説明

吸気マニホールド

【課題】量産性の向上や製造コストの低減を実現した吸気マニホールドを提供する。
【解決手段】第2分割体22のリッド17は、分岐管第2半部13bの前端面よりも一段下がった位置(すなわち、振動溶着の加振方向と直交する方向で離間する位置)にあり、左右方向(すなわち、加振方向)においても分岐管第2半部13bから離間している。分岐管第2半部13bとリッド17とは上下一対の連結リブ25,26によって連結され、更に両連結リブ25,26と分岐管第2半部13bとリッド17とは連結壁27によって相互に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動溶着法によって製造される樹脂製の吸気マニホールドに係り、詳しくは量産性の向上や製造コストの低減を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用多気筒エンジンでは、シリンダヘッドにおける吸気ポート側壁面に吸気マニホールドを締結し、この吸気マニホールドを介して新気(空気や混合気)を各気筒の燃焼室に供給することが一般的である。吸気マニホールドは、エアクリーナやスロットルボディを通過した新気を一時的に貯留する吸気チャンバと、吸気チャンバ内の新気を各気筒の吸気ポートに分配する分岐管とから構成されたものがある。吸気マニホールドの製造方法としては、アルミニウム合金を素材とするダイキャスト成型が採用されることもあるが、近年では軽量化や低コスト化等を図るべく樹脂を素材とする射出成形が出現している。
【0003】
樹脂射出成形の場合、吸気チャンバや各分岐管に中空部(新気の流通路)を形成することが難しいため、個別に成型された熱可塑性樹脂製の分割体を振動溶着によって一体化させる方法が採られることが多い(特許文献1参照)。例えば、特許文献1の吸気マニホールドは第1〜第3分割体を振動溶着によって一体化させたものであり、第1分割体が吸気導入部とサージタンク主半部と分岐管主半部とを構成し、第2分割体がサージタンク主半部に溶着されるサージタンク副半部を構成し、第3分割体が分岐管主半部に溶着される分岐管副半部と吸気導入部に形成された開口部を閉鎖するリッド部とを構成している。引用文献1の場合、第1分割体における分岐管主半部の溶着側端面と開口部の溶着側端面とは、振動溶着時の加振方向で隣接するとともに、加振方向と直交する方向で同一の位置に設けられている。そのため、第3分割体では、分岐管副半部とリッド部とが同一平面上に連続している。
【特許文献1】特開2008−297960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1の場合、分岐管副半部とリッド部とが同一平面上で連続していることから、振動溶着工程における第1分割体との相対摺動があっても、第3分割体を一体品にすることができる。しかしながら、分岐管副半部とリッド部とが離間している場合や異なる平面上に存在している場合、これらは別体の部品で構成せざるを得ず、吸気マニホールドの構成部品点数が増大する他、振動溶着の工程を1回多くする必要が生じる。そして、振動溶着工程では、保持治具への部品の固定、加振装置の起動、保持治具からの完成品の取り外し等に多大な工数を要することから、構成部品点数の増大もあいまって量産性の低下や製造コストの上昇が避けられなかった。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、量産性の向上や製造コストの低減を実現した吸気マニホールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面では、吸気導入部(11)と分岐管部(13)とを有するとともに複数の分割体(21〜23)を振動溶着によって接合してなる吸気マニホールド(10)であって、分岐管第1半部(13a)および吸気導入部を有する第1分割体(21)と、前記分岐管第1半部に接合される分岐管第2半部(13b)および前記吸気導入部に接合される付加体(17)を有する第2分割体と(22)を含み、前記分岐管第2半部と前記付加体とは、所定の距離をもって離間するとともに、連結部(25〜27)によって互いに連結された。
【0007】
また、第2の側面では、前記吸気導入部に金型挿入用の開口部(32)が設けられ、前記付加体が前記開口部を覆うリッド(17)である。
【0008】
また、第3の側面では、前記連結部は、前記吸気導入部と前記付加体とを連結する複数の連結リブ(25,26)を含む。
【0009】
また、第4の側面では、前記連結部は、前記吸気導入部と前記付加体とを連結する連結壁(27)を含む。
【0010】
また、第5の側面では、前記連結部は、振動溶着時の加振方向において前記第1分割体に所定の間隙(S)をもって対峙した。
【0011】
また、第6の側面では、前記連結リブは、振動溶着時の加圧方向に延在する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第2分割体では分岐管第2半部と付加体とが連結部によって連結されているため、これら分岐管第2半部と付加体とがずれることなく第1分割体に振動溶着され、分岐管第2半部と付加体とが離間していても振動溶着工程や構成部品点数を削減することができる。また、第3の発明によれば、振動溶着時における分岐管第2半部と付加体との相対変位が効果的に抑制される。また、第4の発明によれば、射出成型時における分岐管第2半部から付加体への樹脂流動性が向上するとともに、振動溶着時における分岐管第2半部と付加体との相対変位も抑制される。また、第5の発明によれば、第1分割体と第2分割体との衝突が抑制されることで、円滑な振動溶着が可能となる。また、第6の発明によれば、加圧による付加体の撓み等が生じ難くなり、円滑な振動溶着が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る自動車用エンジンの搭載状態を示す平面図である。
【図2】実施形態に係る吸気マニホールドの斜視図である。
【図3】実施形態に係る吸気マニホールドの分解斜視図である。
【図4】実施形態に係る第1分割体の要部拡大斜視図である。
【図5】実施形態に係る第2分割体の要部拡大斜視図である。
【図6】実施形態に係る吸気マニホールドの要部拡大横断面図である。
【図7】実施形態に係る第1、第2分割体の振動溶着工程を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を自動車用直列4気筒エンジン(以下、エンジンと記す)の吸気マニホールドに適用した一実施形態を詳細に説明する。なお、各部材の説明にあたっては、図2中に上下・左右・前後を矢印で示し、位置や方向をこれらに沿って表記する。
【0015】
≪実施形態の構成≫
図1に示すように、本実施形態のエンジン1は自動車2の車体前部に吸気側が後方となるかたちで横置きに搭載されており、シリンダヘッド3の吸気ポート側壁面3aには吸気マニホールド10が締結されている。吸気マニホールド10にはスロットルボディ5が接続しており、図示しないエアクリーナからの新気がこのスロットルボディ5を介して吸気マニホールド10に導入される。
【0016】
<吸気マニホールド>
図2に示すように、吸気マニホールド10は、スロットルボディ5が締結される吸気導入部11と、吸気導入部11からの新気が流入する吸気チャンバ12と、吸気チャンバ12内の新気をエンジン1の各気筒の吸気ポート(図示せず)に導く分岐管部13とからなっており、分岐管部13の後面には吸音材を内装した遮音カバー15が締結されている。
【0017】
図3に示すように、吸気マニホールド10は、吸気導入部11と吸気チャンバ第1半部12aと分岐管第1半部13aとを有する第1分割体21と、吸気導入部11に接合されるリッド17(付加体)と前記分岐管第1半部13aに接合される分岐管第2半部13bとを有する第2分割体22と、吸気チャンバ第2半部12bをなす第3分割体23とから構成されている。第1〜第3分割体21〜23は熱可塑性樹脂の射出成形品であり、第1分割体21に対して第2,第3分割体22,23を振動溶着によって接合することで吸気マニホールド10が製造される。
【0018】
図4に示すように、第1分割体21の吸気導入部11には、射出成型時に分割金型(入れ子)を挿入する都合上、分岐管第1半部13aの後端面よりも一段下がった位置に金型開口31を有する開口部32が形成されている。なお、開口部32は、左右方向においても、分岐管第1半部13aから離間している。第2分割体22のリッド17は、第1分割体21の開口部32(金型開口31)を塞ぐものであり、図5,図6に示すように、分岐管第2半部13bの前端面よりも一段下がった位置(すなわち、後述する振動溶着の加振方向と直交する方向で離間する位置)にあり、左右方向(すなわち、加振方向)においても分岐管第2半部13bから離間している。
【0019】
本実施形態の場合、分岐管第2半部13bとリッド17とは振動溶着時の加圧方向に延在する上下一対の連結リブ25,26によって連結され、更に両連結リブ25,26と分岐管第2半部13bとリッド17とは連結壁27によって相互に連結されている。なお、図6に示すように、吸気マニホールド10の完成状態において、両連結リブ25,26および連結壁27と第1分割体21との間には所定の間隙Sが設けられている。
【0020】
≪実施形態の作用≫
吸気マニホールド10の製造ラインで第1分割体21と第2分割体22とを接合する場合、固定治具に保持された第1分割体21に対して加振治具に保持された第2分割体22を押し付けた状態で、第2分割体22を所定の周波数(例えば、100〜300Hz)をもって振動させる。この際、分岐管第2半部13bおよびリッド17は、図6,図7中に白抜きの矢印で示すように、分岐管第1半部13aと開口部32とにそれぞれ押し付けられ、オービタルモード(円運動モード)あるいはリニアモード(直線運動モード)で加振される。これにより、第1分割体21(分岐管第1半部13aおよび開口部32)と第2分割体22(分岐管第2半部13bおよびリッド17)との圧接面が摩擦熱によって溶融し、両分割体21,22が強固に一体化される。
【0021】
本実施形態の場合、分岐管第2半部13bとリッド17とは、両連結リブ25,26および連結壁27によって高い連結強度をもって連結されているため、外力(第1分割体21と第2分割体22との摩擦力等)が加わっても左右方向および上下方向に殆ど相対移動することがない。したがって、第2分割体22が加振された場合においても、分岐管第2半部13bとリッド17は、相互にずれることなく分岐管第1半部13aおよび開口部32に接合される。また、両連結リブ25,26および連結壁27と第1分割体21との間に振動溶着の加振幅よりも有意に大きな間隙S(図6参照)が設けられているため、加振時に両連結リブ25,26や連結壁27が第1分割体21に衝突して円滑な振動溶着が阻害されることがない。
【0022】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれら実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態は、自動車用直列4気筒エンジンの吸気マニホールドに本発明を適用したものであるが、本発明は、自動車や産業機械等に用いられる直列6気筒エンジンやV型6気筒エンジン等の吸気マニホールドにも当然に適用可能である。また、上記実施形態では吸気導入部の開口部を覆うリッドを付加体としたが、リッドに代えてブラケットやパイプ等を付加体としてもよい。また、上記実施形態では分岐管第2半部と付加体(リッド)とを一対の連結リブと連結壁とによって連結するようにしたが、3枚以上の連結リブで連結するようにしてもよい。その他、吸気マニホールドや第1,第2分割体の具体的構造や形状等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 吸気マニホールド
11 吸気導入部
13 分岐管部
13a 分岐管第1半部
13b 分岐管第2半部
17 リッド(付加体)
21 第1分割体
22 第2分割体
25 連結リブ
26 連結リブ
27 連結壁
32 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気導入部と分岐管部とを有するとともに複数の分割体を振動溶着によって接合してなる吸気マニホールドであって、分岐管第1半部および吸気導入部を有する第1分割体と、前記分岐管第1半部に接合される分岐管第2半部および前記吸気導入部に接合される付加体を有する第2分割体とを含み、
前記分岐管第2半部と前記付加体とは、所定の距離をもって離間するとともに、連結部によって互いに連結されたことを特徴とする吸気マニホールド。
【請求項2】
前記吸気導入部に金型挿入用の開口が設けられ、
前記付加体が前記開口を覆うリッドであることを特徴とする、請求項1に記載された吸気マニホールド。
【請求項3】
前記連結部は、前記吸気導入部と前記付加体とを連結する複数の連結リブを含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載された吸気マニホールド。
【請求項4】
前記連結部は、前記吸気導入部と前記付加体とを連結する連結壁とを含むことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された吸気マニホールド。
【請求項5】
前記連結部は、振動溶着時の加振方向において前記第1分割体に所定の間隙をもって対峙したことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された吸気マニホールド。
【請求項6】
前記連結リブは、振動溶着時の加圧方向に延在することを特徴とする、請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載された吸気マニホールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108381(P2013−108381A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252639(P2011−252639)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)