説明

周波数変換回路およびそれを用いた送信機

【課題】低いQ(クオリティファクタ)のフィルタ回路を用いることができる周波数変換回路を提供する。
【解決手段】第1周波数変換回路23は、第1モードの選択時に入力される第1信号には第1周波数の局部発振信号を混合し、第2モードの選択時に入力される第2信号には第2周波数の局部発振信号を混合し、第1信号および第2信号を周波数変換する。第2周波数変換回路36は、周波数変換された第1信号および第2信号に第3周波数の局部発振信号を混合し周波数変換する。第1周波数の局部発振信号および第2周波数の局部発振信号の働きで第3周波数はフィルタ回路45、46の通過帯域から離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間周波信号(IF信号)に局部発振回路の局部発振信号(L.O.信号)を混合し、中間周波信号を周波数変換する周波数変換周波数変換回路、および、それを利用した送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば衛星通信用のブロックアップコンバータ(BUC)といった送信機は一般に知られる。こうした送信機では例えばマイクロ波のKa帯が通信に利用されることができる。Ka帯の送信機ではローバンド(29.5GHz〜30GHz)およびハイバンド(30GHz〜31GHz)といった2つの周波数帯域(デュアルバンド)が利用されるものがある。例えばローバンドでは0.95GHz〜1.45GHzの中間周波信号(IF信号)が28.55GHzの局部発振信号と混合され送信信号である高周波信号(RF信号)に変換される。ハイバンドでは0.95GHz〜1.95GHzの中間周波信号が29.05GHzの局部発振信号と混合され送信信号である高周波信号に変換される。ここで、1台の送信機でローバンドおよびハイバンドを利用することができれば便利である。そこで、1つの共通の高周波(RF)回路に対して2つの局部発振器が組み込まれることが提案される。こういった場合には、一方の局部発振器が接続されると28.55GHzの局部発振信号が供給され、他方の局部発振器に切り替えられると29.05GHzの局部発振信号が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−244033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RF回路にはバンドパスフィルタすなわちフィルタ回路が接続される。フィルタ回路は、RF回路から出力される信号から局部発振信号の出力を除去し局部発振器の出力の漏洩を阻止する。しかしながら、前述のように1つのRF回路がハイバンドおよびローバンドで共通化されると、フィルタ回路は2つの周波数帯域に適応しなければならない。その結果、ローバンドの下限周波数(29.5GHz)に対してハイバンドの局部発振器の局部発振周波数(=29.05GHz)が近接してしまう。このときの高周波信号(RF信号)と局部発振信号(L.O.信号)の関係を図3に示す。こういった場合には高いQ(クオリティファクタ)を有するフィルタ回路(例えば導波管フィルタ)が用いられなければならず、その結果、フィルタ回路の大型化および高額化が避けられない。
【0005】
本発明のいくつかの態様によれば、低いQ(クオリティファクタ)のフィルタ回路を用いることができる周波数変換回路は提供されることができる。そうした周波数変換回路を利用した送信機は利用されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
周波数変換回路の一形態は、第1モードの選択時に入力される第1信号、または、第2モードの選択時に入力される第2信号のいずれか一方に基づき第3信号を生成し、生成された第3信号を出力する単一の出力ポートを有する入力回路と、前記第3信号の生成にあたって、前記第1信号には第1周波数の局部発振信号を混合し、前記第2信号には第2周波数の局部発振信号を混合し、前記第1信号および前記第2信号を周波数変換する第1周波数変換回路と、前記出力ポートに接続されて、前記第3信号に第3周波数の局部発振信号を混合し、前記第3信号を周波数変換して第4信号を生成する第2周波数変換回路と、前記第2周波数変換回路に接続されて、前記第4信号の周波数帯域に通過帯域を有するとともに遮断帯域に前記第1周波数、前記第2周波数および前記第3周波数を含むフィルタ回路とを備える。
【0007】
こうした周波数変換回路では、第1周波数の局部発振信号および第2周波数の局部発振信号の働きで第3周波数はフィルタ回路の通過帯域から離されることができる。したがって、フィルタ回路のQ(クオリティファクタ)に応じて第1周波数が設定されれば、第3周波数は確実にフィルタ回路の遮断帯域に含まれることができる。こうして第3周波数の局部発振信号がフィルタ回路を通過することは防止されることができる。しかも、第1周波数の局部発振信号と第2周波数の局部発振信号とのそれぞれに対応する周波数変換回路に対して共通に第2周波数変換回路が組み合わせられることから、占有面積の増大や部品コストの増加は最小限に抑制されることができる。
【0008】
前記第1周波数変換回路は、前記第1周波数の局部発振信号を出力する第1局部発振回路と、前記第2周波数の局部発振信号を出力する第2局部発振回路とを備えてもよい。これに代えて、前記第1周波数変換回路は、前記第1周波数の局部発振信号および前記第2周波数の局部発振信号を切り替えて出力する発振回路で構成されてもよい。特に、後者の第1周波数変換回路では、1つの発振回路で2つの局部発振信号が供給されることから、周波数変換回路の小型化および部品コストの低減が実現されることができる。
【0009】
前記第1局部発振回路および前記第2局部発振回路または前記発振回路は、逓倍器を含まずに形成される位相同期回路で構成されることが望まれる。こういった構造によれば、逓倍器を含まないため位相雑音特性が向上する。
【0010】
前記フィルタ回路はマイクロストリップラインで形成されることが望まれる。こうした構成によれば、フィルタ回路は安価に提供されることができる。マイクロストリップラインでは例えば導波管フィルタに比べてQ(クオリティファクタ)が低いものの、第1周波数および第2周波数の働きで周波数変換回路での利用が可能となる。
【0011】
以上のような周波数変換回路は送信機に組み込まれて使用されることができる。こういった送信機には、衛星通信用のブロックアップコンバータ(BUC)といった送信機が挙げられることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように開示の周波数変換回路によれば、低いQ(クオリティファクタ)のフィルタ回路を用いてデュアルバンド用の周波数変換回路を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る送信機の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る送信機の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】従来技術に従ってフィルタ回路の周波数特性と局部発振信号との関係を示すグラフである。
【図4】本発明に従ってバンドパスフィルタ特性と第3周波数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0015】
図1は本発明の第1実施形態に係る送信機11の構成を概略的に示す。送信機11は周波数変換回路12を備える。周波数変換回路12の入力端子13には中間周波信号(IF信号)の信号源(図示されず)が接続される。周波数変換回路12は、中間周波信号を増幅し、中間周波信号に所定周波数の局部発振信号を混合し、所定周波数の高周波信号(RF信号)を生成する。周波数変換回路12には導波管14が接続される。生成された高周波信号は導波管14を経由し空間に放出される。
【0016】
この送信機11は第1モードであるハイバンドモード(H帯モード)と第2モードであるローバンドモード(L帯モード)とで切り替えられることができる。こういった切り替えにあたって送信機11にはモード切り替えスイッチ(図示されず)が取り付けられる。モード切り替えスイッチは、ハイバンドモードが選択されると、ハイバンドモードを特定するスイッチング信号を周波数変換回路12に供給する。同様に、モード切り替えスイッチは、ローバンドモードが選択されると、ローバンドモードを特定するスイッチング信号を周波数変換回路12に供給する。モード切り替えスイッチの切り替えは、例えば送信機11の使用者のマニュアル操作で実現されてもよく、中間周波信号の信号源の接続に応じて自動的に実現されてもよい。
【0017】
ここで、第1モードであるハイバンドモードのとき、入力端子13には信号源から0.95GHz〜1.95GHzの中間周波信号が周波数変換回路12に入力される。この中間周波信号は30GHz〜31GHzに高周波信号に変換されて導波管14を経由し空間に放出される。第2モードであるローバンドモードのとき、入力端子13には信号源から0.95GHz〜1.45GHzの中間周波信号が周波数変換回路12に入力される。この中間周波信号は29.5GHz〜30GHzの高周波信号に変換されて導波管14を経由し空間に放出される。この種の送信機11は例えばブロックアップコンバータ(BUC)といった衛星通信機用送信機その他の無線送信機で例えられることができる。
【0018】
周波数変換回路12は中間周波回路(IF回路)15を備える。中間周波回路15の入力端は入力端子13に接続される。中間周波回路15は入力回路として機能する。中間周波回路15は単一の出力ポート16を有する。中間周波回路15は、ハイバンドモード時に入力端子13から入力される第1中間周波信号、または、ローバンドモード時に入力端子13から入力される第2中間周波信号のいずれか一方に基づき1次高周波信号を生成する。中間周波回路15は出力ポート16から1次高周波信号(第3信号)を出力する。
【0019】
中間周波回路15の入力端と第1周波数変換回路23との間には第1スイッチング素子17が、第1周波数変換回路23と第2周波数変換回路36との間には第2スイッチング素子18が配置される。第1スイッチング素子17および第2スイッチング素子18の間にはハイバンド線路21とローバンド線路22とが形成される。第1スイッチング素子17および第2スイッチング素子18は、モード切り替えスイッチから供給されるスイッチング信号に応じて接続遮断を切り替える。ハイバンドモードが選択されると、ハイバンド線路21経由で入力端および出力ポート16の間に信号経路が確立される。このとき、ローバンド線路22は入力端および出力ポート16から切り離される。一方で、ローバンドモードが選択されると、ローバンド線路22経由で入力端および出力ポート16の間に信号経路が確立される。このとき、ハイバンド線路21は入力端および出力ポート16から切り離される。
【0020】
中間周波回路15には第1周波数変換回路23が組み合わせられる。第1周波数変換回路23は第1局部発振回路24および第2局部発振回路25を備える。第1局部発振回路24は第1周波数の局部発振信号を出力する。ここでは、第1周波数は2GHzに設定される。第2局部発振回路25は第2周波数の局部発振信号を出力する。ここでは、第2周波数は1.5GHzに設定される。第1局部発振回路24および第2局部発振回路25は、逓倍器を含まずに形成される位相同期回路すなわちPLL(フェーズロックループ)回路で構成される。第1局部発振回路24および第2局部発振回路25には入力端子13から基準周波数信号が供給される。基準周波数信号の周波数は例えば10MHzに設定される。第1局部発振回路24は10MHzの基準周波数に基づき2GHzの局部発振信号を生成する。第2局部発振回路25は10MHzの基準周波数に基づき1.5GHzの局部発振信号を生成する。
【0021】
ハイバンド線路21には第1ミキサ26が接続される。第1ミキサ26には第1局部発振回路24が接続される。第1ミキサ26には第1局部発振回路24から第1周波数(2GHz)の局部発振信号が供給される。第1ミキサ26は第1中間周波信号に第1局部発振回路24の局部発振信号を混合する。ここでは、例えば0.95GHz〜1.95GHzの第1中間周波信号は2GHzの局部発振信号と混合されて2.95GHz〜3.95GHzの1次高周波信号に変換される。
【0022】
ローバンド線路22には第2ミキサ27が接続される。第2ミキサ27には第2局部発振回路25が接続される。第2ミキサ27には第2局部発振回路25から第2周波数(1.5GHz)の局部発振信号が供給される。第2ミキサ27は第2中間周波信号に第2局部発振回路25の局部発振信号を混合する。ここでは、例えば0.95GHz〜1.45GHzの第2中間周波信号は1.5GHzの局部発振信号に混合されて2.45GHz〜2.95GHzの1次高周波信号に変換される。
【0023】
入力端子13および第1スイッチング素子17の間にはバンドパスフィルタ28および増幅器29が接続される。バンドパスフィルタ28はハイバンドモードの第1中間周波信号およびローバンドモードの第2中間周波信号のいずれにも対応した通過帯域を有する。すなわち、バンドパスフィルタ28の通過帯域は0.95GHz〜1.95GHzに設定される。増幅器29はバンドパスフィルタ28の出力信号を増幅する。
【0024】
ハイバンド線路21には第1スイッチング素子17および第1ミキサ26の間に増幅器31が接続される。増幅器31は第1スイッチング素子17の出力信号を増幅する。ハイバンド線路21には第1ミキサ26および第2スイッチング素子18の間にバンドパスフィルタ32が接続される。バンドパスフィルタ32はハイバンドモードの1次高周波信号に対応した通過帯域を有する。すなわち、バンドパスフィルタ32の通過帯域は2.95GHz〜3.95GHzに設定される。イメージ信号などの妨害信号はバンドパスフィルタ32で除去される。
【0025】
同様に、ローバンド線路22には第1スイッチング素子17および第2ミキサ27の間に増幅器33が接続される。増幅器33は第1スイッチング素子17の出力信号を増幅する。ローバンド線路22には第2ミキサ27および第2スイッチング素子18の間にバンドパスフィルタ34が接続される。バンドパスフィルタ34はローバンドモードの1次高周波信号に対応した通過帯域を有する。すなわち、バンドパスフィルタ34の通過帯域は2.45GHz〜2.95GHzに設定される。イメージ信号などの妨害信号はバンドパスフィルタ34で除去される。
【0026】
中間周波回路15の出力ポート16には第2周波数変換回路36が接続される。第2周波数変換回路36は第3ミキサ37を備える。第3ミキサ37には第3周波数の局部発振信号が供給される。第3ミキサ37は中間周波回路15の出力に第3周波数の局部発振信号を混合する。ハイバンドモードのとき、2.95GHz〜3.95GHzの1次高周波信号は27.05GHzの局部発振信号に混合されて30GHz〜31GHzの第4信号に変換される。ローバンドモードでは、2.45GHz〜2.95GHzの1次高周波信号は27.05GHzの局部発振信号に混合されて29.5GHz〜30GHzの第4信号に変換される。
【0027】
第2周波数変換回路36は第3局部発振回路38を備える。第3局部発振回路38は第3ミキサ37に接続される。接続にあたって第3局部発振回路38は逓倍器39に組み合わせられる。第3局部発振回路38は第4周波数の局部発振信号を出力する。ここでは、第4周波数は13.525GHzに設定される。第3局部発振回路38は、逓倍器を利用する位相同期発振器すなわちPLO(フェーズロックオシレータ)回路で構成される。第3局部発振回路38には入力端子13から基準周波数信号が供給される。第3局部発振回路38は10MHzの基準周波数に基づき13.525GHzの局部発振信号を生成する。逓倍器39は13.525GHzの局部発振信号から2倍の27.05GHz(第3周波数)の局部発振信号を生成する。
【0028】
第2周波数変換回路36の第3ミキサ37には高周波回路(RF回路)41が接続される。高周波回路41は増幅器42、43、44を備える。ここでは、増幅器42、43、44は複数段(3段)に構成される。個々の増幅器42、43、44は第4信号を増幅する。増幅器42、43の後段にはバンドパスフィルタ45、46が接続される。バンドパスフィルタ45、46はハイバンドモードの第4信号およびローバンドモードの第4信号のいずれにも対応した通過帯域を有する。そして、バンドパスフィルタ45、46の通過帯域は29.5GHz〜31GHzに設定される。バンドパスフィルタ45、46の遮断周波数には第1周波数(=2GHz)、第2周波数(=1.5GHz)および第3周波数(=27.05GHz)が含まれる。バンドパスフィルタ45、46はマイクロストリップラインで形成される。このときの第4信号(RF信号)の周波数、第3周波数(L.O.信号)およびバンドパスフィルタ特性の関係を図4に示す。
【0029】
次に送信機11の動作を簡単に説明する。ハイバンドモードが選択されると、ハイバンドモードを特定するスイッチング信号が第1スイッチング素子17および第2スイッチング素子18に供給される。第1スイッチング素子17では、入力端子13に通じる端子と、第1ミキサ26に通じる端子とが接続される。第2ミキサ27に通じる端子は、入力端子13に通じる端子から切り離される。入力端子13から第1局部発振回路24および第3局部発振回路38に基準周波数信号が供給されている。第1局部発振回路24では2GHzの局部発振信号が生成される。第3局部発振回路38では第3周波数の13.525GHzの局部発振信号が生成される。第2局部発振回路25の動作は休止する。動作の休止にあたっては例えば第2局部発振回路25に供給されている電源(図示せず)を停止させればよい。
【0030】
入力端子13からハイバンドモードの中間周波信号がハイバンド線路21に向かって流れ込む。第1ミキサ26でハイバンドモードの中間周波信号には第1周波数の局部発振信号が混合される。その結果、0.95GHz〜1.95GHzの中間周波信号は2.95GHz〜3.95GHzの1次高周波信号に周波数変換される。続いて1次高周波信号には第3ミキサ37で第3周波数の局部発振信号が混合される。その結果、2.95GHz〜3.95GHzの1次高周波信号は30GHz〜31GHzの第4信号に周波数変換される。第4信号は高周波回路41のバンドパスフィルタ45、46を通過する。第4信号は導波管14を経由し空間に放出される。
【0031】
ローバンドモードが選択されると、ローバンドモードを特定するスイッチング信号が第1スイッチング素子17および第2スイッチング素子18に供給される。第1スイッチング素子17では、入力端子13に通じる端子と、第2ミキサ27に通じる端子とが接続される。第1ミキサ26に通じる端子は、入力端子13に通じる端子から切り離される。入力端子13から第2局部発振回路25および第3局部発振回路38に基準周波数信号が供給されている。第2局部発振回路25では1.5GHzの局部発振信号が生成される。第3局部発振回路38では13.525GHzの局部発振信号が生成される。第1局部発振回路24の動作は休止する。動作の休止にあたっては例えば第1局部発振回路24に供給されている電源(図示せず)を停止させればよい。
【0032】
入力端子13からローバンドモードの中間周波信号がローバンド線路22に向かって流れ込む。第2ミキサ27でローバンドモードの中間周波信号には第2周波数の局部発振信号が混合される。その結果、0.95GHz〜1.45GHzの中間周波信号は2.45GHz〜2.95GHzの1次高周波信号に高周波数化される。続いて1次高周波信号には第3ミキサ37で第3周波数の局部発振信号が混合される。その結果、2.45GHz〜2.95GHzの1次高周波信号は29.5GHz〜30GHzの第4信号に周波数変換される。第4信号は高周波回路41のバンドパスフィルタ45、46を通過する。第4信号は導波管14を経由し空間に放出される。
【0033】
以上のような周波数変換回路12では、第1局部発振回路24の第1周波数の設定および第2局部発振回路25の第2周波数の設定に応じて第3周波数は本実施例の27.05GHzのように高周波回路41のバンドパスフィルタ45、46の通過帯域から十分離されることができる。したがって、たとえ高周波回路41のバンドパスフィルタ45、46にQの低いマイクロストリップラインが用いられても、第3周波数はバンドパスフィルタ45、46の遮断帯域に確実に含まれることができる。逓倍器39から出力される第3周波数の局部発振信号がそのまま導波管14を経由し空間に放出されることは防止されることができる。その一方で、例えばハイバンドモード時に高周波信号の生成にあたって29.05GHzの局部発振信号が用いられると、局部発振信号の周波数はバンドパスフィルタ45、46の通過帯域の下限値(=29.5GHz)に近づきすぎてしまい、バンドパスフィルタ45、46で29.05GHzの局部発振信号は十分に減衰されることができない。その結果、30GHz〜31GHzの規定の送出信号に加えて29.05GHzの局部発振信号が導波管14から漏洩することが懸念される。一般に、導波管フィルタではマイクロストリップラインフィルタに比べて急峻な減衰特性が得られることが知られる。したがって、仮にマイクロストリップラインに代えて導波管フィルタがバンドパスフィルタ45、46に利用されれば、29.05GHzの局部発振信号の漏洩は阻止されることができる。その代わり、導波管フィルタはマイクロストリップラインに比べて高価であり、しかも、大きな占有面積が要求される。
【0034】
また、周波数変換回路12では、ハイバンド、ローバンドの2系統からなる第1周波数変換回路に対し1系統の第2周波数変換回路が組み合わせられる。したがって、デュアルバンドの周波数変換回路を構成する場合、ハイバンド、ローバンドの2系統からなる第1周波数変換回路において個別に第2周波数変換回路が組み合わせられる場合に比べて、ハードウェア構成の付加は最小限に抑えられることができる。その結果、占有面積の増大や部品コストの増加は最小限に抑制されることができる。
【0035】
また、周波数変換回路12では第1局部発振回路24や第2局部発振回路25に逓倍器を含まずに形成される位相同期回路が利用される。こういった構造によれば、逓倍器を含まないため位相雑音特性が向上し良好な発振特性が得られる。
【0036】
図2は本発明の第2実施形態に係る送信機11aの構成を概略的に示す。送信機11aでは第1実施形態の中間周波回路15および第1周波数変換回路23に代えて中間周波回路51および第1周波数変換回路52が利用される。その他の構成は第1実施形態と変わらない。図中、第1実施形態と均等な構成や構造には同一の参照符号が付され、その詳細な説明は割愛される。
【0037】
第1周波数変換回路52は第1局部発振回路24および第2局部発振回路25に代えて単一の発振回路53を備える。発振回路53は、内部の電圧制御発振器(VCO)の負荷容量を切り替えて第1周波数(=2GHz)および第2周波数(=1.5GHz)の局部発振信号を出力することができる。切り替えにあたって発振回路53にはモード切り替えスイッチからスイッチング信号が供給されればよい。発振回路53は、逓倍器を含まずに形成される位相同期回路すなわちPLL(フェーズロックループ)回路で構成されることができる。発振回路53には入力端子13から基準周波数信号が供給されている。中間周波回路51では、単一の線路にバンドパスフィルタ28、増幅器29、増幅器31、ミキサ26、バンドパスフィルタ32、増幅器54が順番に接続される。発振回路53の出力はミキサ26に供給される。
【0038】
ハイバンドモードが選択されると、ハイバンドモードを特定するスイッチング信号が発振回路53に供給される。発振回路53はスイッチング信号の受領に応じて第1周波数(=2GHz)の局部発振信号を出力する。入力端子13からハイバンドモードの第1中間周波信号が中間周波回路51に流れ込む。ミキサ26でハイバンドモードの中間周波信号には第1周波数の局部発振信号が混合される。その結果、0.95GHz〜1.95GHzの中間周波信号は2.95GHz〜3.95GHzの1次高周波信号に高周波数化される。続いて1次高周波信号には第3ミキサ37で第3周波数の局部発振信号が混合される。その結果、2.95GHz〜3.95GHzの1次高周波信号は30GHz〜31GHzの第4信号に高周波数化される。第4信号は高周波回路41のバンドパスフィルタ45、46を通過する。第4信号は導波管14を経由し空間に放出される。
【0039】
ローバンドモードが選択されると、ローバンドモードを特定するスイッチング信号が発振回路53に供給される。発振回路53はスイッチング信号の受領に応じて第2周波数(=1.5GHz)の局部発振信号を出力する。入力端子13からローバンドモードの第2中間周波信号が中間周波回路51に流れ込む。ミキサ26でローバンドモードの中間周波信号には第2周波数の局部発振信号が混合される。その結果、0.95GHz〜1.45GHzの中間周波信号は2.45GHz〜2.95GHzの1次高周波信号に高周波数化される。続いて1次高周波信号には第3ミキサ37で第3周波数の局部発振信号が混合される。その結果、2.45GHz〜2.95GHzの1次高周波信号は29.5GHz〜30GHzの第4信号に周波数変換される。第4信号は高周波回路41のバンドパスフィルタ45、46を通過する。第4信号は導波管14を経由し空間に放出される。
【0040】
こうした構造によれば、前述と同様に、逓倍器39から出力される第3周波数の局部発振信号がそのまま導波管14を経由し空間に放出されることは防止されることができる。その他、前述と同様な作用効果は達成される。加えて、1つの発振回路で2つの局部発振信号が提供されることから、周波数変換回路の小型化および部品コストの低減が実現されることができる。
【0041】
以上の周波数変換回路11、11aでは送出信号の周波数帯域は適宜に設定されればよい。このとき、第1局部発振回路24、第2局部発振回路25および第3局部発振回路38には、送出信号の周波数帯域に応じてそれぞれPLLを用いた発振回路およびPLOを用いた発振回路のいずれが用いられてもよい。第3周波数の局部発振信号の生成にあたって逓倍器39を用いずにPLO回路のみが用いられてもよい。第1周波数や第2周波数はバンドパスフィルタ45、46の減衰特性に応じて適宜に設定されればよい。こうした設定に応じてバンドパスフィルタ45、46で十分に第3周波数の局部発振信号が減衰されればよい。
【0042】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれる。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えられることができる。また、周波数変換回路および送信機等の構成および動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
11 送信機、12 周波数変換回路、15 入力回路としての中間周波回路(IF回路)、16 出力ポート、23 第1周波数変換回路、24 第1局部発振回路、25 第2局部発振回路、36 第2周波数変換回路、45 フィルタ回路としてのバンドパスフィルタ、46 フィルタ回路としてのバンドパスフィルタ、51 入力回路としての中間周波回路(IF回路)、52 第1周波数変換回路、53 発振回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1モードの選択時に入力される第1信号、または、第2モードの選択時に入力される第1信号とは周波数の異なる第2信号のいずれか一方に基づき第3信号を生成し、生成された第3信号を出力する単一の出力ポートを有する入力回路と、
前記第3信号の生成にあたって、前記第1信号には第1周波数の局部発振信号を混合し、前記第2信号には第2周波数の局部発振信号を混合し、前記第1信号および前記第2信号を周波数変換する第1周波数変換回路と、
前記出力ポートに接続されて、前記第3信号に第3周波数の局部発振信号を混合し、前記第3信号を周波数変換して第4信号を生成する第2周波数変換回路と、
前記第2周波数変換回路に接続されて、前記第4信号の周波数帯域に通過帯域を有するとともに遮断帯域に前記第1周波数、前記第2周波数および前記第3周波数を含むフィルタ回路と
を備えることを特徴とする周波数変換回路。
【請求項2】
請求項1に記載の周波数変換回路において、前記第1周波数変換回路は、前記第1周波数の局部発振信号を出力する第1局部発振回路と、前記第2周波数の局部発振信号を出力する第2局部発振回路とを備えることを特徴とする周波数変換回路。
【請求項3】
請求項1に記載の周波数変換回路において、前記第1周波数変換回路は、前記第1周波数の局部発振信号および前記第2周波数の局部発振信号を切り替えて出力する発振回路を備えることを特徴とする周波数変換回路。
【請求項4】
請求項2または3に記載の周波数変換回路において、前記第1局部発振回路および前記第2局部発振回路または前記発振回路は、逓倍器を含まずに形成される位相同期回路で構成されることを特徴とする周波数変換回路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の周波数変換回路において、前記フィルタ回路はマイクロストリップラインで形成されることを特徴とする周波数変換回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の周波数変換回路を含むことを特徴とする送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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