説明

吸収性物品

【課題】座位時における漏れ防止性能に優れた吸収性物品を提供する。
【解決手段】上記課題は、股間部C2の前側及び後側にそれぞれ延出する前側部分F2及び後側部分B2を有し、排泄物を吸収する吸収体23が、前側部分F2から後側部分B2にかけて前後方向に延在され、吸収体23には、股間部C2又はその後側近傍における幅方向中央部を起点として、幅方向中央に沿って後側に延在する後側中央スリット42と、起点から鼠径部に沿うように斜め左前側及び斜め右前側に向かってそれぞれ延在する一対の側部スリット41とが形成されており、吸収体23の股間部C2が幅方向両側から収縮した装着状態で、一対の側部スリット41間の部分が左右から押し上げられて山状隆起部分50を形成するように構成された、パッドタイプ使い捨ておむつ200により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品においては漏れの形態が種々あるが、その一つとして装着者が座位の状態で排泄をしたときに股間部に吸収容量を超える排泄物が集中して漏れが発生する形態(以下、座位時の漏れともいう)がある。このような漏れの形態は、成人向けの使い捨ておむつにおける尿吸収の際に発生し易いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−538849号公報
【特許文献2】特開2008−548337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、このような座位時の漏れに対して有効な解決策が提供されていない。
そこで、本発明の主たる課題は、座位時における漏れ防止性能に優れた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
股間部の前側及び後側にそれぞれ延出する前側部分及び後側部分を有し、
排泄物を吸収する吸収体が、前側部分から後側部分にかけて前後方向に延在された、吸収性物品において、
前記吸収体には、股間部又はその後側近傍における幅方向中央部を起点として、幅方向中央に沿って後側に延在する後側中央スリットと、前記起点から鼠径部に沿うように斜め左前側及び斜め右前側に向かってそれぞれ延在する一対の側部スリットとが形成されており、
前記吸収体の股間部が幅方向両側から収縮した装着状態で、前記一対の側部スリット間の部分が左右から押し上げられて山状隆起部分を形成するように構成された、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
本発明者の知見によれば、座位時に排尿があると、吸収体により吸収された尿の後側への移動が、股間部という幅が狭く且つ上下左右から押し潰された部分を通じての移動となるため、後側への拡散が阻害され、その結果として股間部に吸収容量を超える排泄物が集中して漏れが発生する。これに対して、本発明では、装着時に山状隆起部分の傾斜に沿って液状排泄物が左右両側及び後方へ向かって流れ落ちつつ吸収された後、側部スリット及びこれに連なる後側中央スリットを拡散通路として股間部後方に拡散される。この際、側部スリットは鼠径部に沿う部分に設けられ、後側中央スリットは股間中央部に設けられるため、いずれも座位時において押し潰され難い。よって、排泄物は効率よく後側に拡散され、吸収体をより広範囲にわたり吸収に利用することができる。そしてその結果、座位時において股間部に吸収容量を超える排泄物が集中し難くなり、漏れ防止性能に優れるようになる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記吸収体には、前記起点から幅方向中央に沿って前側に延在する易折り曲げ部が形成されており、前記一対の側部スリット間の部分が左右から押し上げられるとき、前記易折り曲げ部を折目として山状隆起部分を形成するように構成された、請求項1記載の吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
このように折り曲げ部を設けることにより、装着時に自然に適切な形状となるため好ましい。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記吸収体には、前記一対の側部スリット間の領域における前端部と後端部との間に、幅方向中央部から斜め左後側及び斜め右後側に向かってそれぞれ延在する一対の中間部スリットが形成されており、
前記吸収体の股間部が幅方向両側から収縮した装着状態で、前記一対の側部スリット間の部分が左右から押し上げられて山状隆起部分を形成するとき、前記中間部スリットを境目としてそれより前側の部分がそれより後側の部分に対して内側に屈曲するように構成された、
請求項1又は2記載の吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
このように中間部スリットを設けることにより、山状隆起部分の機能を維持したまま山状隆起部分が身体表面に沿うように屈曲し、山状隆起部分のフィット性が向上するため好ましい。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記一対の側部スリットの前端は、前記吸収体の前端より後側に離間しており、
前記吸収体には、前記一対の側部スリットの前端部間にわたるように幅方向に延在する前端部スリットが形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
このような前端部スリットを設けることにより、山状隆起部分よりも前側に加わる力が山状隆起部分の形状に影響し難くなり、また山状隆起部分よりも前側のフィット性も向上するため好ましい。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記吸収体は少なくとも側部スリットを有する部分が上層及び下層からなる二層構造とされており、上層における吸収速度が下層における吸収速度よりも遅いものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
吸収体における上層の吸収速度を下層よりも遅くすると、前述した本発明の後方拡散作用がより一層のものとなるため好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり本発明によれば、座位時における漏れ防止性能に優れるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】パッドタイプ使い捨ておむつの展開状態の内面側を示す平面図である。
【図2】要部のみを示す平面図である。
【図3】図1のY−Y断面図である。
【図4】図1のZ−Z断面図である。
【図5】装着状態の平面図である。
【図6】装着状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面に示されるパッドタイプ使い捨ておむつの例を参照しながら詳説する。なお、本発明の用語のうち「股間部」とは使用時に身体の股間と対応させる部分を意味し、製品によって、図示形態のように物品の前後方向中央若しくはその近傍から前側の所定部位までの範囲であったり、物品の前後方向中央の所定範囲であったりするものである。図示形態のように、物品の前後方向中間あるいは吸収体の前後方向中間に幅の狭い括れ部分を有する場合は、「股間部」は括れ部分の最小幅部位を前後方向中央とする所定の前後方向範囲を意味する。また、「前側部分(腹側部分)」は股間部よりも前側の部分を意味し、「後側部分(背側部分)」は股間部よりも後側の部分を意味する。また吸収体における「スリット」とは、吸収体の表面から裏面に貫通する部分が所定の幅で表面に沿う方向に延在するものを意味する。
【0018】
図1〜図4は、本発明に係るパッドタイプ使い捨ておむつ例200を示している。このパッドタイプ使い捨ておむつ200は、股間部C2と、その前後両側に延在する前側部分F2及び後側部分B2とを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、おむつ全長L(前後方向長さ)は350〜700mm程度、おむつ全幅W1は130〜400mm程度(ただし、おむつの吸収面の幅より狭い)とすることができ、この場合における股間部C2の前後方向長さは10〜150mm程度、前側部分F2の前後方向長さは50〜350mm程度、及び後側部分B2の前後方向長さは50〜350mm程度とすることができる。
【0019】
パッドタイプ使い捨ておむつ200は、外面に外装シート32が積層された不透液性バックシート21の内面と、透液性トップシート22との間に、吸収体23が介在された基本構造を有している。
【0020】
吸収体23の裏面側には、不透液性バックシート21が吸収体23の周縁より若干食み出すように設けられている。不透液性バックシート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0021】
また、不透液性バックシート21の外面は、不織布からなる外装シート32により覆われており、この外装シート32は、所定の食み出し幅をもってバックシート21の周縁より外側に食み出している。外装シート32としては各種の不織布を用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0022】
吸収体23の表面側は、透液性トップシート22により覆われている。図示形態ではトップシート22の側縁から吸収体23が一部食み出しているが、吸収体23の側縁が食み出さないようにトップシート22の幅を広げることもできる。トップシート22としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0023】
トップシート22と吸収体23との間には、中間シート25を介在させるのが望ましい。この中間シート25は、吸収体23により吸収した尿の逆戻りを防止するために設けられるものであり、保水性が低く、且つ透液性の高い素材、例えばメッシュフィルム等を用いるのが望ましい。トップシート22の前端を0%としトップシート22の後端を100%としたとき、中間シート25の前端は0〜11%の範囲に位置しているのが好ましく、中間シート25の後端は92〜100%の範囲に位置しているのが好ましい。また、中間シート25の幅25wは吸収体23の幅W2の50〜90%程度であるのが好ましい。
【0024】
パッドタイプ使い捨ておむつ200の前後方向両端部では、外装シート32および透液性トップシート22が吸収体23の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。パッドタイプ使い捨ておむつ200の両側部では、外装シート32が吸収体23の側縁よりも外側にそれぞれ延在され、この延在部からトップシート22の側部までの部分の内面にはバリヤシート24の幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり貼り付けられ、吸収体23の存在しないサイドフラップ部SFを構成している。これら貼り合わせ部分は、図1では点模様で示されており、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより形成できる。これらエンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SFは、本発明の周縁部をなし、これらにより囲まれる部分が本発明の本体部をなす。外装シート32を設けない場合、外装シート32に代えて不透液性バックシート21をサイドフラップ部SFまで延在させ、サイドフラップ部SFの外面側を形成することができる。
【0025】
バリヤシート24の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0026】
バリヤシート24の幅方向中央側の部分24cはトップシート22上にまで延在しており、その幅方向中央側の端部には、細長状弾性部材24Gが前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この細長状弾性部材24Gとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0027】
また、両バリヤシート24,24は、幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたりおむつ内面(図示形態ではトップシート22表面および外装シート32内面)に貼り合わされて固定されるとともに、幅方向中央側の部分24cが、前後方向の両端部ではおむつ内面(図示形態ではトップシート22表面)に貼り合わされて固定され、かつ前後方向の両端部間ではおむつ内面(図示形態ではトップシート22表面)に固定されていない。この非固定部分は、図1に示されるように、おむつ内面(図示形態ではトップシート22表面)に対して起立可能なバリヤ部となる部分であり、その起立基端24bはバリヤシート24における幅方向外側の固定部分24xと内側の部分24cとの境に位置する。
【0028】
吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。吸収体23における繊維目付け及び高吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0〜400g/m2程度とするのが好ましい。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、必要に応じて、吸収体23はクレープ紙等の包装シート(図示せず)により包むことができる。また、吸収体23の形状は、相対的に前側の部分が後側の部分よりも幅広な帯状、あるいは長方形状、台形状等、適宜の形状とすることができる。
【0029】
吸収体23は、股間部C2を含む前後方向中間の所定部分が幅の狭い括れ部分23nとして形成されている。この括れ部分23nの最小幅W3は、括れ部分23nの前後に位置する非括れ部分の幅(吸収体23の全幅)W2の50〜65%程度であるのが好ましい。また、おむつ前端を0%としおむつ後端を100%としたとき、括れ部分23nの前端は10〜25%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの後端は40〜65%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの最小幅W3となる部位(最小幅部位)は25〜30%の範囲に位置しているのが好ましい。
【0030】
特徴的には、吸収体23には、股間部C2又はその後側近傍における幅方向中央部を起点として、幅方向中央に沿って後側に延在する後側中央スリット42と、起点から鼠径部に沿うように斜め左前側及び斜め右前側に向かってそれぞれ延在する一対の側部スリット41とが形成されており、図5及び図6に示すように、吸収体23の股間部C2が幅方向両側から収縮した装着状態で、一対の側部スリット41間の部分が左右から押し上げられて山状隆起部分50を形成するように構成されている。なお、図5及び図6においては、各スリット41〜45と対応する溝部(各スリット41〜45に沿って折れ曲がることにより形成される溝状の部分)に点線の引出線でスリットの符号を付している。
【0031】
側部スリット41の形状は、直線状とする他、幅方向外側又は中央側に膨出する弧状等の曲線状とするのも好ましい形態である。側部スリット41の前端は吸収体23の側縁から幅方向中央側にある程度(例えば吸収体23の股間部C2の幅の10〜25%程度)離間しているのが好ましい。また、側部スリット41の前後方向範囲は適宜定めることができるが、おむつ全長Lの15〜50%程度とするのが好ましく、特に起点を股間部C2の中央部又はその近傍としてそこから前側部分F2にかけて延在させるのが好ましい。さらに、側部スリットの傾斜角度θ1(側部スリット41の前後方向に対する鋭角側傾斜角度)は、15〜45度の範囲内とするのが好ましい。
【0032】
後側中央スリット42は図示形態のように直線状とする他、後側に向かうに連れて幅が拡大する三角形状等とするのも好ましい形態である。後側中央スリット42の前後方向範囲は適宜定めることができるが、おむつ全長Lの40〜70%程度とするのが好ましく、特に起点を股間部C2の中央部又はその近傍としてそこから後側部分B2にかけて延在させるのが好ましい。
【0033】
山状隆起部分50はそのままでは下腹部にフィットし難い。そこでこれを解決するために、図示形態の吸収体23のように、一対の側部スリット41間の領域における前端部と後端部との間に、幅方向中央部から斜め左後側及び斜め右後側に向かってそれぞれ延在する一対の中間部スリット43が形成され、吸収体23の股間部C2が幅方向両側から収縮した装着状態で、一対の側部スリット41間の部分が左右から押し上げられて山状隆起部分50を形成するとき、中間部スリット43を境目としてそれより前側の部分がそれより後側の部分に対して内側に屈曲するように構成されているのは好ましい。このように中間部スリット43を設けることにより、図5及び図6に示すように、山状隆起部分50の機能を維持したまま山状隆起部分50が身体表面に沿うように屈曲し、山状隆起部分50のフィット性が向上する。
【0034】
中間部スリット43の形状は、直線状とする他、幅方向外側又は中央側に膨出する弧状等の曲線状とするのも好ましい形態である。中間部スリット43の後端は側部スリット41に繋げる他、側部スリット41の内側に離間させたり、側部スリット41を突き抜けてその外側に位置させたりすることができるが、吸収体23の側縁から幅方向中央側にある程度(例えば吸収体23の股間部C2の幅の20〜30%程度)離間しているのが好ましい。また、中間部スリット43の前後方向範囲は適宜定めることができるが、おむつ全長Lの30〜45%程度とするのが好ましく、特に股間部C2と前側部分F2との境界又はその近傍から股間部C2にかけて延在させるのが好ましい。さらに、中間部スリットの傾斜角度θ2(中間部スリット43の前後方向に対する鋭角側傾斜角度)は、30〜60度の範囲内とするのが好ましい。
【0035】
また、山状隆起部分50からその前側にかけて吸収体23が連続していると、山状隆起部分50の前側に加わる力が山状隆起部分50の形状に影響するか、或いは山状隆起部分50の前側部分F2が下腹部にフィットし難くなるおそれがある。そこでこれを解決するために、図示形態の吸収体23のように、一対の側部スリット41の前端は、吸収体23の前端より後側に離間しており、吸収体23には、一対の側部スリット41の前端部間にわたるように幅方向に延在する前端部スリット44が形成されているのは好ましい。これにより、図5及び図6に示すように、山状隆起部分50の前側に加わる力が山状隆起部分50の形状に影響し難くなり、また山状隆起部分50よりも前側の部分のフィット性も向上するようになる。
【0036】
前端部スリット44の形状は、図示例のように前側に膨出する弧状等の曲線状とする他、前側に突出する屈曲線状、幅方向に沿う直線状とするのも好ましい形態である。前端部スリット44の両端は側部スリット41に繋げる他、側部スリット41の内側に離間させたり、側部スリット41を突き抜けてその外側に位置させたりすることができるが、吸収体23の側縁から幅方向中央側にある程度(例えば吸収体23の股間部C2の幅の10〜25%程度)離間しているのが好ましい。
【0037】
さらに、装着時に適切な形状の山状隆起部分50を自然に得るために、図示の吸収体23のように、起点から幅方向中央に沿って前側に延在する前側中央スリット45が形成されており、一対の側部スリット41間の部分が左右から押し上げられるとき、前側中央スリット45を折目として山状隆起部分50を形成するように構成するのは好ましい形態である。この前側中央スリット45に代えてエンボス加工による圧縮溝を吸収体23の表面又は裏面に形成することにより易折り曲げ部を構成しても良い。
【0038】
前側中央スリット45は図示形態のように直線状とする他、前側に向かうに連れて幅が拡大する三角形状等とするのも好ましい形態である。前側中央スリット45の前後方向範囲は適宜定めることができるが、おむつ全長Lの10〜25%程度とするのが好ましく、特に起点を股間部C2の中央部又はその近傍としてそこから前側部分F2にかけて延在させるのが好ましい。
【0039】
以上のように構成されたパッドタイプ使い捨ておむつ200においては、座位時に排尿があると、山状隆起部分50の傾斜に沿って液状排泄物が左右両側及び後方へ向かって流れ落ちつつ吸収された後、側部スリット41及びこれに連なる後側中央スリット42を拡散通路として股間部C2後方に拡散される。この際、側部スリット41は鼠径部に沿う部分に設けられ、後側中央スリット42は股間中央部に設けられるため、いずれも座位時において押し潰され難い。よって、排泄物は効率よく後側に拡散され、吸収体23をより広範囲にわたり吸収に利用することができる。そしてその結果、座位時において股間部C2に吸収容量を超える排泄物が集中し難くなり、漏れ防止性能に優れるようになる。
【0040】
他方、このような効果の観点から、吸収体23における少なくとも側部スリット41を有する部分、好ましくは全スリットを有する部分を上層及び下層からなる二層構造とし、上層における吸収速度が下層における吸収速度よりも遅くするのも好ましい形態である。このように、吸収体23における上層の吸収速度を下層よりも遅くすると、前述した本発明の後方拡散作用がより一層のものとなる。上層及び下層間に吸収速度差を形成する手法は適宜定めることができるが、例えば、上層及び下層にそれぞれ高吸収性ポリマーを含有させるとともに、上層における高吸収性ポリマーとして下層における高吸収性ポリマーよりも吸収速度の遅いものを用いる、といったことが考えられる。なお、なお、上層に用いる高吸収性ポリマーの吸収速度としては、JIS K 7224−1996に規定される「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法」に規定される吸水速度(g/g/s)で、20〜40(g/g/s)程度のものが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、パッドタイプ、パンツタイプ若しくはテープタイプ使い捨ておむつ、または生理用ナプキン等、吸収性物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0042】
21…不透液性バックシート、22…透液性トップシート、23…吸収体、23n…括れ部分、24…バリヤシート、32…外装シート、41…側部スリット、42…後側中央スリット、43…中間部スリット、44…前端部スリット、45…前側中央スリット、50…山状隆起部分、200…パッドタイプ使い捨ておむつ、C2…股間部、F2…前側部分、B2…後側部分、L…おむつ全長、W1…おむつ全幅、W2…吸収体全幅、θ1…側部スリットの傾斜角度、θ2…中間部スリットの傾斜角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
股間部の前側及び後側にそれぞれ延出する前側部分及び後側部分を有し、
排泄物を吸収する吸収体が、前側部分から後側部分にかけて前後方向に延在された、吸収性物品において、
前記吸収体には、股間部又はその後側近傍における幅方向中央部を起点として、幅方向中央に沿って後側に延在する後側中央スリットと、前記起点から鼠径部に沿うように斜め左前側及び斜め右前側に向かってそれぞれ延在する一対の側部スリットとが形成されており、
前記吸収体の股間部が幅方向両側から収縮した装着状態で、前記一対の側部スリット間の部分が左右から押し上げられて山状隆起部分を形成するように構成された、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体には、前記起点から幅方向中央に沿って前側に延在する易折り曲げ部が形成されており、前記一対の側部スリット間の部分が左右から押し上げられるとき、前記易折り曲げ部を折目として山状隆起部分を形成するように構成された、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体には、前記一対の側部スリット間の領域における前端部と後端部との間に、幅方向中央部から斜め左後側及び斜め右後側に向かってそれぞれ延在する一対の中間部スリットが形成されており、
前記吸収体の股間部が幅方向両側から収縮した装着状態で、前記一対の側部スリット間の部分が左右から押し上げられて山状隆起部分を形成するとき、前記中間部スリットを境目としてそれより前側の部分がそれより後側の部分に対して内側に屈曲するように構成された、
請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記一対の側部スリットの前端は、前記吸収体の前端より後側に離間しており、
前記吸収体には、前記一対の側部スリットの前端部間にわたるように幅方向に延在する前端部スリットが形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は少なくとも側部スリットを有する部分が上層及び下層からなる二層構造とされており、上層における吸収速度が下層における吸収速度よりも遅いものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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