説明

吸収性物品

【課題】補助吸収性物品のズレを効果的に防止する。
【解決手段】透液性トップシート22と液不透過性バックシート21との間に吸収体23が介在されてなり、トップシート22表面に、補助吸収性物品100の一部又は全部が挿入されるポケット25が設けられるとともに、このポケット25の内面に、ポケット25内に挿入された補助吸収性物品のズレを防止するズレ止め手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットタイプの補助吸収性物品を併用するのに適したパッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成人向けの排泄物吸収性物品(おむつ)としては、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等の基本吸収性物品の他に、これらと併用することを想定した、より小型のフラットタイプと呼ばれるものが提供されており、これらの組み合わせは特にケア施設等の介護現場において汎用されている。すなわち、こう縮が発生している装着者等の場合、上記基本吸収性物品だけでは装着者の身体表面に対して適切にフィットさせることが困難なことがあり、そのような場合、フラットタイプの補助吸収性物品をじゃばら状等の適宜の形状に変形し、身体表面と基本製品との間の隙間(又は隙間が生じやすい部分)に挟んだり、特に装着者が男性のときには円錐状に丸めて陰茎に巻き付けたりする(以下、男性巻きともいう)、といった対応が取られている(例えば、特許文献1,2参照)。
しかし、従来の基本吸収性物品では、装着者の体位変化によって補助吸収性物品の位置がズレてしまい、補助吸収性物品における排泄物の吸収が不十分となり、その結果、排泄物が基本吸収性物品の外部に漏れ出てしまうことがあった。特に男性巻きを行う場合、補助吸収性物品の裏面と基本吸収性物品との接触面が少ないにもかかわらず、基本吸収性物品の表面には前後方向の移動抑制機能が摩擦以外にないため、補助吸収性物品が背側にずれ易かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−212452号公報
【特許文献2】特開2001−129012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の主たる課題は、補助吸収性物品のズレを効果的に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
透液性トップシートと液不透過性バックシートとの間に吸収体が介在されてなる吸収性物品において、
前記トップシート表面に、補助吸収性物品の一部又は全部が挿入されるポケットが設けられるとともに、このポケットの内面に、ポケット内に挿入された補助吸収性物品のズレを防止するズレ止め手段が設けられている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
このように、内面にズレ止め手段を有する補助吸収性物品収納用ポケットを設けることにより、補助吸収性物品を使用する際、その一部又は全部をポケット内にズレないように収納することができる。よって、補助吸収性物品のズレを効果的に防止できるようになる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記トップシートの表面に液透過性のポケットシートが配置され、このポケットシートにおける幅方向両側部、幅方向両側部間における前後方向一方側の端部、幅方向両側部間における前後方向他方側の端部、及びこれら前後方向両端部間に位置する中央部のうち、前記前後方向一方側の端部及び幅方向両側部が前記トップシート表面に対して接合されるとともに、前記前後方向他方側の端部及び中央部が前記トップシート表面に接合されていないか又は剥離可能に接合されることにより、前記ポケットシートにおける前記前後方向他方側の端部及び中央部と前記表面シートとの間が、前記前後方向他方側に開口を有する前記ポケットとなるように構成されている、請求項1記載の吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
補助吸収性物品を男性巻きする場合、円錐状に巻いた補助吸収パッドをその軸心が前後方向に沿うように配置することになる。よって、上記のように、前後方向他方側に開口を有するポケットをトップシート上に設けることにより、陰茎の周りに円錐状に巻き付けた補助吸収パッドを先端側からポケット内に挿入し、トップシート上に拘束することができる。この状態から補助吸収パッドが陰茎から抜ける方向に移動しようとしたり、巻きが緩むように広がろうとしたり、幅方向に移動しようとしたりしても、そのようなズレ等はポケットによる拘束作用により防止される。
また、この形態において、補助吸収性物品を使用しない場合(女性が使用する場合等)や、補助吸収性物品を使用するがポケットの無い部位に使用する場合、ポケットシートとトップシートとが密着していないと、ポケットシート上の排泄物がトップシートに移行し難くなり、漏れ易くなるおそれがある。よって、ポケットシートにける前後方向他方側の端部及び中央部はトップシート表面に剥離可能に接合しておき、ポケット使用時以外はポケットシートとトップシートとを密着させておく構造にすると、ポケットの使用の有無に関係なく十分な吸収性能を確保できるため、汎用性の点で好ましいものとなる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記ズレ止め手段として、前記ポケットシートの前後方向他方側の端部における前記トップシート側の面、及び前記トップシートにおける前記ポケットシートの前後方向他方側の端部と対向する部分のうち、少なくとも一方に、前記ポケット内に挿入された前記補助吸収性物品の外面に粘着可能である粘着剤層が設けられている、請求項2記載の吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
ズレ止め手段としては、ゴム等を配置して摩擦力を上げることもできるが、粘着剤層を用いてポケット内面と補助吸収性物品とを粘着固定するのが好ましい。粘着剤層の部位は適宜定めることができるが、ポケットに挿入した補助吸収性物品は、ポケットの入口に近い部位ほどズレ易い。よって、粘着剤層の部位を上記のとおりとし、ポケットの入口の縁部で補助吸収性物品を粘着固定できるようにするのが好ましい。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記ポケット内面のうち、前記ポケットシートにおける前記トップシート側の面、及び前記トップシートにおける前記ポケットシート側の面のいずれか一方に前記粘着剤層が設けられ、いずれか他方における前記粘着剤層と対向する部分に、粘着剤層の剥離を容易にする剥離処理が施されており、この剥離処理部分が前記粘着剤層に粘着されている、請求項2又は3記載の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
吸収性物品の分野において粘着剤層を設ける場合、粘着剤層をカバーするために剥離シートを張り付けておくことが一般的であるが、その場合、使用時に剥がした剥離シートがごみとなる。よって、上記のように、剥離シートを設けずに、粘着剤層の対向面を剥離処理することにより、粘着剤層の対向部材を剥離シートとして利用するのは好ましい。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記ポケットシートの前記前後方向他方側の端部に、弾性伸縮部材が幅方向に伸長された状態で固定されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
ポケットシートの前後方向他方側の端部は、ポケットの入口の縁部を構成する部分であり、この部分が弾性伸縮部材により収縮することにより、ポケットに挿入された補助吸収性物品が、ポケットの入口により弾性的に締め付けられ、前後方向及び幅方向に移動しないように拘束される。よって、ポケットによる補助吸収性物品のズレ止め効果がより一層のものとなる。
しかも、弾性巻きした補助吸収性物品の場合、補助吸収性物品の円錐状の巻き付けが緩まないようにその周囲からポケットの入口によって弾性的に締め付けられるため、男性巻きの緩み防止効果にも優れたものとなる。
【0015】
<請求項6記載の発明>
前記トップシートにおける、前記ポケットシートの前後方向他方側の端部より前記前後方向の他方側の位置に、滑り止め部が設けられている、請求項2〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
このように、トップシートに滑り止め部を設けることにより、補助吸収性物品がポケットから抜け出すのを防止することができる。
【0017】
<請求項7記載の発明>
前記滑り止め部は、前記トップシート表面に形成された、幅方向に沿って波状に延在する溝である、請求項6記載の吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
このような滑り止めの溝がトップシート表面に形成されていると、補助吸収性物品におけるポケットからはみ出た部分が溝に引っ掛かることにより、滑り止め効果が発揮され、補助吸収性物品がポケットから抜け出すのを防止される。また、トップシート表面に溝を設けること自体は吸収性物品の分野において汎用されており、装着感や吸収性能を悪化させ難く、さらに製造も容易である。
【0019】
<請求項8記載の発明>
前記トップシートの幅方向両側部に、装着者の身体側に突出する帯状の立体ギャザーが前後方向に沿って、前記ポケットシートの前後方向他方側の端部よりも前記前後方向の他方側まで延在しており、この立体ギャザーは、前記ポケットシートの幅方向両側部よりも装着者の身体側に突出している、請求項2〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
ポケット内に補助吸収性物品を挿入した状態では、ポケットが膨らみ、ポケット表面を伝って幅方向に移動する排泄物が立体ギャザーを越えて漏れ出すおそれがある。よって、上記のように、立体ギャザーをポケットシートの幅方向両側部よりも装着者の身体側に突出させて、ポケット表面を伝って幅方向に移動する排泄物を立体ギャザーでより確実に遮断できるようにするのは好ましい形態である。
【0021】
<請求項9記載の発明>
前記立体ギャザーのうち、前記ポケットシートの前後方向他方側の端部より前記前後方向の他方側の位置に、前記補助吸収性物品における前記ポケットからはみ出た部分の外面に粘着可能である粘着剤層が設けられている、請求項8記載の吸収性物品。
【0022】
(作用効果)
この場合、補助吸収性物品におけるポケットからはみ出た部分に、立体ギャザーを粘着剤層を介して粘着することができる。よって、補助吸収性物品におけるポケットからはみ出た部分を幅方向両側から立体ギャザーで支持・拘束することができ、補助吸収性物品全体としてのズレ止め効果の向上はもちろん、はみ出し部分のズレや捲れを効果的に防止できるようになる。
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり、本発明によれば、補助吸収性物品のズレを効果的に防止できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の形態の展開状態の表面側を示す平面図である。
【図2】第1の形態の展開状態の裏面側を示す平面図である。
【図3】図1のY−Y断面図である。
【図4】図1のZ−Z断面図である。
【図5】図1のX−X断面図である。
【図6】補助吸収性物品の展開状態の表面側を示す平面図である。
【図7】補助吸収性物品の展開状態の裏面側を示す平面図である。
【図8】男性巻き状態の補助吸収性物品を示す斜視図である。
【図9】男性巻きした補助吸収性物品をポケットに装着した状態の斜視図である。
【図10】男性巻きした補助吸収性物品をポケットに装着した状態の要部を示す縦断面図である。
【図11】男性巻きした補助吸収性物品をポケットに装着した状態の要部を示す横断面図である。
【図12】第2の形態の展開状態の表面側を示す平面図である。
【図13】図12のX−X断面図である。
【図14】男性巻きした補助吸収性物品をポケットに装着した状態の要部を示す縦断面図である。
【図15】第3の形態の展開状態の表面側を示す平面図である。
【図16】図15のX−X断面図である。
【図17】男性巻きした補助吸収性物品をポケットに装着した状態の要部を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態についてパッドタイプ吸収性物品の例を引いて説明するが、テープタイプ、パンツタイプ等の吸収性物品にも適用できるものである。なお、以下の説明において「股間部」とは使用時に身体の股間と対応させる部分を意味し、殆ど多くの製品では前後方向中央部及びその前後近傍の部分である。具体的には、成人向け製品の場合、製品の前後方向中央を基準として±150mmの範囲である。また、「腹側部分」及び「前側部分」は股間部よりも前側の部分を意味し、「背側部分」及び「後側部分」は股間部よりも後側の部分を意味する。
【0026】
(基本構造の例)
図1〜図4は、パッドタイプ吸収性物品の一例200を示している。このパッドタイプ吸収性物品200は、股間部C2と、その前後両側に延在する腹側部分F2及び背側部分B2とを有しており、液不透過性のバックシート21の内面と、透液性トップシート22との間に、吸収体23が介在された基本構造を有するものである。
【0027】
パッドタイプ吸収性物品200の各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向長さ)L1は350〜700mm程度、全幅W1は130〜400mm程度(ただし、おむつの吸収面の幅より狭い)とすることができ、この場合における股間部C2の前後方向長さは10〜150mm程度、腹側部分F2の前後方向長さは50〜350mm程度、及び背側部分B2の前後方向長さは50〜350mm程度とすることができる。
【0028】
吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。必要に応じて、吸収体23はクレープ紙(図示せず)により包むことができる。また、吸収体23の形状は適宜定めることができ、図示例では太もも内側に対するフィット性を高めるために、股間部C2を含む前後方向中間領域が脚周りに沿う括れた形状となっているが、長方形状等とすることもできる。
【0029】
吸収体23における繊維目付け及び吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0〜400g/m2程度とするのが好ましい。
【0030】
吸収体23の裏面側には、バックシート21が吸収体3の周縁より所定長さ食み出すように設けられている。バックシート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。このような透湿性シートにおいても臭気の透過は抑制される。パッドタイプ吸収性物品の裏面を布のような肌触りとするために、バックシート21の外面に不織布等の外装シート21Cを張り合わせたり、バックシート21として外面に不織布をラミネートしたラミネートシートを用いたりすることができる。これらの不織布の原料繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0031】
吸収体23の表面側は、透液性トップシート22により覆われている。図示形態ではトップシート22の側縁から吸収体23が一部食み出しているが、吸収体3の側縁が食み出さないようにトップシート22の幅を広げることもできる。トップシート22としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0032】
パッドタイプ吸収性物品200の前後方向両端部では、透液性トップシート1が吸収体3の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。
【0033】
パッドタイプ吸収性物品200の両側部では、バックシート21が吸収体23の側縁よりも外側にそれぞれ延在されるとともに、この延在部からトップシート22の側部までの部分の表面に対して、立体ギャザーGをなすギャザーシート24の幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり貼り付けられ、これにより吸収体23の存在しないサイドフラップ部SFが構成されている。これら貼り合わせ部分は、図9及び図10では点模様で示されており、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより形成できる。
【0034】
エンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SF以外の吸収体介在部分が、排泄物の主吸収領域である本体部BDを構成する。エンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SFの寸法は適宜定めることができるが、エンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SFにおいてバックシート21と透液性トップシート22およびギャザーシート24とが確実に貼り合わせられるため、少なくとも一部が本体部との境界から10mm以上食み出しているのが好ましい。
【0035】
図示形態では、サイドフラップ部SFの側縁は、吸収体の側縁に合わせて前後方向中間が脚周りに沿うように括れているが、括れの無い長方形状であってもよい。また、このような脚周りに沿う括れ部分を設ける場合、括れ部分の位置を前後方向中央より一方側に偏倚させ、当該一方側の部分における前後長を短くし、他方側の部分における前後長を長くし、当該一方側の部分を前、当該他方側の部分を後とすること(順方向装着)が一般的となっている。これは、臀部までを広くカバーする通常の装着状態や女性装着者を想定した場合、括れ部分の前後方向両側のうち前後長が長い方を装着状態における後とするのが望ましいからであり、図示形態における腹側部分F2及び背側部分B2はこれに応じたものである。しかし、装着の向きはユーザーが自由に変更できるものであり、例えば、男性における排尿の吸収性を高める場合等は、括れ部分の前後方向両側のうち前後長が長い方を装着状態における前とする、つまり背側部分B2が腹側に位置するように装着すること(逆方向装着)も行われている。
【0036】
ギャザーシート24の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0037】
ギャザーシート24の幅方向中央側の部分24cはトップシート22上にまで延在しており、その幅方向中央側の端部には、細長状弾性部材24gが前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この細長状弾性部材24gとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0038】
また、両ギャザーシート24,24は、幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり物品内面(図示形態ではトップシート22表面およびバックシート21表面)に貼り合わされて固定されるとともに、幅方向中央側の部分24cが、前後方向の両端部では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に貼り合わされて固定され、かつ前後方向の両端部の間では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に固定されていない。この非固定部分は、図10に示されるように、物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に対して起立可能なバリヤー部となる部分であり、その起立基端24bはギャザーシート24における幅方向外側の固定部分24xと内側の部分24cとの境に位置する。
【0039】
(第1の形態)
特徴的には、トップシート22表面に、補助吸収性物品100の一部又は全部が挿入されるポケット25が設けられるとともに、ポケット25の内面には、ポケット25内に挿入された補助吸収性物品100のズレを防止するズレ止め手段30が設けられる。このように、内面にズレ止め手段30を有する補助吸収性物品収納用ポケット25を設けることにより、補助吸収性物品100を使用する際、その一部又は全部をポケット25内にズレないように収納することができる。よって、補助吸収性物品100のズレを効果的に防止できるようになる。
【0040】
補助吸収性物品100としては、図5及び図6に示すような、バックシート1とトップシート2との間に吸収体3を介在させてなるフラットタイプの吸収性物品の他、予め筒状、円錐形状、蛇腹状等の立体形状に形成されたものも用いることができる。また、図示例のフラットタイプの補助吸収性物品100は、両側部におけるトップシート2とバックシート1との間に細長状の弾性伸縮部材4が前後方向に沿って伸長状態で固定されているが、このような弾性伸縮部材4は省略することもできる。さらに、図示例のフラットタイプの補助吸収性物品100は、裏面の長手方向一方側に粘着剤層5が設けられており、図7に示すように男性巻きする際、対向面相互を粘着剤層5で粘着できるようになっているが、このような粘着剤層5は省略することもできる。
【0041】
補助吸収性物品100におけるトップシート2、吸収体3としては上述のパッドタイプ吸収性物品200と同様の素材を使用でき、またバックシート1としては上述のパッドタイプ吸収性物品200と同様の液不透過性素材の他、トップシート2と同様の液透過性素材を用いることもできる。さらに、補助吸収性物品100は、装着状態において少なくとも一部がポケット25に挿入可能であれば寸法・形状は適宜定めることができるが、通常の場合、補助吸収性物品100の幅W2は、両立体ギャザーGの起立基端24bの幅方向間隔24wよりも狭く(例えば30〜90%程度)、補助吸収性物品100の長さL2は、組み合わせる吸収性物品200の長さ(前後方向)L1よりも短く(例えば20〜90%程度)するのが好ましい。
【0042】
ポケット25は、表裏方向の液透過性を有するのが望ましいが、表裏方向に液を透過しないものであっても良い。ポケット25は、予め袋状に形成された部材をトップシート22表面に張り付けてもよいが、トップシート22の表面側に二重のシートの層が形成されるため、資材コストが嵩むだけでなく、表裏方向の液透過性を持たせる場合に液透過性が低下せざるを得ない。よって、トップシート22を利用し、トップシート22とその表面に配置された液透過性のポケットシート26とでポケット25を構成するのが望ましい。ポケットシート26の素材としては、トップシート22と同様の素材を用いることができる。
【0043】
より詳細には、ポケットシート26における幅方向両側部26s、幅方向両側部26s間における前端部26f(一方側の端部)、幅方向両側部26s間における後端部26b(他方側の端部)、及びこれら前後方向両端部間に位置する中央部26cのうち、前端部26f及び幅方向両側部26sがトップシート22表面に対して接合される。この接合は、ホットメルト接着剤や、ヒートシール、超音波シール等の溶着により、通常の操作では剥離しないように強固に固定される。また、この接合は、ポケットシート26の周方向に連続的とするほか、間欠的とすることもできる。一方、ポケットシート26における後端部26b及び中央部26cはトップシート22表面に接合されず、自由部分となる。その結果、ポケットシート26における後端部26b及び中央部26cと表面シート22との間が、後方側に開口するポケット25となる。
【0044】
ポケット25の向きは適宜定めることができる。図示例は前述の逆方向装着において男性巻きの補助吸収性物品100を固定する場合を想定したものであるが、順方向装着において男性巻きの補助吸収性物品100を固定する場合にはポケット25の向きが図示例とは反対となる。補助吸収性物品100を男性巻きする場合、円錐状に巻いた補助吸収パッドをその軸心が前後方向に沿うように配置することになる。よって、逆方向装着を想定した場合、図示例のようにポケット25を後方側に開口させることで、陰茎の周りに円錐状に巻き付けた補助吸収パッドをその先端側からポケット25内に挿入し、トップシート22上に拘束することができる。この状態から補助吸収パッドが陰茎から抜ける方向に移動しようとしたり、巻きが緩むように広がろうとしたり、幅方向に移動しようとしたりしても、そのようなズレ等はポケット25による拘束作用により防止される。
【0045】
ただし、補助吸収性物品100を使用しない場合(女性が使用する場合等)や、補助吸収性物品100を使用するがポケット25の無い部位に使用する場合、ポケットシート26とトップシート22とが密着していないと、ポケットシート26上の排泄物がトップシート22に移行し難くなり、漏れ易くなるおそれがある。よって、ポケットシート26にける後端部26b及び中央部26cの一部(開口縁部等)又は全部をトップシート22表面に対して剥離可能(粘着剤や不織布等、他の素材を伴って剥離する場合を含む)に接合しておき、ポケット25使用時以外はポケットシート26とトップシート22とを密着させておく構造にすると、ポケット25の使用の有無に関係なく十分な吸収性能を確保できるため、汎用性の点で好ましいものとなる。なお、このような剥離可能な接合は、弱い接着剤や融着、あるいはエンボス加工による圧着により行うことができる。
【0046】
ポケット25(ポケットシート26の前端部26f及び幅方向両側部26sを除いた部分)の寸法は適宜定めることができるが、通常の場合、ポケット25の長さL3(前後方向)は、物品全長L1の10〜80%とすることができ、ポケット25の幅W3は、両立体ギャザーGの起立基端24bの幅方向間隔24Wの40〜100%とすることができる。
【0047】
ポケット25の位置は、図示例ではほぼ前後方向中央かつ幅方向中央となっているが、前側又は後側に偏倚させたり、幅方向一方側に偏倚させたりすることも可能である。また、ポケット25の開口は、挿入空間の前端部26f、後端部26bのみならず、両側部26s、前後方向中間部、又は幅方向中間部に設けることもできる。特に、ポケット25の開口が挿入空間の前端部26f又は後端部26bに位置する場合、ポケット25の開口縁(図示例では後端)は、装着時に腹側となる物品の端縁(図示例の場合後端縁)から装着時に背側となる物品の端縁(図示例の場合前端縁)までを0〜100%としたとき、0〜70%の範囲内に位置しているのが好ましい。
【0048】
他方、ズレ止め手段30としては、ゴム等の摩擦力の高い樹脂を塗布して摩擦力を上げることもできるが、補助吸収性物品100の外面に粘着可能である粘着剤層を用いてポケット25内面と補助吸収性物品100とを粘着固定するのが好ましい。粘着剤層30の部位は適宜定めることができるが、ポケット25に挿入した補助吸収性物品100は、ポケット25の入口に近い部位ほどズレ易い。よって、粘着剤層30は、ポケットシート26の後端部26bにおけるトップシート22側の面、及びトップシート22におけるポケットシート26の後端部26bと対向する部分のうち、いずれか一方若しくは両方に設け、ポケット25の入口の縁部で補助吸収性物品100を粘着固定できるようにするのが好ましい。もちろん、ポケットシート26の中央部26cについても同様に固定することができる。また、この粘着剤層30は、粘着範囲の全体にわたり連続的に延在させるほか、点状や線状の粘着剤層30を間欠的に多数配置することもできる。
【0049】
粘着剤層30を設ける場合、図5に示すように、粘着剤層30をカバーするために剥離シート31を張り付けておくことが一般的であるが、その場合、使用時に剥がした剥離シート31がごみとなる。よって、トップシート22におけるポケットシート26対向面及びポケットシート26におけるトップシート22対向面のうち粘着剤層30と対向する部分に、粘着剤層30の剥離を容易にする剥離処理(シリコン等の離型材を塗布)を施して、この剥離処理部分を粘着剤層30に粘着させ、剥離シート31を設けずに粘着剤層30の対向部材を剥離シート31として利用するのは好ましい形態である(図示略)。
【0050】
(第2の形態)
ポケットシート26の後端部26bは、ポケット25の入口の縁部を構成する部分である。よって、図11〜図13に示すように、この開口縁部に口締め用の弾性伸縮部材26g(糸ゴム等)を幅方向に伸長状態で固定するのも好ましい形態である。この弾性伸縮部材26gとしては、立体ギャザーGのものと同様の細長状弾性伸縮部材を好適に用いることができる。ポケット25の開口縁部が弾性伸縮部材26gにより収縮することにより、ポケット25に挿入された補助吸収性物品100が、ポケット25の入口により弾性的に締め付けられ、前後方向及び幅方向に移動しないように拘束される。よって、ポケット25による補助吸収性物品100のズレ止め効果がより一層のものとなる。しかも、弾性巻きした補助吸収性物品100の場合、補助吸収性物品100の円錐状の巻き付けが緩まないようにその周囲からポケット25の入口によって弾性的に締め付けられるため、男性巻きの緩み防止効果にも優れたものとなる。さらに、副次的な効果として、トップシート22の両側部に立体ギャザーGを有する場合、立体ギャザーGを引き寄せて起立させる効果もある。
【0051】
なお、このようにポケットシート26に弾性伸縮部材26gを設けると、ポケットシート26が幅方向に収縮し、しわが寄る。よって、このような場合には、ポケット内に設けるズレ止め粘着剤層30は、ポケットシート26に設けるよりも、図示例のようにトップシート22上に設けるのが好ましい。
【0052】
(第3の形態)
補助吸収性物品100はポケット25内のズレ止め手段によりズレ止めされているとはいえ、ポケット25から抜け出すおそれもある。よって、トップシート22における、ポケットシート26の後端部26bより後方側の位置、特にポケットシート26の後端部26b近傍に滑り止め部40を設け、補助吸収性物品100がポケット25から抜け出すのを防止するのは好ましい形態である。この滑り止め部40は、トップシート22表面にゴム等の摩擦力の高い樹脂を塗布することにより形成しても良いが、肌に触れる部分であるため注意が必要である。そこで、図15及び図16に示すように、トップシート22表面に形成された、幅方向に沿って波状に延在する溝40により、滑り止め部を構成することも提案される。このような溝40がトップシート22表面に形成されていると、補助吸収性物品100におけるポケット25からはみ出た部分が溝40に引っ掛かることにより、滑り止め効果が発揮される。また、トップシート22表面に溝40を設けること自体は吸収性物品の分野において汎用されており、装着感や吸収性能を悪化させ難く、さらに製造も容易である。このような溝40は、エンボス加工等を用いて、トップシート22のみ、又はトップシート22表面からその下側部材、特に吸収体23内まで窪むように形成することができる。また、この滑り止め溝40はポケット25内のトップシート22表面に設けることも可能である。溝40の寸法は適宜定めることができるが、溝40の幅は0.5〜5mm程度、溝40の深さは0.5〜10mm程度、溝40の幅方向延在長さは両立体ギャザーGの起立基端24bの幅方向間隔24Wの20〜100%とすることができる。溝40の形状は図示例のように波状とするほか直線状としても良い。さらに、溝40の延在方向は、幅方向だけでなく、幅方向に対して傾斜していても良い。
【0053】
(第4の形態)
ポケット25内に補助吸収性物品100を挿入した状態では、ポケット25が膨らみ、ポケット25表面を伝って幅方向に移動する排泄物が立体ギャザーGを越えて漏れ出すおそれがある。そこで、トップシート22の幅方向両側部に設けられる立体ギャザーGを、ポケットシート26の幅方向両側部26sよりも装着者の身体側に突出させ、ポケット25表面を伝って幅方向に移動する排泄物を立体ギャザーGでより確実に遮断することも提案される。このような構造は、ポケットシート26の幅方向両側部26sを両立体ギャザーGの起立基端24b間に位置させたり、立体ギャザーGの起立部分における起立基端24b側の部分に固定したりすることでも可能となるが、図4に示すように、ポケットシート26における幅方向両側部26sを、ギャザーシート24における幅方向外側の固定部分24xとトップシート22の側部との間に挟んで接着固定すると、図11に示すように、立体ギャザーGによる漏れ防止効果を確保できるだけでなく、立体ギャザーGが補助吸収性物品100を幅方向両側から支持するようになるため好ましい。また、立体ギャザーのポケット25内に補助吸収性物品100を挿入すると、ポケットが膨らむのにつれてポケットシートの両側部が幅方向中央側へ引き寄せられ、立体ギャザーの起立起端24bの位置が装着者の身体側に持ち上げられるという利点もある。
【0054】
(第5の形態)
装着状態において補助吸収性物品100がポケット25からはみ出す場合、そのはみ出し部分がズレたり、捲れたりし、所望の吸収性能が得られないおそれがある。そこで、図17に示すように、立体ギャザーGのうち、ポケットシート26の後端部26bより後方側の位置に粘着剤層26Dを設け、補助吸収性物品100におけるポケット25からはみ出た部分に立体ギャザーGを粘着する形態も提案する。これにより、補助吸収性物品100におけるポケット25からはみ出た部分を幅方向両側から立体ギャザーGで支持・拘束することができ、補助吸収性物品100全体としてのズレ止め効果の向上はもちろん、はみ出し部分のズレや捲れを効果的に防止できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、補助吸収性物品と組み合わせうる吸収性物品である限り、その形状がパッドタイプであろうと、テープタイプであろうと、パンツタイプであろうと利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1,21…バックシート、2,22…透液性トップシート、3,23…吸収体、4…弾性伸縮部材、G…立体ギャザー、100…フラットタイプ補助吸収性物品、200…パッドタイプ吸収性物品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性トップシートと液不透過性バックシートとの間に吸収体が介在されてなる吸収性物品において、
前記トップシート表面に、補助吸収性物品の一部又は全部が挿入されるポケットが設けられるとともに、このポケットの内面に、ポケット内に挿入された補助吸収性物品のズレを防止するズレ止め手段が設けられている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートの表面に液透過性のポケットシートが配置され、このポケットシートにおける幅方向両側部、幅方向両側部間における前後方向一方側の端部、幅方向両側部間における前後方向他方側の端部、及びこれら前後方向両端部間に位置する中央部のうち、前記前後方向一方側の端部及び幅方向両側部が前記トップシート表面に対して接合されるとともに、前記前後方向他方側の端部及び中央部が前記トップシート表面に接合されていないか又は剥離可能に接合されることにより、前記ポケットシートにおける前記前後方向他方側の端部及び中央部と前記表面シートとの間が、前記前後方向他方側に開口を有する前記ポケットとなるように構成されている、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ズレ止め手段として、前記ポケットシートの前後方向他方側の端部における前記トップシート側の面、及び前記トップシートにおける前記ポケットシートの前後方向他方側の端部と対向する部分のうち、少なくとも一方に、前記ポケット内に挿入された前記補助吸収性物品の外面に粘着可能である粘着剤層が設けられている、請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記ポケット内面のうち、前記ポケットシートにおける前記トップシート側の面、及び前記トップシートにおける前記ポケットシート側の面のいずれか一方に前記粘着剤層が設けられ、いずれか他方における前記粘着剤層と対向する部分に、粘着剤層の剥離を容易にする剥離処理が施されており、この剥離処理部分が前記粘着剤層に粘着されている、請求項2又は3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記ポケットシートの前記前後方向他方側の端部に、弾性伸縮部材が幅方向に伸長された状態で固定されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記トップシートにおける、前記ポケットシートの前後方向他方側の端部より前記前後方向の他方側の位置に、滑り止め部が設けられている、請求項2〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記滑り止め部は、前記トップシート表面に形成された、幅方向に沿って波状に延在する溝である、請求項6記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記トップシートの幅方向両側部に、装着者の身体側に突出する帯状の立体ギャザーが前後方向に沿って、前記ポケットシートの前後方向他方側の端部よりも前記前後方向の他方側まで延在しており、この立体ギャザーは、前記ポケットシートの幅方向両側部よりも装着者の身体側に突出している、請求項2〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記立体ギャザーのうち、前記ポケットシートの前後方向他方側の端部より前記前後方向の他方側の位置に、前記補助吸収性物品における前記ポケットからはみ出た部分の外面に粘着可能である粘着剤層が設けられている、請求項8記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−135978(P2011−135978A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296892(P2009−296892)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】