説明

吸着担体および体外循環用カラム

【課題】血液中に存在する細胞、特に顆粒球や単球などの活性化した白血球、ガン細胞などを除き、さらに過剰に存在するサイトカインを効率よく除去できる吸着担体を提供すること。
【解決手段】ヨウ素含有率が1.4wt%を超える吸着担体を、ヨウ素化合物を除くハロゲン化合物を含む液体で処理して、ヨウ素含有率を1.4wt%以下とすることを特徴とする吸着担体の製造方法及びこの方法で製造した吸着担体。ヨウ素除去処理は、ヨウ素化合物を除くハロゲン化合物を含む液体で処理することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な吸着担体、特に医療用途に用いられる吸着担体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な血液処理カラムが研究され、例えば、白血球除去や、顆粒球除去を目的としたカラム(特許文献1,2)、サイトカイン吸着を目的としたカラム(特許文献3,4)、白血球と毒素を同時に吸着することを目的としたカラム(特許文献5)等がそれぞれ開発されてきた。これらは、通常、カラム内部にそれぞれ目的とする物質を除去・吸着するための濾過材または吸着担体を有している。これら吸着担体表面には、生体適合性の向上や、特定の物質に対する選択的な吸着能を持たせることなどを目的とし、種々の官能基が導入されることがある。その導入方法としては、化学反応による官能基の固定化や、コーティングによる導入があげられる。このような官能基のなかで、特にサイトカインの様なタンパクを吸着することも目的とするためにアンモニウム基のような電荷を持つ官能基を導入されることがある(特許文献6)。サイトカインは生体にとって必要な物質であるが、何らかの疾患により過剰に産制された特定のサイトカインは免疫を攪乱するなど負の側面も持っており、このように過剰に産制されたサイトカインは効率よく吸着あるいは除去出来ることが望ましく、また、かかる吸着担体の効率的な製造方法が求められている。
【0003】
一方、アンモニウム基の導入に際し触媒としてヨウ化物イオンが用いられる場合(特許文献6)があるが、このヨウ化物イオンはアンモニウム基のカウンターイオンとして吸着担体に残存しやすい。しかしながら、かかる残存したヨウ化物イオンに着目して、吸着担体によるサイトカイン吸着率を向上させることについての研究はなく、ヨウ化物イオンの残存量とサイトカイン吸着率との間に相関があることについても知られていなかった。
【特許文献1】特開昭60−193468号公報
【特許文献2】特開平5−168706号公報
【特許文献3】特開平10−225515号公報
【特許文献4】特開平12−237585号公報
【特許文献5】特開2002−113097号公報
【特許文献6】特開2003−111834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、ヨウ素化合物を添加してなる吸着担体であって、ヨウ素の残存量という観点から、血液中に過剰に存在するサイトカインを効率よく除去できる吸着担体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における吸着担体は、ヨウ素が1.4wt%を超える量含有されている吸着担体について、ヨウ素除去処理後のヨウ素の含有率が1.4wt%以下であることを特徴とするものである。ここで、本発明における「ヨウ素が1.4wt%を超える量含有されている吸着担体」とは、当初からヨウ素の含有率が1.4wt%以下である吸着担体とは区別されるものである。また、かかるヨウ素除去処理後のヨウ素の吸着担体における含有率とは、吸着担体の使用時点での含有率を意味するものである。
【0006】
また、かかる吸着担体の製造方法としては、反応試薬としてヨウ素を含む化合物(ヨウ素化合物)を用いて吸着担体に官能基を導入する工程、該反応後に塩素化合物を含む液体で該吸着担体を処理して、ヨウ素の含有率が1.4wt%以下とする工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸着担体に残存するヨウ素を所定量以下とすることで、吸着担体による特定のサイトカインの吸着除去率を高くすることができる。また、所定条件下におけるかかる吸着担体を得るために塩素化合物を含む液体により処理する際の必要十分な処理回数(処理量)を見出すことが可能となるので、効率的な吸着担体の製造方法が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、前記課題、繊維製品である吸着担体について、所定量以上のヨウ素化合物を添加するような場合であっても、血液中に過剰に存在するサイトカインなどの生理活性物質を高い効率で選択的に吸着除去できる吸着担体の製造方法について鋭意検討し、吸着担体に残存するヨウ素量を1.4wt%以下とすることでインターロイキン−6(以下、IL−6)などのサイトカインの吸着性能を向上かつ安定させることに成功したものである。その原因としては、必ずしも明らかではないが、残存したヨウ化物イオンは容易に酸化され、吸着担体表面にヨウ素が析出し得る。このような析出によりサイトカインなど、吸着除去を目的とする物質の吸着を阻害している可能性が考えられる。あるいは、カウンターイオンの種類により、吸着担体のカチオンとの親和性に違いがあることから、吸着担体と吸着除去を目的とする物質の相互作用力に違いが生じている可能性も考えられる。
【0009】
本発明におけるヨウ素化合物とは、ヨウ素や、ヨウ化カリウム、テトラアンモニウムヨージドなどのヨウ化物、あるいは、有機ヨウ化物のようなヨウ素が共有結合した化合物などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
本発明におけるヨウ素化合物の吸着担体への添加方法、使用方法には特に限定はなく、反応原料、触媒、イオン交換、洗浄処理、コーティング等の方法を用いることができる。たとえば、ハロゲン化アルキルにおけるアミンの求核置換反応において、ハロゲン化アルキルが塩素化合物である場合、反応性が低いため、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物が触媒として使用される場合がある。また、ハロゲン化アルキルのハロゲン自体がヨウ素という場合もある。また、製造工程中におけるその他の反応、洗浄、および、殺菌等のために使用されるものであってもかまわない。ヨウ素の残存形態としては、ヨウ素、ヨウ素イオンの両方が含まれるものであり、ヨウ素、ヨウ化物イオン、三ヨウ化物イオン等があげられる。吸着担体にカチオンが含まれる場合、そのカウンターイオンとしてヨウ化物イオン、あるいは、三ヨウ化物イオンとして存在することがある。また、それらが酸化された場合、表面にヨウ素として析出したものでもかまわない。また抗菌性付与等のために表面にコーティングされたものでもかまわない。
【0011】
本発明におけるヨウ素残存量の測定にはいかなる測定法をも用いることができ、たとえば、元素分析、蛍光X線分析、滴定などを用いることができる。ただし、ヨウ素がイオンでなくヨウ素分子として残存し、吸着担体を使用するまでに乾燥工程が含まれない場合、測定試料調製時にのみ真空乾燥などの工程が含まれると、ヨウ素が昇華する可能性があり、吸着担体使用時の正確なヨウ素残存量を測定することができない。そのため、このような吸着担体についてはヨウ素残存量測定試料調製時に乾燥工程を入れてはならない。
【0012】
ここで、本発明に用いる吸着担体は、血液の体外循環に使用することを考慮した場合、生体適合性に優れていることが必須であり、血小板が粘着しにくい塩基性官能基を有するものであることが好ましい。本発明における塩基性官能基としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、4級アンモニウム基等があげられるが、これらに限定されるものではない。また、4級アンモニウム基としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミンなどをアルキル鎖などに化学的に固定化したものがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明に用いる吸着担体は、液体を透過させて吸着させることを考慮した場合、圧損が小さい方が好ましく、従って、かさ密度が低く、表面積が大きいという点でフェルト形態を有するものであることが好ましい。本発明におけるフェルトとは、繊維を機械的、化学的、あるいは、熱的に処理し、接着剤や繊維自身の有着力で接合して作る繊維シートのことを指し、その製造方法としては、ニードルパンチング法、メルトブロー法などがあげられるが、こられに限定されるものではない。
本発明における、吸着担体に含有されるヨウ素が1.4wt%を超える量となるようにヨウ素化合物を添加してなる吸着担体であって、ヨウ素の含有率が1.4wt%以下である吸着担体を製造する方法としては、製造工程において、種々の官能基を吸着担体に導入するために、吸着担体をヨウ素化合物を含む反応試薬によって処理した後、吸着担体内に残存するヨウ素を除去するために、適当な洗浄液で洗浄する方法、あるいは、ヨウ素化合物以外のハロゲン化合物を含む処理液で処理しヨウ化物を塩化物へと置換する方法などがあげられるが、特にヨウ素化合物以外のハロゲン化合物を含む処理液によって処理する方法が好ましい。中でも、水との親和性を考慮すると、塩素化合物(塩化物)を含む処理液によって処理する方法が最も好ましい。
本発明における反応試薬とは、吸着担体の製造工程において使用される物質を意味し、例えば、官能基を導入する際に用いられる原料、触媒、コーティング剤、あるいは、洗浄時に洗浄剤として用いられる物質をさすが、これらに限定されるものではない。官能基の固定化方法がハロゲン化アルキルに対するアミンの求核置換反応によるアミンの固定化である場合、反応試薬はハロゲン化アルキルとの反応性が高いヨウ素化合物であることが好ましい。あるいは、ハロゲン化アルキルが塩素化合物である場合、反応試薬は触媒としてヨウ化カリウムなどのヨウ化物であることが好ましい。
【0014】
本発明における塩素化合物とは、例えば、食塩、塩化アンモニウム等の塩化物があげられるが、これらに限定されるものではない。その使用方法には限定はないが、たとえば、吸着担体にカチオンが含まれ、カウンターイオンとしてヨウ化物イオンが残存する場合、塩化物イオンを含む溶液で処理することでイオン交換によりヨウ化物イオンの残存量を低減させることに利用できる。
本発明における吸着担体の形態には特に限定はなく、たとえば、編み地、不織布、フェルト等の繊維材料を用いることができる。この吸着担体の素材としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの公知のポリマー、あるいは、これらの誘導体を使用することができる。これらのポリマーの単独糸であっても、混合系であってもかまわない。また、たとえば吸着担体の形態として繊維材料を用いるのであれば、芯鞘型、海島型またはサイドバイサイド型の複合糸であってもかまわない。なお、繊維の断面形状は円形断面であっても、それ以外の異形断面であってもかまわない。また、かかる繊維材料の繊維の断面の直径は、目的とする吸着性能を考慮した上で決められるべきものである。たとえば、血液からの顆粒球の除去のためにはかかる断面直径は4μm以上であることが好ましく、より好ましくは5μm〜10μmのものが使用される。一方、断面直径が0.5〜4μmの繊維を用いればリンパ球の除去にも好適に使える。また、断面直径が0.5μm未満の繊維を用いれば、生理活性物質の除去効率を上げることが可能となる。これ以外に、太さの異なる2種類以上の繊維を混合して使用することも可能である。ここで示した直径は、円柱状の繊維に対してのみ適用されるものではなく、たとえば楕円や矩形、多角形の物にも適用される。それらの場合、同面積の真円と仮定してその直径を求めるものとする。
吸着担体の厚みについては限定する物ではないが、0.1mm以上10cm以下が取り扱い上、好ましい。例えば、東レ社製のトレミキシンのようなラジアルフロータイプのモジュールに組み込む場合は、中心パイプに巻き付けるため、厚みは1cm以下であることが好ましい。これらは、取り扱い法によって決定される。
【0015】
本発明の吸着材料は、医療材料用途に好適に用いられる。ここで、かかる医療材料用途としては、血液の体外循環用カラムの充填剤などがあげられるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
(N,N−ジメチルオクチルアミン化フェルト(DMOA化フェルト)の作製)
36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合によりなるものを次の成分を用いて、紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。
島の芯成分;ポリプロピレン
島の鞘成分;ポリスチレン90wt%、ポリプロピレン10wt%
海成分;エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸3wt%含む共重合ポリエステル
複合比率(重量比率);芯:鞘:海=42:43:15
この繊維85wt%と、直径20μmのポリプロピレン繊維15wt%からなる不織布(目付150g/m)を作製した。次に、この不織布を90℃、3wt%の水酸化ナトリウム水溶液で処理して海成分であるエチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸3wt%含む共重合ポリエステルを溶解することによって、芯鞘繊維の直径が5μmのフェルトを作製した。
次に、ニトロベンゼン46wt%、硫酸46wt%、パラホルムアルデヒド1wt%、N−メチロール−α−クロルアセトアミド(以下、NMCAと略す)7wt%を10℃以下で混合、撹拌、溶解しNMCA化反応液を調製した。このNMCA化反応液を15℃にし、フェルト1gに対し、約40mlの固液比でNMCA化反応液を加え、水浴中で反応液を15〜20℃に保ったまま2時間反応させた。この2時間の間に10分間隔でフェルトと反応液を手で撹拌した。反応液からフェルトを引き上げ、NMCA反応液と同量のニトロベンゼンに浸漬、シーソー型の振とう機(BIO CRAFT社、BC−700型)により40回/分で30分間振とうした。続いてフェルトを引き上げ、メタノールに浸漬、シーソー型の振とう機(BIO CRAFT社、BC−700型)により40回/分で30分間振とうする、というNMCA化後のメタノール洗浄を計7回繰り返し、NMCA化フェルトを得た。
【0017】
続いて、ジメチルスルホオキシド(DMSO)71wt%、メタノール22wt%、N,N−ジメチルオクチルアミン(DMOA)6wt%、ヨウ化カリウム1wt%を混合、溶解しDMOA化反応液を調製した。このNMCA化反応液と同量のDMOA化反応液を50℃まで昇温し、上記NMCA化フェルトを浸漬し、50℃の温浴中で4時間反応させた。反応液からフェルトを引き上げ、NMCA反応液と同量のメタノールに浸漬、シーソー型の振とう機(BIO CRAFT社、BC−700型)により40回/分で30分間振とうする、というDMOA化後のメタノール洗浄を計7回繰り返した。続いてフェルトを引き上げ、NMCA化反応液と同量の水に浸漬、シーソー型の振とう機(BIO CRAFT社、BC−700型)により40回/分で30分間振とうする、という水洗浄を計3回数繰り返し、DMOA化フェルト(以下、吸着担体1と表記する)を得た。
(食塩水処理)
吸着担体1を直径1cmの円形に打ち抜き、内径1cm、長さ2cmのカラムに10枚を積層するように詰めた。このカラムに20mlの2M食塩水を30ml/minの流量で30分間循環後、2M食塩水を新しく交換するという食塩水処理を繰り返した(以下、この繰り返し回数を食塩水処理回数と記載する)。この吸着担体を取り出し水ですすぎ吸着担体についた食塩水を取り除いた。ヨウ素残存量測定に供する試料としては、真空乾燥機にて絶乾させたものを使用した。サイトカイン吸着能試験に供する試料としては生理食塩水に浸漬し保存したものを使用した。
(ヨウ素残存量の測定)
ヨウ素残存量は、東レリサーチセンターに依頼し測定した。測定試料には乾燥させた吸着担体を使用した。方法は、まず、吸着担体1についてフラスコ燃焼法および電位差滴定でヨウ素残存量の測定を行った。続いて、この試料および、食塩水処理後の試料について蛍光X線分析により蛍光X線強度を測定し、その強度比から他の試料のヨウ素残存量を求めた。
(サイトカイン(IL−6)吸着能測定)
凍結した牛胎児血清(FBS)を56℃の温浴に浸け、すべて溶解したことを確認してからさらに2時間56℃の温浴に浸けた。このFBSに500pg/mlとなるようIL−6を添加した。比較例1では吸着担体1を直径1cmの円形に打ち抜き、この打ち抜いた吸着担体1を0.95mlのIL−6を添加したFBSに浸漬した。また、実施例2、4,比較例2では上記食塩水処理を所定回数施した後、この食塩水処理を施した直径1cmの円形に打ち抜いた吸着担体1枚を0.95mlのIL−6を添加したFBSに浸漬した。また、ブランクとして、吸着担体を添加していないIL−6を添加したFBSを準備し、これらをそれぞれ37℃のインキュベーター中、ローテーターで1時間回転した。この上澄中のサイトカイン濃度を、ELISA法により測定した。ELISAキットは鎌倉テクノサイエンス社製のヒトIL−6ELISAキットを用いた。吸着能の表記としては、ブランクFBS中のIL−6濃度と吸着担体による吸着試験後のFBS中のIL−6濃度の差をブランク濃度に対する百分率(IL−6吸着率)で表現した。
[実施例1]
吸着担体1に対し食塩水処理を2回施した後、ヨウ素残存量を測定した結果1.4wt%であった。
[実施例2]
吸着担体1に対し食塩水処理を3回施した後、IL−6吸着率を測定した結果、IL−6吸着能は82%であった。
[実施例3]
吸着担体1に対し食塩水処理を6回施した後、ヨウ素残存量を測定した結果0.027wt%であった。
[実施例4]
吸着担体1に対し食塩水処理を12回施した後、ヨウ素残存量、および、IL−6吸着率を測定した結果、このフェルトに残存するヨウ素残存量は検出限界以下(0.08wt%以下)であった。IL−6吸着能は約84%であった。
[比較例1]吸着担体1に対し食塩水処理を施すことなく、ヨウ素残存量、および、IL−6吸着率を測定した結果、このフェルトに残存するヨウ素残存量は9.6wt%であった。IL−6吸着能は約66%であった。
[比較例2]食塩水洗浄を1回施した後、この吸着担体1に対し、IL−6吸着率を測定した結果、IL−6吸着能は76%であった。
[比較例3]
吸着担体1を直径1cmの円形に打ち抜き、内径1cm、長さ2cmのカラムに10枚を積層するように詰めた。このカラムに20mlの2Mヨウ化カリウム水溶液を30ml/minの流量で30分間循環後、2Mヨウ化カリウム水溶液を新しく交換するというヨウ化カリウム水溶液処理を12回繰り返し、カウンターイオンを積極的にヨウ化物イオンに置換した。この吸着担体を取り出し水ですすぎ吸着担体についたヨウ化カリウムを取り除いた。サイトカイン吸着能試験に供する試料としては生理食塩水に浸漬し保存した。
【0018】
この吸着担体のIL−6吸着率を測定した結果は20%であった。
【0019】
【表1】

【0020】
図1より、この吸着担体1においては、食塩水処理回数を2回以上(ヨウ素残存量1.4wt%)とすると、この条件で製造した吸着担体では安定して80%以上のIL−6吸着率を得ることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の吸着担体は、各種血液処理カラムに好適に使用することができる。特に、過剰に存在する人体に不要な白血球やガン細胞などと、サイトカインなどの生理活性物質の両方を除去するために好適であり、自己免疫疾患、がん、アレルギーなどの血液処理や治療に有用である。またこの材料は、シャーレ、瓶、膜、繊維、中空糸、粒状物またはこれらを用いた組み立て品などの成形品の形で、アフィニティークロマトグラフ用カラム、治療用血液カラム、特に体外循環カラムとして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】食塩水処理回数とヨウ素残存量、および、IL−6吸着率の関係

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素が1.4wt%を超える量含有されている吸着担体について、ヨウ素除去処理後のヨウ素の含有率が1.4wt%以下であることを特徴とする吸着担体。
【請求項2】
塩基性官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の吸着担体。
【請求項3】
該塩基性官能基が4級アンモニウム基であることを特徴とする請求項2に記載の吸着担体。
【請求項4】
フェルト形態を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の吸着担体。
【請求項5】
医療材料用途に用いられることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の吸着担体。
【請求項6】
ヨウ素含有率が1.4wt%を超える吸着担体を、ヨウ素化合物を除くハロゲン化合物を含む液体で処理して、ヨウ素含有率を1.4wt%以下とすることを特徴とする吸着担体の製造方法。
【請求項7】
該ヨウ素を反応試薬として用いて官能基を導入した吸着担体を、ヨウ素化合物を除くハロゲン化合物を含む液体で処理することを特徴とする請求項6に記載の吸着担体の製造方法。
【請求項8】
該ヨウ素化合物を除くハロゲン化合物が塩素化合物であることを特徴とする請求項6または7に記載の吸着担体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−260216(P2007−260216A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90627(P2006−90627)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】