説明

吸収性物品

【課題】身体の形状及び身体の動きに追従してフィット性を向上させ、各部の動きを分断して排血口対応部に影響を与えないことにより、排血口対応部のシワ入りを無くし装着感を向上させる。
【解決手段】着用者の排血口部R1及び会陰部R2に対応する排血口対応部Mに対して、長手方向中心線CLの両側にそれぞれ、吸収性物品1の略長手方向に沿うとともに長手方向中心線側に曲率中心を有する弧状曲線によって排血口対応部エンボス10を形成し、前記排血口対応部Mより離間幅を設けて前側に位置する前側部Fに対して、吸収性物品1の略幅方向に沿う前側部エンボス11を形成し、前記排血口対応部Mより離間幅を設けて後側に位置する後側部Bに対して、長手方向中心線から後側に向けて両側に漸次拡大する形状で後側部エンボス12を形成し、前記左右一対の排血口対応部エンボス10、10は、前端部間の離隔幅WFより後端部間の離隔幅WBを狭くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティーライナー、失禁パッド等の吸収性物品、詳しくは身体の形状及び動きにフィットし、シワ入りを無くし装着感を向上させた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生理用ナプキン、パンティーライナー、失禁パッド等の吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプなどからなる吸収体を含む吸収要素を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、装着感及びフィット性を向上させるため、透液性表面シートの表面側から所定の形状でエンボスを付与したものが知られている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、図5に示されるように、表面シート51、吸収コア52及び裏面シート53がこの順に積層され、前記吸収コア52の両側端部かつ前後方向中央部に前後方向に向かう線を描く第1のエンボス54が表面シート51上から付与され、前記吸収コア52の前端部及び後端部の少なくとも一方に、幅方向中央部を基端とし、この基端からそれぞれ前後方向外方かつ両側方へ向かう直線を描く第2のエンボス55が、表面シート51上から付与された生理用ナプキン50が開示されている。かかる生理用ナプキン50によれば、装着状態において、幅方向両側から内方に向かう圧力Pがかかると、表面シート51や吸収コア52の上層部が、第2のエンボス55側から幅方向中心線C側へ(符合Fで示す方向)、寄せ付けられる結果、生理用ナプキン50の前後方向端部の、特に幅方向中央部Tが、少なくとも表面形状が装着者側に突出した状態になり、装着者に対するフィット性が向上するというものである。
【0005】
また、下記特許文献2には、図6に示されるように、左右の溝61、62と前溝63、左右の溝61、62と後溝64が、それぞれ分離しており、左右の溝の前端部61A、62Aは前溝の後端部63Aよりも長手方向前側に位置しており、左右の溝の後端部61B、62Bは後溝の前端部64Aよりも長手方向後側に位置している吸収性物品60が開示されている。かかる吸収性物品60によれば、装着時において、左右の溝61、62に囲まれた領域が、左右から幅方向内側へ圧縮力を受けると、左右の溝61、62を前端部側に仮想的に延長した線からなる略V字状の折り線65、及び左右の溝61、62を後端部側に仮想的に延長した線からなる略V字状の折り線66を可撓軸として着用者の肌側へ向かって安定して隆起して、着用者の排泄部にフィットするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−82480号公報
【特許文献2】特開2007−195665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、女性の身体の形状は、身体の中央部では排血口部及び会陰部にそれぞれ窪みが形成され、この中央部より前側では恥骨周辺の丸みを帯び、前記中央部より後側では臀部の谷間が形成されるというように、各部によって大きく異なるものである。また、身体の動きとして歩行時についてみてみると、前記身体の中央部は身体の基軸に近い部分であるため動きがほとんどなく、この中央部より後側では歩行時に臀部が上下動するため動きが最も大きくなり、前記中央部より前側では前記後側より相対的に動きが少ないが若干の動きが生じる部分となる。このように、身体の形状及び身体の動きは各部によって大きく異なるため、吸収性物品のフィット性及び装着感の向上を図るためには、身体の形状及び動きに適合するように吸収性物品を変形しやすくすると同時に、各部の動きを他の部分、特に排血口部に対応する中央部に連動させないようにすることが重要となる。
【0008】
ところが、上記特許文献1、2記載の吸収性物品50、60では、上述の通り前側と後側とで身体の形状及び動きが異なるにもかかわらず、エンボスがほぼ前後対称に付与されているため、前側部及び後側部が臀部の谷間に沿うように変形し易く形成されている場合には、前側部でのフィット性が損なわれ、前側部の動きに追従できず、恥骨周辺の丸みに沿う前漏れが生じやすく、逆に前側部及び後側部が恥骨周辺の丸みに沿うように変形し易く形成されている場合には、後側部でのフィット性が損なわれ、臀部の動きに追従できず、臀部の谷間を伝う後漏れが生じやすくなる。また、特に動きの激しい後側部の臀部の動きに伴って排血口部に対応する中央部にまでシワが入ったり、排血口部又は会陰部への密着状態が解除されたりして、装着感が低下するおそれがあった。
【0009】
さらに、排血口部に対応する中央部において、左右一対のエンボス54、54(61、62)で囲まれた部分が左右から幅方向内側へ圧縮力を受けた場合、エンボスがほぼ前後対称に付与されているため、この部分の中央が隆起するようになるが、実際には女性の排血部位の形状は複雑で、女性の排血口部付近にほぼフィットさせることができたとしても、膣口から後側の肛門付近にかけての会陰部が小さな窪み状の立体形状を成しているため、この会陰部に対してフィットできていない。そのため、排血口付近で吸収できなかった経血等が前記会陰部でも吸収されず、後漏れの原因となることがあった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、身体の形状及び身体の動きに追従してフィット性を向上させ、各部の動きを分断して排血口対応部に影響を与えないことにより、排血口対応部のシワ入りを無くし装着感を向上させた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収要素が介在された吸収性物品において、
装着時に着用者の排血口部及び会陰部に対応する排血口対応部に対して、長手方向中心線の両側にそれぞれ、吸収性物品の略長手方向に沿うとともに、長手方向中心線側に曲率中心を有する弧状曲線によって排血口対応部エンボスを形成し、前記排血口対応部より吸収性物品の長手方向に離間幅を設けて前側に位置する前側部に対して、吸収性物品の略幅方向に沿う前側部エンボスを形成し、前記排血口対応部より吸収性物品の長手方向に離間幅を設けて後側に位置する後側部に対して、長手方向中心線上の位置から後側に向けて両側に漸次拡大する略逆V字形状で後側部エンボスを形成してあり、
前記左右一対の排血口対応部エンボスは、前端部及び後端部がそれぞれ長手方向中心線の両側に離隔して設けられるとともに、前記前端部間の離隔幅より前記後端部間の離隔幅を狭くしてあることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明は、装着時に着用者の排血口部及び会陰部に対応する排血口対応部、この排血口対応部より吸収性物品の長手方向に離間幅を設けて前側に位置する前側部、前記排血口対応部より吸収性物品の長手方向に離間幅を設けて後側に位置する後側部において、各部の身体の形状及び動きに適合するような変形をし易くするためのエンボスを形成したものである。
【0013】
具体的に、前記排血口対応部には、長手方向中心線の両側にそれぞれ、吸収性物品の略長手方向に沿うとともに、長手方向中心線側に曲率中心を有する弧状曲線によって排血口対応部エンボスを形成してある。特に、本発明では、前記左右一対の排血口対応部エンボスは、前端部及び後端部がそれぞれ長手方向中心線の両側に離隔して設けられるとともに、前記前端部間の離隔幅より前記後端部間の離隔幅を狭くしてある。このため、大腿部からの幅方向両側から内側に向かう圧力によって、前記排血口対応部エンボスで囲まれた部分のうち、前側が相対的に広い幅方向範囲で表面側に隆起するようになるため、排血口部に好適にフィットし、後側が相対的に狭い幅方向範囲で表面側に隆起するようになるため、会陰部に好適にフィットする。また、前記前側部には、吸収性物品の略幅方向に沿う前側部エンボスを形成してあるため、この前側部エンボスが可撓軸となって恥骨周辺の丸みに沿って変形し易くなる。さらに、前記後側部には、長手方向中心線上の位置から後側に向けて両側に漸次拡大する略逆V字形状で後側部エンボスを形成してあるため、この後側部エンボスが可撓軸となって臀部の谷間に沿って変形し易くなる。従って、身体の各部の形状に合わせて変形するため、フィット性が向上するようになるとともに、経血等の漏れが確実に防止できる。
【0014】
さらに、上述の通り前記排血口対応部、前側部及び後側部がそれぞれ身体にフィットするように変形するとともに、排血口対応部と前側部及び後側部との間にエンボス線の不連続ゾーンが形成されるため、この不連続ゾーンが前側部及び後側部の動きを分断して排血口対応部への影響を緩和する分断ゾーンとして機能し、前側部及び後側部の動きに左右されずに排血口対応部の身体へのフィット性が安定的に維持され、排血口対応部のシワ入りが無くなり、装着感が向上するようになる。
【0015】
しかも、歩行時などのように左右の脚を交互に前後に稼働させた場合、前側部及び後側部が左右の脚の動きに連動してねじり変形のような動きを生じるが、前記不連続ゾーンの幅方向中心部が前側部及び後側部のねじり変形の基端となり、前側部及び後側部の動きを分断して排血口対応部への影響を緩和する分断基点として機能するため、前側部及び後側部のねじり変形に対して排血口対応部が連動して変形したり、シワ入りが抑制され、装着感の向上が図れるようになる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記後側部エンボスを構成する長手方向中心線に跨って両側に形成されたエンボス線はそれぞれ、一方側のエンボス線の前端部から長手方向中心線を跨いで他方側に延長した仮想線と、前記排血口対応部エンボスのうち長手方向中心線の他方側に形成されたエンボス線の後端部の接線とがほぼ平行となるように形成してある請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明では、前側部と比較して相対的に身体の動きが大きくなる後側部について、上記請求項1記載の発明の通り左右一対の排血口対応部エンボスの前端離隔幅より後端離隔幅を狭く形成することに加えて、後側部エンボスを構成する長手方向中心線に跨って両側に形成されたエンボス線をそれぞれ、一方側のエンボス線の前端部(中央のV字頂部)から長手方向中心線を跨いで他方側に延長した仮想線と、前記排血口対応部エンボスのうち長手方向中心線の他方側に形成されたエンボス線の後端部の接線とがほぼ平行となるように形成することにより、臀部の谷間に沿って変形し、前記前端部から排血口対応部の方向に進展したシワを前記排血口対応部エンボスに吸収させることができるようになり、排血口対応部エンボスで囲まれた部分にシワが形成されることがなくなり、排血口対応部を排血口部及び会陰部に対してより確実にフィットさせることができるようになる。
【0018】
請求項3に係る本発明として、前記前側部エンボスは、該前側部エンボスより吸収性物品の前側に曲率中心を有する弧状曲線によって形成されるとともに、左右両端部の接線の成す角度が90°以上である請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項3記載の発明では、前側部エンボスを可撓軸として、前側部を着用者の恥骨周辺の丸みに沿う形状で変形し易くするため、前側部エンボスとして、該前側部エンボスより吸収性物品の前側に曲率中心を有する曲線によって形成するとともに、左右両端部の接線の成す角度が90°以上となるようにしたものである。
【0020】
請求項4に係る本発明として、前記後側部エンボスは、長手方向中心線に跨って両側に形成されるエンボス線の成す角度が90°未満である請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項4記載の発明では、後端部エンボスを可撓軸として、後側部を着用者の臀部の谷間に沿う形状で変形し易くするため、後側部エンボスとして、長手方向中心線に跨って両側に形成されるエンボス線の成す角度が90°未満となるようにしたものである。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、身体の形状及び身体の動きに追従してフィット性が向上し、各部の動きを分断して排血口対応部に影響を与えないことにより、排血口対応部のシワ入りを無くし装着感の向上が図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【図2】エンボスの説明図である。
【図3】その要部拡大図である。
【図4】他の形態に係る生理用ナプキン1の展開図である。
【図5】従来の生理用ナプキン50の展開図である。
【図6】従来の生理用ナプキン60の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4及びこの吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5を含む吸収要素6と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って形成されたサイド不織布7,7とから構成されている。前記吸収体4の周囲において、その上下端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しないフラップ部8が形成されている。
【0026】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0027】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0028】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0029】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0030】
本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0031】
一方、本生理用ナプキン1の表面がわ両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによってウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0032】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0033】
(エンボス構造)
本生理用ナプキン1では、図2に示されるように、装着時に着用者の排血口部及び会陰部に対応する排血口対応部M、この排血口対応部Mよりナプキン長手方向に離間幅DFを設けて前側に位置する前側部F及び前記排血口対応部Mよりナプキン長手方向に離間幅DBを設けて後側に位置する後側部Bの各部において、各部の身体の形状及び動きに適合する形状で生理用ナプキンを変形し易くするように異なる形状でエンボス10〜12を形成するようにしたものである。
【0034】
前記排血口対応部Mには、長手方向中心線CLの両側にそれぞれ、生理用ナプキン1の略長手方向に沿うとともに、ナプキン長手方向中心線側に曲率中心を有する弧状曲線によって排血口対応部エンボス10を形成し、前記前側部Fには、前記排血口対応部エンボス10から離間して、生理用ナプキン1の略幅方向に沿う前側部エンボス11を形成し、前記後側部Bには、前記排血口対応部エンボス10から離間して、長手方向中心線CL上の位置(PB)から後側に向けて両側に漸次拡大する略逆V字形状で後側部エンボス12を形成してある。さらに、前記左右一対の排血口対応部エンボス10は、前端部及び後端部がそれぞれ長手方向中心線の両側に離隔して設けられるとともに、前記前端部間の離隔幅WFより前記後端部間の離隔幅WBを狭くしてある。
【0035】
これによって、排血口対応部Mでは、大腿部からの幅方向両側から内側に向かう圧力によって、前記排血口対応部エンボス10、10で囲まれた部分のうち、前側が相対的に広い幅方向範囲に亘って表面側に隆起するため、排血口部R1に好適にフィットし、後側が相対的に狭い幅方向範囲で表面側に隆起するため、会陰部R2に好適にフィットするようになる。また、前記前側部Fでは、前記前側部エンボス11が可撓軸となって、恥骨周辺の丸みに沿って変形しやすくなり、身体の前側に好適にフィットするようになる。さらに、前記後側部Bでは、前記後側部エンボス12が可撓軸となって、臀部の谷間に沿って変形しやすくなり、身体の後側に好適にフィットするようになる。このように、排血口対応部M、前側部F及び後側部Bがそれぞれ身体の形状に沿って変形し、身体の表面に隙間無くフィットするため、装着感及びフィット性が向上するとともに、経血等の漏れを確実に防止できる。
【0036】
加えて、生理用ナプキン1の各部が身体の形状に沿って変形することにより身体の表面に密着するとともに、排血口対応部Mと前側部F及び後側部Bとの間にそれぞれ、長手方向にエンボス線が離間するエンボス線の不連続ゾーンZF、ZBが幅方向に亘って形成されるため、この不連続ゾーンZF、ZBが身体の動きに伴う前側部F及び後側部Bの動きを排血口対応部Mに連動させずに分断する分断ゾーンとして作用し、前側部F及び後側部Bの動きに左右されずに排血口対応部Mの身体へのフィット性が安定的に維持されるようになる。
【0037】
しかも、本生理用ナプキン1では、歩行時などのように左右の脚を交互に稼働させた場合、前側部F及び後側部Bが左右の脚の動きに連動したねじり変形が生じるが、前記不連続ゾーンZF、ZBの幅方向中心部がそれぞれ分断基点PF、PBとして作用することにより、前側部F及び後側部Bがそれぞれこの分断基点PF、PBを基端として、長手方向中心線CL周りに揺動するようにねじり変形するため、前側部F及び後側部Bの動きが排血口対応部Mに連動せず、排血口対応部Mの変形やシワ入りを抑制することができる。
【0038】
図2に示されるように、本生理用ナプキン1では、後側部エンボス12を構成する長手方向中心線CLに跨って両側に形成されたエンボス線12a、12bのうち、長手方向中心線CLの左側に形成されたエンボス線12aは、前端部から長手方向中心線CLを跨いで他方側に延長した仮想線K1と、排血口対応部エンボス10のうち長手方向中心線CLの右側に形成されたエンボス線10bの後端部の接線S1とがほぼ平行となるように形成されている。同様に、長手方向中心線CLの右側に形成されたエンボス線12bは、前端部から長手方向中心線CLの左側を跨いで他方側に延長した仮想線K2と、排血口対応部エンボス10のうち長手方向中心線CLの左側に形成されたエンボス線10aの後端部の接線S2とがほぼ平行となるように形成されている。前記仮想線K1、K2と接線S1、S2との角度差は、概ね10°以内、好ましくは5°以内とするのが望ましい。
【0039】
これにより、相対的に身体の動きが大きくなる後側部Bにおいて、上記の通り左右一対の排血口対応部エンボス10、10の前端部の離隔幅WFより後端部の離隔幅WBを狭く形成することに加えて、前記仮想線K1、K2と前記接線S1、S2とがそれぞれほぼ平行となるように形成することにより、図3に示されるように、後側部Bが臀部の谷間に沿って変形した結果、後部側エンボス12の分断起点PBを越えて排血口対応部M側に接線方向に沿って進展したシワS、Sを前記排血口対応部エンボス10に吸収させることができるようになるため、排血口対応部エンボス10、10で囲まれた部分にシワが形成されることがなくなり、排血口対応部Mを排血口部R1及び会陰部R2に対してより確実にフィットさせることができるようになる。
【0040】
前記排血口対応部エンボス10、10の前端部の離隔幅WFは、24〜35mmとすることが好ましく、後端部の離隔幅WBは、15〜20mmとすることが好ましい。
【0041】
前記前側部エンボス11は、該前側部エンボス11より生理用ナプキン1の前側に曲率中心を有する弧状曲線によって形成されるとともに、左右両端部の接線11a、11bの成す角度θFが90°以上、好ましくは100°〜160°で形成されている。これにより、前側部エンボス11を可撓軸として、前側部Fを着用者の恥骨周辺の丸みに沿う形状で変形させやすくなる。なお、前記前側部エンボス11は、図4に示されるように、エンボス線方向に沿って複数に分割されるように形成してもよい。
【0042】
前記後側部エンボス12は、長手方向中心線CLに跨って両側に形成されるエンボス線12a、12bの成す角度θBが90°未満、好ましくは60°〜90°で形成されている。これにより、後側部エンボス12を可撓軸として、後側部Bを着用者の臀部の谷間に沿う形状で変形させやすくなる。なお、前記後側部エンボス12は、長手方向中心線CLから後側に向けて両側に直線状に形成してもよいが、図示例のように、生理用ナプキン1の外方側に曲率中心を有する緩やかな曲線状に形成することが好ましい。
【0043】
前記分断ゾーンZF、ZBは、前側部F及び後側部Bの変形を排血口対応部Mに影響させず分断するという目的から、ある程度の長手方向長さを確保することが必要である一方で、必要以上に長くすると身体の形状にフィットさせることができなくなるとともに、逆にこの分断ゾーンZF、ZBがシワの発生源となるため、長手方向長さが1〜10mm、好ましくは1〜5mmで形成するようにする。なお、前記分断ゾーンZF、ZBは、生理用ナプキン1を三つ折りで個装するための折り線位置とすることが望ましい。
【0044】
前記排血口対応部Mと前側部Fとの間の分断ゾーンZF(分断基点PF)は、排血口部R1の陰唇の前端部付近となるようにすることが好ましく、前記排血口対応部Mと後側部Bとの間の分断ゾーンZB(分断基点PB)は、会陰部から臀部の谷間の開始部付近となるようにすることが好ましい。これにより、各部M、F、Bのフィット性の効果が発揮されやすくなる。このため、前記分断ゾーンZF、ZB(分断基点PF、PB)間の距離Lは、60〜120mm、好ましくは80〜90mmとする。
【0045】
図4に示されるように、前記前側部エンボス11の前側には、生理期間中の陰鬱な気分を紛らわせることなどを目的として、前側に向けて拡大するとともに、その前端部が内側に湾曲するハート形などの形状でデザインエンボス13を施すことができる。また、後側部エンボス12の後端から連続して、内側に湾曲するデザインエンボス14、14を施すことができる。前記デザインエンボス13、14は、先端部を内側に湾曲させることにより、経血が堰き止められ、漏れが防止できるようなイメージを着用者に想起させることができる。
【0046】
ところで、図示例では、エンボス線の形成領域を二重線で示し、そのうち●部は高圧搾部、その他の部分は低圧搾部を示している。なお、高圧搾部(●)の間隔は任意である。
【符号の説明】
【0047】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…吸収要素、7…サイド不織布、10…排血口対応部エンボス、11…前側部エンボス、12…後側部エンボス、13・14…デザインエンボス、M…排血口対応部、F…前側部、B…後側部、ZF・ZB…分断ゾーン、PF・PB…分断基点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収要素が介在された吸収性物品において、
装着時に着用者の排血口部及び会陰部に対応する排血口対応部に対して、長手方向中心線の両側にそれぞれ、吸収性物品の略長手方向に沿うとともに、長手方向中心線側に曲率中心を有する弧状曲線によって排血口対応部エンボスを形成し、前記排血口対応部より吸収性物品の長手方向に離間幅を設けて前側に位置する前側部に対して、吸収性物品の略幅方向に沿う前側部エンボスを形成し、前記排血口対応部より吸収性物品の長手方向に離間幅を設けて後側に位置する後側部に対して、長手方向中心線上の位置から後側に向けて両側に漸次拡大する略逆V字形状で後側部エンボスを形成してあり、
前記左右一対の排血口対応部エンボスは、前端部及び後端部がそれぞれ長手方向中心線の両側に離隔して設けられるとともに、前記前端部間の離隔幅より前記後端部間の離隔幅を狭くしてあることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記後側部エンボスを構成する長手方向中心線に跨って両側に形成されたエンボス線はそれぞれ、一方側のエンボス線の前端部から長手方向中心線を跨いで他方側に延長した仮想線と、前記排血口対応部エンボスのうち長手方向中心線の他方側に形成されたエンボス線の後端部の接線とがほぼ平行となるように形成してある請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記前側部エンボスは、該前側部エンボスより吸収性物品の前側に曲率中心を有する弧状曲線によって形成されるとともに、左右両端部の接線の成す角度が90°以上である請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記後側部エンボスは、長手方向中心線に跨って両側に形成されるエンボス線の成す角度が90°未満である請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−130962(P2011−130962A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294477(P2009−294477)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】