説明

吸収性物品

【課題】身体の動きに追従しやすく、フィット性に優れ、漏れにくい吸収性物品を提供する。
【解決手段】裏面シート11と透液性の下層表面シート12との間に下層吸収体13が介在された下層部10と、前記下層部10の長手方向中心線に沿って延びるとともに肌当接面側に隆起し、上層吸収体22が透液性の上層表面シート21によって囲繞された上層部20とからなる生理用ナプキン1である。前記下層表面シート12には、生理用ナプキン1の長手方向中心線に沿って左右に分断された分断線16が備えられ、前記上層部20は、長手方向両端部において前記下層表面シート12の表面側に接合されるとともに、生理用ナプキン1の長手方向中心線に沿って上層部20と下層部10とを連結する連結シート23が備えられ、前記連結シート23の下層部側端縁が前記分断線16から前記下層表面シート12と下層吸収体13との間に延在して配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の動きに追従しやすく、フィット性に優れ、漏れにくい吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシート又はポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布又は透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、身体の表面へのフィット性を高め、体液漏れを防止するため、下層吸収体の上層に中高吸収体を積層したものが存在する。ところが、このような下層吸収体に中高吸収体を積層した吸収性物品では、寝返りや運動時などにおいて、ショーツに接着されている下層吸収体がずれると、上層の中高吸収体も連動してずれるため、身体の表面へのフィット性が低下して、体液が漏れることがあった。
【0004】
このため、身体の動きに追従しやすくした吸収性物品として、例えば、下記特許文献1では、上層部と下層部とからなり、実質的に縦長に構成されている2層構造の吸収性物品であって、上層部が、その長手方向の両端部において下層部に連結され、非応力下において下層部から上方に離隔して位置する吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、表面材と裏面材との間に吸収体が介在された本体部の表面材側に、長手方向の中心軸に沿って延びる立体部を備え、前記立体部の下方に位置する領域には、立体部の隆起方向に沿って隆起可能な可撓部が形成されている吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−104168号公報
【特許文献2】特開2007−89818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収性物品では、非応力下において下層部が吸収性物品の長手方向に湾曲したとき、上層部は下層部より上方に浮いており、これにより上層部と下層部との間に空間が存在して上層部が下層部より上方に離隔して位置するため、上層部に吸収された体液は長手方向両端部の下層部との連結部分から下層部に吸収されることになっている。従って、上層部の体液吸収容量が限界に近づくと連結部分からの体液移行では間に合わなくなり、上層部に体液が吸収しきれなくなって、上層部に吸収しきれなかった体液又は上層部から滲み出た体液が身体の表面を伝って下層部より外側に漏れるおそれがある。
【0008】
また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、身体側に隆起する立体部には吸収体が介在しないため体液保持という効果は期待できないとともに、本体部の表面材の上面に接合されているため、立体部を伝って本体部側に移行する体液は表面材を通過した後吸収体に吸収されるようになる。このため、吸収体に吸収されるまでの間の体液漏れが懸念されていた。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、身体の動きに追従しやすく、フィット性に優れ、漏れにくい吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、裏面シートと透液性の下層表面シートとの間に下層吸収体が介在された下層部と、前記下層部の長手方向中心線に沿って延びるとともに肌当接面側に隆起し、上層吸収体が透液性の上層表面シートによって囲繞された上層部とからなる吸収性物品であって、
前記下層表面シートには、前記吸収性物品の長手方向中心線に沿って左右に分断された分断線が備えられ、
前記上層部は、長手方向両端部において前記下層表面シートの表面側に接合されるとともに、前記吸収性物品の長手方向中心線に沿って前記上層部と下層部とを連結する連結シートが備えられ、前記連結シートの下層部側部分が前記分断線から前記下層表面シートと下層吸収体との間に延在して配設されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、裏面シートと透液性の下層表面シートとの間に下層吸収体が介在された下層部と、前記下層部の長手方向中心線に沿って延びるとともに肌当接面側に隆起し、上層吸収体が透液性の上層表面シートによって囲繞された上層部と、前記吸収性物品の長手方向中心線に沿って前記下層部と上層部とを連結する連結シートとから主に構成されている。そして、前記上層部は長手方向両端部において前記下層表面シートの表面側に接合されているため、使用時に肌当接面側に隆起する前記上層部を臀部の谷間や排血口部などにくい込ませて身体の表面に密着させることによりフィット性に優れ、体液の漏れが防止できる。また、前記吸収性物品の長手方向中心線に沿って前記上層部と下層部とを連結する連結シートが備えられているため、寝返りや運動時などにおいて、ショーツに接着されている下層部が多少ずれても、連結シート部分で下層部のずれが吸収され、上層部は身体の動きに追従して臀部の谷間などにフィットし続けることができ、身体の表面へのフィット性が低下して体液が漏れるなどの問題が生じなくなる。
【0012】
一方、体液の吸収メカニズムの点から上記請求項1記載の発明の作用について説明すると、初期の少量の体液であれば、上層吸収体に吸収された体液は、前記上層部の長手方向に拡散した後、長手方向両端部の下層表面シートとの接合部分から下層吸収体に吸収保持される。さらに続けて多量の体液が排泄された場合など上層吸収体の吸収容量が限界に近づいた場合には、前記長手方向両端部の接合部分からの体液移行に加え、前記連結シートを伝って下層部の下層吸収体に体液移行が行われるようになる。従って、上層吸収体に吸収された体液は下層吸収体に速やかに移行するため、上層吸収体からの体液の漏れや浸み出しが生じ難くなる。
【0013】
さらに、前記連結シートの下層部側部分が下層表面シートに形成された分断線から下層表面シートと下層吸収体との間に延在して配設されているため、連結シートを伝う体液が直接下層吸収体に吸収されるようになり、下層表面シートの表面に拡散する体液の漏れなどの心配がなくなる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記上層部は、前記上層表面シートが前記上層吸収体の上側から該上層吸収体を幅方向に包囲するとともに、前記上層吸収体の下側で対向する面同士を貼り合わせて前記連結シートを形成し、これより下層部側部分を前記分断線から前記下層表面シートの下側に入り込ませ、左右それぞれに分岐させ前記下層表面シートと下層吸収体との間に延在して配設してある請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明は、前記上層部及び連結シートの代表的な構造について規定したものであり、上層部を構成する上層表面シートから連続して連結シートを形成するようにしたものである。これにより、上層部から連続する連結シートを介して下層吸収体に伝う体液の移行がさせやすくなる。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記上層部は、少なくとも前記吸収性物品の長手方向に対し伸縮性が付与され、且つ前記吸収性物品の長手方向に伸長させた状態で、長手方向両端部が前記下層表面シートの表面側に接合されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明では、前記上層部として、少なくとも前記吸収性物品の長手方向に対し伸縮性を付与したものを用い、この上層部を前記吸収性物品の長手方向に伸長させた状態で、長手方向両端部を前記下層表面シートの表面側に接合することにより、吸収性物品の使用時に上層部が下層部から離隔して隆起するとともに、連結シートが上層部と下層部との間に起立するように配設されるため、上層部の身体の表面への密着性が向上するとともに、上層部から下層部への体液の移行がしやすくなる。なお、伸縮性は少なくとも上層表面シートに付与するようにし、この上層表面シートの伸縮性が損なわれないように上層吸収体にも付与することが好ましい。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記上層吸収体には、前記吸収性物品の長手方向に配向された長繊維が混入されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項4記載の発明では、上層吸収体に前記吸収性物品の長手方向に配向された長繊維を混入することにより、吸収性物品の長手方向の体液拡散性が向上する結果、上層部の長手方向両端部の接合部分を通じた体液の移行が速やかに行われるようになる。
【0020】
請求項5に係る本発明として、前記上層部の長手方向両端部に形成される前記下層部との接合部分には、前記上層部の表面側からフィットエンボスが付与されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項5記載の発明では、前記接合部に前記上層部の表面側からフィットエンボスを付与することにより、前記接合部分を通じた体液の移行が速やかに行われるようになる。
【0022】
請求項6にかかる本発明として、前記上層吸収体の下面両側部には、前記吸収性物品の長手方向に沿って不透液性シートが配設されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項6記載の発明は、上層吸収体の下面両側部に、前記吸収性物品の長手方向に沿って不透液性シートを配設するようにしたものであり、即ち上層吸収体の下面側に上層吸収体の幅方向中央部に離隔部が形成されるように不透液性シートを配設したものである。これにより、上層吸収体に吸収された体液が幅方向中央部の離隔部に集中するようになり、前記連結シートを伝って下層部に移行しやすくなり、幅方向から漏れるのが防止できる。また、上層部が下層部に押し付けられた際、上層吸収体に吸収された体液が両側部から下層部の外側にしみ出るのが防止できる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、身体の動きに追従しやすく、フィット性に優れ、漏れにくい吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【図2】そのII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】体液の移行メカニズムを示す生理用ナプキン1の展開図である。
【図5】体液の移行メカニズムを示す生理用ナプキン1の横断面図である。
【図6】他の形態を示す生理用ナプキン1の展開図である。
【図7】他の形態を示す生理用ナプキン1の断面図(その1)である。
【図8】他の形態を示す生理用ナプキン1の断面図(その2)である。
【図9】他の形態を示す生理用ナプキン1の断面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。本生理用ナプキン1は、図1〜図3に示されるように、不透液性の裏面シート11と透液性の下層表面シート12との間に下層吸収体13が介在された下層部10と、前記下層部10の長手方向中心線に沿って延びるとともに肌当接面側に隆起し、上層吸収体22が透液性の上層表面シート21によって囲繞された上層部20と、生理用ナプキン1の長手方向中心線に沿って前記下層部10と上層部20とを連結する連結シート23とから主に構成されている。
【0027】
以下、前記下層部10、上層部20及び連結シート23についてさらに詳述すると、前記下層部10は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性の裏面シート11と、経血やおりものなどを速やかに透過させる下層表面シート12と、これら両シート11、12間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる下層吸収体13と、この下層吸収体13の形状保持および拡散性向上のために前記下層吸収体13を囲繞する被包シート14と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイド不織布15、15とから主に構成され、かつ前記下層吸収体13の周囲においては、その上下端縁部では前記裏面シート11と下層表面シート12との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では下層吸収体13よりも側方に延出している裏面シート11とサイド不織布15とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0028】
さらに前記下層部10の構造について詳述すると、前記裏面シート11は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記下層吸収体13が介在する本体部分の裏面シート11の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層11a、11a…(図2参照)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。また、前記ウイング状フラップW、Wの裏面シート11の非使用面側にはそれぞれ、装着時にショーツのクロッチ部分を巻き込むようにして止着される粘着剤層11b、11bが形成されている。前記裏面シート11としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0029】
次いで、前記下層表面シート12は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。前記下層表面シート12に多数の透孔を形成した場合には、経血やおりもの等(以下、まとめて体液という。)が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0030】
前記下層表面シート12は、生理用ナプキン1の長手方向中心線に沿って左右に分断された分断線16を備えている。図1に示される例では、前記分断線16は下層表面シート12を長手方向中心線で左右に分割するように、生理用ナプキン1の前端から後端にかけて形成されている。前記分断線16は、上層部10が配設される範囲にのみ設けるようにしてもよい。
【0031】
前記下層吸収体13としては、体液を吸収・保持し得るものであれば良く、通常はフラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。前記下層吸収体13は形状保持等のために被包シート14によって囲繞するのが望ましい。前記被包シート14としては、クレープ紙、親水性の不織布などを用いることができる。
【0032】
前記下層吸収体13及び/又は後述の上層吸収体22には、合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0033】
一方、前記下層表面シート12の幅寸法は、図示例では、図2の横断面図に示されるように、下層吸収体13の幅よりも若干長めとされ、下層吸収体13を覆うだけに止まり、これより側縁には前記下層表面シート12とは別のサイド不織布15、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。かかるサイド不織布15としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0034】
前記サイド不織布15は、図2に示されるように、幅方向中間部より外側部分を下層吸収体13の内側位置から吸収体側縁を若干越えて裏面シート11の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布15と裏面シート11との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成している。
【0035】
一方、前記上層部20は、前述の通り、前記下層部10の長手方向中心線に沿って延びるとともに肌当接面側に隆起し、上層吸収体22が透液性の上層表面シート21によって囲繞された構造を有している。かかる上層部20は、長手方向両端部において下層表面シート12の表面側に対し接合部分24、24にてホットメルト接着剤やヒートシールなどの接合手段によって接合されている。
【0036】
前記上層表面シート21は、前記下層表面シート12と同様に、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。前記上層表面シート21に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0037】
前記上層吸収体22は、前記下層吸収体13と同様に、体液を吸収・保持し得るものであれば良く、通常はフラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。前記上層吸収体22は、少なくとも生理用ナプキン1の後側の長手方向中心線に沿って設けられるようにすることが好ましい。また、図1に示される例では、前側から後側にかけてほぼ同じ幅寸法の帯状に形成されているが、排血口部に対応する領域の幅寸法を相対的に大きくし、臀部の溝に対応する領域の幅寸法を相対的に小さくした形状とすることもできる。
【0038】
前記上層吸収体22中には生理用ナプキン1の長手方向に配向された長繊維を混入することが好ましい。前記長繊維としては、アセテート繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維など公知の素材を用いることができる。特に、体液の拡散性に優れ、伸縮性が良好なアセテート繊維が好ましい。このような長繊維が混入された吸収体を用いることにより、図4に示されるように生理用ナプキン1の長手方向の拡散性が向上する結果、上層部20の下層表面シート12に接合されている長手方向両端部を通じて上層吸収体22に吸収された体液が下層吸収体13に速やかに移行されるようになる。
【0039】
続いて、前記連結シート23は、生理用ナプキン1の長手方向中心線に沿って前記上層部20と下層部10とを連結するように配設されるものである。前記連結シートの下層部10側の部分は、前記前記分断線16から下層表面シート12の下側に入り込み下層表面シート12と下層吸収体13との間に延在して配設されている。
【0040】
前記連結シート23を構成する素材としては、前記上層表面シート21及び下層表面シート12と同様に、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。
【0041】
前記上層部20及び連結シート23は、代表的には図2及び図5に示されるように、上層部20を構成する上層表面シート21から連続して連結シート23が形成されるようにした構造とすることが望ましい。具体的には、上層表面シート21が上層吸収体22の上側から該上層吸収体22を幅方向に包囲するとともに、前記上層吸収体22の下側で上層表面シート21の対向する面同士を貼り合わせて前記連結シート23を形成し、これより下層部側部分を前記分断線16から下層表面シート12の下側に入り込ませ、左右それぞれに分岐させ下層表面シート12と下層吸収体13との間に延在して配設する構成とすることができる。これにより、上層吸収体22に吸収された体液が上層表面シート21を通じて下層吸収体13に移行しやすくなる。
【0042】
以上の構成からなる本生理用ナプキン1では、使用時に肌当接面側に隆起する前記上層部20を臀部の谷間や排血口部などにくい込ませて身体の表面に密着させることにより、フィット性に優れ、体液の漏れが防止できるようになる。また、生理用ナプキン1の長手方向中心線に沿って前記上層部20と下層部10とを連結する連結シート23が備えられているため、寝返りや運動時などにおいてショーツに接着されている下層部10がショーツの動きに伴って多少ずれても、上層吸収体22が身体の動きに追従してフィットし続けるため身体の表面へのフィット性が低下して体液が漏れるなどの問題が生じなくなる。
【0043】
一方、体液の吸収メカニズムの点から本生理用ナプキン1の作用について図4及び図5に基づいて説明すると、初期の少量の体液であれば、図4に示されるように、上層吸収体22に吸収された体液は、この上層吸収体22を長手方向に沿って生理用ナプキン1の前側及び後側に拡散して、上層部20の長手方向両端部に設けられた接合部分24、24を伝って下層表面シート12の表面側から下層吸収体13へと吸収保持される。さらに続けて多量の体液が排泄された場合など上層吸収体22の吸収容量が限界に近づいた場合には、前述の接合部分24、24からの体液移行に加え、図5に示されるように、連結シート23を伝って下層部10の下層吸収体13に体液移行が行われるようになる。従って、上層吸収体22から下層吸収体13に体液が速やかに移行するため、体液の漏れや浸み出しが生じ難くなる。
【0044】
さらに、連結シート23の下層部10側の部分が下層表面シート12の分断線16から下層表面シート12と下層吸収体13との間に延在して配設されているため、連結シート23を伝う体液が直接下層吸収体13に移行するようになり、下層表面シート12の表面に拡散する体液による漏れの発生などの心配がなくなる。
【0045】
また、前記下層表面シート12と下層吸収体13との間に配設された連結シート23の下層部側部分は、下層部10においてセカンドシートとして作用し、下層表面シート12の表面側に拡散する体液を速やかに下層吸収体13に移行させるようになる。
【0046】
前記上層部20は、少なくとも生理用ナプキン1の長手方向に対し伸縮性が付与され、且つ生理用ナプキン1の長手方向に伸長させた状態で、長手方向両端部を前記下層表面シート12の表面側に接合していることが好ましい。これにより、図3に示されるように、生理用ナプキン1の使用時に上層部20が下層部10の表面側から離隔して隆起するとともに、連結シート23が上層部20と下層部10との間に起立するように配設されるため、上層部20の身体の表面への密着性が向上するとともに、上層部20から下層部10への体液の移行がしやすくなる。なお、上層部20の伸縮性は、少なくとも上層表面シート21に付与するようにし、この上層表面シート21の伸縮性が損なわれないように上層吸収体22にも付与することが好ましい。なお、生理用ナプキン1の幅方向にも伸縮性が付与されるようにしても構わない。
【0047】
前記上層表面シート21に伸縮性を付与するには、前記上層表面シート21としてエアスルー不織布、捲縮繊維を用いた不織布、スチレン系やウレタン系に代表されるエラストマーからなる伸縮性不織布などを用いるのが好適とされる。また、生理用ナプキン1の長手方向に沿って弾性伸縮部材を伸張状態で接合することにより伸縮性を付与するようにしてもよい。
【0048】
また前記上層吸収体22に伸縮性を付与するには、アセテート繊維など伸縮性を有する長繊維束を生理用ナプキン1の長手方向に配向する他、伸縮可能な2枚のシートの間に捲縮させた親水性の長繊維を介在させたもの(特開2006−198396号公報)、伸縮性を有する基盤シートに独立した多数の吸収部を個々に固定したもの(特開2009−136498号公報)、或いは適当な間隔で線状に接合した2枚の伸縮性シート間の非接合部分に吸収材を介在させたもの(特開平6−209966号公報)などを用いることができる。
【0049】
ところで、図6に示されるように、上層部20の長手方向両端部に形成される前記下層部10との接合部分24、24にはそれぞれ、前記上層部20の表面側からフィットエンボス25、25を付与することが好ましい。前記フィットエンボス25、25はそれぞれ、図示例では生理用ナプキン1の中央部に凹の円弧状曲線からなり、その両端部が接合部分24、24の外側にまで延在して形成されている。かかるフィットエンボス25、25を付与することにより、接合部分24、24を通じて下層吸収体13に体液が移行しやすくなる。
【0050】
また、図6に示される例では、前記フィットエンボス25、25の外側であって、前記上層部20の配設範囲より外側の下層吸収体13の端部近傍にそれぞれ、フィットエンボス26、26が形成されている。かかるフィットエンボス26、26は、前後方向の体液の拡散を防止し、前後漏れを防止するために付与するものである。
【0051】
一方で、図7に示されるように、前記上層吸収体22の下面両側部には、生理用ナプキン1の長手方向に沿って不透液性シート27、27を配設することが好ましい。即ち、図7に示される例では、上層吸収体22の下面側に生理用ナプキン1の幅方向中央部であって長手方向に沿って離隔する離隔部が形成されるように不透液性シート27、27を配設するようにしている。これにより、上層吸収体22に吸収された体液は、幅方向中央部に形成された不透液性シート27、27の離隔部に集中するようになり、この幅方向中央部に配設されている連結シート23を伝って下層部10に移行し易くなる。従って、上層吸収体22の両側部から体液が漏れるのが防止できる。また、上層部20が下層部10に押し付けられた際、上層吸収体22に吸収された体液が両側部から下層部10の外側にしみ出るのが防止できる。
【0052】
前記連結シート23は、身体の各部の形状に応じて生理用ナプキン1の長手方向に沿って適宜高さを変化させてもよい。例えば、排血口部に対応する前側領域では相対的に低く形成し、臀部の溝に対応する後側領域では相対的に高く形成することができる。これにより、上層部20の身体の表面へのフィット性が向上する。
【0053】
〔他の形態例〕
上記形態例では、上層部20を構成する上層表面シート21から連続して連結シート23が形成されるようにしたが、図8及び図9に示されるように、上層表面シート21によって上層吸収体22が幅方向に包囲された上層部20に対して、生理用ナプキン1の長手方向中心線に沿って前記上層部20と前記下層部10とを連結する連結シート23が前記上層部20の下側に接合手段によって接合することにより一体化するようにしてもよい。図8に示される例では、前記連結シート23は、2枚のシートの対向する面同士を貼り合わせ、これより上層部側部分を左右それぞれに分岐させ上層部20の上層表面シート21に接合することにより前記上層部20と一体化している。また図9に示される例では、前記連結シート23は、1枚のシートの上部を折曲げ、上層部20の上層表面シート21に接合することにより前記上層部20と一体化している。
【0054】
このように、上層表面シート21と連結シート23とを別体の部材から構成することにより、連結シート23としてより拡散性の高い素材などを用いることができ、上層部20から下層部10への体液の移行がより速やかに行われるようになる。
【符号の説明】
【0055】
1…生理用ナプキン、10…下層部、11…裏面シート、12…下層表面シート、13…下層吸収体、14…被包シート、15…サイド不織布、16…分断線、20…上層部、21…上層表面シート、22…上層吸収体、23…連結シート、24…接合部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面シートと透液性の下層表面シートとの間に下層吸収体が介在された下層部と、前記下層部の長手方向中心線に沿って延びるとともに肌当接面側に隆起し、上層吸収体が透液性の上層表面シートによって囲繞された上層部とからなる吸収性物品であって、
前記下層表面シートには、前記吸収性物品の長手方向中心線に沿って左右に分断された分断線が備えられ、
前記上層部は、長手方向両端部において前記下層表面シートの表面側に接合されるとともに、前記吸収性物品の長手方向中心線に沿って前記上層部と下層部とを連結する連結シートが備えられ、前記連結シートの下層部側部分が前記分断線から前記下層表面シートと下層吸収体との間に延在して配設されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記上層部は、前記上層表面シートが前記上層吸収体の上側から該上層吸収体を幅方向に包囲するとともに、前記上層吸収体の下側で対向する面同士を貼り合わせて前記連結シートを形成し、これより下層部側部分を前記分断線から前記下層表面シートの下側に入り込ませ、左右それぞれに分岐させ前記下層表面シートと下層吸収体との間に延在して配設してある請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記上層部は、少なくとも前記吸収性物品の長手方向に対し伸縮性が付与され、且つ前記吸収性物品の長手方向に伸長させた状態で、長手方向両端部が前記下層表面シートの表面側に接合されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記上層吸収体には、前記吸収性物品の長手方向に配向された長繊維が混入されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記上層部の長手方向両端部に形成される前記下層部との接合部分には、前記上層部の表面側からフィットエンボスが付与されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記上層吸収体の下面両側部には、前記吸収性物品の長手方向に沿って不透液性シートが配設されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−115369(P2012−115369A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266228(P2010−266228)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】