説明

吸収性物品

【課題】歩行時等においても、肌当接部分にヨレ等の変形を生じず、当該ヨレ等によるモレが防止されるように構成された吸収性物品を提供する。
【解決手段】表面側に配置された透液性トップシート1と裏面側に配置された不透液性バックシート2との間に、吸収体3が介在されてなる吸収性物品において、前記透液性トップシートの肌当接面から吸収体にかけて圧搾溝が付与されている。前記圧搾溝は、排泄口当接部の前方及び後方に、幅方向中央線に対して略対称的な形状の第1前方圧搾部11及び第1後方圧搾部12をそれぞれ有する。前記第1前方圧搾部は、幅方向中央側から左斜め後ろ方向に延在する直線状の部分と、幅方向中央側から右斜め後ろ方向に延在する直線状の部分とを1つずつ有し、前記第1後方圧搾部は、幅方向中央側から左斜め前方向に延在する直線状の部分と、幅方向中央側から右斜め前方向に延在する直線状の部分とを1つずつ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血、おりもの、尿などの排泄物を吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド等の使い捨て吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、パンティライナー、おりものシート、失禁パッド等の使い捨て吸収性物品は、表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置されたバックシートとの間に吸収体が介在された構造が一般的である。この種の吸収性物品において、体液の表面上の拡散を防止する、吸収体にコシをもたせてヨレを防ぐ、吸収体中央部を隆起させて身体への密着性を高める、等の目的で、トップシートの肌当接面に圧搾溝(エンボス溝)を配する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される吸収性物品においては、圧搾溝は排泄口当接部の幅方向両側に長手方向に延在するように付与されており、幅方向外側から幅方向中央への力に対して、圧搾溝が更に深く折れることで当該力が吸収され、排泄口当接部にヨレや変形が生じない構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−295713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸収性物品は、特に昼用の生理用ナプキンにおいては、着用者は吸収性物品を装着したまま歩行等の運動をすることが通常である。歩行時においては、脚の動きにより生じる力は、幅方向外側から中央に向かう方向のみでなく、脚の交差時において、斜め前方から斜め後方、及び、斜め後方から斜め前方に生じる。その際、斜め方向にかかる力により、排泄口当接部分にヨレや変形が生じ、ヨレ等を生じた部分からの排泄液のモレが生じる恐れがあった。
本発明の課題は、歩行時等においても、排泄口当接部分にヨレ等の変形を生じず、当該ヨレ等によるモレが防止されるように構成された吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記課題を解決するための手段とそれらの作用効果を示す。
〔請求項1に係る発明〕
表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置された不透液性バックシートとの間に吸収体が介在されてなる吸収性物品であって、
前記透液性トップシートの肌当接面から吸収体にかけて圧搾溝が付与されており、
前記圧搾溝は、排泄口当接部の前方及び後方に、幅方向中央線に対して略対称的な形状の第1前方圧搾部及び第1後方圧搾部をそれぞれ有し、
前記第1前方圧搾部は、幅方向中央を通る長手方向に平行な線に対して35〜60度の角をなす、幅方向中央側から左斜め後ろ方向に延在する直線状の部分と、幅方向中央側から右斜め後ろ方向に延在する直線状の部分とを1つずつ有し、
前記第1後方圧搾部は、幅方向中央を通る長手方向に平行な線に対して35〜60度の角をなす、幅方向中央側から左斜め前方向に延在する直線状の部分と、幅方向中央側から右斜め前方向に延在する直線状の部分とを1つずつ有する、
ことを特徴とする、吸収性物品。
【0007】
(作用効果)
歩行時において、両脚の交差する動きによって、吸収性物品の斜め前方から斜め後方へ、及び、反対側の斜め後方から斜め前方へと力がかかることが想定される。このような力の方向に対し、交差するように排泄口当接部前方及び後方に圧搾溝を設けることにより、当該圧搾溝がより深く折れ曲がることで力が吸収され、排泄口当接部の形状を変形させることなく保つことができる。
ここでいう圧縮溝は、必ずしも熱エンボス等により連続的な線として付与されている必要はなく、破線状、ドット状に熱エンボス等が付与されていても他の部分より線状に凹んだ状態に維持されていればよい。
【0008】
〔請求項2に係る発明〕
前記第1前方圧搾部及び前記第1後方圧搾部は、それぞれ幅方向中央において左右に離間せずに一体的に付与されている、請求項1記載の吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
第1前方圧搾部と第1後方圧搾部は、それぞれ左右対称に長手方向に対して斜めに配されるが、これら左右の圧搾部を離間させず一体的に付与することにより、当該圧搾部の幅方向中央近傍において、排泄口当接部からの排泄液の前後方向への流れがブロックされ、前後方向の伝いモレを軽減、防止することが可能となる。
【0010】
〔請求項3に係る発明〕
前記第1前方圧搾部及び前記第1後方圧搾部は、それぞれ幅方向中央において左右に離間し、その離間距離が0.1〜4.0mmである、請求項1記載の吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
左右の第1前方圧搾部及び第1後方圧搾部を、それぞれ離間させても、その離間距離が0.1〜4.0mmであれば、斜め方向にかかる力を吸収するという当該圧搾部の効果を奏することは可能である。
【0012】
〔請求項4に係る発明〕
前記第1前方圧搾部の前端から、前記第1後方圧搾部の後端までの長さが、80〜120mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
特に排泄口当接部とその近傍として、長手方向に80〜120mmの範囲について、歩行時の脚の動きによるヨレや変形を防止することが好ましい。
【0014】
〔請求項5に係る発明〕
前記第1前方圧搾部及び前記第1後方圧搾部の幅方向の長さが、それぞれ35〜70mmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
排泄口当接部とその近傍として、幅方向に35〜70mmの範囲について、歩行時の脚の動きによるヨレや変形を防止することが好ましい。
【0016】
〔請求項6記載の発明〕
前記圧搾溝は、前記第1前方圧搾部より前方に第2前方圧搾部を有し、前記第2前方圧搾部より前方に第3前方圧搾部を有し、
前記第2前方圧搾部及び前記第3前方圧搾部は、それぞれ幅方向中央線に対して略対称的かつ一体的な線状であり、前方に向かって凸の部分を有する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
第1前方圧搾部より前方に、少なくとも2本の幅方向に延在する圧搾溝を設ける。排泄液は圧搾溝に沿って拡散するため、排泄口当接部より前方に流れた排泄液が当該圧搾部においてブロックされ、当該圧搾部より前方には流れにくくなる。また、圧搾溝を複数設けることにより、吸収体前方にコシをもたせることができ、これにより、前方のヨレを軽減することが可能となる。なお、前記の少なくとも2本の圧搾溝の幅方向の長さは、第1前方圧搾部と同程度の長さとすることが好ましい。
【0018】
〔請求項7記載の発明〕
前記圧搾溝は、前記第1後方圧搾部より後方に第2後方圧搾部を有し、前記第2後方圧搾部より後方に第3後方圧搾部を有し、
前記第2後方圧搾部及び前記第3後方圧搾部は、それぞれ幅方向中央線に対して略対称的かつ一体的な線状であり、後方に向かって凸の部分を有する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
第1後方圧搾部より後方に、少なくとも2本の幅方向に延在する圧搾部を設ける。排泄口当接部より後方に流れた排泄液が当該圧搾部においてブロックされ、当該圧搾部より後方には流れにくくなる。また、圧搾溝を複数設けることにより、吸収体後方にコシをもたせることができ、これにより、後方のヨレを軽減することが可能となる。前記の少なくとも2本の圧搾溝の幅方向の長さは、第1後方圧搾部と同程度の長さとすることが好ましい。
【0020】
〔請求項8記載の発明〕
前記第2前方圧搾部及び前記第3前方圧搾部の形状が、前記第2後方圧搾部及び第3後方圧搾部の形状と異なる、請求項7記載の吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
前方の複数の圧搾溝と後方の複数の圧搾溝について、その形状を異なるものとすることで、装着時に着用者が前後方向を容易に視認することができる。特に、昼用生理用ナプキンにおいて、吸収性物品自体の前後の形状の相違が微小であり、前後方向が一見して分かりにくい場合に有用である。
【0022】
〔請求項9記載の発明〕
前記圧搾溝は、排泄口当接部の幅方向外側の両側部に、長手方向に延在し、その長手方向中央近傍を頂点として幅方向中央側に湾曲する側方圧搾部を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0023】
(作用効果)
排泄口当接部の幅方向外側に圧搾溝を有することにより、幅方向外側から中央に向かってかかる脚圧を吸収し、排泄口当接部のヨレ、変形を防止することができる。
【0024】
〔請求項10記載の発明〕
前記第1前方圧搾部、第1後方圧搾部及び側方圧搾部が一体となって形成されている、請求項9記載の吸収性物品。
【0025】
(作用効果)
排泄口当接部を囲むように、圧搾溝が設けられることにより、排泄口当接部から全方向に流れる排泄液をブロックすることができる。また、排泄口当接部を圧搾溝で囲むことにより、当該部分が周囲より盛り上がった中高部を形成し、排泄口にフィットする形状とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上に示したように、本発明によれば、着用者の歩行時の脚の動きによって生じる斜め方向の力によっても、排泄口当接部の吸収体のヨレや変形を生じず、モレの生じにくい吸収性物品を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る吸収性物品の第1実施形態を示す上面図である。
【図2】図1のI−I矢視図である。
【図3】図1のII部分の拡大図である。
【図4】図1のIII部分の拡大図である。
【図5】第2実施形態を示す上面図である。
【図6】第3実施形態を示す上面図である。
【図7】他の実施形態を示す上面図である。
【図8】前方から見た着用者の股下の形状の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態を、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本発明において「前方」とは着用者が着用した際に、前側となる方であり、「後方」はその反対側を指す。「長手方向」とは、前後方向を指し、「幅方向」は前後方向に垂直な方向を指す。また、「上部」「上層」「表面」とは肌当接面側を指し、「下部」「下層」「裏面」とはその反対側を指すものとする。
【0029】
〔第1実施形態〕
図1は本実施形態に係る吸収性物品として、生理用ナプキンの実施形態の一例を示した展開図である。図2は図1のI−I線矢視図、図3は図1のII部分の拡大図、図4は図1のIII部分の拡大図である。生理用ナプキン10の基本構造は、不織布よりなる透液性のトップシート1、吸収体3及びポリエチレンシート等の不透液性シートからなるバックシート2がこの順に積層され、さらに側部にサイド不織布5,5が配された構造である。
【0030】
バックシート2としては、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。バックシート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0031】
透液性トップシート1としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。透液性トップシート1に多数の透孔を形成した場合には、排泄物が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0032】
トップシート1及びバックシート2は、吸収体3の前後方及び両側方で延出している。この延出部分において、トップシート1及びバックシート2は、ホットメルト等の接着剤やヒートシール等によって接合される。トップシート1及びバックシート2の延出は、前後方向中央部において幅方向に長くし、この長くなった部分で、肌着の裏側(外面側)に折り返されて止着される、いわゆるウィング状フラップWが構成されている。
【0033】
サイド不織布5としては、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いることができる。かかるサイド不織布5としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を18〜23g/m2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系や、パラフィン系等の撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0034】
トップシート1と吸収体3との間に不繊布等からなるセカンドシートを積層し、体液の拡散性向上を図ることもできる。さらに、両側部上に、体液の横モレ防止機能を有する起立ギャザーを設けてもよい。
【0035】
サイド不織布5は、図1および図2に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体3の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性バックシート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着されている。なお、サイド不織布5には、体液の横モレ防止機能を有する起立ギャザーを設けてもよい。
【0036】
バックシート2の裏面側には、通常、ショーツ等の肌着に対する止着部S1が設けられる。また、ウィングフラップWにも止着部S2が設けられる。この止着部S1,S2は、例えば、スチレン・ブタジエン共重合体やスチレン・オレフィン共重合体等からなる粘着剤を、前後方向に帯状に塗布して形成することができる。この止着部は、装着時において生理用ナプキン10を肌着に止着するためのものであるが、本生理用ナプキン10を需要者に提供する段階においては、個別包装のための剥離シートなどを止着しておくこともできる。この剥離シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリエチレンテレフタレートシート、ラミネート紙、等からなり、止着部に対して剥離可能とされる。
【0037】
吸収体3を構成する吸収体の素材としては、体液を吸収・保持し得るものであればいずれも使用でき、パルプ等の天然繊維の他、合成繊維を用いることもでき、または体液の吸収量を増やすために、吸水性ポリマーを用いたり、これらを適宜併用できる。合成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができ、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。吸収体中に混合される合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。なお、通常は、フラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。
【0038】
吸収体3は、その形状を保持するために、包装シート4で囲繞するのが望ましい。包装シート4は、透液性を有していれば、その素材は特に限定されないが、クレープ紙等の水解性シートを好適に使用できる。吸収体3はバックシート2に対して、ホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合される。なお、本実施形態に係る生理用ナプキン1においては、吸収体3が包装シート4で囲繞される場合は、吸収体3とバックシート2とは、包装シート4を介して間接的に接合される。
【0039】
本形態の生理用ナプキン10の表面側には、トップシート1と吸収体3を一体化させる、複数の圧搾溝が配されている。排泄口に接する部分を取り囲むように、第1前方圧搾部11、第1後方圧搾部12、及び二つの側方圧搾部13が設けられている。図示例においては、圧搾部11、12及び13が一体として付されている。前記圧搾部11、12及び13で囲繞された部分を、中央部CLとする。
【0040】
第1前方圧搾部11の拡大図を図3、第1後方圧搾部12の拡大図を図4に示す。第1前方圧搾部11、第1後方圧搾部12は、生理用ナプキン10の幅方向中央線に対して対称な形状をしており、少なくとも一部は、長手方向外側から中央側へ向かうにつれて幅方向中央側から幅方向外側へと延在する直線状の部分を有し、いわゆる「ヘ」の字型または「ハ」の字型を呈する。当該直線状の部分が幅方向中央線Lに対して成す角度θ1,θ2は、35〜60度とする。特に45〜60度が好ましい。
【0041】
第1前方圧搾部11、第1後方圧搾部12は、幅方向中央線において離間させず、左右一体とさせてもよく(いわゆる「へ」の字型)、左右を離間させてもよい(いわゆる「ハ」の字型)。左右を離間させる場合、圧搾部11、12の長さを一定以上確保するためには、その離間距離は0.1〜4.0mm程度とすることが好ましい。
【0042】
側方圧搾部13は、直線状または曲線状のいずれの形態をとってもよいが、幅方向中央に向かって凸な緩やかな曲線(高さ0.5〜4.0mmが好適)とすると、幅方向外側から中央に向かう力が圧搾部において効率よく吸収されるため好ましい。
【0043】
中央部CLの長手方向の長さは、80〜120mm、特に80〜100mmとすることが好ましい。また、中央部CLの幅方向の長さは、35〜70mm、特に45〜60mとすることが好ましい。中央部CLを圧搾溝で囲繞する場合、この部分の吸収体を二層構造としてもよい。
【0044】
圧搾溝は、中央部CLの外部にも付与されている。第1前方圧搾部11の外側前方には、前方に向かって凸な曲線状の第2前方圧搾部14、さら前方には、同様に前方に向かって凸な曲線状の第3前方圧搾部15が配されている。図示例においては、第1前方圧搾部11と第2前方圧搾部14が一体として形成されているが、離間させて設けてもよい。また、第3前方圧搾部15は、第1前方圧搾部11及び第2前方圧搾部14より離間しているが、第1前方圧搾部11及び/または第2前方圧搾部14と一体として形成されてもよい。
【0045】
第2前方圧搾部及び第3前方圧搾部の幅方向の長さは、35〜70mm、特に45〜60mmとすることが好ましい。図8に、前方から見た着用者の股下の構造の模式化した図を示す。排泄口当接部の前方に圧搾溝がない場合、若しくは、幅方向の長さの小さい圧搾溝のみが配されている場合、図8(A)に示すように、吸収性物品は前方から見て逆V字状となりやすく、この場合、幅方向両側部において、着用者の身体との間に大きな空隙を生じやすい。この空隙が、排泄液のモレの要因となりやすい。一方、排泄口当接部の前方に幅方向の長さの長い圧搾溝が配されている場合、圧搾溝の位置が身体の形状に沿わないため、やはり、逆V字状となりやすい(図8(B))。前方の圧搾溝を35〜70mmとした場合、吸収性物品の前方側部は、身体の形状に沿って、当該圧搾溝の側端部において折れ曲がりやすく、図8(C)に示すように、下部に開口を有するコの字状となる。この場合、吸収性物品と身体の間に空隙は小さなものとなり、モレのおそれを軽減することができる。特に、前方から排泄口当接部にかけて、同等の幅で吸収体が折れるように圧搾溝が設けられていると、吸収性物品がさらに身体の形状にフィットしやすくなり、好適である。
【0046】
第1前方圧搾部と第2前方圧搾部、第2前方圧搾部と第3前方圧搾部の前端同士の離間距離は、いずれも20〜30mm、特に20〜25mmとすることが好ましい。第2、第3前方圧搾部は、恥骨の丸みに沿うような形状とすることが好ましい。
【0047】
第1後方圧搾部12の外側後方には、後方に向かって凸な曲線状の第2後方圧搾部16が配されている。さらに後方において、後方に向かって凸な曲線状の第3後方圧搾部17が配されている。図示例において、第3後方圧搾部は、その両側端から長手方向前方に延在する圧搾溝と一体として付与されており、第2後方圧搾部16の三方を囲むように設けられている。図示例において、第1後方圧搾部、第2後方圧搾部、第3後方圧搾部はいずれも離間しているが、いずれか2つ、もしくは3つ全てを一体として付与してもよい。
【0048】
第2後方圧搾部及び第3後方圧搾部の幅方向の長さは、35〜70mm、特に45〜60mmとすることが好ましい。
【0049】
第1後方圧搾部と第2後方圧搾部、第2後方圧搾部と第3後方圧搾部の後端同士の離間距離は、いずれも20〜30mm、特に20〜25mmとすることが好ましい。第2、第3後方圧搾部は、臀部の動きに合わせて変形しやすい形状とすることが好ましい。
【0050】
図示例において、第2、第3前方圧縮部と、第2、第3後方圧縮部の形状は、異なる形状で付与されている。これにより、着用者が、装着時に前後の視認を容易に行うことができる、という利点を有する。
【0051】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の吸収性物品の例として、生理用ナプキン20の構造を図5に示す。
第2実施形態の吸収性物品は、第3前方圧搾部15のさらに前方に第4前方圧搾部18、第3後方圧搾部17のさらに後方に第4後方圧搾部19を有する。第4前方圧搾部18及び第4後方圧搾部19はともに、長手方向中央線に対して対称であり、かつそれぞれ前方、後方に凸な曲線状の圧縮溝である。
【0052】
このように、前方及び後方にさらに圧縮溝を設けることで、排泄液の表面拡散防止効果を高めることができ、また、吸収体にコシをもたせて形状保持性を高めることができる。一方で、より多く圧縮溝を設けることにより、吸収体が固くなり、着用感を損なってしまう、という問題がある。そのため、前方圧縮部、後方圧縮部の数は、それぞれ3つまたは4つとすることが好ましい。
【0053】
図示例においては、排泄口当接部の前方及び後方に、それぞれ4つの圧縮溝が設けられているが、前方が3つで後方が4つ、または、前方が4つで後方が3つとなるように配してもよい。
【0054】
〔第3実施形態〕
第3実施形態の吸収性物品の例として、生理用ナプキン30の構造を図6に示す。
第3実施形態において、第2、第3前方圧縮部14,15と、第2、第3後方圧縮部16,17とが同一の形状とされている。特に昼用の生理用ナプキンでは、前後の形状が全く同一であるタイプがあり、このようなタイプの生理用ナプキンにおいては、圧搾溝の形状に前後の差異を設けず、どちらを前としても装着できる形態としてもよい。
【0055】
〔その他の実施形態〕
図7(A)に示すように、中央部CLを形成する、圧搾部11、12及び13の間にそれぞれ3.0〜8.0mm程度の間隙を設けてもよい。
【0056】
図7(B)に示すように、第2、第3前方圧縮部、第2、第3後方圧縮部を、それぞれ他の圧縮部から離間させた構造としてもよい。
【0057】
図1〜9において、前後の形状がほぼ同一のウィングつき生理用ナプキンを図示例としているが、例えば夜用のウィングつき生理用ナプキンのように、前後の形状、長さが相違する場合においても、同様の圧縮溝を付与することで実施可能である。また、ウィングつきタイプに限らず、生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド等のいずれにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド等の使い捨て吸収性物品として利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10,20,30…生理用ナプキン、1…透液性トップシート、2…バックシート、3…吸収体、4…透液性シート、5…サイド不織布。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置された不透液性バックシートとの間に吸収体が介在されてなる吸収性物品であって、
前記透液性トップシートの肌当接面から吸収体にかけて圧搾溝が付与されており、
前記圧搾溝は、排泄口当接部の前方及び後方に、幅方向中央線に対して略対称的な形状の第1前方圧搾部及び第1後方圧搾部をそれぞれ有し、
前記第1前方圧搾部は、幅方向中央を通る長手方向に平行な線に対して35〜60度の角をなす、幅方向中央側から左斜め後ろ方向に延在する直線状の部分と、幅方向中央側から右斜め後ろ方向に延在する直線状の部分とを1つずつ有し、
前記第1後方圧搾部は、幅方向中央を通る長手方向に平行な線に対して35〜60度の角をなす、幅方向中央側から左斜め前方向に延在する直線状の部分と、幅方向中央側から右斜め前方向に延在する直線状の部分とを1つずつ有する、
ことを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記第1前方圧搾部及び前記第1後方圧搾部は、それぞれ幅方向中央において左右に離間せずに一体的に付与されている、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1前方圧搾部及び前記第1後方圧搾部は、それぞれ幅方向中央において左右に離間し、その離間距離が0.1〜4.0mmである、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第1前方圧搾部の前端から、前記第1後方圧搾部の後端までの長さが、80〜120mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第1前方圧搾部及び前記第1後方圧搾部の幅方向の長さが、それぞれ35〜75mmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記圧搾溝は、前記第1前方圧搾部より前方に第2前方圧搾部を有し、前記第2前方圧搾部より前方に第3前方圧搾部を有し、
前記第2前方圧搾部及び前記第3前方圧搾部は、それぞれ幅方向中央線に対して略対称的かつ一体的な線状であり、前方に向かって凸の部分を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記圧搾溝は、前記第1後方圧搾部より後方に第2後方圧搾部を有し、前記第2後方圧搾部より後方に第3後方圧搾部を有し、
前記第2後方圧搾部及び前記第3後方圧搾部は、それぞれ幅方向中央線に対して略対称的かつ一体的な線状であり、後方に向かって凸の部分を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記第2前方圧搾部及び前記第3前方圧搾部の形状が、前記第2後方圧搾部及び第3後方圧搾部の形状と異なる、請求項7記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記圧搾溝は、排泄口当接部の幅方向外側の両側部に、長手方向に延在し、その長手方向中央近傍を頂点として幅方向中央側に湾曲する側方圧搾部を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記第1前方圧搾部、第1後方圧搾部及び側方圧搾部が一体となって形成されている、請求項9記載の吸収性物品。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−157511(P2012−157511A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18974(P2011−18974)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】