吸水性発熱貼付シート
【課題】 老廃物を含む体液を体外に排出することを促進させつつ、身体から排出された体液を吸収させることが可能で、使用感が良好な吸水性発熱貼付シートを提供する。
【解決手段】 体液透過性を有する袋体に、水に溶解して発熱する金属塩を含む発熱組成物を封入してなり、身体に貼付させるための粘着層を備え、身体から排出された体液を吸収することにより、発熱する。
【解決手段】 体液透過性を有する袋体に、水に溶解して発熱する金属塩を含む発熱組成物を封入してなり、身体に貼付させるための粘着層を備え、身体から排出された体液を吸収することにより、発熱する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汗等の体液を吸収させる吸水性の貼付シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚から排出される体液を吸収する目的で、種々の吸水性の貼付シートについて、提案がされてきた。例えば、支持体の上に接着剤を塗布しその上を離型紙により覆い、接着時に離型紙を除き、皮膚に接着するというシートが提案されている(例えば、特許文献1など)。また、血行促進効果および老廃物の体外への排出効果を付与することを目的として、通気性面を有する袋状シート内に、木酢液から得られた粉体が充填された吸水性の貼付シートが提案されている(例えば、特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−116602号公報
【特許文献2】特許第3195318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、老廃物を体外に排出することを促進するという観点からは、身体から汗等の体液を吸収させる効果をさらに向上させた貼付シートが望まれている。また、体液を吸収させた貼付シートが、長時間皮膚に密着状態となるため、使用感が不快なものとならないようにする必要もある。
【0005】
そこで、本発明は、老廃物を含む体液を体外に排出することを促進させつつ、身体から排出された体液を吸収させることが可能で、使用感が良好な吸水性発熱貼付シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る吸水性発熱貼付シートは、体液透過性を有する袋体に、水に溶解して発熱する金属塩を含む発熱組成物を封入してなり、身体に貼付させるための粘着層を備え、前記身体から排出された体液を吸収することにより、発熱することを特徴とする。
【0007】
第2の態様に係る吸水性発熱貼付シートは、第1の態様に係る吸水性発熱貼付シートであって、前記発熱組成物が、金属塩を50〜90重量%、吸水材を1〜50重量%含む。
【0008】
第3の態様に係る吸水性発熱貼付シートは、第2の態様に係る吸水性発熱貼付シートであって、前記金属塩が、塩化カルシウムである。
【0009】
第4の態様に係る吸水性発熱貼付シートは、第1から第3のいずれかの態様に係る吸水性発熱貼付シートであって、前記袋体が、外側シートと、身体に貼付する側に位置して体液透過性を有する内側シートとから構成され、内面側に粘着層を有し、かつ前記外側シート周縁よりも外方に延びる巾広な固定シートを、前記外側シートの外面側に被着し、前記粘着層の少なくとも前記外側シート周縁より外方に延びた部分に離型紙を設けてなる。
【0010】
第5の態様に係る吸水性発熱貼付シートは、第1から第3のいずれかの態様に係る吸水性発熱貼付シートであって、前記袋体が、外側シートと、身体に貼付する側に位置して体液透過性を有する内側シートとから構成され、前記内側シートの身体に貼付される外面側に粘着層および離型紙を設けてなる。
【0011】
第6の態様に係る吸水性発熱貼付シートは、第4または第5の態様に係る吸水性発熱貼付シートであって、前記内側シートが、不織布よりなる。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様に係る吸水性発熱貼付シートによれば、体液透過性を有する袋体に水に溶解して発熱する金属塩を含む発熱組成物を封入し、発熱組成物にはあえて水を含ませずに、身体から排出された体液を吸収させて、吸収された体液によって金属塩が発熱する。そして、発生した熱が、身体の貼付部位に付与される。したがって、熱によって老廃物を含む体液を体外に排出することを促進させ、より多くの体液を吸収させることが可能となる。
【0013】
第2の態様に係る吸水性発熱貼付シートによれば、前記発熱組成物が、金属塩を50〜90重量%、吸水材を1〜50重量%含むので、身体にとって適切な温度に発熱して体液の排出を向上させることが可能となるとともに、体液の吸収効果が高くなり、良好な使用感を得ることができる。
【0014】
第3の態様に係る吸水性発熱貼付シートによれば、発熱効果を向上させることが可能となる。
【0015】
第4の態様に係る吸水性発熱貼付シートによれば、体液の排出を促す貼付対象部位に適切に貼付することが可能となり、効率よく体液を吸収することが可能となる。
【0016】
第5の態様に係る吸水性発熱貼付シートによれば、吸水性発熱貼付シートをコンパクトに構成することが可能となる。
【0017】
第6の態様に係る吸水性発熱貼付シートによれば、内側シートが不織布よりなるため、体液透過性が良好となり、体液の吸収および発熱の効果を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態である吸水性発熱貼付シートの構成を示す概略断面図である。
【図2】皮膚に貼付した状態の第1実施形態である吸水性発熱貼付シートの構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態である吸水性発熱貼付シートの構成を示す概略断面図である。
【図4】皮膚に貼付した状態の第2実施形態である吸水性発熱貼付シートの構成を示す概略断面図である。
【図5】第2実施形態における離型紙側から内側シートの方向に向けて見た粘着層の形状の例を示す図である。
【図6】第2実施形態における離型紙側から内側シートの方向に向けて見た粘着層の形状の例を示す図である。
【図7】第2実施形態における離型紙側から内側シートの方向に向けて見た粘着層の形状の例を示す図である。
【図8】第2実施形態における離型紙側から内側シートの方向に向けて見た粘着層の形状の例を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態である吸水性発熱貼付シートの構成を示す概略断面図である。
【図10】皮膚に貼付した状態の第3実施形態である吸水性発熱貼付シートの構成を示す概略断面図である。
【図11】貼付時間と足裏温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態である吸水性発熱貼付シート1Aの構成を示す概略断面図である。吸水性発熱貼付シート1Aは、体液透過性を有する袋体10を備える。袋体10は、外側シート7と、身体に貼付する側に位置して体液透過性を有する内側シート9の外周縁がヒートシールされて袋状に構成されたものである。袋体10には、水に溶解して発熱する金属塩を含む発熱組成物4が封入されている。また、外側シート7の周縁よりも外方に延びる巾広な固定シート5は、内面側に粘着層を有しており、外側シート7の外面側に被着される。
【0020】
さらに、使用前の粘着層6を保護すべく、粘着層6の延出部分および内側シート9の外面側に離型紙11が付着されている。第1実施形態においては、内側シート9を覆うように離型紙11を設けているが、少なくとも粘着層6の延出部分のみに設けてもよい。そして、図2に示すように、離型紙11をはがして、使用者の足裏等の皮膚20に貼りつけて使用するものである。そして、身体の貼付部位から排出された体液が、内側シート9を透過して吸水性発熱貼付シート1Aに吸収される。吸水性発熱貼付シート1Aは、吸収された体液と袋体10に封入されている水に溶解して発熱する金属塩とが反応することによって、発熱することを特徴とするものである。発生した熱は、内側シート9を介して使用者の皮膚20に付与される。
【0021】
発熱組成物4に含まれる金属塩は、50〜90重量%が好ましく、より好ましくは70〜90重量%である。金属塩が50重量%未満の場合は発熱が十分でなく、金属塩が90重量%を超える場合は発熱量が多くなるが、溶解した金属塩によるべたつき感が強くなる。
【0022】
発熱組成物4に含まれる吸水材は、10〜50重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。吸水材が10重量%未満の場合は、金属塩が吸着した体液を保持する能力が低いために、体液がシート外に浸み出してしまい、皮膚がべたついてしまい、また、衣類、寝具等を汚す原因にもなる。一方、吸水材が50重量%を超える場合は、体液の吸収能が良好となるが、発熱に十分な量の金属塩を配合できなくなる。本発明の第1実施形態である吸水性発熱貼付シート1Aは、発熱組成物4に含まれる金属塩が50〜90重量%かつ吸水材が10〜50重量%という配合割合であることによって、身体にとって適切な温度に発熱して体液の排出を向上させることが可能となるとともに、体液の吸収効果が高くなり、良好な使用感を得ることができる。また、吸水性発熱貼付シート1Aの発熱効果によって、体液の排出を向上させるだけでなく、皮膚に温感を付与することによる使用感の向上を図ることも可能となる。
【0023】
水に溶解して発熱する金属塩としては、公知のものを使用することができ、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなどの金属塩化物や、硫酸カルシウムまたは硫酸マグネシウムなどの金属硫酸塩等があげられる。また、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等はその水和物も含まれる。
【0024】
吸水材は、内側シート9を介して吸水された体液を保持し、金属塩の発熱反応に供するものである。吸水剤は、公知のものを使用することができ、吸水性のある物質であれば特に限定されないが、例えば、木紛、デンプン、デキストリン等の粉末、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、シリカゲル、ヒル石、パーライト、シリカ系多孔質物質、アルミナ、パルプ、木紛、デンプン、デキストリン、吸水性ポリマー等およびこれらの混合物があげられる。また、木紛、デンプン、デキストリン等の粉末に、ユーカリ、ヨモギ等の植物の葉などを粉末化したものを含有させて使用することも可能である。なお、必要に応じてその他の成分を加えることも可能である。
【0025】
袋体10を構成する外側シート7は、合成樹脂フィルムによって構成される。具体的には例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタート、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等、その他の公知の樹脂のフィルムを任意に選択して使用することができる。また、これらのシートは、単層または2種以上の多層構造にしてもよい。さらに、外側シート7は、水分の蒸発を抑制するために、合成樹脂フィルムに酸化珪素、アルミニウム、酸化アルミニウムなどを蒸着させててもよい。透明蒸着フィルムとしては、アルミニウムを蒸着した透明蒸着フィルムの場合、内部が僅かに見えるので特に好ましい。
【0026】
固定シート5および袋体10を構成する内側シート9は、合成樹脂からなる不織布によって構成される。不織布の原料となる合成樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維などを用いることができる。不織布の製造方法としては、スパンボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法、などの公知の方法により製造することができる。内側シート9が不織布よりなるため、体液透過性が良好となり、体液の吸収および発熱の効果を向上させることが可能となる。
【0027】
粘着層6は、固定シート5の内面側に設けられている。粘着層6の材質としては、皮膚に貼ることができるものであればとくに限定されないが、例えば、公知のアクリル系粘着剤や、ゴム系ホットメルト等の粘着剤等があげられる。
【0028】
離型紙11としては、基材となる紙と、粘着層6に接する剥離層から構成されている。基材および剥離層は公知のものを選択できる。また、図1の粘着層6のうち、貼付部位の皮膚20に直接接触する外周部分にのみ離型紙11を設けてもよい。
【0029】
本実施形態によれば、体液透過性を有する袋体4に、水に溶解して発熱する金属塩を含む発熱組成物4を封入し、発熱組成物4にはあえて水を含ませずに、身体から排出された体液を吸収させて、吸収された体液によって金属塩が身体にとって適切な温度に発熱する。そして、発生した熱が、身体の貼付部位に付与される。したがって、熱によって老廃物を含む体液を体外に排出することを促進させ、より多くの体液を吸収させることが可能となる。また、体液の吸収効果が高いため、吸水性発熱貼付シート1Aから汗が浸み出すことがなく、長時間皮膚に密着状態となるにも係らず、良好な使用感を得ることができる。さらに、吸水性発熱貼付シート1Aの発熱効果により、皮膚に温感を与え、良好な使用感を得ることができる。
[第2実施形態]
【0030】
本発明の吸水性発熱貼付シートの第2実施形態では、内側シート9の身体に貼付される外面側に粘着層6を設け、さらにその上に離型紙11を設けている。図3は、本発明の第2実施形態である吸水性発熱貼付シート1Bの構成を示す概略断面図である。図4は、皮膚に貼付した状態の第2実施形態である吸水性発熱貼付シート1Bの構成を示す概略断面図である。第2実施形態の機能構成は、前述の第1実施形態と類似しているため、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0031】
吸水性発熱貼付シート1Bにおいては、袋体10が、外側シート7と、体液透過性を有する内側シート9とから構成され、内側シート9側が身体に貼付される。図4に示すように、離型紙11をはがして、内側シート9の外面側に設けられた粘着層6によって皮膚20に貼付するものである。したがって、吸水性発熱貼付シートの大きさをコンパクトに構成することが可能となる。
【0032】
また、吸水性発熱貼付シート1Bの粘着層6においては、内側シート9の体液透過性を著しく損なうことがないように、内側シート9の外面側に間隙をあけて設けられている。したがって、第2実施形態の吸水性発熱貼付シート1Bにおいても、前述の第1実施形態と同様、熱によって老廃物を含む体液を体外に排出することを促進させ、より多くの体液を吸収させることが可能となる。
【0033】
図5〜図8は、第2実施形態において離型紙11側から内側シート9の方向に向けて見た粘着層6の形状の例を示す図である。粘着層6は、例えば、内側シート9の外面側に、図5に示したような5mm〜10mm間隔の櫛引状の粘着層6A、図6に示したような斜向状の粘着層6B、図7に示したような格子状の粘着層6Cのように設けることができる。また、アクリル系粘着剤に水を混ぜ、該粘着剤を沸騰させることにより、気泡を含んだ粘着剤とし、これを吹き付けることにより、図8に示すように、粘着剤がほぼ円形に存在しない箇所を有するか、ほぼ円形状に透水性および通気性を有する程度に塗布されている箇所を有する粘着層6Dのような形状にしてもよい。さらに、水玉形状等、種々の形状に配置された粘着部から構成することができ、粘着部の大きさや形状については特に限定されない。
[第3実施形態]
【0034】
本発明の吸水性発熱貼付シートの第3実施形態では、片面側に粘着層を有する固定シートと、発熱組成物が封入された袋体とが分離した構成となっている。図9は、本発明の第3実施形態である吸水性発熱貼付シート1Cの構成を示す概略断面図である。図10は、皮膚に貼付した状態の第3実施形態である吸水性発熱貼付シート1Cの構成を示す概略断面図である。第3実施形態の機能構成は、前述の第1実施形態と類似しているため、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0035】
吸水性発熱貼付シート1Cにおいては、粘着固定シート15と発熱シート16とが分離した構成となっている。粘着固定シート15は、片面側に粘着層6を有し、外側シート7の周縁よりも外方に延びる巾広な固定シート5と、使用前の粘着層6を保護するために粘着層6の外面側に付着された離型紙11とを備える。発熱シート16は、発熱組成物4と発熱組成物4を封入するための袋体10とを備える。そして、図9,10に示すように、離型紙11をはがして、使用者の足裏等の皮膚20に貼りつけて使用するものである。第3実施形態の吸水性発熱貼付シート1Cにおいても、前述の第1実施形態と同様、熱によって老廃物を含む体液を体外に排出することを促進させ、より多くの体液を吸収させることが可能となる。また、粘着固定シート15と発熱シート16とが分離した構成となっているので、使用中に粘着固定シート15の粘着力が低下した場合に、粘着固定シート15のみを交換することも可能となる。
[実施例]
【0036】
以下、本発明の吸水性発熱貼付シートを実施例および比較例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例1〜3および比較例1〜3ともに、第1実施形態と同様の形状の吸水性発熱貼付シートを作成した。また、実施例1〜3および比較例1〜3ともに、固定シートはポリプロピレン繊維の不織布を用い、外側シートはポリエステル層の外側にポリプロピレン層を積層した2層の樹脂フィルムにおいて、ポリエステル層の内側(内側シート側)にアルミ蒸着加工を行った。また、粘着剤はアクリル系粘着剤を用い、内側シートはポリプロピレン繊維の不織布を用いた。実施例および比較例の吸水性発熱貼付シートの貼付部分(内側シート)の大きさは、75mm×45mm、発熱組成物の重量は、4.5gとした。実施例1〜3および比較例1〜3の発熱組成物の構成を表1に示す。実施例1〜3および比較例1〜2では、金属塩として塩化カルシウム二水和物を用いた。比較例3では、従来の吸水性発熱貼付シートと同様、袋体には吸収材である木粉のみを封入した。そして、離型紙を剥がして、成人男子の足裏に吸水性発熱貼付シートを貼り付けて測定を行った。
【0037】
【表1】
【0038】
(1)汗の吸収量
実施例1〜3および比較例1〜3について、貼付時間は4時間における汗の吸収量を測定した。測定は、室温22℃、湿度52%の条件下で実施例1〜3および比較例1〜3について各3サンプルを測定した。各サンプルの重量増加量を汗の吸収量とし、各3サンプルの平均値の結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2に示すように、実施例1〜3の汗の吸収量は、0.7〜0.8gであった。一方、比較例1〜3の汗の吸収量は、0.4〜0.7gであり、実施例1〜3は全て良好な結果が得られた。
【0041】
(2)貼付部位の温度
実施例1〜3および比較例1〜3について、吸水性発熱貼付シートを貼付した足裏の温度を測定した。
測定時の気温は22℃前後、湿度52%であった。貼付時間は240分まで測定した。吸水性発熱貼付シートと足裏の貼付部位との間に熱電対を貼り付け、足裏の表面温度の変化が記録できるようにセットした。
測定結果を図11に示す。図11は、貼付時間と足裏温度との関係を示すグラフである。グラフの横軸は貼付時間(分)を表し、グラフの縦軸は足裏表面の温度(℃)を表す。図11に示すように、実施例1〜3は、良好に温度が上昇したが、比較例1〜2においては、32℃付近までしか温度が上昇しなかった。また、比較例3においては、30℃未満であった。
【0042】
(3)最高温度
足裏温度の測定値における最高温度について、実施例1〜3および比較例1〜3の評価結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
測定値の最高温度について次の基準で評価した。
◎:35℃以上
○:33℃〜35℃未満
△:31℃〜33℃未満
×:31℃未満
表3に示すように、実施例1〜3は比較例1〜3と比較して、最高温度について良好であった。
【0045】
(4)温度持続性
足裏温度の測定値における温度持続性について、実施例1〜3および比較例1〜3の評価結果を表3に示す。
測定値の温度持続性について次の基準で評価した。
◎:30℃以上の持続時間が130分以上
○:30℃以上の持続時間が100分〜130分未満
△:30℃以上の持続時間が70分〜100分未満
×:30℃以上の持続時間が70分未満
表3に示すように、実施例1〜3は比較例1〜3と比較して、温度持続性について良好であった。
【0046】
(5)最高温度までの立ち上がり
足裏温度の測定値における最高温度までの立ち上がりについて、実施例1〜3および比較例1〜3の評価結果を表3に示す。
足裏温度が最高温度に到達するまでの時間に基づいて、最高温度までの立ち上がりを次の基準で評価した。
◎:20分未満
○:20分〜30分未満
△:30〜40分未満
×:40分以上
なお、比較例3は、足裏温度の最高温度が30℃以上に達することがなかったので、評価結果を×とした。表3に示すように、実施例1〜3は比較例1〜3と比較して、最高温度までの立ち上がりについて良好であった。
【0047】
(6)べたつき感
実施例1〜3および比較例1〜3を足裏に貼付している間において、吸水性発熱貼付シートから浸み出した汗によるべたつき感について、実施例1〜3および比較例1〜3の評価結果を表3に示す。
べたつき感について次の基準で評価した。
◎:べたつき感がなく、さらっとしている。
○:べたつき感がほとんどない。
△:べたつき感が少し感じられる。
×:べたつき感が強い。
表3に示すように、実施例1〜3は比較例1〜3と比較して、べたつき感が少なく良好であった。
【0048】
(7)発熱効果およびべたつき感における総合評価
上述の最高温度、温度持続性、最高温度までの立ち上がりからなる発熱効果とべたつき感とを総合的に判断した実施例1〜3および比較例1〜3の総合評価結果を表3に示す。
総合評価について次の基準で評価した。
◎:最高温度、温度持続性、最高温度までの立ち上がり、べたつき感についての評価結果が◎か○のみである。
○:最高温度、温度持続性、最高温度までの立ち上がり、べたつき感についての評価結果が◎、○、△からなる。
△:最高温度、温度持続性、最高温度までの立ち上がり、べたつき感についての評価結果が×を1つ含む。
×:最高温度、温度持続性、最高温度までの立ち上がり、べたつき感についての評価結果が×を2つ以上含む。
【0049】
表3に示すように、試験の結果において、本発明の吸水性発熱貼付シートは、最高温度までの立ち上がり時間が速く、最高温度や温度持続性の点でも満足し得る性能が得られ、良好な発熱効果を示した。また、本発明の吸水性発熱貼付シートは、べたつき感が少なく、使用感が良好であった。これに対し、比較例1は、温度持続性、発汗効果で優れた結果を得られたものの、最高温度までの立ち上がりが悪く、総合評価では実施例には及ばなかった。比較例2は、最高温度、最高温度までの立ち上がりで優れた結果を得られたものの、べたつき感が強く、総合評価では実施例には及ばなかった。比較例3は、べたつき感がなく、使用感で優れた結果を得られたものの、発熱効果が劣っていた。また、実施例1〜3はすべて汗の吸収量においても良好な結果を得られた。以上により、本発明の吸水性発熱貼付シートは、総合的に良好な結果が得られることが示された。
【0050】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。上記実施形態で説明した構成は、矛盾が生じない限り適宜一部の構成を入れ換えてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 吸水性発熱貼付シート
4 発熱組成物
5 固定シート
6 粘着層
7 外側シート
9 内側シート
10 袋体
11 離型紙
【技術分野】
【0001】
本発明は、汗等の体液を吸収させる吸水性の貼付シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚から排出される体液を吸収する目的で、種々の吸水性の貼付シートについて、提案がされてきた。例えば、支持体の上に接着剤を塗布しその上を離型紙により覆い、接着時に離型紙を除き、皮膚に接着するというシートが提案されている(例えば、特許文献1など)。また、血行促進効果および老廃物の体外への排出効果を付与することを目的として、通気性面を有する袋状シート内に、木酢液から得られた粉体が充填された吸水性の貼付シートが提案されている(例えば、特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−116602号公報
【特許文献2】特許第3195318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、老廃物を体外に排出することを促進するという観点からは、身体から汗等の体液を吸収させる効果をさらに向上させた貼付シートが望まれている。また、体液を吸収させた貼付シートが、長時間皮膚に密着状態となるため、使用感が不快なものとならないようにする必要もある。
【0005】
そこで、本発明は、老廃物を含む体液を体外に排出することを促進させつつ、身体から排出された体液を吸収させることが可能で、使用感が良好な吸水性発熱貼付シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る吸水性発熱貼付シートは、体液透過性を有する袋体に、水に溶解して発熱する金属塩を含む発熱組成物を封入してなり、身体に貼付させるための粘着層を備え、前記身体から排出された体液を吸収することにより、発熱することを特徴とする。
【0007】
第2の態様に係る吸水性発熱貼付シートは、第1の態様に係る吸水性発熱貼付シートであって、前記発熱組成物が、金属塩を50〜90重量%、吸水材を1〜50重量%含む。
【0008】
第3の態様に係る吸水性発熱貼付シートは、第2の態様に係る吸水性発熱貼付シートであって、前記金属塩が、塩化カルシウムである。
【0009】
第4の態様に係る吸水性発熱貼付シートは、第1から第3のいずれかの態様に係る吸水性発熱貼付シートであって、前記袋体が、外側シートと、身体に貼付する側に位置して体液透過性を有する内側シートとから構成され、内面側に粘着層を有し、かつ前記外側シート周縁よりも外方に延びる巾広な固定シートを、前記外側シートの外面側に被着し、前記粘着層の少なくとも前記外側シート周縁より外方に延びた部分に離型紙を設けてなる。
【0010】
第5の態様に係る吸水性発熱貼付シートは、第1から第3のいずれかの態様に係る吸水性発熱貼付シートであって、前記袋体が、外側シートと、身体に貼付する側に位置して体液透過性を有する内側シートとから構成され、前記内側シートの身体に貼付される外面側に粘着層および離型紙を設けてなる。
【0011】
第6の態様に係る吸水性発熱貼付シートは、第4または第5の態様に係る吸水性発熱貼付シートであって、前記内側シートが、不織布よりなる。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様に係る吸水性発熱貼付シートによれば、体液透過性を有する袋体に水に溶解して発熱する金属塩を含む発熱組成物を封入し、発熱組成物にはあえて水を含ませずに、身体から排出された体液を吸収させて、吸収された体液によって金属塩が発熱する。そして、発生した熱が、身体の貼付部位に付与される。したがって、熱によって老廃物を含む体液を体外に排出することを促進させ、より多くの体液を吸収させることが可能となる。
【0013】
第2の態様に係る吸水性発熱貼付シートによれば、前記発熱組成物が、金属塩を50〜90重量%、吸水材を1〜50重量%含むので、身体にとって適切な温度に発熱して体液の排出を向上させることが可能となるとともに、体液の吸収効果が高くなり、良好な使用感を得ることができる。
【0014】
第3の態様に係る吸水性発熱貼付シートによれば、発熱効果を向上させることが可能となる。
【0015】
第4の態様に係る吸水性発熱貼付シートによれば、体液の排出を促す貼付対象部位に適切に貼付することが可能となり、効率よく体液を吸収することが可能となる。
【0016】
第5の態様に係る吸水性発熱貼付シートによれば、吸水性発熱貼付シートをコンパクトに構成することが可能となる。
【0017】
第6の態様に係る吸水性発熱貼付シートによれば、内側シートが不織布よりなるため、体液透過性が良好となり、体液の吸収および発熱の効果を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態である吸水性発熱貼付シートの構成を示す概略断面図である。
【図2】皮膚に貼付した状態の第1実施形態である吸水性発熱貼付シートの構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態である吸水性発熱貼付シートの構成を示す概略断面図である。
【図4】皮膚に貼付した状態の第2実施形態である吸水性発熱貼付シートの構成を示す概略断面図である。
【図5】第2実施形態における離型紙側から内側シートの方向に向けて見た粘着層の形状の例を示す図である。
【図6】第2実施形態における離型紙側から内側シートの方向に向けて見た粘着層の形状の例を示す図である。
【図7】第2実施形態における離型紙側から内側シートの方向に向けて見た粘着層の形状の例を示す図である。
【図8】第2実施形態における離型紙側から内側シートの方向に向けて見た粘着層の形状の例を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態である吸水性発熱貼付シートの構成を示す概略断面図である。
【図10】皮膚に貼付した状態の第3実施形態である吸水性発熱貼付シートの構成を示す概略断面図である。
【図11】貼付時間と足裏温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態である吸水性発熱貼付シート1Aの構成を示す概略断面図である。吸水性発熱貼付シート1Aは、体液透過性を有する袋体10を備える。袋体10は、外側シート7と、身体に貼付する側に位置して体液透過性を有する内側シート9の外周縁がヒートシールされて袋状に構成されたものである。袋体10には、水に溶解して発熱する金属塩を含む発熱組成物4が封入されている。また、外側シート7の周縁よりも外方に延びる巾広な固定シート5は、内面側に粘着層を有しており、外側シート7の外面側に被着される。
【0020】
さらに、使用前の粘着層6を保護すべく、粘着層6の延出部分および内側シート9の外面側に離型紙11が付着されている。第1実施形態においては、内側シート9を覆うように離型紙11を設けているが、少なくとも粘着層6の延出部分のみに設けてもよい。そして、図2に示すように、離型紙11をはがして、使用者の足裏等の皮膚20に貼りつけて使用するものである。そして、身体の貼付部位から排出された体液が、内側シート9を透過して吸水性発熱貼付シート1Aに吸収される。吸水性発熱貼付シート1Aは、吸収された体液と袋体10に封入されている水に溶解して発熱する金属塩とが反応することによって、発熱することを特徴とするものである。発生した熱は、内側シート9を介して使用者の皮膚20に付与される。
【0021】
発熱組成物4に含まれる金属塩は、50〜90重量%が好ましく、より好ましくは70〜90重量%である。金属塩が50重量%未満の場合は発熱が十分でなく、金属塩が90重量%を超える場合は発熱量が多くなるが、溶解した金属塩によるべたつき感が強くなる。
【0022】
発熱組成物4に含まれる吸水材は、10〜50重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。吸水材が10重量%未満の場合は、金属塩が吸着した体液を保持する能力が低いために、体液がシート外に浸み出してしまい、皮膚がべたついてしまい、また、衣類、寝具等を汚す原因にもなる。一方、吸水材が50重量%を超える場合は、体液の吸収能が良好となるが、発熱に十分な量の金属塩を配合できなくなる。本発明の第1実施形態である吸水性発熱貼付シート1Aは、発熱組成物4に含まれる金属塩が50〜90重量%かつ吸水材が10〜50重量%という配合割合であることによって、身体にとって適切な温度に発熱して体液の排出を向上させることが可能となるとともに、体液の吸収効果が高くなり、良好な使用感を得ることができる。また、吸水性発熱貼付シート1Aの発熱効果によって、体液の排出を向上させるだけでなく、皮膚に温感を付与することによる使用感の向上を図ることも可能となる。
【0023】
水に溶解して発熱する金属塩としては、公知のものを使用することができ、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなどの金属塩化物や、硫酸カルシウムまたは硫酸マグネシウムなどの金属硫酸塩等があげられる。また、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等はその水和物も含まれる。
【0024】
吸水材は、内側シート9を介して吸水された体液を保持し、金属塩の発熱反応に供するものである。吸水剤は、公知のものを使用することができ、吸水性のある物質であれば特に限定されないが、例えば、木紛、デンプン、デキストリン等の粉末、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、シリカゲル、ヒル石、パーライト、シリカ系多孔質物質、アルミナ、パルプ、木紛、デンプン、デキストリン、吸水性ポリマー等およびこれらの混合物があげられる。また、木紛、デンプン、デキストリン等の粉末に、ユーカリ、ヨモギ等の植物の葉などを粉末化したものを含有させて使用することも可能である。なお、必要に応じてその他の成分を加えることも可能である。
【0025】
袋体10を構成する外側シート7は、合成樹脂フィルムによって構成される。具体的には例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタート、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等、その他の公知の樹脂のフィルムを任意に選択して使用することができる。また、これらのシートは、単層または2種以上の多層構造にしてもよい。さらに、外側シート7は、水分の蒸発を抑制するために、合成樹脂フィルムに酸化珪素、アルミニウム、酸化アルミニウムなどを蒸着させててもよい。透明蒸着フィルムとしては、アルミニウムを蒸着した透明蒸着フィルムの場合、内部が僅かに見えるので特に好ましい。
【0026】
固定シート5および袋体10を構成する内側シート9は、合成樹脂からなる不織布によって構成される。不織布の原料となる合成樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維などを用いることができる。不織布の製造方法としては、スパンボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法、などの公知の方法により製造することができる。内側シート9が不織布よりなるため、体液透過性が良好となり、体液の吸収および発熱の効果を向上させることが可能となる。
【0027】
粘着層6は、固定シート5の内面側に設けられている。粘着層6の材質としては、皮膚に貼ることができるものであればとくに限定されないが、例えば、公知のアクリル系粘着剤や、ゴム系ホットメルト等の粘着剤等があげられる。
【0028】
離型紙11としては、基材となる紙と、粘着層6に接する剥離層から構成されている。基材および剥離層は公知のものを選択できる。また、図1の粘着層6のうち、貼付部位の皮膚20に直接接触する外周部分にのみ離型紙11を設けてもよい。
【0029】
本実施形態によれば、体液透過性を有する袋体4に、水に溶解して発熱する金属塩を含む発熱組成物4を封入し、発熱組成物4にはあえて水を含ませずに、身体から排出された体液を吸収させて、吸収された体液によって金属塩が身体にとって適切な温度に発熱する。そして、発生した熱が、身体の貼付部位に付与される。したがって、熱によって老廃物を含む体液を体外に排出することを促進させ、より多くの体液を吸収させることが可能となる。また、体液の吸収効果が高いため、吸水性発熱貼付シート1Aから汗が浸み出すことがなく、長時間皮膚に密着状態となるにも係らず、良好な使用感を得ることができる。さらに、吸水性発熱貼付シート1Aの発熱効果により、皮膚に温感を与え、良好な使用感を得ることができる。
[第2実施形態]
【0030】
本発明の吸水性発熱貼付シートの第2実施形態では、内側シート9の身体に貼付される外面側に粘着層6を設け、さらにその上に離型紙11を設けている。図3は、本発明の第2実施形態である吸水性発熱貼付シート1Bの構成を示す概略断面図である。図4は、皮膚に貼付した状態の第2実施形態である吸水性発熱貼付シート1Bの構成を示す概略断面図である。第2実施形態の機能構成は、前述の第1実施形態と類似しているため、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0031】
吸水性発熱貼付シート1Bにおいては、袋体10が、外側シート7と、体液透過性を有する内側シート9とから構成され、内側シート9側が身体に貼付される。図4に示すように、離型紙11をはがして、内側シート9の外面側に設けられた粘着層6によって皮膚20に貼付するものである。したがって、吸水性発熱貼付シートの大きさをコンパクトに構成することが可能となる。
【0032】
また、吸水性発熱貼付シート1Bの粘着層6においては、内側シート9の体液透過性を著しく損なうことがないように、内側シート9の外面側に間隙をあけて設けられている。したがって、第2実施形態の吸水性発熱貼付シート1Bにおいても、前述の第1実施形態と同様、熱によって老廃物を含む体液を体外に排出することを促進させ、より多くの体液を吸収させることが可能となる。
【0033】
図5〜図8は、第2実施形態において離型紙11側から内側シート9の方向に向けて見た粘着層6の形状の例を示す図である。粘着層6は、例えば、内側シート9の外面側に、図5に示したような5mm〜10mm間隔の櫛引状の粘着層6A、図6に示したような斜向状の粘着層6B、図7に示したような格子状の粘着層6Cのように設けることができる。また、アクリル系粘着剤に水を混ぜ、該粘着剤を沸騰させることにより、気泡を含んだ粘着剤とし、これを吹き付けることにより、図8に示すように、粘着剤がほぼ円形に存在しない箇所を有するか、ほぼ円形状に透水性および通気性を有する程度に塗布されている箇所を有する粘着層6Dのような形状にしてもよい。さらに、水玉形状等、種々の形状に配置された粘着部から構成することができ、粘着部の大きさや形状については特に限定されない。
[第3実施形態]
【0034】
本発明の吸水性発熱貼付シートの第3実施形態では、片面側に粘着層を有する固定シートと、発熱組成物が封入された袋体とが分離した構成となっている。図9は、本発明の第3実施形態である吸水性発熱貼付シート1Cの構成を示す概略断面図である。図10は、皮膚に貼付した状態の第3実施形態である吸水性発熱貼付シート1Cの構成を示す概略断面図である。第3実施形態の機能構成は、前述の第1実施形態と類似しているため、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0035】
吸水性発熱貼付シート1Cにおいては、粘着固定シート15と発熱シート16とが分離した構成となっている。粘着固定シート15は、片面側に粘着層6を有し、外側シート7の周縁よりも外方に延びる巾広な固定シート5と、使用前の粘着層6を保護するために粘着層6の外面側に付着された離型紙11とを備える。発熱シート16は、発熱組成物4と発熱組成物4を封入するための袋体10とを備える。そして、図9,10に示すように、離型紙11をはがして、使用者の足裏等の皮膚20に貼りつけて使用するものである。第3実施形態の吸水性発熱貼付シート1Cにおいても、前述の第1実施形態と同様、熱によって老廃物を含む体液を体外に排出することを促進させ、より多くの体液を吸収させることが可能となる。また、粘着固定シート15と発熱シート16とが分離した構成となっているので、使用中に粘着固定シート15の粘着力が低下した場合に、粘着固定シート15のみを交換することも可能となる。
[実施例]
【0036】
以下、本発明の吸水性発熱貼付シートを実施例および比較例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例1〜3および比較例1〜3ともに、第1実施形態と同様の形状の吸水性発熱貼付シートを作成した。また、実施例1〜3および比較例1〜3ともに、固定シートはポリプロピレン繊維の不織布を用い、外側シートはポリエステル層の外側にポリプロピレン層を積層した2層の樹脂フィルムにおいて、ポリエステル層の内側(内側シート側)にアルミ蒸着加工を行った。また、粘着剤はアクリル系粘着剤を用い、内側シートはポリプロピレン繊維の不織布を用いた。実施例および比較例の吸水性発熱貼付シートの貼付部分(内側シート)の大きさは、75mm×45mm、発熱組成物の重量は、4.5gとした。実施例1〜3および比較例1〜3の発熱組成物の構成を表1に示す。実施例1〜3および比較例1〜2では、金属塩として塩化カルシウム二水和物を用いた。比較例3では、従来の吸水性発熱貼付シートと同様、袋体には吸収材である木粉のみを封入した。そして、離型紙を剥がして、成人男子の足裏に吸水性発熱貼付シートを貼り付けて測定を行った。
【0037】
【表1】
【0038】
(1)汗の吸収量
実施例1〜3および比較例1〜3について、貼付時間は4時間における汗の吸収量を測定した。測定は、室温22℃、湿度52%の条件下で実施例1〜3および比較例1〜3について各3サンプルを測定した。各サンプルの重量増加量を汗の吸収量とし、各3サンプルの平均値の結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2に示すように、実施例1〜3の汗の吸収量は、0.7〜0.8gであった。一方、比較例1〜3の汗の吸収量は、0.4〜0.7gであり、実施例1〜3は全て良好な結果が得られた。
【0041】
(2)貼付部位の温度
実施例1〜3および比較例1〜3について、吸水性発熱貼付シートを貼付した足裏の温度を測定した。
測定時の気温は22℃前後、湿度52%であった。貼付時間は240分まで測定した。吸水性発熱貼付シートと足裏の貼付部位との間に熱電対を貼り付け、足裏の表面温度の変化が記録できるようにセットした。
測定結果を図11に示す。図11は、貼付時間と足裏温度との関係を示すグラフである。グラフの横軸は貼付時間(分)を表し、グラフの縦軸は足裏表面の温度(℃)を表す。図11に示すように、実施例1〜3は、良好に温度が上昇したが、比較例1〜2においては、32℃付近までしか温度が上昇しなかった。また、比較例3においては、30℃未満であった。
【0042】
(3)最高温度
足裏温度の測定値における最高温度について、実施例1〜3および比較例1〜3の評価結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
測定値の最高温度について次の基準で評価した。
◎:35℃以上
○:33℃〜35℃未満
△:31℃〜33℃未満
×:31℃未満
表3に示すように、実施例1〜3は比較例1〜3と比較して、最高温度について良好であった。
【0045】
(4)温度持続性
足裏温度の測定値における温度持続性について、実施例1〜3および比較例1〜3の評価結果を表3に示す。
測定値の温度持続性について次の基準で評価した。
◎:30℃以上の持続時間が130分以上
○:30℃以上の持続時間が100分〜130分未満
△:30℃以上の持続時間が70分〜100分未満
×:30℃以上の持続時間が70分未満
表3に示すように、実施例1〜3は比較例1〜3と比較して、温度持続性について良好であった。
【0046】
(5)最高温度までの立ち上がり
足裏温度の測定値における最高温度までの立ち上がりについて、実施例1〜3および比較例1〜3の評価結果を表3に示す。
足裏温度が最高温度に到達するまでの時間に基づいて、最高温度までの立ち上がりを次の基準で評価した。
◎:20分未満
○:20分〜30分未満
△:30〜40分未満
×:40分以上
なお、比較例3は、足裏温度の最高温度が30℃以上に達することがなかったので、評価結果を×とした。表3に示すように、実施例1〜3は比較例1〜3と比較して、最高温度までの立ち上がりについて良好であった。
【0047】
(6)べたつき感
実施例1〜3および比較例1〜3を足裏に貼付している間において、吸水性発熱貼付シートから浸み出した汗によるべたつき感について、実施例1〜3および比較例1〜3の評価結果を表3に示す。
べたつき感について次の基準で評価した。
◎:べたつき感がなく、さらっとしている。
○:べたつき感がほとんどない。
△:べたつき感が少し感じられる。
×:べたつき感が強い。
表3に示すように、実施例1〜3は比較例1〜3と比較して、べたつき感が少なく良好であった。
【0048】
(7)発熱効果およびべたつき感における総合評価
上述の最高温度、温度持続性、最高温度までの立ち上がりからなる発熱効果とべたつき感とを総合的に判断した実施例1〜3および比較例1〜3の総合評価結果を表3に示す。
総合評価について次の基準で評価した。
◎:最高温度、温度持続性、最高温度までの立ち上がり、べたつき感についての評価結果が◎か○のみである。
○:最高温度、温度持続性、最高温度までの立ち上がり、べたつき感についての評価結果が◎、○、△からなる。
△:最高温度、温度持続性、最高温度までの立ち上がり、べたつき感についての評価結果が×を1つ含む。
×:最高温度、温度持続性、最高温度までの立ち上がり、べたつき感についての評価結果が×を2つ以上含む。
【0049】
表3に示すように、試験の結果において、本発明の吸水性発熱貼付シートは、最高温度までの立ち上がり時間が速く、最高温度や温度持続性の点でも満足し得る性能が得られ、良好な発熱効果を示した。また、本発明の吸水性発熱貼付シートは、べたつき感が少なく、使用感が良好であった。これに対し、比較例1は、温度持続性、発汗効果で優れた結果を得られたものの、最高温度までの立ち上がりが悪く、総合評価では実施例には及ばなかった。比較例2は、最高温度、最高温度までの立ち上がりで優れた結果を得られたものの、べたつき感が強く、総合評価では実施例には及ばなかった。比較例3は、べたつき感がなく、使用感で優れた結果を得られたものの、発熱効果が劣っていた。また、実施例1〜3はすべて汗の吸収量においても良好な結果を得られた。以上により、本発明の吸水性発熱貼付シートは、総合的に良好な結果が得られることが示された。
【0050】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。上記実施形態で説明した構成は、矛盾が生じない限り適宜一部の構成を入れ換えてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 吸水性発熱貼付シート
4 発熱組成物
5 固定シート
6 粘着層
7 外側シート
9 内側シート
10 袋体
11 離型紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液透過性を有する袋体に、
水に溶解して発熱する金属塩を含む発熱組成物を封入してなり、
身体に貼付させるための粘着層を備え、
前記身体から排出された体液を吸収することにより、発熱することを特徴とする吸水性発熱貼付シート。
【請求項2】
前記発熱組成物が、金属塩を50〜90重量%、吸水材を10〜50重量%含む請求項1に記載の吸水性発熱貼付シート。
【請求項3】
前記金属塩が、塩化カルシウムである請求項2に記載の吸水性発熱貼付シート。
【請求項4】
前記袋体が、外側シートと、身体に貼付する側に位置して、体液透過性を有する内側シートとから構成され、
内面側に粘着層を有し、かつ前記外側シート周縁よりも外方に延びる巾広な固定シートを、前記外側シートの外面側に被着し、
前記粘着層の少なくとも前記外側シート周縁より外方に延びた部分に離型紙を設けてなる請求項1から3のいずれかに記載の吸水性発熱貼付シート。
【請求項5】
前記袋体が、外側シートと、身体に貼付する側に位置して体液透過性を有する内側シートとから構成され、
前記内側シートの身体に貼付される外面側に粘着層および離型紙を設けてなる請求項1から3のいずれかに記載の吸水性発熱貼付シート。
【請求項6】
前記内側シートが、不織布よりなる請求項4または5に記載の吸水性発熱貼付シート。
【請求項1】
体液透過性を有する袋体に、
水に溶解して発熱する金属塩を含む発熱組成物を封入してなり、
身体に貼付させるための粘着層を備え、
前記身体から排出された体液を吸収することにより、発熱することを特徴とする吸水性発熱貼付シート。
【請求項2】
前記発熱組成物が、金属塩を50〜90重量%、吸水材を10〜50重量%含む請求項1に記載の吸水性発熱貼付シート。
【請求項3】
前記金属塩が、塩化カルシウムである請求項2に記載の吸水性発熱貼付シート。
【請求項4】
前記袋体が、外側シートと、身体に貼付する側に位置して、体液透過性を有する内側シートとから構成され、
内面側に粘着層を有し、かつ前記外側シート周縁よりも外方に延びる巾広な固定シートを、前記外側シートの外面側に被着し、
前記粘着層の少なくとも前記外側シート周縁より外方に延びた部分に離型紙を設けてなる請求項1から3のいずれかに記載の吸水性発熱貼付シート。
【請求項5】
前記袋体が、外側シートと、身体に貼付する側に位置して体液透過性を有する内側シートとから構成され、
前記内側シートの身体に貼付される外面側に粘着層および離型紙を設けてなる請求項1から3のいずれかに記載の吸水性発熱貼付シート。
【請求項6】
前記内側シートが、不織布よりなる請求項4または5に記載の吸水性発熱貼付シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−90873(P2012−90873A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242178(P2010−242178)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(391034891)鈴木油脂工業株式会社 (13)
【出願人】(510287337)ケイジェイアイ インダストリアル シーオー., エルティーディー (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(391034891)鈴木油脂工業株式会社 (13)
【出願人】(510287337)ケイジェイアイ インダストリアル シーオー., エルティーディー (2)
【Fターム(参考)】
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