吸着部材
【課題】ガス導入流路とガス排出流路間に挿入される吸着剤を均質に配することができ、これにより、ガスを吸着剤全体に対して均一に流すことができ、吸着剤の利用効率の向上を図る。
【解決手段】第1吸着部材10Aは、ガス導入流路22aのうち、隣接するガス排出流路22bと対向する面を第1面32aとし、ガス排出流路22bのうち、隣接するガス導入流路22aの第1面32aと対向する面を第2面32bとしたとき、第1面32aと第2面32b間の最短距離d1が一定で、第1面32aと第2面32bとの間に挿入された吸着剤層14の厚さd2が一定とされている。さらに、第1面32aから吸着剤層14までの距離daと第2面32bから吸着剤層14までの距離dbがそれぞれ一定となっている。
【解決手段】第1吸着部材10Aは、ガス導入流路22aのうち、隣接するガス排出流路22bと対向する面を第1面32aとし、ガス排出流路22bのうち、隣接するガス導入流路22aの第1面32aと対向する面を第2面32bとしたとき、第1面32aと第2面32b間の最短距離d1が一定で、第1面32aと第2面32bとの間に挿入された吸着剤層14の厚さd2が一定とされている。さらに、第1面32aから吸着剤層14までの距離daと第2面32bから吸着剤層14までの距離dbがそれぞれ一定となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに平行に延在する多数のガス導入流路と多数のガス排出流路との間に吸着剤層を挿入してなる吸着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸着部材は、例えば特許文献1に示すように、入口側端面が開口とされ、出口側端面が封止された多数の入口側中空チューブと、入口側端面が封止され、出口側端面が開口とされた多数の出口側中空チューブを吸着剤に差し込んで構成されている。入口側中空チューブ及び出口側中空チューブの各壁は多孔質となっている。
【0003】
従って、この吸着部材に供給された処理前のガスは、入口側第1中空チューブに流入し、該入口側中空チューブの多孔質壁を通って吸着剤に供給され、処理後のガスは出口側中空チューブの多孔質壁と出口側中空チューブを通じて排出される。
【0004】
【特許文献1】国際公開第99/021644号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術において、ガスの流れは、図18に示すように、圧損が最も低い経路、入口側中空チューブ100aの多孔質壁と出口側中空チューブ100bの多孔質壁との間の最短経路(Aで示す経路)をとることになり、Bで示す曲線となるような経路は通らない。従って、ガスは吸着剤102全体を均一に流れるわけではないため、吸着剤102の性能が100%引き出されることはない。
【0006】
さらに、特許文献1記載の中空チューブは、プラスチック製の中空糸膜が現実的な選択と考えられるが、その柔らかさのために、図19に示すように、隣接する入口側中空チューブ100aと出口側中空チューブ100bと間の距離にばらつきが生じ(距離Laと距離Lbで異なる)、吸着剤102の不均質さが発生するおそれがある。
【0007】
また、吸着剤の単位体積当たりの処理能力が大きい場合には、(ガスの流入経路の体積)/(吸着剤の体積)を大きくすることがよい。そこで、特許文献1では、中空チューブの本数を増やすことになるが、中空チューブの本数が増すにつれて、吸着剤を充填する(あるいは吸着剤に中空チューブを挿入する)こと自体、手間がかかるようになり、コストアップの要因となる。
【0008】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、ガス導入流路とガス排出流路間に挿入される吸着剤を均質に配することができ、これにより、ガスを吸着剤全体に対して均一に流すことができ、吸着剤の利用効率の向上を図ることができる吸着部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る吸着部材は、それぞれ多孔体壁で区画された多数のガス導入流路と、それぞれ多孔体壁で区画された多数のガス排出流路と、前記ガス導入流路と前記ガス排出流路の間に挿入された吸着剤層もしくは前記ガス導入流路の表面に形成された吸着剤層もしくは前記ガス排出流路の表面に形成された吸着剤層のうち少なくとも一つを有する吸着部材であって、前記ガス導入流路と前記ガス排出流路がそれぞれ平行に配置され、前記ガス導入流路と前記ガス排出流路の横断面の形状が多角形であり、前記ガス導入流路のうち、隣接する前記ガス排出流路と対向する面を第1面とし、前記ガス排出流路のうち、隣接する前記ガス導入流路の前記第1面と対向する面を第2面としたとき、前記第1面と前記第2面間の最短距離が一定で、前記第1面と前記第2面との間に挿入された前記吸着剤層もしくは前記ガス導入流路の表面に形成された吸着剤層もしくは前記ガス排出流路の表面に形成された吸着剤層の厚さが一定であることを特徴とする。なお、前記一定とは、変動幅が±50%以下である。
【0010】
これにより、ガス導入流路とガス排出流路間に挿入される吸着剤を均質に配することができ、ガスを吸着剤全体に対して均一に流すことができる。これは、吸着剤の利用効率の向上につながり、吸着部材自体の小型化、該吸着部材を用いた設備のコンパクト化を図ることができる。
【0011】
そして、本発明において、前記多角形は、三角形、四角形、六角形、八角形のいずれか、もしくはこれらの形状の組み合わせであってもよい。
【0012】
また、前記吸着剤層を構成する材料が、前記多孔体壁の一部又は全部に浸透していてもよい。あるいは、前記多孔体壁と前記吸着剤層とが一体化していてもよい。あるいは、前記多孔体壁が多孔の吸着剤層で構成されていてもよい。
【0013】
これらの場合、多数のガス導入流路と、多数のガス排出流路を一体的に成形して構成することができるため、特許文献1のように、中空糸が多数並べられているところに吸着剤層を充填したり、吸着剤層の中に多数の中空糸を挿入していく等の面倒な作業を回避することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る吸着部材によれば、ガス導入流路とガス排出流路間に挿入される吸着剤を均質に配することができ、これにより、ガスを吸着剤全体に対して均一に流すことができ、吸着剤の利用効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る吸着部材の実施の形態例を図1〜図17を参照しながら説明する。
【0016】
先ず、第1の実施の形態に係る吸着部材(以下、第1吸着部材10Aと記す)は、図1に示すように、全体として直方体状や円柱状等の柱状の形状を有する多孔体の構造体12と、該構造体12内に挿入された吸着剤層14(図4参照)とを有する。
【0017】
構造体12は、吸着処理前のガス(以下、未処理ガスと記す)が流入する流入端面16と、この第1吸着部材10Aにて吸着処理がなされた後のガスが流出する流出端面18と、流入端面16から流出端面18まで延びる隔壁20(図2A〜図3B参照)と、隔壁20により仕切られ、流入端面16から第1吸着部材10Aの軸方向に沿って形成されたガス導入流路22aと、流出端面18から第1吸着部材10Aの軸方向に沿って形成されたガス排出流路22bとを有する。
【0018】
また、流入端面16では、図2A、図3A又は図3Bに示すように、それぞれガス排出流路22bの端面が封止されて、複数のガス導入流路22aの開口によって市松模様又は桂馬飛びの模様(日本の将棋の駒の1つである桂馬の動きに従って開口が配置された模様である。もちろん、チェスのナイトの動きに従って配置された模様でもよい。以下、桂馬飛びの模様と呼ぶ。)を呈するように、これら複数のガス導入流路22aが配された形態となされ、同様に、流出端面18では、図2B、図3B又は図3Aに示すように、それぞれガス導入流路22aの端面が封止されて、複数のガス排出流路22bの開口によって市松模様又は桂馬飛びの模様を呈するように、これら複数のガス排出流路22bが配された形態となされている。
【0019】
さらに、第1吸着部材10Aの横断面(第1吸着部材10Aの軸方向と直交する方向に沿って切った断面。以下、このように呼ぶ。)を見たとき、第1吸着部材10Aの最外周を除けば、図4に示すように、製造等に起因する歪みを除けば、ガス導入流路22aとガス排出流路22bは共に四角形(例えば正方形)を有する。ガス導入流路22aとガス排出流路22b間の隔壁20は、多孔体24にて構成され、特に、隔壁20の幅方向中央部分に吸着剤層14が挿入されている。従って、隔壁20は多孔体24、吸着剤層14、多孔体24の3層構造とされている。
【0020】
作り方としては、多孔体24のみで構成されたハニカム構造体(ここでの「ハニカム」は正六角形に限定されるのではなく、四角形や八角形等の多角形を示す。以下、このように呼ぶ。)を押し出し成形・焼成した後、吸着剤層14を間隙に注入・充填すればよい。目封じはこの工程の中で適宜施せばよく、例えば、吸着剤層14を充填した後に、吸着剤層14を充填した間隙の両端も含めて必要な部位に目封じを施して乾燥させる方法を取ることができる。なお、図4において、交点部分25は目封じを施してもよいし、吸着剤層14を充填してもよい。
【0021】
また、この第1吸着部材10Aの横断面の構造は図5Aや図5Bに示すものでもよい。すなわち、第1吸着部材10Aの最外周を除けば、ガス導入流路22aとガス排出流路22bは、製造等に起因する歪みを除けば、共に四角形(例えば正方形)を有する。ガス導入流路22aとガス排出流路22b間の隔壁20は、多孔体24にて構成され、図5Aでは、ガス導入流路22a側の表面に吸着剤層14が形成され、図5Bでは、ガス排出流路22b側の表面に吸着剤層14が形成されている。
【0022】
これら図4〜5Bに示す構造は、互いを禁ずるものではないので、図4と図5A、図5Aと図5B、図4と図5B、図4〜図5Bの全てを併せ持つ構造であってもよい。
【0023】
図5Aや図5Bに示す構造の第1吸着部材10Aの作り方としては、多孔体24のみで構成されたハニカム構造体を押し出し成形・焼成した後、吸着剤層14をそれが形成される流路に流し込んで、その粘性で一定厚みの層を形成させた後に乾燥させる操作を、所定の厚みになるまで繰り返して吸着剤層14を形成し、その後、必要な部位に目封じを施して乾燥させる方法を取ることができる。
【0024】
この第1吸着部材10Aは、図4を例にとって説明すれば、ガス導入流路22aのうち、隣接するガス排出流路22bと対向する面を第1面32aとし、ガス排出流路22bのうち、隣接するガス導入流路22aの第1面32aと対向する面を第2面32bとしたとき、第1面32aと第2面32b間の距離d1が一定で、第1面32aと第2面32bとの間に挿入された吸着剤層14の厚さd2が一定とされている。特に、この第1吸着部材10Aでは、第1面32aから吸着剤層14までの距離daと第2面32bから吸着剤層14までの距離dbがそれぞれ一定となっている。図5A及び図5Bに示す例においても、第1面32aと第2面32b間の距離d1が一定で、第1面32aと第2面32bとの間に挿入された吸着剤層14の厚さd2が一定とされている。なお、ここで「一定」とは変動幅が±50%以下であることを示す。
【0025】
隔壁20を構成する多孔体24の材料としては、酸化物又は炭化物又は窒化物あるいはこれらの混合物であって、酸素、炭素、窒素以外の構成元素として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、マンガン、鉄、アルミニウム、ケイ素のうち、少なくとも1種類を含む無機材料を使用することができる。
【0026】
吸着剤層14としては、例えば、吸着するガスに応じて、天然ゼオライトや人工ゼオライト、活性炭やモレキュラーシービングカーボン、アルミナ類、アミン類、MOF類等を用いることができる。
【0027】
この第1吸着部材10Aにおいては、上述のように、第1面32aと第2面32b間の距離d1が一定で、第1面32aと第2面32bとの間に挿入された吸着剤層14の厚さd2が一定とされているため、ガス導入流路22aとガス排出流路22b間に挿入される吸着剤層14を均質に配することができる。従って、1つのガス導入流路22aに着目した場合、該ガス導入流路22aに隣接する4つのガス排出流路22bまでの距離はいずれもほぼ同じになり、未処理ガスはほぼ均等に隣接する4つのガス排出流路22bに流通することになる。これは、全てのガス導入流路22aにおいても同じであり、未処理ガスを吸着剤層14全体に対して均一に流すことができる。これは、吸着剤層14の利用効率の向上につながり、第1吸着部材10A自体の小型化、該第1吸着部材10Aを用いた設備のコンパクト化を図ることができる。
【0028】
次に、第2の実施の形態に係る吸着部材(以下、第2吸着部材10Bと記す)は、上述した第1吸着部材10Aとほぼ同じ構成を有するが、多孔体24全体に吸着剤(吸着剤層14を構成する材料)を浸透させた点で異なる。なお、図示を省略する。
【0029】
第2吸着部材10Bの製造方法は、例えば以下のような方法を採用することができる。すなわち、ハニカム構造体12を押し出し成形・焼成・目封じした後、吸着剤を多孔体24を通じて流通させる。このようにすれば、隔壁20全体に吸着剤を行き渡らせることができる。この吸着剤の流通には、吸引とすることも圧入とすることもできる。その後、吸着剤の特性に応じた条件で熱処理することにより、隔壁20と吸着剤層14とが一体化された1つの第2吸着部材10Bが完成する。
【0030】
この第2吸着部材10Bにおいても、ガス導入流路22aとガス排出流路22b間に挿入される吸着剤層14を均質に配することができる。
【0031】
次に、第3の実施の形態に係る吸着部材(以下、第3吸着部材10Cと記す)について図6を参照しながら説明する。
【0032】
第3吸着部材10Cは、図6に示すように、上述した第1吸着部材10Aとほぼ同様の構成を有するが、多孔体24の材料と吸着剤層14の材料とを混合させた材料で構造体12の隔壁20を構成した点で異なる。多孔体24と吸着剤層14とを一体化させた点で、上述した第1吸着部材10A及び第2吸着部材と同様である。この場合、隔壁20は、多孔体24の材料と吸着剤層14の材料が均一に分散された形態となるため、ガス導入流路22aとガス排出流路22b間に挿入される吸着剤層14を均質に配することができる。
【0033】
次に、第4の実施の形態に係る吸着部材(以下、第4吸着部材10Dと記す)について図7を参照しながら説明する。
【0034】
第4吸着部材10Dは、図7に示すように、上述した第1吸着部材10Aとほぼ同様の構成を有するが、構造体12の隔壁20自体を多孔の吸着剤層14で構成した点で異なる。この場合、隔壁20自体が、吸着剤層14であることから、ガス導入流路22aとガス排出流路22b間に挿入される吸着剤層14を均質に配することができる。
【0035】
上述の例では、例えば図4〜図5Bに示すように、ガス導入流路22aとガス排出流路22bの横断面形状を共に四角形(例えば正方形)としたが、その他、三角形、四角形、六角形、八角形のいずれか、もしくはこれらの形状の組み合わせでも構わない。図8では、ガス導入流路22aとガス排出流路22bの横断面形状を共に三角形(例えば正三角形)にした場合を示し、図9では、ガス導入流路22aの横断面形状を三角形とし、ガス排出流路22bの横断面形状を六角形にした場合を示す。また、図10では、ガス導入流路22aの横断面形状を八角形とし、ガス排出流路22bの横断面形状を四角形にした場合を示す。その他、様々な形態が考えられる。
【実施例1】
【0036】
次に、第1吸着部材10A〜第4吸着部材10Dでは、処理する流体が隔壁20を全量通過する特性を有する。そこで、圧損低減を図る目的で、図11に示すように、第1吸着部材10A〜第4吸着部材10Dの構造体12と同様の構成を有する1つのモデル構造体40を作り、セル42の面積sと隔壁44の厚みtとの比率の好ましい範囲を検討し、その範囲を見い出した。以下、それについて説明する。
【0037】
先ず、図11に示すモデル構造体40の圧損は、以下の2つの抵抗P1及びP2に起因すると考えられる。
P1:処理する流体が流路46内を流れる際の流路抵抗
P2:処理する流体が隔壁44を通過する際の抵抗
【0038】
抵抗P1及びP2は、セル42の面積sと隔壁44の厚みtを使って、経験的に以下のように表現することができる。
【数1】
【0039】
ここに、
V:モデル構造体1つ当たりの処理ガス量(m3/sec)
S:モデル構造体1つ当たりの横断面積(m2)
L:流路の長さ(m)
r:流路の圧損に係る係数(kPa/m/sec・m)
s:セルの断面積(m2)
t:隔壁の厚み(m)
x:セルの断面積の平方根と隔壁の厚みとの比(√s=xt)
ηG:処理する流体の粘度(Pa・sec)
ηW:基準となる流体(水)の粘度(Pa・sec)
R:基準となる流体(水)の抵抗率(kPa・sec/m2)
【0040】
従って、下記式に示す抵抗P1及びP2の和がモデル構造体の圧損となる。
【0041】
【数2】
【0042】
ここに、f1(x)、f2(x)、a1、a2は以下の通りである。
【0043】
【数3】
【0044】
上述したf1(x)、f2(x)は、図12に示すような関数であるため、xが小さい場合(すなわち、セル42の断面積sに対して隔壁44の厚みtが大きい場合)には、f1(x)、f2(x)のいずれも値が大きくなる。これは、システム上、消費エネルギーが大きくなり、不利である。
【0045】
一方、xが大きくなるにつれてf1(x)が単調に減少するのに対し、f2(x)はある時点から増加に転じる。このため、a2がa1に比して小さければ、P1+P2は、f2(x)の挙動をあまり受けないから、xが大きくなっても、あまり増加しないのに対し、a2がa1に比して大きければ、P1+P2はf2(x)の挙動に引っ張られ、これにより、xが大きくなるにつれて増加することになる。
【0046】
そこで、xの変化に対するP1+P2の挙動を、具体的な実験データに基づき調べた。その結果を図13〜図17に示す。図13は、隔壁44の平均気孔径が5μmの場合を示し、図14は、隔壁44の平均気孔径が7.5μmの場合を示し、図15は、隔壁44の平均気孔径が10μmの場合を示す。また、図16は、隔壁44の平均気孔径が20μmの場合を示し、図17は、隔壁44の平均気孔径が30μmの場合を示す。
【0047】
これら図13〜図17から、P1+P2を小さくできる好ましいxの範囲を導いた(表1〜表3参照)
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
なお、本発明に係る吸着部材は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1吸着部材の構成を示す斜視図である。
【図2】図2Aは第1吸着部材の流入端面の一例を一部省略して示す図であり、図2Bは第1吸着部材の流出端面の一例を一部省略して示す図である。
【図3】図3Aは第1吸着部材の流入端面(又は流出端面)の他の例を一部省略して示す図であり、図3Bは第1吸着部材の流出端面(又は流入端面)の他の例を一部省略して示す図である。
【図4】第1吸着部材の横断面を一部省略して示す図である。
【図5】第1吸着部材の横断面の他の例を一部省略して示す図であり、図5Aはガス導入流路側の表面に吸着剤層が形成された例を示し、図5Bはガス排出流路側の表面に吸着剤層が形成された例を示す。
【図6】第3吸着部材の横断面を一部省略して示す図である。
【図7】第4吸着部材の横断面を一部省略して示す図である。
【図8】ガス導入流路及びガス排出流路の各断面形状の他の例を示す図である。
【図9】ガス導入流路及びガス排出流路の各断面形状のさらに他の例を示す図である。
【図10】ガス導入流路及びガス排出流路の各断面形状のさらに他の例を示す図である。
【図11】第1吸着部材〜第4吸着部材のモデル構造体を一部省略して示す斜視図である。
【図12】関数f1(x)、f2(x)の特性を示すグラフである。
【図13】隔壁の平均気孔径が5μmの場合におけるxの変化に対するP1+P2の挙動を示すグラフである。
【図14】隔壁の平均気孔径が7.5μmの場合におけるxの変化に対するP1+P2の挙動を示すグラフである。
【図15】隔壁の平均気孔径が10μmの場合におけるxの変化に対するP1+P2の挙動を示すグラフである。
【図16】隔壁の平均気孔径が20μmの場合におけるxの変化に対するP1+P2の挙動を示すグラフである。
【図17】隔壁の平均気孔径が30μmの場合におけるxの変化に対するP1+P2の挙動を示すグラフである。
【図18】従来例での不均一なガスの流れによる影響を説明するための図である。
【図19】従来例での吸着剤の不均質な状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0053】
10A〜10D…第1吸着部材〜第4吸着部材
12…構造体 14…吸着剤層
16…流入端面 18…流出端面
20…隔壁 22a…ガス導入流路
22b…ガス排出流路 24…多孔体
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに平行に延在する多数のガス導入流路と多数のガス排出流路との間に吸着剤層を挿入してなる吸着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸着部材は、例えば特許文献1に示すように、入口側端面が開口とされ、出口側端面が封止された多数の入口側中空チューブと、入口側端面が封止され、出口側端面が開口とされた多数の出口側中空チューブを吸着剤に差し込んで構成されている。入口側中空チューブ及び出口側中空チューブの各壁は多孔質となっている。
【0003】
従って、この吸着部材に供給された処理前のガスは、入口側第1中空チューブに流入し、該入口側中空チューブの多孔質壁を通って吸着剤に供給され、処理後のガスは出口側中空チューブの多孔質壁と出口側中空チューブを通じて排出される。
【0004】
【特許文献1】国際公開第99/021644号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術において、ガスの流れは、図18に示すように、圧損が最も低い経路、入口側中空チューブ100aの多孔質壁と出口側中空チューブ100bの多孔質壁との間の最短経路(Aで示す経路)をとることになり、Bで示す曲線となるような経路は通らない。従って、ガスは吸着剤102全体を均一に流れるわけではないため、吸着剤102の性能が100%引き出されることはない。
【0006】
さらに、特許文献1記載の中空チューブは、プラスチック製の中空糸膜が現実的な選択と考えられるが、その柔らかさのために、図19に示すように、隣接する入口側中空チューブ100aと出口側中空チューブ100bと間の距離にばらつきが生じ(距離Laと距離Lbで異なる)、吸着剤102の不均質さが発生するおそれがある。
【0007】
また、吸着剤の単位体積当たりの処理能力が大きい場合には、(ガスの流入経路の体積)/(吸着剤の体積)を大きくすることがよい。そこで、特許文献1では、中空チューブの本数を増やすことになるが、中空チューブの本数が増すにつれて、吸着剤を充填する(あるいは吸着剤に中空チューブを挿入する)こと自体、手間がかかるようになり、コストアップの要因となる。
【0008】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、ガス導入流路とガス排出流路間に挿入される吸着剤を均質に配することができ、これにより、ガスを吸着剤全体に対して均一に流すことができ、吸着剤の利用効率の向上を図ることができる吸着部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る吸着部材は、それぞれ多孔体壁で区画された多数のガス導入流路と、それぞれ多孔体壁で区画された多数のガス排出流路と、前記ガス導入流路と前記ガス排出流路の間に挿入された吸着剤層もしくは前記ガス導入流路の表面に形成された吸着剤層もしくは前記ガス排出流路の表面に形成された吸着剤層のうち少なくとも一つを有する吸着部材であって、前記ガス導入流路と前記ガス排出流路がそれぞれ平行に配置され、前記ガス導入流路と前記ガス排出流路の横断面の形状が多角形であり、前記ガス導入流路のうち、隣接する前記ガス排出流路と対向する面を第1面とし、前記ガス排出流路のうち、隣接する前記ガス導入流路の前記第1面と対向する面を第2面としたとき、前記第1面と前記第2面間の最短距離が一定で、前記第1面と前記第2面との間に挿入された前記吸着剤層もしくは前記ガス導入流路の表面に形成された吸着剤層もしくは前記ガス排出流路の表面に形成された吸着剤層の厚さが一定であることを特徴とする。なお、前記一定とは、変動幅が±50%以下である。
【0010】
これにより、ガス導入流路とガス排出流路間に挿入される吸着剤を均質に配することができ、ガスを吸着剤全体に対して均一に流すことができる。これは、吸着剤の利用効率の向上につながり、吸着部材自体の小型化、該吸着部材を用いた設備のコンパクト化を図ることができる。
【0011】
そして、本発明において、前記多角形は、三角形、四角形、六角形、八角形のいずれか、もしくはこれらの形状の組み合わせであってもよい。
【0012】
また、前記吸着剤層を構成する材料が、前記多孔体壁の一部又は全部に浸透していてもよい。あるいは、前記多孔体壁と前記吸着剤層とが一体化していてもよい。あるいは、前記多孔体壁が多孔の吸着剤層で構成されていてもよい。
【0013】
これらの場合、多数のガス導入流路と、多数のガス排出流路を一体的に成形して構成することができるため、特許文献1のように、中空糸が多数並べられているところに吸着剤層を充填したり、吸着剤層の中に多数の中空糸を挿入していく等の面倒な作業を回避することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る吸着部材によれば、ガス導入流路とガス排出流路間に挿入される吸着剤を均質に配することができ、これにより、ガスを吸着剤全体に対して均一に流すことができ、吸着剤の利用効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る吸着部材の実施の形態例を図1〜図17を参照しながら説明する。
【0016】
先ず、第1の実施の形態に係る吸着部材(以下、第1吸着部材10Aと記す)は、図1に示すように、全体として直方体状や円柱状等の柱状の形状を有する多孔体の構造体12と、該構造体12内に挿入された吸着剤層14(図4参照)とを有する。
【0017】
構造体12は、吸着処理前のガス(以下、未処理ガスと記す)が流入する流入端面16と、この第1吸着部材10Aにて吸着処理がなされた後のガスが流出する流出端面18と、流入端面16から流出端面18まで延びる隔壁20(図2A〜図3B参照)と、隔壁20により仕切られ、流入端面16から第1吸着部材10Aの軸方向に沿って形成されたガス導入流路22aと、流出端面18から第1吸着部材10Aの軸方向に沿って形成されたガス排出流路22bとを有する。
【0018】
また、流入端面16では、図2A、図3A又は図3Bに示すように、それぞれガス排出流路22bの端面が封止されて、複数のガス導入流路22aの開口によって市松模様又は桂馬飛びの模様(日本の将棋の駒の1つである桂馬の動きに従って開口が配置された模様である。もちろん、チェスのナイトの動きに従って配置された模様でもよい。以下、桂馬飛びの模様と呼ぶ。)を呈するように、これら複数のガス導入流路22aが配された形態となされ、同様に、流出端面18では、図2B、図3B又は図3Aに示すように、それぞれガス導入流路22aの端面が封止されて、複数のガス排出流路22bの開口によって市松模様又は桂馬飛びの模様を呈するように、これら複数のガス排出流路22bが配された形態となされている。
【0019】
さらに、第1吸着部材10Aの横断面(第1吸着部材10Aの軸方向と直交する方向に沿って切った断面。以下、このように呼ぶ。)を見たとき、第1吸着部材10Aの最外周を除けば、図4に示すように、製造等に起因する歪みを除けば、ガス導入流路22aとガス排出流路22bは共に四角形(例えば正方形)を有する。ガス導入流路22aとガス排出流路22b間の隔壁20は、多孔体24にて構成され、特に、隔壁20の幅方向中央部分に吸着剤層14が挿入されている。従って、隔壁20は多孔体24、吸着剤層14、多孔体24の3層構造とされている。
【0020】
作り方としては、多孔体24のみで構成されたハニカム構造体(ここでの「ハニカム」は正六角形に限定されるのではなく、四角形や八角形等の多角形を示す。以下、このように呼ぶ。)を押し出し成形・焼成した後、吸着剤層14を間隙に注入・充填すればよい。目封じはこの工程の中で適宜施せばよく、例えば、吸着剤層14を充填した後に、吸着剤層14を充填した間隙の両端も含めて必要な部位に目封じを施して乾燥させる方法を取ることができる。なお、図4において、交点部分25は目封じを施してもよいし、吸着剤層14を充填してもよい。
【0021】
また、この第1吸着部材10Aの横断面の構造は図5Aや図5Bに示すものでもよい。すなわち、第1吸着部材10Aの最外周を除けば、ガス導入流路22aとガス排出流路22bは、製造等に起因する歪みを除けば、共に四角形(例えば正方形)を有する。ガス導入流路22aとガス排出流路22b間の隔壁20は、多孔体24にて構成され、図5Aでは、ガス導入流路22a側の表面に吸着剤層14が形成され、図5Bでは、ガス排出流路22b側の表面に吸着剤層14が形成されている。
【0022】
これら図4〜5Bに示す構造は、互いを禁ずるものではないので、図4と図5A、図5Aと図5B、図4と図5B、図4〜図5Bの全てを併せ持つ構造であってもよい。
【0023】
図5Aや図5Bに示す構造の第1吸着部材10Aの作り方としては、多孔体24のみで構成されたハニカム構造体を押し出し成形・焼成した後、吸着剤層14をそれが形成される流路に流し込んで、その粘性で一定厚みの層を形成させた後に乾燥させる操作を、所定の厚みになるまで繰り返して吸着剤層14を形成し、その後、必要な部位に目封じを施して乾燥させる方法を取ることができる。
【0024】
この第1吸着部材10Aは、図4を例にとって説明すれば、ガス導入流路22aのうち、隣接するガス排出流路22bと対向する面を第1面32aとし、ガス排出流路22bのうち、隣接するガス導入流路22aの第1面32aと対向する面を第2面32bとしたとき、第1面32aと第2面32b間の距離d1が一定で、第1面32aと第2面32bとの間に挿入された吸着剤層14の厚さd2が一定とされている。特に、この第1吸着部材10Aでは、第1面32aから吸着剤層14までの距離daと第2面32bから吸着剤層14までの距離dbがそれぞれ一定となっている。図5A及び図5Bに示す例においても、第1面32aと第2面32b間の距離d1が一定で、第1面32aと第2面32bとの間に挿入された吸着剤層14の厚さd2が一定とされている。なお、ここで「一定」とは変動幅が±50%以下であることを示す。
【0025】
隔壁20を構成する多孔体24の材料としては、酸化物又は炭化物又は窒化物あるいはこれらの混合物であって、酸素、炭素、窒素以外の構成元素として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、マンガン、鉄、アルミニウム、ケイ素のうち、少なくとも1種類を含む無機材料を使用することができる。
【0026】
吸着剤層14としては、例えば、吸着するガスに応じて、天然ゼオライトや人工ゼオライト、活性炭やモレキュラーシービングカーボン、アルミナ類、アミン類、MOF類等を用いることができる。
【0027】
この第1吸着部材10Aにおいては、上述のように、第1面32aと第2面32b間の距離d1が一定で、第1面32aと第2面32bとの間に挿入された吸着剤層14の厚さd2が一定とされているため、ガス導入流路22aとガス排出流路22b間に挿入される吸着剤層14を均質に配することができる。従って、1つのガス導入流路22aに着目した場合、該ガス導入流路22aに隣接する4つのガス排出流路22bまでの距離はいずれもほぼ同じになり、未処理ガスはほぼ均等に隣接する4つのガス排出流路22bに流通することになる。これは、全てのガス導入流路22aにおいても同じであり、未処理ガスを吸着剤層14全体に対して均一に流すことができる。これは、吸着剤層14の利用効率の向上につながり、第1吸着部材10A自体の小型化、該第1吸着部材10Aを用いた設備のコンパクト化を図ることができる。
【0028】
次に、第2の実施の形態に係る吸着部材(以下、第2吸着部材10Bと記す)は、上述した第1吸着部材10Aとほぼ同じ構成を有するが、多孔体24全体に吸着剤(吸着剤層14を構成する材料)を浸透させた点で異なる。なお、図示を省略する。
【0029】
第2吸着部材10Bの製造方法は、例えば以下のような方法を採用することができる。すなわち、ハニカム構造体12を押し出し成形・焼成・目封じした後、吸着剤を多孔体24を通じて流通させる。このようにすれば、隔壁20全体に吸着剤を行き渡らせることができる。この吸着剤の流通には、吸引とすることも圧入とすることもできる。その後、吸着剤の特性に応じた条件で熱処理することにより、隔壁20と吸着剤層14とが一体化された1つの第2吸着部材10Bが完成する。
【0030】
この第2吸着部材10Bにおいても、ガス導入流路22aとガス排出流路22b間に挿入される吸着剤層14を均質に配することができる。
【0031】
次に、第3の実施の形態に係る吸着部材(以下、第3吸着部材10Cと記す)について図6を参照しながら説明する。
【0032】
第3吸着部材10Cは、図6に示すように、上述した第1吸着部材10Aとほぼ同様の構成を有するが、多孔体24の材料と吸着剤層14の材料とを混合させた材料で構造体12の隔壁20を構成した点で異なる。多孔体24と吸着剤層14とを一体化させた点で、上述した第1吸着部材10A及び第2吸着部材と同様である。この場合、隔壁20は、多孔体24の材料と吸着剤層14の材料が均一に分散された形態となるため、ガス導入流路22aとガス排出流路22b間に挿入される吸着剤層14を均質に配することができる。
【0033】
次に、第4の実施の形態に係る吸着部材(以下、第4吸着部材10Dと記す)について図7を参照しながら説明する。
【0034】
第4吸着部材10Dは、図7に示すように、上述した第1吸着部材10Aとほぼ同様の構成を有するが、構造体12の隔壁20自体を多孔の吸着剤層14で構成した点で異なる。この場合、隔壁20自体が、吸着剤層14であることから、ガス導入流路22aとガス排出流路22b間に挿入される吸着剤層14を均質に配することができる。
【0035】
上述の例では、例えば図4〜図5Bに示すように、ガス導入流路22aとガス排出流路22bの横断面形状を共に四角形(例えば正方形)としたが、その他、三角形、四角形、六角形、八角形のいずれか、もしくはこれらの形状の組み合わせでも構わない。図8では、ガス導入流路22aとガス排出流路22bの横断面形状を共に三角形(例えば正三角形)にした場合を示し、図9では、ガス導入流路22aの横断面形状を三角形とし、ガス排出流路22bの横断面形状を六角形にした場合を示す。また、図10では、ガス導入流路22aの横断面形状を八角形とし、ガス排出流路22bの横断面形状を四角形にした場合を示す。その他、様々な形態が考えられる。
【実施例1】
【0036】
次に、第1吸着部材10A〜第4吸着部材10Dでは、処理する流体が隔壁20を全量通過する特性を有する。そこで、圧損低減を図る目的で、図11に示すように、第1吸着部材10A〜第4吸着部材10Dの構造体12と同様の構成を有する1つのモデル構造体40を作り、セル42の面積sと隔壁44の厚みtとの比率の好ましい範囲を検討し、その範囲を見い出した。以下、それについて説明する。
【0037】
先ず、図11に示すモデル構造体40の圧損は、以下の2つの抵抗P1及びP2に起因すると考えられる。
P1:処理する流体が流路46内を流れる際の流路抵抗
P2:処理する流体が隔壁44を通過する際の抵抗
【0038】
抵抗P1及びP2は、セル42の面積sと隔壁44の厚みtを使って、経験的に以下のように表現することができる。
【数1】
【0039】
ここに、
V:モデル構造体1つ当たりの処理ガス量(m3/sec)
S:モデル構造体1つ当たりの横断面積(m2)
L:流路の長さ(m)
r:流路の圧損に係る係数(kPa/m/sec・m)
s:セルの断面積(m2)
t:隔壁の厚み(m)
x:セルの断面積の平方根と隔壁の厚みとの比(√s=xt)
ηG:処理する流体の粘度(Pa・sec)
ηW:基準となる流体(水)の粘度(Pa・sec)
R:基準となる流体(水)の抵抗率(kPa・sec/m2)
【0040】
従って、下記式に示す抵抗P1及びP2の和がモデル構造体の圧損となる。
【0041】
【数2】
【0042】
ここに、f1(x)、f2(x)、a1、a2は以下の通りである。
【0043】
【数3】
【0044】
上述したf1(x)、f2(x)は、図12に示すような関数であるため、xが小さい場合(すなわち、セル42の断面積sに対して隔壁44の厚みtが大きい場合)には、f1(x)、f2(x)のいずれも値が大きくなる。これは、システム上、消費エネルギーが大きくなり、不利である。
【0045】
一方、xが大きくなるにつれてf1(x)が単調に減少するのに対し、f2(x)はある時点から増加に転じる。このため、a2がa1に比して小さければ、P1+P2は、f2(x)の挙動をあまり受けないから、xが大きくなっても、あまり増加しないのに対し、a2がa1に比して大きければ、P1+P2はf2(x)の挙動に引っ張られ、これにより、xが大きくなるにつれて増加することになる。
【0046】
そこで、xの変化に対するP1+P2の挙動を、具体的な実験データに基づき調べた。その結果を図13〜図17に示す。図13は、隔壁44の平均気孔径が5μmの場合を示し、図14は、隔壁44の平均気孔径が7.5μmの場合を示し、図15は、隔壁44の平均気孔径が10μmの場合を示す。また、図16は、隔壁44の平均気孔径が20μmの場合を示し、図17は、隔壁44の平均気孔径が30μmの場合を示す。
【0047】
これら図13〜図17から、P1+P2を小さくできる好ましいxの範囲を導いた(表1〜表3参照)
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
なお、本発明に係る吸着部材は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1吸着部材の構成を示す斜視図である。
【図2】図2Aは第1吸着部材の流入端面の一例を一部省略して示す図であり、図2Bは第1吸着部材の流出端面の一例を一部省略して示す図である。
【図3】図3Aは第1吸着部材の流入端面(又は流出端面)の他の例を一部省略して示す図であり、図3Bは第1吸着部材の流出端面(又は流入端面)の他の例を一部省略して示す図である。
【図4】第1吸着部材の横断面を一部省略して示す図である。
【図5】第1吸着部材の横断面の他の例を一部省略して示す図であり、図5Aはガス導入流路側の表面に吸着剤層が形成された例を示し、図5Bはガス排出流路側の表面に吸着剤層が形成された例を示す。
【図6】第3吸着部材の横断面を一部省略して示す図である。
【図7】第4吸着部材の横断面を一部省略して示す図である。
【図8】ガス導入流路及びガス排出流路の各断面形状の他の例を示す図である。
【図9】ガス導入流路及びガス排出流路の各断面形状のさらに他の例を示す図である。
【図10】ガス導入流路及びガス排出流路の各断面形状のさらに他の例を示す図である。
【図11】第1吸着部材〜第4吸着部材のモデル構造体を一部省略して示す斜視図である。
【図12】関数f1(x)、f2(x)の特性を示すグラフである。
【図13】隔壁の平均気孔径が5μmの場合におけるxの変化に対するP1+P2の挙動を示すグラフである。
【図14】隔壁の平均気孔径が7.5μmの場合におけるxの変化に対するP1+P2の挙動を示すグラフである。
【図15】隔壁の平均気孔径が10μmの場合におけるxの変化に対するP1+P2の挙動を示すグラフである。
【図16】隔壁の平均気孔径が20μmの場合におけるxの変化に対するP1+P2の挙動を示すグラフである。
【図17】隔壁の平均気孔径が30μmの場合におけるxの変化に対するP1+P2の挙動を示すグラフである。
【図18】従来例での不均一なガスの流れによる影響を説明するための図である。
【図19】従来例での吸着剤の不均質な状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0053】
10A〜10D…第1吸着部材〜第4吸着部材
12…構造体 14…吸着剤層
16…流入端面 18…流出端面
20…隔壁 22a…ガス導入流路
22b…ガス排出流路 24…多孔体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ多孔体壁で区画された多数のガス導入流路と、
それぞれ多孔体壁で区画された多数のガス排出流路と、
前記ガス導入流路と前記ガス排出流路の間に挿入された吸着剤層もしくは前記ガス導入流路の表面に形成された吸着剤層もしくは前記ガス排出流路の表面に形成された吸着剤層のうち少なくとも一つを有する吸着部材であって、
前記ガス導入流路と前記ガス排出流路がそれぞれ平行に配置され、
前記ガス導入流路と前記ガス排出流路の横断面の形状が多角形であり、
前記ガス導入流路のうち、隣接する前記ガス排出流路と対向する面を第1面とし、前記ガス排出流路のうち、隣接する前記ガス導入流路の前記第1面と対向する面を第2面としたとき、
前記第1面と前記第2面間の距離が一定で、
前記第1面と前記第2面との間に挿入された前記吸着剤層もしくは前記第1面又は前記第2面の表面に形成された前記吸着剤層の厚さが一定であることを特徴とする吸着部材。
【請求項2】
請求項1記載の吸着部材において、
前記一定とは、変動幅が±50%以下であることを特徴とする吸着部材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の吸着部材において、
前記多角形は、三角形、四角形、六角形、八角形のいずれか、もしくはこれらの形状の組み合わせであることを特徴とする吸着部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸着部材において、
前記吸着剤層を構成する材料が、前記多孔体壁の一部又は全部に浸透していることを特徴とする吸着部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸着部材において、
前記多孔体壁と前記吸着剤層とが化学的に結合して一体化していることを特徴とする吸着部材。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸着部材において、
前記多孔体壁が多孔の吸着剤層で構成されていることを特徴とする吸着部材。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸着部材において、
前記多孔体壁が吸着剤を含む多孔材料で構成されていることを特徴とする吸着部材。
【請求項1】
それぞれ多孔体壁で区画された多数のガス導入流路と、
それぞれ多孔体壁で区画された多数のガス排出流路と、
前記ガス導入流路と前記ガス排出流路の間に挿入された吸着剤層もしくは前記ガス導入流路の表面に形成された吸着剤層もしくは前記ガス排出流路の表面に形成された吸着剤層のうち少なくとも一つを有する吸着部材であって、
前記ガス導入流路と前記ガス排出流路がそれぞれ平行に配置され、
前記ガス導入流路と前記ガス排出流路の横断面の形状が多角形であり、
前記ガス導入流路のうち、隣接する前記ガス排出流路と対向する面を第1面とし、前記ガス排出流路のうち、隣接する前記ガス導入流路の前記第1面と対向する面を第2面としたとき、
前記第1面と前記第2面間の距離が一定で、
前記第1面と前記第2面との間に挿入された前記吸着剤層もしくは前記第1面又は前記第2面の表面に形成された前記吸着剤層の厚さが一定であることを特徴とする吸着部材。
【請求項2】
請求項1記載の吸着部材において、
前記一定とは、変動幅が±50%以下であることを特徴とする吸着部材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の吸着部材において、
前記多角形は、三角形、四角形、六角形、八角形のいずれか、もしくはこれらの形状の組み合わせであることを特徴とする吸着部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸着部材において、
前記吸着剤層を構成する材料が、前記多孔体壁の一部又は全部に浸透していることを特徴とする吸着部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸着部材において、
前記多孔体壁と前記吸着剤層とが化学的に結合して一体化していることを特徴とする吸着部材。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸着部材において、
前記多孔体壁が多孔の吸着剤層で構成されていることを特徴とする吸着部材。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸着部材において、
前記多孔体壁が吸着剤を含む多孔材料で構成されていることを特徴とする吸着部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−94601(P2010−94601A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267236(P2008−267236)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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