説明

吸盤と吸盤シートおよび吸盤を用いた吸着具

【課題】取り外し易い吸盤を得る。
【解決手段】吸盤10は、ゴムまたは合成樹脂製素材により構成される。吸盤10には、平面正方形状のスカート部13と、スカート部3の上面に形成された取付突部14とを備えている。吸盤10のスカート部13は、平面円形C1で椀蓋状に形成され、凹陥した底面が球面の一部のように湾曲したスカート状本体を切り欠いて形成される。スカート部13の外側には、切欠面A−B、16B−C、16C−D、16D−Aが中心から外側に向かって傾斜して形成される。被吸着面6に密着される密着部13Aの密着面を、非円形とし、かつ、最大吸着性能を発揮する仮想の円形密着面より小さい面積としているので、負圧空間18と外部とを結ぶ距離が短い部位が、わずかな外力により変形し易くなり、変形により内部の負圧空間18と外部とが連通し、離脱しやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸盤と吸盤シートおよび吸盤を用いた吸着具に関するもので、特に、アクセサリー類や洗面用具類を被取付面に取り付ける吸盤と、吸盤を成型加工により成形した吸盤シートおよび吸盤を用いた吸着具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、吸盤は、図9の(A)、(B)に示すように、合成樹脂やゴムからなる弾性復帰可能な軟質性素材から構成され、平面円形で下に向いて拡開する椀蓋状のスカート本体3を備えている。スカート本体3の内側吸着面(底面)は球面の一部のように湾曲して形成される。スカート本体3の外側上面中央には取り付け用の突部4が上方に突出して形成される。この取付突部4には、貫通孔5が形成され、図示しないアクセサリー等が取り付けられるようになっている。この吸盤2は、ガラスや鏡のような平坦で滑らかな面(被吸着面)6にスカート本体3の内側吸着面が押し付けられると、スカート本体3は押し広げられて底面の密着部7(図9(B)の斜線で示す部分)が平滑面6に密着されるとともに、ほぼ中央に、負圧空間8が形成され、吸盤2は吸着されるようになっている。密着部7は、密着面が負圧空間8の中心O1回りに所定の均一な幅W1を有した輪形に形成される。吸盤2の取り外し時には、突部4に外力を加え、密着部7の吸着力に打ち勝つ力で引き剥がすようになっている。このため、小径の吸盤でも、強力な力でないと引き剥がせないようになっている。このように、従来の吸盤2は、スカート本体3の下側吸着面開口部を平滑面6に押し当てて内部のエアを減圧して吸着させるようにしており、スカート本体3は、大きさ、材質、肉厚、内部の減圧度および密着面に応じて変形した密着部7の剥離力の大きさにより吸着性能が決定される。そして、これら条件が同一の場合、負圧空間を中心に同心円状に形成されその中心から最も離れた外縁を含む円形密着面が最大吸着性能を発揮するようになっている。すなわち、上記条件が同一の場合、密着面が円形の場合、最大の吸着性能を発揮するようになっている。
【0003】
ところで、吸盤は上述のように構成されていたので、一旦吸着すると、取り外しにくいという問題があった。このため、従来、内部の負圧空間の圧力を制御する吸盤が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−122457号公報(第4頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の吸盤では、内部の負圧空間の圧力を制御する機構を設けなければならず、日用品やアクセサリーに用いる小型の独立した吸盤には適用できないという問題がある。また、上記一般の吸盤2では、平滑面6に応じて変形する吸着部7の面積をできるだけ増大させるため密着面を円形にして、吸着性能を高めるようにしているため、平滑面6に吸着された吸盤2を外す際には、スカート本体3を強い力で変形させて減圧空間にエアを導入するようになっている。このため、力の弱い老人や子どもでは、外しにくいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡素な構成で容易に取り外すことができる使いやすい吸盤を提供することを目的とする。また、本発明は、一体成型により簡素な構成で容易に取り外すことができる使いやすい吸盤を多数配置した製造シートを提供することを目的とする。さらに、本発明は、容易に取り外すことができる使いやすい吸盤を用いた吸着具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る吸盤は、弾性復帰可能かつ変形自在な軟質性素材により構成され下に向かって拡開するスカート部を備え、取り付け時、スカート部内側吸着面を被吸着面に押し当てて密着させ内部に負圧空間を形成し、取り外し時、密着面を吸着力に打ち勝つ外力で引き剥がす吸盤において、被吸着面に密着される密着部を非円形とするとともに、密着部の密着面積を、負圧空間を中心に最も離れた外縁との距離を半径として形成される仮想の円形面積より小さくなるようにしたものである。
【0007】
本発明に係る吸盤では、弾性復帰可能かつ変形自在な軟質性素材により構成され下に向かって拡開するスカート部を備え、取り付け時、スカート部内側吸着面を被吸着面に押し当てて密着させ内部に負圧空間を形成し、取り外し時、密着面を吸着力に打ち勝つ外力で引き剥がす吸盤において、被吸着面に密着される密着部を非円形とするとともに、密着部の密着面積を、負圧空間を中心に最も離れた外縁との距離を半径とする仮想の円形面積より小さくなるようにしたことにより、負圧空間を中心とする周方向に沿って形成される非円形密着面の不均一な部位のうち負圧空間と外部とを結ぶ距離が短い部位が変形し易くなる。このため、この部位に外力が加えられた場合、例えわずかな力でも変形を起こしやすくなり、変形により内部の負圧空間と外部とが連通し、離脱しやすくなる。しかも、密着面の密着面積が最大の吸着性能を発揮する円形面積より小さくなり、吸着性能を低下させているので、より離脱しやすい。このため、取り外し時、剥がれやすくなる。
【0008】
また、請求項2に係る吸盤は、スカート部を、椀蓋状成型体を切り欠いて形成されるようにしたものである。
【0009】
請求項2に係る吸盤では、スカート部は、椀蓋状成型体を切り欠いて形成されるようにしたことにより、取り外しやすい吸盤をカット加工のような簡素な加工で得ることができる。
【0010】
請求項3に係る吸盤は、スカート部外側の切欠面が中心から外部に向かって傾斜して形成されるようにしたものである。
【0011】
請求項3に係る吸盤では、スカート部外側の切欠面が中心から外部に向かって傾斜して形成されることにより、密着部の外縁が次第に薄肉になるので、変形しやすくなり、取り外しやすくなる。
【0012】
本発明に係る吸盤シートは、合成樹脂またはゴムを一体成型し、多数の吸盤を互いに切り離し可能に連続して配置したものである。
【0013】
本発明に係る吸盤シートでは、合成樹脂またはゴムを一体成型し、多数の吸盤を互いに切り離し可能に連続して配置したことにより、吸盤を一度に多数一体成型して製造することができる。必要な数だけ切り離して用いることができるので、管理や作業が効率化される。
【0014】
請求項5に係る吸盤シートは、請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の吸盤を備えたものである。
【0015】
請求項5に係る吸盤シートでは、請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の吸盤を備えたことにより、切り離して用いられる吸盤は、取り外し時、引き剥がしやすくなる。
【0016】
請求項6に係る吸盤シートは、スカート部の外側上面には、被接着部に接着される平坦な接着部を形成したものである。
【0017】
請求項6に係る吸盤シートでは、スカート部の外側上面には、被接着部に接着される平坦な接着部を形成したことにより、切り離された一方の吸盤の接着部を、例えば、アクセサリーなど装飾品や日用品の被接着部に接着させると、吸着具を備えた装飾品や日用品を容易に提供することができる。さらに、切り離された一方の吸盤の接着部をある被接着部に接着させ、切り離された他方の吸盤の接着部を別の被接着部に接着させるようにし、これら一方の吸盤と他方の吸盤とを互いにスカート部を重ね合わせて吸着させると、これら吸盤同士を、例えば、ボタンやファスナーなどの留め具や開閉具として用いることができる。
【0018】
請求項7に係る吸盤を用いた吸着具は、紐材に、請求項1ないし3、5および6のうちいずれか1に記載の吸盤を延長方向に沿って所定の間隙を隔てて設けたものである。
【0019】
請求項7に係る吸盤を用いた吸着具では、紐材に、請求項1ないし3、5および6のうちいずれか1に記載の吸盤を延長方向に沿って所定の間隙を隔てて設けたことにより、吸着具を、ガラスや鏡などの平滑面に自在な形状で取り付けることができるので、窓やショーウィンドウ等の装飾性を向上させることができ、しかも、取り外ししやすい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る吸盤は、弾性復帰可能かつ変形自在な軟質性素材により構成され下に向かって拡開するスカート部を備え、取り付け時、スカート部内側吸着面を被吸着面に押し当てて密着させ内部に負圧空間を形成し、取り外し時、密着面を吸着力に打ち勝つ外力で引き剥がす吸盤において、被吸着面に密着される密着部を非円形とするとともに、密着部の密着面積を、負圧空間を中心に最も離れた外縁との距離を半径として形成される仮想の円形面積より小さくなるようにしているので、簡素な構成で容易に取り外すことができ、使いやすい。このため、力の弱い老人や子どもでも使用することができる。
【0021】
本発明に係る吸盤シートは、合成樹脂またはゴムを一体成型し、多数の吸盤を互いに切り離し可能に連続して配置しているので、吸盤を一度に多数一体成型して製造することができるので、コストダウンを図ることができる。また、必要な数だけ切り離して用いることができるので、管理や作業が効率化される。
【0022】
本発明に係る吸盤を用いた吸着具は、紐材に、請求項1ないし3、5および6のうちいずれか1に記載の吸盤を延長方向に沿って所定の間隙を隔てて設けているので、装飾性を向上させることができ、しかも、取り外ししやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
取り外しし易い吸盤を得るという目的を、スカート部の一部を切り欠いて、密着面を非円形とし、しかも、密着面積を減少させることにより実現した。
【実施例1】
【0024】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係る吸盤を示す斜視図、図2の(A)ないし(C)はそれぞれ、図1の吸盤の平面図、側面図及び底面図である。本実施例に係る吸盤10は、ゴムまたは合成樹脂製の弾性復帰可能かつ変形自在な軟質性素材により構成される。この吸盤10には、スカート部13と、スカート部13の外側上面中央に突出して形成された取り付け用の突部14とを備えている。この取付突部14には、貫通孔15が形成され、アクセサリー19(図7の(A)参照)が取り付けられるようになっている。また、取付突部14は、衣服19Bの一部(図7の(B)参照)にも取り付けることができるようになっている。
【0025】
ところで、吸盤10のスカート部13は、図3の(A)、(B)に示すように、平面円形C1で椀蓋状に下に向いて拡開して形成され、内側吸着面が凹陥した球面の一部のように湾曲して形成されたスカート状本体(図9に示す従来の吸盤2のスカート本体3に相当する。)を、上方から図示しないカッタにより切り欠いて形成される。切断は、外周円C1上に等間隔に位置する4点A点ないしD点の隣り合う点同士を結ぶ線分A−B、B−C、C−D、D−Aに沿って行われる(図3の(B)における斜線部分は切り落とし部Wを示す。)。しかも、切断の際には、カッタは上方が吸盤の中心寄りに下方が外寄りに傾斜して切断される(図3の切断軌跡T1、T2参照)。このため、切欠面16A−B、16B−C、16C−D、16D−Aは、中心から外側に向かって傾斜して形成され、外端縁A〜Dが薄肉になっている。こうしてスカート部13は湾曲した底面17(図2の(C)参照)が、球面の一部を正方形状に切り取ったように形成される。
【0026】
この吸盤10は、ガラスや鏡のような平坦で滑らかな面(被吸着面)6(図9の(B)参照)にスカート部13の湾曲底面17が押し付けられると、スカート部13は押し広げられて下面の密着部13A(図2(C)の斜線で示す部分)が平滑面6に密着されるとともに、ほぼ中央に、負圧空間18が形成され、吸盤10は平滑面6に吸着されるようになっている。このとき、密着部13Aの密着面は、従来の吸盤2のように、密着面が負圧空間8を中心する外周円C1の輪形状に形成されるのではなく、つまり、周方向に沿って均一の幅で密着するのではなく、図2の(C)に示すように、押し伸ばされた各外縁AないしDを角部としたほぼ正方形状に密着するようになっている。各辺A−B、B−C、C−D、D−Aは、吸盤10の材質により中央部分が若干外側に押し出された弧状となる。平滑面6に密着された吸盤10を取り外す際には、突部14に外力を加えると、スカート部13が変形し、この変形により内部の負圧空間18と外部とが連通し、離脱する。
【0027】
次に、上記実施例に係る吸盤10の作用について説明する。本実施例に係る吸盤10では、平滑な被吸着面6に密着される密着部13Aの密着面を、負圧空間18回りに円形に対して不均一に形成しているので、負圧空間18を中心とする周方向に沿って形成される密着面の不均一な部位のうち負圧空間18と外部とを結ぶ距離が短い部位が、すなわち、各辺A−B、B−C、C−D、D−Aのほぼ中央部分が、わずかな外力により変形し易くなり、変形により内部の負圧空間18と外部とが連通し、離脱しやすくなる。このため、取り外し時、剥がれやすくなる。このように、上記実施例に係る吸盤10では、従来の吸盤2のように、密着面が負圧空間8を中心とした外周円C1とする輪形状に形成されるのではなく、つまり、密着面が、最大の吸着性能を発揮する円形状に密着するのではなく、非円形状に密着するようになっている。しかも、吸盤10は、密着部13Aの密着面積を、負圧空間18を中心にその中心から最も離れた外縁AないしDとの距離r(r=A−O1間の距離=B−O1間の距離=C−O1間の距離=D−O1間の距離)を半径として形成される仮想の円形C1の面積より小さくなるようにしている。このため、密着部13Aの密着面は、従来のような最大の吸着力を発揮する円形密着面を備えた吸盤に比べて密着面積が小さくなり、吸着性能を落とすようになっている。このように、本実施例に係る吸盤10では、密着面は、非円形となるため、負圧空間18回りに不均一な幅で密着され、しかも、密着面の面積を、最大の吸着性能を発揮する仮想の円形吸着面より減じているため、取り外し時、わずかな引き剥がし力で容易に取り外しを行うことができる。また、取り付け時も、密着面の面積が小さいので、取り付けやすい。
【0028】
なお、上記実施例では、吸盤10を、平面円形C1で椀蓋状に形成された椀蓋状成型体(従来のスカート本体3に相当する。)を図示しないカッタにより切り欠いて形成するようにしているがこれに限られるものではなく、後述する吸盤シートで述べるように、型枠により切欠面16A−B、16B−C、16C−D、16D−Aを成型するようにしてもよいことはいうまでもない。また、スカート部13は平面矩形状に形成されているものの、形状はこれに限られるものではなく、意匠上多様な形状としてもよく、密着面を非円形形成し、吸着力を弱めるものであればよいことはいうまでもない。
【0029】
図7の(A)および(B)はそれぞれ、吸盤10を用いて装飾品や日用品に適用した例を示すもので、吸盤10の貫通孔15に、例えば、アクセサリー19など装飾品や日用品の取付部19Aを取り付けると、取り外しが容易な吸盤10を備えた装飾品や日用品を提供することができる。さらに、この吸盤10を備えたアクセリー19と、別の被取付部、例えば、衣服19Bの一部に別の吸盤10を取り付けて、これら両吸盤10、10を、互いにスカート部13,13同士を重ね合わせて吸着させると、これら吸盤10、10同士を、例えば、ボタンやファスナーなどの留め具や開閉具として用いることができる。さらに、スカート部13は矩形状に形成されているので、四角形状の窓やガラスの角部に取り付けることができる。また、並べて隙間なく取り付けることもできる。
【実施例2】
【0030】
次に、上記第1の実施例に係る吸盤10の変形例について説明する。図4の(A)ないし(D)はそれぞれ、第2の実施例に係る吸盤20、30、40、50を示す平面図で、上記第1の実施例に係る吸盤10が、スカート部13を4辺で切り欠いて形成し、円弧状部分を残さないようにしているのに対し、第2の実施例に係る吸盤20、30、40、50では、外周円C1の一部をなす円弧状部を残した点が異なっている以外は、ほぼ同一の構成を有している。図4の(A)に示す吸盤20は、上記第1の実施例に係る吸盤10が、スカート部13を4辺で切り欠いて形成するようにしているのに対し、スカート部23が、直角に交わる2辺E−F、F−Gで切り欠かれ、残りの部分Hは、円弧状に形成される。図4の(B)に示す吸盤30は、スカート部33が、平行な2辺I−J、K−Lで切り欠かれ、これら両辺I−J、K−Lを結ぶ外縁K−I、J−Lは円弧状に形成される。図4の(C)に示す吸盤40は、スカート部43が、平行な2辺M−N、O−Pと、これら2辺M−N、O−Pに直角に交わる1辺N−Oとで切り欠かれ、平行な2辺M−N、O−Pの他端を結ぶ外縁P−Mが円弧状に形成されるようになっている。図4の(D)に示す吸盤50は、スカート部53が、経方向に対して直角方向の1辺Q−Rで切り欠かれ、この辺Q−Rを結ぶ外縁R−Qが円弧状に形成される。このように、本発明に係る吸盤10ないし50では、密着面を、非円形に形成し負圧空間回りに密着幅を不均一に形成するようにしている。そして、密着面積を、負圧空間の中心から最も遠い位置にある外縁と中心との距離を半径として形成される仮想円C1の面積より減少させるようにしている。
【実施例3】
【0031】
次に、本発明の第1の実施例に係る吸盤シートについて説明する。図5の(A)および(B)はそれぞれ、本発明の第1の実施例に係る吸盤シートを示す斜視図および平面図である。本実施例に係る吸盤シート100は、図示ないし型枠により、合成樹脂またはゴムを一体成型し、多数の吸盤60を互いに切り離し可能に連続して配置するようにしている。吸盤シート100に形成され、縦横に多数配置された吸盤60は、上記第1の実施例に係る吸盤10が、突部14に横方向の貫通孔15が形成されているのに対し、突部64の上面に凹陥した取付穴65が形成されている点を除いてほぼ同一の構成を備えている。すなわち、吸盤60は、矩形状に形成されたスカート部63と突部64とを備えている。スカート部63は、凹陥した内側吸着面が矩形状に形成される。また、スカート部63は、各吸盤60毎に、外周円上に等間隔に位置する4点AないしD点について、隣り合う点同士を結ぶ線分A−B、B−C、C−D、D−Aに応じて、外側に切欠面66A−B、66B−C、66C−D、66D−Aが形成されるようになっている。これら各切欠面は66A−B、66B−C、66C−D、66D−Aは、第1の実施例に係る吸盤10の切欠面16A−B、16B−C、16C−D、16D−Aと同様に、中心から外側に向かって傾斜して形成される。この吸盤シート100は、各吸盤60が切欠面66A−B、66B−C、66C−D、66D−Aの下端にあたる各線分A−B、B−C、C−D、D−Aの部位で互いに繋がって成型されており、この下端部A−B、B−C、C−D、D−Aは薄肉に形成され、容易に切り離しができるようになっている。
【0032】
次に、上記第1の実施例に係る吸盤シート100の作用について説明する。上記第1の実施例に係る吸盤シート100では、合成樹脂またはゴムを一体成型し、多数の吸盤60を互いに切り離し可能に連続して配置するようにしているので、吸盤60を一度に多数製造することができる。しかも、吸盤60を、必要な数だけ切り離して用いることができるので、管理や作業が効率化される。さらに、吸盤60は、スカート部63が矩形状に形成されることにより、製造された吸盤シート100は、各吸盤60間にデッドスペースが生じるのを避けることができ、吸盤シート100を無駄なく使い切ることができる。また、吸盤60のスカート部63は、切欠面66A−B、66B−C、66C−D、66D−Aが傾斜して形成されているので、切り離された吸盤60は、外縁側A−B、B−C、C−D、D−Aが次第に薄肉になるので、変形しやすくなり、取り外しやすくなる。
【実施例4】
【0033】
図6は、第2の実施例に係る吸盤シート110を示すもので、この第2の実施例に係る吸盤シート110は、上記第1の実施例に係る吸盤シート100が、スカート部63の上面に突部64を形成しているのに対し、矩形状スカート部73の上面を、平坦に形成し、この平坦面にガラスや鏡などの平坦で滑らかな面(被接着部)6に接着される接着材を貼着して接着部73Aを形成した点が異なるほかはほぼ同一の構成を備えている。この第2の実施例に係る吸盤シート110では、切り離された吸盤70のスカート部73の上面に平坦な接着部73Aが形成されているので、切り離された一方の吸盤70の接着部73Aを、例えば、アクセサリーなど装飾品や日用品の被接着部に接着させると、取り外しが容易な吸盤70を備えた装飾品や日用品を提供することができる。さらに、切り離された一方の吸盤70の接着部73Aをある被接着部に接着させ、切り離された他方の吸盤70の接着部73Aを別の被接着部に接着させるようにし、これら一方の吸盤70と他方の吸盤70とを互いにスカート部73、73を重ね合わせて吸着させると、これら吸盤70、70同士を、例えば、ボタンやファスナーなどの留め具や開閉具として用いることができる。また、切り離された吸盤70を、例えば、後述する吸着具で述べるように、紐状部材に所定間隔を置いて接着するようにしてもよい。なお、接着部73Aは、接着材を貼着して構成しているがこれに限られるものではなく、離脱自在な粘着材を塗布するようにしてもよいし、フック状とパイル状の二枚を噛み合せて用いる着脱自在の布製のテープのいずれか一方を貼り付けるようにしてもよい。
【0034】
なお、上記第1、第2の実施例に係る吸盤シート100、110は矩形状のスカート部63、73を有する吸盤60、70について述べたがこれに限られるものではなく、例えば、図4の(A)ないし(D)に示す吸盤20〜50についても適用可能であることはいうまでもない。すなわち、スカート部23〜53の切欠面同士を連続して成型するように合成樹脂またはゴムを一体成型し、多数の吸盤20〜50を互いに切り離し可能に連続して配置するようにしてもよい。
【実施例5】
【0035】
次に、本発明の第1の実施例に係る吸着具について説明する。図8は、本発明の第1の実施例に係る吸着具200を示す斜視図である。第1の本実施例に係る吸着具200は、図8に示すように、紐材201に、上記第1の実施例に係る吸盤10を延長方向に沿って所定の間隙を隔てて設けている。吸盤10は、紐材201の穴(図示せず)に突部14を差し入れ、貫通孔15に留め具202を取り付けて固定している。吸着具200は、ガラスや鏡などの平滑面6に自在な形状で取り付けることができるので、窓やショーウィンドウ等の装飾性を向上させることができ、しかも、取り外ししやすい。なお、紐材201には、上記各吸盤20〜70を延長方向に沿って所定の間隙を隔てて設けるようにしてもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施例に係る吸盤を示す斜視図である。(実施例1)
【図2】(A)ないし(C)はそれぞれ、図1の吸盤の平面図、側面図及び底面図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれ、図1の吸盤に加工する切断軌跡を示す説明図および加工後の吸盤を示す平面図である。
【図4】(A)ないし(D)はそれぞれ、第2の実施例に係る吸盤を示す平面図である。(実施例2)
【図5】(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第1の実施例に係る吸盤シートを示す斜視図および平面図である。(実施例3)
【図6】第2の実施例に係る吸盤シートを示す平面図である。(実施例4)
【図7】(A)、(B)はそれぞれ、図1の吸盤を用いて装飾品や日用品に適用した例を示す説明図である。
【図8】本発明の第1の実施例に係る吸着具を示す斜視図である。(実施例5)
【図9】(A)、(B)はそれぞれ、従来の吸盤を示す斜視図および吸着状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
6 被吸着面
10 吸盤
13 スカート部
13A 密着部
18 負圧空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性復帰可能かつ変形自在な軟質性素材により構成され下に向かって拡開するスカート部を備え、取り付け時、スカート部内側吸着面を被吸着面に押し当てて密着させ内部に負圧空間を形成し、取り外し時、密着面を吸着力に打ち勝つ外力で引き剥がす吸盤において、
被吸着面に密着される密着部を非円形とするとともに、密着部の密着面積を、負圧空間を中心に最も離れた外縁との距離を半径として形成される仮想の円形面積より小さくなるようにしたことを特徴とする吸盤。
【請求項2】
スカート部は、椀蓋状成型体を切り欠いて形成されることを特徴とする請求項1に記載の吸盤。
【請求項3】
スカート部外側の切欠面が中心から外部に向かって傾斜して形成されることを特徴とする請求項2に記載の吸盤。
【請求項4】
合成樹脂またはゴムを一体成型し、多数の吸盤を互いに切り離し可能に連続して配置したことを特徴とする吸盤シート。
【請求項5】
請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の吸盤を備えたことを特徴とする請求項4に記載の吸盤シート。
【請求項6】
スカート部の外側上面には、被接着部に接着される平坦な接着部を形成したことを特徴とする請求項4または5に記載の吸盤シート。
【請求項7】
紐材に、請求項1ないし3、5および6のうちいずれか1に記載の吸盤を延長方向に沿って所定の間隙を隔てて設けたことを特徴とする吸盤を用いた吸着具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−132369(P2007−132369A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323597(P2005−323597)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(505414861)
【Fターム(参考)】