%以上)。
(2) 図9に示すように、対象シートの一部、例えば物品前後方向若しくは幅方向の中間部若しくは両端部のみ。
(3) 図1等に示すように、少なくとも吸収体3と重なる範囲。
【0048】
本発明の溝20の数は適宜定めれば良く、一本であっても良いが、複数本、特に三本以上設けるのが好ましく、特に物品前後方向に沿う溝を三本以上設けるのが好ましい形態である。
【0049】
本発明の溝20の長さ、幅、深さ、および複数設ける場合の間隔は適宜設定することができる。これらの寸法は一概に定めることはできないが、紙おむつや生理用ナプキンの通常の形態では、溝20の長さは、50mm〜1000mm、特に70mm〜700mmとするのが好ましい。また、溝20の幅は、0.5mm〜50mm、特に1mm〜20mmとするのが好ましい。また、溝20の深さは、0.05mm〜10mm、特に0.1mm〜5mmとするのが好ましい。さらに、溝20の間隔は、0.5mm〜150mm、特に1mm〜50mmとするのが好ましい。
【0050】
本発明の溝20は、溝20を有するように素材自体を製造(例えば断面波状に製造する等)することにより形成しても良いが、適宜の製造工程で対象の部材にエンボス加工等の圧縮加工を施すことにより形成するのが好ましい。この場合、連続線状のパターンにより溝20を形成する他、図10に示すように点状の圧縮部21を多数連ねたパターンを採用し、圧縮部21相互が近接することにより連続線状の溝20を形成する手法も採用できる。
【0051】
本発明において複数のシートに溝20を設ける場合、溝20の形態を異ならしめることができる。例えば、表面シート1では物品前後方向に沿って溝20を延在させ、セカンドシート8では幅方向に沿って溝20を延在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】展開状態の紙おむつの平面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】トウからなる繊維集合体の製造フロー図である。
【図4】吸収性物品におけるトウ繊維の連続方向例を概略的に示す平面図である。
【図5】別の紙おむつ例の平面図である。
【図6】別の紙おむつ例の平面図である。
【図7】別の紙おむつ例の平面図である。
【図8】別の紙おむつ例の平面図である。
【図9】別の紙おむつ例の平面図である。
【図10】圧縮加工による溝の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…表面シート、2…裏面シート、3…吸収体、3s…繊維集合体を包むシート、4…サイドシート、5…弾性伸縮部材、6…外装シート、7A…止着片、7B…ターゲットテープ、8…セカンドシート、9…起立カフス、10…繊維集合体、20…溝、21…圧縮部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウからなる繊維集合体を含む吸収体と、前記繊維集合体の表面側に設けられた表面側層とを有する吸収性物品において、
少なくとも前記表面側層に、連続線状の溝を形成してなることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記表面側層は、装着者の肌に接触する表面シート、表面シートと吸収体との間に設けられたセカンドシート、および前記繊維集合体を包むシートの少なくとも一つである、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記溝は、物品の前後方向及び物品の幅方向の少なくとも一方に沿って一本以上設けられている、請求項1または2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記溝は、前記表面側層に圧縮加工を施すことにより形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−14880(P2006−14880A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194854(P2004−194854)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】