説明

吸引対象媒体捕集装置

【課題】吸引対象媒体の拡散を適切に防いで吸引対象媒体を確実に捕集することが可能であると共に、エネルギ効率良好に運転することができて省エネルギ化やCO2の排出抑制を促進することが可能な吸引対象媒体捕集装置を提供する。
【解決手段】給気装置1の給気面Aと吸引装置2の吸引面Bとを、局所的な吸引対象媒体Xの発生源Pを挟んで設置して、給気面からの給気を吸引面で吸引して吸引対象媒体を捕集するようにした吸引対象媒体捕集装置であって、給気面の中央部分aからの中央給気fを少なくとも横方向両側から取り囲むエアカーテンを形成するために、給気面の中央部分外側に位置する外端部分bからの外側給気Fの風速を、中央給気の風速よりも速く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引対象媒体の拡散を適切に防いで吸引対象媒体を確実に捕集することが可能であると共に、エネルギ効率良好に運転することができて省エネルギ化やCO2 の排出抑制を促進することが可能な吸引対象媒体捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中へ拡散することが好ましくない粉塵や悪臭、有害物質などの吸引対象媒体が局所的に発生する工事現場等では、いわゆるプッシュプル型の換気装置が用いられ、この換気装置で吸引対象媒体を吸引捕集するようにしている。この種の換気装置として、特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1の「プッシュプル型換気装置」は、プッシュプル型換気装置におけるプッシュフードから送られる空気流のより効率的な吸気を行う手段を提供することを課題として、プッシュプル型換気装置において、プルフードの開口面の中央部の吸引風速よりも外周部の吸引風速を大きくする。プルフードに内部フードと外周部フードを設け、外周部フードの吸引風速を内部フードの吸引風速よりも大きくする。内部フードが気流を吸引する分配口と気流を吸引しない遮蔽面とをもち、外周部フードに気流を吸引する分配口をその外周に沿って設けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−3156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プッシュプル型換気装置では、吸引対象媒体を確実に回収するために、プルフードでの吸引風量を、プッシュフードからの給気風量よりも数倍から十数倍大きく設定することが要求される。言い換えれば、単位時間当たりの風量、すなわち風速を、プッシュフードよりもプルフードで大きく設定することが要求される。これは、プッシュフードからの給気風速が大きいと、給気に煽られて吸引対象媒体が拡散してしまうからである。このため、プッシュフードから小さな風速の穏やかな気流で給気し、プルフードで強力に吸引するようにしていた。
【0006】
しかしながら、プルフードの吸引風量、吸引風速を徒に大きくすることは、エネルギロスが大きく、省エネルギ化やCO2の排出抑制の観点から、好ましいものではなかった。
【0007】
また、給気風速が弱いため、プッシュプル型換気装置の側方等から吸引対象媒体の発生源に向かって横風などが吹き込むと、給気の気流が乱されて吸引対象媒体が拡散してしまい、プルフードの吸引風量を大きくしても、吸引対象媒体を十分かつ確実に捕集できないおそれがあった。
【0008】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、吸引対象媒体の拡散を適切に防いで吸引対象媒体を確実に捕集することが可能であると共に、エネルギ効率良好に運転することができて省エネルギ化やCO2 の排出抑制を促進することが可能な吸引対象媒体捕集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる吸引対象媒体捕集装置は、給気装置の給気面と吸引装置の吸引面とを、局所的な吸引対象媒体の発生源を挟んで設置して、該給気面からの給気を該吸引面で吸引して吸引対象媒体を捕集するようにした吸引対象媒体捕集装置であって、上記給気面の中央部分からの中央給気を少なくとも横方向両側から取り囲むエアカーテンを形成するために、該給気面の該中央部分外側に位置する外端部分からの外側給気の風速を、中央給気の風速よりも速く設定することを特徴とする。
【0010】
前記給気面からの総給気量よりも、前記吸引面からの総吸引量を多く設定することを特徴とする。
【0011】
前記給気面には多数の給気孔が形成され、該給気孔の開口率が、前記中央部分よりも前記外端部分で大きく設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる吸引対象媒体捕集装置にあっては、吸引対象媒体の拡散を適切に防いで吸引対象媒体を確実に捕集することができると共に、エネルギ効率良好に運転することができて省エネルギ化やCO2 の排出抑制を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る吸引対象媒体捕集装置の好適な一実施形態を示す給気装置の前面図である。
【図2】図1の給気装置に対で用いられる吸引装置の前面図である。
【図3】図1及び図2に示した給気装置及び吸引装置の背面図である。
【図4】図1及び図2に示した給気装置及び吸引装置の側面図である。
【図5】図1及び図2に示した給気装置及び吸引装置を備える吸引対象媒体捕集装置の作用を説明する説明図である。
【図6】図1の給気装置の変形例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る吸引対象媒体捕集装置の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係る吸引対象媒体捕集装置は図1〜図5に示すように、給気面Aを備える給気装置1と、吸引面Bを備える吸引装置2とから主に構成される。
【0015】
給気装置1は図1、図3及び図4に示すように、車輪3を有して走行自在なスタンド4に搭載される給気フード5と、可搬式のテーブル6上に設置される給気送風機7とから構成される。スタンド4の脚及びテーブル6の脚は、高さ調整可能にスライド式で構成される。
【0016】
給気フード5は、正面外形輪郭が長方形状で、奥行きが浅い直方体状のフレームの前面にメッシュ8を被せ、これ以外の周面には風を通さない帆布15を被せて、これらでフレーム全体を覆うことにより構成される。これにより、給気フード5は、可搬性及び組立性良好に構成される。メッシュ8で覆った給気フード5の前面が給気面Aとされる。メッシュ8により、給気面Aには多数の給気孔が形成される。給気フード5の後面中央部には、帆布15に穴を穿つことにより、開口部9が形成される。
【0017】
給気面Aにおいて、メッシュ8のサイズは、給気面Aの中央部分aで細かく、給気面Aの中央部分a外側に位置する外端部分bで粗く設定される。詳細には本実施形態にあっては、給気面Aの左右幅方向で、幅方向中央の中央部分aが最も細かいメッシュ8とされる。中央部分aの左右両側の外端部分bはそれぞれ、左右に2つの部分に分けられ、中央部分aに隣接する内側外端部分b1は、中央部分aよりも粗いメッシュ8とされ、左右端部となる外側外端部分b2は、内側外端部分b1よりもさらに粗いメッシュ8とされる。
【0018】
図示例にあっては、左右方向にメッシュ8の粗さを変えているが、必要に応じて、給気面Aの上下方向に中央部分aから外端部分bへ向けて、細かいメッシュ8から粗いメッシュ8に変えるようにしても良い。メッシュ8のサイズ設定により、単位面積当たりの給気孔の開口面積(開口率)が、給気面Aの中央部分aよりも外端部分bで大きく設定される。本実施形態にあっては、メッシュサイズを3段階で変えているが、2段階で変えても、あるいは4段階以上変えるようにしても良い。
【0019】
給気フード5において、その前面となる給気面A以外の、後面や上下及び左右の面は、給気漏れを少なくするために、メッシュサイズは細かく設定される。
【0020】
テーブル6上の給気送風機7の送風口は、フレキシブルなダクト10を介して、給気フード5の開口部9に連結される。これにより、給気送風機7から給気が給気フード5へ送り込まれ、給気面Aから給気F,fが吹き出される。
【0021】
給気フード5から吹き出される給気F,fは、開口率の小さな給気面Aの中央部分aで風速が遅く緩やかな気流となり、内側外端部分b1で風速が速く強い気流となり、外側外端部分b2で最も風速が速く強い気流となる。外端部分bからの外側給気Fは、中央部分aからの中央給気fを、少なくとも横方向左右両側から挟んで取り囲むエアカーテンを形成する。開口率を多段階に変化させることで、給気風速を、給気面Aの中央部分aから外端部分bへ向かって多段階に順次増速するようにしても良い。
【0022】
吸引装置2は、給気装置1とほぼ同様に構成される。吸引装置2は図2〜図4に示すように、車輪3を有して走行自在なスタンド4に搭載される吸引フード12と、可搬式のテーブル6上に設置される吸引送風機11とから構成される。スタンド4の脚及びテーブル6の脚は、高さ調整可能にスライド式で構成される。
【0023】
吸引フード12は、正面外形輪郭が長方形状で、奥行きが浅い直方体状のフレームの前面にメッシュ13を被せ、これ以外の周面には風を通さない帆布15を被せて、これらでフレーム全体を覆うことにより構成される。これにより、吸引フード12も、可搬性及び組立性良好に構成される。メッシュ13で覆った吸引フード12の前面が吸引面Bとされる。メッシュ13により、吸引面Bには多数の吸気孔が形成される。吸引フード12の後面中央部には、帆布15に穴を穿つことにより、開口部9が形成される。
【0024】
吸引フード12では、吸引効率を高くするために、吸引面B全面において、メッシュサイズは粗く設定される。
【0025】
テーブル6上の吸引送風機11の吸引口は、フレキシブルなダクト10を介して、吸引フード12の開口部9に連結される。これにより、吸引送風機11は、吸引フード12から空気を吸引する。吸引送風機11には、吐出口側に集塵バッグなどのフィルタ14が設けられ(図5参照)、フィルタ14は、吸引フード12から吸引する空気中に含まれる粉塵や悪臭、有害物質など吸引対象媒体Xを捕捉したり吸着するなどして捕集する。吸引送風機11の能力を給気送風機7の能力よりも大きくすることで、吸引量を給気量よりも多く設定することができる。
【0026】
図5に示すように、これら給気装置1の給気面Aと吸引装置2の吸引面Bとは、局所的に吸引対象媒体Xが発生する工事現場などにおいて、吸引対象媒体Xの発生源Pを挟んで向かい合わせで設置される。給気面Aからの給気F,fを吸引面Bで吸引することで、吸引対象媒体Xは吸引装置2のフィルタ14に捕集される。
【0027】
次に、本実施形態に係る吸引対象媒体捕集装置の作用について説明する。図5に示すように、給気送風機7及び吸引送風機11を運転すると、給気面Aから給気F,fが吹き出し、吸引面Bで給気F,fを吸引する。給気面Aからの給気F,fのうち、外端部分bからの外側給気Fの風速、風量は、中央部分aからの中央給気fの風速、風量よりも大きなものとなる。
【0028】
中央給気fは、遅く緩やかな気流で、発生源Pから拡散しようとする吸引対象媒体Xを随伴し、吸引面Bに向かって押し流す。他方、外側給気Fは、速くて強い気流で、吸引対象媒体Xを随伴する中央給気fを、少なくとも横方向左右両側から取り囲むエアカーテンを形成する。
【0029】
エアカーテンを形成する外側気流Fは、外側周囲の空気との摩擦により、吸引フード12近くに到達するまでに弱まっていく一方で、吸引フード12近くでは、吸引送風機11による吸引が支配的となる。従って、吸引装置2の吸引面Bでは、吸引対象媒体Xを随伴する中央給気f共々、外側給気Fもおおよそ吸引される。中央給気fで運ばれる吸引対象媒体Xは、吸引フード12から吸引送風機11を経てフィルタ14へ送り込まれ、フィルタ14は吸引対象媒体Xを捕集する。
【0030】
以上説明した本実施形態に係る吸引対象媒体捕集装置にあっては、外側給気Fで形成する風速の速いエアカーテンにより、吸引対象媒体Xをその内部に包囲することができ、吸引対象媒体Xが拡散して外部へ逸散することを効果的に防止することができる。従って、給気装置1の給気面Aや吸引装置2の吸引面Bを小型化して、装置全体を軽量化することができる。
【0031】
また、外側給気Fのエアカーテンで中央給気fを取り囲むようにしたので、中央給気fを遅く穏やかな層流状態の気流として適切に設定することができ、吸引対象媒体Xを効率よく吸引装置2の吸引面Bへ随伴することができる。さらに、エアカーテンにより、給気面Aと吸引面Bとの間に外部から吹き込む横風などを適切に遮断することができ、この面からも、吸引対象媒体Xの拡散を防止することができる。従って、吸引対象媒体Xの拡散を適切に防いで当該吸引対象媒体Xを確実に捕集することができる。
【0032】
また、給気装置1による給気F,fを有効に利用して吸引対象媒体Xを吸引装置2に運ぶことができるので、吸引装置2の吸引風量や吸引風速を、給気風量や給気風速よりも数倍から十数倍大きく設定するといったように、徒に大きくすることなく、吸引対象媒体Xを確実に捕集することができ、エネルギロスを押さえて運転することができて、これによりエネルギ効率を高めて省エネルギ化やCO2の排出抑制を促進することができる。
【0033】
給気送風機7の能力よりも、吸引送風機11の能力を高く設定して、給気面Aからの総給気量よりも吸引面Bからの総吸引量を多く設定することで、吸引対象媒体Xを適切に捕集することができる。
【0034】
給気孔の開口率を給気面Aの中央部分aよりも外端部分bで大きく設定することで、簡単な構造で的確にエアカーテンを形成することができる。
【0035】
図6には、上記実施形態の変形例が示されている。給気面Aを中央部分aと外端部分bとに区分けし、中央部分aに給気風量の小さな第1給気送風機7aを接続し、外端部分bに給気風量の大きな第2給気送風機7bを接続して、これら給気送風機7a,7bでエアカーテンを形成する外側給気Fと、吸引対象媒体Xを随伴する中央給気fとを給気面Aから吹き出すように構成しても良い。この場合、中央部分aと外端部分bの給気孔の開口率は、適宜に設定すればよい。このような変形例にあっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0036】
上記実施形態にあっては、吸引面Bは均一なメッシュとしたが、給気面Aと同様に構成して、吸引面Bの外端部分における吸引作用を強く設定してもよいことはもちろんである。あるいは、吸引面Bの中央部分における開口率を大きく設定して、吸引作用を強く設定するようにしても良い。また、反対に、開口部9に面する部分の開口率を小さく設定することで、吸引面B全体で吸引作用が均等になるようにしても良い。なお、外側給気Fと中央給気fの風速、風量は、吸引対象媒体Xの性質によって決定されるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 給気装置
2 吸引装置
A 給気面
a 給気面の中央部分
B 吸引面
b 給気面の外端部分
F 外側給気
f 中央給気
P 吸引対象媒体の発生源
X 吸引対象媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気装置の給気面と吸引装置の吸引面とを、局所的な吸引対象媒体の発生源を挟んで設置して、該給気面からの給気を該吸引面で吸引して吸引対象媒体を捕集するようにした吸引対象媒体捕集装置であって、上記給気面の中央部分からの中央給気を少なくとも横方向両側から取り囲むエアカーテンを形成するために、該給気面の該中央部分外側に位置する外端部分からの外側給気の風速を、中央給気の風速よりも速く設定することを特徴とする吸引対象媒体捕集装置。
【請求項2】
前記給気面からの総給気量よりも、前記吸引面からの総吸引量を多く設定することを特徴とする請求項1に記載の吸引対象媒体捕集装置。
【請求項3】
前記給気面には多数の給気孔が形成され、該給気孔の開口率が、前記中央部分よりも前記外端部分で大きく設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸引対象媒体捕集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−208884(P2011−208884A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77395(P2010−77395)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】