説明

吸引式の害虫駆除器

【課題】 蓋の引き起こしに要する電力の消費をなくし、また横向きや逆さの状態で吸引機のスイッチを切ったときでも、蓋を確実に倒伏できるようにする。
【解決手段】 本体部1と取っ手2とで形成する。電気式吸引機3を本体部1の排気口1b側に設ける。虫4の収納箇所5を、取っ手2の下端に設ける。取っ手2の入口2aを倒伏時に閉塞し、スイッチ6を押すと引き起こされて取っ手2の入口2aを開くと共に、本体部1のエアーの流路を塞いで虫4が排気口1b側に流れるのを防止するフィルター状の蓋7を備える。蓋7を起伏動作させる動作機構9を、スイッチ6を押すと横軸10を中心に一定角度づつ回転して蓋7の引き起こしと引き起こし状態の解除を交互に行なう回転部材11と、蓋7の引き起こし状態が解除されると取っ手2の入口2aを閉塞するよう蓋7を倒伏させる弾性部材12とで形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片手で持てる大きさ、重さに形成されている、携帯型ハンディータイプの害虫駆除器に関し、更に詳しくは吸引式の害虫駆除器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の害虫駆除器としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
この従来品は、先端が吸い込み口に後端が排気口に形成されている本体部と、この本体部を支持する取っ手とで形成されている。
【0003】
そして、吸い込み口から外気を吸引する電気式吸引機が本体部の排気口側に設けられ、この吸引機で吸い込み口から吸引した虫の収納箇所が本体部内に連通する上記取っ手の下端に設けられている。
またこの従来品は、フィルター状の蓋を備え、この蓋は使用者が取っ手を持ってスイッチを押すと引き起こされて上記の取っ手の入口を開くと共に、本体部のエアーの流路を塞いで虫が排気口側に流れるのを防止するよう形成されている。
【0004】
而して、この従来品は、蓋の引き起こし動作を、電磁石と永久磁石との組み合わせで電気的に行なう仕組みであった。また蓋を倒伏させて取っ手の入口を閉塞する場合は、永久磁石同士の反発力と蓋の自重を利用する構造であった。
【0005】
従って、この従来品の場合は、蓋の引き起こしに電力を消費しただけではなく、使用者が取っ手を横向きや逆さにした状態で虫を吸引し、その姿勢で吸引機のスイッチを切ると、蓋を自重で落下させることができなかった。
そのため、この従来品を使用すると、使用態様によっては取っ手の入口を閉塞できず、その結果、吸引した虫が収納箇所から逃げ出すおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4649540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来品の問題点に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、蓋の引き起こしを機械的手段で行なうことによって蓋の引き起こしに要する電力の消費をなくし、また横向きや逆さの状態で吸引機のスイッチを切ったときでも、蓋を確実に倒伏できるようにし、捕獲した虫の逃げ出しを防止できるよう形成した吸引式の害虫駆除器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような技術的手段を採る。
即ち本発明は、図1等に示されるように、先端が吸い込み口1aに後端が排気口1bに形成されている筒状の本体部1と、この本体部1を支持する筒形の取っ手2とで形成され、上記の吸い込み口1aから外気を吸引する電気式吸引機3が本体部1の排気口1b側に設けられ、この吸引機3で吸い込み口1aから吸引した虫4の収納箇所5が本体部1内に連通する上記取っ手2の下端に設けられ、また取っ手2の本体部1内に開口する入口2aを倒伏時に閉塞し、取っ手2を持ってスイッチ6を押すと引き起こされて取っ手2の入口2aを開くと共に、本体部1のエアーの流路を塞いで虫4が排気口1b側に流れるのを防止するフィルター状の蓋7を備えて形成されている吸引式の害虫駆除器であって、上記の蓋7を起伏動作させる動作機構9が、上記のスイッチ6を押すと蓋7の回転軸7aと平行状の横軸10を中心に一定角度づつ回転して蓋7の引き起こしと引き起こし状態の解除を交互に行なう回転部材11と、蓋7の引き起こし状態が解除されると取っ手2の入口2aを閉塞するよう蓋7を倒伏させる弾性部材12とで形成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本発明の場合、回転部材11の回転角度は、蓋7の引き起こし角度等によって適宜選定されるので良い。また弾性部材12は、蓋7を強制的に倒伏させることができるものであれば、バネには限られず、またその取り付け位置も任意である。弾性部材12としては、具体的にはコイルバネ、板バネ、巻きバネ、ゴム紐等がある。
【0010】
而して本発明は、回転部材11が、スイッチ6を押す度に60度ごと同方向に回転可能に形成されていると共に、この回転部材11の動きを蓋7に伝える係合部11aが横軸10を中心に120度おきに放射状に突き出されて形成されており、この係合部11aと係合する蓋7の係合箇所7bが回転軸7aの周りに蓋7と一体状に形成されているのが好ましい(請求項2)。
【0011】
なぜならこれによると、蓋7を適度の角度で、且つ反応良く引き起こすことができるからである。本発明の場合、回転部材11の回転角度は、例えば90度づつ断続回転させて蓋7との係合、係合解除を行ない、係合部11aが180度回ると蓋7を引き起こすよう形成したり、逆に回転角度を60度より小さく選定するのでも良い。
【0012】
しかし、これらの場合は、蓋7が大きく引き起こされて虫4をスムーズに取っ手2の入口2aに誘導できなかったり、また蓋7の引き起こし角度が小さくなって本体部1内のエアーの流路を狭める、という問題が生じる。またスイッチ6を押したときの蓋7の応答性が、例えば悪くなる、という問題がある。これらの問題を、請求項2記載の本発明は、解消できるものである。
【0013】
また本発明は、図9、図10に示されるように、回転軸7aに導電性部材15が軸方向に延びて凸段差状に設けられ、この回転軸7aの傍らに、蓋7が引き起こされると導電性部材15に接触して吸引機3の駆動回路を閉じる一対の端子片16が起立状に設けられているのが好ましい(請求項3)。
【0014】
なぜならこれによると、蓋7の引き起こしを利用して簡単な構造で吸引機3を駆動させることができるからである。またこれによると、スイッチ6を1回押せば、蓋7の引き起こしと吸引動作を行なうことができ、操作が楽になり使い勝手が良くなるからである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、このようにフィルター状の蓋の起伏動作を、回転部材と弾性部材とで形成した動作機構により、機械的に実現しているものである。
【0016】
従って本発明を使用すれば、蓋の引き起こしに電力を消費することがないから、その分、節電できる。
また本発明は、蓋を弾性部材で強制的に倒伏させ、取っ手の入口を塞ぐことができる。
従って本発明によれば、横向きや逆さの状態で吸引機の駆動を停止しても、取っ手の入口を閉じることができ、その結果、吸引した虫が収納箇所から逃げ出すことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の害虫駆除器の好適な一実施形態を示す側面図である。
【図2】同上害虫駆除器の正面図である。
【図3】図1のIII−III線から見た内部の構造図である。
【図4】A、Bとも回転部材を示す斜視図である。
【図5】同上害虫駆除器の作用を説明するための要部側面図である。
【図6】同上害虫駆除器の作用を説明するための要部側面図である。
【図7】同上害虫駆除器の作用を説明するための要部側面図である。
【図8】蓋が倒伏している状態の内部構造図である。
【図9】同上害虫駆除器の要部斜視図である。
【図10】同上害虫駆除器の作用を説明するための要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施形態を、添付図面に従って説明する。
本発明は、図1等に示されるように、先端が吸い込み口1aに後端が排気口1bに形成されている筒状の本体部1と、この本体部1を支持する筒形の取っ手2とで形成されている。
【0019】
また本発明は、上記の吸い込み口1aから外気を吸引する電気式吸引機3が本体部1の排気口1b側に設けられている。そして、この吸引機3で吸い込み口1aから吸引した虫4の収納箇所5が、本体部1内に連通する上記取っ手2の下端に取り外し可能に設けられている。
【0020】
また本発明は、取っ手2の本体部1内に開口する入口2aを倒伏時に閉塞し、上記の取っ手2を持ってスイッチ6を押すと引き起こされて上記の取っ手2の入口2aを開くと共に、本体部1のエアーの流路を塞いで虫4が排気口1b側に流れるのを防止するフィルター状の蓋7を備えて形成されている。
【0021】
蓋7は、ろ布等の多孔性面状材が方形枠に張られて形成されている。また蓋7は、引き起こされたとき、先端の横枠片が本体部1の内面に設けられているストッパー1cに係止するよう形成されている。またこの実施形態の場合、スイッチ6は、引き金状に形成され、コイルバネ8で常時前方(外方)に弾発されている。
【0022】
而して、本発明は、上記の蓋7を起伏動作させる動作機構9を備えて形成されている。この動作機構9は、上記のスイッチ6を押すと蓋7の回転軸7aと平行状の横軸10を中心に一定角度づつ回転して蓋7の引き起こしと引き起こし状態の解除を交互に行なう回転部材11と、蓋7の引き起こし状態が解除されると取っ手2の入口2aを閉塞するよう蓋7を倒伏させる弾性部材12とで形成されている。弾性部材12は、この実施形態ではコイルバネが使用されている。
【0023】
またこの実施形態の場合、回転部材11は、スイッチ6を押す度に60度ごと同方向に回転可能に形成されていると共に、この回転部材11の動きを蓋7に伝える係合部11aが横軸10を中心に120度おきに放射状に突き出されて形成されている。
【0024】
11b(図4参照)は、ナット状部である。回転部材11は、このナット状部11bと、上記の係合部11aとが同心状態で一体状に形成されている。ナット状部11bは、外周面の稜線位置に、突起11b1が稜線に沿って所定の長さ形成されている。
【0025】
また本発明は、ナット状部11bの外周の平面部に、回転部材11の動きを60度ごと規制する板バネ13が密着されている。この板バネ13は、ナット状部11bを上方に付勢するよう片持ち式に設けられている(図6参照)。
【0026】
回転部材11は、スイッチ6が押されると、突き棒14の後端がナット状部11bの突起11b1を突くことにより、回転する。しかしこの場合、回転部材11は、板バネ13の作用でフリーに回転することなく、スイッチ6が押される度に、60度ごと姿勢が保持された状態で断続回転するよう形成されている。
【0027】
また本発明は、蓋7に、回転部材11の係合部11aと係合する係合箇所7bが一体状に形成されている。この係合箇所7bは、細長の厚板状に形成され、その開放状の下端が係合部11aと係合するよう、回転軸7aを中心に蓋7から所定角度離されて回転軸7aの周りに突き出されている。
【0028】
また本発明は、図3、図8〜図10に示されるように、回転軸7aに、導電性部材15が軸方向に延びて凸段差状に設けられている。また回転軸7aの傍らに、蓋7が引き起こされると導電性部材15の上端縁に接触して吸引機3の駆動回路を閉じる一対の端子片16が、起立状に設けられている。この実施形態の本発明は、これによりスイッチ6が押されて蓋7が引き起こされると、吸引機3が同時に駆動するものである。
【0029】
また導電性部材15は、その一方側が回転軸7aの直径方向に延ばされて鉤形に形成され、この延長状部15aの先端に、弾性部材12としてのコイルバネの下端が取り付けられている。また弾性部材12としてのコイルバネの上端は、本体部1内の上面の所定位置に取り付けられている。
【0030】
次に本発明の使用例及び作用を説明する。
使用者は、取っ手2を持ってスイッチ6を押す。すると、図5に示されるように、回転部材11の係合部11aが、蓋7の係合箇所7bを押しながら、横軸10を中心に図面上、時計方向に回転する。
【0031】
そして係合部11aが、60度回転すると、図6に示されるように、係合部11aが蓋7の係合箇所7bの下端を突き上げ、蓋7は回転軸7aを中心に反時計方向に回転して引き起こされる。この結果、取っ手2の入口2aが開かれ、本体部1内のエアーの流路が蓋7で閉塞される。
【0032】
また蓋7が引き起こされると、図3、図10に示されるように、導電性部材15に一対の端子片16が接触する。その結果、吸引機3の駆動回路が閉じられ、吸引機3のモータが駆動して外気が吸引される(図1の矢示参照)。
【0033】
この場合、蓋7は、フィルター状に形成されているから、吸い込まれた外気は網目を介して後方に流れ、排気口1bから排気される。また吸い込まれた虫4や虫4の卵は、蓋7が誘導板として機能するため、取っ手2を介して収納箇所5に収納される。なお、虫4を始末する場合は、収納箇所5を取っ手2の下端から取り外して行なう。
【0034】
また蓋7が引き起こされている状態(吸引機3が駆動している状態)で、使用者がスイッチ6を押すと、回転部材11が横軸10を中心に時計方向に60度回転し、係合部11aと、蓋7の係合箇所7bとの係合状態が解除される。すると、図7に示されるように、弾性部材12としてのコイルバネが収縮し、その牽引力で導電性部材15の延長状部15aが引き上げられる。その結果、蓋7は、回転軸7aを中心に下方に回転して倒伏し、取っ手2の入口2aを閉塞する。
【0035】
また蓋7が倒伏すると、図8〜図10に示されるように、導電性部材15が一対の端子片16から離される。その結果、吸引機3の駆動回路が開かれ、吸引機3のモータが停止し、吸引動作が終了する。
【符号の説明】
【0036】
1 本体部
1a 吸い込み口
1b 排気口
2 取っ手
2a 入口
3 電気式吸引機
4 虫
5 収納箇所
6 スイッチ
7 蓋
7a 回転軸
8 コイルバネ
9 動作機構
10 横軸
11 回転部材
12 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が吸い込み口に後端が排気口に形成されている筒状の本体部と、この本体部を支持する筒形の取っ手とで形成され、上記の吸い込み口から外気を吸引する電気式吸引機が本体部の排気口側に設けられ、この吸引機で吸い込み口から吸引した虫の収納箇所が本体部内に連通する上記取っ手の下端に設けられ、また取っ手の本体部内に開口する入口を倒伏時に閉塞し、取っ手を持ってスイッチを押すと引き起こされて取っ手の入口を開くと共に、本体部のエアーの流路を塞いで虫が排気口側に流れるのを防止するフィルター状の蓋を備えて形成されている吸引式の害虫駆除器であって、上記の蓋を起伏動作させる動作機構が、上記のスイッチを押すと蓋の回転軸と平行状の横軸を中心に一定角度づつ回転して蓋の引き起こしと引き起こし状態の解除を交互に行なう回転部材と、蓋の引き起こし状態が解除されると取っ手の入口を閉塞するよう蓋を倒伏させる弾性部材とで形成されていることを特徴とする吸引式の害虫駆除器。
【請求項2】
請求項1記載の吸引式の害虫駆除器であって、回転部材が、スイッチを押す度に60度ごと同方向に回転可能に形成されていると共に、この回転部材の動きを蓋に伝える係合部が横軸を中心に120度おきに放射状に突き出されて形成されており、この係合部と係合する蓋の係合箇所が回転軸の周りに蓋と一体状に形成されていることを特徴とする吸引式の害虫駆除器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の吸引式の害虫駆除器であって、回転軸に導電性部材が軸方向に延びて凸段差状に設けられ、この回転軸の傍らに、蓋が引き起こされると導電性部材に接触して吸引機の駆動回路を閉じる一対の端子片が起立状に設けられていることを特徴とする吸引式の害虫駆除器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−31383(P2013−31383A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168122(P2011−168122)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【特許番号】特許第4838908号(P4838908)
【特許公報発行日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(510204769)ヒノックス商事株式会社 (7)
【Fターム(参考)】