説明

吸気マニホールド

【課題】新気を主成分とする吸気主流を受け入れるサージタンクと、サージタンクから分岐して吸気主流を内燃機関に順次に導く複数の分岐路3とを備え、吸気主流とは別の吸気傍流を吸気主流に合流させて内燃機関に導く吸気マニホールド1において、目的ガスの成分比率が気筒間でばらつくのを抑制する。
【解決手段】吸気マニホールド1は、それぞれの分岐路3に接続して吸気主流とは別の吸気傍流をそれぞれの分岐路3に導く傍流路4を備える。また、傍流路4によって互いに連通し、かつ、内燃機関への吸気導入が連続する2つの分岐路3の組合せを第1組合せと定義し、さらに第1組合せの中で、傍流路4による連通長さが短い組合せを第2組合せと定義すれば、第2組合せをなす2つの分岐路3の内、吸気導入が後に行なわれる分岐路3は、吸気導入が先に行なわれる分岐路3よりも、傍流路4の接続口16が狭い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に吸気を導入するための吸気マニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸気マニホールドでは、新気を主成分とする吸気主流を受け入れるサージタンクと、サージタンクから分岐して吸気主流を内燃機関に順次に導く複数の分岐路とを備えるものが周知である。
【0003】
さらに、吸気マニホールドでは、新気以外の成分を含む吸気傍流を吸気主流に合流させて内燃機関に導くものが周知であり、例えば、内燃機関に再循環する排気ガス(EGRガス)や、内燃機関のクランクケースを換気することにより得られるブローバイガス(PCVガス)を吸気傍流に含ませて吸気主流に合流させている(以下、EGRガスやPCVガスのように、吸気傍流に含有させて気筒内に導入したいガスを目的ガスと呼ぶことがある。)。
【0004】
ところで、このような吸気マニホールドでは、各気筒に吸入される吸気の成分に関して、目的ガスの成分比率が気筒間でばらつくのを抑制するため、様々な対策が考えられている。
【0005】
例えば、特許文献1の吸気マニホールドは、EGRガスを目的ガスとする吸気傍流を吸気主流に合流させて内燃機関に導くものである。また、特許文献1の吸気マニホールドでは、サージタンクにおいて分岐路と同数の吸気傍流の吹出し口が設けられ、これらの吹出し口は、各々、サージタンクにおける分岐路の上流開口と対向している。そして、特許文献1の吸気マニホールドによれば、それぞれの吹出し口は、サージタンクにおける吸気主流の導入口から遠いものほど開口面積が小さくなっている。
【0006】
これにより、導入口から遠い分岐路ほど、吸気主流の流入量が小さくなることに対応して、導入口から遠い分岐路ほど吸気傍流の流入量を減らすことができ、目的ガスの成分比率を気筒間で均等にすることができるとしている。
【0007】
また、特許文献2の吸気マニホールドは、PCVガスを目的ガスとする吸気傍流を吸気主流に合流させて内燃機関に導くものであり、それぞれの分岐路に接続して吸気傍流をそれぞれの分岐路に導く傍流路を備える。そして、傍流路は、目的ガスの導入口から分岐路への接続口に至るまでの吸気傍流の圧力損失が全ての分岐路に対して等しくなるように設けられている。
これにより、目的ガスの成分比率を気筒間で均等にすることができるとしている。
【0008】
しかし、特許文献1の吸気マニホールドによれば、特定の分岐路を通じて吸気導入を行う場合、吸気傍流は、特定の分岐路に対向する吹出し口のみから導入されるのではなく、他の吹出し口からも導入される。このため、必ずしも目的ガスの成分比率が気筒間で均等にはならない。
【0009】
これに対し、特許文献2の吸気マニホールドによれば、特定の分岐路を通じて吸気導入を行う場合、目的ガスは、導入口から特定の分岐路における接続口まで一定の流路のみを通じて導入され、あたかも目的ガスを均等に分配することができるように見受けられる。
【0010】
しかし、特許文献2の吸気マニホールドで特定の分岐路を通じて吸気導入する場合、吸気傍流は、目的ガスの導入口から導入されて形成される部分以外に、傍流路を通じて他の分岐路に残っている残留吸気を吸引することによって形成される部分を含んでいる。すなわち、傍流路は、分岐路同士を連通する流路としても機能し、この機能により、特定の分岐路を通じて吸気導入が行われる際に、傍流路を通じて他の分岐路の残留吸気が吸引されて吸気傍流の一部を形成してしまう。このため、他の分岐路の残留吸気中の目的ガスの残存量に応じて、目的ガスの成分比率は気筒間でばらついてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−144868号公報
【特許文献2】特開2006−241992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、新気を主成分とする吸気主流を受け入れるサージタンクと、サージタンクから分岐して吸気主流を内燃機関に順次に導く複数の分岐路とを備え、吸気主流とは別の吸気傍流を吸気主流に合流させて内燃機関に導く吸気マニホールドにおいて、目的ガスの成分比率が気筒間でばらつくのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段によれば、吸気マニホールドは、新気を主成分とする吸気主流を受け入れるサージタンクと、サージタンクから分岐して吸気主流を内燃機関に順次に導く複数の分岐路と、それぞれの分岐路に接続して吸気主流とは別の吸気傍流をそれぞれの分岐路に導く傍流路とを備え、吸気主流と吸気傍流とを併せて内燃機関に導く。
【0014】
また、複数の分岐路から選択した2つの分岐路の組合せの中には、傍流路によって互いに連通し、かつ、内燃機関への吸気導入が連続する複数の第1組合せが存在する。そして、複数の第1組合せの中で、傍流路による連通長さが最も短い組合せを第2組合せと定義すれば、第2組合せをなす2つの分岐路の内、吸気導入が後に行なわれる分岐路は、吸気導入が先に行なわれる分岐路よりも、傍流路の接続口が狭い。
【0015】
これにより、目的ガスの成分比率が気筒間でばらつくのを抑制することができる。
すなわち、吸気傍流を分岐路に導入するための傍流路がそれぞれの分岐路に接続している構成では、〔背景技術〕において述べたように、吸気導入中の分岐路以外の他の分岐路の残留吸気中の目的ガスの残存量に応じて、目的ガスの成分比率が気筒間でばらついてしまう。
【0016】
ここで、1つの分岐路に着目して、着目した分岐路に(以下、着目分岐路と呼ぶ。)おける目的ガスの残存量の経時変化を考える。
着目分岐路で吸気導入が行なわれた後、次回、着目分岐路で吸気導入が行なわれるまでの間、他の分岐路による吸気導入が順次行なわれ、他の分岐路で吸気導入が行なわれるたびに、着目分岐路から傍流路を通じて残留吸気が吸引される。このため、着目分岐路における目的ガスの残存量は、他の分岐路による吸気導入が順次行なわれるたびに減少していき、次回の吸気導入により再度大きく増加して、その後同様に減少していく。
【0017】
このため、着目分岐路の次に吸気導入が行なわれる分岐路(以下、次導入分岐路と呼ぶことがある。)を通じて導入される吸気における目的ガスの成分比率は、他の分岐路の内、次導入分岐路以外の分岐路を通じて導入される吸気における目的ガスの成分比率よりも相当に大きくなるものと考えられる。
また、吸気導入が行なわれている分岐路と着目分岐路との傍流路による連通長さが短いほど、着目分岐路から残留吸気が吸引されやすい。
【0018】
以上により、次導入分岐路であり、かつ、傍流路による着目分岐路との連通長さが最短となる分岐路、つまり、着目分岐路と第2組合せの関係にある分岐路を通じて導入される吸気における目的ガスの成分比率は、着目分岐路を通じて導入される吸気における目的ガスの成分比率よりも相当に大きくなるものと考えられる。
【0019】
そこで、第2組合せをなす2つの分岐路の内、吸気導入が後に行なわれる分岐路を、吸気導入が先に行なわれる分岐路よりも、傍流路の接続口を狭く設ける。
これにより、着目分岐路と次導入分岐路とが第2組合せの関係にある場合、着目分岐路から次導入分岐路には残留吸気が流入しにくくなり、さらに吸気傍流全体が次導入分岐路に流入しにくくなる。このため、次導入分岐路を通じて導入される吸気における目的ガスの成分比率を下げることができる。
以上により、目的ガスの成分比率が気筒間でばらつくのを抑制することができる。
【0020】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段によれば、複数の第1組合せの中で、傍流路による連通長さが最も短い組合せ、および、2番目に短い組合せについて、最短の連通長さと2番目に短い連通長さとが略一致している。
【0021】
そして、傍流路による連通長さが最も短い組合せ、および、2番目に短い組合せを両方とも第2組合せと定義すれば、それぞれの第2組合せをなす2つの分岐路の内、吸気導入が後に行なわれる分岐路は、吸気導入が先に行なわれる分岐路よりも、傍流路の接続口が狭い。
これにより、第2組合せが2組存在する場合に、より一層、目的ガスの成分比率が気筒間でばらつくのを抑制することができる。
【0022】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段によれば、傍流路は、1つの上流端から少なくとも2つの第1枝路に分かれた後、さらにそれぞれの第1枝路が2つの第2枝路に分かれ、それぞれの第1枝路から分岐した一方の第2枝路は1つの第2組合せをなす2つの分岐路の内の一方の分岐路に接続し、他方の第2枝路は他方の分岐路に接続している。
【0023】
これにより、第2組合せをなす2つの分岐路間の傍流路による連通長さは、より一層短くなる。このため、第2組合せをなす2つの分岐路間では、一方の分岐路で吸気導入が行なわれる際に、より一層、他方の分岐路から残留吸気を吸引しやすくなる。このため、請求項1、2の手段によるばらつき抑制効果を顕著に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】吸気マニホールドの全体構成図である(実施例)。
【図2】図1のA−A断面図である(実施例)。
【図3】図2のB−B断面図を含む吸気マニホールドの全体構成図である(実施例)。
【図4】(a)は接続口の相当径が分岐路ごと、気筒ごとに異なる場合のEGR率を示す図表であり、(b)は接続口の相当径が全ての分岐路、全ての気筒で等しい場合のEGR率を示す図表である(実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施形態の吸気マニホールドは、新気を主成分とする吸気主流を受け入れるサージタンクと、サージタンクから分岐して吸気主流を内燃機関に順次に導く複数の分岐路と、それぞれの分岐路に接続して吸気主流とは別の吸気傍流をそれぞれの分岐路に導く傍流路とを備え、吸気主流と吸気傍流とを併せて内燃機関に導く。
【0026】
また、複数の分岐路から選択した2つの分岐路の組合せの中には、傍流路によって互いに連通し、かつ、内燃機関への吸気導入が連続する複数の第1組合せが存在する。そして、複数の第1組合せの中で、傍流路による連通長さが最も短い組合せ、および、2番目に短い組合せについて、最短の連通長さと2番目に短い連通長さとが略一致している。
【0027】
そして、傍流路による連通長さが最も短い組合せ、および、2番目に短い組合せを両方とも第2組合せと定義すれば、それぞれの第2組合せをなす2つの分岐路の内、吸気導入が後に行なわれる分岐路は、吸気導入が先に行なわれる分岐路よりも、傍流路の接続口が狭い。
【0028】
さらに、傍流路は、1つの上流端から少なくとも2つの第1枝路に分かれた後、さらにそれぞれの第1枝路が2つの第2枝路に分かれ、それぞれの第1枝路から分岐した一方の第2枝路は1つの第2組合せをなす2つの分岐路の内の一方の分岐路に接続し、他方の第2枝路は他方の分岐路に接続している。
【実施例】
【0029】
〔実施例の構成〕
実施例の吸気マニホールド1の構成を、図面に基づいて説明する。
吸気マニホールド1は、例えば、レシプロ4気筒の内燃機関(図示せず)に吸気を導入するものであり、例えば、次のような構成を備える。
【0030】
すなわち、吸気マニホールド1は、新気を主成分とする吸気主流を受け入れるサージタンク2と、サージタンク2から分岐して吸気主流を内燃機関の各気筒に順次に導く4つの分岐路3と、それぞれの分岐路3に接続して吸気主流とは別の吸気傍流をそれぞれの分岐路3に導く傍流路4と、サージタンク2に接続する吸気主流の導入路5とを備え、吸気主流と吸気傍流とを併せて内燃機関の各気筒に導く。
【0031】
ここで、吸気傍流とは、例えば、内燃機関に再循環する排気ガス(EGRガス)、内燃機関のクランクケースを換気することにより得られるブローバイガス(PCVガス)、またはキャニスターのパージガス等、新気以外に吸気を構成するガスを含んだ吸気流であり、傍流路4を通じで分岐路3に供給されるものである。そして、吸気傍流は、分岐路3で吸気主流に合流して気筒内に導入される(以下、EGRガスやPCVガスのように、吸気傍流に含有させて気筒内に導入したいガスを目的ガスと呼ぶことがある。)。
【0032】
吸気マニホールド1は、例えば、樹脂成形により設けられた複数の樹脂製パーツを振動溶着等により接合させて設けられている。また、導入路5の上流端はフランジ7に設けられ、フランジ7にはスロットルボディ(図示せず)などが接続される。また、それぞれの分岐路3の下流端は、内燃機関の複数の気筒の配置に合わせて、フランジ8に直線状に並んで設けられている。
【0033】
そして、吸気マニホールド1は、それぞれの分岐路3が対応する気筒内と連通することができるように、フランジ8を介して内燃機関にネジ締結される。
また、分岐路3の下流端の近傍、すなわちフランジ8の近傍には、傍流路4を有する張出し部9が設けられている。張出し部9は、分岐路3を挟んでサージタンク2の反対側に伸びるように設けられている。そして、張出し部9には、目的ガスの導入口10が開口している。
【0034】
〔実施例の特徴〕
実施例の吸気マニホールド1の特徴を、図面に基づいて説明する。
まず、それぞれの分岐路3は、サージタンク2に接続する上流端から内燃機関に接続する下流端まで吸気を旋回させて導くように、略円弧状に設けられている。また、4つの分岐路3は、互いに交差することなく、上流端および下流端がそれぞれ内燃機関における気筒の配置に合わせて1つの方向に並んでいる。
【0035】
ここで、4つの分岐路3が並ぶ配列方向に関して導入路5から最も遠い分岐路3から、導入路5に最も近い分岐路3まで、順次に分岐路3a、3b、3c、3dと呼ぶことにする。そして、吸気マニホールド1は、分岐路3a〜3dが、それぞれ、内燃機関の#1、#2、#3、#4気筒に吸気導入することができるように、内燃機関に締結されているものとする。
【0036】
これにより、内燃機関がレシプロ4気筒の場合、着火の順序は、#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒→#1気筒→となるので、分岐路3a〜3dに関して吸気導入が行なわれる順序は、分岐路3a→分岐路3c→分岐路3d→分岐路3b→分岐路3a→となる。このため、吸気導入が連続する2つの分岐路3の組合せは、分岐路3c、3d、分岐路3d、3b、分岐路3b、3a、分岐路3a、3cの4組が存在する。
【0037】
また、4つの分岐路3から任意に選択した1つの分岐路3は、他の全ての分岐路3と傍流路4により接続している。つまり、分岐路3a〜3dは、それぞれ、他の3つの分岐路3全てと傍流路4によって接続している。
このため、分岐路3c、3d、分岐路3d、3b、分岐路3b、3a、分岐路3a、3cの4組は、傍流路4によって互いに連通し、かつ、内燃機関への吸気導入が連続する第1組合せである。
【0038】
ここで、傍流路4は、導入口10が開口する上流領域12、上流領域12から分岐する2つの第1枝路13A、13B、第1枝路13Aから分岐して分岐路3a、3bにそれぞれ接続する2つの第2枝路14a、14b、第1枝路13Bから分岐して分岐路3c、3dにそれぞれ接続する2つの第2枝路14c、14dを有する。また、第1枝路13A、13Bは互いに流路長が等しく、第2枝分14a〜14dは全て流路長が等しい。
【0039】
よって、第1枝路13A、13Bの流路長をLa、第2枝分14a〜14dの流路長をLb、上流領域12の流路の内、第1枝路13A、13Bを接続する部分の流路長をLcとすれば、分岐路3a、3b間、分岐路3c、3d間それぞれの傍流路4による連通長さは2Lbとなる。また、分岐路3a、3c間、分岐路3a、3d間、分岐路3b、3c間、分岐路3b、3d間それぞれの傍流路4による連通長さは2Lb+2La+Lcとなる。このため、全ての第1組合せの内、連通長さが短い組合せは、分岐路3a、3b、分岐路3c、3dの2組である。
【0040】
以上により、第1組合せの中で、傍流路4による連通長さが短い2つの第1組合せを第2組合せと定義すると、分岐路3a、3bの組合せ、および分岐路3c、3dの組合せは第2組合せとなる。
そして、第2組合せをなす2つの分岐路3では、吸気導入が後に行なわれる分岐路3は、吸気導入が先に行なわれる分岐路3よりも、傍流路4の接続口16が狭い。
【0041】
すなわち、分岐路3a、3bの第2組合せでは、分岐路3bを通じた吸気導入が先行し、分岐路3aを通じた吸気導入が後行するので、接続口16は分岐路3aの方が分岐路3bよりも狭い。また、分岐路3c、3dの第2組合せでは、分岐路3cを通じた吸気導入が先行し、分岐路3dを通じた吸気導入が後行するので、接続口16は分岐路3dの方が分岐路3cよりも狭い(図3参照)。
【0042】
〔実施例の作用効果〕
実施例の吸気マニホールド1は、それぞれの分岐路3に接続して吸気主流とは別の吸気傍流をそれぞれの分岐路3に導く傍流路4を備え、吸気主流と吸気傍流とを併せて内燃機関に導く。また、傍流路4によって互いに連通し、かつ、内燃機関への吸気導入が連続する2つの分岐路3の組合せを第1組合せと定義し、さらに第1組合せの中で、傍流路4による連通長さが短い組合せを第2組合せと定義すれば、第2組合せをなす2つの分岐路3の内、吸気導入が後に行なわれる分岐路3は、吸気導入が先に行なわれる分岐路3よりも、傍流路4の接続口16が狭い。
【0043】
これにより、目的ガスの成分比率が気筒間でばらつくのを抑制することができる。
ここで、図4の図表を用いて、目的ガスの成分比率が気筒間でばらつくのを抑制することができる理由を説明する。なお、図4は、目的ガスをEGRガスとして、内燃機関の回転数が1200rpmおよび2000rpmであるときのEGR率を分岐路3a〜3dごと(気筒#1〜#4ごと)に示すものである。
【0044】
また、図4(a)は、一方の第2組合せをなす分岐路3a、3bの接続口16の円相当径がそれぞれ8.4mm、8.9mmであり、他方の第2組合せをなす分岐路3c、3dの接続口16の円相当径がそれぞれ9.1mm、8.1mmである場合のEGR率を示すものである。また、図4(b)は、分岐路3a〜3dの全てにおける接続口16の円相当径が8.4mmで等しい場合のEGR率を示すものである。
【0045】
吸気傍流を分岐路3に導入するための傍流路4が分岐路3a〜3dに個別に接続している構成では、傍流路4の接続口16が全ての分岐路3において等しい場合、吸気導入中の分岐路3以外の他の分岐路3の残留吸気中の目的ガスの残存量に応じて、目的ガスの成分比率が気筒間でばらついてしまう。
【0046】
ここで、傍流路4の接続口16が全ての分岐路3において等しいものと仮定した上で、分岐路3bに着目し、分岐路3bにおける目的ガスの残存量の経時変化を考える。なお、分岐路3bと第2組合せをなす分岐路3は分岐路3aである。
【0047】
分岐路3bで吸気導入が行なわれた後、次回、分岐路3bで吸気導入が行なわれるまでの間、分岐路3a→分岐路3c→分岐路3dの順に吸気導入が行なわれ、吸気導入が行なわれるたびに、分岐路3bから傍流路4を通じて残留吸気が吸引される。このため、分岐路3bにおける目的ガスの残存量は、分岐路3a、3c、3dの吸気導入が順次行なわれるたびに減少していき、次回の吸気導入により再度大きく増加して、その後同様に減少していく。
【0048】
このため、吸気導入の順序が分岐路3bの次である分岐路3aで吸気導入を行う際、直前に吸気導入が行なわれた分岐路3bでは残留吸気中の目的ガスが減っていないので、分岐路3aによる吸気導入では、分岐路3c、3dによる吸気導入よりも多くの目的ガスを分岐路3bから吸引する。
【0049】
また、分岐路3a、3c、3dの内、吸気導入が行なわれている分岐路3と分岐路3bとを接続する傍流路4の連通長さが短いほど、分岐路3bから残留吸気が吸引されやすい。したがって、分岐路3aで吸気導入が行なわれる時の方が、分岐路3c、3dで吸気導入が行なわれる時よりも、分岐路3bから残留吸気が吸引されやすい。
【0050】
以上により、分岐路3bと第2組合せの関係にある分岐路3aを通じて導入される吸気における目的ガスの成分比率は、分岐路3bを通じて導入される吸気における目的ガスの成分比率よりも相当に大きくなる(図4(b)参照)。
同様に、分岐路3cと第2組合せの関係にある分岐路3dを通じて導入される吸気における目的ガスの成分比率は、分岐路3cを通じて導入される吸気における目的ガスの成分比率よりも相当に大きくなる(図4(b)参照)。
【0051】
そこで、第2組合せをなす分岐路3a、3bの内、吸気導入が後に行なわれる分岐路3aを、吸気導入が先に行なわれる分岐路3bよりも、傍流路4の接続口16を狭く設け、同様に、分岐路3dを分岐路3cよりも接続口16を狭く設ける(図4(a)参照)。
【0052】
これにより、第2組合せの関係にある分岐路3a、3bにおいて、分岐路3bから分岐路3aには残留吸気が流入しにくくなり、さらに吸気傍流全体が分岐路3aに流入しにくくなる。このため、分岐路3aを通じて導入される吸気における目的ガスの成分比率を下げることができる。同様に、第2組合せの関係にある分岐路3c、3dにおいて、分岐路3dを通じて導入される吸気における目的ガスの成分比率を下げることができる。
以上により、目的ガスの成分比率が気筒間でばらつくのを抑制することができる(図4(a)参照)。
【0053】
また、傍流路4は、導入口10が開口する上流領域12、上流領域12から分岐する2つの第1枝路13A、13B、第1枝路13Aから分岐して分岐路3a、3bにそれぞれ接続する2つの第2枝路14a、14b、第1枝路13Bから分岐して分岐路3c、3dにそれぞれ接続する2つの第2枝路14c、14dを有する。
【0054】
これにより、第2組合せをなす分岐路3a、3b間および分岐路3c、3d間の傍流路4による連通長さは、他の分岐路3同士の組合せよりも大幅に短くなる。このため、傍流路4の接続口16が全ての分岐路3において等しい場合、分岐路3a、3b間では、分岐路3aで吸気導入が行なわれる際に分岐路3bから残留吸気を極めて吸引しやすくなる。同様に、分岐路3c、3d間では、分岐路3dで吸気導入が行なわれる際に分岐路3cから残留吸気を極めて吸引しやすくなる。
【0055】
このため、第2組合せをなす分岐路3a、3bにおいて、分岐路3aの接続口16を分岐路3bの接続口16よりも狭く設け、同様に、分岐路3dの接続口16を分岐路3cの接続口16よりも狭く設けることで、目的ガスの成分比率の気筒間ばらつき抑制効果を顕著に得ることができる。
【0056】
〔変形例〕
吸気マニホールド1の態様は、実施例に限定されず種々の変形例を考えることができる。
例えば、実施例の吸気マニホールド1は、レシプロ4気筒の内燃機関に吸気を導入するものであったが、吸気マニホールド1により吸気導入される内燃機関は、レシプロ6気筒でもよく、V型でも水平対向型でもよい。
【0057】
また、実施例の吸気マニホールド1によれば、複数の第1組合せの中で、傍流路4による連通長さが最も短い組合せ、および、2番目に短い組合せについて、最短の連通長さと2番目に短い連通長さとが略一致しており、第2組合せが2組存在したが、第2組合せの態様はこのようなものに限定されない。
【0058】
例えば、最短の連通長さと2番目に短い連通長さとが略一致していない場合でも、連通長さが最も短い組合せ、および、2番目に短い組合せを第2組合せとして、傍流路4の接続口16に広狭差を設けてもよい。
【0059】
さらに、複数の第1組合せの中で、傍流路4による連通長さが最も短い1組の組合せのみを第2組合せとして、傍流路4の接続口16に広狭差を設けてもよく、連通長さが最も短い組合せ、2番目に短い組合せ、および3番目に短い組合せを第2組合せとして、傍流路4の接続口16に広狭差を設けてもよく、連通長さが最も短い組合せ、2番目に短い組合せ、3番目に短い組合せ、および4番目に短い組合せを第2組合せとして、傍流路4の接続口16に広狭差を設けてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 吸気マニホールド
2 サージタンク
3、3a〜3d 分岐路
4 傍流路
13A、13B 第1枝路
14a〜14d 第2枝路
16 接続口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新気を主成分とする吸気主流を受け入れるサージタンクと、
このサージタンクから分岐して前記吸気主流を内燃機関に順次に導く複数の分岐路と、
それぞれの分岐路に接続して前記吸気主流とは別の吸気傍流を前記それぞれの分岐路に導く傍流路とを備え、
前記吸気主流と前記吸気傍流とを併せて前記内燃機関に導く吸気マニホールドにおいて、
前記複数の分岐路から選択した2つの分岐路の組合せの中には、前記傍流路によって互いに連通し、かつ、前記内燃機関への吸気導入が連続する複数の第1組合せが存在し、
前記複数の第1組合せの中で、前記傍流路による連通長さが最も短い組合せを第2組合せと定義すれば、
この第2組合せをなす2つの分岐路の内、吸気導入が後に行なわれる分岐路は、吸気導入が先に行なわれる分岐路よりも、前記傍流路の接続口が狭いことを特徴とする吸気マニホールド。
【請求項2】
請求項1に記載の吸気マニホールドにおいて、
前記複数の第1組合せの中で、前記傍流路による連通長さが最も短い組合せ、および、2番目に短い組合せについて、最短の連通長さと2番目に短い連通長さとが略一致しており、
前記傍流路による前記最短の連通長さの組合せ、および、前記2番目に短い組合せを両方とも第2組合せと定義すれば、
それぞれの第2組合せをなす2つの分岐路の内、吸気導入が後に行なわれる分岐路は、吸気導入が先に行なわれる分岐路よりも、前記傍流路の接続口が狭いことを特徴とする吸気マニホールド。
【請求項3】
請求項2に記載の吸気マニホールドにおいて、
前記傍流路は、1つの上流端から少なくとも2つの第1枝路に分かれた後、さらにそれぞれの第1枝路が2つの第2枝路に分かれ、
それぞれの第1枝路から分岐した一方の第2枝路は1つの第2組合せをなす2つの分岐路の内の一方の分岐路に接続し、他方の第2枝路は他方の分岐路に接続していることを特徴とする吸気マニホールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−219626(P2012−219626A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82660(P2011−82660)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)