説明

吸収性物品

【課題】本発明は、防漏溝を有する吸収性物品に特有の課題の解決に鑑み、防漏溝による吸収体全体の柔軟性の低下を緩和し、横漏れの原因となる液拡散を防止しつつ、排泄の量に応じて防漏溝の内方及び外方の吸収性コアを有効に使用できる吸収性物品を提供する。
【解決手段】肌当接面側に配置される液透過性の表面シートと、非肌当接面側に配置される液不透過性の裏面シートと、前記両シートに介在される吸収性コアとを有する生理用ナプキンであって、前記吸収性コアは長手方向とこれに直交する幅方向とを有し、該吸収性コアは、その幅方向に沿って延びる複数の離間部があり、前記吸収性コアの前記離間部がさらに該吸収性コアの長手方向に沿っても形成されており、前記吸収性コアが縦横に独立した小さな吸収部の集合体で形成されており、該吸収性コアには前記離間部の1つ以上を横断して長手方向に沿って延びる前記表面シートとともに該表面シート側から圧搾された防漏溝が形成されている生理用ナプキン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキンや使い捨ておむつ、失禁パンツ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品については、近年、益々その要求が高まり、その種類や形態も多様化し、吸収性能だけでなく着用感や追従性、場合によってかわいらしさ等の外観の良さも求められてきている。かかるニーズに応えるよう、各吸収性物品を構成する部材の材料や構造が改良され、特に最近では使用時期や状況に応じて使い分ける機能的なものが種々提案されている。
【0003】
上記のような吸収性物品の高性能化の手法として、表面シートや吸収体にエンボス加工を施す形態における工夫が挙げられる。例えば特許文献1は、肌当接面側の表面材と、非肌当接面側のバックシートと、両シートの間に介在された吸収体とを有し、前記表面シートの肌当接面側から前記吸収体へ圧搾したエンボスが施された生理用品を開示している。前記エンボスが防漏溝となり、これにより前記生理用品中央部において表面シートと吸収体とを接合し、ズレを抑制し、かつ、液の拡散の抑制をすることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3877702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、さらなる改良を考慮すると、生理用ナプキン等に施されたエンボス加工による防漏溝は通常厚みのある吸収性コアを含めて、繊維が圧縮されるため、その部分で剛性が比較的高くなりやすい。それにより生理用ナプキンの身体へのフィット性が低下しがちになる。さらに、前記防漏溝は拡散抑制機能を示すことから、詳細は後述するが、逆にその防漏溝より外方にある吸収性コアが使用されにくいことがある。できれば、上記の拡散抑制機能を維持しつつその外方の吸収性部材を有効に活用することが望まれる。
上記の点に鑑み、本発明は、防漏溝を有する吸収性物品に特有の課題の解決に鑑み、防漏溝による吸収体全体の柔軟性の低下を緩和し、横漏れの原因となる液拡散を防止しつつ、排泄の量に応じて防漏溝の内方及び外方の吸収性コアを有効に液の吸収保持に活用できる吸収性物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シートと、非肌当接面側に配置される液不透過性の裏面シートと、前記両シートに介在される吸収性コアとを有する吸収性物品であって、前記吸収性コアは長手方向とこれに直交する幅方向とを有し、該吸収性コアは、その幅方向に沿って延びる複数の離間部があり、前記吸収性コアの前記離間部がさらに該吸収性コアの長手方向に沿っても形成されており、前記吸収性コアが縦横に独立した小さな吸収部の集合体で形成されており、該吸収性コアには前記離間部の1つ以上を横断して長手方向に沿って延びる前記表面シートとともに該表面シート側から圧搾された防漏溝が形成されている吸収性物品により解決された。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、防漏溝を有する吸収性物品に特有の課題の解決に鑑み、防漏溝による吸収体全体の柔軟性の低下を緩和し、横漏れの原因となる液拡散を防止しつつ、排泄の量に応じて防漏溝の内方及び外方の吸収性コアを有効に液の吸収保持に活用できるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明における吸収性物品の一実施形態としての生理用ナプキンを肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。
【図2】図1に示す生理用ナプキンの所定の断面を拡大して示した一部断面斜視図であり、A−A線断面が(i)であり、B−B線断面が(ii)であり、C−C線断面が(iii)である。
【図3】本実施形態に係る吸収体が液の排泄を受けたときの液の移行状態を模式的に示した部分的な平面図であり、(a)は比較として分割をしていない吸収体を示し、(b)は本実施形態において液の排泄が少ない場合を示し、(c)は本実施形態において液の排泄が多い場合を示す。
【図4】本発明における別の実施形態(実施形態2)としての吸収部と防漏溝との関係を模式的に示した平面図である。
【図5】本発明における別の実施形態(実施形態3)としての吸収部と防漏溝との関係を模式的に示した平面図である。
【図6】実施例・比較例におけるバルクソフトネス測定に用いた測定装置及びその動作を示す側面図である。
【図7】実施例・比較例における吸収体曲げ剛性測定に用いた測定装置及びその動作を示す側面図である。
【図8】比較例で使用した従来の吸収体を適用した生理用ナプキンを模式的に示す一部切欠斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明における吸収性物品の一実施形態としての生理用ナプキンを肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。図2は図1に示すA−A線断面の一部断面斜視図が(i)であり、B−B線断面の一部断面斜視図が(ii)であり、C−C線断面の一部断面斜視図が(iii)である。
【0010】
本実施形態の生理用ナプキン100においては、裏面シート7の肌当接面側に、複数の吸収部3を包囲シート2で包囲した吸収性コア(吸収体)10が接着剤で接合され配設されている。さらにその裏面シート7の肌当接面側における前記吸収性コア10の左右両側の外方ではサイドシート8が裏面シート7に当接して接合されている。その裏面シート7とサイドシート8とが当接した部分では表面シート1が裏面シート7とサイドシート8とで挟持され、さらにその幅方向(X方向)内方向に向け表面シート1が吸収性コア10よりも肌当接面側に位置されるように配されている。本実施形態においては、上記のように吸収性コア10は、多数の吸収部3が包囲シート2につつまれているが、形成された吸収部3を包囲シート2で包んだ後、吸収部3と包囲シート2と圧縮することで吸収部は包囲シートにずれない程度に軽く圧着されている。吸収性コア10の外方でナプキンの周縁部分に形成された周縁シールgは全体的な伸縮性を阻害せず、一度吸収した液が漏れない程度に表面シート1、裏面シート7及びサイドシート8をヒートシール等により接合している。前記サイドシート8の自由端81は周縁シールg以外には接合されておらず、サイドシートの自由端81から周縁シールgにかけてポケット(図示せず)を形成し、液等の横漏れを防ぐ効果を有する。
【0011】
本実施形態における生理用ナプキン100の肌当接面側には表面シート1の肌当接面側から吸収部3にかけて圧搾した防漏溝5が施されている。防漏溝5は、吸収性コア10の長手方向中央部Pにおいて、排泄部を中心に幅方向左右両側に配置され、前記2本の防漏溝は吸収性コア10の前後端に近づくにつれ、徐々に吸収性コア10の中央方向に向かい湾曲し、前端、後端が一致している。換言すると、防漏溝5は平面視において無端環状に連続して生理用ナプキン100の肌当接面側に配されている。また、防漏溝5の形状は特に限定されず、本実施形態において防漏溝5は前端、後端が一致して無端環状に連続しているが、前端、後端で互いに交差していてもよく、用途に合わせ適宜決められることが好ましい。なお、排泄部とは経血もしくはおりもの等の排泄を直接受ける部分及びその近傍である。
【0012】
本実施形態の生理用ナプキンを構成する材料や寸法等に関する詳細は後述するが、本実施形態において表面シート1は、排泄された体液を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と、肌触りのよさの観点から親水性のエアスルー不織布を用いている。また、裏面シート7としては、通気性を有した透湿性フィルムを単層で用いている。吸収部3としてはパルプ繊維と超吸収性ポリマーとから構成されたものを用いている。包囲シート2としては伸縮性を有していない難水溶性のティッシュを用いている。また、裏面シート7の非肌当接面側には、生理用ナプキン100を着衣に固定するための粘着剤(図示せず)が塗布されている。該粘着剤によって、生理用ナプキン10が使用者の着衣に接着固定される。本実施形態の生理用ナプキン100は、その表面シート側を着用者の肌当接面に向け、かつ、その縦方向を下腹部から臀部にかけて配し、換言すればその幅方向を左右の足をつなぐラインの方向に向けて配して着用する。
【0013】
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側を肌面側ないし肌当接面側あるいは表面側といい、下着に接する側を非肌面側ないし非肌当接面側あるいは裏面側という。また、装着時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。また、生理用ナプキンの表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚さという。さらに、生理用ナプキンの平面視において相対的に長さのある方向を長手方向といい、この長手方向と直交する方向を幅方向という。なお、前記長手方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0014】
本実施形態における生理用ナプキン100の肌当接面側にはエンボスにより形成された防漏溝5が施されている。また、生理用ナプキン100における吸収性コア10は独立した小さな吸収部3の集合体G(図中の符号としては示していない)を有してなる。吸収性コア10が小さな吸収部3の集合体Gであることにより、肌面の起伏にフィットする「身体適合性」、及び着用者の動きにも良好に追随し、肌に対して部分的な隙間が生じたりすることが防止される「動作追随性」が極めて高く、その詳細については後述する。図2(i)は本実施形態における吸収部3に施された防漏溝5部分を幅方向断面からみた斜視図である。
本実施形態における防漏溝5はエンボス加工による圧搾によって形成され、表面シート1、包囲シート2の上側21及び吸収部3を接合し、前記各部材のズレを抑制する働きをする。一方、エンボス加工によって圧搾された防漏溝5部分は、その部分において繊維間の密度が高いため、毛管力がその他の圧搾されていない部分よりも高くなっている。そのため、中央に排泄された液が拡散するように外方へ移行しても、防漏溝5部分においてその移行は遮られ、液を環状に施した防漏溝5の内側に留め、それより外側に滲出することを防ぐことができる。上記のような形態で吸収体全体を押圧した防漏溝を付すと、通常その部分において製品の剛性が高くなり、身体の起伏に沿って変形しにくくなりフィット性が低下することがある。これに対し、本実施形態における生理用ナプキン100は図2(ii)に示す可撓放流領域Wを有し、それにより剛性が高くなりがちな防漏溝部分に高い可撓性を発現しうる。
【0015】
上記可撓放流領域Wは、生理用ナプキン100に施された長手方向に延びる防漏溝5と吸収部3同士の離間した幅方向に延びる離間部mとが交差する領域に形成されている。本発明において吸収性コアの離間部とは吸収性コアの一部が分断され平面視において部材がない部分が存在することのほか、主たる部材部分が欠除し、その一部において連続する構造を含む意味である。本実施形態においては、吸収部ではそれぞれが互いに分断され、一方その分断部分において包囲シートが連続して離間部mを構成している。
離間部mは、吸収性コアの長手方向に延びる防漏溝5の経路上において吸収部3が存在しない領域であり、裏面シート7と包囲シート2とが当接して接合された接合部wと吸収部3の輪郭に沿って形成され、吸収部3と包囲シート2とが非接合状態である非接合部wとを有して構成された領域である。可撓放流領域Wではエンボスにより圧搾される部分に吸収部3の厚みのある部材がなく圧搾による過度の圧密化が生じずに、結果として剛性の上昇が抑えられる。これにより、本実施形態における生理用ナプキン100には、剛性が高くなりがちな長手方向に延びる防漏溝について、そこに間欠的な可撓領域が分布することとなり、少なくとも幅方向に分割された離間部mを有する吸収性コア10の特徴である高いフィット性を大きく損なうことがなく好ましい。
【0016】
本実施形態における可撓放流領域Wはさらに特有の液拡散性を発揮する。以下にこの点について少し詳しく説明する。
まず従来のエンボス加工による状況を、図4(a)に基づき説明する。図中、方向oが吸収性コアの幅方向外方であり、方向iが幅方向中央方向(排泄部方向)である。また、1点鎖線で示したのが排泄部から排泄された液の拡散領域Qを示している。液の拡散形状については模式化して示しており、本発明の実施において必ずしも図示したものと同一の形状にならなくともよい。排泄された液が多量であったり、生理用ナプキンの使用が長時間であったりすることが使用状況により多々ある。防漏溝5の液の拡散を抑制する効果は上述したが、そのような場合、排泄された液は排泄部を環状に囲む防漏溝の内部に留まり、外側の吸収体が使用されにくく、その部分においてかえってムレ等を生じやすくなることがある。また、体液の排泄量が一時期に多くあると、長手方向に延びる防漏溝5により堰とめられ溜まった体液が、あたかもその堰が決壊したかのようになって一気に放出することがある。そうすると、その量が少量であれば、上記防漏溝の幅方向外方にある吸収部でその流出した体液を吸い取って対応することができるが、その量がまとまると、すぐには吸引されない過剰の体液が吸収部を越えて漏えいする。このような状況は、着用者の身体の動きによって吸収性コアの中央部Pに吸収保持された体液が絞り出されるときに顕著になり、下着や衣服等を汚してしまう横漏れにつながってしまう。
【0017】
これに対し、本実施形態の生理用ナプキンにおいては、以下のように作用して、上記のような横漏れを簡単には起こさせない。本実施形態における生理用ナプキン100において、排泄された液の量が少ない場合においては図3(b)に示すとおり防漏溝5のある部分の圧密化された吸収部32の毛管力により、液の拡散Qの外方への拡散を妨げ、中央部P側の吸収部31からの排泄された液の移行による横漏れを防ぐ。この作用は一般的なエンボス加工で得られるものと同様である。他方、排泄された液が比較的に多い場合には従来のものにはない機能を発揮し、図3(c)に示すように可撓放流領域Wにおいて液が若干量ずつ放流され、防漏溝5より外方への穏やかな液の拡散Qがなされる。具体的には、上述したように可撓放流領域Wでは防漏溝5の経路上に離間部mがあり、内方の吸収部では吸収しきれずあふれた液があったとしても、液透過性の表面シート及び包囲シートが壁をなすこの可撓放流領域W部分を流路とした液の流れSが発生し、外方の吸収部33で吸引させることができ、少量ずつそこに移行させる。さらに可撓放流領域Wには部材同士の非接合部分wがあり、この部分においても流路が確保される。つまり、可撓放流領域Wは、防漏溝5の内方の吸収部31の飽和状態においてここを流速調整弁のようにして、液量を適度に絞りながら移行させることにより、防漏溝5の外方の吸収部33にその液を吸収保持させ、この部分を有効に使用することができる。その結果、本実施形態においては、一時期に多く液の排泄があったときや、着用者の身体の動きによって中央から液が絞りだされたようなときにも、適度なドライ感を維持しつつ、横漏れを防止するという優れた作用効果を奏する。
【0018】
また、本実施形態において包囲シート2は親水性のシートであり、上述した液の拡散効果をさらに高いものとしている。すなわち、表面シート1よりも親水性が高く、かつ、少なくとも密度が高い部位を有することから、表面シート1より経血等の排出液を素早く引き抜き、吸収部3に受け渡すことができる。また、包囲シート2は、液通過時の抵抗が少ない薄い材料で、かつ吸収部3同士の離間した離間部mが曲げやすくできる曲げ易い材料であることがより好ましい。このことにより、生理用ナプキンの吸収性がより高くなるとともに、吸収体全体の柔軟性も高めることができる。
【0019】
ここで、本実施形態の吸収性コア10について詳述すると、非伸縮性である非肌面側包囲シート22の肌当接面側に多数のそれぞれ独立した吸収部3が自然状態において互いに対して所定の隙間d,e(図1参照)を有するように縦横方向に配設されている。本実施形態の吸収体10においては吸収部3が千鳥状配列により配置されている。本発明において千鳥状配列とは、複数の吸収部の列を並列に配置したとき、隣接する列における吸収部のピッチをずらした配列をいう。この配列は、換言すれば、所定の列の吸収部3を直交する方向に投影したときに、隣接する吸収部3の投影像と一致しない配置である。この具体例を、図1により説明すると、長手方向(X方向)に延びる吸収部列Bに並列する吸収部列Aが隣接し、これが交互に繰り返されている。吸収部列Bの平面視における中心を吸収部列Bの延在する方向と直交する方向(Y方向)に連続した補助線tを想定する。一方、吸収部列Aにおける同様の補助線tを想定する。この補助線t及び補助線tが互いに半ピッチずれるよう、つまり補助線tと補助線tとの間隔が全体において等しくなるように配列されて千鳥状配列を構成している。本実施形態の変形例としては例えばピッチをずらす方向を90°回転させた、吸収体の幅方向(Y方向)に吸収列部A及び吸収部列Bを設定し、長手方向(X方向)に延びる補助線にずれを与える実施形態が挙げられる。また、千鳥状配列を石積みにみたてていうと布積と言え、この変形例として綾織積、矢羽積、亀甲積などとが挙げられる。
この吸収部3は、平面視において長手方向に長い長方形状であり、断面(図2(i)参照)において幅方向に長い長方形の、長方体形状のものとされているが、本発明においてこの形状は特に限定されず任意の形状のものを採用可能である。本実施形態において吸収部3はパルプ繊維と超吸収性ポリマーとから構成されており、その輪郭は図示したもののように定形的なものではなくてもよく、全体として上述した立体形状のものとされていることが好ましい。また、吸収部3の縦横の配列も上記に限らず用途に合わせ適宜決められるのが好ましい。
【0020】
吸収部3は、断面において幅方向に長い長方形にされ、その肌当接面側である表面3aの面積と非肌当接面側である裏面3bとの面積がほぼ同じとされている。そして該断面において側面3cは裏面3bと略直交している。各吸収部3は包囲シートにずれない程度に軽く接着されている。
【0021】
本実施形態の吸収性コア10は、独立した多数の吸収部3の集合で構成されたため肌面の起伏にフィットする「身体適合性」が通常の一体の大きな吸収体に比し大幅に高まる。また着用者の動きにも良好に追随し、肌に対して部分的な隙間が生じたりすることが防止される「動作追随性」が極めて良好である。本実施形態によればこのような良好な変形性と該変形に左右されない良好な液体等の吸収保持との両立を図ることができる。
【0022】
本実施形態において採用された分断された吸収部3が多数特定の配列で非肌面側包囲シート22上に配置されたことによる作用効果についてさらに詳しく述べる。まず、極めて複雑に屈曲する肌面にも好適に適合することが挙げられる。たとえば排泄ポイントからおしりに亘って生理用ナプキンを沿わしたときに、臀部の丸みにそって長手方向に湾曲するが、内包される従来の吸収体は一般的に剛性が他の部材より大幅に高く座屈してしまうことがある。この座屈変形との関係で、内部の吸収体は臀裂には入り込みににくく、ここに大きな隙間が開くことがある。すなわち、長手方向の座屈と幅方向の屈曲とが両立しにくく十分なフィット性を得がたい。すると、臀裂にできた空間を介して経血等が移行しやすくなり、就寝時の背中方向への漏れの原因となったりする。
これに対し本実施形態の吸収体を適用した生理用ナプキン100であれば、おしりの丸みに緩やかに湾曲して適合しながら臀裂にも適度に入り込んで沿う、いわゆる鞍面形状ないし双曲放物線面状に変形して、臀裂にもほぼ隙間を与えずにフィットする。これにより、排泄ポイント近傍からおしりにまでかけてほぼ隙間なく当接する極めて良好な適合性が実現される。そして、着用者が寝返りをうったり歩行したりしたときにも肌面の動きに合わせて追従するため、隙間が開かず良好なフィット性が持続される。
また、本実施形態の生理用ナプキンは形態の復元性が極めて高いため、例えば個別包装時に3つ折等にして畳まれていても、それによる折り目が残りにくく、着用初期から上記の良好な身体適合性と追従性とが得られる。
【0023】
本実施形態による吸収部3の大きさは特に限定されないが、生理用ナプキンにおける利用を考慮すると、組み込む生理用ナプキンによっても多少異なるが長手方向長さh(図1参照)は10〜40mmが好ましく、15〜20mmがより好ましい。幅方向長さhは5〜20mmが好ましく、10〜15mmがより好ましい。また、離間部隙間d,eはそれぞれ0.1〜5.0mm、0.5〜2.0mmが好ましい。また、防漏溝5の形状等は特に限定されないが、上述した良好な可撓性及び液拡散性を考慮すると、表面シート1の厚さが防漏溝5部以外では0.5mm以上の厚みを有し、防漏溝5部において0,3mm以下に圧縮されていることが好ましく、吸収部3の厚さu(図2)が防漏溝5部以外では2.0mm以上の厚みを有し、防漏溝5部において1.0mm以下に圧縮されていることが好ましい。また防漏溝の溝底の幅hは1.0〜2.0mmであることが好ましい。なお、本実施形態において防漏溝5以外における厚さとは、大きさ37mm×37mm、厚み3mmのアクリルプレートを表面シート1、もしくは吸収性コア10上に置き、KEYENCE社製非接触式レーザー変位計(レーザーヘッド 商品名:LK−G30、変位計 商品名:LK−GD500)を用いて測定した厚みであり、防漏溝5部における厚さとは、直接KEYENCE社製非接触式レーザー変位計で測定した厚みを指す。
【0024】
図4は本発明における別の実施形態(実施形態2)としての吸収部3と防漏溝5との関係を模式的に示した平面図である。吸収部3の配列以外は第1実施形態にて示した形態と同じであり、表面シート1、裏面シート7、上側包囲シート21及びサイドシート8は図示しておらず、下側包囲シート22は1点鎖線で示した。本実施形態において吸収部3は縦横に吸収部3を投影したときに隣あう吸収部3と一致する市松配列である。つまり、多数の吸収部を長手方向及び幅方向に投影したときにいずれの方向にもその投影像が重なる配置にされている。このようにすると、長手方向離間部m及び幅方向離間部mが長手方向及び幅方向に貫くように揃えられ、生理用ナプキンの幅方向及び長手方向の可撓性が向上し、より良好なフィット感を得ることができる。また、吸収部を市松配列にすることで、排泄された経血等が長手方向離間部m及び幅方向離間部mを通り、製品の長手方向、幅方向それぞれに伝達されるため、個々の吸収部での吸収性が低下した場合でも、異なる吸収部へ液を導く事ができ、吸収体をより有効に活用することができきる。
【0025】
図5は本発明における別の実施形態(実施形態3)としての吸収部3と防漏溝5との関係を模式的に示した平面図である。吸収部3の配列及び形状以外は第1実施形態にて示した形態と同じであり、表面シート1、裏面シート7、上側包囲シート21及びサイドシート8は図示しておらず、下側包囲シート22は1点鎖線で示した。本実施形態において吸収部3は平面視において長手方向に延びた六角形であり、前記六角形の吸収部の間に離間部mを有したハニカム状配列である。つまり、多数の吸収部を幅方向に投影したときにその投影像が重なる配置にされ、このようにすると、縦方向離間部m及び幅方向離間部mが長手方向及び幅方向に貫くように揃えられ、生理用ナプキンの幅方向及び長手方向の可撓性が向上し、高いフィット感を得ることができる。また、吸収部をハニカム状配列にすることで、幅方向や長手方向以外の斜め方向での形状変形を誘発しやすい。さらに吸収体離間部が直線的な通路でないため、一時期に多くの液が排泄した場合や、着用者の身体の動きによって中央から多量な液が絞りだされたようなときにも幅方向への液流れが抑制され、横漏れが防止できる。
【0026】
吸収部3の構成材料としては、特に制限はないが繊維材料、多孔質体、それらの組み合わせなどを用いることができる。繊維材料としては例えば、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。合成樹脂からなる繊維を用いる場合、該繊維は熱によって形状が変化する熱収縮繊維であってもよい。例えば、熱によって繊度は大きくなるが繊維長が短くなるものや、繊度はほとんど変化しないが、形状がコイル状に変化することで見かけの繊維の占有する長さが短くなるものであってもよい。多孔質体としては、スポンジ、不織布、高吸水性ポリマーの凝集物(高吸水性ポリマーと繊維とが凝集したもの)などを用いることができる。
【0027】
吸収部3が固定される包囲シート2としては排泄された液の引き込み及び拡散機能を有するものが用いられる。すなわち、包囲シート2は表面シート1より経血もしくはおりものを素早く引き抜き、吸収部3に受け渡すという観点から、表面シート1よりも親水性であり、かつ、密度が高いことが望ましい。
【0028】
表面シート1は、液透過性であり肌への当りのソフトな材料からなることが好ましい。例えばコットン等の天然繊維を材料とする不織布や、各種合成繊維に親水化処理を施したものを材料とする不織布を用いることができる。裏面シートは液不透過性のシート材からなることが好ましい。裏面シート7は必要に応じて水蒸気の透過性のものであってもよい。具体的に十分な水蒸気透過性を得るために、炭酸カルシウム等のフィラーからなる微粉を分散させたポリエチレン等の合成樹脂製のフィルムを延伸し、微細な孔をあけた多孔質フィルムを用いることが好ましい。サイドシート8としては、不織布、フィルムシート、紙等が挙げられる。防漏性の観点からは、サイドシート8を液不透過性又は難透過性である疎水性不織布、防漏性のフィルムシート等により形成することが好ましい。上記シートは一枚でもよいし、さらに機能性のシート等と組み合わせて2枚以上のものとしてもよい。
【0029】
本発明の吸収性物品は、上記の実施形態に制限されるものではなく、この種の吸収性物品、例えば使い捨ておむつ、失禁パッド、失禁ライナー等に本発明を適応することができる。また、経血に限らずその他、尿、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。また、表面シート1、吸収部3、裏面シート7及びサイドシート8の他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。なお、上記実施形態の生理用ナプキンの表面シート1及び裏面シート7の材料、製法における条件や、製品の寸法諸言は特に限定されず、通常の生理用ナプキン等において用いられている各種材料を用いることができ、吸収部3については国際公開第09/081744号パンフレットに記載の事項を参照することができる。
【実施例】
【0030】
本発明についてさらに以下の実施例及び比較例に基づき詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0031】
(実施例1)
以下のようにして、図1に示す吸収性コア10及びこれを組み込んだ生理用ナプキン(試験体1)を作製した。表面シートとしては、上層に芯部分がポリエチレンテレフタレート樹脂、鞘部分がポリエチレン樹脂からなる複合繊維をカードし、熱風により繊維が互いに融着して得られたウェブ、下層にポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂とがサイド・バイ・サイド構造をとる熱収縮性繊維をカードして得られたウェブを配置し、この両者をヒートシールの手法を用いて一体化した後、熱風で処理して得られたエアスルー不織布を適用し、坪量は74g/mとした。包囲シートは、難水溶性のティッシュ(薄葉紙)を適用し、坪量は16g/mとした。吸収部は、パルプ繊維と高吸水性ポリマーで構成し、それぞれ下記のような寸法になるよう成形した。裏面シートは、非透湿性の高分子樹脂フィルムを適用し、坪量は27g/mとした。サイドシートは、撥水性のエアスルー不織布を適用し、坪量は20g/mとした。なお、吸収部と包囲シートとは、形成された吸収部を包囲シート上に転写し、吸収部を包み込むように包囲シートを折り込んだ後、一対のプレスロール間に通して、3.0kgf/cmの圧力で圧縮することにより、各吸収部が包囲シートに固定されるように圧着した。
<寸法諸元>
:20mm
:10mm
:1.0mm
e:2.0mm
d:1.5mm
u:2.0mm
ナプキン全体の長さ×幅:225mm×97mm
【0032】
(比較例1)
上記実施例1に対し、吸収性コアを吸収部に分離されていない一体のものとした以外は同様にして比較のための生理用ナプキン(試験体c1)を作製した。このとき、吸収性コアの材料及び厚さt及び全体の寸法は試験体1と同じになるように設定した。図8は、試験体c1を模式的に示した斜視図である。
【0033】
上記の試験体1及びc1について、下記のバルクソフトネス測定試験及び吸収体曲げ剛性測定試験を行った。また、両試験体の吸収性コアのみを用い以下の吸収速度試験を行った。結果を下記表Bに示す。
【0034】
【表B】

【0035】
以上の結果より、本発明によれば、高い柔軟性を実現し、かつ高い液吸収性及び液戻り性を実現することが分かる。また、防漏溝の効果によりこれを横断する液流れも効果的に抑制することができることが分かる。
【0036】
<バルクソフトネス測定試験>
図6に示した装置を使用し、加圧部91を押し下げ、台座92に載せた生理用ナプキン試験体を押圧する。このとき生理用ナプキン試験体は筒状に丸めて、加圧部91及び台座92に、筒状のナプキンの上底及び下底にあたる部分(先導曲線部)が当接するように設置する。100mmから60mm加圧した時にナプキンが座屈する最大荷重点を測定し、バルクソフトネスとした。これにより、生理用ナプキンの使用時に着用者の股間部にかかる荷重評価ができ、400gf以下であると極めて良好な着用感が得られる。
【0037】
<吸収体曲げ剛性測定試験>
図7に示した装置を使用し、加圧板94を押し下げ、台座95に載置した吸収性コア試験片900を押圧する。台座の離間間隔Rは40mmとした。加圧板の板厚は2mmとした。試験片は吸収性コアを表面シートと裏面シートとで挟み込み、実製品の態様を考慮して、各部材を軽く接着したものを用いた。その他の寸法等は上記実施例・比較例に記載したとおりである。図示したものでは、側面視において長方形のものとして簡略化して示したが、本発明の試験体1においては、多数の吸収部と包囲シートとからなる複合材料である。試験片の寸法は、平面視において、長さ100mm・幅75mmの長方形のものとした。この加圧板を8mm押し下げたときの押圧力(応力)を測定した。この値が小さいほど、実製品としたときの製品長手方向の柔軟性の性能が優れることを示している。この値が30gf以下であると、極めて良好な着用感が得られる。
【0038】
<液吸収速度測定試験>
上記吸収体曲げ剛性試験に用いたのと同様の試験片を用い、表面シート側から擬似血液(馬血)を3gずつ滴下した。滴下後、内部の吸収性コアに浸透し表面シートから擬似血液がなくなるのを目視で確認した。このときの時間を1回目の滴下と2回目の滴下について測定した。この時間が1回目(3g注入)で6秒以下、2回目(さらに3g注入で合計6g注入)で15秒以下であると製品においても極めて良好な液吸収性が得られる。
【0039】
<液戻り量測定試験>
上記吸収体曲げ剛性試験に用いたのと同様の試験片を用い、液注入部の開孔径10mmの液注入プレートを用い、馬血3gを注入する。この時のナプキン表面から液が吸収された時間を馬血3gの吸収速度とした。液注入より1分後に重量測定済のティッシュをナプキン表面に置き、更にその上から125gの金属プレートを置き、5秒間加圧(圧力4.5g/cm)し、ティッシュに吸収された液量を測定する。更に注入プレートのナプキン接触面に付着した液量も測定し、両者の合計値を馬血3g注入時の表層液戻り量とした。1回目の注入から3分後に、再度馬血3gを注入し、注入1分後に上記同操作を繰り返し、累計馬血6g注入時の吸収速度および表層液戻り量とした。重量の減少が少ないものほど液戻りを抑制する性能に優れる。この値が、120mg以下であると実際に製品として使用したときに、極めて良好なドライ感が得られる。
【0040】
<液流れ防止性>
生理用ナプキン試験体1及びc1について、平面視における中央に、その表面シート側から、昼用ナプキン想定としては過剰量である擬似血液9gを一度に供給した。このときに防漏溝を越えて幅方向に広がる擬似血液の状態を目視で観察した。比較のための試験片c1の濡れ広がりをAとし、それよりも劣るが周縁シール部まで到達しないものをBとした。大幅に劣りナプキンの周縁シールgにまで到達するものをCとした。比較のための試験片c1と同等レベル(A)であれば、実用上、十分な横漏れ防止性が得られる。
【符号の説明】
【0041】
1 表面シート
2 包囲シート
3 吸収部
5 防漏溝
7 裏面シート
8 サイドシート
g 周縁シール
10 吸収性コア
20 吸収性コア(比較例)
100 生理用ナプキン
200 生理用ナプキン(比較例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に配置される液透過性の表面シートと、非肌当接面側に配置される液不透過性の裏面シートと、前記両シートに介在される吸収性コアとを有する吸収性物品であって、前記吸収性コアは長手方向とこれに直交する幅方向とを有し、該吸収性コアは、その幅方向に沿って延びる複数の離間部があり、前記吸収性コアの前記離間部がさらに該吸収性コアの長手方向に沿っても形成されており、前記吸収性コアが縦横に独立した小さな吸収部の集合体で形成されており、該吸収性コアには前記離間部の1つ以上を横断して長手方向に沿って延びる前記表面シートとともに該表面シート側から圧搾された防漏溝が形成されている吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性コアの左右両側でその長手方向に延びる前記防漏溝が該吸収性コアの前後端に近づくにつれ、徐々に前記吸収性コアの中央方向に向かって湾曲し、前記左右の防漏溝の前端及び後端が一致し、前記防漏溝が平面視において無端環状に連続する請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性コアの前記離間部の離間幅が2mm以下である請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収部の集合体が平面視において千鳥状に配置された集合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記液透過性の表面シートが0.5mm以上の厚みを有し、前記防漏溝部において0.3mm以下に圧縮されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性コアはこれを固定する基盤シート上に配設され、該基盤シートが伸長性を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−139897(P2011−139897A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273237(P2010−273237)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】