説明

周期的間欠送信が適用された無線マルチホップネットワークにおける上下双方向パケットの多重方法

【課題】本発明の課題は、無線マルチホップ中継伝送における上下回線パケット多重伝送時の伝送効率を向上させることである。
【解決手段】本発明では、2つ以上のコアノードを組にして実現される。図2ではコアノードCN_DならびにCN_Uがそれらに該当する。本実施形態では、上下回線方向に寄らず常にパケットは一方向へ向けて中継される。たとえば、ノードIN_1へ下りパケットを中継伝送する場合、コアノードCN_DからノードIN_1宛ての下りパケットをコアノードCN_DとノードIN_1との間に設置した中継ノードを介してマルチホップ中継する。一方、ノードIN_1から上りパケットを伝送する場合、当該ノードからコアノードCN_Uへ向けて、両ノードの間に位置するノードを介してマルチホップ中継する。
以上のように本発明による第二の実施形態によると、図7で説明した従来の上下双方向パケット多重で問題となった上り回線パケットと下り回線パケットとが衝突することをなくすることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ノードが存在し、各無線ノードが無線により互いにパケットの中継を行う無線マルチホップネットワークにおける上下双方向パケットの多重方法に関するものであり、特にパケット中継伝送法として周期的間欠送信法が適用された場合の上下双方向パケットの多重方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数10Mbpsクラスのブロードバンドを収容する次世代の移動通信システムではセル半径の狭小化は必須であるとされる。しかし、セルを狭小化する場合、面的に広いエリアをサービスエリアとするためには極めて多数の基地局を設置しなくてはならない。最大の問題は、各基地局を基幹ネットワークに接続するための有線回線敷設に膨大な投資が必要となることである。そこで、有線ネットワークに接続された基地局(コアノード)を所々に設置し、このコアノード群でカバーしきれないエリアを無線マルチホップ中継で接続した中継ノードによりカバーするセルラーネットワーク(以下、無線基地局中継網)が検討されている。この無線基地局中継網を用いると、有線回線の敷設はコアノードのみでよいため投資を抑制することが可能となる。ここでの課題は、無線マルチホップネットワークにおいて如何にして伝送効率の高いパケット中継伝送を実現するかにある。
【0003】
伝送効率の高いパケット中継伝送を実現するパケット中継伝送法として、参考文献1では周期的間欠送信法(Intermittent Periodic Transmit)が提案された。以下、当該パケット伝送方式について説明する。
図5は参考文献1に示された周期的間欠送信法を説明するシーケンス図である。図5では各ノードは一次元等間隔で配列している場合を想定している。図5の例では、周波数リユース距離は3である。すなわち例えば始点ノードN_Sと中継ノードN_4とで同一の周波数を繰り返して利用可能であることを意味する。
周期的間欠送信法では、始点ノードN_Sにおいて一定の送信周期P_S_3でパケットを伝送し、一方中継ノードN_iではパケットを受信後即座に中継先ノードへ中継伝送することを特徴とする。図5のように送信周期P_S_3を与えることにより例えば時刻T1における同一周波数を再利用するノードはN_SとN_4であり、周波数リユース距離3を満足していることが分かる。
図6に周波数リユース距離5の場合の参考文献1に示された周期的間欠送信法による中継伝送を説明するシーケンス図を示す。図3との違いはリユース距離が長くなったことにより、始点ノードN_Sにおける送信周期をP_S_5とすることである。P_S_5はP_S_3よりも長く設定する。時刻T1における同一周波数を利用するノードはN_SとN_5であり、同一周波数リユース距離5が得られている事が分かる。
以上のように周期的間欠送信法では始点ノードにおいて周期的、間欠的にパケットを送信し、一方中継ノードでは即パケットを中継伝送することにより周波数リユース間隔を制御する事が可能となり、所要の周波数リユース間隔となる送信周期を与えることでスループットの最大化を達成する事が可能となる。
また、図4ならびに図5より明らかなように周期的間欠送信法によると終点ノードN_Eにおいて観測されるスループットは中継段数によらず一定に保つ事ができる。
【0004】
(参考文献1)H. Furukawa, “Hop Count Independent Throughput Realization by A New Wireless Multihop Relay,” in Proc. IEEE VTC 2004 Fall, 4.4.2.2, Sep. 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
周期的間欠送信法が適用された無線マルチホップ網における上下回線双方向のパケット多重について考える。図7は周期的間欠送信法が適用された無線マルチホップ網において、従来の技術により上下回線方向のパケットを多重した場合について示した図である。コアノードCNと終端ノードENの間に複数の中継ノードが直線上に配列された状態を示している。コアノードCNは有線基幹網と接続されており、有線基幹網とのパケットの橋渡し(ゲートウェイ)の役を担う。図7中の矢印はパケットの中継方向を示している。上り回線とは終端ノードENからコアノードCNへ向けた方向ULを下り回線はその反対方向DLを指す。下り回線パケットはコアノードCNにより周期的に間欠送信され、上り回線パケットは終端ノードENにより周期的に間欠送信される。
しかし、図7に示した従来の上下回線パケット多重法により上下回線パケットを多重した場合、中継途中の無線回線で上下回線パケットの衝突が発生し、周期的間欠送信による規則的な周波数リユース、終端ノードでスループット一定となる高効率なパケット中継の実現ができない問題が発生する。
上下回線それぞれのパケット中継用無線回線にそれぞれ異なる周波数を用いた場合には、中継途中の無線回線で上下回線パケットの衝突が発生し伝送効率が生じるもんだいは発生しないが、一方で上下回線を同時にパケット送受信する場合が生じ、1つのノードの中継用の無線機が2台必要となり装置を複雑にする問題があった。
【0006】
本発明は、周期的間欠送信法をパケット中計伝送法として選択した場合、従来の上下回線パケット多重を適用すると問題となった、規則的な周波数リユースの破壊ならびにスループット一定が達成できなくなる問題を解決し、上下回線パケットを多重した場合にも周期的間欠送信法の効果を生じさせる方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は3つの方法を示している。第一に、上下回線パケット中継伝送を時間的に分けて行う手法について示している。第二に、2つ以上のコアノード(有線基幹網と中継網との橋渡しを行うノードを差す)を設置させ、上下回線の種別によらず常に一方向にパケットを中継伝送する方法について示している。第三に、環状に中継経路を構成して、やはり上下回線の種別によらず常に一方向にパケットを中継伝送する方法について示している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第一の方法によれば、上下回線パケット中継伝送を時間的に分けて行うことにより上下回線パケットの中継にともなう両方向パケット間の衝突を回避することが可能となり周期的間欠送信法の効果を生じさせることが可能となる。また本発明の第一の方法によると上下回線それぞれのパケット中継用無線回線にそれぞれ異なる周波数を用いた場合に、一つのノードにおいて上下回線同時にパケットを送受する可能性を回避できるため、一つのノードの中継用の無線機が1台のみ設置すればよい。
本発明の第二の方法によれば、常に一方向にパケットを中継伝送することにより、上下回線パケットの中継にともなう両方向パケット間の衝突を回避することが可能となり周期的間欠送信法の効果を生じさせることが可能となる。また本発明の第二の方法によると上下回線による一方向の中継を行えばよく、一つのノードにおいて上下回線同時にパケットを送受する可能性を回避できるため、一つのノードの中継用の無線機が1台のみ設置すればよい。
本発明の第三の方法によれば、第二の方法と同様、常に一方向にパケットを中継伝送することにより、上下回線パケットの中継にともなう両方向パケット間の衝突を回避することが可能となり周期的間欠送信法の効果を生じさせることが可能となる。
【実施例1】
【0009】
図1は本発明による上下双方向パケット多重の第一の実施形態を示す図である。第一の実施形態では上りパケット伝送と下りパケット伝送とが互いに混在しないように時間を分けて切り替える事を特徴とする。すなわち、ある時間は図1(a)に示すように上りパケットの伝送を終端ノードENが周期的に間欠送信することで行い、ある時間は図1(b)に示すように下りパケットの伝送をコアノードCNが周期的に間欠送信することで行う。
以上のように本発明における第一の実施形態によるとある瞬間には図7で問題となった上り回線パケットと下り回線パケットとが衝突することが無くなるため、周期的間欠送信により規則的周波数リユース、終端ノードでスループット一定となる高効率なパケット中継の実現が可能となる。
【実施例2】
【0010】
次に本発明の第二の実施形態を図2により説明する。本発明による第二の実施形態では、2つ以上のコアノードを組にして実現される。図2ではコアノードCN_DならびにCN_Uがそれらに該当する。本実施形態では、上下回線方向に寄らず常にパケットは一方向へ向けて中継される。たとえば、ノードIN_1へ下りパケットを中継伝送する場合、コアノードCN_DからノードIN_1宛ての下りパケットをコアノードCN_DとノードIN_1との間に設置した中継ノードを介してマルチホップ中継する。一方、ノードIN_1から上りパケットを伝送する場合、当該ノードからコアノードCN_Uへ向けて、両ノードの間に位置するノードを介してマルチホップ中継する。
以上のように本発明による第二の実施形態によると、図7で説明した従来の上下双方向パケット多重で問題となった上り回線パケットと下り回線パケットとが衝突することが無くなるため、周期的間欠送信により規則的周波数リユース、終端ノードでスループット一定となる高効率なパケット中継の実現が可能となる。
図3は本発明における上下双方向パケット多重の第二の実施形態における別の実施例を示す図である。本実施例では、コアノードCN_DとコアノードCN_Uの間にさらに1つのコアノードCN_Iを設置している。コアノードCN_Iはノード群IN_Lのいずれかのノードで発生した上りパケットを受信し当該パケットを有線基幹網へ橋渡しをする一方、有線基幹網から到着したノード群IN_Rのいずれかのノード宛の下りパケットを図3中の右方向へ向けてマルチホップ中継する。
本実施例によるとノード群IN_Lで発生した上りパケットがコアノードCN_Iにて基幹有線網へ橋渡しされるため、ノードIN_R群内の中継伝送に余裕を生じさせることが出来る。また、ノードIN_L郡内の中継伝送についても、コアノードCN_DがノードIN_R群への下りパケットを伝送する必要が無いため、余裕を生じさせることが可能となる。
【実施例3】
【0011】
図4は本発明における上下双方向パケット多重法の第三の実施形態を示したものである。上下回線パケット共に図4中の反時計回りにパケットが一方通行に中継伝送させる。各ノードへ向けた下りパケットはコアノードCN_Aから伝送され、また各ノードから発せられた上りパケットは時計回りに中継伝送されたコアノードCN_Aへと中継される。
本実施の形態によると、コアノードを2つ設置する必要が無くなることを特徴とする。しかしながら、たとえば、図4のノードIN_1の場所に新たにコアノードを設置することも可能である。この場合の中継動作は図3のそれと同様に行われ、各中計回線にかかる負荷を軽減することが可能となり、結果的に中計回線の容量を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
周期的間欠送信法と本発明による上下回線多重法を組み合わせることで、上下両方向に高効率かつ大容量な無線中継回線を構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による上下双方向パケット多重の第一の実施形態
【図2】本発明による上下双方向パケット多重の第二の実施形態
【図3】本発明による上下双方向パケット多重の第二の実施形態における別の実施例
【図4】本発明による上下双方向パケット多重の第三の実施形態
【図5】周期的間欠送信法を説明する第一の図
【図6】周期的間欠送信法を説明する第二の図
【図7】周期的間欠送信が適用された無線マルチホップ網における従来の上下双方向パケット多重
【符号の説明】
【0014】
EN 終端ノード
CN 有線基幹網と中継網とのパケットの橋渡しを行うコアノード
CN_D 下り回線パケット送信特化型コアノード
CN_U 上り回線パケット受信特化型コアノード
IN_1 ノード
CN_I 中継経路途中に配置されたコアノード
IN_L,IN_R ノード群
CN_A コアノード
i(i=1,2,・・,n) 中継ノード番号
N_i 中継ノードiの中継ノード
N_S 始点ノード
N_E 終点ノード
f1,f2・・,F1,F2・・ 周波数
P_S 始点ノードにおける送信周期
P_i 中継ノードiにおける送信待機時間
P_S_3,P_S_5 周波数リユース距離3,5の場合の送信周期
DL 下り回線中継
UL 上り回線中継
T1 時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードが相互接続し枝分かれのない中継経路を構成する無線マルチホップ中継において、
上り回線パケット中継と下り回線パケット中継とをそれぞれ時間を分けて実行することを特徴とする上下回線パケット多重法。
【請求項2】
複数のノードが相互接続し枝分かれのない中継経路を構成する無線マルチホップ中継において、
上り回線、下り回線の種別によらず常に一方向にパケットを中継伝送することを特徴とする上下回線パケット多重法。
【請求項3】
前記中継経路の端に位置するノードが周期的にパケットを間欠送信し、当該ノード以外のノードは到来した中継パケットを受信後、直ちに当該パケットを上位のノードへ中継伝送することを特徴とする請求項1ならびに請求項2に記載の上下回線パケット多重法。
【請求項4】
複数のノードが相互接続し枝分かれのない中継経路を構成する無線マルチホップ中継において、
前記中継経路の両端のノードを相互接続し環状の中継経路を構成し、上り回線、下り回線の種別によらず常に一方向にパケットを中継伝送することを特徴とする上下回線パケット多重法。
【請求項5】
前記中継経路の途中に位置するノードが周期的にパケットを間欠送信し、当該ノード以外のノードは到来した中継パケットを受信後、直ちに当該パケットを上位のノードへ中継伝送することを特徴とする請求項4に記載の上下回線パケット多重法。
【請求項6】
前記周期的にパケットを間欠送信するノードが有線基幹網と接続し、当該有線基幹網と前記中継網との間でパケットの引渡しを行うことを特徴とする請求項3ならびに5に記載の上下回線パケット多重法。
【請求項7】
前記中継経路の途中に複数の有線基幹網と接続するノードが存在することを特徴とする請求項1〜6に記載の上下回線パケット多重法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−157501(P2006−157501A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345433(P2004−345433)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】