説明

吸収性物品

【課題】尿や軟便等の排泄液の吸収性に優れ、排泄液が着用者の肌に付着し難い吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性物品1は、吸収体4及び該吸収体4の肌対向面側に配された表面シート2を具備し、吸収体4が、吸収性コア40と該吸収性コア40の少なくとも肌対向面40aを被覆するコアラップシート41とを含んで構成されている。表面シート2は、着用者の肌側に向けて突出する凸部25を多数有している。吸収性コア40に、少なくとも該吸収性コア40の非肌対向面40b側に開口部50を有するスリット5が所定方向Xに延びて形成されている。コアラップシート41における、吸収性コア40の肌対向面40aを被覆する部位は、低粘性液の液透過時間が2.5秒以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品として、肌対向面を形成する液透過性の表面シート、非肌対向面を形成する液不透過性の裏面シート及びこれら両シート間に配置された吸収体を具備するものが知られている。また、吸収体として、木材パルプ等の親水性繊維及び/又は吸水性ポリマーを含む吸収性コアと、該吸収性コアを被覆するコアラップシートとを含んで構成されているものが知られている。
【0003】
また、表面シートに関し、表面シートに凹凸構造を付与して、尿や軟便等の排泄液、特に軟便等の比較的高粘性の排泄液の面方向の流動・拡散を抑制する技術が知られている。例えば特許文献1には、着用者の肌側に向けられる上層と吸収体側に配される下層とを有し、該上層と該下層とが部分的に接合されて多数の接合部が形成され、該上層が、該接合部以外の部分において着用者の肌側に向けて突出して、内部が空洞となっている多数の凸部を形成している表面シートが記載されている。また特許文献2には、表面シートの肌対向面の一部に、該肌対向面の他の部位に比して、擬似軟便の流動速度が小さい流動阻害部材(例えば凹凸シート)を付設することが記載されている。
【0004】
また、吸収性コアに関し、特許文献3には、吸収性物品(吸収性パッド)の着用者の身体に対するフィット性を向上させる目的で、吸収性コアの長手方向の前部域に、該吸収性コアの長手方向に延びる一対の可撓軸、具体的には、該吸収性コアを厚み方向に貫通する貫通条孔を形成することが記載されている。特許文献3によれば、着用者の股間に挟まれる吸収性コアの前部域に一対の可撓軸が独占的に位置していることにより、着用時に吸収性コアに横方向からの圧力が加えられても、前部域では、不適切に捩れることなく前記可撓軸に沿って変形して着用者の身体にぴったりとフィットする一方、後部域では、前部域におけるほど変形せずにゆとりを残して吸収性パッドが着用者の身体を覆うことができるとされている。特許文献3に記載の貫通条孔(可撓軸)は、主として、着用時の吸収性コアの変形を制御して、着用者の身体に対するフィット性を向上させるためのものであり、特許文献3には、該貫通条孔による排泄液の制御については記載されていない。
【0005】
また、コアラップシートに関し、特許文献4には、コアラップシート(クレープ紙)の拡散速度を吸収性コア(吸収性本体)のそれよりも大きくすることが記載されている。特許文献4によれば、拡散速度をこのように設定することで、拡散速度勾配が表面シートから吸収性コアにかけて傾斜状の勾配となり、それによって、表面シートに排出された体液は、中間のコアラップシートで大きく阻害されることがなくなり、体液が吸収性コアに速やかに吸収されるようになり、体液の漏れが防止できるとされている。特許文献4には、クレープ紙の拡散速度を0.5cm3/秒以上とすることが記載されており、この拡散速度は、測定対象シート(クレープ紙)を10枚重ねたものを測定用サンプルとし、該測定用サンプルを馬血が収容されたシャーレに落下し、該測定対象シートが馬血を吸収する時間(拡散時間)を測定し、測定用サンプルの体積を該拡散時間で除することで算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−174234号公報
【特許文献2】特開2009−136311号公報
【特許文献3】特開2006−149571号公報
【特許文献4】特開2005−566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
使い捨ておむつにおいては、その着用中に尿や便等の排泄液が着用者の肌に付着することによって、肌が赤くなったりかぶれたりするという問題がある。このような着用者の肌荒れは、先ず、尿等の比較的低粘性の排泄液が肌に付着し、それによって肌が膨潤して傷付き易い状態になったところに、より肌に対する刺激が強い軟便等の便が付着することによって引き起こされる場合が多く、斯かる肌荒れの問題の解決には、尿や軟便の吸収性を高め、いわゆるウエットバック(表面シートを透過した排泄液が吸収体に保持されずに表面シート上に逆戻りする現象)を低減して、これらが肌に付着し難いようにする必要がある。特許文献1〜4には、このような尿と便とによって引き起こされる着用者の肌荒れの問題について特に記載されておらず、吸収性物品において尿や軟便等の排泄液を着用者の肌に付着し難くする技術は未だ確立していない。
【0008】
従って本発明の課題は、尿や軟便等の排泄液の吸収性に優れ、排泄液が着用者の肌に付着し難い吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、吸収体及び該吸収体の肌対向面側に配された表面シートを具備し、該吸収体が、吸収性コアと該吸収性コアの少なくとも肌対向面を被覆するコアラップシートとを含んで構成されている吸収性物品であって、前記表面シートは、着用者の肌側に向けて突出する凸部を多数有しており、前記吸収性コアに、少なくとも該吸収性コアの非肌対向面側に開口部を有するスリットが所定方向に延びて形成されており、前記コアラップシートにおける、前記吸収性コアの肌対向面を被覆する部位は、下記方法で測定される低粘性液の液透過時間が2.5秒以下である吸収性物品を提供することにより、前記課題を解決したものである。
<低粘性液の液透過時間の測定方法>
上下端が開口している内径35mmの2本の円筒を、両円筒の軸を一致させて上下に配し、測定対象シート(コアラップシート)を上下の円筒間に挟み込み、その状態で上側の円筒内に、生理食塩水を40g±1g供給する。生理食塩水の上側の円筒内への供給は、40g±1gの生理食塩水が入った容器から該生理食塩水を一括で一気に上側の円筒内に注入することによって実施する。供給された生理食塩水は、測定対象シートを透過するか又は測定対象シートに吸収されて上側の円筒内からなくなる。生理食塩水の供給開始時から、生理食塩水の水面が測定対象シートの表面と同位置になるまでの時間を測定し、その時間を液透過時間とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、尿や軟便等の排泄液の吸収性に優れ、排泄液が着用者の肌に付着し難い吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態としての使い捨ておむつの一例を示す図であり、各部の弾性部材を伸張させて平面状に拡げた状態を示す肌対向面側(表面シート側)の模式平面図である。
【図2】図2は、図1のI−I線断面(幅方向の断面)を示す模式断面図である。
【図3】図3は、図1に示す使い捨ておむつにおける表面シートの一部を拡大して示す模式斜視図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、それぞれ、本発明に係る表面シートにおける凹部(接合部)の配置パターンを模式的に示す図である。
【図5】図5は、液透過時間の測定方法の説明図である。
【図6】図6は、本発明に係る吸収体の他の実施形態の幅方向の断面を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の吸収性物品について、その好ましい一実施形態である使い捨ておむつに基づき図面を参照しながら説明する。本実施形態のおむつ1は、図1及び図2に示すように、吸収体4及び吸収体4の肌対向面側に配された表面シート2を具備し、吸収体4が、吸収性コア40と吸収性コア40の少なくとも肌対向面40aを被覆するコアラップシート41とを含んで構成されている。
【0013】
更に説明すると、本実施形態のおむつ1は、いわゆる展開型の使い捨ておむつであり、図1及び図2に示すように、肌対向面を形成する液透過性の表面シート2、非肌対向面を形成する液不透過性ないし撥水性(以下、これらを総称して液不透過性という)の裏面シート3、及び両シート2,3間に配置された液保持性の吸収体4を具備し、縦長に形成されている。表面シート2、裏面シート3及び吸収体4は、何れも、一方向Xに長い縦長の形状を有している。表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、吸収体4よりも大きな寸法を有し、吸収体4の周縁から外方に延出している。表面シート2は、図2に示すように、その幅方向Yの寸法が、裏面シート3の幅方向Yの寸法よりも小さくなっている。
【0014】
おむつ1は、図1に示すように、長手方向Xに、着用時に着用者の背側に配される背側部Aと、着用時に着用者の腹側に配される腹側部Bと、着用時に着用者の股下の配される股下部Cとを有している。股下部Cは、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を含んでおり、おむつ1の長手方向Xの中央部に位置している。おむつ1は、股下部Cの両側縁が内向きの円弧状に湾曲しており、図1に示す如き平面視において、長手方向Xの中央部が内方に括れた砂時計状の形状となっている。
【0015】
本明細書において、肌対向面は、吸収性物品(使い捨ておむつ)又はその構成部材(例えば吸収性コア40)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。また、長手方向は、吸収性物品又はその構成部材の長辺に沿う方向であり、幅方向は、該長手方向と直交する方向である。図中、符号Xで示す方向は、おむつ1(吸収性コア40)の長手方向であり、符号Yで示す方向は、おむつ1(吸収性コア40)の幅方向である。
【0016】
吸収体4を構成する液保持性の吸収性コア40は、股下部Cの両側縁が内向きの円弧状に湾曲しており、図1に示す如き平面視において、長手方向Xの中央部が内方に括れた砂時計状の形状となっている。また、吸収体4を構成するコアラップシート41は、1枚の連続したシートであり、図2に示すように、吸収性コア40の肌対向面40aの全域を被覆し、且つ吸収性コア40の長手方向Xに沿う両側縁部から幅方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の下方に巻き下げられて、吸収性コア40の非肌対向面40bの全域を被覆している。吸収性コア40とコアラップシート41との間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていても良い。
【0017】
図1及び図2に示すように、おむつ1の長手方向Xに沿う両側部それぞれには、一側縁部に糸状の弾性部材61が伸張状態で固定されているサイドシート62が配されており、着用時における股下部Cには、一対の立体ギャザーが形成される。また、着用者の脚周りに配される左右のレッグ部における表面シート2と裏面シート3との間には、糸状の弾性部材63が長手方向Xに沿って伸張状態で配されており、着用時におけるレッグ部には、弾性部材63の収縮により、一対のレッグギャザーが形成される。また、背側部A及び腹側部Bそれぞれのウエスト部(長手方向Xの端部)における表面シート2と裏面シート3との間には、帯状の弾性部材64が幅方向Yに沿って伸張状態で配されてウエストギャザーが形成されている。一対のサイドシート62,62、表面シート2、吸収体4、弾性部材63,64及び裏面シート3は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0018】
また、図1に示すように、おむつ1の背側部Aの長手方向Xに沿う両側縁部には、一対のファスニングテープ8,8が設けられている。より具体的には、背側部A及び腹側部Bそれぞれの長手方向Xに沿う両側部には、吸収体4の長手方向Xに沿う両側縁部から幅方向Yの外方に延出する一対のサイドフラップ7,7が形成されており、背側部Aの一対のサイドフラップ7それぞれに、ファスニングテープ8が幅方向Yの外方に延出して取り付けられている。ファスニングテープ8には、機械的面ファスナーのオス部材からなる止着部81が取り付けられている。
【0019】
また、おむつ1の腹側部Bの非肌対向面には、機械的面ファスナーのメス部材からなる被止着領域9が形成されている。被止着領域9は、裏面シート3の非肌対向面に、機械的面ファスナーのメス部材を公知の接合手段(例えば、接着剤やヒートシール等)で接合固定して形成されており、ファスニングテープ8の止着部81を着脱自在に止着可能である。
【0020】
本実施形態のおむつ1は、尿や軟便等の排泄液の吸収性を高めて、これらの排泄液が着用者の肌に付着し難いようにしたものであり、斯かる作用効果を奏させるようにするために、表面シート2、吸収性コア40及びコアラップシート41それぞれに工夫が施されており、これらの工夫が本実施形態の主たる特長となっている。以下、本実施形態のおむつ1の主たる特長部分について説明する。
【0021】
本実施形態における表面シート2は、図2及び図3に示すように、着用者の肌側に向けて突出する凸部25を多数有している。表面シート2の肌対向面には、多数の凸部25に加えて多数の凹部26が形成されており、これら多数の凸部25及び凹部26からなる凹凸形状が形成されている。表面シート2の肌対向面の斯かる凹凸形状は、図2に示すように、少なくとも股下部C(前記排泄部対向部)における吸収性コア40の上方に形成されており、本実施形態においては更に背側部A及び腹側部Bそれぞれにおける吸収性コア40の上方にも形成されている。一方、表面シート2の非肌対向面(吸収体4との対向面)は、凹凸の無い平坦面となっている。
【0022】
表面シート2について更に説明すると、表面シート2は、図3に示すように、着用者の肌側に向けられる上層20と吸収体4側に配される下層21とを有している。上層20と下層21とは、多数の凹部26の底部それぞれにおいて部分的に接合されており、各凹部26の底部は、上層20と下層21との接合部となっている。上層20は、凹部26の底部(接合部)以外の部分において着用者の肌側に向けて突出しており凸部25を形成している。凸部25内には空間が形成されている。凸部25は、その底面が矩形である。また凸部25は、全体として稜線が丸みを帯びた扁平な直方体又は截頭四角錐体となっている。一方、凹部26(接合部)も矩形となっている。
【0023】
凸部25及び凹部26(接合部)は、交互に且つ一方向に列をなすように配置されている。本実施形態においては、図3に示すように、おむつ1の幅方向Yに沿って凸部25及び凹部26が交互に配置され列をなしている。この幅方向Yに延びる凸部25及び凹部26からなる列は、おむつ1の長手方向Xに亘って多列に配置されている。
【0024】
表面シート2においては、おむつ1の幅方向Yに延びる一の列における任意の一つの凸部25に着目したときに、該列に隣り合う他の列においては、該一つの凸部25と隣り合う位置に凸部25が位置していない。「一つの凸部と隣り合う位置に凸部が位置していない」とは、一つの凸部25に着目したときに、隣り合う列の完全に同位置に、凸部25が位置していないことを意味している。つまり、図3におけるおむつ1の長手方向Xに関して、隣り合う列間における凸部25が完全に連なるように凸部25が配置されていないことを意味する。従って、一つの凸部25と隣り合う位置には、凸部25の一部と凹部26(接合部)の一部の双方が存在していても良く、あるいは凹部26のみが存在していても良い。本実施形態においては、隣り合う2つの凸部25の列において、凹部26は半ピッチずつずれて配置されている。従って、一の列における任意の一つの凹部26に着目したときに、該一つの凹部26はその前後及び左右が凸部25によって取り囲まれて形成された、閉じた凹部となっている。つまり、凹部26(接合部)は千鳥格子状に配置されている。従って、凸部25も同様に千鳥格子状に配置されている。
【0025】
このように、表面シート2の肌対向面に多数の凸部25及び凹部26(接合部)からなる凹凸形状が形成されていると、排泄液、特に高粘性の排泄液である軟便は、凹部26に捕捉されるため、面方向に拡散し難く、軟便の横流れが抑制される。また、軟便等の排泄液が凹部26に捕捉されることで、排泄液の下方向(つまり吸収体方向)への移行が促進され、その結果、排泄液の漏れが防止される。特に、本実施形態においては、凸部25内に空間が形成されているため、凹部26に捕捉された排泄液の吸収体4への移行経路としては、凹部26の底部(接合部)から下方向(吸収体方向)へ向かう経路に加えて、凹部26を取り囲む凸部25の側部から該凸部25内の空間を経由して下方向へ向かう経路が存しているため、軟便等の排泄液の引き込み性に優れ、排泄液の肌への接触機会が低減されている。
【0026】
このような、表面シート2の凹凸形状による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、凸部25の寸法等は次のように設定することが好ましい。
凸部25の高さH(図3参照)は、好ましくは1〜10mm、更に好ましくは3〜6mmである。
おむつ1の幅方向Yに沿う凸部25の底部寸法W1(図3参照)は、好ましくは2〜30mm、更に好ましくは2〜5mmであり、おむつ1の長手方向X(凸部25及び凹部26の列方向と直交する方向)に沿う底部寸法W2(図3参照)は、好ましくは2〜30mm、更に好ましくは2〜5mmである。
凸部25の底面積は、好ましくは4〜900mm2、更に好ましくは4〜25mm2である。
おむつ1の幅方向Y(凸部25及び凹部26の列方向)での凹部26(接合部)の長さW3(図3参照)は、好ましくは0.1〜20mm、更に好ましくは0.5〜5mmである。
【0027】
前述したように、表面シート2の凸部25及び凹部26(接合部)は千鳥格子状に配置されているところ、この凸部25(凹部26)の千鳥状配置は、例えば図4に示すように設定することができる。図4(a)は、1つの凸部25が6つの凹部26で包囲されているパターン(6点凹部パターン)であり、図4(b)は、1つの凸部25が4つの凹部26で包囲されているパターン(4点凹部パターン)であり、何れのパターンも凸部25が千鳥状に配置されるパターンである。尚、図4では、12行,12列で凹部26の位置を示しており(凸部25は図示しておらず)、図4に示すマス目において斜線が付してある箇所が凹部26である。
【0028】
図4(a)に示す6点凹部パターンは、(1,2),(1,4),(3,1),(3,5),(5,2),(5,4)の6点の凹部で第1の6点パターン要素(第1要素)が構成されている。ここで( )内の数値は、(行番号,列番号)を表す。そして右隣りの第2要素は、(1,8),(1,10),(3,7),(3,11),(5,8),(5,10)の6点の凹部で構成されている。更に第1要素の下方の第3要素は、第1要素の下部の2点(5,2),(5,4)の凹部を共有するようにして、(7,1),(7,5),(9,2),(9,4)と共に6点の凹部で構成されている。更にこの右隣りの第4要素は、凹部(3,5),(3,7),(5,4),(7,5),(5,8)を第1〜3要素の何れかと共有し、凹部(7,7)と合わせた6点の凹部で構成されている。このように、図4(a)に示す表面シート2の肌対向面は、各要素の一部の凹部26を互いに共有しつつ、6点凹部パターンが広く繰り返されて構成されている。
【0029】
図4(b)に示す4点凹部パターンは、(1,3),(3,1),(3,5),(5,3)の4点での凹部で第1要素が構成されている。その右隣りにおいては凹部(3,5)を共有して、凹部(1,7),(3,9),(5,7)と共に第2要素を構成している。第1要素の下方には、第1要素の凹部(5,3)を共有して、凹部(7,1),(7,5),(9,3)と共に第3要素を構成している。更にこの右隣りの第4要素は、凹部(3,5),(5,3),(5,7),(7,5)を第1〜3の何れかと共有して構成されている。このように、図4(b)に示す表面シート2の肌対向面は、各要素の一部の凹部26を互いに共有しつつ、4点凹部パターンが広く繰り返されて構成されている。
【0030】
そして、図4(a)及び図4(b)に示す凹部26(接合部)の配置パターンにおいては、6点ないし4点の凹部26で構成された各要素の略中央に、凸部25(凸部25の頂部)が配されることが好ましい。例えば、図4(a)の6点凹部パターンの第1〜4要素でいうと、第1要素の(3,3)、第2要素の(3,9)、第3要素の(7,3)、第4要素の(5,6)にそれぞれ凸部25の頂部が配されていることが好ましい。また、図4(b)の4点凹部パターンの第1〜4要素でいうと、第1要素の(3,3)、第2要素の(3,7)、第3要素の(7,3)、第4要素の(5,5)にそれぞれ凸部25の頂部が配されていることが好ましい。このように凸部25を千鳥格子状に配置することにより、着用者の肌に当接する圧力が均一に分散され一層良好なクッション性が実現され、また排泄液の吸収保持においても均一に表面シート全体においてその作用が発揮されるため好ましい。
【0031】
表面シート2を構成する上層20及び下層21は、同一の又は異なる繊維材料のシート状物からなる。このシート状物は実質的に非伸縮性である。実質的に非伸縮性であるシート状物とは、例えば伸長限界が105%以下であり、それを超える伸長では材料破壊を起こすか又は永久歪みが発生するものをいう。このようなシート状物としては、従来公知の吸収性物品における表面シートとして用いられる材料において、実質的に非伸縮性であるものであれば、特に制限無く使用することができ、例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布;開口手段によって液透過可能とされたフィルム等が挙げられる。上層20及び下層21のシート状物として不織布を用いる場合、その構成繊維の繊度は1〜20dtex、特に1.5〜4dtexであることが、表面シートの強度確保、肌触りの向上等の点から好ましい。上層20及び下層21には、何れも界面活性剤等を用いた親水化処理を施しておくことが好ましい。
【0032】
上層20の坪量は、10〜100g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。一方、下層21の坪量は、5〜50g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。上層20及び下層21を含めた表面シート2の全体の坪量は、15〜150g/m2、特に20〜60g/m2であることが好ましい。
【0033】
このような凹凸形状を有する表面シート2は、公知のエンボス加工を利用して製造することができる。例えば、上層20の原反を、周面が凹凸形状となっている第1のロールと該第1のロールの凹凸形状に対して噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2のロールとの噛み合わせ部に噛み込ませて、該上層20の原反を凹凸賦形し、次いで、凹凸賦形された該上層20の原反と下層21の原反とを重ね合わせて積層体とし、該積層体を加熱加圧して両原反を熱融着によって接合することで、図3及び図4に示す如き凹凸形状を有する表面シート2が得られる。本実施形態に係る表面シート2については、本出願人の先の出願に係る特許文献1に記載の内容を適宜適用できる。
【0034】
また、本実施形態においては、前述した表面シート2の工夫に加えて、更に吸収性コア40にも工夫が施されている。即ち、本実施形態における吸収性コア40には、図1及び図2に示すように、少なくとも吸収性コア40の非肌対向面40b側に開口部50を有するスリット5が、吸収性コア40の長手方向Xに延びて形成されている。吸収性コア40には、長手方向Xに延びる連続直線状(矩形形状)のスリット5が、吸収性コア40の幅方向Yに所定間隔を置いて複数本(2本)形成されている。これら2本のスリット5,5は互いに平行で且つ長手方向Xの長さが等しく、吸収性コア40を幅方向Yに二分する仮想直線(図示せず)を挟んで左右対称に形成されている。2本のスリット5,5の間隔は、好ましくは10〜50mmである。
【0035】
スリット5は、少なくとも股下部C(前記排泄部対向部)に形成される。本実施形態におけるスリット5は、図1に示すように、吸収性コア40の背側部A側の長手方向端部近傍から股下部C(前記排泄部対向部)を通って腹側部Bの股下部C寄りの部位に亘って連続して直線的に延びており、背側部A及び股下部Cに比して腹側部Bにおける長さが短くなっており、股下部Cを含んで背側部A側に偏倚している。本実施形態におけるスリット5の斯かる形成位置は、軟便が排泄される領域及びその近傍に対応したものである。
【0036】
スリット5は、吸収性コア40の製造時における、吸収性コア40の形成材料(木材パルプ等の繊維材料、吸水性ポリマーの粒子等)の堆積工程において、吸収性コア40の形成材料の堆積を意図的に阻害して形成された部位であり、スリット5には、吸収性コア40の形成材料は実質的に存在しない。「スリットに形成材料が実質的に存在しない」とは、スリット5に吸収性コア40の形成材料が意図せずに少量存している(吸収性コア40におけるスリット5の周辺部の坪量よりも低坪量で存している)場合を含む。
【0037】
スリット5を有する吸収性コア40は、従来公知の吸収性コアの製造方法に従って製造することができ、例えば、空気流に乗せて供給した吸収性コア40の形成材料を、回転ドラムの外周面に形成された成形型上に吸引して堆積させて吸収性コア40を得る方法において、該成形型として所定パターンの成形型(例えば、スリット5に対応する部位が周辺部に比して上方に突出している成形型)を用いることで得られ、こうして得られた吸収性コア40における、形成材料が堆積していない部分(形成材料が実質的に存在していない部分)がスリット5である。
【0038】
本実施形態におけるスリット5は、図2に示すように、吸収性コア40を厚み方向に貫通しておらず、スリット5とコアラップシート41における、吸収性コア40の肌対向面40aを被覆する部位との間〔即ち、吸収性コア40における、スリット5と該吸収性コア40の厚み方向に隣接する部位(開口部50の反対側)〕には、吸収性コア40の形成材料が堆積して開口部対向部40cを形成している。開口部対向部40cは、吸収性コア40におけるスリット5以外の他の部位と同様に、吸収性コア40の製造時において厚み方向に圧縮されておらず、従って圧密化されていない。
【0039】
圧密化されていない開口部対向部40cは、前述した吸収性コア40の製造方法において、吸収性コア40の形成材料を意図的に堆積させずにスリット5を形成することによって得られるものであり、斯かるスリット形成方法以外の方法、例えば、スリットを有していない吸収性コアを製造し、該吸収性コアの所定部位にエンボス加工や型抜き加工や切削加工等の後加工を施してスリットを形成する方法では得られない。これらの後加工は、吸収性コアを少なからず厚み方向に圧縮するため、該後加工を経て得られたスリットと厚み方向に隣接する、開口部対向部は、該後加工によって圧密化されてしまうためである。
【0040】
尚、圧密化されていない開口部対向部40cの密度は、通常、吸収性コア40における開口部対向部40cの周辺部(スリット5を除いて、吸収性コア40における開口部対向部40cから5mm以内の領域)の密度と同じか、それよりも低い。圧密化されていない開口部対向部40cがその周辺部よりも低密度になる理由は次の通りである。即ち、吸収性コア40の製造時におけるスリット5(開口部対向部40c)の形成後の搬送工程等において、搬送ロール等の各種ロールによって吸収性コア40全体にその厚み方向に圧力がかかった場合に、開口部対向部40cの周辺部は、該圧力によってある程度圧縮されて密度が高まる場合があるのに対し、開口部対向部40cは、その周辺部に比して実質厚み(吸収性コア40の形成材料の堆積厚み)が小さく薄いため、該圧力をほとんど受けず、実質的に圧縮されない。つまり、吸収性コア40の製造時において、開口部対向部40cの密度は実質的に変化しないのに対し、その周辺部の密度は、搬送時の圧縮等によって高まる場合があり、その場合は、開口部対向部40cの密度は相対的に低くなるのである。
【0041】
吸収性コア40に、吸収性コア40の形成材料が実質的に存在していないスリット5が吸収性コア40の長手方向Xに延びて形成されていることにより、股下部Cの前記排泄部対向部に局所的に排泄された、軟便等の排泄液は、スリット5を導通路として吸収性コア40の長手方向Xに速やかに拡散するため、吸収性コア40において排泄液を実質的に吸収する部分が増加し、それにより尿や軟便等のウエットバックが低減される。また、特に初期の排泄においては、スリット5はその初期の排泄液を一時的に貯蔵する貯蔵部として機能するため、軟便等の排泄液の吸収性が向上する。
【0042】
また、本実施形態においては、前述したように、スリット5が吸収性コア40を厚み方向に貫通しておらず、吸収性コア40におけるスリット5の形成部位の肌対向面40a側に、吸収性コア40の形成材料が堆積して形成された、圧密化されていない開口部対向部40cが存しているため、表面シート2及びコアラップシート41を順次透過して吸収性コア40の肌対向面40a上に到達した排泄液は、開口部対向部40cにて幅方向Yに拡散され、それによって、吸収性コア40全体を排泄液の吸収保持に利用することが可能となり、尿や軟便等のウエットバックの低減効果が一層向上する。
【0043】
仮に、開口部対向部40cが存していなければ、即ちスリット5が吸収性コア40を厚み方向に貫通するものである場合(本発明に係るスリットは、このような貫通型のスリットを含む)には、その貫通型のスリット5において排泄液の幅方向Yへの拡散が分断されてしまうため、吸収性コア40の利用効率の向上効果はあまり望めない。また、開口部対向部40cが存していてもそれが圧密化されている場合〔開口部対向部40cが、吸収性コア40におけるスリット5以外の他の部位(例えば開口部対向部40cの周辺部)よりも高密度である場合〕には、吸収体4の肌対向面(表面シート2との対向面)で排泄液が流れてしまって吸収体4内には入りにくく、吸収体4内での排泄液の幅方向Yへの拡散効果が十分に得られない。
【0044】
スリット5は、その幅W4(図1参照、スリット5の延びる方向Xと直交する方向Yの長さ)が吸収性コア40の肌対向面40a側から非肌対向面40b側に向かって漸次増加している部分を有している。本実施形態におけるスリット5は、図2に示す如き幅方向Yの断面視において(等脚)台形形状をしており、該スリット5の全域において、その幅W4が肌対向面40a側から非肌対向面40b側に向かって漸次増加している。スリット5の幅W4が、このように肌対向面40a側から非肌対向面40b側に向かって漸次増加していると、例えば幅W4が吸収性コア40の厚み方向に変化していない場合(例えばスリット5の断面視形状が矩形形状である場合)に比して、吸収体4(吸収性コア40)の非肌対向面側での液拡散がより良好になるという効果が奏される。
【0045】
スリット5による前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、スリット5の幅W4(図1参照)は、好ましくは1〜20mm、更に好ましくは1〜10mmである。また、スリット5における最も幅W4が狭い部分の幅W4sは、好ましくは1〜10mm、更に好ましくは1〜5mmである。また、同様の観点から、股下部C(前記排泄部対向部)における吸収性コア40の幅方向Yの全幅W0に対する、股下部Cに存する全てのスリット5における最も狭い部分の幅W4sの合計W50の割合(W50/W0)は、好ましくは0.02〜0.3、更に好ましくは0.05〜0.25である。
【0046】
また、本実施形態においては、前述した表面シート2及び吸収性コア40の工夫に加えて、更にコアラップシート41にも工夫が施されている。即ち、コアラップシート41における、吸収性コア40の肌対向面40aを被覆する部位(表面シート2と吸収性コア40との間に配置される部位)は、下記方法で測定される低粘性液(生理食塩水)の液透過時間が2.5秒以下、好ましくは0.5〜2.5秒、更に好ましくは0.5〜2秒、特に好ましくは0.5〜1.5秒である。本実施形態におけるコアラップシート41は、その全体が同一の構成であり、任意の部位の液透過時間(後述する高粘性液の液透過時間を含む)が特定範囲にある。前記液透過時間が前記範囲にあるコアラップシート41は、特に尿等の比較的低粘性の排泄液の液透過性に優れており、尿を吸収性コア40側に素早く透過させることができる。
【0047】
<低粘性液の液透過時間の測定方法>
図5に示すように、上下端が開口している内径35mmの2本の円筒91,92を、両円筒91,92の軸を一致させて上下に配し、8cm四方の測定対象シートS(コアラップシート)を上下の円筒91,92間に挟み込む。このとき、上側の円筒91の下端及び下側の円筒92の上端に設けられた環状のフランジ部にクリップ93を嵌合させ、上下の円筒91,92を連結させることが好ましい。符号94は、円筒91,92の内径と同径同形状の貫通孔を有するゴム製等のパッキンである。このように、上下の円筒91,92で測定対象シートSを挟持固定した状態で、上側の円筒91内に、図5中符合Wで示す生理食塩水(日本薬局方生理食塩液大塚生食注を使用)を40g±1g供給する。生理食塩水の上側の円筒91内への供給は、40g±1gの生理食塩水が入った図示しない容器(ビーカー等)から該生理食塩水を、一括で一気に(該容器から円筒91内への生理食塩水の流れを途切れさせずに最後まで連続させて)上側の円筒91内に注入することによって実施する。生理食塩水は、使用前に23℃、50%RHの恒温室で1日かけて順化させておく。供給された生理食塩水は、測定対象シートSを透過するか又は測定対象シートSに吸収されて上側の円筒91内からなくなる。生理食塩水の供給開始時から、生理食塩水の水面が測定対象シートSの表面(上側の円筒91側の面)と同位置になるまでの時間を測定し、その時間を低粘性液の液透過時間とする。
【0048】
また、コアラップシート41における、吸収性コア40の肌対向面40aを被覆する部位(表面シート2と吸収性コア40との間に配置される部位)は、低粘性液の液透過時間が2秒以下であることに加えて、更に、下記方法で測定される高粘性液(グリセリンとイオン交換水との混合液)の液透過時間が500秒以下、好ましくは50〜300秒、更に好ましくは50〜200秒である。前記液透過時間が前記範囲にあるコアラップシート41は、特に軟便等の比較的高粘性の排泄液の液透過性に優れており、軟便を吸収性コア40側に素早く透過させることができる。
【0049】
<高粘性液の液透過時間の測定方法>
生理食塩水40g±1gに代えて、粘度290mPa・sの高粘性液10g±1gを用いる以外は、前記<低粘性液の液透過時間の測定方法>に準じて測定を行う。10g±1gの高粘性液を、デジタルポンプ(Cole-Parmer Instrument Company製、商品名「Masterflex」)により100g/mlの速度で上側の円筒91内に供給し、高粘性液の供給開始時から、高粘性液の液面が測定対象シートSの表面(上側の円筒91側の面)と同位置になるまでの時間を測定し、その時間を高粘性液の液透過時間とする。高粘性液は次のようにして調製する。即ち、グリセリンとイオン交換水とを、前者:後者=94:6の質量比で混合し、更にこの混合液に、赤色2号を該混合液100gに対して0.01g添加して、目的とする高粘性液を調製する。高粘性液は、使用前に23℃、50%RHの恒温室で1日かけて順化させておく。
【0050】
低粘性液及び高粘性液それぞれの液透過時間が前記範囲にあるコアラップシート41の一例として、フリーネスが400〜550mlである針葉樹晒クラフトパルプを主体とし、紙力増強剤が添加されており、坪量が10〜14.5g/m2、密度が0.05〜0.2g/cm3である薄葉紙が挙げられる。以下、この薄葉紙について説明する。
【0051】
前記薄葉紙(コアラップシート41)は、フリーネスが400〜550mlである針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を必須成分として含有している。尚、薄葉紙が2種以上のNBKPを含有している場合、それら2種以上のNBKPの集合体のフリーネスが400〜550mlであれば良い。フリーネスは、JIS P8121に規定するカナダ標準ろ水度(C.S.F.)で示される値であり、パルプの叩解(水の存在下でパルプを機械的に叩き、磨砕する処理)の度合いを示す値である。通常、フリーネスの値が小さいほど、叩解の度合いが強く、叩解による繊維の損傷が大きくてフィブリル化が進行している。フリーネスが前記範囲にあるNBKPは、フィブリル化が進行しているため繊維どうしが絡み合い易く、そのため、液透過性の向上の観点から薄葉紙の低坪量化(低密度化)を図ることによって構成繊維の繊維間結合点の数が減少しても、各繊維間結合の強度は、フリーネスが550mlを超え相対的にフィブリル化が進行していないNBKPに比して、高い。従って、フリーネスが400〜550mlであるNBKPを主体とする薄葉紙は、良好な強度特性を有し得る。
【0052】
本発明で用いるNBKPのフリーネスは、好ましくは475〜525ml、更に好ましくは490〜510mlである。フリーネスが400ml未満の場合は、繊維の絡み合いによる強度改善効果は飽和しており、また、繊維の切断が促進され、透過時間が遅くなるおそれがある。NBKPの叩解は、NBKPを分散させた紙料(スラリー)に対して、ビーダー、ディスクリファイナー等の公知の叩解機を用いて常法に従って実施することができる。また、本発明で用いるNBKPとしては、この種の紙において通常用いられるNBKPを特に制限無く用いることができる。NBKPとして、パルプの漂白に塩素化合物を使用しないECF(エレメンタリー・クロリンフリー)漂白パルプやTCF(トータル・クロリンフリー)漂白パルプを使用しても良い。
【0053】
前記薄葉紙は、フリーネスが400〜550mlであるNBKPを主体としている。ここで、「主体としている」とは、フリーネスが斯かる範囲にあるNBKPの含有率が50質量%以上であることを意味する。該含有率は、良好な強度特性を得る観点から、好ましくは50〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%である。
【0054】
前記薄葉紙は、NBKP以外の他の繊維を含んでいても良く、他の繊維は、NBKPの如き親水性セルロース繊維でなくても良い。他の繊維としては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプ;楮、三椏、雁皮等の靱皮繊維;藁、竹、ケナフ、麻等の非木材パルプ;ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維等の合成繊維等が挙げられる。これら他の繊維の含有率は、好ましくは50質量%以下である。
【0055】
前記薄葉紙(コアラップシート41)には、良好な強度特性(引張強度)を得る観点から、紙力増強剤が添加されている。紙力増強剤には、乾燥紙力を向上させる乾燥紙力増強剤と、湿潤紙力を向上させる湿潤紙力増強剤とがあり、何れを用いても良い。特に、乾燥紙力増強剤の1種であるカルボキシメチルセルロース(CMC)は、水溶性であることと取り扱いが簡便であるため、本発明で好ましく用いられる。
【0056】
乾燥紙力増強剤としては、従来公知の乾燥紙力増強剤を用いることができ、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びその塩、ポリアクリルアミド系樹脂及びその塩、カチオン化デンプン、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。CMCあるいはポリアクリルアミド系樹脂の塩としては、それぞれ、ナトリウム塩が主に用いられる。ポリアクリルアミド系樹脂としては、例えば、カチオン性又はアニオン性ポリアクリルアミド(PAM)が挙げられる。これらの乾燥紙力増強剤の中でも、特にCMC及びその塩、アニオン性PAM及びその塩が好ましい。
【0057】
湿潤紙力増強剤としては、従来公知の湿潤紙力増強剤を用いることができ、例えば、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(PAE)、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ジアルデヒドデンプン、ポリエチレンアミン、メチロール化ポリアミド等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの湿潤紙力増強剤の中でも、特にPAEが好ましい。
【0058】
前記薄葉紙における紙力増強剤の添加量は、薄葉紙の全構成繊維の乾燥質量に対して、好ましくは0.01〜1.5質量%、更に好ましくは0.03〜1.2質量%である。紙力増強剤の添加量が少なすぎると、引張強度等の強度特性が十分に得られず、紙力増強剤の添加量が多すぎると、薄葉紙の硬化(風合いの低下)の他、薄葉紙の製造時におけるヤンキードライヤへの紙の張り付きやメッシュドラムへの紙力増強剤の付着等による、薄葉紙の地合の低下を招くおそれがある。
【0059】
前記薄葉紙は、前述した、NBKP等の繊維及び紙力増強剤以外の他の成分を含んでいても良い。他の成分としては、例えば、タルク等の填料、染料、色顔料、抗菌剤、pH調整剤、歩留り向上剤、耐水化剤、消泡剤等の一般的に抄紙用原材料や添加物として使用されているものが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
前記薄葉紙は、公知の湿式抄紙法によって製造することができる。湿式抄紙法は、NBKP等の繊維の水分散液からなる紙料(スラリー)を調製する紙料調製工程と、紙料から繊維を抄いて繊維ウエブとしたものを搬送しながら乾燥する抄紙工程とを有するものである。抄紙工程は、通常、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、サイズプレス、カレンダパート等に分けられ、順次実施される。前述した紙力増強剤は、通常、紙料調整工程において紙料に添加される。湿式抄紙法は、例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ抄紙機、ハイブリッド抄紙機又は丸網抄紙機等の抄紙機を用いて常法に従って実施することができる。
【0061】
前記薄葉紙(コアラップシート41)は、液透過性の向上の観点から、坪量及び密度を比較的低く設定しており、具体的には、坪量は10〜14.5g/m2、好ましくは11〜14g/m2、密度は0.05〜0.2g/cm3、好ましくは0.1〜0.2g/cm3である。坪量及び密度がこのように低いと紙力の低下が懸念されるが、本発明では、前述したように、フリーネスが特定範囲にあるNBKPを用い且つ紙力増強剤を併用することで、斯かる懸念を払拭している。薄葉紙の坪量が10g/m2未満又は密度が0.05g/cm3未満では、紙力が著しく低下するおそれがあり、また、薄葉紙の坪量が14.5g/m2超又は密度が0.2g/cm3超では、液透過性の向上効果に乏しいおそれがある。
【0062】
前記薄葉紙の坪量は、次のようにして測定される。JIS P8111の条件にてサンプル(薄葉紙)の調湿を行った後、サンプルから10cm四方(面積100cm2)の測定片を切り出し、該測定片の重量を少数点以下2桁の天秤にて測定し、その測定値を面積で除して該測定片の坪量を算出する。サンプルから切り出した10枚の測定片について、前記手順に従って坪量を算出し、それらの平均値をサンプルの坪量とする。
【0063】
また、前記薄葉紙の密度は、次のようにして測定される。20cm四方のサンプル(薄葉紙)を10枚重ねて積層体とし、該積層体を液体窒素で冷却固化させた後、カッターで該積層体の真ん中付近を切断する。そして、10枚のサンプルのうち、カッターによる切断で生じた断面にせん断がかかっていないものを選択し、選択したサンプルの厚みを光学顕微鏡により測定する。尚、サンプルの厚みは、当該サンプルに後述するクレープ等の凹凸がある場合は、その凹凸部における最底部から最上部までの長さ(見掛け厚み)ではなく、構成繊維が堆積している部分の長さ(実質厚み)である。こうして厚みを測定した20cm四方のサンプルの重量を、小数点以下2桁の天秤を用い測定する。目的とする密度は、サンプルの厚みから体積を算出した値で、サンプルの重量を除して算出する。
【0064】
前記薄葉紙(コアラップシート41)は、クレープ(ちりめん状のシワ)を有していても良い。前記薄葉紙におけるクレープは、薄葉紙の製造時における抄紙工程において、プレスパートにおけるプレスロール等から湿式状態の繊維ウエブ(薄葉紙)をドクターナイフ等で剥離する際に生じるウエットクレープであっても良く、あるいは、ドライヤパートにおけるヤンキードライヤ等から乾燥状態の繊維ウエブ(薄葉紙)をドクターナイフ等で剥離する際に生じるドライクレープであっても良い。クレープ率は、次式により求められる。次式中、Aは抄紙工程における抄紙速度、Bは紙の巻き取り回転速度を示す。 クレープ率(%)=(A/B)×100−100
【0065】
クレープを有する薄葉紙は、クレープを有しない薄葉紙に比して液透過性が高く、また、クレープ率が高くなるほど液透過性が高まる。但し、クレープ率が高くなると、強度特性(引張強度)は低下する傾向がある。前記薄葉紙(コアラップシート41)のクレープ率は、液透過性と強度特性とのバランスの観点から、好ましくは5〜30%、更に好ましくは5〜20%、特に好ましくは7〜15%である。
【0066】
おむつ1における各部の形成材料について説明すると、裏面シート3としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを用いることができる。裏面シート3としては、液不透過性で且つ透湿性を有するシートを用いることができ、例えば、シートを厚み方向に貫通する微細孔を備えることで透湿性を有する樹脂フィルム、撥水不織布等の不織布、これらと他のシートとのラミネート体等を用いることができる。また、サイドシート62としては、裏面シート3と同様のものを用いることができる。
【0067】
吸収性コア40としては、例えば、木材パルプ、合繊繊維等の親水性繊維からなる繊維集合体、又は該繊維集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたもの等を用いることができる。吸収性コア40の密度は、好ましくは0.03〜0.2g/cm3、更に好ましくは0.06〜0.15g/cm3である。吸収性コア40の密度が前記範囲にあると、柔らかく且つ吸収性能に優れる吸収体4がより確実に得られるようになる。
【0068】
本実施形態のおむつ1は、公知の展開型の使い捨ておむつと同様に使用される。本実施形態のおむつ1は、前述した表面シート2、吸収性コア40及びコアラップシート41それぞれにおける特長的な構成の採用、即ち、1)肌対向面に凹凸形状を有する表面シート2、2)長手方向Xに延びるスリット5を有する吸収性コア40、及び3)前記測定方法による液透過時間が2秒以下であるコアラップシート41の採用により、尿や軟便等の排泄液の吸収性に優れ、排泄液が着用者の肌に付着し難いため、肌荒れを起こし難い。特に表面シート2においては、前記凹凸形状によって、軟便等の比較的高粘性の排泄液の面方向への拡散を抑制しつつ、排泄液を素早くコアラップシート41側へ引き込んで排泄直後の排泄液が着用者の肌に接触する機会を低減し、また、コアラップシート41においては、尿や軟便等の排泄液を素早く吸収性コア40側に透過させて、排泄液を着用者の肌から遠い位置に速やかに移行させ、また、吸収性コア40においては、スリット5の作用により軟便等の排泄液の吸収性が全般的に高められているため、ウエットバックの発生が効果的に防止される。要するに、本実施形態のおむつ1は、排泄直後の排泄液の吸収性の向上及びウエットバックの低減によって、尿等の比較的低粘性の排泄液の肌への接触機会・付着量を低減して、これらの排泄液の付着による肌の膨潤を防止すると共に、膨潤した肌を刺激し得る軟便等の排泄液の肌への接触機会・付着量をも低減することで、肌荒れを効果的に防止することができる。
【0069】
本発明は、前記実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、前記実施形態では、表面シート2は、上層20及び下層21からなる複層構造であり、複数枚のシートの積層体であったが、1枚のシートからなる単層構造であっても良い。また、前記実施形態では、背側部A及び腹側部Bそれぞれのウエスト部(長手方向Xの端部)に弾性部材64が配されてウエストギャザーが形成されていたが、ウエストギャザー(弾性部材64)は無くても良い。
【0070】
また、前記実施形態では、吸収性コア40の長手方向Xに延びるスリット5は、股下部Cを含んで背側部A側に偏倚していたが、股下部Cのみに形成されていても良く、あるいは股下部Cを含んで腹側部B側に偏倚していても良く、あるいは吸収性コア40の長手方向Xの特定部位に偏倚させずに、該長手方向Xの全長に亘って連続的に形成されていても良い。また、スリット5の本数は特に制限されず、例えば吸収性コア40の幅方向Yの中央(吸収性コア40を幅方向Yに二分する仮想直線上)に1本形成しても良い。また、スリット5の幅方向Yの断面視形状は、図2に示す如き台形形状に制限されず、三角形形状、正方形形状、矩形形状等であっても良い。
【0071】
また、本発明に係るスリットは、少なくとも吸収性コアの非肌対向面側に開口部を有していれば良く、吸収性コアを厚み方向に貫通するものであって、吸収性コアの非肌対向面側に加えて肌対向面側にも開口部を有するものであっても良い。また、本発明に係るスリットの延びる方向は、吸収性コア(吸収性物品)の長手方向に制限されず、幅方向であっても良い。
【0072】
また、前記実施形態では、コアラップシート41は1枚の連続したシートであり、該シートを吸収性コア40に沿って折り曲げて、吸収性コア40の長手方向Xの両端面を除く、吸収性コア40の表面の全域を被覆していたが、これに代えて、図6に示すように、2枚のコアラップシート41a,41bを用いても良い。図6に示す吸収体4Aにおいては、コアラップシート41aが吸収性コア40の肌対向面40aの全域を被覆し、コアラップシート41bが吸収性コア40の非肌対向面40bの全域を被覆している。コアラップシート41bは、吸収性コア40の長手方向Xに沿う両側縁部から幅方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の肌対向面40a上に位置するコアラップシート41a上に巻き上げられている。吸収性コア40とコアラップシート41a,41bとの間は、それぞれ、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていても良い。
【0073】
また、表面シート2と吸収体4との間に、サブレイヤーシートが介在配置されていても良い。サブレイヤーシートは、おむつ1の液吸収能を補強し、吸収体4に吸収された液が表面シート2側に戻る現象(ウエットバック)を低減させる効果がある。サブレイヤーシートとしては、木材パルプ等の親水性繊維を主体とするシート(親水性繊維の含有量が好ましくは90質量%以上のシート)を用いることができ、該シートとしては、例えば、紙、不織布、ウエブ等が挙げられる。サブレイヤーシートの配置形態は特に制限されず、背側部Aから股下部Cに亘って配置しても良く、あるいは腹側部Bから股下部Cに亘って配置しても良く、あるいは股下部Cのみに配置しても良い。
【0074】
また、本発明は、前記実施形態の如きファスニングテープを有する展開型の使い捨ておむつの他、予めパンツ型に形成されたパンツ型の使い捨ておむつにも適用でき、更には、生理用ナプキン、失禁パッド等にも適用できる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0076】
〔実施例1〕
図1及び図2に示すおむつ1と同様の基本構成を有する展開型の使い捨ておむつを作製し、これを実施例1のサンプルとした。表面シートとしては、図3に示す2層構成の凹凸表面シートと概ね同様の構成のものを用い、該表面シートの上層及び下層として、それぞれ、坪量18g/m2の液透過性のエアースルー不織布を用い、該上層については、該エアースルー不織布にエンボス加工によって凹凸を付与したものを用いた。凹凸付与後の上層の坪量は23.5g/m2であった。裏面シートとしては、坪量20g/m2の液不透過性且つ透湿性のポリエチレン製樹脂フィルム(炭酸カルシウム配合)を用いた。吸収性コアとしては、繊維集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたものとして、フラッフパルプ200g/m2と吸水性ポリマー186g/m2との均一混合物からなる総坪量386g/m2の吸収性コアを用いた。この吸収性コアの長手方向の全長は360mm、幅方向の全長(最大長さ)は110mmであった。スリットは、吸収性コアの製造時において、前述したように、所定の成形型を用いて所定部位に吸収性コアの形成材料を意図的に堆積させないようにすることで形成した。コアラップシートとしては、下記方法により製造したコアラップシートA1を用いた。
【0077】
<コアラップシートA1の製造方法>
NBKP〔商品名「Cariboo」(北米産、Cariboo Pulp and Paper Company製)及び商品名「ARAUCO」(南米産、ARAUCO製)の2種類のパルプ(NBKP)を、両パルプの含有質量比が5/5になるように混合して調製したNBKP〕を水中に均一に分散させて、繊維濃度2質量%のスラリーを調製し、このスラリーを叩解機にかけて、NBKPのフリーネスを500mlに調整した。更に、このスラリーを希釈しながら、湿潤紙力増強剤としてPAE(星光PMC株式会社製、商品名「WS4030」)を、スラリー中の全繊維の乾燥質量に対して0.78質量%投入し、次いで、乾燥紙力増強剤としてCMCのナトリウム塩(第一工業製薬株式会社製、商品名「セロゲンWS−C」)を、スラリー中の全繊維の乾燥質量に対して0.2質量%投入し、各成分が均一になるように十分に撹拌し、固形分濃度0.1質量%のスラリーに調整した。こうして得られたスラリーを、ワイヤー目開き径90μm(166メッシュ)の金網抄紙ワイヤー上に散布し、金網抄紙ワイヤー上に紙層を形成させ、サクションボックスを用いて6ml/(cm2・sec)の速度で該紙層を脱水した後、該紙層をドライヤで乾燥させ、乾燥面からドクターブレードで紙層をはがしながら、ドライヤと巻き取りの速比をつけてクレープを付与した。こうして得られた薄葉紙(クレープ紙)をコアラップシートA1として用いた。
【0078】
〔実施例2〕
実施例1において、コアラップシートA1に代えてコアラップシートA2を用いた以外は、実施例1と同様にして展開型の使い捨ておむつを作製し、実施例2のサンプルとした。コアラップシートA2は、NBKPのフリーネスを550mlに調整した以外は前記<コアラップシートA1の製造方法>と同様の製造方法により製造した。
【0079】
〔比較例1〕
実施例1において、コアラップシートA1に代えて、下記方法により製造したコアラップシートBを用いた以外は、実施例1と同様にして展開型の使い捨ておむつを作製し、比較例1のサンプルとした。
【0080】
<コアラップシートBの製造方法>
NBKP(Cariboo Pulp and Paper Company製、商品名「Cariboo」、北米産、繊維粗度0.15mg/m、平均繊維長2.44mm)を水中に均一に分散させて、繊維濃度2質量%のスラリーを調製し、このスラリーを叩解機にかけて、NBKPのフリーネスを650mlに調整した。更に、このスラリーを希釈しながら、湿潤紙力増強剤としてPAE(星光PMC株式会社製、商品名「WS4030」)を、スラリー中の全繊維の乾燥質量に対して0.78質量%投入し、各成分が均一になるように十分に撹拌し、固形分濃度0.1質量%のスラリーに調整した。こうして得られたスラリーを、ワイヤー目開き径90μm(166メッシュ)の金網抄紙ワイヤー上に散布し、金網抄紙ワイヤー上に紙層を形成させ、サクションボックスを用いて6ml/(cm2・sec)の速度で該紙層を脱水した後、該紙層をドライヤで乾燥させ、乾燥面からドクターブレードで紙層をはがしながら、ドライヤと巻き取りの速比をつけてクレープを付与した。こうして得られた薄葉紙(クレープ紙)をコアラップシートBとして用いた。
【0081】
〔比較例2〕
実施例1において、吸収性コアにスリットを形成しなかった以外は、実施例1と同様にして展開型の使い捨ておむつを作製し、比較例2のサンプルとした。
【0082】
〔比較例3〕
比較例2において、コアラップシートA1に代えてコアラップシートBを用いた以外は、比較例2と同様にして展開型の使い捨ておむつを作製し、比較例3のサンプルとした。
【0083】
〔比較例4〕
実施例1において、2層構成の凹凸表面シートに代えて、凹凸の無いフラットなエアースルー不織布(坪量25g/m2)を表面シートとして用いた以外は、実施例1と同様にして展開型のおむつを作製し、比較例4のサンプルとした。
【0084】
〔評価〕
実施例及び比較例の各サンプル(使い捨ておむつ)について、下記方法に従って、ウエットバック量、尿吸収時間、軟便吸収性を評価した。それらの結果を下記表1に示す。
【0085】
<ウエットバック量及び尿吸収時間>
使い捨ておむつを平面状に拡げ、表面シートを上に向けて水平面上に固定した状態で、おむつの表面シート上に、円筒状の注入部の付いたアクリル板をのせ、更にそのアクリル板上に錘をのせ、吸収体部分に対して2kPa(20gf/cm2)の荷重を加えた。アクリル板に設けられた注入部は、内径36mmの円筒(高さ53mm)状をなし、アクリル板には、長手方向の1/3の部分、幅方向の中心軸に、該円筒状注入部の中心軸線が一致し、該円筒状注入部の内部とアクリル板の表面シート対向面との間を連通する内径36mmの貫通孔が形成されている。おむつの吸収性コアを覆っているコアラップシートの長手方向の腹側部分の先端から123mmの位置にアクリル板の円筒状注入部の中心軸が来るように配置し、人工尿30gを注入して吸収させ、10分間放置し、更に人工尿30gを注入して吸収させた。斯かる人工尿の注入操作を3回繰り返し、合計90gの人工尿をおむつに吸収させた。次いで、おむつにおける人工尿の吸収部位上にToyo Roshi Kaisha,Ltd製(10cm×10cm)の4Aろ紙20枚重ね、更にその上に荷重を2分間加えて、おむつに吸収させた人工尿をろ紙に吸収させた。荷重は10cm×10cmの面積に3.5kgが加わるようにした。2分経過後荷重を取り除き、人工尿を吸収したろ紙の重量を測定した。この重量から人工尿吸収前のろ紙の重量を差し引き、その値をウエットバック量とした。また、ウエットバック量の測定において、3回目の人工尿の注入時間(注入開始から全量がおむつに吸収されるまでの時間)を尿吸収時間とした。ウエットバック量が少ないほど、また尿吸収時間が短いほど、排泄液の吸収性に優れ高評価となる。
【0086】
人工尿の組成は次の通り。尿素1.94質量%、塩化ナトリウム0.7954質量%、硫酸マグネシウム(七水和物)0.11058質量%、塩化カルシウム(二水和物)0.06208質量%、硫酸カリウム0.19788質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.0035質量%及びイオン交換水(残量)。
【0087】
<軟便吸収性>
使い捨ておむつを平面状に拡げ、表面シートを上に向けて水平面上に固定した状態で、高粘性液のモデルである擬似軟便5gを、吸収体の中心部に表面シート側からシリンジを用いて定速(6秒)で一括注入し、3.5kPaの加重下で5分間放置した。このとき、加重をかけるための錘と使い捨ておむつとの間にOHPフィルム(15×15cm)を挟んでおいた。その後、OHPフィルムに付着した擬似軟便の量を測定し、その測定値を肌付着量とし、表面シート上の軟便の拡散面積を測定した。また、表面シートを剥がし、吸収体に吸収された擬似軟便の重量を測定し、この重量を軟便吸収量とした。肌付着量が少ないほど、また軟便吸収量が多いほど、軟便吸収性に優れ高評価となる。擬似軟便の成分は、ベントナイト110g、グリセリン45g、イオン交換水495g、エマルゲン130K(花王)0.35gであり、粘度は300mPa・s(23℃、振動式粘度計:株式会社エー・アンド・デイ製、VIBRO VISCOMETER CJV5000)であった。
【0088】
【表1】

【0089】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1及び2の使い捨ておむつは、各比較例の使い捨ておむつに比して、尿に関しては、ウエットバック量が少なく且つ尿吸収時間が短く、また軟便に関しては、肌付着量が少なく且つ軟便吸収量が多く且つ拡散面積が小さく、従って、尿や軟便等の排泄液の吸収性に優れ、排泄液が着用者の肌に付着し難い吸収性物品であることがわかる。比較例1は、主としてコアラップシートの低粘性液の液透過時間が2秒を超えていて長いため、また比較例2及び3は、主として吸収性コアにスリットが形成されていないため、また比較例4は、主として表面シートが着用者の肌側に向けて突出する凸部を有していないため、それぞれ、各実施例に比して排泄液の吸収性に劣る結果となった。
【符号の説明】
【0090】
1 使い捨ておむつ(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4,4A 吸収体
5 スリット
25 表面シートの凸部
26 表面シートの凹部(接合部)
40 吸収性コア
40a 吸収性コアの肌対向面
40b 吸収性コアの非肌対向面
40c 開口部対向部
41,41a,41b コアラップシート
50 スリットの開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体及び該吸収体の肌対向面側に配された表面シートを具備し、該吸収体が、吸収性コアと該吸収性コアの少なくとも肌対向面を被覆するコアラップシートとを含んで構成されている吸収性物品であって、
前記表面シートは、着用者の肌側に向けて突出する凸部を多数有しており、
前記吸収性コアに、少なくとも該吸収性コアの非肌対向面側に開口部を有するスリットが所定方向に延びて形成されており、
前記コアラップシートにおける、前記吸収性コアの肌対向面を被覆する部位は、下記方法で測定される低粘性液の液透過時間が2.5秒以下である吸収性物品。
<低粘性液の液透過時間の測定方法>
上下端が開口している内径35mmの2本の円筒を、両円筒の軸を一致させて上下に配し、測定対象シート(コアラップシート)を上下の円筒間に挟み込み、その状態で上側の円筒内に、生理食塩水を40g±1g供給する。生理食塩水の上側の円筒内への供給は、40g±1gの生理食塩水が入った容器から該生理食塩水を一括で一気に上側の円筒内に注入することによって実施する。供給された生理食塩水は、測定対象シートを透過するか又は測定対象シートに吸収されて上側の円筒内からなくなる。生理食塩水の供給開始時から、生理食塩水の水面が測定対象シートの表面と同位置になるまでの時間を測定し、その時間を液透過時間とする。
【請求項2】
前記コアラップシートにおける、前記吸収性コアの肌対向面を被覆する部位は、前記方法で測定される低粘性液の液透過時間が0.5〜2.5秒である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記スリットは、該スリットの幅が前記吸収性コアの肌対向面側から非肌対向面側に向かって漸次増加している部分を有している請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記スリットは、前記吸収性コアを厚み方向に貫通しておらず、該スリットと前記コアラップシートにおける、該吸収性コアの肌対向面を被覆する部位との間に、該吸収性コアの形成材料が堆積している請求項1〜3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記表面シートの前記凸部内に空間が形成されている請求項1〜4の何れか一項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−143542(P2012−143542A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268099(P2011−268099)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】