説明

吸水米とその製造方法

【課題】加水加熱する炊飯設備で簡単に食感、食味のよい米飯に炊き上げられる吸水米を提供すること。
【解決手段】加水加熱する炊飯設備で炊飯する吸水米であって、この吸水米は炊飯設備の加熱容器に入れたとき、米層の表面と水位がほぼ揃うが、表面以上となるように水、湯、米飯に味付け、色付け等をする水性液等を加えると、適切な炊き加減になるように含水量を米100重量部に対して水35〜55重量部程度に設定されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水加熱する炊飯設備で食感、食味のよい米飯に簡単に炊き上げられる吸水米とこの吸水米を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無加水加熱で炊飯が可能となるように原料米に吸水させた吸水米と、その製造方法及び吸水米の無加水加熱による炊飯は従来より知られている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特許第2821562号公報
【0003】
上記吸水米は、原料米に炊飯するときの含水量まで殆ど吸水させてあるので、蒸し装置による蒸煮や電子レンジによるマイクロ波加熱の無加水加熱を行うことによって、面倒な水加減を必要とせず美味な米飯を得ることができるものである。従って、無加水加熱の炊飯設備を新設して炊飯を行う場合には好評であるが、加水加熱による既存の炊飯設備を備える家庭や炊飯業者が、これら設備を利用して吸水米の炊飯を行おうとすると、原料米が既に炊飯に必要な量の水を含んでしまっているため、生米のように水、湯、米飯に味付け、色付け等をする水性液等を加えて炊飯すると、お粥に近いような米飯になってしまい、また、吸水米の含水量によっては、従来の炊飯設備では吸水米が水に漬らず、加熱容器の壁へ直接接触する部分を生ずる。このため、接触部分は熱源で高温加熱された容器壁が発する乾熱で加熱されて、表面が硬化した強張り粒を多く生じた米飯になる問題点があるので、家庭や業界ではこの問題点を解消できる吸水米とこの吸水米を製造する方法の開発が強く要望されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記問題点を解消し、加水加熱する従来の炊飯設備で炊飯しても食感、食味のよい米飯を簡単に得ることができる吸水米とその製造方法とを提供することを課題としてる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明に係る吸水米とその製造方法は、下記の構成と手段を採用することを特徴とする。
【0006】
請求項1に係る発明は、加水加熱する炊飯設備で炊飯する吸水米であって、この吸水米は炊飯設備の加熱容器に入れたとき、米層の表面と水位がほぼ揃うか、表面以上となるように水、湯、米飯に味付け、色付け等をする水性液等を加えると、適切な炊き加減になるように含水量を米100重量部に対して水35〜55重量部程度に設定されていること。
【0007】
請求項2に係る発明は、加水加熱する炊飯設備で炊飯する吸水米を製造する方法であって、原料米として生米又は浸漬米を用い、この原料米に蒸気又は加熱或いは加圧蒸気を加えた蒸気を2分以上作用させることで吸水させ、含水量が米100重量部に対して水35〜55重量部程度の吸水米を得ること。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の吸水米の製造方法で製造した吸水米の含水量が希望値よりも不足した場合、不足分の水、湯、米飯に味付け、色付け等をする水性液等を加えて含水量を補正し、希望する含水量の吸水米を得ること。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明の効果 吸水米が漬る程度の加水によって適切な炊飯ができるように含水量を米100重量部に対して水35〜55重量部程度としてある吸水米は、炊飯設備の加熱容器に入れて吸水米が浸かる程度に水、湯、米飯に味付け、色付け等をする水性液等による加水を行って熱源による加熱を行えば、従来の炊飯設備を用いても吸水米の全体に一様に湿熱を作用させて、一部分にも強張り粒を生ずることがなくて、食感、食味、炊き立て香の総てに優れた米飯を従来の生米炊飯に比べて1/2〜1/3の短時間で得ることができる。
【0010】
請求項2に係る発明の効果 原料米として生米又は浸漬米を用い、これら原料米に蒸気又は加熱或いは加圧蒸気を加えた蒸気を2分以上作用させると、米粒に対する蒸気浸透で含水量が米100重量部に対して水35〜55重量部程度となる吸水米を、簡単に短時間で製造することができて、しかも、蒸気の浸透による吸水は湯煎による吸水と違って米粒表面のべたつきを生じにくいため、食味、食感に優れた炊飯を得るのに有利である。
【0011】
請求項3に係る発明の効果 請求項2に係る吸水米の製造方法で製造した吸水米の含水量が希望値よりも不足した場合、この不足分の水、湯、米飯に味付け、色付け等をする水性液等を吸水米に加えれば、吸水米の含水量を補正して簡単に希望する値にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明に係る吸水米とその製造方法の実施形態を説明する。
【0013】
本発明に係る吸水米は、特許第2747887号公報に記載される方法で製造された吸水米のように含水量を米100重量部に対して、水を75重量部に設定した場合は、前述した通り加水加熱する従来の炊飯設備での炊飯には適さない。そこで、必要量の吸水米を従来の炊飯設備の加熱容器へ入れたとき、水位が米層の表面とほぼ揃うか、表面以上となる量の水、湯、米飯に味付け、色付け等をする水性液等を加えれば、米の炊飯に最適な含水量となるように水を吸収させたものであって、この条件の吸水米の含水量は、米100重量部に対して水35〜55重量部程度であることが好ましく、この範囲の含水量の吸水米を容器に入れて米層の表面にほぼ揃うか、表面以上となるように水、湯、米飯に味付け、色付け等をする水性液等による加水を行って炊飯すれば、従来の炊飯設備を使用しても米飯が一部分にも強張り粒を生ずることがなくて、食感、食味、炊き立て香りの総てに優れた高品位の米飯を生米から炊飯する場合に比較して1/2〜1/3の短時間で得ることができる。
【0014】
上記吸水米を製造するには、原料米として米100重量部に対し水15重量部程度を含む生米か、上記生米を水又は湯等に所要時間浸漬して吸水させることで含水量を33重量部程度とした浸漬米を用い、これら原料米の適当量を容器に取って、原料米に蒸気または加熱或いは加圧蒸気を加えた蒸気を作用させて2分以上蒸気加熱を行う。すると、米粒は吸水し易い状態になって内部へ容易に蒸気を取り入れ、含水量を時間の経過とともに増加させるので、含水量が米100重量部に対して水が35〜55重量部程度になったとき蒸気による加熱を停止すれば、原料米を蒸気加熱するだけの至って簡単な操作で、短時間に100重量部に対して水35〜55重量部程度の含水範囲にある吸水米を製造することができて、しかも、製造された吸水米は湯煎による吸水と異なり、表層の糊状化が抑制されてべたつきを生じ難いため、このべたつきによって吸水米から得た米飯の食感が損なわれることが少くなる。
【0015】
上記の通り生米又は浸漬米を原料として、この原料米に蒸気又は加熱或いは加圧蒸気を加えた蒸気を作用させて2分以上加熱することで吸水米を製造すれば、蒸気で加熱する時間を加減することによって含水量が米100量部に対して水35〜55重量部程度の吸水米を得ることができる。しかし、原料米の産地や種類その他の条件によって、同様条件の処理でも含水量が不足する場合を生ずるため、この場合は、製造した吸水米に水、湯、米飯に味付け、色付け等をする水性液等を含水量の不足分だけ加えれば、吸水米の含水量の不足を補正して希望の含水量とすることが容易にできる。
【0016】
上記吸水米を炊飯する際、吸水米に加えて炊飯に適した含水量を得るための加水は、常温の水か、これを温めた湯、飯に味付け、色付け等をする水性液等を用いるものであって、乾熱を加えると表面が硬化して、半透明の強張った飯粒になってしまう吸水米にこの強張り現象を生じさせないようにすることも加水の重要な役割である。従って、加水の量は、加水加熱する炊飯設備における加熱容器へ吸水米を入れたとき、米層の均した表面に水位がほぼ揃うか、表面以上となるように設定することで、炊飯の初期は吸水米と加熱容器の壁との間に加熱により温度が上昇する間水が存在し、吸水米に湿熱を作用させて米を加熱することで米粒が表面硬化して半透明の強張りのある米粒になることを防止させるようにする。
【0017】
上記の通り含水量を設定した吸水米と、この吸水米に上記の条件で加える水、湯、味付け、色付け用の水溶液等を収容して炊飯する炊飯設備は、家庭用はガス炊飯器又は電気炊飯器(IH、電熱)であり、炊飯業者用は大型のガス炊飯釜や電気炊飯釜(IH、電熱)、又はガスや電気(IH、電熱)を利用した炊飯機械等であって、これら炊飯設備は既存のものを使用しても前述した効果が得られる。しかし、本発明の吸水米に合わせて新たに設計製作した設備を用いれば一層の効果向上が期待できる。これら炊飯設備は、何れも加熱容器に前記の通り吸水米と水、湯、味付け、色付け等をする水性液等を入れて加熱容器の蓋を閉じ、熱源によって加熱容器を加熱することで吸水米を湿熱で加熱させ、米粒の表面硬化による強張り粒を米飯の何れの部分にも生ずることがなくて、原料米を加水加熱して炊き上げた従来の米飯と同様、強い炊き立ての香りを有して食感、食味が良好な米飯を、従来の設備で電気炊飯する場合に比べて1/2、ガス炊飯する場合に比べて1/3の短時間で得ることができる。
【実施例1】
【0018】
含水量が米100重量部に対して水15重量部の生米1400gを60分間水に浸漬して、含水量を米100重量部に対して水33重量部とした浸漬米1800gを原料米として容器に入れ、この原料米に対して98℃の蒸気を吹き付けて蒸気加熱する操作を5分間行った後、原料米を容器から取り出して、含水量を計測すると米100重量部に対して水40重量部の吸水米2000gが製造された。
【実施例2】
【0019】
米100重量部に対して、40重量部の水を吸収させた吸水米を2000gを75℃の湯を1430ccを加えてよく混合し、湯温が40℃になったとき、パロマ製ガス炊飯器(3升用)に入れて米層を均すと、加水の水位が米層の表面よりも7mm程高かった。この状態において炊飯器の蓋を閉じ、ガスの燃焼熱で炊飯器を加熱して炊飯を行なった結果、炊飯は蒸らしを含めて23分で終了し、得られた米飯は水分量が約65.3%で、強張った部分の発生は皆無であり、且つ、特有の炊き立て香が強くて食感、食味も実によいものであった。
【実施例3】
【0020】
原料米100重量部に対して、50重量部の水を吸収させた吸水米2000gを松下電器製の業務用IH炊飯器(3.6Kg炊き)に入れ、75℃の湯1040ccを加えてよく混合し、湯温が30℃になったとき米層を均すと、加えた湯の水位が米層の表面よりもやや低かった。この状態において炊飯器の蓋を閉じ、電熱で炊飯器を加熱して炊飯を行なった。その結果、約30分で炊き上がって得られた米飯は、水分量が66%で、香りと味はまずまずであるが柔ら目のものであって、表面の周囲には炊飯器壁との接触で乾熱が作用するため、多少硬化して半透明になった強張り粒を少し生じていた。
【実施例4】
【0021】
原料米100重量部に対して、35重量部の水を吸収させた吸水米を調製し、この吸水米1830gに75℃の湯を1670cc加えてよく混合すると湯温は40℃であった。この湯を加えた吸水米をパロマ製ガス炊飯器(3升用)に入れて米層を均すと、加えた湯の水位は米層の表面より10mm程度高かった。この状態で炊飯器の蓋を閉じ、ガスの燃焼熱で炊飯器を加熱して炊飯を行なった結果、蒸らしを含めて27分で非常に美味な米飯が炊き上がって、その水分量は65.8%であった。但し、この場合は、短縮された全炊飯時間は7〜8分であって、使用カロリー節約の実効性は乏しいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
加水加熱する炊飯設備で簡単に食感、食味のよい米飯に炊き上げられる吸水米を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水加熱する炊飯設備で炊飯する吸水米であって、この吸水米は炊飯設備の加熱容器に入れたとき、米層の表面と水位がほぼ揃うか、表面以上となるように水、湯、米飯に味付け、色付け等をする水性液等を加えると、適切な炊き加減になるように含水量を米100重量部に対して水35〜55重量部程度に設定されていることを特徴とする吸水米。
【請求項2】
加水加熱する炊飯設備で炊飯する吸水米を製造する方法であって、原料米として生米又は浸漬米を用い、この原料米に蒸気又は加熱或いは加圧蒸気を加えた蒸気を2分以上作用させることで吸水させ、含水量が米100重量部に対して水35〜55重量部程度の吸水米を得ることを特徴とする吸水米の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の吸水米の製造方法で製造した吸水米の含水量が希望値よりも不足した場合、不足分の水、湯、米飯に味付け、色付け等をする水性液等を吸水米に加えて含水量を補正し、希望する含水量の吸水米を得ることを特徴とする吸水米の製造方法。

【公開番号】特開2010−119301(P2010−119301A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53449(P2007−53449)
【出願日】平成19年2月4日(2007.2.4)
【出願人】(591086267)
【出願人】(507054995)
【Fターム(参考)】