説明

吸水米を用いた米飯食品の製造方法

【課題】耐久容器に入れた吸水米を電子レンジで加熱して米飯食品を得る際、吸水米の量に合わせて加熱時間を予測設定しなくても、吸水米をその量に関係なく総て最適な条件で炊き上げることができる吸水米を用いた米飯食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】吸水米を蓋で開口が塞がれる耐久容器に入れて電子レンジで加熱し、含有水分の温度上昇により澱粉を米飯に適し糊状として米飯食品を得る米飯食品の製造方法において、上記耐久容器の内部圧力が、吸水米の澱粉を米飯に適した糊状にする温度範囲102℃〜105℃が得られる1.03気圧〜1.05気圧以下では、発生した蒸気を耐圧容器内に閉じ込めていて、耐久容器の内部圧力が1.03気圧〜1.05気圧に達すると、発生した蒸気を耐久容器の外へ放出させると共に、電子レンジの外へ届く音を発しさせて、この音で電子レンジによる加熱の停止を促すこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水米をその量に関係なく一定した条件で炊き上げて香りと味に優れた米飯食品を得ることができる吸水米を用いた米飯食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水分含量65%の吸水米170gを500Wの電子レンジで3分30秒加熱すると、生米を釜で炊き上げた御飯と同様に炊き上り香が強くて美味な米飯食品が得られることは知られている。(例えば特許文献1参照)
【0003】
しかしながら、吸水米を電子レンジで加熱して米飯食品を得る際、加熱時間を吸水米の量に合わせて適切に加減しないと一定した条件での炊き上げができないため、吸水米の量によって電子レンジの加熱時間を予測設定して炊き上げを行っているが、この場合は、設定した加熱時間が短か過ぎると、温度不足で吸水米の澱粉の糊状化が不十分であるため、殆ど香りがなくて味も悪い米飯食品しか得られず、また、設定した加熱時間が長過ぎると、温度過剰によって飯がこわばったり、焦げたりして炊き上がり香が薄れた米飯食品しか得られない上に、エネルギーを無駄に消費するし、加熱時間の過剰は容器内の圧力の上り過ぎで容器の蓋が飛ばされて、飛散蒸気による電子レンジ内の汚損を生ずる等の問題点があった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−143497号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題点を解消し、耐久容器に入れた吸水米をその量に合わせて電子レンジで加熱する時間の予測設定をすることなく、量の多少とは無関係に総て最適な条件で炊き上げて、香り豊で美味な米飯食品を得ることが可能な吸水米を用いた米飯食品の製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る吸水米を用いた米飯食品の製造方法は、下記の方法を採用することを特徴とする。
【0007】
吸水米を蓋で開口が塞がれる耐久容器に入れて電子レンジで加熱し、含有水分の温度上昇により澱粉を米飯に適し糊状として米飯食品を得る米飯食品の製造方法において、上記耐久容器の内部圧力が、吸水米の澱粉を米飯に適した糊状にする温度範囲102℃〜105℃が得られる1.03気圧〜1.05気圧以下では、発生した蒸気を耐圧容器内に閉じ込めていて、耐久容器の内部圧力が上記1.03気圧〜1.05気圧に達すると、発生した蒸気を耐久容器の外へ放出させると共に、電子レンジの外へ届く音を発しさせて、この音で電子レンジによる加熱の停止を促すことにより、吸水米からその量に関係なく均質で高品位な米飯食品が得られるようにしたこと。
【0008】
この発明は、吸水米を電子レンジで加熱して米飯食品を製造するための最適条件を求める研究において、吸水米の温度が102℃〜105℃の範囲にあるとき、炊き上がり香と食味、食感が最良の米飯食品が得られることを確認して、この条件における容器の内部圧力を計測すると1.03気圧〜1.05気圧(ヘクトパスカル)であった。このことから、容器の内部圧力が上記気圧に達したとき電子レンジの加熱を停止すれば、最低のエネルギー消費で、香りと味が最高の米飯食品が得られることを確認して、容器をその内部圧力が1.03気圧〜1.05気圧以下では蒸気を閉じ込め、1.03気圧〜1.05気圧に達すれば蒸気を放出するとともに、電子レンジの外に届く音を発する構造とすれば、炊飯量に関係なく前記した最適条件で吸水米を用いた米飯食品を製造できることに想達して本発明を完成したものである。
【0009】
また、この発明は1つの耐久容器に吸水米の任意量を入れ替えて繰り返し使用することで、吸水米を従来の包装米飯のように一食単位で使い捨て袋に包装することを止めて、包装資材の節約と吸水米へ包装資材のコストの転加を防止すると共に、包装資材によるゴミの発生量を減少させることができる。
【0010】
本発明の方法に用いる吸水米は、上記特許文献特開2005−143497号に「浸漬米、洗米、無洗米、玄米、もち米などの原料米を、高温、短時間加熱し、米粒表面に糊化し、のり状になった層を作り、得られたのり状層を持つ原料米を水、湯、熱湯、ダシ汁などの水性溶液中で75℃〜98℃(品温)で30秒〜20分加熱し、後、冷却又は風乾又は風乾しながら冷却し、水分含量80%〜43%の吸水米6を得ることを特徴とする」と記載される新規吸水米が、米飯食品を製造して炊き立てを食べる場合は、生米を加水して炊き上げた公知の米飯と同様の強い炊き上がり香りを有してかつ美味である点から好適であるが、特許第2747887号、第2821562号、第2873993号に記載される吸水米、高吸水米、超高吸水米等を使用することもできる。
【0011】
吸水米を入れて図1に示す通り電子レンジ1の回転板2へ乗せて加熱する耐久容器3は、電子レンジ用として市販されるガラス製、陶磁器製、耐熱プラスチック製等のものを用いて、長期に亘り繰り返して使用できるようにする。そして、この耐久容器3は吸水米とこれが変化した米飯食品4とを入れ出し易いよう上部を開口させ、この開口を蓋5で密閉させる構造とし、蓋5による開口の密閉は、耐久容器3の内部圧力が上記した1.03気圧〜1.05気圧以下にあれば、図2(a)に示す通り持続されて蒸気の放出を抑制している。しかし、耐久容器3の内部圧力が1.03気圧〜1.05気圧以上になれば、蓋5は図2(b)に示す通り開いて1つの制限片6が係止溝7へ係合した状態で止まり、耐久容器3との隙間から蒸気の放出を行わせるものであって、この蓋5の開きは急激に行われるため、電子レンジ1の外に届く音を発すので、この音を聞いて電子レンジ1による加熱を停止すれば、吸水米から澱粉が最適の状態に糊状化された米飯食品を得ることができる。
なお、上記の通り蓋5が開いて蒸気の放出を行う耐久容器3は、もしも、内部圧力が危険値以上なっても蓋5が開いて蒸気の放出を行わない事態に備えて、公知の安全弁(図面省略)を容器3又は蓋5に装備することが良い。
【0012】
また、耐久容器3からの蒸気の放出は、前記の通り蓋5を開かせて行うことなく、蓋5又は耐久容器3のいずれか一方、例えば、図3(a)に示す通り、蓋5の適当な位置に蒸気の逃がし孔8を設け、この逃がし孔8を蓋5に支持される弁板9で開閉させることで行うようにしてもよい。この場合は、容器3の内部圧力が1.03気圧〜1.05気圧以下では弁板9が逃がし孔8を閉じて蒸気の放出を抑制していて、容器3の内部圧力が1.03気圧〜1.05気圧に達すると、弁板9が逃がし孔8を開いて蒸気を放出するものであって、この弁構造では弁板9の内側に図3(a)に示す通り笛10を取り付けて、この笛10を弁板9が開くと放出される蒸気で鳴らされるようにし、電子レンジ1の廻りが騒がしかったり、炊く人が電子レンジ1から離れていたりする場合でも、澱粉の適度な糊状化で米飯食品が得られたことを明確に報知することができて、しかも、この弁構造は容器3の内部圧力が危険値以上になると作動して容器3を保護する安全弁の作用をも果たす。
【0013】
更に、耐久容器3からの蒸気の放出は、蓋5又は耐久容器3のいずれか一方、例えば図3(b)に示す通り、蓋5の適当な位置に蒸気の逃がし筒11を取り付け、この逃がし筒11に設けた弁孔12をばね13で加圧される弁板14で開閉させるように変形させてもよい。この場合は、容器3の内部圧力が1.03気圧〜1.05気圧以下では弁板14が弁口12を閉じて蒸気の放出を抑制し、容器3の内部圧力が1.03気圧〜1.05気圧以上になれば弁板14が弁口12を開いて蒸気を放出するように作動させ、この際、逃がし筒11内に設けた笛15が放出される蒸気によって鳴らされるようにすれば、このタイプでも前記と同様の機能を果たさせることができる。
【0014】
なお、吸水米を入れる耐久容器3は、吸水米の含有する水分量が多いと該容器3内に過剰な蒸気が発生して凝結し、水になって耐久容器3の底へ溜るので、下側の米飯食品は水に浸かってぐしゃついたものとなり、食味、食感を著しく損なわせることになるので、この現象を防止するため、耐久容器3の下部には、図2(a)(b)に示す通り容器3の底より若干離れた位置に通水孔16を有する仕切板17を水平に配置して、この仕切板17の下に水溜部18を形成する。こうすると、耐久容器3内に余剰の蒸気が凝結した水が生じても、この水は仕切板17の通水孔16を通って水溜部18へ溜まり、仕切板17によって米飯食品と離隔されているので、米飯食品の一部が水に浸って食味、食感を損なうことが防止される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果 吸水米を電子レンジで加熱して米飯食品を製造する際、吸水米を入れた耐久容器の内部圧力が、澱粉を適度な糊状化状態にできる値以上になると、容器が蒸気を放出するように作動すると共に、電子レンジの外へ届く音を発するので、これに伴い電子レンジによる加熱を停止すれば、吸水米の量に合わせて電子レンジによる加熱時間の予測設定を行う煩わしさがなく、吸水米を量に関係なく澱粉の糊状化が最適になるように容易に炊き上げることができて、しかも、得られる米飯食品は、加熱の過不足により澱粉の糊状化が過多あるいは不足となるための品質劣化を生じず、常に香り、食味、食感が最良のものとなって、エネルギーを無駄に消費することがない。
【0016】
また、本発明の方法は、吸水米の電子レンジによる加熱を長期間にわたり繰り返して使用することができる耐久容器に入れて行うため、吸水米の必要とする最大量が納まる容器の一個を備えれば、貯蔵容器から吸水米の任意量をとって容器に入れ、その量には関係なく適切な状態に澱粉が糊状化された香りと味に優れた米飯食品を容易に製造するこができる便利があって、しかも、同一容器による繰り返し炊飯は、単位量を分包する使い捨ての袋等が不要となるため、消費者の包装費負担がなくなって吸水米の購入価格が安くなり、また、処理に費用を要して、環境を悪化させるゴミも出ないから、有限な資源の無駄な消費を減らすと共に、地球環境の保全を図るのにも大きく貢献する。
【実施例1】
【0017】
図2(a)(b)に示す構造の500ccの耐久容器3に、冷蔵保存してあった水分含量65%の新規吸水米約200gを入れて、開口を蓋5により密閉させて図1に示す通り500Wの電子レンジ1内に収容して加熱を行った。
その結果、3分40秒を経過したとき、容器3内の吸水米の温度が102℃を越え、容器2の内部圧力が1.03気圧以上になったので、耐久容器3の蓋5が急激に開いて容器内の蒸気を外へ放出するとともに、電子レンジ1の外に届く音を発したので、この音を聞いて電子レンジ1による加熱を停止し、2分間の蒸らし時間を置いてから耐久容器3を電子レンジ1から取り出し得られた米飯食品4を観察した。
その結果、米飯食品4は澱粉が最良の状態に糊状化されているため、生米を加水して炊き上げた公知の米飯と同様に強い炊き上がり香りを有して、食味、食感も公知の米飯と変わらないものであった。
【実施例2】
【0018】
図2(a)(b)に示す構造の500ccの耐久容器3に、冷蔵保存してあった水分含量64%の新規吸水米を実施例1の2倍量の約400g入れて、開口を蓋5により密閉させて図1に示す通り500Wの電子レンジ1内に収容して加熱を行った。
その結果、5分を経過したとき、耐久容器3内の吸水米の温度が102℃を越え、耐久容器3内の圧力が1.03以上になったので、耐久容器3の蓋5が急激に開いて容器内の蒸気を外へ放出するとともに、電子レンジ1の外に届く音を発したので、この音を聞いて電子レンジ1による加熱を停止して、2分間の蒸らし時間を置いてから耐久容器3を電子レンジ1から取り出し、得られた米飯食品4を観察した。
その結果、米飯食品4は澱粉の糊状化が最良の状態に行われているため、生米を加水して炊き上げた公知の米飯と同様、強い炊き上がり香りを有して、食味、食感も公知の米飯と変わらないものであって、吸水米の量に関係なく常に最適な条件で炊き上げが行われることが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係る吸水米を利用した米飯食品の製造方法は、吸水米をその量の多少に関係なくて総て最適な条件で炊き上げて香り豊で美味な米飯食品とするのに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】吸水米を用いた米飯食品の製造方法の説明図。
【図2】(a)(b)は、同上方法に用いた耐圧容器の炊飯中と炊飯の終了時とを示す説明図。
【図3】(a)(b)は、耐圧容器からの蒸気の放出を弁構造で行う2例を示す説明図。
【符号の説明】
【0021】
1 電子レンジ
3 耐久容器
4 吸水米(米飯食品)
5 蓋
9、14 弁板
10,15 笛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水米を蓋で開口が塞がれる耐久容器に入れて電子レンジで加熱し、含有水分の温度上昇により澱粉を米飯に適し糊状として米飯食品を得る米飯食品の製造方法において、
上記耐久容器の内部圧力が、吸水米の澱粉を米飯に適した糊状にする温度範囲102℃〜105℃が得られる1.03気圧〜1.05気圧以下では、発生した蒸気を耐圧容器内に閉じ込めていて、
耐久容器の内部圧力が上記1.03気圧〜1.05気圧に達すると、発生した蒸気を耐久容器の外へ放出させると共に、電子レンジの外へ届く音を発しさせて、この音で電子レンジによる加熱の停止を促すことにより、吸水米からその量に関係なく均質で高品位な米飯食品が得られるようにした
ことを特徴とする吸水米を用いた米飯食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−330245(P2007−330245A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190955(P2006−190955)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(506238628)
【Fターム(参考)】