説明

吸収性物品

【課題】尿等に含まれる水分との接触によるインジケータの変色を視覚的に認識しやすく、しかも吸収性物品の良好な透湿性を維持することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収体3と該吸収体の外側に配したバックシート1とを有し、前記吸収体3と前記バックシート1との間に水分との接触によって変色するインジケータ13を配した吸収性物品10であって、前記バックシート1は前記吸収体側の透湿シート11とその外側の外装不織布12とを具備し、前記インジケータ13の色と該インジケータを配した部分及び少なくともその周辺領域wにおける前記外装不織布12の色との色差が、インジケータ変色前は1.5未満であり、インジケータ変色後は1.5以上であり、前記インジケータを配した部分及び少なくともその周辺領域wにおける前記外装不織布12の光透過率が50%以上である吸収性物品10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排尿等があったことを視覚的に知らせる吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品を着用したときに、尿や経血等の排泄があり吸収体がこれを吸収保持したことを視覚的に着用者やその保護者等に知らせる機能を有するものが種々提案されている。例えば、使い捨てナプキンの外観を黒色のものにし、その一部において白色の吸収体等が見える状態にしたものが提案されている(特許文献1参照)。これにより、黒色の下着と組み合わせて着用したときにナプキンが目立たず、一方で経血等の排泄があれば吸収体等が変色し、そのことを着用者が視覚的に知ることができる。
【0003】
上記とは異なり、排尿等による水分と接触すると変色する特定の剤やpH指示薬などをインジケータとして用いたものがある。中でも視覚的な効果に着目したものとして、変色しないキャラクター図柄と変色する図柄とを組み合わせたものが提案されており、子供の排泄訓練に効果があるとされる(特許文献2参照)。また、視認性を高める目的で、吸収体が湿潤状態にあることを視認可能とするインジケータの外側に配されるバックシートの光透過率を所定の範囲にしたものがある(特許文献3参照)。さらに、上記変色性のインジケータの外側に配したバックシート(複数のシートからなる場合はその各シート)の表面もしくは裏面に変色しない着色層を印刷形成したものなどが提案されている(特許文献4〜8参照)。
【0004】
【特許文献1】特表2004−520856号公報
【特許文献2】特表2003−501209号公報
【特許文献3】特表2007−117649号公報
【特許文献4】実開昭59−24704号公報
【特許文献5】特開2004−337385号公報
【特許文献6】実開昭60−20509号公報
【特許文献7】特開2004−057640号公報
【特許文献8】特開2004−089614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した可変色のインジケータを用いる吸収性物品においては、通常インジケータが吸収体と接する位置に配置され、その外側にバックシートが配される。したがって、吸収性物品の外側からは、インジケータの色の変化をバックシートを介して見なければならず視認しにくい。さらに、インジケータに用いられる変色する剤等が尿等と接触することにより、にじみが生じたり、色や輪郭がぼやけたりすることもある。また、視認性を重視しインジケータを目立つ色のものにしすぎれば、通常肌に添えて使用する吸収性物品の清潔感を損ないかねない。このように、清潔感のある色で、しかもバックシート越しに透かして見て、場合によってはにじんだようなときにも、視覚的に排尿等があったことを着用者や保護者に的確に知らせることは容易ではない。一方、排尿等を長時間放置すれば単に不快感を与えるだけでなく、例えば乳幼児などにおいては肌荒れやかぶれなどを起こす原因にもなり、できるだけ速やかに正しく排尿等があったことを保護者が知る必要がある。
【0006】
また、インジケータと組み合わせて変色しない模様や図柄を不用意にバックシートに印刷形成してしまうとバックシートに求められる本来の機能に影響することがある。とりわけ、インジケータが配される部分は吸収体が水分を吸収し湿気を帯びるため、高い透湿性があり吸収体内部の蒸れをできるだけ防ぐことが求められる。そのためバックシートに高い透湿性を有するものが開発され好適に採用されてきているが、その表面に印刷による塗膜を形成したのでは、透湿性を発現するシート内の微細孔が閉塞され、その良好な透湿性を減殺させてしまうことともなる。
【0007】
本発明は、尿等に含まれる水分との接触によるインジケータの変色を視覚的に認識しやすく、しかも良好な透湿性を維持することができる吸収性物品の提供を目的とする。とくにインジケータの視認性については、着用初期においてはインジケータが目立たずすっきりした外観で、これが変色した後にはっきりと目視認識させ、排尿等があったことを的確に知らせる吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記の課題は、吸収体と該吸収体の外側に配したバックシートとを有し、前記吸収体と前記バックシートとの間に水分との接触によって変色するインジケータを配した吸収性物品であって、前記バックシートは前記吸収体側の透湿シートとその外側の外装不織布とを具備し、前記インジケータの色と該インジケータを配した部分及び少なくともその周辺領域における前記外装不織布の色との色差が、インジケータ変色前は1.5未満であり、インジケータ変色後は1.5以上であり、前記インジケータを配した部分及び少なくともその周辺領域における前記外装不織布の光透過率が50%以上である吸収性物品により解決された。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性物品は、尿等に含まれる水分との接触によるインジケータの変色を視覚的に認識しやすく、しかも着色した領域を有するにもかかわらず、吸収性物品の良好な透湿性を損なわずに維持することができるという優れた作用効果を奏する。とくに本発明の吸収性物品のインジケータの視認性については、着用初期においてはインジケータが目立たずすっきりした外観で、これが変色した後には、はっきりと目視認識させ、例えば吸収性物品を覆う着衣を多少開けて覗くように見る状況においても、排尿等があったことを的確に知らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の吸収性物品の好ましい実施形態としてのパンツ型使い捨ておむつをおよそ装着したときの形状で模式的に示す斜視図である。本実施形態のおむつ10においては、ウエスト開口部t及び左右一対のレッグ開口部sが設けられており、ウエスト開口部tに着用者の胴周り及び腰周りを通し、レッグ開口部sに腿を通して装着される。ウエスト開口部t近傍にはウエストギャザーをなす弾性部材6が複数配設され、着用者の胴周り及び腰周りを適度に締め付けてフィットするようにされている。また、レッグ開口部sの近傍にもレッグギャザーをなす弾性部材8が複数設けられており、腿を適度に締め付けて良好なフィット性が実現される。
【0011】
本実施形態のおむつ10においては、サイドシール部4が設けられ、おむつの前身頃側fと後身頃側rとをここで接合している。ただし、本発明においては、サイドシール部4を設けずに、着用時にファスニングテープにより接合するテープタイプのおむつとしてもよい。また、本実施形態のおむつ10を乳幼児用のおむつとして例示しているが、成人用のおむつであってもよく、その他、ニーズに応じて必要な形態とした吸収性物品とすることができる。
【0012】
本実施形態のおむつ10を構成する上記の各部材は通常この種の物品に用いられるものを用いればよい。例えばトップシート2としては親水性の不織布や開孔フィルムなどを用いることができる。吸収体3としては、パルプや高吸水性ポリマー等を用いることができる。弾性伸縮部材6,8としては各種エラストマー材料を用いることができる。バックシート1を構成する部材及びその製造方法については後に詳しく説明する。また、上記の各材を組み立てておむつとする方法も特に限定されず、この種の使い捨ておむつに適用される通常の製造方法によればよい。
【0013】
図2は、図1におけるII−II線断面を拡大して示す断面図である。同図および図1により示したように、本実施形態の使い捨ておむつ10には、バックシート1と吸収体3との間に、水分と接触すると変色するインジケータ13が設けられている(本発明において変色とは、上記のように水分との接触の前後で色が変化することであり、水分との接触で色が消失すること、及び水分との接触で色が現れることを含む概念である。)。本発明の吸収性物品においてインジケータの変色は、目視によって色(色相、彩度、明度のいずれであってもよい。)の変化が認識しうる程度に変化すればよく、色差が1.5以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましい。本発明において「色差」とは、特に断らない限り、L表色系における色差(ΔEab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2)をいう。
【0014】
本実施形態においては、バックシート1の透湿シート11の内側(肌当接面側)にインジケータ13が配されている(図2参照)。ここでインジケータは、例えば粘着成分にpH指示薬(例えばブロモフェノールブルー)等を混合したホットメルト組成物を透湿シート11における吸収体対向面に塗布し、この吸収体対向面上に吸収体3を配置して形成することができる。このとき吸収体3とインジケータ13との間に台紙等が配置されるようにしてもよい。また、透湿シート11とインジケータ13との間、透湿シート11と外装不織布12との間、外装不織布12の外側に他の機能性シート等を設けてもよい。また、これらのシートないし不織布層を複数の層からなる構造のものとしてもよい。
【0015】
本実施形態において、インジケータ13はおむつ幅方向の中央部分において、おむつ底部cから前身頃fにかけて直線状に設けられている。そして、おむつ幅方向に3本の細長い線が並列するように設けられている。これによって、排尿が特に集中するおむつ底部(着用者の股下部分)cないし前身頃側(着用者の腹側)fでのインジケータ13の変色が認識できるようにされている。また、インジケータ13を細幅帯状の形態にしておむつ幅方向に複数本(本実施形態では3本)並列させているので、視覚的変化が一層認識しやすい。
【0016】
本発明の使い捨ておむつでは、バックシート1の前記インジケータを配した部分及び少なくともその周辺領域wで示した領域内に水分と接触しても実質的に変色しない着色領域(以下、不変色着色領域という。)が配されている。ここで、バックシートにおける水分と接触しても実質的に変色しないとは、多少の色変化があっても目視において色が変化していないと認識される状態をいう。例えば水分がシートに吸収されて生じる程度の色の変化(典型的にはシートが濡れることにより多少色が濃く見える程度の変化)は、実質的に色が変化しないという意味に含まれる。
【0017】
本実施形態のおむつ10においては、上記バックシート1の補助線で示した前記インジケータを配した部分及び少なくともその周辺領域wの色が外装不織布12を着色することによりなされている。すなわち、透湿シート11は着色されておらず全面において半透明の乳白色であり、外装不織布12の領域w(外装不織布の不変色着色領域12a)が着色されている。
【0018】
本実施形態のおむつ10においては、インジケータ13の変色前の色と、その部分を含む周辺の領域wの外装不織布(つまり、外装不織布の不変色着色領域12a)との色差(ΔE)が1.5未満であり、すなわち同系色とされている。そのため、排泄による水分がインジケータ13に到達する前にはインジケータ13が目立たず見た目に違和感がなくすっきりした外観とされている。ここで、本発明においては、インジケータ13の変色前の色と外装不織布の不変色着色領域12aの色とが同色でなくても同系色であればよく、初期色差(ΔE)が好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.5以下である。初期色差(ΔE)に下限は特にないが0.1あることが実然的であるより具体的に、本実施形態では上記インジケータ13の色が変色前において黄色であり、水分との接触をうけて青緑色に変色する。これに対し、外装不織布の不変色着色領域12aは黄色で着色されており、その周辺領域の非着色領域12bは白色にされていることが好ましい。なお、本実施形態におけるインジケータの周辺領域wの大きさは特に限定されないが、インジケータの色の変化に対して看者の目視認識に与える影響を考慮して機能的に定めてもよく、例えばインジケータからの距離でみて5〜50mmの範囲としてもよい。ただし、後述するように製造効率等を考慮して外層不織布等の色などをこの領域wを超えて一定のものとしてもよい。
【0019】
インジケータ13が水分と接触し青緑色に変わると、黄色の領域wの中にこの青緑色の線が映えるように浮きだし、着用者や保護者(看者)がその色の変化を明確に目視により認識することができる。本発明の吸収性物品において、変色後のインジケータの色みは特に限定されないが、視認性の点から、変色後のインジケータの色とその周辺領域wの外装不織布(不変色着色領域12a)の色との終期色差(ΔE)が1.5以上であり、3.0以上が好ましい。
【0020】
さらに上記の色の変化における視認性について詳しく説明する。上述のようにあたかも何も無いかのように同色系にされた領域から、その一部に図形(本実施形態においては3本の線)が浮き出してくる変化は、看者の興味をそそりその注目を強く引き出す効果を奏する。すなわち、全く何も無いか、あるいは有るとしてもあまり目立たないところに、異質なものが出現したかのような多少の驚きを与えることによって、その色の変化を強く印象付けることができる。
【0021】
ところで、前に述べたように通常の吸収性物品においては、インジケータが少なくともバックシートの内側(看者からみてバックシートの裏側)に配されており、インジケータはこのシートを透かして見ることとなる。そのためインジケータは不可避的にぼやけた色味となり、例えば黄色から青緑色に変色しても、バックシートが白色であればインジケータは白みがかった色変化に留まり看者に与える印象は弱まる。また、場合によりインジケータの初期色が黄色であったか青緑色であったか記憶にないこともあり、結局、果たしてその色が変色前(排尿等の前)のものであるのか、変色後(排尿等の後)のものであるのか判別がつかないことともなる。
【0022】
これに対し、本実施形態のおむつ10によれば、上述したようなインジケータの色及びその輪郭が浮き出す視覚的作用により、通常のものではなしえないほどインジケータ13の変色を強く看者に認識させることができる。また、変色があって初めてインジケータ13が浮き出すことから、たとえ保護者等が変色前後の色を失念しても、誤認することなく排尿等があったことを判別することができる。なお、本実施形態においてはインジケータ13に重ねるように外装不織布の不変色着色領域12aを設けているが、本発明における着色形態はこれに限定されず、インジケータ13の周辺領域wに外装不織布の不変色着色領域12aが設けられていればよい。例えば、上述した視覚的効果が得られる範囲で、インジケータ13と幾分離れた位置に外装不織布の不変色着色領域12aを設けてもよい。
【0023】
また、外装不織布の不変色着色領域12aをグラデーション、図柄模様等にしてもよく、これらにより上述した視覚的効果がさらに高まる。さらに、図柄とする態様においては、インジケータ13及び外装不織布の不変色着色領域12aのいずれかもしくは両方を図形化し、これらを組み合わせて例えば人の顔や動物などが浮き出す形態にしてもよい。これにより上述したインジケータが出現する視覚的効果を一層高めることができる。さらに、上記図柄を人気キャラクターなどにすれば、着用者が乳幼児であるときなどにはその者に特別の印象を与え、排尿等があったことを肌の感触だけでなく視覚的にも印象付けることができ、おむつトレーニングに効果がある。
【0024】
次に、インジケータについて説明する。インジケータは上述のように水分と接触することによって変色するものである。そこに含まれる変色物質としては例えばpH指示薬等が挙げられる。pH指示薬としては、吸収性物品が本実施形態のようにおむつの場合には、尿等の水分との接触の前後で色が変化するものを用いることが好ましい。例えばブロモフェノールブルー、メチルオレンジ、アリザンS、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、ブロモクレゾールパープル、レザズリン等、pHが3〜7で変色するものが好ましい。なお、本発明において「水分」というときには、単に水のみからなる液分だけではなく、水に酸、塩基、塩、有機化合物等が溶解した水系組成物を含む。
【0025】
インジケータ13を所定のシート等に固定化する方法としては、変色物質と粘着性物質とを混合した親水性の組成物として、表面に塗布する方法が簡便かつ確実である。粘着性物質としては、変色物質との相溶性の点から親水性を有するものが好ましい。そのような物質としては例えば、接着剤として機能する親水性のポリマーが挙げられる。親水性のポリマーとしては例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ビニルピロリドンホモポリマー等が挙げられる。これら親水性のポリマーはその数平均分子量が、1000〜50000であることが好ましく、2000〜20000であることが、確実な固定化を与える点からより好ましい。なお、インジケータに用いる材料やシートに固定化する方法などは例えば特開2004−337385号公報を参考にすることができる。
【0026】
次に透湿シートについて説明する。インジケータ13は上述のように透湿シート11を通しておむつ外部から認識されるため、インジケータの視認性を良くするよう透湿シートとして透明度が高いものを用いることが好ましい。このような観点から、透湿シート11の光透過率は20〜100%であることが好ましく、30〜100%であることがより好ましい。なお、光透過率は以下のようにして測定する。
[光透過率]
本発明において光透過率は、(株)日本電色工業製ヘーズメーター、商品名「NDH5000」で、JISK7361-1に基づき全光透過率Ttの値を測定する。この測定条件で測定対象とされるシート上の任意の10点を測定し、その平均値をもって本発明における光透過率の値とする。
【0027】
また、本実施形態において透湿シート11の色は特に制限されないが、変色後インジケータが視認し易くする目的では、外装不織布12と同系色又は白色であることが好ましい。同系色を選択した場合には外装不織布12と透湿シート11との色差が1.5未満であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。また、白色を選択した場合には、透湿シート11として、L*a*b*各々の値がL*=70以上、a*=0±3、b*=0±3のものを用いることが好ましく、特にL*=85以上、a*=0±2、b*=0±2のものを用いることがより好ましい。
【0028】
また、透湿シート11は液不透過性でかつ透湿性に富むものであることが好ましい。透湿シート11の透湿度は、JIS Z0208に準じ、30℃、湿度90%で1時間保存後の試料についての値で、0.5〜4.0g/(100cm・hr)であることが好ましく、1.0〜4.0g/(100cm・hr)であることがより好ましい。
【0029】
透湿シート11に用いられる素材としては例えば多孔性フィルムが挙げられる。多孔性フィルムは例えば、疎水性の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等からなる微細な無機フィラー又は該樹脂と相溶性のない有機高分子等とからなる樹脂組成物を溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる。熱可塑性樹脂としては例えばポリオレフィンが挙げられる。ポリオレフィンとしては高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用することができる。前記樹脂組成物中での熱可塑性樹脂の含有量は特に限定されないが、例えば30〜60質量%であることが好ましい。
【0030】
上記のフィラーとして用いられるものは特に限定されないが、例えば無機充填剤が挙げられ、透湿シートを多孔質にして十分に透湿性を付与しうるものであることが好ましい。無機充填剤としては例えば、炭酸カルシウム、石膏、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、カーボンブラック、アルミニウム粉、鉄粉などの粉粒体が挙げられる。これらは一種又は二種以上を併用できる。得られる透湿シートの強度確保や製造時のシート破れの防止の点から、これらの無機充填剤はその平均粒径が0.3〜8μmで最大粒径が20μm以下であることが好ましく、平均粒径が0.5〜5μmで最大粒径が15μm以下であることが更に好ましい。
【0031】
前述した各種無機充填剤のうち、炭酸カルシウムや硫酸バリウムを用いることが好ましく、特に炭酸カルシウムを用いることが好ましい。炭酸カルシウムを用いるとき、その比表面積が16000〜24000cm/gであることが好ましく、18000〜22000cm/gであることがより好ましい。このようなものを用いることで、透湿性が高く耐水性も高いシート、すなわち緻密な孔が多数開いていて液がにじみにくく、かつ十分な強度のシートを得ることができる。前記樹脂組成物中の無機充填剤は、熱可塑性樹脂100質量部に対して40〜70質量部であることが好ましい。これにより高い透湿性を有する透湿シートとすることができ、シートの耐水性を維持して液がにじみにくいものとすることができ、更には十分な強度や成形性が維持されうる。
【0032】
透湿シートとする前記樹脂組成物においては、上記熱可塑性樹脂及びフィラーに加えて、しなやかな風合いや製造時の取り扱い性等を向上させるために、第三成分を添加することができる。
【0033】
本実施形態のおむつ10において、外装不織布12は、インジケータ13が十分に透けて見えるよう光透過率が高く外装不織布の不変色着色領域12aの光透過率は50%以上であり、好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。上限値は好ましくは100%であるが、95%以下であることが実際的であり、より現実的には90%程度である。
【0034】
また、外装不織布12としては、透湿シートの透湿性を低下させずさらには着用者や保護者に対する良好な肌触りが得られるような柔らかい手触りの素材を用いることが好ましい。具体的には上記のような性質を有するふんわりした風合いの不織布を用いることが好ましい。該不織布の坪量は、上記の性質を考慮し5〜45g/mであることが好ましく、10〜40g/mであることがより好ましい。
【0035】
外装不織布12に用いられる不織布としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルからなる熱可塑性樹脂単独の繊維や、これらの樹脂の2種以上を用いてなる芯鞘型やサイドバイサイド型の構造を有する複合繊維から構成される不織布等が挙げられる。
【0036】
本実施形態においては、上述したように外装不織布12の一部がインジケータ13の変色前と同色系の色で着色されている。さらに具体的には、外装不織布の不変色着色領域12aが黄色に着色され、変色前において黄色のインジケータ13が目立たないようにされていることが好ましい。この外装不織布の不変色着色領域12aの着色は、不織布に適用される通常の着色法によればよく、特に限定されないが、印刷による着色、繊維着色(原料着色)による着色、またはこれら両者を組みあせた着色等が挙げられる。ただし本発明における外装不織布の着色とは、その内側に配される「透湿シートの透湿性を維持しうる」着色であることが好ましい。外装の着色部は、インジケータ部の面積に比べ2倍以上の面積比があることが好ましい。
【0037】
ここで「透湿シートの透湿性を維持しうる」とは、透湿シートの透湿度が外装不織布等と組み合わせてバックシートとしたときに低減されることなく維持される状態のほか、多少低滅されていても着用者のムレ防止機能等において本質的に影響を与えない程度で良好な透湿性が維持されている状態を含む意味である。外装不織布と透湿シートとを貼り合せるときにホットメルトを使用することがあるが、ホットメルトを透湿シート全面に厚く塗工しすぎると透湿シートの微細孔がふさがれ透湿性を維持しがたいことがある。そのため、透湿シートの透湿性を維持するようにホットメルトをパターン状に塗るなどして被覆面積を減らすことが好ましい。具体的には、透湿シートが有する上記で定義される透湿度に対する、これに外装不織布等を配設しバックシートとしたときの透湿度の比率({[バックシートの透湿度]/[透湿シートの透湿度]}×100)が30〜100%であることが好ましく、50〜100%であることがより好ましい。ただし、透湿シートと外装不織布とが着用中にはがれることがないよう良好に貼り合わさるようにされることを考慮すると、上記比率の上限値は90%であることが実際的であり、好ましくは85%である。
【0038】
通常バックシートを着色する場合、透湿シートの表面に着色塗膜が印刷形成されるが、前述のとおり、これでは透湿シートに形成された微細孔が閉塞されてしまう。折角高い透湿性を有する透湿シートを作製しても、上記印刷形成された部分において、その良好な透湿性が大幅に低減されてしまうか、あるいは失われてしまう。とりわけインジケータの配置される部分は尿の水分の排泄を主に受ける領域であり高い透湿性の維持が望まれる。
これに対し、本発明においては外装不織布を着色したため、透湿シートの微細孔を不用意に閉塞してしまうことなく透湿性を維持することができる。その結果、本発明によれば、単に透湿シート表面に着色塗膜を設け印刷形成したのでは実現しがたい、インジケータの視認性の向上と良好な透湿性の維持とを両立して実現しうる。ただし、本発明において適宜必要な範囲で透湿シートにプリント印刷等を施してもよい。
【0039】
上記不変色着色領域12aの着色を印刷により行う場合、小面積であっても大面積であっても着色や模様、柄等を付すことができ好ましい。特に不織布が細い繊維を交絡してウェブ状に構成したものであるようなときには、印刷による着色を繊維表面に施して、繊維間に確保された空隙の量をほぼ維持することができ、透湿性をほぼ損なうことなく着色が可能となる点で好ましい。
【0040】
ここで、不織布に対する印刷を不織布の表面(着用者に対して反対側の面)に行っても、裏面(着用者側の面であって透湿シート側の面)に行ってもよい。外装不織布の表面側に印刷することにより、その着色が外装不織布の外側に露出され、印刷された色、模様、柄等を着用者や保護者にはっきりと視認させることができる。例えば、おむつトレーニングや知育を目的として乳幼児等に図柄等を印象づけたいようなときには、このように外装不織布の表面側に印刷することが好ましい。これに対し不織布の裏側に印刷することにより、色落ちしにくく、例えば幼児が動き回って擦れたり、おむつをはかせるときに外装不織布を含むシートを強く引き上げたりしても安定した着色状態が維持される点で好ましい。
【0041】
上記とは別に、外装不織布の不変色着色領域12aの着色を繊維着色(原料着色)により行うことができる。繊維着色とは具体的には顔料を混合溶融した繊維材料を紡糸・繊維化する、繊維を染料で着色する、高温下に放置して変色させる方法が挙げられる。これにより所望の色に着色された繊維を得ることができ、この繊維を所定の方法で加工して、その色に着色された不織布を得ることができる。
繊維着色による着色によれば、おむつの全面着色に好適に対応することができる。また、別途の印刷工程等を必要とせず、効率的に所望の色に着色された吸収性物品を製造することができ、低コスト化が可能である。このように生産性を維持しコストを低く抑えることは、使い捨て物品が一度使用されると廃棄されるという使用態様を考慮するとき極めて重要なことである。さらには、繊維自体が着色されているため、不織布とした後にこの表面に着色料等による塗布膜等が形成する必要がない。このことは外装不織布が通常直接着用者や保護者等の手に触れる最外層をなすことを考慮したとき特に、不織布自身がもつ柔らかい風合いが維持される点で好ましい。
【0042】
本実施形態における外装不織布の不変色着色領域12aは上述のようにインジケータ13の変色前の色と同系色にされている。具体的には該外装不織布と前記変色前のインジケータのb*値がともに4〜30であることが好ましく、外装不織布と変色前インジケータのbの差(〔変色前インジケータのb値〕−〔外装不織布のb値〕)が0〜0.5の範囲であることが好ましい。なかでも前記外装不織布の不変色着色領域12aにおける着色をL表色系のb値を4〜20とすることが好ましく、4〜15にすることがより好ましい。このような色相とすることにより、インジケータとして実用的なものの色に対応することができ、また吸収性物品の清潔な外観を維持することができる。
【0043】
[L表色系におけるL値,a値,b値]
本発明において、L表色系におけるL値,a値,b値は、特に断らない限り、日本電色工業(株)社製のハンディ型分光色差計NF777(商品名)を用い、照明条件C、視野角条件2°、正面受光条件=0/45°、光束径φ10mmの測定条件で求めた値をいう。具体的に、測定サンプルがシート状のもの(外装不織布や透湿シート等)の場合には該シート状物を10枚重ねた状態でその裏側に台紙を5mm以上の厚さとなるように複数枚重ねた状態で反射光を測定し、インジケータの場合には該台紙にインジケータを十分な面積設け、その裏面に白色台紙を5mm以上の厚さとなるよう複数枚重ねた状態で測定して求めた値をいう。台紙は測定に使用する枚数重ねた状態でL=95以上、a=0±2.0、b=0±4.0のものを使用する。具体的に、白色台紙としてL=96、a=−1.1、b=3.7のものが挙げられる。
【0044】
また、外装不織布の不変色着色領域12aの透湿度は特に限定されないが、透湿シート11より高い透湿度であることが好ましく、具体的には1.0g/100cm・h以上であることが好ましい。このような透湿度の外装不織布を得るには、あらかじめ着色された繊維を用いて不織布を得る方法や、一定環境下でエージングする方法等が挙げられる。なお、外装不織布の非着色領域12bにおいても光透過率及び透湿度は特に限定されないが、上述した不変色着色領域12aと同様の範囲のものであることが好ましい。
【0045】
外装不織布12は、インジケータの視覚的変化の認識性を高める、あるいはおむつの外観が与える美観等を向上させるために、不変色着色領域12a及び非着色領域12bのいずれかを問わず模様や図柄を施しても構わない。このことは前記透湿シート11についても同様であり、例えば動物等の模様を描くことは、物品全体の外観イメージを向上させる点で好ましい。ただし、インジケータ13の周辺領域wにおいては透湿シート11に印刷等による着色を施こさないことが好ましい。このようにすることで上述したように外装不織布の着色との相互作用により、透湿性が維持されるバックシート1における着色領域の付与と良好な透湿性との両立を一層効果的に実現しうる。
【0046】
外装不織布12と透湿シート11とは一部において接合されていても、全面において接合されていてもよい。バックシート1としたときの強度等を考慮して全面で接合することが好ましく、例えば上述したようにホットメルトを不織布に特定のパターンにより部分的に塗工した後、透湿シートと接着することによって外装不織布12と透湿シート11とを接合することができる。
【0047】
本発明の吸収性物品は、着用者の身体から排泄ないし浸出する液体等を吸収保持する物品であれば特に限定されず、着用者の肌に接してあるいは接近して用いる物品であることが好ましい。具体的には、使い捨ての吸収性物品であることが好ましく、例えば使い捨ておむつのほか、生理用ナプキン、パンティライナー等として用いるものであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の吸収性物品の好ましい実施形態としてのパンツ型使い捨ておむつを模式的に示す斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II線断面を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 バックシート
2 トップシート
3 吸収体
4 サイドシール部
6 ウエストギャザー用弾性部材
8 レッグギャザー用弾性部材
10 吸収性物品(パンツ型おむつ)
11 透湿シート
12 外装不織布
12a 外装不織布の不変色着色領域
12b 外装不織布の非着色領域
13 インジケータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と該吸収体の外側に配したバックシートとを有し、前記吸収体と前記バックシートとの間に水分との接触によって変色するインジケータを配した吸収性物品であって、前記バックシートは前記吸収体側の透湿シートとその外側の外装不織布とを具備し、前記インジケータの色と該インジケータを配した部分及び少なくともその周辺領域における前記外装不織布の色との色差が、インジケータ変色前は1.5未満であり、インジケータ変色後は1.5以上であり、前記インジケータを配した部分及び少なくともその周辺領域における前記外装不織布の光透過率が50%以上である吸収性物品。
【請求項2】
前記外装不織布と前記透湿シートとが貼り合わされて前記バックシートをなしており、前記インジケータを配した部分及び少なくともその周辺領域における、前記バックシート全体の透湿度を前記透湿シートの透湿度で除した値の百分率が30〜100%である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記インジケータを配した部分及び少なくともその周辺領域における前記外装不織布のb*値と変色前の前記インジケータのb*値とがともに4〜30であり、後者から前者を減じたb*の差が0〜0.5の範囲である請求項1又は2記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−254596(P2009−254596A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107302(P2008−107302)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】