説明

吸気ダクト

【課題】減音効果が高い吸気ダクトを提供する。
【解決手段】吸気ダクト10は、内部に吸気通路17を有する管状体1と、管状体1の一部に開口する通気穴2と、通気穴2を被覆する薄膜5からなる薄膜部3とをもつ。薄膜部3は、非円形断面形状を呈しており、薄膜5に内部応力が生じた状態で、管状体1の外周面側に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内燃機関に接続される吸気ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
吸気騒音は、主として内燃機関を音源とし、吸気管内に生じる管内脈動に起因した気柱共鳴により増幅される。吸気騒音を低減するために、従来、特許文献1(特開2003−343373号公報)の図2には、吸気ダクト(10)に、通気性を有する繊維ダクト部分(14)及びその外方にカバー(18)を配置して、繊維ダクト部分(14)にて形成された管壁を通じて振動を減衰させ、更に管壁を通じて減衰された振動、及びカバー(18)で反射した振動を、空気層で減衰させることが開示されている。
【0003】
また、特許文献2(特開2004−346750号公報)の図1には、インナーフレーム(3)の外周面に音波が透過可能な管状の可撓性薄膜部材(5)が積層され、この可撓性薄膜部材(5)の外周にダンパ室を介して外筒(6)が設けられている構成が開示されている。この構成によれば、吸気ダクト内での共鳴が回避されるとともに、ダクト内からダンパ室への音波透過によって、騒音エネルギーが低減する。
【0004】
また、特許文献3(特開2006−184681号公報)の図2には、吸気ダクトの側壁に形成した開口部(5)を、所定の張力で伸長された薄膜(6)により被覆することが開示されている。この構成によれば、低周波数域の音声を遮断するとともに、薄膜の張力を変更することで所望の中高域の音を放音させることができる。
【特許文献1】特開2003−343373号公報(図1、段落番号「0017」、「0021」)
【特許文献2】特開2004−346750号公報(図1、段落番号「0008」)
【特許文献3】特開2006−184681号公報(図2、段落番号「0035」)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のカバー(18)は、振動を反射させているが、カバー(18)の物性について特別な言及はなく、カバー(18)自体が減音効果に寄与しているか否かは不明確である。
【0006】
上記特許文献2、3では、吸気ダクトの断面が円形であるため、減音効果が不十分である。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、減音効果が高い吸気ダクトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る吸気ダクトは、内部に吸気通路を有する管状体と、該管状体の一部に開口する通気穴と、前記通気穴を被覆する薄膜からなる薄膜部と、をもつ吸気ダクトであって、前記薄膜部は、非円形断面形状を呈しており、前記薄膜に内部応力が生じた状態で、前記管状体の外周面側に保持されていることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
前記構成によれば、管状体の一部に形成された通気穴を、薄膜部で被覆しているため、騒音エネルギーを減衰させることができる。また、薄膜部は、非円形断面形状を呈しており、薄膜には内部応力が生じている。このため、広範囲の周波数領域にわたって減音させることができる。
【0010】
前記管状体における前記吸気通路の上流側に位置する上流部と下流側に位置する下流部との間には、前記通気穴が形成されているとともに連結部で互いに連結されていて、前記通気穴及び前記連結部は、前記薄膜部により被覆されているが好ましい(請求項2)。これにより、負圧によって薄膜部が径方向内側に撓んでも、連結部で薄膜部の潰れが抑えられる。したがって、吸気通路が負圧によって閉塞されることを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明の吸気ダクトによれば、薄膜部が非円形断面形状を呈しており、また、薄膜には内部応力が生じているため、減音効果が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の吸気ダクトは、内部に吸気通路を有する管状体と、管状体の一部に開口する通気穴と、通気穴を被覆する薄膜からなる薄膜部とをもつ。管状体の内部には、吸気通路が形成されている。管状体は、例えば、PP(ポリプロピレン)などの硬質樹脂材料からなる。
【0013】
管状体における吸気通路の上流側に位置する上流部と下流側に位置する下流部との間には、通気穴が形成されている。通気穴は、上流部と下流部との間に、周全体にわたって開口していてもよいし、一部に開口していてもよい。
【0014】
上流部と下流部とは連結部で連結していてもよい(図2参照)。この場合、上流部と下流部との間に、連結部と通気穴とが形成される。通気穴は、連結部により縁取られ、1又は2以上形成される。連結部は、上流部と下流部と一体に形成されてもよく、別体で形成された後に、溶着などで固着されてもよい。
【0015】
また、上流部と下流部とは連結していなくてもよい(図5参照)。この場合、上流部と下流部との間には、周方向全体に通気穴が開口する。
【0016】
薄膜部は、通気穴を被覆するように管状体の外周面側に保持されている。薄膜部は、通気穴の近傍に保持されていてもよいし、通気穴から離れた部分で保持されていてもよい。
【0017】
薄膜部は、可撓性で、非通気性の薄膜からなり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの樹脂材料を用いることができる。
【0018】
薄膜部は、非円形断面形状であり、薄膜には、内部応力が生じている。薄膜に内部応力を生じさせるにあたっては、例えば、薄膜の一対の側端部に屈曲部を形成し、屈曲部間を圧縮することにより薄膜に内部応力が発生する。
【0019】
屈曲部は、1枚又は2枚以上の薄膜の側端部同士を重ね合わせて形成するとよい。例えば、1枚の薄膜の両方の側端部同士を互いに重ね合わせてもよく、また2枚以上の薄膜についてそれぞれ側端部同士を重ね合わせても良い。重ね合わせた部分は、薄膜部の形状を保持し且つ空気漏れを抑制するために、接着剤による接着、固定レールによる挟持、熱溶着などで保持するとよい。
【0020】
また、屈曲部は、薄膜を屈曲させることで形成することもできる。薄膜部が多数の屈曲部をもつ場合には、薄膜を屈曲させて屈曲部を形成するとよい。これにより、重ね合わせる薄膜の枚数を少なくできる。
【0021】
薄膜部の断面形状は、非円形であり、薄膜に内部応力が生じていればよく、例えば、以下のものが挙げられる。
【0022】
1)「目」の形(図3):薄膜部3の径断面における相対する2つの位置に屈曲部31があり、屈曲部31の間には、半円状に湾曲した一般部32がある。2枚の薄膜5の側端部51同士を重ね合わせて2つの屈曲部31を形成し、内側に向けて互いに近づけることで、一般部32を撓ませて曲げ応力を生じさせる。
【0023】
2)「多角形」(図7):3つ以上の屈曲部31があり、隣り合う屈曲部31の間には、直線状、又は内側に若干撓んだ一般部32がある。薄膜5の側端部51,51同士を重ね合わせたり、薄膜5を屈曲したりして、多角形断面形状をもつ薄膜部3が形成される。薄膜5を径方向内側に向けて近づけることで、薄膜5に内部応力が生じている。一般部32が内側に向けて撓んでいてもよい。多角形は、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形などがある。
【0024】
3)「波形円」(図8):薄膜部3の断面には、円周方向に山31aと谷31bとをもつ波形が形成されている。山31aと谷31bとは、屈曲部31である。薄膜5を山31aと谷31bとで屈曲させ、側端部同士を接合することで、波形円断面形状をもつ薄膜部3が形成される。薄膜部3を径方向内側に向けて圧縮することで、薄膜に内部応力が生じている。屈曲部31の間の一般部32は、直線状を維持していてもよく、また座屈して撓んでいてもよい。
【0025】
4)「水滴」の形(図9):1つの屈曲部31があり、一般部32は円形状又は楕円形状である。1枚の薄膜5の側端部51同士を互いに重ね合わせて1つの屈曲部31を形成している。薄膜部3を径方向内側に向けて圧縮することで、薄膜5に内部応力が生じている。
【0026】
薄膜部の吸気方向の上流側及び下流側の端部は、管状体に接続される接続端部である。接続端部は、保持部材を介して管状体に配設されている。保持部材は、管状体の側壁の外周面側に固定されており、またその外周縁は、薄膜部の非円形断面形状に沿った形状をもつ。薄膜部を非円形断面形状に保持した状態で、薄膜部の接続端部に保持部材を嵌め込むことにより、薄膜部は保持部材に保持される。保持部材の嵌め込み部は、接着剤で薄膜部と接着することで、より強固に薄膜部を固定することができる。保持部材は、硬質樹脂材料で成形するとよく、例えば、PP(ポリプロピレン)などの樹脂材料を用いることができる。
【0027】
保持部材と管状体との間には、弾性部材を介設するとよい。この場合には、管状体に対して、保持部材に固定された薄膜部を安定に保持することができる。また、保持部材の管状体へのはめ込み作業が容易となる。
【0028】
弾性部材としては、例えば、スポンジなどの通気性部材、ゴム、エラストマーなどの非通気性部材を用いると良い。通気性部材を用いる場合には、内燃機関の吸気系のエアクリーナよりも上流側の吸気ダクトに薄膜部を配置するとよい。非通気性部材を用いる場合には、吸気系のいずれの部位にも薄膜部を配置することができる。
【0029】
本発明の吸気ダクトは、内燃機関の吸気系を構成する。吸気ダクトは、吸気通路を伝播する音波の気柱共鳴の腹部又はその近傍に相当する部位に、薄膜部が配置されるように吸気系に配設するとよい。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
本発明の実施例について、図面を用いて具体的に説明する。図1に示すように、本例の吸気ダクト10は、長手方向に吸気通路17を有する管状体1と、管状体1の一部に開口する通気穴2と、通気穴2を被覆する薄膜部3とをもつ。
【0031】
管状体1は、PPなどの硬質樹脂材料からなる。管状体1は、吸気通路17の上流側に位置する上流部11と、下流側に位置する下流部12と、上流部11と下流部12との間を連結するとともに複数の通気穴2をもつ連結部13とから構成されている。
【0032】
図1、図2に示すように、連結部13は、管状体1の上流部11及び下流部12と一体に形成されていてもよいし、別体に形成されていてもよい。連結部13が上流部11及び下流部12と別体である場合には、上流部11の端部11aと下流部12の端部12aに溶接、溶着などで一体に固定される。
【0033】
連結部13は、PPなどの硬質樹脂材料を用いて、射出成形などにより形成されている。連結部13には、周方向に半円形状を描く複数の通気穴2が通気方向の位置を異にして上下に互い違いに形成されている。
【0034】
連結部13及び通気穴2は、薄膜5からなる薄膜部3により被覆されている。薄膜部3は、非円形断面形状を呈しており、薄膜5に内部応力が生じた状態で、管状体1の側壁の外周面側に保持されている。
【0035】
薄膜部3は、気密性で可撓性をもつ2枚の薄膜5で構成されている。2枚の薄膜5は、PETを用い、厚みは0.1mmであり、互いに同じ大きさのシートである。
【0036】
図2、図3に示すように、薄膜部3は、2つの屈曲部31と、2つの屈曲部31の間に形成された一般部32とをもつ。薄膜部3の断面は、目の形状を呈している。屈曲部31は、2枚の薄膜5,5の側端部51、51同士を重ね合わせて接着することによって形成されている。薄膜5、5は、その側端部51、51同士を幅中央側に向けて近づけることにより、径方向外側に撓んで薄膜5,5の間には空洞部30が形成されている。これにより、薄膜5には、内部応力が生じている。
【0037】
薄膜部3の長手方向の端部は、管状体1の上流部11と下流部12とに接続される接続端部33,34である。薄膜部3の接続端部33,34は、保持部材6によって上流部11の端部11a及び下流部12の端部12aに保持されている。保持部材6は、PPなどの硬質樹脂材料を射出成形して形成されたものである。保持部材6は、管状体1よりも径方向外側に張り出していて、保持部材6の外周縁61は薄膜部3の非円形断面形状に沿った形状をもつ。
【0038】
管状体1の上流部11の端部11aの外周面及び下流部12の端部12aの外周面には、スポンジ状で円環状の弾性部材7が嵌合されている。弾性部材7の外周面は、保持部材6の内周面に弾接することで、薄膜部3を保持している。薄膜部3の接続端部33,34は、保持部材6及び弾性部材7の厚み分だけ、管状体1よりも径方向外側に張り出している。
【0039】
薄膜部3は、吸気ダクト10における音波の気柱共鳴の腹部又はその近傍に配置されている。吸気ダクト10は、内燃機関の吸気系のエアクリーナよりも上流側に配設される。弾性部材7がスポンジのような通気性部材であり、この通気性部材を通じて外気が吸気系に吸入されても、エアクリーナで吸気中のごみ等がろ過されるため、内燃機関への支障はない。
【0040】
(実施例2)
本例の吸気ダクトは、図4、図5に示すように、管状体1の上流部11と下流部12との間が連結部で連結されていない点が、実施例1と相違する。上流部11の端部11aと下流部12の端部12aとの間には、周方向全体に通気穴2が開口している。上流部11の端部11a及び下流部12の端部12aには、弾性部材7を介して保持部材6が固定され、保持部材6の外周面に薄膜部3が固定されている。その他は、実施例1と同様である。
【0041】
(実施例3)
本例の吸気ダクトでは、図6に示すように、薄膜5の側端部51が、接着されているのではなく、固定レール39により保持されている。即ち、2枚の薄膜5の側端部51は、互いに重ね合わされて、固定レール39に設けられた切込み39aに気密に挟持されている。その他は、実施例1と同様である。
【0042】
(実施例4)
本例の吸気ダクトでは、図7に示すように、薄膜部3の断面形状が正方形である。薄膜部3には、4枚の薄膜5の側端部51同士を重ね合わせて接着して屈曲部31が形成されている。薄膜5の両方の側端部51は、互いに近づけて、断面中心方向に撓ませている。屈曲部31の間の幅Hは50mmである。薄膜5の撓み量L4は、3mmである。
【0043】
薄膜部3の接続端部は、薄膜部3の断面正方形に沿った形状をもつ外周縁を有する保持部材で保持されている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0044】
(実施例5)
本例の吸気ダクトでは、図8に示すように、薄膜部3の断面形状が周方向に山31aと谷31bとが繰り返される「波形円」である。薄膜部3は、薄膜5を山31aと谷31bとで屈曲させて波形のシートとなし、この波形シートを丸めて両側端部同士を接着することで形成される。
【0045】
薄膜5は、径方向内側に向けて圧縮されることで、内部応力が付与されている。山31aと谷31bとの間の段差L5は5mmと短いため、座屈はせず撓んではいない。山31aと谷31bの数は、それぞれ24,24である。薄膜部3の山31a間の直径D5は58mmであり、谷31b間での直径D6は48mmである。
【0046】
保持部材は、薄膜部3の波形円断面形状に沿った形状をもつ外周縁で、薄膜部3の接続端部を保持する。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0047】
(実施例6)
本例の吸気ダクトでは、図9に示すように、薄膜部3の断面形状が水滴形である。薄膜部3には、1枚の薄膜5の側端部51同士を重ね合わせて接着することにより1つの屈曲部31が形成されている。薄膜部3の断面の長径D7は、55mmであり、短径D8は48mmである。
【0048】
保持部材は、薄膜部3の水滴形状に沿った形状をもつ外周縁で、薄膜部3の接続端部を保持する。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0049】
(実施例7)
本例の吸気ダクトは、図10に示すように、管状体1の上流部11と下流部12とが薄膜部3の内部に進入して、上流部11の端部11aと下流部12の端部12aとの間に、幅が狭い通気穴2が開口している。薄膜部3は、通気穴2から離れた位置に保持されている。薄膜部3の軸方向の端部は、保持部材6に当接保持されている。
【0050】
上流部11と下流部12とは、左右方向に対向する一対の帯状部からなる連結部13で連結されており、連結部13の上下には半円状の2つの通気穴2が開口している。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0051】
(実施例8)
本例の吸気ダクトは、図11、図12に示すように、管状体1に、断面半円状に開口する通気穴2が形成されている。断面半円状の開口2の周方向の端部には、軸方向に延びるスリット21が形成されている。薄膜部3は、1枚の薄膜5から構成されている。
【0052】
薄膜5には、3つの屈曲部31が形成されている。薄膜部3の周方向の両端部は、通気穴2の周方向の端部からスリット21に挿入されて、管状体1の内部で屈曲されることで、開口2の周縁に保持されている。薄膜部3の軸方向の両端部は、筒状体1に固定された保持部材6により当接保持されている。屈曲部31の軸方向の両端は、保持部材6に形成された係止突部61に係止されることで、各屈曲部31の間の一般部32を径方向内側に撓ませて内部応力が付与されている。本例の吸気ダクトのその他の点は、実施例1と同様である。
【0053】
<実験1>
本実験では、薄膜部の音圧レベルを測定した。
【0054】
実験に供した薄膜部は、図13に示すように、断面が目の形状である。この薄膜部3は、薄膜5のみで構成されており、保持部材はなく、実施例1の吸気ダクトに設けられている薄膜部3と同様である。薄膜部3の断面の長径D1は60mm、短径D2は48mmであり、薄膜部3の全長は300mmとした。薄膜部3の長手方向の両端部は、開口端とした。
【0055】
比較のため、図14に示すように、断面円形の薄膜部を比較例1として実験に供した。比較例1の薄膜部は、シート状の薄膜5を断面円形に丸めることにより作製した。比較例1の薄膜部は、実施例1の薄膜部の短径と同じ直径をもち、長さ及び厚みも同じであり、材質も同じである。
【0056】
実施例1及び比較例1の薄膜部の長手方向の一端側に音源を配置し、その他端側にマイクを配置した。
【0057】
音源からは、種々の周波数をもつ騒音を発した。薄膜部内を伝播してマイクに到達した音の騒音レベルを各周波数毎に測定した。その結果を図15に示した。同図において、横軸は音波の周波数、縦軸は騒音レベル、実線は実施例1、点線は比較例1のデータを示す。
【0058】
図15より知られるように、比較例1では、150Hz以上で音量が大きく、また380Hzに一次共鳴、580Hzに二次共鳴の共鳴ピークPが認められた。これに対して、実施例1では、比較例1に比べて音量が小さく、また比較例1で認められた共鳴ピークはなかった。そして、100〜800Hzの広範囲にわたって、音量が比較例1よりも平坦化していた。
【0059】
これは、実施例1の薄膜部3の断面が、図13に示すように、目の形であり、2つの屈曲部31をもつ非円形断面形状である。屈曲部31間の一般部32は、幅方向に圧縮されて径外側に撓むことで、内部応力が付与されている。このため、薄膜部3の断面に応力分布が生じていて、比較例1の円形断面の薄膜部で発生したような共鳴ピークが、実施例1では発生せず、減音効果が大きかったと考えられる。
【0060】
<実験2>
本実験では、実施例4,5,6の吸気ダクトの音圧レベルを測定した。
【0061】
実施例4,5,6の吸気ダクトは、全長を250mmとし、その長手方向の一端側に音源を配置し、その他端側にマイクを配置した。薄膜部の長さは200mmとし、管状体1の中央に配置した。この薄膜部の設置位置は、吸気ダクト内を伝播する音波の気柱共鳴の腹部又はその近傍に相当する部分である。吸気ダクトの長手方向の両端部は、開口端とした。
【0062】
また、比較のため,実施例1の管状体と同様の円管を比較例2とし、実験に供した。比較例2の円管の長さは250mm、直径は44mmとした。
【0063】
音源からは、種々の周波数をもつ騒音を発した。吸気ダクト内を伝播してマイクに到達した音の騒音レベルを各周波数毎に測定した。その結果を図16に示した。同図において、横軸は音波の周波数、縦軸は騒音レベル、点線は実施例4、二点鎖線は実施例5、一点鎖線は実施例6、実線は比較例2のデータを示す。
【0064】
図16に示すように、比較例2では、430Hzに一次共鳴、780Hzに二次共鳴の共鳴ピークPが認められた。これに対して、実施例4,5,6では、比較例2よりも音量が小さく、また比較例2で発生した共鳴ピークはなかった。そして、200〜800Hzの広範囲にわたって、音量が比較例2よりも平坦化していた。このことから、実施例4,5,6では、実施例1と同様に、比較例2よりも、騒音低減効果が大きいこと、低減させる音域の幅が広いことがわかる。これは、実施例4,5,6の薄膜部3の断面が、非円形断面形状で、薄膜には内部応力が付与されている。このため、薄膜部3の断面方向に応力分布が生じて、比較例2で発生したような共鳴が、実施例4,5,6では発生しなかったものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例1の吸気ダクトの通気方向に沿って切断した断面図である。
【図2】実施例1の吸気ダクトの分解斜視図である。
【図3】図2のA−A矢視線断面図である。
【図4】実施例2の吸気ダクトの通気方向に沿って切断した断面図である。
【図5】実施例2の吸気ダクトの分解斜視図である。
【図6】実施例3の、薄膜部の斜視図である。
【図7】実施例4の、薄膜部の断面図である。
【図8】実施例5の、薄膜部の断面図である。
【図9】実施例6の、薄膜部の断面図である。
【図10】実施例7の、吸気ダクトの斜視図である。
【図11】実施例8の、吸気ダクトの斜視図である。
【図12】図11のB−B矢視線断面図である。
【図13】実験1における、実施例1の薄膜部の斜視図である。
【図14】実験1における、比較例1の薄膜部の斜視図である。
【図15】実験1における、実施例1及び比較例1の騒音レベルの測定結果を示す線図である。
【図16】実験2における、実施例4,5,6及び比較例2の騒音レベルの測定結果を示す線図である。
【符号の説明】
【0066】
1:管状体、2:通気穴、3:薄膜部、5:薄膜、6:保持部材、7:弾性部材、10:吸気ダクト、11:上流部、11a、12a:端部、12:下流部、13:連結部、17:吸気通路、21:スリット、30:空洞部、31:屈曲部、32:一般部、33、34:接続端部、39:固定レール、51:側端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に吸気通路を有する管状体と、該管状体の一部に開口する通気穴と、前記通気穴を被覆する薄膜からなる薄膜部と、をもつ吸気ダクトであって、
前記薄膜部は、非円形断面形状を呈しており、前記薄膜に内部応力が生じた状態で、前記管状体の外周面側に保持されていることを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
前記管状体における前記吸気通路の上流側に位置する上流部と下流側に位置する下流部との間には、前記通気穴が形成されているとともに連結部で互いに連結されていて、
前記通気穴及び前記連結部は、前記薄膜部により被覆されている請求項1記載の吸気ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−59863(P2010−59863A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226370(P2008−226370)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)