説明

周波数を調整したテーパ型タービン流量計ロータおよびそのロータブレード、ならびにタービン流量計ロータの設計方法

【課題】タービン流量計の周波数を調整したテーパ型ロータブレードを提供する。
【解決手段】周波数を調整したタービン流量計ロータは、ロータハブと、複数のテーパ型ロータプレードと、を備える。複数の各ロータブレードは、ハブから測定された半径方向長さの関数として変化する食い違い角と、NACAエアフォイル設計に従ってテーパが付された断面プロファイルと、を有する。周波数を調整した流量計ロータを設計する方法は、断面プロファイルを画定するステップと、ロータブレードの食い違い角を較正するステップと、断面プロファイルが、減少する翼弦長および減少する相対厚さを備えたエアフォイルを半径方向長さの関数として特徴づけるように、該断面プロファイルにテーパを付するステップと、操作で誘導される励振周波数の範囲に対するロータの固有振動周波数スペクトルを解析するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数を調整したテーパ型タービン流量計ロータおよびロータブレード、ならびにタービン流量計ロータの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の航空宇宙工学の応用は、商業的用途および科学的用途のいずれも、増大するペイロード需要によって特徴づけられる。これらのペイロードは、上昇推力において数百万ポンドの力を要する場合もあり、この力は、実現可能な飛行経路を維持し、安定した軌道を実現するために正確な力学的制御で管理されなければならない。このことは、いくつかの技術的な設計課題を生む。とりわけ、燃料−酸化剤混合比は、ロケットモータの設計にとって非常に重要であり、目的遂行に決定的な意味を有する。正確な混合比を維持することは、極端に大きな流量で流れて大きく変化する燃料の流れおよび酸化剤の流れについての正確な測定および制御を必要とし、燃料および酸化剤のそれぞれの許容誤差は1%未満である。従来技術は、特にスペースシャトルのメインエンジンの液体水素流に関して、この必要性を満たすことが十分にできていない。
【0003】
燃料−酸化剤混合比を維持するための2つの基本的な手法は、固体燃料および液体燃料の設計である。固体燃料ロケットモータは、予め混合済みの燃料および酸化剤を使用して、正確な比率を保証し、流量制御の必要性を回避する。しかし、固体ロケット技術には重大な限界が不利なこととして存在する。固体ロケットモータは、一旦点火されると、本質的に運転を停止することができない。燃料プロファイル(すなわち燃焼に利用可能な表面積)を調整することにより、限られた程度の燃焼速度管理を行うことができ、また、ジンバルノズル(gimbaled nozzles)を介して、ある程度の姿勢制御を達成することはできる。しかし、これらの技法は、安定した地球軌道に必要とされる精度を達成するためには不十分であり、惑星間軌道の場合はなおさら十分ではない。上記および他の技術的な理由により、固体燃料ロケットモータの使用は、一般に、上昇補助などの特定の動力の応用に限られ、主な応用例として、スペースシャトルの固体ロケットブースタ(SRB:Solid Rocket Booster)システムがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、正確な宇宙飛行には液体燃料ロケットモータ技術が必要であり、この液体燃料ロケットモータ技術には、燃料−酸化剤混合比の正確な制御が必要とされる。この問題は、精密流量計によってそれぞれフィードバック制御される一連の低圧および高圧の燃料ポンプおよび酸化剤ポンプにより、対処される。間接測定技法と直接測定技法とのどちらを使用するかにより、流量計は2つの型式に大別される。
【0005】
単純なフローノズル設計と精巧なベンチュリ管設計とを共に備えた間接流量計の多くが、差圧技術を組み込んでいる。この技術は、ベルヌーイの原理に基づいている。位置エネルギーを無視すると、ベルヌーイの原理は、ベルヌーイの方程式の単純な形で表すことができる。
【0006】
【数1】

【0007】
式1は、流れが制限された微小領域の両端間の圧力差ΔPが、流れ密度ρに流速の2乗の差分Δ(ν2)を乗じて2で除した値であることを示す。この式を使って、絞りの一方の側の高圧低速流と、絞りの他方の側の低圧高速流と、を差圧流量計で比較することができる。
【0008】
差圧流量計は、フローストリーム中へ可動部を導入しないように設計することができるので、高速で流量の大きな流れに対して明らかに有利である。しかし、この技術には欠点もある。差圧流量計は、絶対流速ではなく、相対流速を測定する。また、流量と差圧との関係は線形ではない。また、差圧の測定は、機械的な流れ絞りを必要とし、このことが総容量を制限し、かつ乱流を導いてしまう。そのうえ、精巧なベンチュリ管の設計であっても、圧力降下ΔPを完全に回復することはできない。これにより、付加的なポンピング容量が要求されるとともに、性能が制限され、効率が損なわれていしまう。
【0009】
ピトー管は、流れの運動エネルギーを圧力に関連付けることによって、若干異なる方法で動作する。しかし、運動エネルギーの大きさも流速の2乗に比例するので、流速と差圧との数学的な関係も線形ではない。ピトー管技術も圧縮性流体の流れに対するほどには液体の流れに対して適切ではないので、対気速度計などの流体ガスデバイスに用途が実質的に制限される。そのうえ、ピトー管は、あらゆる差圧デバイスと同様に点測定であり、一般に、層流および乱流などの非一様性に対してあまり敏感ではない。これらの非一様性が流れ全体の1%に達するだけで、目的遂行に重大な精度の制限を課してしまうことになり得る。
【0010】
電磁誘導流量計は、異なる手法を提供する。この手法では、導電性の流れが強磁界の領域を通過する際に、この導電性の流れの中に誘導される電流を測定する。誘導される電流の大きさは、流速の2乗に対して線形ではなく、流速に対して線形である。電磁誘導流量計は、双方向性も有し、他の技術による扱いには不適切とされる腐食性溶液および多くの危険な廃棄物に適用することができる。
【0011】
しかし、これらの利点の中で、ロケットモータの設計に直接的に適用することができる利点はほとんどない。電磁誘導流量計には、空間および質量の両方の点でコストのかかる外部磁気コイル構造が必要である。また、流れに誘導される強力な電流ループが、技術上および安全上の問題を課し、スペースシャトルのメインエンジン(SSME)用の液体水素(LH2)をはじめとするほとんどの液体燃料ロケットモータの設計に対して、この技術を非実用的なものとしてしまう。
【0012】
間接測定技法とは対照的に、タービン流量計は、軽量で、空間効率に優れ、絶対流量の直接的な線形の測定値を提供する。しかし、タービン流量計は、流れがスペースシャトルのメインエンジン(SSME)用の液体水素(LH2)である場合、1万ガロン/分を超える可能性のある流れの中で直接的に動作させなければならない。そのため、流量計ロータに著しい応力がかかり、潜在的な一点故障モードを導いてしまう。したがって、従来技術にはない、精密で、信頼性が高く、かつ目的に適した流量計の設計が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、タービン流量計のテーパ型ロータブレードおよび周波数を調整したロータに関する。本発明のロータブレードは、変化する食い違い角と、ロータの第1の曲げモードの周波数が操作で誘導される励振周波数の範囲外に置かれるように第1の曲げモードの周波数を調整するテーパ型エアフォイルプロファイルと、を有する。一実施例において、ロータブレードは、修正NACA(国家航空学諮問委員会:National Advisory Committee for Aeronautics)4ディジット(4桁番号)シリーズのエアフォイルプロファイルに従ってテーパが付され、周波数を調整したロータは、スペースシャトルのメインエンジン用の液体水素(SSME LH2)タービン流量計の新規のロータである。
【0014】
また、本発明は、ロータハブと複数のテーパ型ロータブレードとを有する、周波数を調整した流量計ロータを設計する方法に関する。この方法は、ロータブレードの断面プロファイルをロータハブからの半径方向長さの関数として画定するステップと、ロータブレード食い違い角をロータハブからの半径方向長さの関数として較正するステップと、断面プロファイルが、減少する翼弦長および減少する相対厚さを備えたエアフォイルを半径方向長さの関数として特徴づけるように、断面プロファイルにテーパを付するステップと、操作で誘導される励振周波数の範囲に関してロータの固有振動周波数スペクトルを解析するステップと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、スペースシャトルのメインエンジン(SSME)用の液体水素(LH2)ダクト10の切欠図であり、新規のロータ30を備えたタービン流量計11の位置を示す。LH2ダクト10は、図1の上流側(すなわち左側)に位置する低圧燃料ポンプ吐出口と、図1の下流側(すなわち右側)に位置する高圧ポンプ入口と、の間に設けられている。
【0016】
LH2ダクト10は、ダクト壁12、上流側六角整流装置13、下流側六角整流装置14および流量計11を備える。流れは下流に向かって軸方向に流れる。すなわち、左から右へ向かって、中心線軸CLに概ね平行に流れる。
【0017】
整流装置13および整流装置14は、LH2ダクト内に六角通路の「ハニカム」を形成するベーンのセットからなる。これらの通路は、新規のタービン流量計ロータ30にLH2の流れが衝突する前に、回転および乱流を抑制することによってLH2の流れを整流する。上流側整流装置13は、ベーンが軸方向の中心線CLに対して垂直な平面で終端するような「ストレートバック」構成を示していることに留意されたい。このストレートバック構成では、すべての通路の長さが同じである。下流側整流装置14は、新規のロータ30と共に配置するための新規の「カットバック(cut back)」構成を示す。このカットバック構成では、下流側整流装置14のベーンは、軸方向の中心線CLに対して垂直に配向された円錐形の形状をなして終端する。この円錐の頂点は、軸方向の中心線CL上に円錐の頂点が位置し、軸から離れるにしたがって通路の長さが短くなる。
【0018】
スペースシャトルのメインエンジン(SSME)用のLH2流量計11は、下流側六角整流装置14のすぐ下流に配置された流量計ロータ30を備える。流量計11は、タービン式ではない流量計に対しても、従来技術によるタービン流量計ロータに対しても顕著な設計上の利点を示す。
【0019】
タービン流量計11は、軽量で空間効率に優れた設計であり、LH2の流れをスペースシャトルのメインエンジン(SSME)で必要とされるように適用することに優れている。広義には、タービン流量計11は、液体燃料ロケットモータの液体酸素(LOX)や他の流れの特性に適用することもできる。タービン流量計11は実質的な流れ絞りを必要とすることなく、残留乱流を最小化するように整流装置13および整流装置14に沿った位置に設計されている。
【0020】
これは、従来技術の差圧デバイスが、もとより流れを制限し、乱流の源となることと対照的である。また、差圧技法は、流れ全体の一部をサンプリングするのにすぎないが、タービン流量計11は、ロータ30がLH2ダクト10の円形断面のほぼ全体をカバーするように配置されている。この配置により、バルク軸流と、残留乱流または層流の局所領域によって生じる非一様性と、の両方を取り入れ、総合的な流量を測定することができる。
【0021】
そのうえタービン流量計11は、差圧または電磁誘導に基づく間接測定と比較すると、ロータ30の回転速度から直接的にLH2の流量を測定する。このため、回転速度とLH2流量との間にほぼ線形の関係が得られ、この関係は広範囲にわたる運転領域に適用することができる。この線形性は、LH2の体積流量(1分間当たりのガロン数(GPM))に対するロータ速度(1分間当たりの回転数(RPM))に比例する較正係数Kf=4・RPM/GPMによって特徴づけられる。この較正係数は、ロータ30および従来技術に共通の4ブレードの設計を明確に示す係数4を含む。
【0022】
新規のロータ30は、タービン式以外の流量計よりも優れた利点に加え、従来技術によるロータの設計よりも優れた利点を示す。図1に示すように、タービン流量計11は、流量が多いことと下流側整流装置14の伴流とにより、動作応力が高い領域に設置される。新規のロータ30がこの伴流内の連続的な瞬時ストール領域によって回転すると、周期的に励振される。励振周波数は、ロータ速度と、いわゆる「12N」対称パターンと呼ばれるパターンを生成する整流装置13,14の六角形設計と、によって決まる。12N対称パターンは、六角形のタイル張りにおける頂点間隔の特性であり、RPM単位におけるロータ速度の12倍の頻度でタービン流量計ロータを励振する。従来技術と比べ、新規のロータ30は、操作で誘導される励振に対しても応答することに大きな利点がある。
【0023】
従来技術による流量計は、中心周波数を約830Hzとする広域の固有共振を有する。回転速度が約4,000RPMに近づくにつれ、12N対称パターンが約800Hzでロータを励振させる。この励振周波数が従来技術によるロータの固有共振に近づくと、問題となるいくつかの現象が観察される。詳細には、従来技術によるロータが4,000RPMの回転数に近づくと、ロータ速度が変動し、「Kfシフティング」が生じ、LH2の流量の実際の変化を全く伴うことなく較正係数Kfの値が見かけ上シフトする。
【0024】
ロータ速度は、1回転につき4回しかサンプリングされないため、ロータ速度の変動周波数を正確に測定することは困難である。ロータ速度のサンプリングは、ロータの回転円弧に沿った固定位置をロータブレードの先端が通過する毎に「ピップ」を計数する(すなわち1回転につき4ピップを計数する)磁気誘導ピックアップを使用して行われる。12N励振周波数およびピップ周波数はいずれも回転速度に依存するため、12N励振周波数は、必然的にピップ周波数の調波である。このため、ロータ速度の変動とピップ周波数との間に、「エイリアシング」と呼ばれる現象のうなりが生じる。
【0025】
エイリアシングは、真のロータ速度の変動周波数をマスキングするが、エイリアシングの現象は、整流装置伴流内の12N対称パターンおよび3,800RPMを超えるロータ速度に関連することは明らかである。ロータ速度の変動は、Kfシフティングおよびエイリアシングという関連現象と共に、従来技術によるロータの性能を著しく損ねてしまう。
【0026】
この問題を解決するために、ロータのみならず動作環境も含めて考える必要がある。そのためにスペースシャトルのメインエンジン(SSME)用のLH2ダクトに関する歴史を手短に記述しておく必要がある。
【0027】
従来技術による流量計ロータは、元来、現在の六角形設計ではなく、「エッグクレート」(正方形通路)整流装置の設計を使用して配置された。このエッグクレート整流装置は、12N対称パターンを有さず、したがって対応する12N励振周波数も示さなかった。
【0028】
SSME LH2ダクトが再構成されると、流量計も同時に、元来のエッグクレート設計における下流側(六角)整流装置の約2インチ後方ではなく、下流側(六角)整流装置の約1インチ後方の新しい位置に配置にされた。したがってLH2ダクトの構成の変更は、12N対称パターンをもたらすとともに、ロータと下流側整流装置との間の隙間が事実上半分になったことによってロータの効果を一層悪化させた。
【0029】
図1に示すように、新規のロータ30は、この問題の両面に対処する。第1に、上流側整流装置13は、従来技術の場合と同様、ストレートバック構成を示すが、下流側整流装置14は、新規のカットバック構成を示す。このカットバック構成により、下流側整流装置14とロータブレードとの間の間隔が広くなり、新規のロータ30に対する伴流の対称パターンの影響が抑制される。
【0030】
第2に、新規のロータ30の固有振動周波数は、従来技術によるロータの固有振動周波数と同じではない。これは、新規のロータブレードにテーパを付することにより、ロータの固有周波数を変更することによる。詳細には、テーパを付することによって、第1の曲げモードおよび第2の曲げモードの周波数が高くなり、したがってこれらの周波数が、操作で誘導される励振周波数の範囲よりも高くなる。
【0031】
図2は、4ブレードロータの設計の第1の曲げモード21の特性および第2の曲げモード22の特性を概略的に図示する。この4ブレードの設計は、従来技術によるロータおよび新規のスペースシャトルのメインエンジン(SSME)用のLH2流量計ロータ30の両方に共通である。
【0032】
第1の曲げモード21は、ロータハブ31および隣接する2対のロータブレード23の振動を示す。第1の曲げモード21において、隣接する2対のロータブレード23がタンデムに振動し、対をなすブレードの先端が互いに接近する方向へ湾曲(左側のイメージ)した後、互いに遠ざかる方向へ湾曲(右側のイメージ)するように振動する。ブレードの先端は、ロータの回転円弧に追従する。すなわち、振動は接線方向に発生する。第1の曲げモード21は、基本モードとしても知られ、ロータのあらゆる固有振動モードのうち最も低い周波数を有する。
【0033】
第2の曲げモード22は、ロータハブ31および対向する対のロータブレード24の振動を示す。第2の曲げモード22において、対向する対のブレード24が接線方向に振動し、残りの2つのブレードは静止したままである。第2の曲げモード22は、第1の励振モードであり、第1の曲げモード21に対して極めて接近した周波数を有する。
【0034】
第1の曲げモード21および第2の曲げモード22が極めて接近していることは、4ブレードロータの設計上の特性である。この特性が共振の全体的な幅を広げ、したがって関連する励振周波数の範囲を広くする。また、モード21およびモード22が極めて接近していることは、これら2つのモード間で振動エネルギーを相互に伝達し易くし、両者のモードの区別を困難にしてしまう。
【0035】
従来技術によるロータの場合、第1の曲げモード(基本モード)21は、約830Hzの固有周波数を有する。第1の曲げモードが極めて接近した第2の曲げモード(第1の励振モード)22と結合することにより、800Hzより高い周波数で幅の広い共振がつくられる。ロータ速度が4,000RPMに近づくと、12N六角形対象パターンによって操作で誘導される励振がこの閾値周波数に近づき、従来技術によるロータは、Kfシフティング、エイリアシングおよびロータ速度変動の現象を受けてしまう。
【0036】
これらの現象が、流量計の精度を著しく低下させ、決定的な信頼性の問題を提起する。そのため、国家航空宇宙局(NASA:National Aeronautics and Space Administration)は、従来技術によるロータ速度に対して、3,800RPMの上限を設定した。この上限が、利用可能なLH2の総流量を制限し、スペースシャトルのメインエンジン(SSME)が115%定格出力のレベルへ到達することを阻んでいる。
【0037】
本明細書で開示される新規の流量計ロータブレードおよびロータは、新規のロータ30のブレードにテーパを付することによってこの問題に対処するように設計されている。この設計は、新規のロータ30の固有振動周波数が、操作で誘導される励振周波数の範囲外になるように、新規のロータ30を「チューニング(調整)」しつつ、タービン流量計の設計上の利点を概ね保持する。この手法は、シャトル船団以外にも有用性があり、高速で、かつ極めて正確な流量測定を必要とし、タービンロータが著しい応力または乱流の影響にさらされる可能性のある用途に広く適用することができる。
【0038】
図3は、本発明による新規のスペースシャトルのメインエンジン(SSME)用のLH2タービン流量計ロータ30の斜視図である。ロータ30は、ロータハブ31と、ロータハブ31の周りに半径方向に配置された4つのロータブレード32と、からなる。
【0039】
各ロータブレード32は、半径方向の長さrに対して垂直なエアフォイル断面プロファイルによって特徴づけられる。半径方向の長さrは、ロータハブ31部分におけるr=0の最小値からロータブレードの先端33部分におけるr=Rの最大値まで変化する。接線方向の角θは、図3においてロータハブから垂直に配向されている任意の軸から測定される。速度U(r)は、半径方向長さrにおいて回転の接線方向に測定されたロータブレード32の回転速度である。
【0040】
断面プロファイルが半径方向長さに関して概ね一様である従来技術のロータブレードとは対照的に、新規のロータブレード32にはテーパが付されている。詳細には、断面プロファイルは、ロータハブ31付近において比較的大きく、ロータブレードの先端33付近において比較的小さく形成されている。このようにテーパを付することは、以下で開示するように、多くの重要な設計上の利点を有する。
【0041】
図4は、本発明による新規のスペースシャトルのメインエンジン(SSME)用のLH2タービン流量計ロータブレード32の斜視図である。図4は、ブレードの先端33の付近において測定した翼弦長の寸法lおよび相対厚さの寸法tを示す。概して、翼弦長l(r)および相対厚さt(r)は、半径方向長さrの関数として変化する。翼弦長l(r)は前縁から後縁まで測定される。相対厚さt(r)は、翼弦長l(r)におけるエアフォイルの最大の厚さである。また、図4は投影線A−Hも示しており、これらの投影線に沿って切り取られた面が、図5の断面図である。
【0042】
図5は、新規のロータブレード32と従来技術とを比較した一連の断面図である。図5は、図4の投影線A−Hに沿って切り取られた、半径方向に等間隔に離間した8つの断面を示す。新規の断面51を実線で示し、対応する従来技術の断面52を点線で示している。
【0043】
図5において、半径方向長さrは、近位断面(A)のr≒0から遠位断面(H)のr≒Rまで直線的に変化する。横軸は翼弦長l(r)を示し、縦軸は相対厚さt(r)を示す。両軸とも任意の単位に拡大縮小されている。
【0044】
従来技術の断面52が概ね一様な翼弦長および相対厚さを有することに対し、新規の断面51は、一様な翼弦長および相対厚さを有していない。代わりに、新規の断面51は、翼弦長l(r)および相対厚さt(r)が、半径方向長さrの関数として減少するようにテーパが付され、また、断面プロファイルが、各半径方向長さrにおいて、修正NACA4ディジットシリーズのエアフォイルプロファイルに対応するようにテーパが付されている。
【0045】
NACA4ディジットシリーズエアフォイルでは、第1のディジットは最大キャンバすなわち非対称性を示し(百分率で)、第2のディジットは最大キャンバポイントとなる位置を(前縁から測定した翼弦長の数十パーセントで)示す。最後の第3、第4のディジットは、最大厚さt(r)を翼弦長l(r)の百分率として示している。
【0046】
新規のロータブレード断面51に示されるような修正NACA4ディジットシリーズのエアフォイルの設計では、さらに加えられた2つのディジットは、前縁の丸みを0〜9のスケールと、最大厚さポイントの位置を翼弦長の数十パーセントの単位と、を示す。このデフォルト(未修正)丸みは6であり(第1の修正NACAディジット6)、値が小さいほど前縁が鋭く、値が大きいほど前縁が丸いことを示す。最大厚さのデフォルト(未修正)ポイントは、翼弦長の30%の位置である(第2の修正NACAディジット3)。値が小さいほど最大厚さのポイントが前縁に近いことを示し、値が大きいほど最大厚さのポイントが後縁に近いことを示す。
【0047】
図5は、14回に及ぶ設計変更の最終結果を示す。設計変更の各々は、修正NACA4ディジットシリーズのエアフォイルの設計に従ってエアフォイルにテーパを付するステップと、テーパが付されたプロファイルを完全なロータのソフトウェアモデルに翻訳するステップと、結果としての応力および振動の応答を解析するステップと、からなる。概して、新規のロータブレード断面51は、キャンバをほとんど有することなく、ほぼ対称である。図5に示されるr≒0である近位断面(A)では、新規のロータブレード断面51(実線の輪郭)の翼弦長l(r)は、従来技術によるロータブレード断面52(点線の輪郭)よりも約9%長い。また、相対的なエアフォイルの最大の厚さt(r)は、翼弦長l(r)の24%であり、従来技術の断面52に比べて厚く形成されている。
【0048】
新規の断面51を有する翼弦長l(r)は、rの増加にともない、従来技術の断面52の翼弦長に近づくように短くなり、r≒Rに位置する遠位断面においては、新規の断面51における翼弦長と従来技術の断面52における翼弦長とがほぼ同じ長さになる。遠位断面において、新規の断面51の相対厚さt(r)は翼弦長l(r)の13%であり、実際には、従来技術の断面52よりも薄い。
【0049】
本質的に、r=0からr=Rまでのあらゆる半径方向長さにおいて、エアフォイル断面(この実施例では修正NACA4ディジットエアフォイル断面)と同じ形にしつつ、テーパを付することで、ロータハブ付近のブレード質量を増加し、ブレードの先端付近のブレード質量を減少させる。こうすることで、第1の曲げモードの固有周波数が、従来技術によるロータの約830Hzから新規のロータの約1,300Hzまで高くなる。
【0050】
こうして、4,000RPMを超えるロータ速度に対して、第1の曲げモードが、12N伴流の対称性に関連して操作で誘導される励振周波数の範囲の外に置かれる。このとき第2の曲げモードは、第1の曲げモードに極めて接近した状態を維持しつつ、励振周波数の範囲の外へ同じくシフトされることに留意されたい。
【0051】
さらにいえば、第1および第2の曲げモードは、ともに18N伴流の対称性に伴うどの励振周波数よりも上方にシフトする。18Nパターンは、12Nパターンにおける頂点の間隔ではなく、六角形の周縁の間隔と関連する。18Nパターンは、六角形の形状の場合に最高の基本対称数を有し、約4,000RPMに近づくロータ速度に対して、操作で誘導される約1,200Hzの励振周波数を発生させる。
【0052】
第1の曲げモードおよび第2の曲げモードは、ロータの最低周波数の固有振動である。したがって新規のロータ30は、ロータ速度が4,000RPMまでは、操作で誘導される励振に感度のある固有振動周波数を有することなく、また、ロータ速度の変動、Kfシフティングまたはエイリアシングをこの領域で示すこともない。このように、スペースシャトルのメインエンジン(SSME)用のLH2タービン流量計の運転領域が、従来技術における3,800RPMから、4,000RPMまで広がり、最大のSSME推力に対する従来技術の絞りが必要とされなくなる。
【0053】
また、下流側六角整流装置14をカットバック構成にしても、ロータハブ付近のクリアランスは依然として約1インチにすぎないことに留意されたい。新規のロータの設計は、ロータブレードの翼弦長および厚さを増すことによって、この領域における強力な伴流の構成の影響を最小化する。より強力なブレードの設計は応力の影響を同様に抑制する。
【0054】
また、新規のロータ30は、ロータブレードのr>R/2に位置する上半分の領域に沿って感度を鋭くする。整流装置がカットバック構成であるため、ブレードの上半分は、下半分と比べて整流装置から離れている。したがってロータブレードの上半分は、乱流が少ない流れ場を通って移動し、この領域での感度を高めることにより、LH2の流れをさらに正確に測定することができる。
【0055】
図6は、孤立したエアフォイル60に加わる荷重を垂直方向の分力と共に概略的に示す。流体の流れは、一様な軸方向の速度Cuを有し、エアフォイル60は、垂直方向の速度Uを有する。これらの速度が、図示するような相対流れ角βを形成する。
【0056】
図6は、本明細書において開示している新規の設計手法の決定的な面を示す。SSME LH2のタービン流量計ロータは、4つのブレードを有しており、これらは、本質的に独立したエアフォイルとしてそれぞれ機能する。これは、密に配置された多くのブレードが複合的に隣接する典型的な出力タービンロータとは対照的である。
【0057】
複合的な隣接設計において、ブレードに加わる荷重が最大化される。流体と隣接するブレードとの間に強力な相互作用をともない、流体の向きの変化が高い程度で存在する。これに対比して、図6は、スペースシャトルのメインエンジン(SSME)用のLH2のタービン流量計ブレード32の一つを典型的に示したものであり、流体の向きの変化および他の相互作用を最小化して示している。これは、航空機の翼と類似しており、航空機の設計方法をLH2の流れの問題に対して新規に適用することができるようにする。
【0058】
予備事項として、図6に示すエアフォイル60は対称プロファイルを有すること、すなわちエアフォイル60にはキャンバがないことに留意されたい。キャンバがないということは、正味の揚力を生み出すために流入角iがゼロであってはならないことを意味する。したがって、軸流速度に対するエアフォイル60の角度である食い違い角αを、相対流れ角βと概ね同じ角度にすることはできない。
【0059】
図6は、流れが流入角iでエアフォイル60に衝突することを示す。iは、食い違い角αと相対流れ角βとの差である。すなわち、
i=α−β (2)
エアフォイル60が孤立した流量計ロータブレードである場合、垂直方向の速度Uは、図3に示すように、接線方向の速度U(r)である。食い違い角αは、この接線方向についての揚力FLおよび抵抗力FDの成分を決める。
【0060】
L(U)=+FLcos(α) (3)
および
D(U)=−FDsin(α) (4)
エアフォイル60の回転に伴い、エアフォイル60は接線方向の速度U(r)に到達し、揚力および抵抗力の接線方向の成分(式3および式4)の和が、ロータの軸受の抵抗によって生じる摩擦力Rfに対して、方向が反対で大きさが等しくなる。すなわち、
Lcos(α)=FDsin(α)+Rf (5)
式(2)から、食い違い角αは、流入角iおよび相対流れ角βに関連する。
【0061】
固体回転体の特性として、ロータブレードの接線方向の速度U(r)は、半径方向長さrに比例する。したがって、相対流れ角β(r)もrと共に変化するため、必要な流入角i(r)を得るために、ロータブレードの食い違い角α(r)が変化している必要がある。食い違い角α(r)は、rに比例して増加する接線方向の速度U(r)を得るために、各半径方向長さrにおける揚力の大きさが十分であるように変化するブレードの「ねじれ(twist)」を特徴づける。
【0062】
流体速度Caが一様な軸流を示し、摩擦力Rfが小さい間は、必要とされる揚力も小さい。この場合、食い違い角α(r)は、「渦なし」ねじれ設計を特徴づけ、この設計において、α(r)は流れ角β(r)にほぼ等しく、流入角i(r)はr=0に位置するハブ部分からr=Rに位置する先端に至るどの部分でも小さい。
【0063】
図7は、新規のロータブレードの食い違い角α(r)および断面プロファイルを示す重畳図である。図7は、図4の投影線A−Hに沿って切り取られた、図5の半径方向に等間隔に離間した8つの断面を示す。近位断面は投影線Aに沿った位置にあり、遠位断面は投影線Hに沿った位置にある。これらの断面は、食い違い角α(r)を示すために、軸方向の中心線CLに対して配向されている。
【0064】
表1は、図7に示す新規の食い違い角α(r)と従来技術の食い違い角α’(r)との差をさらに示す。表1は、r/R=8.6%、38.3%、68.0%および97.7%(1列目)に対応する4つの半径方向長さの比における従来技術の食い違い角α’(r)(2列目)、理想化された流入角i’(r)(3列目)および見かけの流入角i(r)(4列目)を示す。
【0065】
上記のように、従来技術の食い違い角α’(r)は、ロータの軸に対する従来技術によるブレードの角度である。理想化された流入角i’(r)は、理想的な一様な軸流を仮定した場合のα’(r)から得られる流入角である。一方、見かけの流入角i(r)は、新規のロータの設計に重要なデータを提供する実際のホットファイア(hot−fire)較正試験から推測される流入角である。
【0066】
【表1】

【0067】
従来技術の食い違い角α’(r)および理想化された流入角i’(r)は、一様な軸流を仮定し、かつ既知の製造誤差を平均化することにより、従来技術の10個のロータの平均値から再構築されたものである。この10個のロータは、シャトル船団のロータの総在庫品からのサブセットであり、これらのロータのうちで動作の異常が記録されたものはない。表1は、従来技術によるロータが理想化された渦なしのねじれ設計を有することを示し、この設計において、理想化された流入角i’(r)は、ブレードに沿ったどの部分でもゼロに近いことを示す(3列目)。
【0068】
新規のロータブレード32は、理想化された流入角i’(r)ではなく、見かけの流入角i(r)に従って新規の食い違い角α(r)を画定することによって従来技術に改良を加えている。すなわち、i’(r)とi(r)との差を考慮するためにロータを較正するのではなく、新規のロータブレード32は、この差を新規の食い違い角α(r)に組み込んでいる。したがって新規のロータ30は、ブレードの設計自体が本質的に非軸流の影響を考慮しているため、少なくとも見かけの流入角i(r)によって特徴付けられている範囲までは従来技術よりも本質的に正確である。この手法は、較正係数Kfの正確性を高めるだけでなく、特定の流量に対して特定のロータ速度を必要とする特定の流量計の適用に合わせてKfを修正または調節することができる。
【0069】
図8は、従来技術によるサブセットのロータのホットファイア試験から得られたロータの回転速度に対する流量を示す較正プロットである。LH2の流量は、1分間当たりのガロン数(GPM)で与えられ、流量計の回転速度はピップ/秒で与えられている。1ピップは、1つのロータブレードが誘導磁気センサの磁界を通過したことを表す。1回転毎に4つのピップが存在するため、RPM単位の回転速度は、ピップレートをちょうど15倍(1分は60秒であり、これを1回転当たりのピップ数4で割った値)することによって得られる。
【0070】
図8は、従来技術の重大な限界を示すが、この限界は新規のロータ32によって対処される。公称のつまり「ゼロ流入角」線81は、理想化された場合を表し、すべての半径方向長さにおいて完全な軸流であることに対応する。この線81によれば、理想化された流量較正定数K’f=0.8777が得られる。しかし、このときの流れは、見かけの流量較正定数Kf=0.8708を与える回帰直線82が示すように、完全な軸流ではない。見かけの流量較正定数Kfは、理想化された較正定数K’fよりも約0.79%小さい。スペースシャトルのメインエンジン(SSME)用のLH2の流れは、0.5%未満で調整しなければならないため、これは設計許容誤差を超えてしまっている。
【0071】
流入角がゼロの線81と較正線82との差は、上記表1の3列目および4列目に示す理想化された流入角i’(r)から見かけの流入角i(r)への修正に対応する。すなわち、流れが完全に一様で、かつ、ロータが較正線82で示す速度で回転していれば、ブレードの実際の流入角が、表1の4列目に示す見かけの流入角i(r)になるはずである。新規のロータブレード32は、この影響を設計の中に組み込んでいるが、従来技術には組み込まれていない。
【0072】
図1、図3〜5および図7を参照して説明した上記の好適な実施例において、新規の食い違い角α(r)は、較正定数Kfの値が、上述した約0.87から新規の設計の約0.83まで、従来技術によるロータと比べてそれほど変化なく較正されることに留意されたい。他の実施例において、較正定数Kfが従来技術と比べて実質的に大きくなるかまたは小さくなるように食い違い角を較正することができ、あるいは特定の新規の流量計の適用に合わせて較正定数Kfを調節するように食い違い角を較正することができる。
【0073】
図9は、従来技術による流量計ロータのホットファイア試験から得られた見かけの流入角i(r)に対する流量を示す一連の較正プロットである。これらのプロットの各々は、最も小さな半径方向長さの比(一番上)から最も大きな半径方向長さの比(一番下)の順に配置されている。
【0074】
図9は、新規のロータブレード32と従来技術との違いをさらに示す。表1の4列目に示す見かけ流入角i(r)の平均は、図6に示す分力および分解速度に従って決定された、図9の回帰直線91、92、93、94の平均値である。ただし、1行目の半径方向長さの比r/R=8.6%のプロットは、縦軸の範囲が±0.2°となるように拡大されており、下の3つのプロットの範囲が±0.5°であることと異なることに留意されたい。
【0075】
図8および図9に示す較正プロットは、食い違い角α(r)が、理想化された流入角i’(r)ではなく、見かけの流入角i(r)を反映するように、食い違い角α(r)を「再ねじれ」させる。新規のロータブレード32の特定の実施例において、新規のロータ30がカットバック構成で配置されるが、この較正データはストレートバック構成の整流装置を使用して得られたことに留意されたい(図1に示す上流側整流装置13および下流側整流装置14を比較されたい)。
【0076】
したがって、本明細書に記述されるように、スペースシャトルのメインエンジン(SSME)用のLH2のロータの較正は、従来技術の配置における従来技術のロータのホットファイア試験と、新規の配置における新規のロータの数学的モデル化と、の両方を必要とする。しかし、他の応用例において、従来技術による設計の較正試験のみから較正してもよいし、新規のプロトタイプの数学モデルつまりソフトウェアモデルのみから較正を実施してもよい。その場合のモデルは、流体の流れに非直線性を取り入れる。
【0077】
図8および図9(ならびに表1)に示すデータは、さらに2つの説明を必要とする。第1に、これらのデータは平均的な流量を示し、回転角θで積分された値である。整流装置の伴流および層流領域に起因する局所的な影響は、この平均値の中に含まれているが、個別には考慮されていない。この手法は、スペースシャトルのメインエンジン(SSME)の設計によるが、スペースシャトルのメインエンジン(SSME)の設計では、単一の磁気誘導(「ピップ」)センサを使用してロータ速度をサンプリングするので、θの値を1つしか表さない。他の実施例において、回転の影響に鋭く反応する較正を追加するために、ロータの回転速度を連続的にサンプリングしてもよい。
【0078】
第2に、較正データは、従来技術による10個のロータから選択されたサブセットの平均値を表す。これらのデータは、サブセットついて平均化され、かつホットファイア較正試験の際に実行された極めて多くの回転について平均化された平均サンプルの設計仕様を、従来技術によるロータに提供する。他の実施例において、従来技術による単一のロータに基づいて較正してもよく、新規の単一のプロトタイプに基づいて較正してもよい。このプロトタイプは、物理的なプロトタイプとしてもよく、プロトタイプの数学モデルつまりソフトウェアモデルとしてもよい。
【0079】
図10は、ロータハブおよび複数のテーパ型ロータブレードを有する、周波数を調整した流量計ロータを設計する方法100を示すフローチャートである。方法100は、ロータブレードの断面プロファイルを画定するステップ(ステップ101)と、ロータブレードの食い違い角を較正するステップ(ステップ102)と、ロータブレードの断面プロファイルにテーパを付するステップ(ステップ103)と、周波数を調整したロータを解析するステップ(ステップ104)と、を含む。通常、テーパを付するステップ(ステップ103)および解析ステップ(ステップ104)は、ロータが一揃いの設計基準を満たしていることを解析ステップ(ステップ104)が示すまで繰返し実行される。
【0080】
画定ステップ(ステップ101)は、ロータブレードの断面プロファイルを半径方向長さrの関数として画定することを含む。半径方向長さrはロータハブによって画定され、rの寸法は、ロータハブから外側への寸法(図2参照)、またはロータハブの中心線に沿って配向されたロータの軸(図1参照)から外側への寸法によって測定される。断面プロファイルは、翼弦長l(r)および相対厚さt(r)からなる。好適な一実施例において、画定ステップ(ステップ101)は、従来技術によるロータブレードに基づいて断面プロファイルを画定することを含むが、他の実施例において、画定ステップ(ステップ101)は、新規のプロトタイプブレードに基づいて断面プロファイルを画定することを含んでもよく、このプロトタイプは、物理的なプロトタイプであってもよいし、プロトタイプの数学モデルつまりソフトウェアモデルであってもよい。
【0081】
較正ステップ(ステップ102)は、理想化された流入角i’(r)と見かけの流入角i(r)との差を食い違い角α(r)が反映するように、ロータブレードの食い違い角α(r)を半径方向長さrの関数として較正することを含む。理想化された流入角i’(r)は、理想化された一様な軸流における理想化された渦なしロータの設計を特徴付けることができ、あるいは他のロータの設計を特徴づけることができる。見かけの流入角i(r)は、流れに含まれる非直線性を特徴づけるものであり、従来技術によるロータのホットファイア較正試験、他の形態の較正試験、あるいはソフトウェアモデル化つまり数学的モデル化からなる較正から得られる。好適な一実施例において、較正ステップ(ステップ102)は、従来技術によるロータの較正試験と、数学的モデル化つまりソフトウェアモデル化と、をともに含む混成的な較正である。
【0082】
テーパを付するステップ(ステップ103)は、ロータブレードの断面プロファイルが、半径方向長さrの関数として減少する翼弦長l(r)および相対厚さt(r)を有するエアフォイルを特徴づけるように、ロータブレードの断面プロファイルにテーパを付することを含む。好適な一実施例において、エアフォイルは、修正NACA4ディジットシリーズのエアフォイルである。この実施例において、翼弦長は、ロータハブ付近における基準翼弦長の約109%からブレードの先端付近における基準翼弦長の約100%まで減少し、相対厚さは、ロータハブ付近における翼弦長の約30%から、ブレードの先端付近における翼弦長の約13%まで減少する。他の実施例において、翼弦長および相対厚さが、異なる変化を示してもよい。代替的に、エアフォイルは、未修正NACA4ディジットシリーズのエアフォイル、修正NACA5ディジットシリーズのエアフォイル、未修正NACA5ディジットシリーズのエアフォイル、1シリーズNACAエアフォイル、6シリーズNACAエアフォイル、7シリーズNACAエアフォイル、または8シリーズNACAエアフォイルであってもよい。
【0083】
解析ステップ(ステップ104)は、ロータの固有振動周波数スペクトルを解析することを含む。解析ステップ(ステップ104)は、複数のテーパ型ロータブレードの断面プロファイルをロータの数学モデルつまりソフトウェアモデルに翻訳することによって、あるいはロータの物理的モデルつまり物理的な実施の振動を測定することによって、固有振動周波数スペクトルを生成することを含んでもよい。解析ステップ(ステップ104)は、物理的モデルつまり物理的な実施の測定と、数学モデルつまりソフトウェアモデルと、を組み合わせて混成的に固有振動周波数スペクトルを生成することをさらに含んでもよい。
【0084】
解析ステップ(ステップ104)は、固有周波数スペクトルを、操作で誘導される励振周波数の範囲と比較することをさらに含む。好適な一実施例において、固有周波数スペクトルにおける第1の曲げモードおよび第2の曲げモードの周波数は、操作で誘導される励振周波数の範囲よりも高くなる。他の実施例において、固有周波数スペクトルにおける特定のモードの周波数は、操作で誘導される励振周波数の範囲よりも低くてもよいし、操作で誘導される励振周波数の範囲における一連の特定の周波数よりも高くてもよいし低くてもよい。
【0085】
好適な一実施例において、解析ステップ(ステップ104)は、ロータの応力応答関数を生成することをさらに含む。応力応答関数は、操作で誘導される応力および疲労の関数として複数のロータブレードの変位を特徴づけてもよいし、任意の応力および疲労の関数としてこれらの変位を特徴づけてもよい。この実施例において、解析ステップ(ステップ104)は、テーパを付するステップ(ステップ103)によって生じる応力応答の変化を解析することをさらに含む。この変化が、応力および疲労に対してさらに大きな抵抗を特徴づけるとよい。
【0086】
本明細書において開示される構造および機能の詳細ならびに使用されている特定の用語は、説明を目的とするものであり、本発明を限定するものではない。好適な実施例を参照して本発明を記述したが、当業者であれば、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、形態および細部に変更がなされ得ることを理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】タービン流量計の位置を示すスペースシャトルのメインエンジン液体水素ダクトの切欠図。
【図2】4ブレードロータの設計の第1の曲げモード特性および第2の曲げモード特性を示す概略図。
【図3】本発明による新規のタービン流量計ロータの斜視図。
【図4】本発明による新規のタービン流量計ロータブレードの斜視図。
【図5】新規のロータブレードと従来技術とを比較した一連の断面図。
【図6】孤立したエアフォイルに加わる荷重を垂直方向の分力と共に示す概略図。
【図7】新規のロータブレードの食い違い角および断面プロファイルを示す重畳図。
【図8】従来技術による10個の流量計ロータのサブセットのホットファイア試験から得られたロータ速度対流量を示す較正プロット。
【図9】従来技術による10個の流量計ロータのサブセットのホットファイア試験から得られた見かけの流入角対流量を示す一連の較正プロット。
【図10】ロータハブおよび複数のテーパ型ロータブレードを有する、周波数を調整した流量計ロータを設計する方法を示すフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れを測定するための、周波数を調整したテーパ型タービン流量計ロータであって、
ロータハブと、
複数のロータブレードと、
を備え、
前記ロータハブが該ロータハブから測定される半径方向長さを画定し、前記複数のロータブレードの各々の食い違い角と断面プロファイルとが前記半径方向長さの関数として変化し、前記断面プロファイルにより各半径方向長さにおいてNACAエアフォイルが特徴づけられる、タービン流量計ロータ。
【請求項2】
前記複数のロータブレードが、4つのロータブレードからなることを特徴とする請求項1に記載のタービン流量計ロータ。
【請求項3】
各半径方向長さにおいて特徴づけられた前記NACAエアフォイルが、修正NACA4ディジットシリーズのエアフォイルであることを特徴とする請求項2に記載のタービン流量計ロータ。
【請求項4】
前記断面プロファイルが、半径方向長さの関数としての翼弦長および前記半径方向長さの関数としての相対厚さを備え、
前記翼弦長が、前記ロータハブ付近における基準翼弦長の約109%の最大値から、ブレードの先端付近における基準翼弦長の約100%の最小値まで減少し、
前記相対厚さが、前記ロータハブ付近における翼弦長の約30%の最大値から、前記ブレードの先端付近における翼弦長の約19%の最小値まで減少し、
各半径方向長さにおいて特徴づけられた前記エアフォイルが1%以下のキャンバを有することを特徴とする請求項3に記載のタービン流量計ロータ。
【請求項5】
前記ロータの第1の曲げモードの周波数が約1,200サイクル/秒を超えることを特徴とする請求項4に記載のタービン流量計ロータ。
【請求項6】
前記流体の流れが約10,000ガロン/分を超える低温流体の流れであり、前記ロータが約3,800回転/分を超えるロータ速度で動作することを特徴とする請求項5に記載のタービン流量計ロータ。
【請求項7】
前記食い違い角が、ロータ速度に流量を関連付ける較正係数を規定するように、前記食い違い角が、非軸流成分を有する非理想化流における較正試験に基づく見かけの流入角を反映することを特徴とする請求項6に記載のタービン流量計ロータ。
【請求項8】
タービン流量計のテーパ型ロータブレードであって、
ロータハブによって画定される半径方向長さの関数として変化する食い違い角と、
前記半径方向長さの関数として減少する翼弦長および前記半径方向長さの関数として減少する相対厚さからなる断面プロファイルと、
を備え、
前記断面プロファイルが各半径方向長さにおいてエアフォイルを特徴づけることを特徴とするロータブレード。
【請求項9】
前記各半径方向長さで特徴づけられたエアフォイルが、修正NACA4ディジットシリーズのエアフォイル、未修正NACA4ディジットシリーズのエアフォイル、修正NACA5ディジットシリーズのエアフォイルまたは未修正NACA5ディジットシリーズのエアフォイルのうちの1つであることを特徴とする請求項8に記載のロータブレード。
【請求項10】
前記各半径方向長さで特徴づけられたエアフォイルが、1シリーズNACAエアフォイル、6シリーズNACAエアフォイル、7シリーズNACAエアフォイル、または8シリーズNACAエアフォイルのうちの1つであることを特徴とする請求項8に記載のロータブレード。
【請求項11】
前記翼弦長が、前記ロータハブ付近における基準翼弦長の109%以上の最大値から、ブレードの先端付近における基準翼弦長の100%以下の最小値まで減少し、前記相対厚さが、前記ロータハブ付近における翼弦長の30%以上の最大値から、前記ブレードの先端付近における翼弦長の19%以下の最小値まで減少することを特徴とする請求項8に記載のロータブレード。
【請求項12】
前記各半径方向長さで特徴づけられたエアフォイルが、1%以下のキャンバを有することを特徴とする請求項8に記載のロータブレード。
【請求項13】
前記食い違い角が、ロータ速度に流量を関連付ける較正係数を規定するように、前記食い違い角が、非軸流成分を有する非理想化流における較正試験に基づいた見かけの流入角を反映することを特徴とする請求項8に記載のロータブレード。
【請求項14】
流体の流れを測定するタービン流量計であって、
ロータハブと複数のロータブレードとを有する周波数を調整したテーパ型流量計ロータと、
上流側整流装置と、
下流側整流装置と、
を備え、
前記ロータハブが該ロータハブから測定される半径方向長さを画定し、前記複数のロータブレードの各々の食い違い角と断面プロファイルとが前記半径方向長さの関数として変化し、前記断面プロファイルにより各半径方向長さにおいてエアフォイルが特徴づけられる、タービン流量計。
【請求項15】
前記断面プロファイルが、前記半径方向長さの関数として減少する翼弦長および前記半径方向長さの関数として減少する相対厚さからなることを特徴とする請求項14に記載のタービン流量計。
【請求項16】
前記各半径方向長さで特徴づけられたエアフォイルが、NACAエアフォイルであることを特徴とする請求項14に記載のタービン流量計。
【請求項17】
前記ロータの第1の曲げモードの周波数が、操作で誘導される励振周波数の範囲を超えていることを特徴とする請求項14に記載のタービン流量計。
【請求項18】
前記流体の流れが低温の流体の流れであることを特徴とする請求項14に記載のタービン流量計。
【請求項19】
前記上流側整流装置および前記下流側整流装置が六角形通路の設計を有することを特徴とする請求項14に記載のタービン流量計。
【請求項20】
前記下流側整流装置がカットバック構成を有することを特徴とする請求項19に記載のタービン流量計。
【請求項21】
前記流量計ロータが、前記下流側整流装置から下流に2インチ未満の位置に配置され、
前記上流側整流装置が、前記下流側整流装置から上流に配置されていることを特徴とする請求項20に記載のタービン流量計。
【請求項22】
ロータハブおよび複数のテーパ型ロータブレードを有する周波数を調整した流量計ロータを設計する方法であって、
前記ロータハブによって画定される半径方向長さの関数として断面プロファイルを画定するステップであって、前記断面プロファイルが、前記半径方向長さの関数としての翼弦長と、前記半径方向長さの関数としての相対厚とからなる、画定ステップと、
前記半径方向長さの関数として、かつ理想化された流入角と見かけの流入角との差の関数として、食い違い角を較正するステップと、
前記断面プロファイルが各半径方向長さにおいてエアフォイルを特徴づけるように、さらに前記翼弦長および前記相対厚さがそれぞれ前記半径方向長さの関数として減少するように、前記断面プロファイルにテーパを付するステップと、
操作で誘導される励振周波数の範囲に関して前記ロータの固有振動周波数スペクトルを解析する解析ステップと、
を含む方法。
【請求項23】
前記各半径方向長さにおいて特徴づけられたエアフォイルが、修正NACA4ディジットシリーズのエアフォイル、未修正NACA4ディジットシリーズのエアフォイル、修正NACA5ディジットシリーズのエアフォイル、または未修正NACA5ディジットシリーズのエアフォイルのうちの1つであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記固有振動周波数スペクトルにおける第1の曲げモードの周波数が、操作で誘導される励振周波数の範囲を超えていることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記解析ステップが、テーパを付するステップによって生じる応力応答関数の変化を解析することをさらに含み、前記応力応答関数の変化が、応力および疲労に対してさらに大きな抵抗を特徴づけることを特徴とする請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−264735(P2009−264735A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28590(P2008−28590)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(507180364)プラット アンド ホイットニー ロケットダイン,インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】