説明

吸着冷凍システムの作動方法

【課題】吸着冷凍システムの作動方法、並びに当該方法を実施するのに好適なシステムに関する。
【解決手段】吸着冷凍システムを作動させる方法が提供される。本システムは、冷却剤を収容する1次チャンバと連通して構成された1次吸着ポンプと、2次吸着ポンプと、2次吸着ポンプと1次チャンバとを連通状態に配置する高流体インピーダンス導管とを備える。本方法は、各ポンプがそれぞれの作動温度にある間に1次及び2次吸着ポンプを冷却剤で飽和させる段階を含む。次いで、ポンプは、これらの作動温度を超えて加熱されて冷却剤が脱着し、これによって、1次チャンバが冷却される間は1次チャンバ及び2次吸着ポンプ内の冷却剤圧力が導管を介して実質的に均一であるようになる。次に、2次吸着ポンプが冷却されて冷却剤ガスを吸着し、従って、1次チャンバ内の冷却剤の温度及び圧力の低下がもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着冷凍システムの作動方法、並びに当該方法を実施するのに好適なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
吸着冷凍システムは、チャンバなどの領域内に非常に低い温度をもたらす冷凍分野、特に極低温物理学の分野では良く知られている。吸着冷凍システムは、冷却されることになるチャンバ内にある量の液体冷却剤を提供することによって動作する。これは、チャコールのようなある量の吸着材料と気体連通状態で配置され、システム全体は、システム内の冷却剤の量が一定のままであるように閉鎖されている。通常、液体状態の冷却剤は、外部源によって予冷された部材の冷却壁と接触して気体冷却剤が凝縮することによって得られる。これは、「1Kポット」を用いることにより多くの従来の吸着冷凍システムにおいて行われる。
【0003】
液体冷却剤を得る第2の代替の方法は膨張プロセスを使用し、この場合、冷却剤は、断熱条件下で高圧状態から減圧される。この減圧によりガスの液化が生じ、これによって液体冷却剤が生成される。システムの吸着材料は、対応する圧力低下に起因して液体が更に蒸発するように、液体冷却剤の上方のガスを吸着するよう配置される。蒸発の潜熱によりシステムの温度低下が生じる。
【0004】
このようなシステムの使用に伴う1つの問題は、該システムが事実上「シングルショット」であることであり、これは、市販のシステムでは数時間の場合もある、所定の時間期間にわたってのみ動作することができることを意味する。
【0005】
吸着システムは、吸着材料を単に加熱して冷却剤ガスの脱着を引き起こすようにすることで該冷却剤ガスを気相状態に戻すことによって再装填することができる比較的簡単なデバイスである点で有利である。次いで十分に冷却されると、吸着材料はもう一度再使用することができる。システムは「閉鎖」されているので、冷却剤の損失が無く、可動部分が存在しない。これは、低温実験を何時間にもわたって低振動レベルで行うことができる点で有利である。
【0006】
このようなシステムの比較的短い時間期間の「シングルショット」特性に対処するために、発明者らは、先願の欧州特許出願EP1387133Aによる吸着冷凍システムの作動方法を既に考案している。このシステムは、チャンバ内の冷却剤を補助容積部材(別の吸着ポンプとすることができる)中に膨張させて、メイン吸着ポンプの使用前に冷却剤を効果的に予冷することを含む。これはより低い開始温度を効果的にもたらし、これによってシステムの作動期間を向上させた。
【0007】
EP1387133Aで開示された上述のシステムは、従来技術よりも著しく有利であるが、極めて安定した条件が要求される場合などの状況によっては、バルブ(当該出願の図1のバルブ8など)の作動により、不都合な機械的振動を引き起こす。この問題を克服することに加えて、装置の製造コストを削減すること、作動を単純化すること、及び作動上の信頼性を向上させることなどの追加の要望がある。本発明によって対処されることは、とりわけこれらの問題である。
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願EP1387133A公報
【特許文献2】欧州特許出願番号06254236.0公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、発明者らは、吸着冷凍システムの作動方法を提供し、当該システムは、冷却剤を収容する1次チャンバと使用時に連通状態で構成された1次吸着ポンプと、2次吸着ポンプと、2次吸着ポンプと1次チャンバとを連通状態で配置するように構成された高流体インピーダンス導管とを備え、本方法は、
i)1次及び2次吸着ポンプがそれぞれの作動温度にある間に1次及び2次吸着ポンプに冷却剤を装填する段階と、
ii)1次及び2次吸着ポンプの各々をこれらの作動温度を上回って加熱して冷却剤を脱着させ、少なくとも1次チャンバを冷却する間に1次チャンバ及び2次吸着ポンプの冷却剤圧力が導管を通って実質的に均一化されるようにする段階と、
iii)1次チャンバ内の脱着冷却剤を冷却する段階と、
iv)2次吸着ポンプをその作動温度にまで冷却して、この温度で2次吸着ポンプが冷却剤ガスを吸着し、これにより1次チャンバ内の冷却剤の温度及び圧力を低下させる段階と、
v)1次吸着ポンプを作動温度まで冷却してこの温度で1次吸着ポンプが冷却剤を吸着し、これにより1次チャンバ内の冷却剤の温度及び圧力を更に低下させる段階と、
を含む。
【0010】
発明者らは、システム並びに対応する作動圧力及び使用される冷却剤の種類を含む他の要因を注意深く設計することで、1次及び2次吸着ポンプを高流体インピーダンス導管と併せて使用して、バルブの必要性を排除することが可能であることに気付いた。
【0011】
本発明は、導管の両端間に高い圧力差が存在する場合には高流体インピーダンスを通過して冷却剤の高流量が得られ、一方、圧力差が低いと低流量となることの認識に基づいている。本発明は更に、吸着ポンプの吸着材料は、冷却剤が高圧であるときには冷却剤が低圧であるときと比較してより高い冷却剤吸着能力を有する現象に基づいている。
【0012】
本方法は、1次及び2次吸着ポンプの各々がこれらの吸着材料を冷却剤で飽和させるステップ(i)から始まる。この時点で、吸着ポンプは各々、これらのそれぞれの作動温度に保持される。これらは、勿論、異なる温度とすることができるが、通常はこれらの温度は各ポンプについて同じである。各々の場合における作動温度は、これ未満の温度で実質的な吸着作用が吸着ポンプ内の吸着材料によってもたらされる温度として定義することができる。このような温度は極低温である。
【0013】
第2のステップは、1次及び2次吸着ポンプの各々をこれらの作動温度を上回って加熱する段階を含み、これにより冷却剤を脱着させ、これは、システムが閉じていることに起因して冷却剤の圧力を実質的に上昇させる。導管の流体インピーダンスは、この高い圧力並びにステップ(ii)が行われる時間を考慮して、冷却剤の圧力を変えて第2のポンプと1次チャンバとの間で均一化するように構成される。
【0014】
好ましくは、ステップ(iii)の間、冷却剤ガスは、適切に冷却された熱交換器と接触させることによって、通常4.2ケルビン未満の極低温にまで冷却される。
【0015】
それぞれの圧力が実質的に均一化され、作業ガスがステップ(iii)で冷却されると、2次吸着ポンプはその作動温度にまで冷却され、これにより2次吸着ポンプによって冷却剤ガスを局所的が吸着されるようになる。これは、導管を介して1次チャンバ内の冷却剤の温度及び圧力の低下をもたらす。2次吸着ポンプと1次チャンバとの間に約1気圧の圧力差が生じるので、冷却剤が導管を通って流れることができる。
【0016】
この冷却作用が達成されると、1次吸着ポンプがその作動温度にまで冷却され、その結果、冷却剤が1次吸着ポンプによって吸着されることで、1次チャンバ内の冷却剤の温度及び圧力の低下が生じる。最初は1次及び2次吸着ポンプの両方が作動可能である。2次吸着ポンプは、最終的には飽和状態になると圧送を停止することになる。1次ポンプは、1次チャンバからの冷却剤を引き続き圧送することになる。1次ポンプはまた、2次吸着ポンプからの冷却剤の一部を圧送することになる(吸着材料の圧力依存性に起因する)。しかしながら、高流体インピーダンス導管の両端の圧力差が小さくなるので、1次チャンバ内に戻る冷却剤流量もまた極めて小さくなる。ステップ(v)の後のステージでは、要求された冷却の極低温を長期間(数時間或いは数日)にわたって達成することができる。
【0017】
理解されるように、冷却剤は、最初は気体状であるが、少なくとも冷却ステップ(iv)の間は、冷却剤の圧力及び温度の低下に起因して液体として凝結する。同様の凝結は、ステップ(v)の間、1次吸着ポンプが作動温度より高い温度から作動温度自体まで冷却されるときにも生じることができる。
【0018】
従って、ステップ(v)は、2つのサブステップを含むと考えることができ、第1のサブステップは、作動温度より高い温度から作動温度までの吸着ポンプの冷却であり、第2のステージでは、吸着作用によって1次チャンバ内の冷却剤を冷却するように従来の方式でポンプが作動する。
【0019】
上述のシステム構成要素に加えて、本システム自体は更に、1次チャンバ内部と選択的に流体連通して構成された補助リザーバを備えることができ、この場合、ステップ(i)において冷却剤は最初に補助リザーバから供給することができる。補助リザーバ(これはステップ(i)で使用されたものと同じであっても異なっていてもよい)は同様に、1次チャンバ内部と選択的に流体連通して構成することができ、1次チャンバ内の冷却剤がステップ(iii)の後又はその間に補助リザーバ内に膨張されて1次チャンバ内の冷却剤を更に冷却するように本方法で使用することができる。これにより冷却作用が向上し、最終的には1次吸着ポンプのより長い「シングルショット」性能が提供される。冷却剤の圧力、及び実際には補助リザーバの容積は、こうしたリザーバを使用する有利な効果を最大にするように注意深く選択する必要がある。本方法は通常、補助リザーバの温度を制御して補助リザーバ内の所定の冷却剤圧力を与えるようにする段階を含む。これは、適切な加熱及び/又は冷却装置を用いて達成することができる。補助リザーバとシステムの残りの部分との間の選択的な連通は、好ましくは適切なバルブによって可能にされる。
【0020】
本発明の方法及びシステムにおいて、幾つかの異なる冷却剤を利用することができ、これらには、ヘリウム4、窒素、ネオン又は水素が含まれるが、ヘリウム3が実験目的で極低温を達成する能力を与えるので、ヘリウム3を使用することが特に好ましい。ヘリウム3を用いると、ステップ(iv)の終わりでの冷却剤の温度は約2ケルビンであり、作動温度での1次吸着ポンプの作動の後、冷却剤は通常、約300ミリケルビン以下に冷却される。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、発明者らは、吸着冷凍システムを提供し、本システムは、
1次吸着ポンプ、及び使用時に冷却剤を収容するように適合され且つ1次吸着ポンプと連通した1次チャンバと、
2次吸着ポンプと;
2次吸着ポンプ及び1次チャンバを流体連通して配置するように構成された高流体インピーダンス導管と、
を備える。
【0022】
理解されるように、第2の態様による1次及び2次吸着ポンプと、1次チャンバと、高流体インピーダンス導管との構成を用いて、本発明の第1の態様による一般的な方法を実施することができる。
【0023】
従って、本システムは、補助リザーバを更に備えることができ、このような任意的な補助リザーバは、上述のように本方法のステップ(i)でのシステムの初期装填のため、或いはステップ(ii)の後の膨張ステップにおいて使用されることになる。
【0024】
補助リザーバの機能はまた、複数のリザーバによって実施することができる。従って、異なるリザーバを用いて、上述の初期装填及び後での膨張を実施することができ、或いは実際には、これらのステージのうちの1つ又は各々において複数のリザーバを使用することができる。複数のリザーバを用いると、ステップ(ii)に続く任意的な膨張プロセスを幾つかのサブステップで実施し、例えば連続的な圧力低下を伴うマルチステージ膨張プロセスを提供するようにすることができる。従って、本方法は、気体状冷却剤を幾つかのリザーバ内に別々に膨張させる段階を含むことができる。
【0025】
補助リザーバは、一定の幾何学的容積の形態をとることができるが、可変の容積を備えていてもよく、これによりチャンバ内部の圧力を制御し、従って、冷却の程度をこれに応じて制御することが可能となる。従って、補助リザーバ又は各補助リザーバは、別の吸着ポンプの形態をとることができる。必要に応じて、リザーバとシステムの残りの部分との間の選択的な連通を確保するためにバルブを設けることができる。
【0026】
1次チャンバは通常、使用時に液体冷却剤を収容するための1次ポットを備える。システム内で最も低い温度に達するのがこの1次ポットである。従って、高流体インピーダンス導管は、ポットと第2の吸着ポンプとの間の流体の流れが、ポットと1次吸着ポンプとの間の流体の流れよりも少なく、好ましくは1/5未満であり、更に好ましくは1/10未満であるように構成されるのが好ましい。1次ポットから1次吸着ポンプへの流量は、主として、1次吸着ポンプの圧送速度によって影響される点に留意されたい。
【0027】
1次チャンバの構成は通常、当該チャンバが、1次ポットと1次吸着ポンプとを接続する1次圧送ラインを備えるようなものであり、その結果、1次ポットとそれぞれの吸着ポンプとの間の流体インピーダンスがそれぞれ導管及び1次圧送ラインの流体インピーダンスとなる。最も実用的な状況において、このことは通常、1次圧送ラインが高流体インピーダンス導管の直径を有意に超える直径を有することを意味するが、勿論、これらのそれぞれの構成要素の長さもまたインピーダンスの大きさに影響する。
【0028】
貯蔵リザーバと類似の方式で、2次吸着ポンプ自体が、複数のこうした吸着ポンプの形態をとることができる。これらの各々は、それぞれの高流体インピーダンス導管を用いて1次チャンバ内部と流体連通して構成することができる。従って、2次ポンプ及び高流体インピーダンス導管の複数の具体例を提供することができる。2次吸着ポンプはまた、高流体インピーダンス導管によって分離されて直列に設けることもできる。これらは、1つのこうしたポンプがその作動温度まで冷却されて、その吸着を実質的に他のどれよりも先に実施するように順次作動することができる。
【0029】
理解されるように、同様の複数の吸着ポンプ構成がまた、1次吸着ポンプに設けることができ、これは直列構成を含む。
【0030】
高流体インピーダンス導管に関しては、通常不変又は静的なインピーダンスを提供する点に留意されたい。こうした一定の流体インピーダンス導管の実施例は、極細管のようなものである。従って、これには、特にバルブのような可動部分が存在しない。
【0031】
本システムは更に、1次チャンバがヒートパイプに熱的に結合することができるようにするヒートパイプの使用を含むことができ、該ヒートパイプは、冷却剤を収容し且つ互いに流体連通する上方領域及び下方領域を有するシールヒートパイプチャンバを備え、その結果、システムの使用時には1次チャンバはヒートパイプの下方領域に対してヒートパイプの上方領域を冷却することで、冷却剤が凝縮されて液体冷却剤となり、重力により下方領域に移動するようになる。ヒートパイプに関しては、用語「上方」及び「下方」は、下向きの重力方向に対してのヒートパイプの作動位置に関連付けられる。複数のこうしたヒートパイプを設けてもよい。ヒートパイプは、これらがヒートパイプの遠位端部(下方領域)で得られる温度安定性を向上させる点で有利である。これは、システム内のどのような温度の不安定性を軽減する中間冷却プロセス(凝縮冷却剤によって提供される)により達成される。更に、冷却剤ガスの不十分な熱伝導性が、上方領域と下方領域との間のつながりを熱的に遮断するのに役立つ。従って事実上、ヒートパイプは熱ダイオードとして有効に機能する。
【0032】
実験装置を含む、冷却されることになる幾つかの様々なタイプのターゲット装置は、ヒートパイプの下方領域と良好に熱的接触して設置することができる。実験装置に加えて、下方領域の冷却作用を用いて、希釈冷凍機の凝縮ポンプなどの装置を更に冷却することもできる。
【0033】
本発明の第3の態様によれば、発明者らは、
本発明の第2の態様による第1の吸着冷凍システムと、
本発明の第2の態様による第2の吸着冷凍システムと、
第1及び第2の吸着冷凍システムの各々によって冷却されるように適合されたコールドプラットフォームと、
を備えた冷凍システムを提供する。
【0034】
共通のコールドプラットフォームを冷却する第1及び第2の吸着冷凍システムを使用すると、それぞれの第1及び第2のシステムは、一方が冷却モードで作動している間は、他方が再生モードで動作しているように、交互に作動することができる。これは、システムの擬似連続作動を可能にし、これによってシングルショット使用の限界を克服する。コールドプラットフォームは、幾つかの異なる形態をとることができ、通常は、上述の様々なタイプのターゲット装置と熱的に連通して設置される。こうしたターゲット装置の1つの実施例は、希釈冷凍機のスチルである。
【0035】
ある実施形態において、1次チャンバの各々はそれぞれの凝縮表面を有し、これらは、冷却剤ガスを収容しているエンクロージャ内部に備えられ、当該表面は、使用時に1次吸着ポンプによって選択的に冷却されて、これにより冷却剤ガスが表面上に液体冷却剤として凝縮するようになる。コールドプラットフォームは、凝縮表面からの液体を受け取るように位置付けられる。エンクロージャは、1次チャンバのそれぞれの凝縮表面間の気体状冷却剤の経路を提供するように適合され、当該経路は、当該表面の各々とコールドプラットフォームとの間よりも低い流体インピーダンスを有する。凝縮表面間の流体インピーダンスは、凝縮表面とコールドプラットフォームとの間よりも好ましくは少なくとも1/2小さく、より好ましくは少なくとも1/5小さく、最も好ましくは少なくとも1/10小さい。エンクロージャは、凝縮表面の各々とコールドプラットフォームとの間のそれぞれの管体と、それぞれの凝縮表面の間に位置付けられて流体インピーダンスのより低い経路を提供するバイパス管体とを備えることができる。それぞれの管体は、ヒートパイプを含むことができる。或いは、凝縮表面は、共通のチャンバ容積内に備えることができる。コールドプラットフォームは、共通チャンバに隣接して設けることができる。この場合、凝縮表面間の間隔は通常、凝縮表面の各々とコールドプラットフォーム自体との間の間隔よりも小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
ここで、本発明による方法及びシステムの幾つかの実施例を添付図面を参照しながら説明する。
図1は、全体が1で示される第1の例示的なシステムの概略図である。1次吸着ポンプ2は、1次チャンバ3に接続され、該1次チャンバは、1次圧送ライン4と1次ポット5を備える。図で分かるように、1次圧送ラインは、実質的に大径の管体(典型的には、直径約8ミリメートル及び長さ約200ミリメートル以下の寸法)である。1次圧送ライン4の上端には1次吸着ポンプ2が位置付けられ、下端には1次ポット5が配置される。このことは、ポット5内のあらゆるガスが1次吸着ポンプ2の内部と流体連通していることを意味する。2次吸着ポンプ6が設けられ、これは、極細ステンレス鋼管の形態の高流体インピーダンス導管7によって、圧送ライン4の内部と流体連通して配置される。この極細ステンレス鋼管は、直径約1ミリメートル及び長さ約200ミリメートル以下を有する。図1に示されるように、この高流体インピーダンス導管は、2次吸着ポンプ6が導管7の一方の端部に位置付けられ、1次圧送ライン4が他端部に位置付けられるように配列される。
【0037】
1次吸着ポンプ2及び2次吸着ポンプ6の各々は、大きな表面積を有し且つある作動温度(4.2ケルビン)で大きなガス吸着作用を提供する材料特性を有する、チャコール8のような吸着材料を含む。
【0038】
管体9は、1次吸着ポンプ2を貯蔵容器10の形態の補助リザーバに接続するために提供される。従って、管体9は、1次吸着ポンプ2と貯蔵容器10との間の流体連通を可能にする。この連通は、管体9内に配置された手動又は自動バルブ11を使用することによって「選択的」になされる。
【0039】
熱スイッチ及び熱交換器組立体12は、1次吸着ポンプの温度を制御するために設けられる。同様に、熱スイッチ及び熱交換器組立体13は、第2の吸着ポンプ6に対して同様の作用を実現するために設けられる。追加の熱交換器14は、1次吸着ポンプ2の温度に対して、1次圧送ライン4の下方部分及びポット5の温度の独立した制御を可能にする目的で1次圧送ライン4を冷却するために設けられる。熱スイッチ及び熱交換器組立体の各々は、熱スイッチを介してヒートシンクに接続された高い熱伝導性構成要素の形態である。何れの場合においても、熱スイッチは、それぞれの熱交換器をクリオスタット冷却剤バス又は機械式冷凍機の冷却ステージの形態のヒートシンクに選択的な方法で熱結合することを可能にする。
【0040】
1次吸着ポンプ2はまたヒーター17を備え、同様に2次吸着ポンプ6はヒーター18を備える。チャコール8に熱的に接触する電気抵抗素子として通常提供されるヒーターを制御し、それぞれの熱交換器12、13と組み合わせてそれぞれの吸着ポンプの温度を制御するようにすることができる。これを実現するために制御システム(図示せず)が設けられる。
【0041】
この実施例においては、互いに流体連通するシステムの部分は、冷却剤としての気体ヘリウム3で装填される。ヘリウム3は、最初は気体状態にあるが、作動中に一部の冷却剤が液体として凝縮し、1次ポット5内に集められる。
【0042】
この実施例の目的では、チャコール8は、約4リットルの冷却剤ガスを吸着することができ、一方、貯蔵容器10は、約10リットルの容量を有する。図1の点線16は、約4ケルビンで作動するヘリウム4クリオスタットの存在を示している。貯蔵容器10及びバルブ11以外の構成要素は、クリオスタット16内に収容される。
【0043】
ここで図2を参照し、図1のシステムを作動させる方法を説明する。
【0044】
本方法は、図2のステップ101で始まり、ここで1次吸着ポンプ2、1次チャンバ3及び2次吸着ポンプ6の内部がヘリウム3で初期装填される。ステップ102で、これらのシステムの構成要素は、クリオスタット内で約4ケルビンまで冷却される。この温度で、吸着ポンプ2及び6内のチャコール8は作動温度となり、従って、冷却剤ガスを十分に吸着する。このステージの間、バルブ11は開放される。クリオスタット内の全ての構成要素が、実質的に熱平衡(約4ケルビンで)に達すると、バルブ11が閉じられる。本システムは、ステップ102の終わりでチャコール8が装荷状態にあるときに、システム内の圧力が絶対圧の約0.5気圧であるように構成される。このことは、システム内の何れかの漏出による比較的高価なヘリウム3の損失を低減するのに役立つ。
【0045】
ステップ103で、スイッチ12及び13が開かれてヒーター17及び18が各々制御システムによって作動され、チャコール8をそれぞれの吸着ポンプ2、6内で比較的高温(約100ケルビン)まで加熱するようにする。この加熱は、チャコール8からのヘリウム3冷却剤の脱着を生じさせ、これにより、閉鎖システム内の圧力が有意に高くなる。通常、10気圧(絶対圧)の圧力が得られる。脱着したガスを冷却して1次吸着ポンプ2からの熱を阻止し、特に1次ポット5に到達するのを阻止するためにこのステージで熱交換器が作動可能である点に留意することが重要である。従って、1次圧送ライン4の下方部分及びポット5内の冷却剤ガスは、おおよそ4ケルビンのままである。システム内が高圧であることにより、導管7の流体インピーダンスが高いにもかかわらず、1次圧送ライン4と2次吸着ポンプ6との間の十分な冷却剤流が確保される。脱着ステップ103の間、1次吸着ポンプ2及び2次吸着ポンプ6の各々の中の冷却剤ガス内の圧力が実質的に均一化している。
【0046】
任意のステップ104(図2を参照)において、バルブ11を開き、高圧冷却剤をもう一度貯蔵容器10内に流入させるようにすることができる。これは、管体9の流体インピーダンスが低いことに起因して比較的急速である。これにより1次吸着ポンプ2及び1次チャンバ3の内部の冷却剤の温度及び圧力の低下が生じる。同様に、2次吸着ポンプ6と貯蔵容器10との間の圧力差が大きいことにより、2次吸着ポンプ6において圧力低下が生じる。次いで、バルブ11が閉鎖されることにより、システムが再シールされる。任意のステップ104が実施されるかどうかに関係なく、比較的高い圧力が1次吸着ポンプ2及びチャンバ3内部に残存している。ステップ104を実施することで、その後圧力はほぼ1気圧程度となる。
【0047】
ステップ105で、熱交換器13の作動及びそれぞれの熱スイッチの閉鎖(ヒーター18はスイッチオフにされている)によって2次吸着ポンプ6が冷却される。これは、2次吸着ポンプ内の圧力の実質的な低下を生じさせ、その結果、2次吸着ポンプ6と1次吸着ポンプ2並びに1次チャンバ3との間の有意な圧力差を生じさせる。この理由から、冷却剤ガスは、高流体インピーダンス導管7を通って流れ、従って、2次吸着ポンプ6が1次チャンバ3内の圧力を低下させ、これにより1次ポット5内のヘリウム3冷却剤の冷却及び液化を生じさせ、この冷却剤の温度がおよそ2ケルビンとなる。1次チャンバ3及び1次吸着ポンプ2内の圧力は依然として約0.2気圧であり、よって、有意な量の気ガスが2次吸着ポンプ6により1次ポット5から導管7を通って回収することができる点に留意されたい。2次吸着ポンプが冷却剤ガスの大部分を吸着することは理解されるであろう。
【0048】
ステップ106で、2次吸着ポンプが飽和し始めると、1次吸着ポンプ2は、熱スイッチ及び交換器組立体12によって冷却される(この時点でヒーター17はオフである)。これは、1次吸着ポンプ2の領域の温度が約100ケルビンから約4ケルビンに低下することに起因して、初期圧力低下を生じさせる。これにより更に1次ポット5が冷却される。
【0049】
ステップ107で、1次吸着ポンプ2内のチャコール8がほぼ4ケルビンの作動温度に達すると、1次吸着ポンプは1次チャンバ3内のガスを吸着することにより従来の様態で作動し、これにより1次ポット5内の液体の圧力並びに従って温度の更なる低下が引き起こされる。圧力が10-6気圧未満まで低下するにもかかわらず、1次吸着ポンプは飽和しない。
【0050】
特に、導管7のインピーダンスは、2次吸着ポンプ6から1次圧送ライン4内へのガスの流れが、1次吸着ポンプ2の圧送速度よりも遙かに小さく、本実施例では1/10に小さくなるので、1次吸着ポンプ2は、ポット5からのガスを優先的に圧送し、2次吸着ポンプ6から圧送されるガスの比較的少ない「漏出」だけが存在することになる。圧送速度は、要求通りに1次ポット5内の液体の温度を低下させるのに十分過ぎる程である。更にまた、この少ない「漏出」も時間の経過と共に減少することになり、これは2次吸着ポンプ6が、そのチャコール8の飽和限界に達するまで残りのガスを吸着し続けるためである。
【0051】
従って、ステップ107の間、冷却された1次ポット5は、ポット5に熱的に結合された何れかの実験装置(センサなど)又は更なる冷却デバイス(希釈冷凍器など)のための冷却を提供する。このような追加の装置は、図1におけるターゲット装置20によって全体的に表される。装置20によって1次ポット5に加えられる熱負荷に応じて、本システムは、長時間にわたって安定した基準温度で装置を冷却することができる。
【0052】
第2の例示的なシステムが図3に示されている。これは、追加の2次吸着ポンプ21及び対応する追加の高流体インピーダンス導管22、並びにそれぞれの追加の熱スイッチ、熱交換器組立体23及びヒーター24を含むことを除いては、図1の基本システムと同様である。追加の2次吸着ポンプ21は、導管7に類似する高流体インピーダンス導管22を用いて1次チャンバ3に結合される。
【0053】
図3と図1のシステム間の別の相違点は、この実施例において、容器10が大容量の追加の吸着ポンプ25に置き換えられていることである。これは、図2のステップ101でのシステムの初期装填、或いは図3の任意選択のステップ104、又は実際にはこれらの各々の何れかに対して使用することができる。追加の2次吸着ポンプ21並びに高流体インピーダンス導管22は、ステップ105の間に並列に(同時に)使用することができる。しかしながら、吸着ポンプ2、21は、2次吸着ポンプ6が最初に飽和限界に達するまで作動し、次いで第2のポンプ21が作動する(ヒーター24をオフにし、熱交換器23を用いて冷却することによって)ように順次的に作動されるのが好ましい。
【0054】
ここで図4を参照すると、更なる例示的なシステムが提供され、ここで、図3と同様に、追加の2次吸着ポンプ21並びに熱交換器23及びヒーター21が各々提供される。しかしながらこの場合、追加の吸着ポンプ21は、追加の高流体インピーダンス導管26を介して2次吸着ポンプ6と直列に設けられる。動作中、図2のステップ105において、この実施例におけるポンプ21が最初に冷却されると共に、ポンプ6はより高温に維持される(ステップ103から)。ポンプ21が冷却剤で実質的に飽和されると、ポンプ6は、熱交換器13(及び関連の熱スイッチ)を使用してこれを冷却することによって吸着動作状態になる。
【0055】
システムの別の修正形態において、図4の実施例は、貯蔵容器10に加えて大容量の吸着ポンプ25(並びに熱スイッチ及び熱交換器組立体27)を含むことに留意されたい。この場合、修正バルブ11’が設けられ、これは、3つの作動位置、すなわち、容器10を1次チャンバ3と連通させた位置と、ポンプ25を1次チャンバ3と連通させた第2の位置と、管体9をシールする第3の位置とを有するように適合されている。この場合、例えば容器10は、図2でステップ101の間にシステムを装填するのに使用されることができ、吸着ポンプは、ステップ104を形成するのに使用することができる。逆の状況も企図される。
【0056】
図4の実施例は、チャンバ5との熱的に連通したヒートパイプが設けられている点で前述の実施例と更に異なる。
【0057】
ヒートパイプは図4では30で示されている。ヒートパイプは、ステンレス鋼などの適切な低熱伝導性極低温合金で作製された細長い中空円筒体を備える。通常これは垂直方向に向けられ、管体33の形態の中間領域によって分離された上方領域31と下方領域32とを有する。この管体は、使用時には実質的に垂直方向に向けられる。ヒートパイプは、ヘリウム3のような冷却剤(冷却剤は用途に応じて選ばれる)を収容するシール容器である。下方領域32は、冷却されることになるターゲット装置と接触して設けられる。この特定の実施例においては、当該装置は極めて高感度の粒子又は放射線検出器と考えることができる。
【0058】
上方領域31は、1次ポット5と良好な熱的接触状態に置かれる。通常の作動条件化では、ヒートパイプ内部の冷却剤の量及び種類は、吸着冷凍システムが作動中であるときに冷却剤ガスがヒートパイプ内に存在するように選択される。冷却剤の一部はまた、液相で存在することもできる。図2の後半のステップの間にポット5の温度が低下すると、ヒートパイプ30の上方領域の温度が低下し、これによりヒートパイプ内の冷却剤ガスの上方領域31の表面上への凝縮が生じる。次いで、液滴が形成され、これらは最終的には上方領域から離れ、重力により管体33を通って下方領域32に落ちる。液滴の温度は、ポット5の温度と実質的に同じであり、従って、下方領域32内の冷却剤液滴が漸次的に蓄積することにより、下方領域が1次ポット5の温度と実質的に同じ温度に達する。このような温度は通常、200〜300ミリケルビンである。次いで、ターゲット装置20が下方領域32と良好に熱的に連通することによって冷却される。
【0059】
従って、ヒートパイプは、事実上熱ダイオードとして作動し、強い冷却作用を提供すると共に、1次ポット5に発生するあらゆる温度変動からターゲット装置20を分離する。管体30内の蒸気はまた、上述の装置からの何れかの熱発生源に対する良好な熱障壁として機能する。従って、1次吸着ポンプ2のシングルショットサイクルの終わりに、ヒートパイプは、ターゲット装置20を作動温度で使用することができる実験時間の延長を可能にする熱障壁として機能する。このことはまた、再装填の後に追加のシングルショットサイクルにおいて装置を使用するときに、ターゲット装置20が既に低温であることができ、従って、必要な冷却が他の場合に必要とされるはずの冷却よりも少ないことを意味する。
【0060】
図5では、吸着冷凍システムの2つの具体例がそれぞれ50及び60で示される。これらの各々は、前述の第1、第2、又は第3の実施例(又は混合)による冷却システムを概略的に示している。この実施例において、システム50、60の1次ポットの各々は、2つのヒートパイプ30、30’の上方領域に熱的に結合され、これらのヒートパイプは各々、各々上方領域31、31’、管体33、33’並びに下方領域32を有する。下方領域32は、70で概略的に示された希釈ユニットの冷却を提供する点に留意されたい。
【0061】
使用時には、システム50及び60は、希釈冷凍機の擬似連続作動が可能となるように交互に作動される。具体的には、常にシステム50、60の一方が動作冷却モード状態であり、他方が再装填モード状態である。
【0062】
図6には、図5と類似の方式で吸着冷凍システムの2つの具体例が組み合わせて使用された別の実施例が示されている。それぞれのシステムは、500及び500’でそれぞれ示される。これらのシステムは、前述の実施例の何れかの一般的な例証である点に留意されたい。上記の実施例において参照数字10、11、21、25などで示されたような追加の装置は、実際には存在しているが明確にするために図6には図示されていない。図6は、1次圧送ライン501、501’の2つの具体例が存在することを示しており、これらは前述の実施例に関して検討した1次圧送ライン4と同等の機能を有する。同様に、1次圧送ライン501、501’に結合された1次ポット502、502’(1次ポット5に類似する)もまた提供される。次に、1次ポット502、502’の各々は、上記の30、30’で検討されたものと同様の方式でそれぞれのヒートパイプ503、503’に結合される。ヒートパイプ503、503’の各々の上方領域は、低流体インピーダンスを有する大きな管体504を用いて共に結合される。ヒートパイプ503、503’の各々は、下方の共通コールドプラットフォーム505に向けて開いている。図6に示されるように、この共通プラットフォームは、希釈冷凍機のスチルと熱的に連通しており、希釈冷凍機は全体的に510で示される。記載の装置は、発明者らの同時係属の欧州特許出願番号06254236.0で論じられた装置と直接に類似している。具体的には、当該装置は、06254236.0の図3に示されたものと同等であり、同様に、ヒートパイプ503、503’は、図6に点線で示された共通エンクロージャ511と置き換え得ることが期待される。
【0063】
理解されるように、図6に示された装置もまた、図5のものと同様の方式で疑似連続作動の状態で使用されるのが好ましい。具体的には、システム500、500’のうちの1つが作動している間に他のシステムが再生され、以後の作動状態に向けて準備される。これにより、希釈冷凍機510の連続作動が可能になる。理解されるように、希釈冷凍機510は、本システムを用いて冷却することができる幾つかの様々なタイプのターゲット装置のうちの1つである。
【0064】
上述の実施例の各々は、1次チャンバ3の予冷を提供する目的で、1つ又はそれ以上のそれぞれの高流体インピーダンス導管と共に2次吸着ポンプを利用する方法(これらの1つ又はそれ以上が存在するかどうか)に関しての例証であり、これにより装置の良好なシングルショット時間を与え、且つ機械的振動を回避する。記載された実施例の装置構成間の個々の差異の各々は、他の実施例のものと互換的に使用できる点は理解されるであろう。本発明の実施例は、ヘリウム3冷却剤に関して検討してきたが、他の冷却剤を用いたより高度な極低温(<100ケルビン)の変形形態も企図される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明による吸着冷凍システムの第1の実施例を示す図である。
【図2】例示的なシステムの作動の一般的なフロー図である。
【図3】複数の2次吸着ポンプを有する第2の例示的なシステムを示す図である。
【図4】ヒートパイプを用いる第3の例示的なシステムを示す図である。
【図5】第1、第2又は第3の実施例のシステムの複数の具体例を用いた第4の実施例を示す図である。
【図6】第1、第2又は第3の実施例のシステムの複数の具体例を用いた第5の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
2 1次吸着ポンプ
3 1次チャンバ
4 1次圧送ライン
5 1次ポット
6 2次吸着ポンプ
7 高流体インピーダンス導管
8 チャコール
9 管体
10 貯蔵容器
11 バルブ
12 熱スイッチ及び熱交換器組立体
13 熱スイッチ及び熱交換器組立体
14 熱交換器
16 クリオスタット
17 ヒーター
18 ヒーター
20 ターゲット装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着冷凍システムの作動方法であって、
前記システムが、
使用時に冷却剤を収容する1次チャンバと連通状態で構成された1次吸着ポンプと、
2次吸着ポンプと、
前記2次吸着ポンプと前記1次チャンバとを連通状態で配置するように構成された高流体インピーダンス導管と、
を備え、前記方法が、
i)前記1次及び2次吸着ポンプがそれぞれの作動温度にある間に前記1次及び2次吸着ポンプに冷却剤を装填する段階と、
ii)前記1次及び2次吸着ポンプの各々をこれらの作動温度を上回って加熱して前記冷却剤を脱着させ、少なくとも前記1次チャンバを冷却する間に前記1次チャンバ及び前記2次吸着ポンプの冷却剤圧力が前記導管を通って実質的に均一化されるようにする段階と、
iii)前記1次チャンバ内の脱着冷却剤を冷却する段階と、
iv)前記2次吸着ポンプをその作動温度にまで冷却してこの温度で前記2次吸着ポンプが冷却剤ガスを吸着し、これにより前記1次チャンバ内の冷却剤の温度及び圧力を低下させる段階と、
v)前記1次吸着ポンプを作動温度まで冷却してこの温度で前記1次吸着ポンプが冷却剤を吸着し、これにより前記1次チャンバ内の冷却剤の温度及び圧力を更に低下させる段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記1次及び2次吸着ポンプのそれぞれの作動温度は、気体状冷却剤が実質的に吸着される温度である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記段階(iv)の間に前記冷却剤が液体冷却剤として凝結する、
ことを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記システムが、前記1次チャンバ内部と選択的に連通して構成された補助リザーバを更に備え、前記段階(i)で冷却剤が前記補助リザーバから供給される、
ことを特徴とする前記請求項のうちの何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記システムが、前記1次チャンバ内部と選択的に連通して構成された補助リザーバを更に備え、前記1次チャンバ内の冷却剤が前記段階(iii)の後又はその間に前記リザーバ内に膨張されて前記1次チャンバ内の冷却剤を更に冷却するようにする、
ことを特徴とする前記請求項のうちの何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記補助リザーバの温度を制御して前記補助リザーバ内の所定の冷却剤圧力を与えるようにする段階を更に含む、
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記補助リザーバと前記1次チャンバとの間の選択的な連通が、バルブ作動によって得られる、
ことを特徴とする請求項4から請求項6のうちの何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記冷却剤がヘリウム3である、
ことを特徴とする前記請求項のうちの何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記段階(iv)の終わりでの前記冷却剤の温度が約2ケルビンである、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記段階(v)の間で前記冷却剤が300ミリケルビン以下まで冷却される、
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記段階(v)が、前記1次吸着ポンプを前記作動温度を超える温度から前記作動温度まで冷却する段階と、冷却剤の実質的な吸着が起こる前記作動温度以下まで冷却する次の段階とを含む、
ことを特徴とする前記請求項のうちの何れかに記載の方法。
【請求項12】
吸着冷凍システムであって、
1次吸着ポンプ、及び使用時に冷却剤を収容するように適合され且つ前記1次吸着ポンプと連通した1次チャンバと、
2次吸着ポンプと、
前記2次吸着ポンプ及び前記1次チャンバを流体連通して配置するように構成された高流体インピーダンス導管と、
を備えるシステム。
【請求項13】
前記1次チャンバと選択的に流体連通した補助リザーバを更に備える、
ことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記補助リザーバが、複数の前記リザーバを備える、
ことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記選択的な連通を与える1つ又はそれ以上のバルブを更に備える、
ことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記又は各補助リザーバが追加の吸着ポンプである、
ことを特徴とする請求項14又は請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記1次チャンバが、使用時に液体冷却剤を収容するための1次ポットを備える、
ことを特徴とする請求項12から請求項16のうちの何れかに記載のシステム。
【請求項18】
前記高流体インピーダンス導管は、前記ポットと前記2次吸着ポンプとの間の流体の流れが前記ポットと前記1次吸着ポンプとの間の流体の流れよりも好ましくは1/5未満であるように構成される、
ことを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記高流体インピーダンス導管は、前記ポットと前記2次吸着ポンプとの間の流体の流れが前記ポットと前記1次吸着ポンプとの間の流体の流れよりも好ましくは1/10未満であるように構成される、
ことを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記2次吸着ポンプが、複数の吸着ポンプを備える、
ことを特徴とする請求項12から請求項19の何れかに記載のシステム。
【請求項21】
前記各2次吸着ポンプが、それぞれの高流体インピーダンス導管を用いて前記1次チャンバと流体連通して構成される、
ことを特徴とする請求項12から請求項20のうちの何れかに記載のシステム。
【請求項22】
前記吸着ポンプが、高流体インピーダンス導管によって分離されて直列に設けられる、
ことを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記又は各高流体インピーダンス導管が、一定の流体インピーダンスを有する、
ことを特徴とする請求項12から請求項22のうちの何れかに記載のシステム。
【請求項24】
前記1次チャンバがヒートパイプに熱的に結合され、前記ヒートパイプが、冷却剤を収容し且つ互いに流体連通した上方領域と下方領域とを有する密封ヒートパイプチャンバを備え、その結果、前記システムの使用時には、前記1次チャンバが前記ヒートパイプの前記上方領域を前記下方領域に対して冷却することで、前記冷却剤が凝縮されて冷却剤液体となり、重力により前記下方領域に移動するようになる、
ことを特徴とする請求項12から請求項23のうちの何れかに記載のシステム。
【請求項25】
前記下方領域が、冷却されることになるターゲット装置に熱的に結合される、
ことを特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
請求項12から請求項25のうちの何れかによる第1の吸着冷凍システムと、
請求項12から請求項25のうちの何れかによる第2の吸着冷凍システムと、
前記第1及び第2の吸着冷凍システムの各々によって冷却されるように適合されたコールドプラットフォームと、
を備える、
ことを特徴とする冷凍システム。
【請求項27】
冷却剤ガスを収容するためのエンクロージャを更に備え、前記第1及び第2の吸着冷凍システムの1次チャンバがそれぞれの凝縮表面を有し、前記凝縮表面が前記エンクロージャ内に備えられ、前記表面が使用時に前記それぞれの1次吸着ポンプによって選択的に冷却されて、冷却剤ガスが前記凝縮表面上に液体冷却剤として凝縮するようにされ、前記コールドプラットフォームが、使用時に前記凝縮表面から前記液体冷却剤を受け取り、前記エンクロージャが、前記凝縮表面間の気体状冷却剤用の経路を提供するように適合され、前記経路が、前記凝縮表面の各々と前記コールドプラットフォームとの間の流体インピーダンスよりも低い流体インピーダンスを有する、
ことを特徴とする請求項26に記載の冷凍システム。
【請求項28】
スチルを有する希釈冷凍機を更に備え、前記スチルが前記コールドプラットフォームと熱的に連通される、
ことを特徴とする請求項26又は請求項27に記載の冷凍システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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