説明

吸収性物品

【課題】多数のセルに吸収材が移動可能に封入された吸収体の利点を維持しつつ、セル内における吸収材の偏在を抑制する吸収性物品を提供する。
【解決手段】第1シート57と、所定方向に延在する襞が多数並設された第2シート58と、第1及び第2シート間に配された吸収材59とを有し、第1シートと、第2シートの各襞における第1シート側底部とが接合されて接合部が形成され、接合部間ではトンネル状のセルが形成され、各セル内に、少なくとも高吸収性ポリマー粒子を含む粉粒状の吸収材59が隙間をもって移動可能に封入され、第2シートの全襞がその並設方向のいずれか一方向に倒伏し、第2シートの二重部分及び一重部分が形成された一方向倒伏状態とし、且つ第1シートにおけるセル内面に露出する部分に粘着層56tを設け、第2シートにおけるセル内面に露出する部分は、全体にわたり粘着層56が設けない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品は、基本構成として、吸収体と、吸収体の裏面側に配置された不透液性バックシートと、吸収体の表面側に配置され、装着者の身体に接触する透液性トップシートとを備えている。
吸収体としては、粉砕パルプ等の親水性短繊維に高吸収性ポリマー粒子(SAP)を混合し綿状に積繊したものが広く採用されているが、薄型化や軽量化の要請により、セルロースアセテート等の連続繊維の集合体に高吸収性ポリマー粒子を混合したもの等も用いられるようになっている。特に、吸収性能を落とさずに更なる薄型化や軽量化を図るためには、高吸収性ポリマーを増量して繊維材料を減量することが簡便かつ効果的な解決手法となっている。
【0003】
しかし、綿状パルプや連続繊維の集合体内に高吸収性ポリマー粒子を分散混入させる一般的な構造では、繊維集合体内に定着しない高吸収性ポリマー粒子が増加し、高吸収性ポリマー粒子の偏在による吸収性能の低下や、手触りの悪化(吸収体に保持されていない高吸収性ポリマー粒子を製品外面から触った場合、じゃりじゃりとした感じがする)など、解決困難な課題が多い。
このような一般的な構造の吸収体における問題点を解決するものとして、2枚の透液性シートを間欠的に接合して接合部間にセルを形成するとともにセル内に高吸収性ポリマー粒子を主とする吸収材を封入した吸収体が各種提案されている(例えば下記特許文献参照)。これら従来のものは、高吸収性ポリマー粒子の保持空間を堅固に確保するめに薄型化が困難であるもの、高吸収性ポリマー粒子の吸収膨張のための空間は殆ど無いが薄型化が容易であるもの、高吸収性ポリマー粒子の吸収膨張のための空間を十分に確保しつつも、薄型化を実現しようとしたものとに大別することができる。
【0004】
しかし、これら従来のものでは、製品包装時の圧縮や使用時に加わる外力により、セルが不規則に潰れる等、自由に変形・移動してしまい、不必要に厚くなったり、薄さが不均一になったりするおそれがあった。そしてその結果、装着感や手触り感が悪化するだけでなく、吸収時にセルの容積が円滑に拡大できない等、吸収性能も低下するおそれがあった。
この問題点に対して、本発明者は、第1シートと、所定方向に延在する襞が多数並設された第2シートとを有し、第1シートと第2シートの各襞における第1シート側底部とが接合されて接合部が形成され、これら接合部間では第1シートと第2シートとが接合されずにトンネル状のセルが形成され、且つ各セル内に吸収材が封入された吸収体において、第2シートの各襞を倒伏状態にすることを発案した。この案によれば、吸収前の吸収体は非常に薄くなり、装着感や手触り感に優れるようになるとともに、従来同様、粉粒状の吸収材は多数のセル内に分配封入されているため、吸収材を多量に使用して吸収量を増加しても、吸収材の偏在に起因する吸収量の偏りや吸収阻害は防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−014978号公報
【特許文献2】特開昭63−059464号公報
【特許文献3】特開平6−269475号公報
【特許文献4】特開2006−247398号公報
【特許文献5】特開2008−532648号公報
【特許文献6】特表平7−504206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術及び本発明者による案では、吸収材の膨潤阻害を抑制するためにセル内に十分な隙間をもって且つ移動可能なように非固定で吸収材を封入すると、セル内で吸収材が偏在するおそれがあった。吸収材がセル内で偏在すると、吸収材の少ない部分で吸収性能が局所的に低下したり、吸収材の多い部分で吸収体の厚みが局所的に増加したりすることにより、漏れが発生したり装着感が悪化したりするおそれがあるため好ましくない。
そこで、本発明の主たる課題は、多数のセルに吸収材が移動可能に封入された吸収体の利点を維持しつつ、セル内における吸収材の偏在を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
透液性トップシートと、不透液性バックシートと、これらの間に介在された吸収体とを備えた吸収性物品において、
前記吸収体は、そのトップシート側及びバックシート側のいずれか一方に配された第1シートと、他方に配された、前後方向又は幅方向に延在する襞が多数並設された第2シートと、これら第1シート及び第2シート間に配された吸収材とを有し、且つ第1シート及び第2シートのうち少なくともトップシート側のシートは透液性を有しており、
前記第1シートと、前記第2シートの各襞における第1シート側底部とが接合されて接合部が形成され、これら接合部間では前記第1シートと前記第2シートとが接合されずにトンネル状のセルが形成され、且つ各セル内に前記吸収材が封入されており、
隣接する前記接合部は所定の間隔で離間しており、
前記第2シートの全襞は、その並設方向のいずれか一方向に各襞全体が倒れるように倒伏した一方向倒伏状態とされ、かつ前記第2シートの各襞の延在方向の両端部が当該一方向倒伏状態で固定されるとともに、これら固定部間の中間部が当該一方向倒伏状態から起立可能なように構成されており、
前記吸収材は少なくとも高吸収性ポリマー粒子を含む粉粒状物であり、
前記各セル内の最大容積に対し、その内部に封入される吸収材の非吸収時の見かけ容積は小さく、且つ各セル内の吸収材の少なくとも一部はそのセル内を移動可能であり、
前記第1シートにおける前記セル内面に露出する部分に、粘着層が設けられており、前記第2シートにおける前記セル内面に露出する部分は、その全体にわたり粘着層が設けられていない、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
このような粘着層を設けることにより、吸収材が粘着層の粘着力により移動し難くなるとともに、その移動し難くなった吸収材により他の吸収材の移動が遮られるようになる。よって、セル内における吸収材の偏在が効果的に抑制される。吸収材がセル内で偏在していると、吸収材の少ない部分で吸収性能が局所的に低下したり、吸収材の多い部分で吸収体の厚みが局所的に増加したりすることにより、漏れが発生したり装着感が悪化したりするおそれがある。
なお、吸収材は吸収膨張の前はセル内の容積に対して占める量が少ないため、第2シートにおけるセル内面には接触することが少ない。従って、吸収前の吸収材の移動防止のため、あえて第2シートにも粘着層を設ける必要はない。むしろ、第2シートにおけるセル内面に露出する部分に粘着層が設けられていると、襞の内面同士が粘着することによりセルが膨張し難くなるおそれがある。よって、この部分には全体にわたり粘着層が設けられていないのが好ましい。
また、吸収材が多いと、全ての吸収材が粘着層に保持されることはないため、吸収材の偏在は生じ得る。このような場合、セルの一方の側に偏在した吸収材は、膨張可能な空間を有する他方の側に向かって移動しながら緩やかに膨張していくことになる。ここで、セル内部の上面にあたる第2シートと吸収材との摩擦が強くならないようにしておくと、吸収膨張中の吸収材の移動が妨げられにくい。従って、第2シートにおけるセル内面に露出する部分には、粘着層を設けないのが好ましい。
【0009】
もちろん、吸収体における第2シートの各襞が倒伏した状態で備え付けられていると、吸収前の吸収体は非常に薄くなり、装着感や手触り感に優れるようになる。また、各襞の両端部が固定されているため、所期の倒伏状態を確実に維持することができる。しかも、粉粒状の吸収材は多数のセル内に分配封入されているため、吸収材を多量に使用して吸収量を増加しても、吸収材の偏在に起因する吸収量の偏りや吸収阻害は防止される。
【0010】
また、セル内には十分な隙間をもって吸収材が封入されているため、吸収材の膨潤阻害が起こり難い。
さらにまた、隣接する接合部が襞と直交する方向に離間しているため、製造に際してセル入口部が開いた状態となるためセル内へ吸収材を入れ易いという利点もある。
なお、「セル内の最大容積」とは、セルが真円断面の円柱状にあるときの容積を意味する(以下同じ)。
【0011】
<請求項2記載の発明>
前記第1シートの粘着層は、ループタック粘着力が5〜40N/25mmである、請求項1記載の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
粘着層の粘着性(タック性)がある程度以上に強いと、吸収材が強固に粘着保持されて膨潤阻害が発生したり、第2シートの襞が第1シートの粘着層に接着され、セルの膨張が阻害されたりするおそれがある。また、粘着層の粘着性が弱過ぎると、吸収材の移動防止効果が乏しくなる。よって、粘着層の粘着性は上記範囲であるのが好ましい。なお、ループタック粘着力は次のように測定する。試料を幅25mm、長さ250mm、両端における遊び部25mmのテープ状に切断し、粘着面を外側にし、両端をそろえてループ状にして、引張試験機の上部チャックに両端の遊び部を取付け、引張試験機の下部チャックには、ポリエチレン板(日本テストパネル標準試験板)を水平に取付けて、上部チャックとの距離を210mmにし、300mm/分の速度で上部つかみを150mm下げ、その位置で15秒間保持した後、300mm/分の速度で引き剥がし、25℃の環境条件下で得られる引張荷重値をループタック粘着力(N/25mm)とする。
【0013】
<請求項3記載の発明>
前記粘着層が、前記第1シートにおける前記セル内面に露出する部分の全体にわたり設けられている、請求項2記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
粘着層は部分的に設けられていたり、散点状、千鳥状等のようなパターン状に設けられていても良いが、吸収材の移動防止及び製造容易性の観点からは、上述のように第1シートにおけるセル内面に露出する部分の全体にわたり設けるのが好ましい。
【0015】
<請求項4記載の発明>
前記吸収体は、前記第1シートが前記バックシート側となるように備え付けられている、請求項3記載の吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
第1シートがバックシート側、すなわち下側になるように備え付けられていると、第1シートの粘着層に吸収材が接しやすく、そのため吸収材が粘着層に保持されやすい。
【0017】
<請求項5記載の発明>
前記接合部及び前記粘着層が同一の接着剤により一体的に形成されている、請求項4記載の吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
このような構造を採用することにより、接合部と第1シートの粘着層とを一度に形成でき、製造が容易となる。
【0019】
<請求項6記載の発明>
前記第2シートにおける前記セル内面に露出する部分は、平均表面摩擦係数MIUが0.2以下、表面摩擦係数の変動偏差MMDが0.01以下、且つ表面粗さSMDが10マイクロメートル以下である、請求項5記載の吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
このように、第2シートにおけるセル内面に露出する部分と吸収材との摩擦がある程度弱いと、吸収前には吸収材はセル内で偏在していても、吸収膨張の際、第2シートに接触した後に第2シートの内面に沿って移動し、吸収材がさらに広がり易くなり、偏在が低減されるようになる。MIU、MMD、SMDの各数値は、KES−SE 摩擦感テスター(カトーテック社製)を用いて測定した。
【0021】
<請求項7記載の発明>
前記襞の並設方向における隣接する前記接合部間の離間距離は、前記襞の並設方向における前記接合部の幅 よりも大きくなるように構成され、かつ各セルを構成する第2シートの部分は、前記襞の並設方向の長さが接合部間の離間距離の2〜5倍となるように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0022】
<請求項8記載の発明>
前記吸収体は、前記第2シートの襞が幅方向に沿って延在するように備え付けられている、請求項1記載の吸収性物品。
【0023】
(作用効果)
第2シートの襞が幅方向に沿って延在していると、前後方向に延在する場合と比較して各セルの大きさが小さくなるため、セル内で吸収材が移動してもその偏在の程度は比較的に小さくて済むという利点がある。さらに、襞の一つ一つが排泄物の前後移動を遮る堰となるため、前後漏れが発生し難くなる。
【0024】
<請求項9記載の発明>
前記襞の並設方向における隣接する前記接合部間の離間距離は、前記襞の並設方向における前記接合部の幅 よりも大きくなるように構成されており、
前記倒伏状態で、少なくとも一部の前記セルが隣接セルと一部重なり、且つ少なくとも一部の前記セルにおいて形成される前記第2シートの二重部分及び前記第2シートの一重部分のうち、二重部分が、隣接セルにおいて形成される前記第2シートの二重部分と重ならないように形成されており、
前記各セル内の最大容積に対し、その内部に封入される吸収材の吸収飽和時の見かけ容積が70〜120%である、請求項8記載の吸収性物品。
【0025】
(作用効果)
このような寸法比率で形成されていると、同じ最大容積のセルを形成するにしてもセルを比較的浅く形成することができるため、吸収体表面の襞が大きくなり過ぎず、吸収時のセル容積の拡大がより円滑となるため好ましい。もちろん、薄さや、装着感、手触り感の向上も図られる。
また、隣接する接合部の間隔が大きいと、セル入口部の面積が大きくなるため製造に際してセル内へ吸収材を入れ易いという利点もある。
【0026】
さらに、セル同士が離れすぎると、隣接セル間に吸収材を有しない部分ができるため、吸収量の確保が困難となる、吸収速度が遅くなるといった吸収性能の低下が発生するおそれがあるが、セル同士が一部重なっているとこのような吸収性能の低下は防止できる。また、セル同士が離れすぎると、隣接セル間の部分とセル部分との間に比較的に大きな段差ができ、装着感や手触り感に悪影響するおそれもある。
【0027】
ただし、このように倒伏状態で隣接するセル同士が一部重なる場合、各セルの第2シートの二重部分同士が重なると、その部分が過度に厚くなるだけでなく、第2シートと第1シートとの隙間が広くなり、吸収材が移動し易くなるため好ましくない。また、セルが密集することになるため、吸収時には隣接セルとの干渉によりセルの円滑な拡大が阻害されるおそれがあるとともに、厚み方向に膨張が偏り、吸収後の厚みが不必要に増加するため好ましくない。よって、この観点からは、上述のように各セルの第2シートの二重部分同士が重ならないように構成されているのが好ましい。
【0028】
また、各セル内の最大容積に対し、その内部に封入される吸収材の吸収飽和時の見かけ容積が70〜120%であると、吸収材の膨潤阻害を抑制しつつも、吸収量を従来の一般的な吸収体と比べて顕著に向上させることができるため好ましい。
【発明の効果】
【0029】
以上のとおり、本発明によれば、多数のセルに吸収材が移動可能に封入された吸収体の利点を維持しつつ、セル内における吸収材の偏在を抑制できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】パンツタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図2】パンツタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図3】図1の3−3断面図である。
【図4】図1の4−4断面図である。
【図5】図1の5−5断面図である。
【図6】パンツタイプ使い捨ておむつの要部のみを示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図7】パンツタイプ使い捨ておむつの要部のみを示す、断面図である。
【図8】製品状態の正面図である。
【図9】製品状態の背面図である。
【図10】テープタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図11】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図12】図10の6−6線断面図である。
【図13】図10の7−7線断面図である。
【図14】図10の8−8線断面図である。
【図15】図10の9−9線断面図である。
【図16】吸収体の各種断面図である。
【図17】図16(c)の断面構造を有する吸収体の平面図、及び要部断面である。
【図18】図16(a)の断面構造を有する吸収体の平面図である。
【図19】セルが前後方向に沿う吸収体の平面図である。
【図20】セル間隔及び吸収材・セル最大容積比の違いによる、吸収時の変化の違いを模式的に示した、吸収体の概略断面図である。
【図21】セル間隔及び吸収材・セル最大容積比の違いによる、吸収時の変化の違いを模式的に示した、吸収体の要部概略断面図である。
【図22】セル間隔及び吸収材・セル最大容積比の違いによる、吸収時の変化の違いを模式的に示した、吸収体の要部概略断面図である。
【図23】セル間隔及び吸収材・セル最大容積比の違いによる、吸収時の変化の違いを模式的に示した、吸収体の要部概略断面図である。
【図24】セル間隔及び吸収材・セル最大容積比の違いによる、吸収時の変化の違いを模式的に示した、吸収体の要部概略断面図である。
【図25】セル間隔及び吸収材・セル最大容積比の違いによる、吸収時の変化の違いを模式的に示した、吸収体の要部概略断面図である。
【図26】他の形態を示す要部概略断面図である。
【図27】他の吸収体の要部を概略的に示す一部破断斜視図である。
【図28】他の吸収体の要部を概略的に示す一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。なお、以下の説明において、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの前身頃両側部と後身頃量側部を重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った際に胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
【0032】
<パンツタイプ使い捨ておむつの構造例>
図1〜図9は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例を示している。このパンツタイプ使い捨ておむつは、製品外面(裏面)をなす外装シート12と、外装シートの内面に貼り付けられた内装体200とから構成されているものである。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装シート12は着用者に装着するための部分である。なお、断面図における点模様部分は各構成部材を接合する接合部分を示しており、ホットメルト接着剤などのベタ、ビード、カーテン、サミットまたはスパイラル塗布などにより形成されるものである。
【0033】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図3〜図5に示されるように、身体側となるトップシート30と、不透液性バックシート11と、これらの間に介在された吸収体56とを備えているものである。符号40は、トップシート30を透過した液を速やかに吸収体56へ移動させるために、トップシート30と吸収体56との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に設けられた、身体側に起立する立体ギャザー60を示している。
【0034】
以下、各部の素材等について順に説明する。
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0035】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0036】
立体ギャザー60を設ける場合、トップシート30の両側部は、不透液性バックシート11と立体ギャザー60との間を通して、吸収体56の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、不透液性バックシート11及び立体ギャザー60に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。
トップシート30は省略することもできる。
【0037】
(中間シート)
トップシート30を透過した排泄物を吸収体へ移動させ、逆戻りを防ぐために、トップシート30と吸収体56との間に、トップシート30より液透過速度の速い中間シート(セカンドシートもいわれる)40を設けることができる。この中間シート40は、排泄物を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した排泄物の吸収体からの逆戻りを防止し、トップシート30表面の肌触りを良くするものである。中間シート40は省略することもできる。
【0038】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、スパンボンド不織布層間にメルトブローン不織布層を有する積層不織布(例えばSMS不織布、SMMS不織布等)、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは20〜80g/m2が好ましく、25〜60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.2〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0039】
中間シート40はトップシート30に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート40の素材はトップシート30と同程度の融点をもつものが好ましい。
【0040】
また、便中の固形分を透過させることを考慮するならば中間シート40に用いる繊維の繊度は5.0〜7.0dtexであるのが好ましいが、トップシート30における液残りが多くなる。これに対して、中間シート40に用いる繊維の繊度が1.0〜2.0dtexであると、トップシート30の液残りは発生し難いが、便の固形分が透過し難くなる。よって、中間シート40に用いる不織布の繊維は繊度が2.0〜5.0dtex程度とするのが好ましい。
【0041】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0042】
(吸収体)
吸収体56については後にまとめて説明する。吸収体56は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して不透液性バックシート11の内面に接着することができる。
【0043】
(不透液性バックシート)
不透液性バックシート11の素材は特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、ポリエチレン等のプラスチックフィルムに不織布をラミネートしたラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで不透液性バックシートが構成される。)などを用いることができる。
【0044】
特に、不透液性バックシート11としては、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材が好適である。このような透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に炭酸カルシウム粒子等の無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。このほかにも、マイクロデニール繊維を用いた不織布や、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、不透液性バックシート11として用いることができる。
【0045】
不透液性バックシート11は、防漏性を高めるために、吸収体56の両側を回りこませて吸収体56のトップシート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
【0046】
また、不透液性バックシート11の内側、特に吸収体56との間に、液分との接触により色が変化する排泄インジケータ80を設けることができる。
【0047】
(立体ギャザー)
立体ギャザー60は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。本実施の形態の立体ギャザー60は、内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
【0048】
より詳細には、立体ギャザー60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸張状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。立体ギャザー60のうち幅方向において折り返し部分と反対側の端部は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、突出部分66のうち前後方向両端部は、取付部分65から内装体200の側部を通りトップシート30の側部表面まで延在し且つこのトップシート30の側部表面に対してホットメルト接着剤やヒートシールによる前後固定部67固定された付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返され且つ付け根側部分に固定された先端側部分とからなる。突出部分のうち前後方向中間部は非固定の自由部分(内側自由部分)とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸張状態で固定されている。
【0049】
ギャザーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)や、スパンボンド不織布層間にメルトブローン不織布層を有する積層不織布(例えばSMS不織布、SMMS不織布等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470〜1240dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。また、図示のように、二つに折り重ねたギャザーシートの間に防水フィルムを介在させることもできる。
【0050】
立体ギャザー60の自由部分に設けられる細長状弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材63を配置しても良い。
【0051】
立体ギャザー60の取付部分65の固定対象は、内装体200におけるトップシート30、不透液性バックシート11、吸収体56等適宜の部材とすることができる。
【0052】
かくして構成された立体ギャザー60では、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが図3に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍において立体ギャザー60が幅方向外側に開くように起立するため、立体ギャザー60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。
【0053】
立体ギャザー60の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図7に示すように、立体ギャザー60の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、立体ギャザー60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
【0054】
なお、図示形態と異なり、内装体200の左右各側において立体ギャザーを二重に(二列)設けることもできる。
【0055】
(外装シート)
外装シート12は、股間部から腹側に延在する腹側部分Fと、股間部から背側に延在する背側部分Bとを有し、これら腹側部分Fの両側部と背側部分Bの両側部とが接合されて、図8及び図9に示すように、装着者の胴を通すための胴開口部WO及び脚を通すための左右一対の脚開口部LOが形成されているものである。符号12Aは接合部分を示している(以下、この部分をサイドシール部ともいう)。なお、股間部とは、展開状態における腹側部分のウエスト端縁から背側部分のウエスト端縁までの前後方向中央を意味し、それよりも前側の部分及び後側の部分が腹側部分F及び背側部分Bをそれぞれ意味する。
【0056】
外装シート12は、胴開口部WOから脚開口部LOの上端に至る前後方向範囲として定まる胴周り部Tと、脚開口部LOを形成する部分の前後方向範囲として定まる中間部Lとを有する。胴周り部Tは、概念的に「ウエスト側端部」Wと「胴周り下部」Uとに分けることができる。これらの前後方向の長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト側端部Wは15〜40mm、胴周り下部Uは65〜120mmとすることができる。一方、中間部Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うように括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。この結果、外装シート12は、全体としては略砂時計形状をなしている。外装シート12の括れの程度は適宜定めることができ、図1〜図10に示す形態のように、すっきりとした外観とするために最も幅が狭い部分では内装体200の幅より狭くすることもできるが、最も幅が狭い部分でも内装体200の幅以上となるように定めることもできる。
【0057】
外装シート12は、図3〜図5に示されるように、二枚のシート基材12S,12Hをホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせて形成されるものであり、内側に位置する内側シート基材12Hはウエスト開口部WOの縁までしか延在していないが、外側シート基材12Sは内側シート基材12Hのウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体20のウエスト側端部上までを被覆するように延在されている。
【0058】
シート基材12S,12Hとしては、シート基材であれば特に限定無く使用できるが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。特に、肌触り及び強度を両立できる点で、スパンボンド不織布や、スパンボンド不織布層間にメルトブローン不織布層を有する積層不織布(例えばSMS不織布、SMMS不織布等)等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布12相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m2、特に15〜30g/m2のものが望ましい。
【0059】
また、外装シート12を通して後述する印刷シート25のデザインを製品外面から良好に視認できるように、外装シート12の総目付けは20〜60g/m2程度であるのが好ましく、外装シート12のJIS K 7105に規定される全光線透過率が40%以上、特に50%以上となっているのが好ましい。
【0060】
そして、外装シート12には、胴回りに対するフィット性を高めるために、両シート基材12S,12H間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材15〜19が所定の伸張率で設けられている。細長状弾性伸縮部材15〜19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。外装シート12の両シート基材12S,12Hの貼り合せや、その間に挟まれる細長状弾性伸縮部材15〜19の固定には種々の塗布方法によるホットメルト接着またはヒートシールや超音波接着を用いることができる。外装シート12全面を強固に固定するとシートの風合いを損ねるため好ましくない。これらを組合せ、細長状弾性伸縮部材15〜19の接着は強固にし、それ以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。
【0061】
より詳細には、背側部分B及び腹側部分Fのウエスト端部(上端部)Wにおける内側シート基材12Hの内側面と外側シート基材12Sの折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数のウエスト部弾性伸縮部材17,18が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。また、ウエスト部弾性伸縮部材17,18のうち、胴周り下部Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト弾性伸縮部材17,18としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸張率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、ウエスト部弾性伸縮部材17,18は、その全てが同じ太さと伸張率にする必要はなく、例えばウエスト側端部Wの上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸張率が異なるようにしてもよい。
【0062】
また、腹側部分F及び背側部分Bの胴周り下部Uにおける内側シート基材12Hの外側面と外側シート基材12Sの内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の細長状弾性伸縮部材15,19が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0063】
胴回り下部Uの細長状弾性伸縮部材15,19としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸張率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0064】
また、腹側部分F及び背側部分Bの中間部Lにおける内側シート基材12Hの外側面と外側シート基材12Sの内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の細長状弾性伸縮部材16が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0065】
中間部Lの細長状弾性伸縮部材16,18としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸張率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
【0066】
なお、図示のように、胴回り下部U及び中間部Lの細長状弾性伸縮部材15,19,16,18が、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体200が幅方向に必要以上に収縮することがなく、モコモコと見た目が悪かったり吸収性が低下したりすることがないため好ましい。この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体200と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が切断され、伸縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)ように構成されている形態も含まれる。もちろん細長状弾性伸縮部材15,19,16,18の配設形態は上記例に限るものではなく、胴回り下部Uの幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、胴回り下部Uの細長状弾性伸縮部材15,19,16,18の一部または全部を、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
【0067】
また、細長状弾性伸縮部材15〜19が後述する印刷シート25を横切る場合において、細長状弾性伸縮部材15〜19として酸化チタンを含有するゴムを用いる場合には、酸化チタンの含有量が低い(例えば2%以下の)ものあるいは酸化チタンを含有しないものを用いるのが好ましい。
【0068】
(後処理テープ)
外装シート12の背側部分Bの外面における幅方向中央部には、後処理テープ70(固定手段)が設けられている。後処理テープ70は、おむつをトップシート30が内側になるとともに腹側部分Fが内側となるように丸め若しくは折り畳んだ状態で固定するためのものである。一般的な後処理テープ70は、幅が5〜15mm程度、長さが100〜200mm程度の細帯状で、基端部が外装シート12の外面に接着剤等により固定されるとともに、この固定部よりも先端側の部分は三つ折り(断面Z字状)や二つ折りで長さ40〜80mm程度に折り畳まれて、折り重なり部分間が接着剤により剥離可能に固定(仮固定)されている。廃棄時には、おむつをトップシート30が内側になるとともに腹側部分Fが内側となるように丸め若しくは折り畳んだ後、後処理テープ70の折り重なり部分を剥離して展ばし、丸めた若しくは折り畳んだおむつの背側部分Bからウエスト開口部WOを越えて反対側の外面まで巻き付けるようにして接着剤により固定する。後処理テープ70は、不使用時にはコンパクトに折り畳まれ、使用時には長尺状に展開できる三つ折り形状のものが特に好適である。
【0069】
また、外装シート12の外面に固定される基端部を有さない、全体がおむつ表面に対して着脱自在に取り付けられる後処理テープ70としてもよい。このような形態である場合は、後処理テープ70は基材シートとメカニカルファスナーのフック材とから構成されることが好ましく、形状は細帯状に限るものではなく、矩形や円形、その他の図形など、適宜の形状とすることができ、寸法は縦横それぞれ20〜100mm程度で、面積は1000〜5000mm2程度とすることができる。
【0070】
なお、後処理テープ70等の固定手段は、腹側部分Fに設けてもよく、背側部分Bと腹側部分Fの両方に設けたり、幅方向中央部ではなく左右両側に設けたりしてもよい。
【0071】
(外装シート分割構造)
図示例では、腹側部分Fから背側部分Bまでを一体的な外装シート12により連続的に覆っているが、外装シートが、装着者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シートと背側を覆う背側外装シートとに分割されており、腹側外装シートの幅方向中央部内面に内装体の前端部がホットメルト接着剤等により連結されるとともに、背側外装シートの幅方向中央部内面に内装体の後端部がホットメルト接着剤等により連結されており、腹側外装シートと背側外装シートとが股間側で連続しておらず、離間されている形態も採用することができる。この離間距離は150〜250mm程度とすることができる。この場合、内装体における不透液性バックシートの裏面には、内装体の裏面全体を覆うように、あるいは腹側外装シートと背側外装シートとの間に露出する部分全体を覆うように、股間部外装シートを固定することもできる。股間部外装シートとしては、前述した外装シートに用いられるものと同様の資材を用いることができる。
【0072】
(印刷シート)
不透液性バックシート11と外装シート12との間(外装シート12の層間を含む)には、印刷によりデザインの施された印刷シート25が設けられている。図示例の印刷シート25は、腹側部分F及び背側部分Bに個別に設けられているが、腹側部分Fから股間部を通り背側部分Bまで一体的に連続するように設けることもできる。
【0073】
印刷シート25のシート基材としては、プラスチックフィルムや不織布、紙などを用いることができるが、嵩高く通気性の高い素材が好ましい。プラスチックフィルムを用いる場合は、ムレ防止のため透湿性を有することが望ましい。不織布や紙は透湿性を有するため好ましいが、不織布を用いる場合は平滑性が高く印刷しやすいもの、紙を用いる場合は強度が高くインクの滲み難いものを用いるのが好ましい。特に好ましいものとしては、目付け15〜35g/m2程度、厚み0.1〜0.3mm程度のクレープ紙(薄葉紙)や、目付け10〜25g/m2程度、厚み0.1〜0.3mm程度の不織布(特にスパンボンド部の繊度が1.0〜3.0dtex程度のスパンボンド不織布や、スパンボンド不織布層間にメルトブローン不織布層を有する積層不織布(例えばSMS不織布、SMMS不織布等))を挙げることができる。クレープ紙を用いる場合は、クレープ率は5〜20%程度、特に5〜15%程度のものを用いるのが好ましい。クレープ率が20%以上であると、インクの定着量は大きくなるが滲みが生じてデザイン印刷には適さない。クレープ率が5%以下であるとインクが浸透しにくいため定着量が少ない。
【0074】
印刷シート25の寸法・形状は特に限定されないが、例えば、印刷シート25の幅25Xは吸収体56の幅の50〜120%程度であるのが好ましく、印刷シート25の長さ25Yは少なくとも腹側及び背側の片側で物品全長Yの15〜30%程度であるのが好ましい。また、印刷シート25の形状はトリムロスが発生しない点では図示例のような矩形であるのが好ましいが、円形や楕円形、三角形、六角形等の幾何学形状、若しくはデザインの周囲に沿う形状にカットしても良い。
【0075】
<テープタイプ使い捨ておむつの構造例>
図10〜図15はテープタイプ使い捨ておむつの一例を示している。図12及び図13は、図10における6−6線断面及び7−7線断面をそれぞれ示した図であり、図14及び図15は、図10における8−8線断面及び9−9線断面をそれぞれ示した図である。このテープタイプ使い捨ておむつは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する不透液性バックシートとの間に吸収体56が介在する部分である吸収性本体部10と、この吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分である腹側エンドフラップ部FE及び背側エンドフラップ部BEとを有するものである。
【0076】
また、このテープタイプ使い捨ておむつは、腹側Fの上縁F1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の腹側サイドフラップ部FF,FFと、背側Bの上縁B1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の背側サイドフラップ部BF,BFとを備えている。また、背側サイドフラップ部BF,BFには、係止部材としてのファスニングテープ130がそれぞれ設けられている。
【0077】
より詳細には、吸収性本体部10ならびに背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収性本体部10においては、外装シート12の内面側に不透液性バックシート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの不透液性バックシート11の内面側に吸収体56、中間シート40、およびトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30および不透液性バックシート11は図示例では長方形であり、吸収体56よりも前後方向および幅方向において若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収体56の側縁より食み出る周縁部と、不透液性バックシート11における吸収体56の側縁より食み出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより固着されている。また不透液性バックシート11は透湿性のポリエチレンフィルム等からなり、トップシート30よりも若干幅広に形成されている。
【0078】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する側部立体ギャザー60,60が設けられており、この側部立体ギャザー60,60を形成するギャザーシート62,62が、背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの内面を含め、吸収性本体部10の幅方向外側の全体にわたり延在されている。
【0079】
以下、各部の素材等について順に説明する。
(外装シート)
外装シート12は物品外面を構成する部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚周りに沿ってフィットする部分となる。外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布としては、前述したパンツタイプ使い捨ておむつの外装シート12のシート基材12S,12Hと同様のものを用いることができるため、ここでは敢えて説明を省略する。
【0080】
(不透液性バックシート、トップシート及び中間シート)
不透液性バックシート11、トップシート30、中間シート40としては、前述したパンツタイプ使い捨ておむつと同様のものを用いることができるため、ここでは敢えて説明を省略する。トップシート30及び中間シート40は省略することもできる。
【0081】
(吸収体)
吸収体56については後にまとめて説明する。吸収体56は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して不透液性バックシート11の内面に接着することができる。
【0082】
(側部立体ギャザー)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側に、使用面側に突出(起立)する側部立体ギャザー60、60を設けるのは好ましい。
【0083】
この側部立体ギャザー60は、実質的に幅方向に連続するギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向に沿って伸張状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このギャザーシート62、弾性伸縮部材63としては前述のパンツタイプと同様のものを用いることができ、弾性伸縮部材63は、図12及び図13に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0084】
ギャザーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、不透液性バックシート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。この固着部分のうち固着始端近傍の幅方向外側において、ギャザーシート62と外装シート12とが対向する部分のシート間に、前後方向に沿って糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材64がそれぞれ設けられている。
【0085】
脚周りにおいては、側部立体ギャザー60の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が糸ゴム63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム63の収縮力が作用するので、糸ゴム63の収縮力により側部立体ギャザー60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0086】
図示形態と異なり、ギャザーシート62の幅方向内側の部分における前後方向両端部を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分とこの基端側部分の幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0087】
(ファスニングテープ)
ファスニングテープ130は、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材からなるファスニング基材130Cの基部がおむつに取り付けられており、おむつから突出する先端側部分に腹側に対する係止部として、メカニカルファスナーのフック材130Aが設けられている。フック材130Aはファスニング基材130Cに接着剤により剥離不能に接合されている。
【0088】
特に、水様便、軟便を頻繁に排泄する新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、ファスニングテープ130の取り付け部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さX1は10〜50mm、特に20〜40mmであるのが好ましく、前後方向長さY1は、20〜100mm、特に40〜80mmであるのが好ましい。また、ファスニングテープ130の先端側部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さは30〜80mm、特に40〜60mmであるのが好ましく、前後方向の長さ(高さ)は20〜70mm、特に25〜50mmであるのが好ましい。なお、ファスニングテープ130の一部または全部が例えば略テーパ形状をなし、前後方向長さや幅方向長さが一定でない場合は、上記数値範囲は平均値にて定める。ファスニングテープ130の形状は、矩形形状などの左右対称形状でもよいが、幅広の取り付け部分と細長状の先端側部分からなる凸型形状であると、先端側部分の摘み部が摘みやすく、かつ左右の基部間の張力が広範囲に作用するため、好ましい。フック材130Aは、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。フック材130Aに代えて、ファスニングテープ130の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0089】
おむつの装着に際しては、背側サイドフラップ部BFを腹側サイドフラップ部FFの外側に重ねた状態で、ファスニングテープを腹側F外面の適所に係止する。ファスニングテープ130の係止箇所の位置及び寸法は任意に定めることができる。新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、係止箇所は、前後方向20〜80mm、幅方向150〜300mmの矩形範囲とし、その上端縁と腹側上縁との高さ方向離間距離を0〜60mm、特に20〜50mmとし、かつ製品の幅方向中央とするのが好ましい。
【0090】
ファスニングテープ130は、背側エンドフラップ部BEと吸収体56との境界線上にファスニングテープ130の取り付け部分が重なるように取り付けられていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ130の取り付け部分間に働く張力により、吸収体56の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。また、ファスニングテープ130の取り付け部分が、おむつの背側端部(後端部)と離れすぎていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ130の取り付け部分間に働く張力がおむつの背側端部にまで及ばないため、おむつの背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすい。従って、背側エンドフラップBEの前後方向長さは、ファスニングテープ130の基部の前後方向長さと同じか又は短いことが好ましい。
【0091】
(ターゲット印刷シート)
腹側Fにおけるファスニングテープ130の係止箇所には、係止を容易にするためのターゲット印刷を有するターゲット印刷シート74を設けるのが好ましい。ターゲット印刷シート74は、係止部がフック材130Aの場合、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなる基材シートの表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなる基材シートの表面に剥離処理を施したものを用いることができる。ここで、ターゲット印刷は、基材シートに対して施すのが好ましい。
【0092】
また、腹側Fにおけるファスニングテープ130の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合であって、ファスニングテープ130の係止部がフック材130Aの場合には、ターゲットテープ74を省略し、フック材130Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。この場合、ターゲット印刷シート74を外装シート12と不透液性バックシート11との間に設けてもよい。
【0093】
(エンドフラップ部)
エンドフラップ部は、吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分であり、前側の延出部分が腹側エンドフラップ部FEであり、後側の延出部分が背側エンドフラップ部BEである。
【0094】
背側エンドフラップBEの前後方向長さは、前述の理由によりファスニングテープ130の取り付け部分の前後方向長さと同じか短い寸法とすることが好ましく、また、おむつ背側端部と吸収体56とが近接しすぎると、吸収体56の厚みとコシによりおむつ背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすいため、10mm以上とすることが好ましい。
【0095】
腹側エンドフラップ部FE及び背側エンドフラップ部BEの前後方向長さは、おむつ全体の前後方向長さLの5〜20%程度とするのが好ましく、水様便、軟便を頻繁に排泄する新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、10〜60mm、特に20〜50mmとするのが適当である。
【0096】
(背側伸縮シート)
図示形態では、両ファスニングテープ130間に、幅方向に弾性伸縮する帯状の背側伸縮シート70が設けられ、おむつ背側部におけるフィット性を向上させている。背側伸縮シート70の両端部は両ファスニングテープ130の取り付け部分と重なる部位まで延在されているのが好ましいが、幅方向中央側に離間していても良い。背側伸縮シート70の前後方向寸法は、ファスニングテープ130の取り付け部分の前後方向寸法と概ね同じにするのが適当であるが、±20%程度の寸法差はあってもよい。背側伸縮シート70は、ゴムシート等のシート状弾性部材を用いても良いが、通気性の観点から、図14に示すように、二枚の不織布等のシート基材71をホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせるとともに、両シート基材71間に有孔のシート状、網状、細長状(糸状又は紐状等)等の弾性伸縮部材72を幅方向に沿って伸張した状態で固定したものが好適に用いられる。この場合におけるシート基材71としては、外装シート12と同様のものを用いることができる。弾性伸縮部材72の伸張率は150〜250%程度であるのが好ましい。また、弾性伸縮部材72として細長状(糸状又は紐状等)のものを用いる場合、太さ420〜1120dtexのものを3〜10mmの間隔72dで5〜15本程度設けるのが好ましい。
【0097】
また、図示のように弾性伸縮部材72の一部が吸収体56を横断するように配置すると、吸収体56のフィット性が向上するため好ましいが、この場合は、弾性伸縮部材72が吸収体56と重なる部分の一部又は全部を、切断等の手段により収縮力が働かないようにすると、吸収体56の背側端部が幅方向に縮まないため、フィット性がさらに向上する。
【0098】
なお、弾性伸縮部材72は、シートの長手方向(おむつの幅方向)にシート基材71の全長にわたって固定されていてもよいが、おむつ本体への取り付け時の縮みやめくれ防止のため、シートの前後方向(おむつの幅方向)端部の5〜20mm程度の範囲においては、収縮力が働かないように、または弾性伸縮部材72が存在しないようにするとよい。
【0099】
背側伸縮シート70は、図示形態では、不透液性バックシート11の幅方向両側ではギャザーシート62と外装シート12との間に挟まれ、且つ不透液性バックシート11と重なる部位では、不透液性バックシート11と吸収体56との間に挟まれるように設けられているが、トップシート30と吸収体56との間や不透液性バックシート11と外装シート12との間に設けても良いし、トップシート30の上に設けても良い。この場合、不透液性バックシート11の幅方向両側ではギャザーシート62の上に設けても良い。背側伸縮シート70をトップシート30の上に設け、背側伸縮シート70を構成するシートのうち、少なくとも肌と接触する側のシートを、後述する吸汗放湿シート20で構成すると、部材の点数を減らすことができるため、好ましい。また、外装シート12を複数枚のシート基材を重ねて形成する場合には、背側伸縮シート70全体を、外装シート12のシート基材間に設けても良い。
【0100】
<吸収体の構造例>
さて、上述した使い捨ておむつにおける吸収体56は、図3〜図6、図14〜図15に示されるように、表裏いずれか一方側に配された第1シート57と、所定方向に延在する襞58Fが多数並設された第2シート58と、これら第1シート57及び第2シート58間に配された吸収材59とを有するものである。第1シート57と、第2シート58の各襞58Fにおける第1シート側底部とは、襞58Fの並設方向と直交する方向に所定の間隔を空けて、ホットメルト接着剤や溶着等により接合されて接合部56bが形成され、これら接合部56b間では第1シート57と第2シート58とが接合されずにトンネル状のセル56Cが形成され、且つ各セル56C内に吸収材59が封入されているものである。各セル56Cの長手方向両端部においても第1シート57と第2シート58とがホットメルト接着剤や溶着等56fにより接合されており、各セル56Cは密閉されている。
【0101】
第2シート58の各襞58Fは、不規則又は複数方向に倒伏するのではなく、一方向に倒伏しており、セル56Cが潰れた状態(倒伏状態)となっているが、吸収の際には吸収材56の膨潤に伴ってセル56Cも膨張拡大する。このように、吸収体56における第2シート58の各襞58Fが一方向に倒伏した状態で備え付けられていると、吸収前の吸収体56は非常に均一に薄くなり、装着感や手触り感に優れるようになるとともに、吸収時にセル56Cの容積が円滑に拡大するため吸収阻害が発生し難くなる。もちろん、従来同様、粉粒状の吸収材59は多数のセル56C内に分配封入されているため、吸収材59を多量に使用して吸収量を増加しても、吸収材59の偏在に起因する吸収量の偏りや吸収阻害は防止される。また、非吸収時(吸収前)には、各セル56C内の最大容積に対し、その内部に封入される吸収材59の見かけ容積は小さく、吸収材59が膨潤するのに十分な容積が各セルに確保されている。
【0102】
第1シート57及び第2シート58は、いずれが表側に位置していても良いが、図示形態のように、第2シート58が表面側となるように吸収体56が備え付けられていると、第2シート58の襞58Fにより吸収体56の表面側(受液面側)の表面積が増加し、吸収速度に優れたものとなる。反対に第1シート57が表面側となるように吸収体56が備え付けられていると、吸収体56表面側での拡散性に偏りが無いという利点がある。
【0103】
また、第2シート58の襞58Fの向き(セルの長手方向)は特に限定されず、図19に示されるように、物品前後方向に沿って延在していても、また図6、図17、図18に示されるように、物品幅方向に沿って延在していても良い。いずれの場合にも、襞58Fの一つ一つが排泄物の移動を遮る堰となるため、襞58Fの延在方向における拡散性が向上するとともに、襞58Fの延在方向と交差する方向における漏れが発生し難くなる。ただし、第2シート58の襞58Fが幅方向に沿って延在していると、前後方向に延在する場合と比較して各セル56Cの大きさが小さくなるため、セル56C内で吸収材59が移動してもその偏在の程度は比較的に小さくて済むという利点がある。セル56Cの倒伏方向も適宜定めることができ、図示形態のように第2シート58が表面側となり、かつ第2シート58の襞58Fが幅方向に沿って延在している場合には、前側に向かって倒伏させることもできるが、後側に向かって倒伏させると、排泄物の拡散が前側よりも後側に促進されるため、特にうつ伏せ寝や男児の使用時に発生しやすい腹側端部からの尿漏れが防止されるため好ましい。
【0104】
第1シート57及び第2シート58のうち少なくとも表側のシート(図示例では第2シート58)は透液性を有していれば良いが、両者が透液性を有しているのが好ましい。透液性素材としては、不織布、小孔が開いたシート、ティッシュペーパー、特にクレープ紙等を用いることができ、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。不織布を使用する場合、親水性のもの(親水剤が付与されたもの含む)が好ましい。また、不織布の中でも、スパンボンド不織布層間にメルトブローン不織布層を有する積層不織布(例えばSMS不織布、SMMS不織布等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。不透液性素材としては、前述の不透液性バックシート11と同様の素材を用いることができる。
【0105】
吸収材59は、高吸収性ポリマー粒子を含む粉粒状物であり、必要に応じて高吸収性ポリマー粒子以外の吸収材、例えばパルプ繊維等の親水性短繊維を混合することもできるが、薄さ及び吸収量を重視する場合には高吸収性ポリマー粒子を80%以上とするのが好ましく、高吸収性ポリマー粒子のみとするのがより好ましい。
【0106】
高吸収性ポリマー(SAP)粒子は特に限定されるものではないが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。
【0107】
高吸収性ポリマー粒子の粒径は1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。また、高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適である。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。さらに、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適である。これにより、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0108】
各部の寸法は適宜定めることができるが、襞58Fの並設方向における隣接する接合部56b間の離間距離B1は、襞58Fの並設方向における接合部56bの幅A1よりも大きいと、同じ最大容積のセル56Cを形成するにしてもセル56Cを比較的浅く形成することができるため、吸収体56表面の襞58Fが大きくなり過ぎず、吸収時のセル容積の拡大がより円滑となるため好ましい。通常の場合、接合部56b間の離間距離B1は5〜20mm程度であるのが好ましく、接合部56bの幅A1は3〜15mm程度であるのが好ましい。また、襞58Fの並設間隔(A1+B1)は、8〜30mm程度であることが好ましく、10〜20mm程度であることがより好ましい。
【0109】
また、各セル56Cを構成する第2シート58部分は、襞58Fの並設方向の長さが接合部56b間の離間距離B1の2〜5倍程度であるのが好ましく、2.5〜4倍程度であるのがより好ましい。なお、各セル56Cを構成する第1シート57部分は、襞58Fの並設方向の長さが接合部56b間の離間距離B1の1倍である。
【0110】
また、各セル56Cの物品幅方向寸法は、吸収体56の幅の70〜100%程度であるのが好ましい。特に、図18に示されるように、股間部においてセル56Cが吸収体56の両側部まで達していると、吸収時に股間部の両側部が膨張してフィット性が低下するとともに、立体ギャザー60の効果が阻害されるおそれがある。よって、図6、図17及び図19に示されるように、股間部の両側部にセル56Cを有しない領域56Nを形成するのが好ましい。このセル56Cを有しない領域56Nは、第2シートの襞58Fを潰してその内面相互をホットメルト接着剤や溶着等56gにより接合することにより形成できる。
【0111】
例えば、図6及び図17に示されるように、セル56Cの長手方向が物品の幅方向に沿う場合、股間部に位置するセル56Cの長さを股間部の前後方向中間に向かうにつれて徐々に短くするのが好ましい。このような構造は、第2シートの襞58Fの両端部56eを、股間部の前後方向中間に向かうほど長い範囲にわたり潰して内面相互を接合することにより形成できる。一方、図19に示されるように、セル56Cの長手方向が物品の前後方向に沿う場合、両側部に位置するセル56Cを股間部において不連続にするとともに、その不連続部56Nの長さを幅方向外側に向かうほど長くするのが好ましい。このような構造は、第2シートの襞58Fの中間部56mを、幅方向外側ほど長い範囲にわたり潰して内面相互を接合することにより形成できる。
【0112】
セル56Cの配置は適宜定めることができる。図20〜図25に、セル間隔(離間・重なりの程度)、及び吸収材・セル最大容積比(各セルの最大容積に対する、その内部に封入される吸収材の吸収飽和時の見かけ容積)の違いによる、吸収時の変化の違いを模式的に示した。各図のうち最上段の図は製造段階を示し、上から2番目の段の図は吸収前の状態(ただし、理解を容易にするために襞58Fが若干立っている状態)を示し、上から3番目の段の図は吸収材59が膨潤した状態(ただし、吸収飽和前の中途状態)を示し、最下段の図は吸収材59が吸収飽和した状態を示している。
【0113】
図20〜図25における(b−1)〜(b−3)、(c−1)〜(c−3)及び(d−1)〜(d−3)に示されるように、少なくとも一部のセル56Cは倒伏状態で、隣接セル56Cと一部重なるように形成されているのが好ましい。図20〜図25における(a−1)〜(a−3)に示されるように、セル56C同士が離れすぎると、隣接セル56C間に吸収材59を有しない部分ができるため、吸収量の確保が困難となる、吸収速度が遅くなるといった吸収性能の低下が発生するおそれがあるが、セル56C同士が一部重なっているとこのような吸収性能の低下は防止できる。また、セル56C同士が離れすぎると、セル56Cの無い部分とセル56C部分との間に比較的に大きな段差ができ、装着感や手触り感に悪影響するおそれもある。
【0114】
ただし、図20〜図25における(d−1)〜(d−3)に示されるように、倒伏状態で隣接するセル56Cの第2シート58の二重部分同士が重なると、その部分が過度に厚くなるだけでなく、第2シート58と第1シート57との隙間が広くなり、吸収材59が移動し易くなるため好ましくない。また、セル56Cが密集することになるため、吸収時には隣接セル56Cとの干渉によりセル56Cの円滑な拡大が阻害されるおそれがあるとともに、厚み方向に膨張が偏り、吸収後の厚みが不必要に増加するため好ましくない。よって、この観点からは、図20〜図25における(b−1)〜(b−3)及び(c−1)〜(c−3)に示されるように、倒伏状態で、少なくとも一部のセル56Cにおいて形成される第2シート58の二重部分及び第2シート58の一重部分のうち、二重部分58が、隣接セル56Cにおいて形成される第2シート58の二重部分と重ならないように形成されているのが好ましい。
なお、セル56Cの間隔は、襞58Fの並設方向において部分的に狭く又は広くなっていても良いが、製造容易性の観点からは一定であるのが好ましい。
【0115】
他方、吸収材・セル最大容積比は、セル56Cの寸法、吸収材59の種類(特に飽和吸収時の膨張倍率の違い)、吸収材59の使用量等を変えることにより、目的の吸収性能に応じて適宜定めることができる。吸収材・セル最大容積比が70〜120%であると、図20〜図25における(a−1)〜(a−2)、(b−1)〜(b−2)、(c−1)〜(c−2)及び(d−1)〜(d−2)に示されるように、多くの場合において、吸収材59の膨潤阻害を抑制しつつも、吸収量を従来の一般的な吸収体と比べて顕著に向上させることができるため好ましい。
【0116】
ここで、吸収量に十分な余裕を持たせるためには、吸収材・セル最大容積比は100%以上であるのが好ましい。ただしその場合、セル56C内の吸収材59が吸収飽和に達したときには膨潤阻害が発生してしまう。そのような状態まで吸収することはむろん好ましいことではないが、むしろそのような状態になったときに、隣接するセル56C相互が接触して吸収阻害が発生する(排泄物がセル56Cの裏側に回り込み難くなる又は隣接セル56Cの膨張が阻害される等)方が問題である。よって、また、特に吸収材・セル最大容積比が100%以上であるときには、図20〜図25における(a−1)〜(a−3)及び(b−1)〜(b−3)に示されるように、各セル56Cが容積最大の状態にあるとき、隣接するセル56Cが互いに接しないように配置されているのが好ましい。
【0117】
特にこの場合、図20〜図25における(b−1)〜(b−3)に示されるように、各セル56Cが容積最大の状態にあるとき、襞58Fの並設方向における各セル56Cの幅B4(図20(a)参照)が、襞58Fの並設方向における隣接セル56C相互の離間距離A4(図20(a)参照)よりも大きくなるような寸法比率で形成されていると、同じ最大容積のセル56Cを形成するにしても、吸収後のセル56C同士の間隔が空き過ぎず、吸収後における吸収体56の凹凸の感触が少ないため好ましい。
【0118】
一方、吸収材・セル最大容積比が100%未満、つまり吸収材59が吸収飽和の状態でもセル56Cが最大容積まで膨らまない形態は、吸収材59の膨潤阻害が原理的には発生しない点で一つの好ましい形態である。図24及び図25における(a−3)〜(d−3)は、吸収材・セル最大容積比が70%程度の場合を想定したものであるが、この図からも判るように、吸収材・セル最大容積比が100%未満の場合には、倒伏状態で隣接セル56C同士が一部重なるように形成されており、且つ襞58Fの並設方向における隣接セル56Cの重なり幅A2’は、襞58Fの並設方向における接合部の幅A1よりも大きいと、隣接セル56Cの重なり幅が十分に広くなり、ある程度の吸収量まではセル56Cは隣接するセル56Cと重なる状態を維持することができるため、より多くのセル56Cに対して排泄物を供給することができ、吸収体56の使用効率が良く、単位面積当たりの吸収量が少なくならない。
【0119】
特に、吸収性物品のうち装着者の排泄物の排泄部位及びその近傍では、吸収材59は飽和状態まで吸収することが多いため、少なくともこの部位のセル56Cにおいては、吸収材59が吸収飽和したときにセル56C内の最大容積を超えないようにすること、具体的には、吸収材・セル最大容積比を80〜100%程度にすることも一つの好ましい形態である。
【0120】
吸収材59の使用量は、吸収材59の吸収飽和時の見かけ容積とセル56Cの最大容積との関係に基づいて適宜定めるのが好ましいが、吸収量の観点からは、吸収体56の単位面積あたりの含有量で100g/m2以上、特に150g/m2以上は確保するのが好ましい。
【0121】
必要であれば、吸収材59は、各セル56C毎に封入量を調整できる。たとえば、排泄部位の封入量を他の部位より多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の封入量を高め、女用は中央部の封入量を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)に吸収材59が存在しないセル56Cを設けることもできる。
【0122】
他方、吸収体56における第2シート58の各襞58Fは、その全体が自由に起立・倒伏できるように非固定となっていても良いが、製造過程又は流通過程において襞58Fが乱れてしまうと、商品価値の低下はもちろんのこと、円滑なセル56Cの膨張が困難となり、吸収性能にも悪影響を及ぼしかねない。特に問題なのは、セル56C内における吸収材59の偏在の影響を受け易いことである。吸収材59が非固定で移動可能である場合、製品流通過程又は使用時におけるセル56Cの向きによって、重力によりセル56C内の鉛直方向下方寄りに移動する。例えば、図示形態のようにセル56Cが物品幅方向に沿って延在し且つ後側に倒伏している場合には、おむつの保管時の向きや、装着者の動きによって、セル56Cの幅方向一方側の端部に吸収材59が偏ることがある。このような事態が発生すると、吸収材59の少ない部分で吸収性能が局所的に低下したり、吸収材59の多い部分で吸収体の厚みが局所的に増加したりすることにより、漏れが発生したり装着感が悪化したりするおそれがあった。特に、図示形態のように、セル56Cが物品幅方向に沿って延在している場合に、セルの端部に吸収材59が偏ると、この部分における吸収時の厚みが増加することにより、立体ギャザー60があってもその高さが相対的に低くなり、立体ギャザーを乗り越えて漏れが発生し易くなる。
【0123】
そこで、図示形態では、吸収体56における第2シート58の各襞58Fは両端部56eが倒伏状態で固定されるとともに、これら固定部56e間の中間部が起立可能なように非固定(又は剥離可能に固定されていても良い)とされている。
【0124】
この襞58Fの固定は、図17に示されるように、単に第2シートの各襞58Fの両端部56eにおいて倒伏状態で当接する襞58Fの外面同士をホットメルト接着剤や溶着に等56hより接合するだけでも良いが、限られた吸収体設置面積をこのような吸収に殆ど寄与しない固定部で消費するのは好ましくない。よって、次のような構造も提案される。
【0125】
第1の固定構造は、図3及び図16(b)に示されるように、吸収体56における幅方向両側部56eが裏側に折り返されて、吸収体56の裏面に対してホットメルト接着剤や溶着等の接合手段56iにより固定されることにより、第2シート58の各襞58Fの両端部56eが倒伏状態で固定されているものである。このような固定構造を採用することにより、各セル56Cはその両端縁まで、つまり吸収体56の幅一杯にわたり膨張、起立できるようになる。図16(d)に示されるように、吸収体56の裏面に対する接合手段56iを省略し、裏面側隣接部材、すなわち図示形態においては液不透過性シート11に、吸収体56の折返し部分56eをホットメルト接着剤や溶着等の接合手段により固定しても同様である。折り返し部分56eの幅は、10〜25mm程度が適当であり、接合手段56iの幅は0〜15mm程度が適当である。この第1の構造は、吸収体56の周囲に食み出すフラップ部が無いか又は少ないパンツタイプ使い捨ておむつや、パッドタイプ使い捨ておむつ等に好適なものである。
【0126】
反対に、図16(a)に示されるように、吸収体56における幅方向両側部が表側に折り返されて、吸収体56の表面に対してホットメルト接着剤や溶着等の接合手段56iを介して固定されることにより、第2シートの各襞58Fの両端部56eが倒伏状態で固定されている構造も採用することができる。この第2の構造においては、各セル56Cは表面側に折り返されて固定された折り返し部分56eの範囲では膨張が抑制され、殆ど膨張できないものの、それ以外の範囲、つまり吸収体56の幅のほぼ一杯にわたる範囲では膨張、起立できるようになる。さらに、吸収体56の表面に対する接合手段56iを折り返し部分56eの縁まで形成せず、折り返し部分56eの縁部を吸収体56の表面から離間させると、吸収体56の幅方向両側部に折り返し部分56eによる堰が形成され、横漏れ防止機能が発揮されるようになる利点がある。そして、図16(e)及び図27に示されるように、吸収体56の表面に対する接合手段56iを完全に省略すると、折り返し部分56eがシートの曲げ反発力により吸収体56の表面に対して浮きやすくなり、折り返し部分56eによる堰がより高く、より深く形成されるようになり、また、各セル56Cは吸収体56の幅一杯にわたり膨張、起立できるようになる。折り返し部分56eを横漏れ防止の堰として利用する場合は、吸収体56の表面から離間する折り返し部分56eを、表面側隣接部材、すなわち図示形態においてはトップシート30に、吸収体56の折返し部分56eをホットメルト接着剤や溶着等の接合手段により固定するのが好ましい。折り返し部分56eの幅は、10〜25mm程度が適当であり、接合手段56iの幅は0〜15mm程度が適当である。この第2の構造も、吸収体56の周囲に食み出すフラップ部が無いか又は少ないパンツタイプ使い捨ておむつや、パッドタイプ使い捨ておむつ等に好適なものである。
【0127】
また、図12に示されるように、吸収体56の第2シート58側に、第2シート58の各襞58Fの幅方向両側部の前後方向全体にわたり重なる部材、例えば図示形態におけるトップシート30やギャザーシート62等の第2シート側部材がある場合は、吸収体56における幅方向両側部を前後方向全体にわたりその第2シート側部材に対してホットメルト接着剤や溶着等の接合手段56jを介して固定することにより、第2シートの各襞58Fの両端部56eを倒伏状態で固定することも可能である。この第3の構造では、図16(c)及び図28にも示されるように、吸収体56両側部の折り返し部分56eを有さないため、吸収体の全幅にわたって一様な薄さを得ることができる。さらに、吸収体56の両側部を折り返さなくても、襞58Fの両端部を固定することができるため、製造工程が簡易なものとなる。
【0128】
特に、図12に示されるように、吸収体56の第1シート57側に、吸収体56の幅方向両側部の前後方向全体にわたり重なる第1シート側部材(図示形態におけるバックシート11や外装シート12等)があり、第1及び第2シート側部材が吸収体56の周縁から食み出している場合は、これら第1及び第2シート側部材間で吸収体56の両側部を挟持して、ホットメルト接着剤や溶着等の接合手段56kを介して固定することにより、第2シートの各襞58Fの両端部56eを倒伏状態で固定するのも好ましい。この第3の構造は、吸収体56の周囲に食み出すフラップ部を有するテープタイプ使い捨ておむつや、パッドタイプ使い捨ておむつ等に好適なものである。
【0129】
かくして構成された吸収体56においては、図3の上段に示される吸収後の要部、図12及び図16に二点鎖線で示される膨張線からも判るように、セル56Cはその両端縁では膨張できないが、両端縁から中央側に向かにつれて厚み方向の膨張可能量が増加するような膨張形状を有する。よって、セル56Cの端部に吸収材59が偏在したとしても、吸収材59は吸収膨張の際、厚み方向の膨張可能量がより多く、より膨張し易いセル56Cの中央側に向かって移動しながら緩やかに膨張していくことになる。その結果、セル56C内に、局所的に吸収材59が少ない又は多い部分が発生し難くなり、漏れや装着感の悪化は発生し難くなる。特に、図示形態のように、セル56Cが物品幅方向に沿って延在している場合であっても、セル56Cの両端部の厚みが殆ど増加しないため、立体ギャザー60との間に深いポケットが形成され、立体ギャザー60の漏れ防止機能が十全に発揮されるようになる。
【0130】
ただし、このような効果があるとはいえ、吸収材59が非固定でセル56C内を自由に移動できる限り、セル56C内での吸収材59の偏在自体は防止できない。これを防止するために、吸収材59の一部又は全部をホットメルト接着剤等により第2シート58又は第1シート57に固定することもできるが、固定した吸収材59自体が膨潤し難くなるだけでなく、固定した吸収材59が他の吸収材59の移動を阻害し、他の吸収材59の膨張を阻害するとともに、吸収材59の移動による吸収材59の偏在軽減をも阻害する。よって、図示形態では、第1シート57におけるセル内面に露出する部分に、粘着層56tが設けられている。このような粘着層56tを設けることにより、吸収材59が粘着層56tの粘着力(摩擦力含む)により移動し難くなるとともに、その移動し難くなった吸収材59により他の吸収材59の移動が遮られるようになる。吸収材59のうち粘着層56tにより保持される割合は30〜80重量%程度であるのが望ましい。
【0131】
粘着層56tの粘着性(タック性)がある程度以上に強いと、吸収材59が強固に粘着保持されて膨潤阻害が発生したり、第2シート58の襞58Fが第1シート57の粘着層56tに接着され、セル56Cの膨張が阻害されたりするおそれがある。また、粘着層56tの粘着性が弱過ぎると、吸収材59の移動防止効果が乏しくなる。よって、粘着層56tは、ループタック粘着力が5〜40N/25mm、特に15〜30であるのが好ましい。このような粘着剤層56tは、スチレン−イソプレン共重合体及びスチレン−ブタジエン共重合体等のゴム系ホットメルト粘着剤やアクリル系粘着剤等を塗布することにより形成することができる。
【0132】
粘着層56tは部分的に設けられていたり、散点状、千鳥状等のようなパターン状に設けられていても良いが、吸収材59の移動防止及び製造容易性の観点からは、第1シート57におけるセル56C内面に露出する部分の全体にわたり設けられているのが好ましい。これに対して、第2シート58におけるセル56C内面に露出する部分に粘着層56tが設けられていると、襞58Fの内面同士が粘着することによりセル56Cが膨張し難くなるおそれがある。よって、この部分には全体にわたり粘着層56tが設けられていないのが好ましい。また、吸収材59が多いと、全ての吸収材59が粘着層56tに保持されることはないため、吸収材59の偏在は生じ得る。このような場合、セル56Cの一方の側に偏在した吸収材59は、膨張可能な空間を有する他方の側に向かって移動しながら緩やかに膨張していくことになる。ここで、セル56C内部の上面にあたる第2シート58と吸収材59との摩擦が強くならないようにしておくと、吸収膨張中の吸収材59の移動が妨げられにくい。従って、第2シート58におけるセル56C内面に露出する部分には、粘着層56tを設けないのが好ましい。
【0133】
粘着層56tは単独で形成することもできるが、接合部及び粘着層56tを同一の接着剤により一体的に形成すると、接合部と第1シート57の粘着層56tとを一度に形成でき、製造が容易となるため好ましい。つまり、製造に際して第1シート57の略全面に粘着層56tを形成し、襞58F内に吸収材59を入れた第2シート58に貼り合わせることにより製造することができる。
【0134】
なお、装着状態では、股間より前側に位置するセル56C内では先端部に吸収材59が偏り、股間より後側に位置するセル56C内では先端部に吸収材59が偏ることになるが、この吸収材59の偏在が吸収機能に与える影響は少ない。
【0135】
さらに、吸収材59の偏在の影響を軽減するために、第2シート58におけるセル56C内面に露出する部分において、平均表面摩擦係数MIUを0.2以下、特に0.05〜0.15とし、表面摩擦係数の変動偏差MMDを0.01以下、特に0.003〜0.008とし、また表面粗さSMDを10マイクロメートル以下、特に3〜7マイクロメートルとするのが好ましい。なお、これらはいずれもセルの延在方向に関する数値とする。このように、第2シート58におけるセル56C内面に露出する部分と吸収材59との摩擦がある程度弱いと、吸収材59はセル56C内で偏在していても、吸収膨張の際、第2シート58に接触した後に第2シート58の内面に沿って移動し、吸収材59が広がり易くなり、偏在が低減されるようになる。
【0136】
また、高吸収性ポリマー粒子の粒径が1000μm以下の粒子であると、セル56C内部に封入された高吸収性ポリマー粒子が第2シート58側から抜け出るおそれがある。よって、第2シート58は、SMS不織布、SMMS不織布等のように、スパンボンド不織布層とスパンボンド不織布層との間にメルトブロー不織布層を有する不織布であるのが好ましく、その繊維目付けが5〜20g/m2、特に8〜15g/m2、且つ荷重0.5g/cm2時の厚みが0.05〜0.25mm、特に0.10〜0.20mmであるのが好ましい。このような不織布を用いることにより、内部に封入された高吸収性ポリマー粒子が第2シート58側から抜け出にくくなる。第1シート57も同様の不織布を用いると好ましいが、第1シート57側は粘着層56tにより高吸収性ポリマー粒子が抜け出にくくなるため、他の素材を用いても良い。厚みは、KES−G5 ハンディー圧縮試験機を用いて測定(加圧板は2cm2の円形、圧縮変形速度は0.1mm/sec)した、荷重0.5g/cm2時の数値である。
【0137】
他方、トップシート30の皺寄りを防止するためにはトップシート30を吸収体56に対して固定するのが好ましいが、第2シート58の襞58Fがトップシート30側に位置する場合において従来の一般的な固定形態を採用すると、吸収時に吸収材59の膨潤によりセル56Cが膨らみつつ起立する際、セル56Cの膨張、起立が阻害されるおそれがある。そこで、図5、図14、図15及び図26に示されるように、吸収体56の第2シート58における少なくとも固定部56b間の部分を、前後方向にセル56Cの配置間隔に対応する間隔をもってトップシート30に対して間欠的に接合することも提案する。この場合、トップシート30に対する接合部56dは、図26(a)に示されるように、第2シートの襞58Fの先端であるのが好ましいが、図26(b)に示されるように、多少ずれていても、セル56Cの配置間隔とトップシート・吸収体の接合部56dの間隔とが対応していれば、トップシート30の皺寄りを防止できるものでありながら、セル56Cが円滑に膨張、起立できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、パンツタイプ、テープタイプ、パッドタイプの使い捨ておむつ、生理用ナプキン等、吸収性物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0139】
11…不透液性バックシート、12…外装シート、12r…折り返し部分、25…印刷シート、200…内装体、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、56C…セル、56b,56d…接合部、56t…粘着層、57…第1シート、58…第2シート、58F…襞、59…吸収材、60…側部立体ギャザー、62…ギャザーシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性トップシートと、不透液性バックシートと、これらの間に介在された吸収体とを備えた吸収性物品において、
前記吸収体は、そのトップシート側及びバックシート側のいずれか一方に配された第1シートと、他方に配された、前後方向又は幅方向に延在する襞が多数並設された第2シートと、これら第1シート及び第2シート間に配された吸収材とを有し、且つ第1シート及び第2シートのうち少なくともトップシート側のシートは透液性を有しており、
前記第1シートと、前記第2シートの各襞における第1シート側底部とが接合されて接合部が形成され、これら接合部間では前記第1シートと前記第2シートとが接合されずにトンネル状のセルが形成され、且つ各セル内に前記吸収材が封入されており、
隣接する前記接合部は所定の間隔で離間しており、
前記第2シートの全襞は、その並設方向のいずれか一方向に各襞全体が倒れるように倒伏した一方向倒伏状態とされ、かつ前記第2シートの各襞の延在方向の両端部が当該一方向倒伏状態で固定されるとともに、これら固定部間の中間部が当該一方向倒伏状態から起立可能なように構成されており、
前記吸収材は少なくとも高吸収性ポリマー粒子を含む粉粒状物であり、
前記各セル内の最大容積に対し、その内部に封入される吸収材の非吸収時の見かけ容積は小さく、且つ各セル内の吸収材の少なくとも一部はそのセル内を移動可能であり、
前記第1シートにおける前記セル内面に露出する部分に、粘着層が設けられており、前記第2シートにおける前記セル内面に露出する部分は、その全体にわたり粘着層が設けられていない、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記第1シートの粘着層は、ループタック粘着力が5〜40N/25mmである、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記粘着層が、前記第1シートにおける前記セル内面に露出する部分の全体にわたり設けられている、請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、前記第1シートが前記バックシート側となるように備え付けられている、請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記接合部及び前記粘着層が同一の接着剤により一体的に形成されている、請求項4記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第2シートにおける前記セル内面に露出する部分は、平均表面摩擦係数MIUが0.2以下、表面摩擦係数の変動偏差MMDが0.01以下、且つ表面粗さSMDが10マイクロメートル以下である、請求項5記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記襞の並設方向における隣接する前記接合部間の離間距離は、前記襞の並設方向における前記接合部の幅 よりも大きくなるように構成され、かつ各セルを構成する第2シートの部分は、前記襞の並設方向の長さが接合部間の離間距離の2〜5倍となるように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収体は、前記第2シートの襞が幅方向に沿って延在するように備え付けられている、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記襞の並設方向における隣接する前記接合部間の離間距離は、前記襞の並設方向における前記接合部の幅 よりも大きくなるように構成されており、
前記倒伏状態で、少なくとも一部の前記セルが隣接セルと一部重なり、且つ少なくとも一部の前記セルにおいて形成される前記第2シートの二重部分及び前記第2シートの一重部分のうち、二重部分が、隣接セルにおいて形成される前記第2シートの二重部分と重ならないように形成されており、
前記各セル内の最大容積に対し、その内部に封入される吸収材の吸収飽和時の見かけ容積が70〜120%である、請求項8記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−224386(P2011−224386A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141948(P2011−141948)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2009−131114(P2009−131114)の分割
【原出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】