説明

吸気ダクト

【課題】簡単な構成で、吸気ダクトを大型化することなくエアクリーナから外部に漏洩する騒音をより一層小さく抑えることができる吸気ダクトを提供する。
【解決手段】箱状を呈し、内側空間に外部から空気を導入する導入口20aと内側空間からエアクリーナ14に向かって空気を導出する導出口20bとが、一方がケースの略中央に、他方がケースの外周縁に位置するように、形成されたケース20と、ケース20の内側空間を仕切ることで、この内側空間に導入口20aから導出口20bに向かう空気の通路を形成する仕切り壁60とを設け、仕切り壁60に、内側空間に形成される通路の通路壁を構成しこの通路がケースの外周縁からケースの略中央に向かってケースの周方向に延びるようにケース内に配置される本体壁と、本体壁から通路の内側に向かって突出して通路の流路面積を絞る突出部とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよび当該エンジンに接続されるエアクリーナを有する建設機械に設けられて、前記エアクリーナ内に空気を導入する吸気ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンおよび当該エンジンに接続されるエアクリーナを有する建設機械において、エアクリーナから外部に漏洩する騒音を低減するためにエアクリーナに吸気ダクトが接続されたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エアクリーナに吸気ダクトが接続された吸気装置であって、吸気ダクトに、空気が外部から導入される導入口と空気をエアクリーナに導出する導出口とが形成された円筒状のケースと、ケース内に導入口と導出口とを結ぶ通路を形成する内壁とを有する装置が開示されている。この装置では、導入口をケースの中心に設け、導出口をケースの外周縁に設け、内壁ひいては導入口と導出口とを結ぶ通路を導出口から導入口に向かって曲率を増大させながら連続して湾曲する渦巻き状とすることで前記通路の通路長を長くし、これにより、吸気ダクト内における騒音の低減を促進している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−267563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の吸気ダクトでは、吸気ダクト内に渦巻き状の通路を形成してケース内の通路の長さを長くするという構成のみで騒音低減を促進している。そのため、この従来の吸気ダクトにおいて、高い騒音低減効果を得るためには、ケースを大型化せねばならずレイアウトやコスト面に問題が生じる、あるいは、渦巻き状の通路の巻数を増やさねばならず構造が複雑になり加工が困難になるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、簡単な構成で、吸気ダクトを大型化することなくエアクリーナから外部に漏洩する騒音をより一層小さく抑えることができる吸気ダクトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、エンジンおよび当該エンジンに接続されるエアクリーナを有する建設機械に設けられて、前記エアクリーナ内に空気を導入する吸気ダクトであって、所定の空間が内側に形成されて当該内側空間を囲む内周面を有する箱状を呈し、前記内側空間に外部から空気を導入する導入口と前記内側空間から前記エアクリーナに向かって空気を導出する導出口とが形成されたケースと、前記ケースの内側空間を仕切り、前記導入口から前記導出口に向かう空気の通路を前記内側空間に形成する仕切り壁とを有し、前記導入口と前記導出口の一方は前記ケースの外周縁に設けられ、他方は前記ケースの略中央に設けられており、前記仕切り壁は、前記内側空間に形成される通路の通路壁を構成して当該通路が前記ケースの外周縁から前記ケースの略中央に向かって前記ケースの周方向に延びるように前記内側空間に配置される本体壁と、当該本体壁から前記通路の内側に向かって突出して当該通路の流路面積を絞る突出部とを有することを特徴とする吸気ダクトを提供する。
【0008】
この発明によれば、簡単な構成で、吸気ダクトを大型化することなくエアクリーナから外部に漏洩する騒音をより確実に小さく抑えることができる。
【0009】
具体的には、この構成では、ケース内にケースの外周縁からケースの略中央に向かってケースの周方向に延び、これにより通路長が長く確保された通路が形成されており、この長い通路長によってエアクリーナから外部に伝わる騒音が低減される上に、この通路の途中に流路面積が絞られた絞り部分が形成されて、空気がこの絞り部分を通過する際に圧力損失が生じ、この圧力損失により騒音エネルギーが低減されるよう構成されているため、ケースひいては吸気ダクトを大型化することなく吸気ダクトを通って外部に伝わる騒音をより確実に低減することができる。そして、この構成では、本体壁と突出部とを有する仕切り壁によるケースの内側空間の仕切り方を工夫することで前記ケース内に長い通路と絞り部分とを実現しており、ケースひいては吸気ダクトを大型化することなく簡単な構成で高い騒音低減効果を得ることができる。
【0010】
本発明において、前記本体壁は、上下流方向に連設された複数の平板状の単位仕切り板からなり、前記各単位仕切り板は、隣接する他の単位仕切り板に対して交差する角度で配列されているのが好ましい。
【0011】
この構成によれば、平板状の単位仕切り板を組み合わせるという簡単な加工で、ケース内に長い通路長を有する通路を実現して騒音低減効果を実現することができる。さらに、この構成では、各単位仕切り板が交差する角度で配列されているため、各単位仕切り板に沿う通路は互いに異なる方向を向き、各単位仕切り板に沿う通路間を通過する際に空気の流れ方向を変更させることができる。そのため、各単位仕切り板に沿う通路の接続部分において圧力損失を生じさせて、騒音を低減させることができる。
【0012】
前記構成において、前記突出部は、互いに隣接する前記単位仕切り板の接続部分の少なくとも1つに設けられており、当該隣接する単位仕切り板の一方がこれら単位仕切り板の接続部分から前記内側空間に形成される通路の内側に向かってはみ出ることで形成されているのが好ましい。
【0013】
この構成によれば、単位仕切り板を他の単位仕切り板からはみ出させるという構成で突出部が実現されており、突出部を実現するために突出部専用の部材を別途用意する必要がなく、構造を簡素化することができる。
【0014】
また、前記突出部は、前記複数の単位仕切り板の少なくとも1つの下流端に設けられており、当該単位仕切り板の下流端が前記内側空間に形成される通路の内側に向かって折り曲げられることで形成されているのが好ましい。
【0015】
このようにすれば、突出部を実現するために突出部専用の部材を別途用意する必要がなく、構造を簡素化することができる。
【0016】
また、本発明は、エンジンおよび当該エンジンに接続されるエアクリーナを有する建設機械に設けられて、前記エアクリーナ内に空気を導入する吸気ダクトであって、所定の空間が内側に形成されて当該内側空間を囲む内周面を有する箱状を呈し、前記内側空間に外部から空気を導入する導入口と前記内側空間から前記エアクリーナに向かって空気を導出する導出口とが形成されたケースと、前記ケースの内側空間を仕切り、前記導入口から前記導出口に向かう空気の通路を前記内側空間に形成する仕切り壁とを有し、前記導入口と前記導出口の一方は前記ケースの外周縁に設けられ、他方は前記ケースの略中央に設けられており、前記ケースの内周面は、複数の平面状の単位内周面が連設されることで構成された角筒面状を呈しており、前記仕切り壁は、前記内側空間に形成される通路が前記ケースの外周縁から前記ケースの略中央に向かって前記ケースの周方向に延びるように前記内側空間に配置されているとともに、当該仕切り壁の少なくとも一部は、対向する前記ケースの単位内周面との間に形成される通路が下流側に向かうほど狭くなるようにこの単位内周面に対して傾斜していることを特徴とする吸気ダクトを提供する。
【0017】
この発明によれば、簡単な構成で、吸気ダクトを大型化することなくエアクリーナから外部に漏洩する騒音をより確実に小さく抑えることができる。
【0018】
具体的には、この構成では、ケース内にケースの外周縁からケースの略中央に向かってケースの周方向に延び、これにより通路長が長く確保された通路が形成されており、エアクリーナから外部に伝わる騒音が低減される上に、所定の単位内周面に沿う通路に下流側に向かうほど狭くなる絞り部分が形成されて空気がこの部分を通過する際に圧力損失が生じ、この圧力損失により騒音エネルギーが低減されるよう構成されているため、ケースひいては吸気ダクトを大型化することなく吸気ダクトを通って外部に伝わる騒音を確実に低減することができる。そして、この構成では、前記仕切り壁によるケースの内側空間の仕切り方および仕切り壁の単位内周面に対する配置を工夫することで前記ケース内に長い通路と絞り部分とを実現しており、簡単な構成で高い騒音低減効果を得ることができる。具体的には、この構成では、仕切り壁を単位内周面に対して傾斜させるだけでよく、前記通路を絞るための複雑な構造が不要となる。
【0019】
前記発明において、前記仕切り壁は、上下流方向に連設された複数の平板状の単位仕切り板からなり、前記各単位仕切り板は、前記内側空間に形成される通路が前記ケースの周方向に延びるように隣接する単位仕切り板どうしが交差する角度でつながった状態で配列されており、前記複数の単位仕切り板の少なくとも1つは、当該単位仕切り板とこれに対向する前記ケースの単位内周面との間に形成される通路が下流側に向かうほど狭くなるように、この単位内周面に対して傾斜しているのが好ましい。
【0020】
この構成によれば、平板状の単位仕切り板を組み合わせるという簡単な加工で、ケース内に長い通路長を有する通路を実現して騒音低減効果を実現することができる。しかも、単位仕切り板を単位内周面に対して傾斜させることで前記絞り部分が実現されており、傾斜部分を形成するために仕切り壁に折り曲げ等の加工を施す必要がなく加工手間を小さく抑えることができる。また、この構成では、各単位仕切り板が交差する角度で配列されているため、各単位仕切り板に沿う通路は互いに異なる方向を向き、各単位仕切り板に沿う通路間を通過する際に空気の流れ方向を変更させることができる。そのため、各単位仕切り板に沿う通路の接続部分において圧力損失を生じさせて、騒音を低減させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、吸気ダクトを大型化することなくエアクリーナから外部に漏洩する騒音を小さく抑えつつ、加工性が良好な吸気ダクトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る吸気ダクトが設けられた建設機械の概略側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る吸気ダクト近傍の様子を示した概略斜視図である。
【図3】図2の一部の側面図である。
【図4】図2の一部の上面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の変形例に係る吸気ダクトの内部構造を示した上面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例に係る吸気ダクトの内部構造を示した上面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る吸気ダクトの内部構造を示した上面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の変形例に係る吸気ダクトの内部構造を示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る吸気ダクトの第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、吸気ダクト16が搭載される建設機械の一例である油圧ショベル1の概略側面図である。油圧ショベル1は、下部走行体4と、下部走行体4の上部に配置される上部旋回体5とを有する。上部旋回体5は、下部走行体4に旋回可能に固定された本体フレーム6と、この本体フレーム6の上方に設けられたキャブ7と、エンジンルーム2と、作業機8とを有する。エンジルーム2内には、エンジン10および吸気ダクト16等が格納されている。エンジンルーム2は上方に開口しており、エンジンカバー3によりこの開口部が覆われている。
【0025】
図2は、エンジンルーム2内の一部の様子を示した概略斜視図である。エンジンルーム2内には、エンジン10および吸気ダクト16に加えて、吸気管12と、エアクリーナ14とが格納されている。
【0026】
エアクリーナ14は、エンジン10に流入する空気をろ過するためのものである。エアクリーナ14は、例えば、その内側に空気中の粉じん等を吸着するフィルタ等を有している。吸気管12は、エアクリーナ14とエンジン10とを連結している。エアクリーナ14でろ過された空気は吸気管12を通ってエンジン10に流入する。
【0027】
ここで、エンジン10のピストンやエンジン10に設けられた吸気弁が往復動すると、吸気通路すなわち吸気管12およびエアクリーナ14内において、吸気脈動音が発生する。吸気ダクト16は、この吸気脈動音を低減するためのものである。吸気ダクト16は、エアクリーナ14と連通した状態でエアクリーナ14の上流側に設けられており、その内側でエアクリーナ14から外部に向かう吸気脈動音を低減する。
【0028】
吸気ダクト16およびエアクリーナ14の詳細構造について説明する。
【0029】
図3は、吸気ダクト16およびエアクリーナ14周辺の側面図である。図4は、図3に対応する上面図である。なお、図3よび図4では、吸気ダクト16の内部構造が明確になるように、後述する蓋30を省略している。
【0030】
本実施形態では、エアクリーナ14は、水平方向に延びる中心軸を有する円柱状を呈している。エアクリーナ14の上面には、吸気ダクト16からエアクリーナ14内に空気を導入するエアクリーナ入口14aが形成されている。エアクリーナ入口14aは、後述する吸気ダクト16の導出口20bと一致しており、これらエアクリーナ入口14aと導出口20bとを介して、吸気ダクト16とエアクリーナ14とは連通している。
【0031】
吸気ダクト16は、ケース20と、仕切り壁60とを有している。
【0032】
ケース20は、内側に所定の空間が形成されてこの内側空間を囲む内周面50aを有する箱状部材である。すなわち、ケース20は、互いに対向する底壁40と蓋30と、これら底壁40と蓋30との間に介在する周壁50とを有している。ケース20の内周面50aは、周壁50の表面により構成される。
【0033】
本実施形態では、ケース20は、六角柱形状を呈している。具体的には、底壁40および蓋30は水平方向に延びる板材からなり、周壁50は、上下方向に延びる6つの板状の側壁51〜56からなる。そして、ケース20の内周面50aは、これら側壁51〜56の表面で構成される平板状の単位内周面からなる。各側壁51〜56は、互いに直角をなしている。周壁50は、例えば1枚の板材が折り曲げられることで形成されている。なお、本実施形態では、図2に示すように、蓋30とエンジンカバー3とが兼用されており、エンジンカバー3の一部が蓋30として機能している。
【0034】
側壁51〜56の一つである第1側壁51には、その表裏を貫通する導入口20aが形成されている。導入口20aは、ケース20の内側空間すなわち吸気ダクト16の内側に空気を導入するための開口である。
【0035】
ケース20の底壁40の略中央部には、その表裏を貫通する導出口20bが形成されている。導出口20bは、ケース20の内側空間すなわち吸気ダクト16内の空気をエアクリーナ14に導出するための開口である。
【0036】
吸気ダクト16は、導出口20bがエアクリーナ入口14aと一致する状態で、エアクリーナ14の上方に設置されている。
【0037】
仕切り壁60は、蓋30から底壁40まで上下方向に延びてケース20の内側空間を仕切り、ケース20内に導入口20aから導出口20bに向かう空気の通路を形成する板状部材である。仕切り壁60は、上下流方向に連設された複数の平板状の単位仕切り板からなる。本実施形態では、3枚の単位仕切り板61,62,63が順に接続されることで仕切り壁60が構成されている。具体的には、第1単位仕切り板61の上流端は第1側壁51に連なる第6側壁56に接続されており、この第1単位仕切り板61の下流端は、第2単位仕切り板62の上流端付近に接続されており、第2単位仕切り板62の下流端は第3単位仕切り板63の上流端付近に接続されている。
【0038】
各単位仕切り板61,62,63は、これら単位仕切り板61,62,63からなる仕切り壁60によりケース20の内側空間に形成される空気の通路がケース20の内周面50aに沿って周方向に延びるように、下流側に隣接する他の単位仕切り板に対して上流側に向かって交差する角度で配列されている、すなわち、単位仕切り板どうしは180度ではない角度で接続されている。本実施形態では、ケース20の内側空間に形成された前記通路が、図4の矢印に示すように、ケース20の周方向に沿って延びた後、ケース20の中央に向かって延びるように形成されている。
【0039】
具体的には、第1単位仕切り板61は、第6側壁56から、第1側壁51と平行に延びている。第2単位仕切り板62は、第1単位仕切り板61と直角に接続されており、第1側壁51の第6側壁56と反対側に連なる第2側壁52と平行に配置されている。第3単位仕切り板63は、第1単位仕切り板61と直角に接続されており、第2側壁51の第1側壁56と反対側に連なる第3側壁53と平行に配置されている。これら第1単位仕切り板61と第2単位仕切り板62と第3単位仕切り板63とは、導出口20bを囲んでいる。
【0040】
前記配置により、ケース20の内側空間には、第1単位仕切り板61と第1側壁51との間、詳細には第1単位仕切り板61と第1側壁51の単位内周面との間、に形成される第1通路71と、第2単位仕切り板62と第2側壁52との間、詳細には第2単位仕切り板62と第2側壁52の単位内周面との間、に形成されて第1通路71と直交する方向に延びる第2通路72と、第3単位仕切り板63と第3側壁53との間、詳細には第3単位仕切り板63と第3側壁53の単位内周面との間、に形成されて第2通路72と直交する方向に延びる第3通路73と、第3通路73と直交して第4側壁54、詳細には、第4側壁54の単位内周面に沿って延びる第4通路74と、単位仕切り板61,62,63で囲まれた第5通路75とが形成されている。そして、これら各通路71〜75によって、ケース20の内側空間には、導入口20aから流入した空気を略直角に曲げつつ導出口20bに導く通路が形成されている。
【0041】
下流側に単位仕切り板が接続されている単位仕切り板の下流端は、下流側の単位仕切り板のうちその上流端よりも下流側の部分に当接して、例えば溶接等により固定されている。すなわち、隣接する単位仕切り板は、下流側の単位仕切り板が上流側の単位仕切り板の下流端よりも外側の突出して通路の内側にはみ出した状態で接続されている。そして、下流側の単位仕切り板のうちこの当接部分よりも上流側の部分は、上流側の単位仕切り板の表面から通路の内側に向かって突出している。
【0042】
具体的には、第2単位仕切り板62の上流端は、第1単位仕切り板61の下流端からはみ出しており、第2単位仕切り板62のうち第1単位仕切り板61との接続部分よりも上流側の部分である上流端部62aは、第1単位仕切り板61の表面から第1通路71の内側に向かって突出している。また、第3単位仕切り板63の上流端は、第2単位仕切り板62の下流端からはみ出しており、第3単位仕切り板63のうち第2単位仕切り板62との接続部分よりも上流側の部分である上流端部63aは、第2単位仕切り板62の表面から第2通路72の内側に向かって突出している。
【0043】
このように第2単位仕切り板62の上流端部62aが第1通路71の内側に向かって突出していることで、第1通路71と第2通路72とを含む通路の流路面積は、この第2単位仕切り板62の上流端部62aが突出する部分において、最も小さくなっている。すなわち、第1通路71と第2通路72とを含む通路のうち、第1単位仕切り板61の下流端と対応する部分は、絞られている。同様に、第2通路73と第3通路73とを含む通路の流路面積は、第3単位仕切り板63の上流端部63aが突出する部分において、最も小さくなっている。すなわち、第2通路73と第3通路73とを含む通路のうちであって第2単位仕切り板62の下流端に対応する部分は、絞られている。
【0044】
このように、第1実施形態に係る吸気ダクト16では、仕切り壁60のうち第2単位仕切り板62の上流端部62aおよび第3単位仕切り板63の上流端部63aを除く部分が、ケース20の内側空間に形成される通路の通路壁を構成する本体壁として機能し、第2単位仕切り板62の上流端部62aおよび第3単位仕切り板63の上流端部63aが、この本体壁から通路の内側に向かって突出して通路の流路面積を絞る突出部として機能している。
【0045】
以上のように構成された吸気ダクト16では、ケース20内に形成された導出口20bすなわちエアクリーナ入口14aと導入口20aとを結ぶ空気の通路が、ケース20の内周面50aに沿って延びている。そのため、例えば、仕切り壁60を有さず導出口20bと導入口20aとの間で空気が直線的に移動する場合に比べて、ケース20内を通過する空気の移動距離すなわち空気の通路長を大きくすることができる。従って、エアクリーナ14から吸気ダクト16内を通過する空気を伝い導入口20aを介して外部に放出される騒音、すなわち、吸気脈動音およびエアクリーナ14内を空気が通過する際に発生する音を、小さく抑えることができる。特に、本実施形態では、ケース20内に形成された空気の通路はケース20の内周面50aに沿って延びた後、ケース20の中央に向かって延びており、その通路長は十分に長く確保されている。従って、前記騒音を確実に小さく抑えることができる。また、導出口20bから導入口20aに向かって直線的に結ぶ仮想通路を遮断する位置に、第1単位仕切り板61が配置されていることによっても、エアクリーナ14から導入口20aを介してケース20内に放出された騒音の導入口20aへの伝達が抑制されている。
【0046】
しかも、ケース20内の通路に流路面積が絞られた絞り部分が形成されており、空気がこの絞り部分を通過する際に圧力損失が生じるよう構成されている。そのため、この絞り部部分において騒音エネルギーを低減することができ、ケース20内の通路長をさらに延ばすことなく、すなわち、ケース20内に複雑な通路を形成するあるいはケース20を大型化することなく、外部に伝わる騒音をより一層小さく抑えることができる。特に、この絞り部分が空気の流れ方向が変更されて圧力損失が生じる単位仕切り板の接続部分に設けられている。そのため、騒音エネルギーを効果的に低減することができる。
【0047】
具体的には、導入口20aからケース20の内側に流入した空気は、第1通路71内を、第1単位仕切り板61と第1側壁51に沿って流下した後、第1通路71と第2通路72との接続部分において、強制的に略直角に曲げられつつ絞られた後第2通路72内に流入し、この接続部分では高い圧力損失が生じる。第2通路72に流入した空気は、第2通路72内を、第2単位仕切り板62と第2側壁52とに沿って流下した後、強制的に略直角に曲げられつつ絞られた後第3通路73内に流入し、この接続部分では高い圧力損失が生じる。第3通路73内に流入した空気は、第3通路73内を、第3単位仕切り板63と第3側壁53とに沿って流下した後、強制的に略直角に曲げられた後第4通路74内に流入し、第3単位仕切り板63の下流端では直角に曲げられることにより圧力損失が生じる。なお、第4通路74に流入した空気は、第4側壁54に沿って流下した後、第5通路75内に流入し、第5通路75内に位置する導出口20bおよびエアクリーナ入口14aからエアクリーナ14内に流入する。
【0048】
また、第1実施形態に係る吸気ダクト16では、第2単位仕切り板62の上流端部62aが第1単位仕切り板61の表面から第1通路71の内側に向かって突出しているため、第1単位仕切り板61に沿って直線的に流下してきた空気を第2単位仕切り板62の上流端部(突出部)62aと衝突させて、効果的に圧力損失を生じさせることができる。そのため、この圧力損失に伴う騒音抑制効果をより一層高めることができる。同様に、第3単位仕切り板63の上流端部63aが第1単位仕切り板61の表面から第2通路72の内側に向かって突出させているため、空気を第3単位仕切り板63の上流端部63aに衝突させて、圧力損失ひいては騒音抑制効果をより一層高めることができる。
【0049】
さらに、仕切り壁60が、複数の平板状の単位仕切り板61,62,63の組み合わせによって構成されている。そのため、仕切り壁60の製造を容易に行うことができる。例えば、3枚の平板状の単位仕切り板61,62,63を溶接するという簡単な加工で、仕切り壁60を実現することができる。また、隣接する単位仕切り板の一方を他方からはみ出させるという構成で通路の流路面積を絞る突出部が実現されており、この突出部を別部材で設ける場合に比べて構造、加工を簡素化することができる。
【0050】
ここで、第1実施形態では、隣接する単位仕切り板のうち下流側の単位仕切り板を上流側の単位仕切り板の下流端よりも通路の内側にはみ出させた場合について説明したが、上流側の単位仕切り板を下流側の単位仕切り板の上流端よりも通路の内側にはみ出させてもよい。ただし、前述のように、第1実施形態の構成によれば、上流側の単位仕切り板に沿って直線的に流下してきた空気を突出部として機能する下流側の単位仕切り板の上流端に衝突させて、効果的に圧力損失を生じさせることができる。
【0051】
また、通路の内側に向かって突出して通路の流路面積を絞る突出部の構成は、前記に限らない。例えば、図5に示すように、単位仕切り板の下流端を折り曲げることで突出部を形成してもよい。この場合であっても、別途突出部を設ける場合に比べて簡単な構成で突出部を実現することができる。
【0052】
また、前記突出部の位置は、単位仕切り板の接続部分に限らない。例えば図5に示すように、最も下流側に位置する単位仕切り板の下流端に突出部が設けられてもよい。また、単位仕切り板の中央部分等上下流端から離れた位置に突出部を設けてもよい。ただし、通路の進行方向が変化する単位仕切り板の接続部分に突出部を設ければ、通路の進行方向の変化により生じる圧力損失と突出部が存在することにより生じる圧力損失とによって騒音エネルギーを効果的に小さくすることができる。
【0053】
また、前記第1実施形態では、仕切り壁60を複数の平板状の単位仕切り壁で構成した場合について説明したが、仕切り壁の構成はこれに限らず、ケース20の外周縁からケース20の略中央に向かって延びる通路の通路壁を構成する本体壁と、この本体壁から通路の内側に向かって突出する突出部とを有するものであればよい。例えば、仕切り壁の本体壁を、ケース20の外周縁からケース20の略中央に向かってケースの内周面50aに沿って延びるように1枚の平板を折り曲げることで構成し、この本体壁に別途突出部を接続するようにしてもよい。また、図6に示すように、仕切り壁の本体壁を湾曲する形状として、突出部90を接続してもよい。
【0054】
次に、本発明に係る吸気ダクト16の第2実施形態について、図7を参照しながら説明する。
【0055】
第2実施形態に係る吸気ダクト16と第1実施形態に係る吸気ダクト16とにおいて、仕切り壁以外の構成は同一である。そのため、ここでは、仕切り壁についてのみ説明する。
【0056】
第2実施形態に係る吸気ダクト16の仕切り壁160は、前記第1実施形態と同様に互いに直角に接続された複数の平板状の単位仕切り板(第1単位仕切り板161,第2単位仕切り板162,第3単位仕切り板163)とからなる。一方、第2実施形態では、これら単位仕切り板161,162,163が、互いにはみ出さないように接続されているとともに、ケース20の各側壁に対して平行ではなく傾斜する姿勢で配置されている。
【0057】
具体的には、第2側壁52(詳細には、第2側壁52の単位内周面)に対して、この第2側壁52と対向する第1単位仕切り板161は下流側ほどこの第2側壁52に近づくように傾斜し、第2単位仕切り板162はこの第1単位仕切り板161の下流端から下流側に向かうほど第2側壁52から離間するように傾斜している。また、第3側壁53(詳細には、第3側壁53の単位内周面)に対して、第2単位仕切り板162は下流側ほどこの第3側壁53に近づくように傾斜し、第3単位仕切り板163はこの第2単位仕切り板162の下流端から下流側に向かうほど第3側壁53から離間するように傾斜している。
【0058】
このような配置により、第1単位仕切り壁161と第2側壁52との間に形成される通路には、その上流側部分において下流側ほど狭くなる部分が形成されている。すなわち、第1単位仕切り壁161と第2単位仕切り壁162との接続部分において通路は絞られている。また、第2単位仕切り壁162と第3側壁53との間に形成される通路には、その上流側部分において、下流側ほど狭くなる部分が形成されている。すなわち、第2単位仕切り壁162と第3単位仕切り壁163との接続部分において通路は絞られている。
【0059】
このように、第2実施形態に係る吸気ダクト16では、単位仕切り板を側壁、詳細には、側壁の単位内周面に対して傾斜させるという構成で通路に絞り部分が形成されている。そのため、第2実施形態に係る吸気ダクト16においても、圧力損失を生じさせて高い騒音低減効果を得ることができる。特に、単位仕切り板の接続部分であって通路の向きが変化する部分に絞りが形成されるため、通路の向きが変わることによる圧力損失と絞りによる圧力損失により、効果的に騒音を低減することができる。また、この第2実施形態では、絞り部分を形成するための特別な部材を設ける必要がなく構造を簡素化簡素化することができる。
【0060】
ここで、仕切り壁160の少なくとも一部が、対向するケースの単位内周面との間に形成される通路が下流側に向かうほど狭くなるようにこの単位内周面に対して傾斜していればよく、前記絞り部分を形成するために、例えば、図8に示すように、単位仕切り板が折り曲げ加工されて単位仕切り板の一部が側壁に対して平行に延びる一方他部が側壁に対して傾斜するようにしてもよい。図8に示す例では、各単位仕切り板161,162,163が、その長手方向中間で折り曲げられることで、上流部分は各側壁51,52,53と平行に延びる一方、下流部分が各側壁51,52,53に近接する方向に傾斜しており、この傾斜部分において、下流側ほど通路が狭くなるように構成されている。また、仕切り壁を1枚の板状部材で構成して、この仕切り壁を折り曲げ加工等するようにしてもよい。ただし、前記のように、平板状の各単位仕切り板全体を側壁に対して傾斜させるようにすれば、構造を簡素化することができる。
【0061】
また、前記第1実施形態および第2実施形態に係る吸気ダクトにおいて、ケース20の外壁の形状は前記に限らない。例えば、6角筒以外の多角筒形状や円筒形状であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 建設機械
2 エンジンルーム
10 エンジン
14 エアクリーナ
16 吸気ダクト
20 ケース
20a 導入口
20b 導出口
50a 内周面
60,160 仕切り壁
61,161 第1単位仕切り板(単位仕切り板)
62,162 第2単位仕切り板(単位仕切り板)
63,163 第3単位仕切り板(単位仕切り板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンおよび当該エンジンに接続されるエアクリーナを有する建設機械に設けられて、前記エアクリーナ内に空気を導入する吸気ダクトであって、
所定の空間が内側に形成されて当該内側空間を囲む内周面を有する箱状を呈し、前記内側空間に外部から空気を導入する導入口と前記内側空間から前記エアクリーナに向かって空気を導出する導出口とが形成されたケースと、
前記ケースの内側空間を仕切り、前記導入口から前記導出口に向かう空気の通路を前記内側空間に形成する仕切り壁とを有し、
前記導入口と前記導出口の一方は前記ケースの外周縁に設けられ、他方は前記ケースの略中央に設けられており、
前記仕切り壁は、前記内側空間に形成される通路の通路壁を構成して当該通路が前記ケースの外周縁から前記ケースの略中央に向かって前記ケースの周方向に延びるように前記内側空間に配置される本体壁と、当該本体壁から前記通路の内側に向かって突出して当該通路の流路面積を絞る突出部とを有することを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
請求項1に記載の吸気ダクトにおいて、
前記本体壁は、上下流方向に連設された複数の平板状の単位仕切り板からなり、
前記各単位仕切り板は、隣接する他の単位仕切り板に対して交差する角度で配列されていることを特徴とする吸気ダクト。
【請求項3】
請求項2に記載の吸気ダクトにおいて、
前記突出部は、互いに隣接する前記単位仕切り板の接続部分の少なくとも1つに設けられており、当該隣接する単位仕切り板の一方がこれら単位仕切り板の接続部分から前記内側空間に形成される通路の内側に向かってはみ出ることで形成されていることを特徴とする吸気ダクト。
【請求項4】
請求項2に記載の吸気ダクトにおいて、
前記突出部は、前記複数の単位仕切り板の少なくとも1つの下流端に設けられており、当該単位仕切り板の下流端が前記内側空間に形成される通路の内側に向かって折り曲げられることで形成されていることを特徴とする吸気ダクト。
【請求項5】
エンジンおよび当該エンジンに接続されるエアクリーナを有する建設機械に設けられて、前記エアクリーナ内に空気を導入する吸気ダクトであって、
所定の空間が内側に形成されて当該内側空間を囲む内周面を有する箱状を呈し、前記内側空間に外部から空気を導入する導入口と前記内側空間から前記エアクリーナに向かって空気を導出する導出口とが形成されたケースと、
前記ケースの内側空間を仕切り、前記導入口から前記導出口に向かう空気の通路を前記内側空間に形成する仕切り壁とを有し、
前記導入口と前記導出口の一方は前記ケースの外周縁に設けられ、他方は前記ケースの略中央に設けられており、
前記ケースの内周面は、複数の平面状の単位内周面が連設されることで構成された角筒面状を呈しており、
前記仕切り壁は、前記内側空間に形成される通路が前記ケースの外周縁から前記ケースの略中央に向かって前記ケースの周方向に延びるように前記内側空間に配置されているとともに、当該仕切り壁の少なくとも一部は、対向する前記ケースの単位内周面との間に形成される通路が下流側に向かうほど狭くなるようにこの単位内周面に対して傾斜していることを特徴とする吸気ダクト。
【請求項6】
請求項5に記載の吸気ダクトにおいて、
前記仕切り壁は、上下流方向に連設された複数の平板状の単位仕切り板からなり、
前記各単位仕切り板は、前記内側空間に形成される通路が前記ケースの周方向に延びるように隣接する単位仕切り板どうしが交差する角度でつながった状態で配列されており、
前記複数の単位仕切り板の少なくとも1つは、当該単位仕切り板とこれに対向する前記ケースの単位内周面との間に形成される通路が下流側に向かうほど狭くなるように、この単位内周面に対して傾斜していることを特徴とする吸気ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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