説明

吸収性物品

【課題】底部を有する導液凹部を有し、クッション性が良好であると共に吸収体への液の移行性に優れた、吸収性物品の表面シートを提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性物品10は、液透過性の表面シート1、裏面シート11及びこれら両シート間に介在された吸収体12を備え、実質的に縦長であり、表面シート1は、不織布2からなり、該不織布2に、表面31側が肌に接する表面部3と、周壁部43及び底部44を有し吸収体側に向かって突出する多数の導液凹部4とを有し、表面シート1は、吸収性物品長手方向断面視において、表面部3と導液凹部43の周壁部41との境界部又はその近傍に高剛性部45を有し、該高剛性部45は、表面部3及び前記周壁部43それぞれより剛性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー(下り物シート)、失禁パッド等、身体から排出される液の吸収保持に用いられる吸収性物品、及び吸収性物品用の表面シートに関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の表面シートとして、表面に凹凸を有するものが知られている。
例えば、片面側に突出する立体的な開孔を有する不織布製のシートが知られている(特許文献1,2参照)。特許文献1記載のシートにおいては、孔の周囲に繊維材料が熱により固化した環状の固化区域が形成されている。不織ウエブを環状の顧客域表面シートは、先端の尖った突起を不織布に突き刺すと共に該突起の周囲に位置する部分を加熱して立体的な開孔を形成している。
【0003】
また、熱可塑性繊維を融着させた不織布に、導管凹部と該導管凹部の周縁に連続する肌当接域とを形成し、該導管凹部の底部及び側部に複数の導液裂け目を設けたものが提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−125061号公報
【特許文献2】特開平8−246321号公報
【特許文献3】特開平4−58951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の表面シートのうち、特許文献1,2のシートのように、立体的な開孔を有するものは、生理用ナプキン等に用いたときに、吸収体に吸収された経血等の色が開孔を通して、外部から見えやすいという欠点がある。また、下端が開口していることによって、立体形状が潰れやすく、あるいは潰れた状態からの回復性に劣るため、クッション性が不十分となり易い。更に、特許文献1のシートにおいては、孔の周囲の固化区域がシート中を浸透することによる液の移動を妨げるため、シート表面から吸収体への液の移行性に劣る。
他方、特許文献3の表面シートは、不織布における繊維自由度(動きやすさ)の低さを利用して導管凹部の形成時に導液裂け目を形成しているため、導管凹部の立体形状が潰れやすく、クッション性も劣る。
【0006】
従って、本発明の目的は、底部を有する凹部を有し、吸収体への液の移行性やクッション性が良好であり、更に装着時に湾曲させても表面シートに皺が生じにくい吸収性物品を提供することにある。
また、本発明の目的は、底部を有する凹部を有し、吸収体への液の移行性やクッション性が良好であり、更に凹部の繊維配向方向の前後にある高剛性部および凹部によって表面シートに皺が生じにくい吸収性物品用の表面シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液透過性の表面シート、裏面シート及びこれら両シート間に介在された吸収体を備え、実質的に縦長の吸収性物品であり、前記表面シートは、不織布からなり、該不織布は、表面側が肌に当接する表面部と、周壁部及び底部を有し吸収体側に向かって突出する多数の導液凹部とを有し、前記表面シートは、吸収性物品長手方向断面視において、前記表面部と前記周壁部との境界部又はその近傍に高剛性部を有し、該高剛性部は、前記表面部及び前記周壁部それぞれより剛性が高い吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、吸収性物品の肌当接面に用いられる、吸収性物品用の表面シートであって、不織布からなり、該不織布は、表面側が肌に当接する表面部と、周壁部及び底部を有し吸収体側に向かって突出する多数の導液凹部とを有し、不織布の繊維配向方向に沿う断面において、前記表面部と前記周壁部との境界部又はその近傍に高剛性部を有し、該高剛性部は、前記表面部及び前記周壁部それぞれより剛性が高い、吸収性物品用の表面シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性物品は、底部を有する凹部を有し、吸収体への液の移行性やクッション性が良好であり、更に装着時に湾曲させても表面シートに皺が生じにくい。
本発明の吸収性物品用の表面シートは、底部を有する凹部を有し、吸収体への液の移行性やクッション性が良好であり、更に凹部の繊維配向方向の前後にある高剛性部および凹部によって表面シートに皺が生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態である生理用ナプキン10(以下、単に生理用ナプキン10ともいう)は、図1に示すように、液透過性の表面シート1、裏面シート11及びこれら両シート1,11間に介在された吸収体12を備え、実質的に縦長に形成されている。表面シート1及び裏面シート1は、吸収体12の周縁より外方において互いに接合されている。
生理用ナプキン10は、着用時に着用者の液排泄部に対向配置される排泄部対向部Aの左右両側に一対のウイング部13,13を備えている。図1に示すように、生理用ナプキン10は、着用時に、その長手方向の断面形状が凹状をなすように湾曲した状態とされる。表面シート1において、「着用時における吸収性物品の湾曲方向」は、ナプキン10の長手方向Xであり、該湾曲方向に直交する方向は、ナプキン10の幅方向Yである。
【0011】
生理用ナプキン10に用いられている表面シート1は、本発明の吸収性物品用の表面シートの一実施形態であり、図2〜図4に示すように、不織布からなり、該不織布に、表面31側が肌に当接する表面部3と、周壁部43及び底部44を有し吸収体12側(図3の下方側)に向かって突出する多数の導液凹部4,4・・とを有してなる。
導液凹部4は、図3に示すように、表面41側が凹状をなし、裏面42側が凸状をなしている。
不織布2としては、吸収性物品の表面シートに従来用いられている各種の不織布を特に制限なく用いることができ、例えば、エアースルー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布等を用いることができる。これらの中で好ましいのはエアースルー不織布である。エアースルー不織布は、カード法又はエアレイ法により形成した繊維ウエブをエアースルー法による熱風処理により不織布化して得られるものである。
表面部3の表面31及び導液凹部4の表面41は、吸収性物品1に組み込まれた状態において着用者の肌側に向けられている、表面シート1の片面であり、表面部3の裏面32及び導液凹部4の裏面42は、吸収性物品1に組み込まれた状態において着用者の肌側とは反対側(吸収体側)に向けられている、表面シート1のもう一方の面である。
【0012】
不織布2の構成繊維は、立体形状の安定性に優れた導液凹部を形成する観点から、熱融着性繊維、特に熱可塑性ポリマー材料からなる繊維が好ましい。熱可塑性ポリマー材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。またこれらの熱可塑性ポリマー材料の組合せからなる芯鞘型あるいはサイド・バイ・サイド型等の複合繊維も好ましく用いられる。これらの繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。不織布2は、熱融着性繊維以外にパルプ繊維等の熱融着性を有しない繊維を含んでいても良い。不織布の全構成繊維中、熱融着性繊維の割合(重量基準)は50〜100%であることが好ましく、80〜100%がより好ましく、とりわけ100%であることが好ましい。また、不織布2中の熱融着性繊維は、親水化されていることが好ましい。
【0013】
表面シート1は、吸収性物品に組み込まれた状態において、表面部3の表面31側が着用者の肌に当接する。表面部3は、このように表面31側が着用者の肌に当接する部分である。
表面シート1における表面部3は、原料シートとして用いた不織布が凹凸加工を施して導液凹部4を形成した後も略平面状を維持している部分である。また、表面部3は、各導液凹部4の周囲に連続して形成されている。
表面シート1は、多数の導液凹部4が、それぞれ、表面部3から吸収体側に向かって突出するように形成されているため、肌側に向けて突出する多数の独立凸部を有する表面シートに比べて、肌を伝って流れる液を、より素早く表面シート1内に取り込むことができる。そのため、肌を伝って液が流れることによる不都合、例えば吸収性物品からの液漏れ等を効果的に防止することができる。
【0014】
図2及び図3(a)に示すように、表面シート1は、ナプキンの長手方向断面視〔図3(a)参照〕において、肌に当接する表面部3と導液凹部4の周壁部41との境界部に高剛性部45を有している。
より具体的には、高剛性部45は、導液凹部4の開口周縁部に形成されている。また、高剛性部45は、一つの導液凹部4に対して2個形成されており、それらは、生理用ナプキン1の長手方向Xにおける、その導液凹部4の前後に形成されている。
【0015】
各高剛性部45は、ナプキンの長手方向断面〔図3(a)参照〕において、肌に当接する表面部3より剛性が高くなされている。ここでいう、表面部3の剛性は、表面部3の中央部位3Aの剛性、又は、ナプキンの長手方向において高剛性部45に隣接する両隣接部位のうちの、前記中央部位3A側の隣接部位の剛性である。表面部3の中央部位3Aは、図3に示すように、隣り合う導液凹部4間の略中央に位置する部位である。
また、各高剛性部45は、ナプキンの長手方向断面〔図3(a)参照〕において、導液凹部4の周壁部43より剛性が高くなされている。ここでいう、周壁部43の剛性は、ナプキンの長手方向において、高剛性部45に隣接する両部位のうち、前記底部44側の隣接部位の剛性である。
また、高剛性部45,45は、導液凹部4の開口部の周方向に離間させて2個形成されており、各高剛性部45は、肌に当接する表面部3及び該導液凹部の周壁部43それぞれより剛性が高い。個々の高剛性部45は、表面シート1の平面視において、略線状をなしている。
尚、本発明でいう剛性は、繊維がより集合した状態で固定されていることに起因する密度という意味の剛性であり、対比される2つの部位の剛性の高低は、例えば、断面を撮影した顕微鏡写真から測定した対比される2つの部位の厚みの違い、即ち密度の違いにより判断することができる。なお、表面シートに用いる不織布が繊維形状を有しない形状も高剛性部では起こりうるため、繊維密度ではなく、密度と表現している。
尚、本実施形態の表面シート1における高剛性部45は、導液凹部4の周方向における、該高剛性部45に隣接する部位46,46(図2参照)それぞれよりも剛性が高い。
【0016】
本実施形態で用いた表面シート1は、導液凹部4の開口部近傍に上述した高剛性部45,45が形成されていることにより、生理用ナプキン10の着用時に、該ナプキン10が図1に示すように湾曲形状とされ、表面シート1も同様に湾曲しても、表面シート1に皺が発生しにくい。
即ち、このような高剛性部45がない場合には、湾曲による吸収体の変形量に比べ表面シートの変形量が大きいことによってひずみが生じ不規則な皺が発生するため、該皺が表面シート上で液流れや、肌触りの悪化等の不都合を生じる原因ともなるが、本実施形態のように、表面シート1に上述した構成の高剛性部45が設けられていると、高剛性部45が可とう軸となり変形し、表面部3の中央部3Aの変形を防ぐため、不規則な皺による液流れや肌触りの悪化を軽減できる。尚、高剛性部45が導液凹部4の周方向の全域に亘るように環状に形成されていると、肌触りの低下や密度が高い高剛性部に液がとどまり、吸収体への液の移行が妨げられる点から、少なくとも部分的に高剛性部が連続していないことが好ましい。
【0017】
高剛性部45は、表面シート1の厚み方向Zにおいて、表面部3の中央部位3Aにおける表面31の高さ位置から裏面32の高さ位置までの範囲(図3中にL3で示す厚さの範囲内)に形成されていることが好ましい。
【0018】
また、高剛性部45における不織布2は、全体がフィルム状となっていないこと及び不織布を構成する繊維が変形する程度であることが、皺の発生を抑え、良好な肌触りを保つことができ、高剛性部45を安定的に存在させる点から好ましい。全体がフィルム状では、シートの厚みが薄くなり折れ易くなるためであり、フィルム状部分が高剛性部45に点在的に存在していると高剛性部45をより安定させることができる。
【0019】
また、本実施形態の生理用ナプキン10においては、図4に示すように、導液凹部4が表面シート1に千鳥状に配置されている。そして、複数の高剛性部45,45・・が略一列に間欠配置されてなる複数本の高剛性部列L45が、それぞれ、着用時における生理用ナプキン1(吸収性物品)の湾曲方向に直交する方向であるナプキン幅方向Yに延びて形成されている。具体的には、ナプキン1の長手方向Xにおいて相隣接する2本の導液凹部列それぞれの高剛性部45同士が、ナプキン1の幅方向Yに略一列に配列して高剛性部列L45を形成している。そして、そのような高剛性部列L45が、ナプキン1の長手方向Xに間隔を開けて多数本配置されている。
高剛性部45が、このように配列されていることによって、吸収体の変形量に比べ表面シートの変形量が大きいために発生する湾曲方向に直交する皺を、より効果的に防止することができる。
【0020】
ナプキン1の長手方向Xにおける高剛性部列L45の間隔は1.5mm〜6.0mm、特に2.5mm〜4.0mmであることが好ましい。
また、高剛性部列に含まれる高剛性部のナプキン1の幅方向Yにおける中心から中心の距離は1.5mm〜5.5mm、特に1.5mm〜4.0mmが好ましい。
高剛性部列が上記範囲内であると、表面シートの変形に対して変形を吸収する部分と皺を抑える部分とが適度に配置され、上述した効果をより発揮し易くすることができる。
【0021】
また、本実施形態における表面シート1は、不織布2の繊維配向方向が、生理用ナプキン1の長手方向Xと一致している。
上述した複数本の高剛性部列L45は、それぞれ、不織布2の繊維配向方向と直交する方向(Y方向)に延びて形成されている。これにより、主として不織布の搬送等による外力による凹部の歪みを各凹部の幅方向周辺の該高剛性部によって抑制し、各凹部に隣接する高剛性部によって該歪みが固定ないようにするため、表面シートに(伸長およびそれが固定されたことによる)皺が生じにくい。
【0022】
また、導液凹部4の開口部近傍に形成された高剛性部45,45は、不織布2の繊維配向方向(X方向)において、該導液凹部4それぞれの前後に形成されている。
高剛性部45が、繊維配向方向との関係において導液凹部4の前後に配列されていることによって、より高剛性部45を安定して成型することができ、且つ繊維配向方向に直交する左右を柔軟に保つことができる。
【0023】
本実施形態で用いた表面シート1の導液凹部4は、図3に示すように、周壁部43及び底面部(底部)44を有している。また、底面部44は、表面部3の裏面32より吸収体側に位置している。即ち、底面部44は、表面シート1の厚み方向Z(図3参照)において、表面部3の裏面32の位置より吸収体側(図3の下方側)に位置している。
周壁部43は、表面シート1の厚み方向に延びる垂直線に対して傾斜しており、表面シート1の該周壁部43に囲まれた部分の横断面(表面シート1の厚み方向に直交する平面による断面)の面積が表面部3側から底面部44に向かって漸減している。より具体的には、内面形状が略逆円錐台状をなしている。
底面部44は、平面視略円形であり、その周囲に周壁部43が連続している。本実施形態における底面部44は、略平坦状に形成されているが、断面が下方に向けて凸の円弧状をなす凸曲面形状に形成することもできる。
【0024】
本実施形態における導液凹部4は、ナプキン1の幅方向Yの断面(不織布の繊維配向方向に直交する断面に同じ)において、周壁部43における底面部44に隣接する部位(図3(b)中に符号Aで示す部位、以下、底面部隣接部位Aともいう)の厚みTaが、表面部3の厚みT1より小さい。そのため、底面部隣接部位Aにおける不織布の繊維密度が、表面部3における不織布の繊維密度より高くなっている。このように、表面部3と底面部隣接部位Aとの間に繊維密度の差(勾配)があることによって、表面部3及び/又は周壁部43において表面シート1内に取り込まれた液が、底面部隣接部位Aへと移行し易くなっている。底面部隣接部位Aは、表面シート1を吸収体上に配したときに、該吸収体に接触ないし近接して、そこから吸収体への液の移行が自然に生じ得る部位である。導液凹部4は、このように、表面部3及び/又は周壁部43において取り込んだ液を、吸収体へと導く機能を有している。
このように、ナプキンの長手方向X及び幅方向Yの少なくとも一方の断面において、底面部隣接部位Aの厚みTaが表面部3の厚みT1より小さいと、吸収体への液の移行性を向上させることができる。
【0025】
しかも、本実施形態の表面シート1は、上述したように、導液凹部4が底面部44を有し、導液凹部4の下端が開口していないため、導液凹部4の形態が安定しており、吸収性物品着用中に表面シート1に厚み方向に圧縮力が加わっても、該導液凹部4が潰れにくく、あるいは潰れたとしても圧縮力から解放されたときの復元力に優れている。そのため、良好なクッション性を有しており、風合いも良好なものとなる。
更に、導液凹部4が底面部44を有し、吸収体に移行した液が、該底面部44によって隠蔽されるため、例えば、生理用ナプキンの表面シートとして用いたときに、使用後のナプキンにおいて経血が目立つことを防止することができる。
【0026】
吸収体への液の移行性を向上させる観点から、底面部隣接部位Aの厚みTaは表面部3の厚みT1の3〜80%、特に5〜50%であることが好ましい。また、前記厚みT1は、0.4〜2.5mmであることが好ましく、前記厚みTaは、0.1〜0.4mmであることが好ましい。尚、表面部3の厚みT1は、図3に示すように、隣り合う導液凹部4間の中央部位3Aにおいて測定する。また、底面部隣接部位Aの厚みTaは、図3に示すように、導液凹部4を構成する不織布の該部位Aにおける厚みである。
【0027】
また、本実施形態における導液凹部4の周壁部43は、図3に示すように、ナプキン1の幅方向Yの断面(不織布の繊維配向方向に直交する断面に同じ)において、表面部3側から底面部44側に向かって厚みが漸減しており、それによって、周壁部43を構成する不織布の繊維密度が、表面部3側から底面部44側に向かって漸増している。ナプキンの長手方向X及び幅方向Yの少なくとも一方の断面において、繊維密度をこのように変化させると、表面部3及び/又は周壁部43から、底面部隣接部位Aへの液の移行性、延いては吸収体への液の移行性に一層優れている。
吸収体への液の移行性の向上の観点から、周壁部43の底面部隣接部位Aの厚みTaは、該周壁部43における表面部3に隣接する部位(図3中に符号Bで示す部位、以下、表面部隣接部位Bともいう)の厚みTbの5〜80%であることが好ましく、より好ましくは5〜50%である。尚、表面部隣接部位Bの厚みTbは、図3に示すように、導液凹部4を構成する不織布の該部位Bにおける厚みである。
【0028】
更に、本実施形態における導液凹部4は、表面部隣接部位Bの厚みTbが、前記表面部3の厚みT1より小さい。これにより、表面部3から周壁部43への液の移行性に一層優れ、吸収体への液の移行性がより一層優れている。表面部3から周壁部43への液の移行性の向上の観点から、表面部隣接部位Bの厚みTbは、表面部3の前記厚みT1の20〜90%、特に40〜90%であることが好ましい。
前記厚みT1、Ta、Tbは、無荷重下の厚みであり、例えば断面を撮影した顕微鏡写真から求める。後述する表面シートの厚みTも同様である。
【0029】
底面部44における不織布3は、繊維同士の結合点を有しており且つ液透過性を維持していることが好ましい。繊維同士の結合点の存在により導液凹部4の立体形状の安定性を向上させつつ、表面シートの液透過性を向上させることができ、更にフィルム化させたときのような肌触りの悪化を防止することができる。繊維同士の結合点には、フィルム化した部分や、エンボス加工により不織布を加圧して形成したものは含まれない。繊維同士の結合点は、エアースルー法による熱風処理により繊維同士をそれらの交点において熱融着させたものが好ましい。
【0030】
本実施形態の表面シート1における導液凹部4は、図4に示す通り、表面部3が不織布2の繊維配向方向(図中X方向)及びそれに直交する方向(図中Y方向)の両方向に連続直線状に存在しないように配置されている。
表面部3がX方向又はY方向に連続直線状に存在しないことにより、導液凹部4の数をより多く配置することができ、肌と接する表面部3の面積を低減させることができる。これにより肌に対するベタツキを抑えることができ、更に肌と表面部3との間を滲む液を連続直線状のものと比べて滲みにくくすることができる。
これに対して、図5は、表面部3が不織布2の維配配向方向(図中X方向)及びそれに直交する方向(図中Y方向)に連続直線状に存在する実施形態を示す図である。図5においては、直線LYに沿って表面部3が連続直線状に延びており、また、直線LXに沿って表面部3が連続直線状に延びている。
【0031】
表面シート1は、導液凹部4の形態の安定性やクッション性の向上等の観点から以下の構成を有することが好ましい。
坪量は15〜50g/m2、特に20〜40g/m2であることが好ましく、構成繊維の繊度は1.2〜6.7dtexであることが好ましい。
表面部3側の開口部の直径W1(図3参照、開口形状が非円形の場合は同一面積の円の直径)は2.0〜7.0mmであることが好ましく、底面部44の直径W2(図3参照、非円形の場合は同一面積の円の直径)は0.5〜2.5mmであることが好ましい。
表面シート1の厚みT(図3参照)は0.5〜3.0mmであることが好ましく、該厚みTに対する表面部の厚みT1の割合は、20〜90%、特に40〜90%であることが好ましい。
また、導液凹部4の個数は、表面シート9cm2あたりの個数が、10〜100個程度が好ましく、より好ましくは20〜70個程度である。
【0032】
上述した表面シート1の製造方法は、例えば以下のようにして製造することができる。
表面シート1の好ましい製造方法においては、図6に示すように、不織布からなる原料シート20に、一対のロール5,6を用いて多数の導液凹部4,4・・を形成して表面シート1を得る。原料シート20として用いる不織布は、エアースルー不織布が好ましい。エアースルー不織布は、適度な伸長性(繊維構造の変形自由度)を有すると共に、繊維同士の結合点を有することによって伸長させても繊維がばらばらになりにくいので、形態の安定した導液凹部4の形成に適している。また、不織布は、その繊維配向方向を、原料シート20の流れ方向(MD方向)に一致させる。
【0033】
図6に示すように、本製造方法においては、導液凹部4の形成に、周面に多数の凸部51を有する第1のロール5と、周面に凸部51に対応する多数の凹部6を有する第2のロール6とを備えた延伸及び加熱装置を用いている。
本装置における第1のロール5及び第2のロール6は、同期して図6中矢印で示す方向に回転駆動されるようになされており、両ロール5,6の回転に伴い、個々の凸部5が、順次、対応する凹部6内に挿入(遊挿)されるように構成されている。凹部6内に挿入される凸部51は、該凹部6の内面囲に接触しないようになっている。
図6に示す例において、凸部51は、円柱状をなしており、凹部6は、凸部51の直径よりも内径の大きい有底円筒状をなしている。また、凹部6は、ロール6の軸長方向に直交する断面(図7に示す断面)及びロール6の軸長方向に沿う断面の何れの断面(図8に示す断面〕においても、凹部6の内周面62と、ロール6の凹部以外の部分63(平滑なロール周面)とが、両者の境界部(凹部の開口周縁部)において略直角に結合している。
【0034】
図6に示すように、回転する第1及び第2のロール5,6間に、不織布からなる原料シート20を導入すると、該原料シート20は、図7に示すように、凸部51による凹部61への押し込み部位へと搬送され、該押し込み部位において、第2のロール6の凹部61以外の部分が裏面に接触した状態において、該凹部61上に位置する部分が凸部51によって押圧され該凹部61内へと押し込まれる。
この押し込みの際には、原料シート20における、凸部51の先端部に接触して直接押圧される部分24の周囲に、凸部51及び凹部61のいずれにも接触しない部分23が存在しており、該部分23が他の部分に比してより大きく伸長する。
そして、伸長状態下における前記部分23に凹部61の内面から熱が与えられ、その熱により、その伸長状態が固定(熱セット)され、構造の安定した導液凹部4が形成される。
また、凸部51による凹部61への押し込みの際に、原料シート20を構成する不織布は、原料シート20の流れ方向(MD)に伸びやすく、該流れ方向に直交する方向(CD)には相対的に伸びにくい。そのため、原料シート20の流れ方向(MD)における、凹部61の前後端に位置する部分が、略直角に形成された凹部61の開口縁部に強く加圧圧縮され、その状態が熱固定されて高剛性部45となる。
このようにして、多数の高剛性部45が形成された表面シート1が得られる。得られた表面シート1において、底面部44は、主として凸部51の先端部に直接押圧された部分24から構成され、周壁部43は、主として前記部分23から構成されている。
【0035】
生理用ナプキン10の形成材料について説明する。
吸収体12及び裏面シート11としては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸収性ポリマーを保持させたものを、ティッシュペーパーや不織布等の被覆シートで被覆してなるものを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。
【0036】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されない。
【0037】
例えば、導液凹部4の平面視形状は、図4に示すような真円形に代えて楕円形とすることもでき、更には、菱形、正方形、長方形等の多角形状、あるいはハート型、星形等とすることもできる。例えば、多角形とする場合、角部には丸みをつけることが好ましい。また、高剛性部45の形状も、導液凹部4の周方向に沿って延びる三日月状、楕円状、長円状、扇状等とすることもできる。
【0038】
また、吸収性物品は、図1に示すように、着用時に長手方向の断面形状が凹状をなすように湾曲した状態とされるものに代えて、幅方向の断面形状が凹状をなすように湾曲した状態とされるものであっても良い。また、長手方向に湾曲する部分と幅方向に湾曲する部分とを有し、そのそれぞれに配する部分に異なる態様で、高剛性部を設けても良い。上述した表面シート1においては、一つの導液凹部4に2つの高剛性部が設けられていたが、繊維配向方向における導液凹部の前後何れか一方のみに導液凹部4が設けられていても良い。また、表面シート1の一部、例えば排泄部対向部Aに配される部分のみに、高剛性部45を有する導液凹部4が形成されていても良い。
また、表面シートは、不織布の繊維配向方向を、吸収性物品の幅方向に一致させて用いられるものであっても良い。
【0039】
また、導液凹部4を、表面部3が不織布2の繊維配向方向又はそれに直交する方向に連続直線状に存在しないように配置する場合、該導液凹部4を、何れか一方の方向に表面部3が連続直線状に存在するように配置しても良い。また、表面シートの全体に、導液凹部4をこのように配置するのに代えて、液排泄部に対向配置される部位及びその近辺のみに、導液凹部4をこのように配置しても良い。
【0040】
また、高剛性部45は、厳密な意味で、表面部3と導液凹部43の周壁部41との境界部に形成されているものに限られず、該境界部の近傍に形成されていても良い。また、表面部3から周壁部41に亘る長さを有していても良い。
【0041】
本発明の吸収性物品は、身体から排出される液の吸収保持に用いられるものである。このような吸収性物品としては、生理用ナプキンの他に、パンティライナー、失禁パッド、使い捨ておむつ、母乳パッド等が挙げられる。生理用ナプキン等は、排泄部対向部の左右両側に一対のウイング部を備えていないものであっても良い。
吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の吸収性物品一実施形態である生理用ナプキンを示す部分破断斜視図である。
【図2】図1の生理用ナプキンにおける表面シートの一部を拡大して示す斜視図である。
【図3】図3(a)は、図2のI−I線断面の一部を拡大して示す拡大断面図であり、図3(b)は、図2のII−II線断面の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】図2に示す表面シートをその表面側から視た展開平面図である。
【図5】本発明の他の実施形態の表面シートをその表面側から視た平面図(図4相当図)である。
【図6】図2の表面シートの製造に好ましく用い得る延伸及び加熱装置の要部を示す図である。
【図7】図6の装置における第1及び第2ロールの軸長方向に直交する断面(図6のIII−III線断面)を示す断面図である。
【図8】図6の装置における第1及び第2ロールの軸長方向に沿う断面(図6のIV−IV線断面)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 表面シート
2 不織布
3 表面部
4 導液凹部
43 周壁部
44 底面部
45 高剛性部
5 第1のロール
51 凸部
6 第2のロール
61 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シート、裏面シート及びこれら両シート間に介在された吸収体を備え、実質的に縦長の吸収性物品であり、
前記表面シートは、不織布からなり、該不織布は、表面側が肌に当接する表面部と、周壁部及び底部を有し吸収体側に向かって突出する多数の導液凹部とを有し、
前記表面シートは、吸収性物品長手方向断面視において、前記表面部と前記周壁部との境界部又はその近傍に高剛性部を有し、該高剛性部は、前記表面部及び前記周壁部それぞれより剛性が高い吸収性物品。
【請求項2】
前記高剛性部の繊維密度は、前記表面部及び前記周壁部の繊維密度よりも高いことを特徴とする請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品の平面視において、前記導液凹部が千鳥状に配置されており、複数の前記高剛性部が略一列に間欠配置されてなる複数本の高剛性部列が、それぞれ、吸収性物品の幅方向に延びて形成されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記高剛性部列は、前記不織布の繊維配向方向と直交する方向に形成されている、請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
吸収性物品の肌当接面に用いられる、吸収性物品用の表面シートであって、
不織布からなり、該不織布は、表面側が肌に当接する表面部と、周壁部及び底部を有し吸収体側に向かって突出する多数の導液凹部とを有し、
不織布の繊維配向方向に沿う断面において、前記表面部と前記周壁部との境界部又はその近傍に高剛性部を有し、該高剛性部は、前記表面部及び前記周壁部それぞれより剛性が高い、吸収性物品用の表面シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−61026(P2009−61026A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230146(P2007−230146)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】