説明

吹付けプラスチック耐火物

【課題】 接着性が良く、耐食性、容積安定性に優れた吹付けプラスチック耐火物を提供する。
【解決手段】 耐火粘土10〜30重量%と粒度調整された耐火性骨材に高アルミナ質、アルミナ・マグネシア質などでアルミナ含有率が45重量%以上の使用後不定形リサイクル材を5重量%以上添加したことを特徴とする吹付けプラスチック耐火物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性、耐食性に優れた吹付けプラスチック耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック耐火物は、乾燥が完全でなくとも流し込み不定形耐火物のように、爆裂トラブルを起こすこともなく、施工完了から短時間で炉を立ち上げさせることができる。なおかつ、プラスチック耐火物の施工後の組織が緻密でないことから使用中においても、耐スポーリング性が非常に優れているという特徴を持っている。さらに、吹付けプラスチック耐火物は、従来のラミング施工によるプラスチック耐火物の施工と比較して施工効率に優れていることから、加熱炉、均熱炉、混銑車などの内張り材として広く使用されている。
【0003】
特許文献1(特開昭48−74514号公報)によると、従来の一般的なプラスチック耐火物は耐火性骨材、耐火粘土および少量の粘着材などからなり、水を適当量添加して混練し、適度な軟らかさに調整したものが材料として使用されている。
【0004】
吹付けプラスチック施工法は、あらかじめ適正な水分にて練りこまれた材料をガンに投入しエアーにて材料を、ホースを経由してノズルまで搬送し、エアー圧によりノズルからそのまま施工面に叩き付けることにより、施工体を形成する方法である。吹付けプラスチック耐火物にとって重要な施工特性は、この施工時の材料の接着性と養生後や加熱後の材料の収縮である。
【0005】
従来の吹付けプラスチック耐火物は、耐火粘土量および添加水分量の調整で材料の接着性と収縮防止を図っている。耐火粘土と添加水分量が多くなれば、可塑性が向上し材料の接着性が改善されるが施工体の収縮または亀裂が大きくなる。反対に耐火粘土と添加水分量が少なければ、施工体の収縮は小さくなるが、材料は可塑性に乏しくなって接着性が悪くなり、結果としてリバウンドが増加する。特に吹付けプラスチック耐火物はランマー成形用のプラスチック耐火物に比較して接着率を高めるために添加水分量が多く、粘土添加量も多い傾向がある。このため従来の材料では、吹付けプラスチック耐火物の特性に必要な収縮の防止と作業性の欠点を同時に解決することができなかった。また、特許文献2(特開平11−43377号公報)にあるように、接着性と収縮抑制のためセメントを添加した材料を現場混練し、圧送し、ノズルで急結剤と粘着剤を添加する湿式吹付け工法のプラスチック材の吹付け方法も開示されている。しかし、作業が煩雑で実用的ではない。
【0006】
一方、特許文献3(特開2007−204316公報)には、マグネシア含有率が15重量%以下、2.00〜3.35mmの見掛気孔率が10〜30%、粒調後のpH値が7.0〜9.5である使用後耐火物リサイクル材を1mm以上の粗粒域に添加するという不定形耐火物の製造方法が記載されている。従来から不定形材へのリサイクル材の添加は行われてきているが、この特許ではpHを測定しリサイクル材を選別することで施工時のトラブルを防止する方法を開示している。しかし、吹付けプラスチック材の場合、セメントを含んでおらずリサイクル材のpH変化により接着性、収縮性に影響を受けることはない。したがって、吹付けプラスチック材へ添加する場合、使用後不定形リサイクル材の煩雑なpHでの選別は必要ない。
【0007】
【特許文献1】特開昭48−74514号公報
【特許文献2】特開平11−43377号公報
【特許文献3】特開2007−204316公報
【発明の開示】

【発明が解決しようとする問題点】
【0008】
本発明では、プラスチック耐火物の接着性の向上と施工体の収縮、亀裂の抑制という相反する条件を同時に満足し、さらに、耐食性を向上させた材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、使用後の不定形耐火物を粉砕、粒度調節した使用後不定形リサイクル材を使用し、耐火粘土を10〜30重量%使用する吹付けプラスチック耐火物である。また、使用後不定形リサイクル材を取鍋内張り材から得ることでより高耐食性が得られる。
【0010】
このような構成としたことにより、接着性が向上し、同時に養生、乾燥収縮が効果的に抑制された材料を得ることができる。さらに、取鍋内張り材からリサイクル材を得ることで、より安価に高耐食性の吹付けプラスチック材を得ることができる。
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
吹付けプラスチック耐火物組成物中の耐火粘土はその可塑性により吹付け時の接着性を大きく左右する。使用後不定形リサイクル材を添加していない配合では耐火粘土は20〜30重量%の添加量で接着性が良好であったが、使用後不定形リサイクル材を添加することで造粒性を高めたところ粘土添加量が少なくても接着性は改善され、10〜30重量%での広い範囲で70%以上の接着率であった。本発明では耐火粘土の耐火性骨材との配合率の下限を10重量%、上限を30重量%とした。配合率が30重量%を超えると粘着力が強くなって、うまく混練できなくなる。一方、配合率が下限の10重量%以下になると接着率が低下し、施工性が悪くなる。
【0013】
耐火性骨材は、例えば焼結アルミナ、電融アルミナ、ボーキサイト、礬土頁岩、ムライト、シャモット、ロー石、カイヤナイトなどから選ばれた1種または2種以上を粒度調整、調合して用いる。また、これらの耐火性骨材に炭素質物質を共に使用してもよい。
【0014】
使用後不定形リサイクル材は気孔率が高く、表面性状が粗いことから粘土と混合して水で混練すると粘土が使用後リサイクル材の表面に積層され造粒されていく。そのため効率的に粗粒を粘土が覆うことになり、粘土が少なくても、使用後不定形リサイクル材を添加していない従来の吹付けプラスチック材よりも接着性が向上する。また、粘土の添加量が多い領域(20〜30重量%)でも粘土と使用後不定形リサイクル材表面とのなじみが良くはがれにくいため、積層厚みが従来よりも厚くなることから、使用後不定形リサイクル材を添加していない吹付けプラスチック材よりも吹付け時の接着率が向上する。したがって接着率は広い粘土添加量範囲(10〜30重量%)でも改善される。さらに、使用後不定形リサイクル材を添加していない従来の吹付けプラスチック材では接着率が低く適用できなかった低い粘土量でも、使用後不定形リサイクル材を添加することで吹付けが可能な接着率が得られることから、粘土量が少なく収縮の小さい施工体を形成することが可能となる。
【0015】
これらの特性は使用後不定形リサイクル材の表面性状によってもたらされることから、その見掛気孔率は通常耐火骨材よりも高い10〜30%が望ましい。また、0.5mm以上の粒度で粘土が造粒しやすいことから使用後不定形リサイクル材の粒度は0.5mm以上含まれることが好ましい。また、吹付け性を考えると6mm以上の粒はリバウンドしやすいことから除外することが望ましい。
【0016】
本発明の吹付けプラスチック耐火物では、耐食性を維持するためのアルミナ含有率が45重量%以上の使用後不定形リサイクル材の使用が望ましく、その添加量は5〜90重量%が望ましい。前記リサイクル材の添加量が5重量%では接着率改善効果は認められず、一方90重量%より多いと粘土が不足して接着性が低下する。
【0017】
また、耐食性を高めるためには粘土よりもアルミナ含有率の高い使用後不定形リサイクル材の添加が望ましい。通常、焼結アルミナや電融アルミナなど高アルミナ含有率の骨材を添加することで耐食性を向上させるが、耐スポーリング性の低下とコストアップが課題となる。しかし、製鉄所内で大量に発生するアルミナ・マグネシア系キャスタブル、例えば取鍋内張り材のアルミナ・マグネシア質、あるいは、アルミナ・スピネル質の使用後不定形リサイクル材は安価で一般の耐火骨材よりも気孔率が10〜30重量%と高く、これらの破砕品を添加すれば耐スポーリング性を損なわず耐食性を向上させることができるので吹付けプラスチック材には好適である。但し、使用後不定形リサイクル材のマグネシア含有率が15重量%よりも高いとアルミナやシリカと低融物を形成するため高い耐食性を得られないことから好ましくない。
【発明の効果】
【0018】
本発明品は、吹付けプラスチック耐火物に必要な高い接着性が得られ、施工体の収縮が少ない優れた材質である。さらに、吹付けて施工することから、ランマーを使用して材料を打ち込む施工と比べ補修工数が大幅に低減されるのと、作業効率の向上を図ることができる。
【実施例】
【0019】
次に具体的な組成について、本発明の実施例および比較例を挙げて説明する。表1には使用した耐火粘土と使用後不定形リサイクル材の特性を、表2〜4には実施例と比較例を示す。
【0020】
リサイクル材Aはタンディッシュ(以下、TDと称する)、リサイクル材Bおよびリサイクル材Cは取鍋、リサイクル材Dはランス、リサイクル材EはTD蓋、そしてリサイクル材Fは鍋蓋のそれぞれ内張り材の使用後不定形リサイクル材の化学成分と粒度を表1に記載した。
【0021】
表2の比較例▲1▼〜▲8▼はシャモット骨材と粘土の配合で粘土添加量の変化に対する線変化率と接着率の変化を示している。接着率70%以上を得るためには粘土が20〜30重量%必要であるが乾燥後、1000℃加熱後の線変化率が−1%以上と大きく実炉では亀裂が多くなることが予想される。
【0022】
一方、表3に示すように実施例▲1▼〜▲5▼のようにリサイクル材Aを20重量%添加すると比較例よりも添加水分量が減少し、線変化率が抑えられる。また、実施例▲1▼および▲2▼に示すように粘土添加量が少なくても高い接着性であった。
【0023】
表4は、表1に記載している各種のリサイクル材を添加したときの耐食性を比較したものである。アルミナ・マグネシア質リサイクル材Bを添加した実施例▲8▼〜▲10▼は特に耐食性に優れていた。
【0024】
一方、実施例▲13▼はリサイクル材中のアルミナ含有率が40%と低いため、またリサイクル材Cを添加した実施例▲14▼はリサイクル材中のマグネシア含有率が高いため、他の実施例よりも耐食性が低下している。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0029】
使用後耐火物を材料の一部に再利用することによって、廃棄物の減量に貢献し、なおかつ、耐食性および接着性に優れた吹付けプラスチック耐火物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火粘土10〜30重量%と粒度調整された耐火性骨材に使用後不定形リサイクル材を5重量%以上配合したことを特徴とする吹付けプラスチック耐火物。
【請求項2】
前記の使用後不定形リサイクル材のアルミナ含有率が45重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の吹付けプラスチック耐火物。
【請求項3】
前記の使用後不定形リサイクル材が取鍋内張り材であるアルミナ・マグネシア系キャスタブルの破砕品であり、前記破砕品の化学成分はマグネシアが15重量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吹付けプラスチック耐火物。

【公開番号】特開2010−77006(P2010−77006A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273573(P2008−273573)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】