説明

吸着材料

【課題】
血液のような多量の共存タンパクを含む溶液中においても過剰のサイトカインおよび/またはスーパー抗原を高効率で迅速に除去あるいは不活化することができ、かつ化学的に安定な結合を持つ吸着材料を提供する。
【解決手段】
ポリアミンを有する基材からなることを特徴とする吸着材料であり、ポリアミンとしては、窒素原子数が1〜10個であるポリアミンが用いられ、基材としては、芳香族環を有する水不溶性基材が用いられ、基材は繊維形状であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着材料に関するものであり、特に、ヒト血液中等の高濃度の蛋白質溶液中に存在するサイトカインおよび/またはスーパー抗原と結合することによって、炎症性サイトカインおよび/またはスーパー抗原を除去あるいは不活化する浄化カラムあるいは被覆材料として好適に用いられる吸着材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サイトカインは、感染や外傷などの刺激により、免疫担当細胞を始めとする各種の細胞から産生され細胞外に放出されて作用する一群のタンパク質であり、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキンー1〜インターロイキンー15、腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死β、エリスロポエチン、および単球走化因子名など、数多く知られている。
サイトカインは、本来は生体が生体防御のために産生する物質と考えられるが、炎症性サイトカインとして分類される腫瘍壊死因子、インターロイキン−6、インターロイキン−8、および単球走化活性化因子(以下、MCAF/MCP−1という。)などの一群のタンパクは、その過剰な産生が、各種炎症性疾患における組織障害や病態に関与することが明らかになっている。例えば、腫瘍壊死因子の動物への投与は敗血症性のショックを誘起し、このサイトカインの作用を阻害することが病態改善に有用であることが報告されている。これらサトイトカインが高濃度で血中に遊離している、高サイトカイン血症、例えば、ヒトの敗血症などにおいては、インターロイキン−6、インターロイキン−8、およびMCAF/MCP−1などの血液中濃度が顕著な上昇を示し、これらの濃度は、病態や予後と相関することが認められている。また、リウマチ性関節炎などの自己免疫疾患やアレルギー性疾患などでも、その過剰産生と病態との関連が指摘されている。
【0003】
従来、炎症性サイトカインの作用を抑えることにより上記のような炎症性の疾患を治療する試みには、抗体や可溶性受容体に代表されるような特異的に標的サイトカインと結合してその作用を阻害するタンパク質、あるいは、受容体アンタゴニストのようにサイトカインと競合的にその受容体に結合するタンパク質を、生体内に投与することが試みられてきた。しかしながら、生体投与のための多量のタンパク質の調製には多大な費用がかかること、また投与するタンパクが生体にとって異物である場合には、患者にとって不都合な免疫反応を誘起する場合があり、これらにより投与可能な量と回数が制限される場合が多かった。
スーパー抗原が関与している疾患としては、スーパー抗原(TSST−1)に起因する毒素性ショック症候群(toxic shock syndrom;以下、TSSと略す。)、新生児TSS様発疹症(Neonatal TSS−like exanthematous disease;以下、NTEDと略す。)、およびYPMが原因の全身エルシニア菌感染症などがある。
さらに、猩紅熱、劇症型A群連鎖球菌感染症、および急性全身性血管炎である川崎病にも、スーパー抗原の関与が示唆されている。
従来より、スーパー抗原が関与している疾患に対する治療としては抗菌薬の投与が行われているが、感染が薬物耐性菌によるものであった場合には抗菌薬の効果はなく、病態が改善しない場合があるうえ、近年、抗菌薬の安易な投与による薬物耐性菌の出現が問題になっている。また、スーパー抗原の作用を抑えるという目的で、可溶性受容体やγグロブリン製剤などの抗体に代表されるような標的のスーパー抗原と特異的に結合してその作用を阻害するタンパク質、あるいは、受容体アンタゴニストのようにスーパー抗原と競合的にその受容体に結合するタンパク質を生体内に投与することが試みられてきたが、生体投与のための多量のタンパク質の調製には多大な費用がかかる。また、投与するγグロブリン製剤に含まれる抗体が標的のスーパー抗原に特異的でないために、病態が改善しない場合がある。さらに、投与するタンパク質が生体にとって異物である場合には、患者にとって不都合な免疫反応を惹起する場合がある。
体液中に存在するTSST−1を除去する材料に関しては、疎水結合の高い化合物を固定した材料によってTSST−1を吸着する材料が開示されているが、TSST−1によって活性化された免疫系が過剰に放出する物質を除去できるものではないために、病態の改善効果は期待できない(特許文献1参照。)。
【0004】
また、尿素、チオ尿素または分子構造内に複数個有するような、ポリ尿素やポリチオ尿素を結合した材料により、炎症性サイトカインを除去する試みもなされている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案では、尿素結合とチオ尿素結合は熱に不安定であることが知られており、高圧蒸気滅菌などが出来ないのが現状である。また、尿素結合とチオ尿素結合は、加水分解されやすく長期間保存出来ない可能性がある。
【特許文献1】特開平10−290833号公報
【特許文献2】特開平10−147518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、血液のような多量の共存タンパクを含む溶液中においても過剰のサイトカインおよび/またはスーパー抗原を高効率で迅速に除去あるいは不活化することができ、かつ化学的に安定な結合を持つ吸着材料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ポリアミンを有する材料が、サイトカインおよび/またはスーパー抗原と親和性を有することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の第一の要件は、ポリアミンを有する基材からなる吸着材料である。
【0007】
本発明の吸着材料は、次の好ましい態様を有している。
【0008】
(a) 前記のポリアミンの窒素原子数が1〜10個であること。
【0009】
(b) 前記の基材が水不溶性基材であること。
【0010】
(c) 前記の水不溶性基材が芳香族環を有すること。
【0011】
(d) 前記の芳香族環を有する水不溶性基材がポリスチレン、ポリスルホンまたはそれらの誘導体からなること。
【0012】
(e) 前記の水不溶性基材が繊維であること。
【0013】
(f) 前記の繊維が海島型複合繊維であること。
【0014】
(g) 前記の水不溶性基材が水酸基を少なくとも一つ有すること。
【0015】
(h) 前記の水酸基が糖質の水酸基であること。
【0016】
(i) 前記の糖質がキトサン、セルロースまたはそれらの誘導体からなること。
【0017】
(j) 本発明の吸着材料が高サイトカイン血症治療用であること。
【0018】
(k) 前記のサイトカインが炎症性サイトカインであること。
【0019】
(l) 前記の炎症性サイトカインが、インターロイキン−6、インターロイキン−8のいずれか、あるいは両方であること。
【0020】
(m) 本発明の吸着材料が、スーパー抗原が原因である疾患を治療するための、スーパー抗原除去用であること。
【0021】
また、本発明の第二の要件は、上述した吸着材料を用いた体液浄化カラムあるいは被覆材料である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、血液のような多量の共存タンパクを含む溶液中においても過剰のサイトカインおよび/またはスーパー抗原を高効率で迅速に除去あるいは不活化することができ、かつ化学的に安定な結合を持つ吸着材料を得ることができる。
【0023】
本発明の吸着材料は、特に、ヒト血液中等の高濃度の蛋白質溶液中に存在するサイトカインおよび/またはスーパー抗原と結合することによって、炎症性サイトカインおよび/またはスーパー抗原を除去あるいは不活化する浄化カラムあるいは被覆材料として好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の吸着材料は、ポリアミンを有する基材からなる吸着材料である。
【0025】
本発明において、ポリアミンとしては、例えば、ジアミノエタン、ジプロピレントリアミン、ポリエチレンイミン、N−メチル−2, 2’−ジアミノジエチルアミン、N−アセチルエチレンジアミン、および1, 2−ビス(2−アミノエトキシエタン)等に代表されるアルキルアミン類、中でもポリエチレンイミンに代表されるエチレンイミン類が好ましく用いられる。より好ましくは窒素原子数が1〜10個である、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンおよびテトラエチレンペンタミンなどに代表される、エチレンイミン類がより好ましく用いられる。窒素原子数が1未満、すなわちポリアミンが存在しない状態では、サイトカインおよび/またはスーパー抗原を除去あるいは不活化することはできない。さらに窒素原子数が多過ぎる場合には、吸着材料の性能が低下し、さらに生体適合性が悪くなる傾向を示す。
本発明における基材は、水不溶性基材であることが好ましい。ここでいう水不溶性基材は、水に不溶で、かつ、ポリアミンを有する基材であれば良く、例えば、プロパン、ヘキサン、オクタンおよびドデカンなどの脂肪族化合物、およびシクロヘキサンやシクロペンタンのような脂環族化合物を挙げることができるが、親和性の高さを考慮すると、ベンゼン、ナフタレンおよびアントラセン等の芳香族化合物がより好ましく用いられる。
【0026】
また、基材として、ブロモヘプタン、クロロシクロヘキサン、メチルベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジフェニルメタン、およびクロロナフタレン等の誘導体も好適に用いられる。あるいは水酸基やカルボキシル基等の官能基を有する構造のものが好ましく用いられる。
【0027】
水酸基を有する構造のものとしては、ヒドロキシプロパン、2−エタノールアミン、1, 3−ジアミノ- 2- ヒドロキシプロパン、ヒドロキシブタノン、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピリジン等や、グルコース、グルコサミン、ガラクトサミン、マルトース、セルビオース、スクロース、アガロース、セルロース、キチン、キトサン等の単糖、オリゴ糖、および多糖等の糖質あるいはそれらの誘導体を用いることができる。最も好ましくは、ポリアミンを有しさらに芳香族化合物を有する水不溶性基材が用いられる。
さらに、芳香族化合物を有する化合物としては、例えば、芳香族ポリビニル化合物、ポリスチレン系重合体、ポリスルホン系重合体、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテル、およびポリフェニレンサルファイドなどが挙げられ、ポリアミンを共有結合で固定化できる反応性官能基をもつ水不溶性基材を使用することができる。
反応性官能基としては、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基、ハロゲン化アルキル基などの活性ハロゲン基、エポキサイド基、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン酸基、および酸無水物基などを使用することができるが、とりわけ、活性ハロゲン基は、製造が容易な上に、反応性が高く、ポリアミンの固定化反応を温和な条件で遂行できると共に、この際生じる共有結合が化学的に安定なので、好ましく使用される。
反応性官能基を有する水不溶性基材の具体的な例としては、例えば、クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン等のポリスチレンやクロルアセトアミドメチル化ポリスルホン等のポリスルホン等が好ましく使用される。さらに、これらの水不溶性基材の中でも、成形しやすいことから、有機溶媒に対し可溶であるものが特に好ましく使用される。
また、本発明では、基材が繊維の形状のものであってもよく、繊維として海島型複合繊維を用いることができる。具体的に、海成分がポリスチレンで島成分がポリプロピレンの海島型複合繊維は、ポリスチレン部分に活性ハロゲン基を導入しやすく、ポリプロピレンによる強度補強による扱い易さを持つためより好ましく用いられる。島成分の個数に特に限定はされないが、製造面から1〜100個が好ましい。さらに海成分については、ポリ(芳香族ビニル化合物)以外に、前記補強用ポリマとのブレンド体であってもよい。この場合、補強用ポリマのブレンド比が大きくなればなるほど耐剥離性に優れた繊維が得られるが、が逆に炎症性サイトカイン、黄色ブドウ球菌外毒素などのスーパー抗原の吸着性が低下するため、ブレンド比は50%未満、特に5〜30%程度が好ましい。繊維の直径は通常1〜100μm程度であるが、細すぎると糸強力が小さくなり、取り扱いが難しい欠点を生じ、太すぎると炎症性サイトカイン、黄色ブドウ球菌外毒素などのスーパー抗原の吸着性が低下するため、特に1〜50μmが望ましい。
【0028】
例えば、基材にポリアミンを反応させる場合には、反応溶媒は必ずしも必要でないが、反応溶媒を用いる場合、反応溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ヘキサン、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド(DMSO)等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルムおよびクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサン等のエーテル類等が挙げられるが、N,N−ジメチルホルムアミドやジメチルスルホオキシド等の極性溶媒が好ましく用いられる。
【0029】
例えば、DMSO溶媒中において、ポリアミンとしてテトラエチレンペンタミンを用いる場合の反応過程におけるテトラエチレンペンタミン添加量は、ポリスチレンの繰り返し最小単位を1分子としたとき、基材であるポリスチレン1molに対して、好ましくは5mmolから100000mmolの範囲であり、もっとも好ましくは10mmolから20000mmolであるが、これ以外の溶媒を用いた場合の添加量はこれに限られない。テトラエチレンペンタミンの添加量が上述添加量の範囲外では、吸着性能の低下が確認された。
【0030】
不均一系反応による吸着材料の製造方法の一例としては、クロルアセトアミドメチル化ポリスルホンの繊維または中空糸などの成形品を、ポリアミンのDMSO溶液中に浸し、0〜100℃の温度で反応させることにより、本発明の吸着材料を容易に製造することができる。
【0031】
本発明の吸着材料を、ナイロン繊維などの成形品の表面にコーティングすると、簡単に表面積の大きな高次の成形品が得られる。コーティング方法としては、該吸着材料を塩化メチレンやテトラヒドロフランなどの低沸点溶媒に溶かしたものに、ナイロン繊維からなる編地や織物を浸した後、溶媒を蒸発することにより容易にコーティングすることができる。また、本発明の吸着材料を、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶かしたものを、水などに入れる湿式コーティング法も利用することができる。被コーティング成形品のポリマーとしては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリスルホン、ポリ塩化ビニルおよびポリエステルなど、本発明の吸着材料との接着性の良いものであれば何でも良く、ナイロンやポリエーテルイミドなどのアミド系のポリマーが好ましく用いられる。
本発明の吸着材料は、サイトカインおよび/またはスーパー抗原除去カラムあるいは被覆材料などとして好ましく用いられる。その形状としては特に限定はないが、カラムとして用いる場合には、ビーズ、繊維、中空繊維、糸束、ヤーン、ネット、編み地および織物等が用いられるが、表面積が大きく、流路抵抗の小ささを考慮すると、繊維、編地、織物や中空糸が好ましく用いられる。被覆材料の場合は、織物あるいはフィルム等の形状が好ましい。
また、本発明の吸着材料は、単独での使用のみならず、適当な他の基材にさらに固定化したり、他材料と混合して一つのカラムあるいは被覆材料として用いることもできる。本発明の吸着材料を用いたカラムを、体外循環用カラムとして用いる場合には、体外に導出した血液を直接カラムに通しても良いし、血漿分離膜などと組み合わせて使用しても良い。
【0032】
本発明の吸着材料は、炎症性サイトカインおよび/またはスーパー抗原を除去あるいは不活化するが、炎症性サイトカインとしては、特に限定されるものではなく、一般に分類される腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン−6、インターロイキン−8および単球走化活性化因子(MCAF/MCP−1)などの一群のタンパクなどを好適に除去あるいは不活化する。中でも、高サイトカイン血症治療用に好適に用いられる。また、スーパー抗原が原因である疾患を治療するために、スーパー抗原を除去あるいは不活化する。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を用いて詳細に説明を加えるが、発明の内容が実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
50重量比の海成分(ポリスチレン)と50重量比の島成分(ポリプロピレン)とからなる海島型複合繊維(強度:0.76g/d、伸度:69%、太さ:9.07デニール、島の数:16本)30gを、60gのN−メチロール−α−クロロアセトアミド、400gのニトロベンゼン、400gの98%硫酸、および0.86gのパラホルムアルデヒドの混合溶液と、20℃の温度で1時間反応させた。その後、その海島型複合繊維をニトロベンゼンで洗浄し、その後メタノールにより反応を停止させた後、さらにメタノールで洗浄することにより、α−クロロアセトアミドメチル化架橋ポリスチレン繊維(以下、AMPSt繊維と略す。)を得た。
【0035】
次に、DMSO1000mlにテトラエチレンペンタミン5.0gを添加し溶解させた後、AMPSt繊維に30℃の温度で3時間反応を行った。その後、ガラスフィルター上でDMSO1000mlを用いて洗浄し、さらに蒸留水1000mlを用いて洗浄し、テトラエチレンペンタミンを導入したAMPSt繊維(以下、TAMP繊維と略す。)を得た。
【0036】
ここで、作製したTAMP繊維を用いて、ヒト由来のサイトカインであるIL−6(ペプロテック社製)、およびヒト由来のサイトカインであるIL−8(ペプロテック社製)、およびスーパー抗原TSST−1(トキシンテクノロジー社製)について、吸着試験を行った。h−IL−6、h−IL−8、およびTSST−1がそれぞれ1ng/mlの濃度になるように、牛胎児血清(シグマ社製)中に溶解させ、被吸着溶液とした。TAMP2cm2 をそれぞれこの被吸着溶液1.4ml中に添加し、37℃の温度で2時間旋回攪拌しつつ吸着反応を行った。吸着前後のh−IL−6、h−IL−8、およびTSST−1濃度を、それぞれ酵素免疫学的測定法により測定した。結果を表1に示す。
【0037】
(比較例1)
50重量比の海成分(ポリスチレン)と50重量比の島成分(ポリプロピレン)とからなる未加工の海島型複合繊維(強度:0.76g/d、伸度:69%、太さ:9.07デニール、島の数:16本)を、実施例1と全く同様の吸着試験をおこない、それぞれ酵素免疫学的測定法により測定した。結果を表2に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
このように、実施例1と比較例1で用いた材料においては、テトラエチレンペンタミンによって除去あるいは不活化させることができ、h−IL−6、h−IL−8、およびTSST−1の吸着率に差があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、特に、ヒト血液中等の高濃度の蛋白質溶液中に存在するサイトカインおよび/またはスーパー抗原と結合することによって、炎症性サイトカインおよび/またはスーパー抗原を除去あるいは不活化する浄化カラムあるいは被覆材料として好適に用いられる吸着材料に関するものであり、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミンを有する基材からなることを特徴とする吸着材料。
【請求項2】
ポリアミンの窒素原子数が1〜10個であることを特徴とする請求項1記載の吸着材料。
【請求項3】
基材が水不溶性基材であることを特徴とする請求項1または2記載の吸着材料。
【請求項4】
水不溶性基材が芳香族環を有することを特徴とする請求項3記載の吸着材料。
【請求項5】
芳香族環を有する水不溶性基材がポリスチレン、ポリスルホンまたはそれらの誘導体からなることを特徴とする請求項4記載の吸着材料。
【請求項6】
水不溶性基材が繊維であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の吸着材料。
【請求項7】
繊維が海島型複合繊維であることを特徴とする請求項6記載の吸着材料。
【請求項8】
水不溶性基材が水酸基を少なくとも一つ有することを特徴とする請求項3〜7のいずれかにに記載の吸着材料。
【請求項9】
水酸基が糖質の水酸基であることを特徴とする請求項8記載の吸着材料。
【請求項10】
糖質がキトサン、セルロースまたはそれらの誘導体からなることを特徴とする請求項9記載の吸着材料。
【請求項11】
高サイトカイン血症治療用であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の吸着材料。
【請求項12】
サイトカインが炎症性サイトカインであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の吸着材料。
【請求項13】
炎症性サイトカインがインターロイキン−6、インターロイキン−8のいずれか、あるいは両方であることを特徴とする請求項12記載の吸着材料。
【請求項14】
スーパー抗原が原因である疾患を治療するための、スーパー抗原除去用であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の吸着材料。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の吸着材料を用いてなる体液浄化カラム。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれかに記載の吸着材料を用いてなる被覆材料。

【公開番号】特開2006−272075(P2006−272075A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92483(P2005−92483)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】