説明

味マスキング用多層コーティング技術

【課題】原薬の苦味をマスクする組成物および方法を提供する。
【解決手段】本発明の各種実施の形態は、改良化された味マスキングを提供する多層コーティング技術を有する組成物および方法に関するものである。この技術は、味マスキングされた原薬が口内唾液および水性溶液による水和に耐えることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、改良化された味マスキング能(improved taste-masking capability)を有する組成物および方法に関するものである。
【0002】
〔関連技術の説明〕
多くの有効成分または原薬は、不快な味特性を有する。原薬をコーティングすることによる不快な味を隠す試みは、様々な理由で成功しなかった。第一に、しばしば、コーティング層自体が、服薬者への不快な味の有効成分の漏洩もしくは移行を結果として引き起こすという欠点を含む。さらに、有効成分のコーティングまたは封入に使用されるポリマーは、口内で、または、製造中に膨潤する可能性があり、これは、封入粒子の透過性に影響を与える。ある場合、コーティング層が破裂する可能性があり、これは、薬剤の浸出を可能にする細孔を生じさせる。膨潤はまた、対象者の唾液もしくは製造過程の水溶液を封入粒子内に進入させ、有効成分の可溶化または漏洩を引き起こし、その結果、望ましくない味を生じる可能性がある。さらに、原薬が苦味を有し、親水性である場合に、水性媒体を使ってコーティングされる際、申し分のない味マスキングを提供するためには、大量のコーティング層が必要とされる可能性がある。増粘コーティング層は、ちりや大型粒子を伴う場合がしばしばあり、このために、典型的には、口腔内崩壊剤型には適さない。コーティング層中の薬剤の透過の最少化を目的に、薬剤が溶け難い、あるいは、溶けない溶媒の媒体を選択することによって味をマスクする試みは、非常に高価で、溶媒回収装置を必要とする。これらの方法は、原薬の放出プロファイルまたは生体内利用能を実質的に変化させる可能性がある。よって、原薬の苦味をマスクする組成物および方法を提供するのが望ましい。
【0003】
〔発明の概要〕
本発明のある実施の形態では、水、原薬、原薬上の第一コーティング層、および、原薬上の第一コーティング層上に第二コーティング層を含む水性懸濁液において、コーティング層の少なくとも1層が、約6よりも高いpHを有する水性溶液に不溶である水性懸濁液が提供される。
【0004】
本発明の別の実施の形態は、原薬原薬上の第一コーティング層およびコーティングされた原薬の第一コーティング層上に第二コーティング層を含む組成物において、コーティング層の少なくとも1層が、約6よりも高いpHを有する水性溶液に不溶性であり、組成物が、即時放出型組成物である組成物を提供する。
【0005】
別の実施の形態は、口腔内で崩壊することができる単層独立フィルムを含むフィルムにおいて、フィルムが、第一コーティング層と第二コーティング層でコートされた原薬を含むフィルムを提供する。組成物は、即時放出型組成物であることができ、コーティング層の少なくとも1層は、約6よりも高いpHを有する水性溶液に不溶性であることができる。
【0006】
有用な組成物は、即時放出型組成物であり、コーティング層が、非コーティング原薬に比較して、原薬の放出またはその生体内利用能を大幅には変化させない即時放出型組成物である。
【0007】
本発明のある実施態様では、有効成分の生体内利用能を維持し、あるいは、実質的に変化させずに、改良化味マスキング、および、有効成分に対する改良化防湿バリアを提供する多層封入法が提供される。ある実施態様では、本発明は、医薬品製剤服用者による不快な味の感知を起こさない製剤および医薬品製剤を製造する方法を提供する。製剤は、急速崩壊急速融解カプセルもしくは錠剤、粉末、ウエハース、ロゼンジ、有核(center-filled)ロゼンジ、ソフトチュウ錠、独立単層フィルムおよび多層フィルムを含むフィルムなどの固体剤型であることができる。
【0008】
本発明のある実施態様では、消耗品を製造する方法において、原薬の第一コーティング層への封入、コーティング原薬の第二コーティング層への封入、および、その後の消耗品の形成を含む消耗品を製造する方法が提供される。コーティング層は、原薬の味をマスクし、同一の性状、あるいは、異なる性状を有することができる。
【0009】
別の実施態様では、原薬、原薬を封入する第一コーティング層において第一コーティング層が原薬の味をマスクする第一コーティング層、および、コーティング原薬を封入する第二コーティング層において第二コーティング層が第一コーティング原薬の味をマスクする第二コーティング層を含むコーティング医薬品製剤を含む水性懸濁液が提供される。
【0010】
別の実施の形態では、原薬、原薬を封入する第一コーティング層において第一コーティング層がさらに原薬の味をマスクする第一コーティング層、コーティング原薬を封入する第二コーティング層において、第二コーティング層が第一コーティング原薬の味をマスクする第二コーティング層を含む組成物が提供される。
【0011】
の第一および第二コーティング層は、不溶性であることができ、および/または、約6よりも高いpHを有する水溶液中で実質的な非膨潤性を保つことができる。コーティング層は、およその周囲温度よりも高い、または、別の実施態様では約20℃よりも高い、別の実施態様では約25℃よりも高い、または、別の実施の形態では約40℃よりも高いガラス転移温度もしくは融点温度を有することができる。さらに、各種コーティング層は、約5,000よりも高い分子量、または、約10,000よりも高い分子量、または、それらの組み合せを有することができる。
【0012】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
「即時放出型」および「放出調節型」または「持続放出型」または「放出制御型」という用語は、当該用語が製薬業界で一般的に理解されているので、本発明で使用される。固体剤型の即時放出型製剤(錠剤、カプセル、粉末およびフィルムを含むが、それらに制約されない固体剤型)については、放出とは、適切な米国薬局方(USP)溶解試験法、または、媒質として蒸留水を使用する他の溶解試験法を使って測定される原薬の量として定義される。公式の米国薬局方溶解試験法が定着していない場合、最も適切な米国薬局方溶解試験法が適用され、媒質として蒸留水を利用し、最終投与期間までの、または、当該期間を含めた適切な時点での測定、あるいは、医薬品製剤の同等試験用の適切な方法を実施する。非固体剤型(液体、シロップ、エリキシル剤、液体核経口剤(liquid center oral products)、クリーム、ペーストおよびゲルを含むが、それらに制約されない非固体剤型)の即時放出型製剤については、放出とは、当該製剤の蒸留水中1%溶液を37℃で30分間混合した後に測定される有効原薬量として定義される。
【0013】
固体剤型(錠剤、カプセル、粉末およびフィルムを含むが、それらに制約されない固体剤型)の放出調節型、持続放出型または放出制御型製剤については、放出とは、媒質として蒸留水を使用する適切な米国薬局方(USP)溶解試験を使って測定される原薬の量として定義される。公式の米国薬局方溶解試験法が定着していない場合、最も適切な米国薬局方溶解試験が適用され、媒質として蒸留水を利用し、最終投与期間までの、または、当該期間を含めた適切な時点で測定を実施する。非固体剤型(液体、シロップ、エリキシル、液体核経口剤(liquid center oral products)、クリーム、ペーストおよびゲルを含むが、それらに制約されない非固体剤型)の放出調節型、持続放出型または放出制御型製剤については、放出とは、当該製剤の蒸留水中1%溶液を37℃で1時間混合した後に測定され、最終投与期間までの、または、最終投与期間を含めた適切な時点で、少なくとも1回の追加測定を実施する原薬の量と定義される。
【0014】
次の用語は、本明細書内で、同等であると見なされ、互換的に使用される:原薬、医薬品有効成分、薬学的活性剤および活性物質。医薬品製剤は、原薬を含む製品である。
【0015】
本発明の各種の実施の形態は、多層コーティングまたは封入法を提供し、有効成分に改良化味マスキングおよび防湿バリアを提供する。各種の実施の形態では、コーティング層は、当該有効成分の放出、生体内利用能または投与量を、変化させずに、または、有意には変化させずに、改良化味マスキングおよび防湿バリアを達成するのに十分な量で存在する。有用な剤型は、摂取可能な剤型、ならびに、歯の機械的作用によって、あるいは、歯の機械的作用によらずに、口腔内で崩壊する剤型を含む。適切な剤型は、エリキシル剤、液体、懸濁液、シロップ、硬いおよび軟らかいチュアブル錠ならびにカプセル、急速融解性のカプセルおよび錠剤、単層独立フィルムおよび多層フィルムを含むフィルム、ロゼンジ、有核(center-fillled)ロゼンジ、ならびに、シームレスカプセルを含む。
【0016】
特定の態様では、有用なコーティングは、口内の唾液による、あるいは、固体剤型製造中の水性材料との接触による水和に対して、封入された材料が耐えることができるコーティングである。このように、当該封入法は、苦味のある親水性薬剤の味マスキングを提供するだけでなく、有効な防湿バリアを提供し、それによって、即時放出、急速溶解もしくは崩壊の固体剤型を生産する場合などに直面する加工条件に耐えることができる。この技術はまた、味マスキングされた原薬が口腔内の条件に耐えることを可能にし、そこでは、コーティングされた原薬が、当該薬剤の組成物の味マスキング作用に実質的に影響を与えずに、口内の唾液による水和に耐える。これは、口腔内で崩壊するように設計された急速崩壊剤型に特に有用である。
【0017】
多層粒子を形成する組成物および方法と2層以上を有するその組成物が考慮される。これらのコーティングされた粒子は、液体もしくは固体剤型に組み入れられることができる。
【0018】
第一コーティング層は、当該層が原薬の苦味有効成分を封鎖することができるので、有益である。当該第一層の形成中にアセトン、ヘキサン、塩化メチレンなどの有機溶媒が用いられ、当該第一コーティング層への当該薬剤の透過または漏洩を低減することができる。第二コーティング層は、第一コーティング層に存在する可能性のあるひびや欠損を封鎖することができ、これが、確実に味マスキングを完全にする。第二コーティング層の形成中に上記の溶媒などの有機溶媒が用いられ、薬剤の透過もしくは漏洩を低減することがきる。当該第二層は、単層コーティング粒子を封鎖し、防湿を提供し、固体剤型のコーティングされた粒子の製造中の湿気に耐える、または患者の口内の湿気に耐える、一層頑健な粒子を生じることもできる。
【0019】
ある態様では、本発明のコーティング層は、当該コーティング層が不溶性または弱可溶性であるように選択される。別の態様では、水などの水性溶液との接触時に漏洩が起こらないように、非膨潤性の、あるいは、わずかに膨潤するのみのコーティング層が用いられる。本発明の別の態様では、胃液可溶性のコーティング層が用いられる。外層と比較して、内層が水性液体または胃液との接触で多少影響を受けることができるように、特定のコーティング層料が選択され、様々な溶解度もしくは膨潤度を提供することができる。
【0020】
有用なコーティング層は、周囲温度以上のガラス転移温度(非晶質ポリマーに関して)または融点温度(半結晶性ポリマーに関して)を有するコーティング層を含み、有効なコーティングを提供する。40℃よりも高いガラス転移温度または融点温度を有する材料も有用である。他の有効なコーティング層が生産されることができ、この場合、材料は、コーティング層を塗布する過程で用いられる溶媒の沸点を越える当該材料のガラス転移温度および融点温度に基づいて選択される。
【0021】
各種の実施の形態は、有用なコーティング層が、pH約5〜約7のpH、別の実施の形態では約5.5〜約6.5のpH、または、別の実施の形態では約6よりも高いpHを有する水溶液中で、実質的に不溶性、不溶性、実質的に非膨潤性、非膨潤性、または、それらの組合せである材料を含むが、それらに制約されない、と規定している。ある実施の形態は、少なくとも1層のコーティング層が約6よりも高いpHを有する水性溶液で不溶性である、と規定している。またある実施の形態は、少なくとも1層のコーティング層が、約6よりも高いpHを有する水性溶液で、実質的に非膨潤性を保つ、と規定している。
【0022】
有用なコーティング剤は、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、アクリル化合物、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセテートフタレート、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(ethylene-vinyl acetate copolymers)、ポリビニルブチレート、セラック、小麦タンパク、亜鉛小麦タンパクもしくはゼイン、グルテンおよびそれらの配合物を含むが、それらに制約されない。
【0023】
本発明の各種態様では、コーティング剤は、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(aminoalkyl methacrylate copolymers)、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびステアリン酸マグネシウム、酢酸セルロース、および、別法として、クエン酸トリエチル配合酢酸セルロース、および、それらの配合物から成る群から選択されることができる。
【0024】
有用なコーティング剤は、Rohm Pharmaから販売されているEudragits(E100、EPO、RL、RD)、Rohm & Haasから販売されているAmberlite(登録商標)、エチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methyl cellulose)およびヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose)を含む。酢酸セルロースなどのセルロース系コーティング層は、改良化された味マスキングを提供することができる。他の適切なコーティングポリマーは、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセテートフタレート、ろう(天然物および合成品)、硬化植物もしくは動物油、グリセロールモノ/ジエステルを含む。
【0025】
ある実施の形態では、第一コーティング剤は、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含み、別の実施の形態では、当該第一コーティング層は、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびステアリン酸マグネシウムを含む。別の実施の形態では、第二コーティング剤は、酢酸セルロースを含む。
【0026】
別の実施の形態では、コーティング剤の少なくとも1種類は、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含み、別の実施の形態は、当該コーティング層の少なくとも1種類が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびステアリン酸マグネシウムを含む、と規定し、さらなる実施の形態は、当該コーティング剤の少なくとも1種類が、酢酸セルロースを含む、と規定している。
【0027】
コーティング溶液には、滑沢剤と可塑剤が添加されることができる。分配剤(partitioning agent)として、タルクが使用されることができる。ステアリン酸の代わりに、いずれかの適切な微粉砕疎水性材料が用いられることができる。ステアリン酸は、滑沢剤および結合剤として作用することができ、コーティング層の膨潤を遅らせることができる。
【0028】
本発明の別の態様は、非粘着フィルム組成物と、米国特許第6,596,298号明細書に記述されているものなど、口腔送達に特に適した柔軟な、非粘着フィルムの製造法に向けられている。ある実施の形態では、当該フィルムは、独立単層フィルムで、口腔への付着が可能で、急速崩壊する。急速崩壊剤型は、約60秒未満または約30秒未満または約10秒未満で、口腔内で崩壊する剤型を含む。各種の実施の形態では、フィルムを製造する方法は、フィルム形成剤と少なくとも1種類の安定化剤を混合し、フィルム形成混合物を提供することと、原薬を含有するコーティングされた粒子などの水溶性成分を水に溶解し、水性溶液を提供することと、当該フィルム形成混合物と水性溶液を配合し、水和ポリマーゲルを提供することと、油を混合し、油混合物を形成することと、当該油混合物を水和ポリマーゲルに添加、混合し、均一な乳化ゲルを提供することと、基板上に当該均一ゲルを注型することと、当該注型ゲルを乾燥し、フィルムを形成することを含む。当該均一ゲルは、紙基板上にフィルムとして押出される単層であることができ、その後、当該フィルムは、乾燥後、当該基板から剥離され、次に、投与法を考慮して切断される。このフィルムは、フラット、ホイル、ペーパーまたはウエハー型製品とも称されることができる。多層フィルムは、同時押出によって、または、予め注型されたフィルム上への当該均一ゲルの注型によって生産されることができる。下記のように、製剤は、薬剤および他の活性物質の適用および放出系を提供する。
【0029】
有用なフィルム形成剤は、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガカントゴム、グアガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルポリマー、アミロース、高アミロースデンプン、ヒドロキシプロピル化高アミロースデンプン、デキストリン、ペクチン、キチン、キトサン、レバン、エルシナン、コラーゲン、ゼラチン、ゼイン、小麦グルテン、大豆タンパク単離物、ホエータンパク単離物、カゼインおよびそれらの配合物を含むが、それらに制約されない。他の有用な材料は、米国特許第6,596,298号明細書に開示されており、その開示内容は、参照することによってその全体が組み入れられている。
【0030】
ある態様では、複数のコーティング層によって封入された少なくとも1種類の原薬が、患者への薬剤の送達を目的に、フィルム形成溶液と配合され、当該薬剤に伴う不快な瞬間的な味または後味を最少化または除去しながら、即時放出フィルム状医薬品製剤を生成する。通常の投与条件下で、薬剤投与対象者の口内に当該製剤を置いた後、当該製剤は、口内で崩壊する。ある態様では、放出時、味マスキング剤は、原薬固有の不快な味質を中和し、当該製剤の摂取直後に苦味のない味を提供する。別の態様では、当該製剤は、摂取時に原薬の生体内利用能を保持しながら、味マスキング作用を保持する。当然、チュアブル錠、チュアブルカプセル、急速融解錠剤、急速融解カプセル、および、口腔内で崩壊および溶解するように設計された他の固体剤型、ならびに、口内で崩壊し、口内、胃もしくは消化管内で溶解するように設計された剤型において口内での溶解が回避可能である剤型が、本発明の原理に従って生産されることができる。急速融解製剤および調製法は、米国特許第5,576,014号明細書に記述されており、当該特許は、参照することによってその全体が組み入れられている。
【0031】
本発明の各種方法を実施するための多数の配置で、例えば、押出成形、射出成形、注型、または、浸漬成形を実施する従来の機械を含む各種タイプの製造設備が用いられることができる。ある実施の形態では、開示内容が参照することによって組入れられている米国特許第6,499,984号明細書に開示されている装置は、本発明の実施に有用な構造を提供する。ある実施の形態では、フローメーターおよび付属コントロールバルブが用いられ、原薬を封入するコーティングされた粒子、および、フィルム形成溶液含量の計量添加を調節する。しかし、いずれかの他の適切な計量およびコントロール装置が利用されることができる。二軸スクリュー押出機が、連続攪拌装置として利用されることができ、あるいは、さらに具体的には、米国特許第6,499,984号明細書に記述されるように、二軸スクリュー湿式造粒機−細断機が用いられることができる。しかし、いずれの他の適切な混合機も使用されることができる。
【0032】
本発明の実施には、米国仮特許出願第60/467,339号明細書に開示されているような水溶性ポリマーを含めて、多様な原薬が有用であることができる。当該特許出願は、参照することによってその全体が組み入れられている。さらに、次の表は、本発明に従って有効に用いられることができる典型的な原薬のリストを提供する。
【表1】

【0033】
本発明に従って、多様な方法が利用され、多様な製品が生産されることができるため、以下の実施例は例示に過ぎないことが理解されよう。
【0034】
〔実施例1〕
7%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(7% hydroxypropylmethyl cellulose)(HPMC E5)による造粒デキストロメトルファン臭化水素酸塩(granulated dextromethorphan HBr)に、80:20(w/w)のアミノアルキルメタクリレートコポリマー(Eudragit E100, Degussa):Mgステアレート(ステアリン酸マグネシウム)およびアセトンの第一コーティング層が追加され、50%のコーティングレベルを達成する。(コーティングレベルは、最終的にコーティングされる粒子のパーセンテージ(w/w)を示し、それによって、上記の実施例では、50%のコーティングレベルは、コーティング重量が、コーティング剤および薬剤の重量を合わせた重量の半分であることを表す)。第二コーティング層は、酢酸セルロース(CA-398-10NF, Eastman)およびアセトンを添加することによって適用され、20%のコーティングレベルを達成する。全コーティングは、流動層で実施される。
【0035】
〔実施例2〕
7%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)による造粒デキストロメトルファン臭化水素酸塩に、80:20(w/w)のアミノアルキルメタクリレートコポリマー(Eudragit E100, Degussa):Mgステアレート(ステアリン酸マグネシウム)およびアセトンの第一コーティング層が追加され、40%のコーティングレベルを達成する。第二コーティングは、95:5(w/w)のエチルセルロース(Ethocel 10P, Dow):クエン酸トリエチル(TEC, Morflex)およびアセトンの層を添加することによって適用され、15%コーティングレベルを達成する。全コーティングは、流動層で実施される。
【0036】
〔実施例3〕
7%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)による造粒デキストロメトルファン臭化水素酸塩に、80:20(w/w)のアミノアルキルメタクリレートコポリマー(Eudragit E100, Degussa):Mgステアレート(ステアリン酸マグネシウム)およびアセトンの第一コーティング層が追加され、30%のコーティングレベルを達成する。第二コーティングは、80:20(w/w)の酢酸セルロース(CA-398-10NF, Eastman):クエン酸トリエチル(TEC, Morflex)およびアセトンの層を添加することによって適用され、10%のコーティングレベルを達成する。全コーティングは、流動層で実施される。
【0037】
〔実施例4〕
7%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)による造粒デキストロメトルファン臭化水素酸塩に、80:20(w/w)のシェラック(Marcoat 125, Emmerson Resources):ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)および水の第一コーティング層が追加され、40%のコーティングレベルを達成する。第二コーティング層は、酢酸セルロース(CA-398-10NF, Eastman)およびアセトンを添加することによって適用され、10%のコーティングレベルを達成する。全コーティングは、流動層で実施される。
【0038】
〔実施例5〕
7%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)による造粒デキストロメトルファン臭化水素酸塩に、80:20(w/w)のシェラック(Marcoat 125, Emmerson Resources):ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)および水の第一コーティング層が追加することによって適用され、30%のコーティングレベルを達成する。第二コーティングは、95:5(w/w)のエチルセルロース(Ethocel 10P, Dow):クエン酸トリエチル(TEC, Morflex)およびアセトンの層を追加することによって適用され、20%のコーティングレベルを達成する。全コーティングは、流動層で実施される。
【0039】
〔実施例6〕
7%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)による造粒デキストロメトルファン臭化水素酸塩に、80:20(w/w)のシェラック(Marcoat 125, Emmerson Resources):ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)および水の第一コーティング層が追加され、50%のコーティングレベルを達成する。第二コーティングは、80:20(w/w)の酢酸セルロース(CA-398-10NF, Eastman):クエン酸トリエチル(TEC, Morflex)およびアセトンを添加することによって適用され、15%のコーティングレベルを達成する。全コーティングは、流動層で実施される。
【0040】
〔実施例7〕
7%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)による造粒デキストロメトルファン臭化水素酸塩に、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(Eudragit E100, Degussa)およびアセトンの第一コーティング層が追加され、30%のコーティングレベルを達成する。第二コーティング層は、酢酸セルロース(CA-398-10NF, Eastman)およびアセトンを添加することによって適用され、15%のコーティングレベルを達成する。全コーティングは、流動層で実施される。
【0041】
〔実施例8〕
7%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)による造粒デキストロメトルファン臭化水素酸塩に、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(Eudragit E100, Degussa)およびアセトンの第一コーティング層が追加され、50%のコーティングレベルを達成する。第二コーティングは、95:5(w/w)のエチルセルロース(Ethocel 10P, Dow):クエン酸トリエチル(TEC, Morflex)およびアセトンの層を追加することによって適用され、10%コーティングレベルを達成する。全コーティングは、流動層で実施される。
【0042】
〔実施例9〕
7%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)による造粒デキストロメトルファン臭化水素酸塩に、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(Eudragit E100, Degussa)およびアセトンの第一コーティング層が追加され、40%のコーティングレベルを達成する。第二コーティングは、80:20(w/w)の酢酸セルロース(CA-398-10NF, Eastman):クエン酸トリエチル(TEC, Morflex)およびアセトンの層を追加することによって適用され、20%のコーティングレベルを達成する。全コーティングは、流動層で実施される。
【0043】
〔実施例10〕
7%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)による造粒デキストロメトルファン臭化水素酸塩に、80:20(w/w)のアミノアルキルメタクリレートコポリマー(Eudragit E100, Degussa):Mgステアレート(ステアリン酸マグネシウム)およびアセトンの第一コーティング層が追加され、32%のコーティングレベルを達成する。第二コーティングは、80:20(w/w)の酢酸セルロース(CA-398-10NF, Eastman):クエン酸トリエチル(TEC, Morflex)およびアセトンの層を追加することによって適用され、10%のコーティングレベルを達成する。全コーティングは、流動層で実施される。
【0044】
〔実施例11〕
実施例11は、60メッシュのアミノアルキルメタクリレートコポリマーの代わりに、100メッシュのアミノアルキルメタクリレートコポリマーが用いられることができる点を除いては、先の実施例10を繰り返す。
【0045】
〔実施例12〕
7%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)による造粒デキストロメトルファン臭化水素酸塩に、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(Eudragit E100, Degussa)およびアセトンの第一コーティング層が追加され、36%のコーティングレベルを達成する。第二コーティング層は、酢酸セルロース(CA-398-10NF, Eastman)およびアセトンを添加することによって適用され、10%のコーティングレベルを達成する。全コーティングは、流動層で実施される。
【0046】
下の表は、実施例1〜12の試験結果を示す。溶解試験は、コーティング粒子を0.1 N HClに45分間浸し、放出されるデキストロメトルファン臭化水素酸塩のパーセンテージを測定することによって実施される。苦味試験に関しては、コーティングされた粒子は、15 mgのデキストロメトルファンを含有するフィルム片に形成される。各フィルム片は、患者の舌の上に1分間置かれ、各患者は、苦味の0〜10の点数による採点を提供する。デキストロメトルファン臭化水素酸塩は、極端に苦く、味の悪い原薬である。下の表に示されるように、2層コーティングフィルムは、当該原薬、即ちデキストロメトルファン臭化水素酸塩、の味を実質的にマスクした。
【表2】

【0047】
本発明は、詳細に、本発明の具体的実施例を参照して説明されたが、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、各種の変更および修正が加えられることができることが、当業者に明らかになるであろう。
【0048】
〔実施の態様〕
(1) 水性懸濁液において、
水、原薬、前記原薬上の第一コーティング層、および、前記原薬上の前記第一コーティング層上の第二コーティング層を含み、
前記コーティング層の少なくとも1層が、約6よりも高いpHを有する水性溶液に不溶性である、
水性懸濁液。
(2) 実施態様1に記載の水性懸濁液において、
前記第一コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液に不溶性である、
水性懸濁液。
(3) 実施態様1に記載の水性懸濁液において、
前記第二コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液に不溶性である、
水性懸濁液。
(4) 実施態様1に記載の水性懸濁液において、
前記第一コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液中で実質的に非膨潤性を保つ、
水性懸濁液。
(5) 実施態様1に記載の水性懸濁液において、
前記第二コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液中で実質的に非膨潤性を保つ、
水性懸濁液。
【0049】
(6) 組成物において、
原薬、前記原薬上の第一コーティング層、および、コーティングされた前記原薬の前記第一コーティング層上の第二コーティング層を含み、
前記コーティング層の少なくとも1層が、約6よりも高いpHを有する水性溶液に不溶性であり、
前記組成物が、即時放出型組成物(immediate release composition)である、
組成物。
(7) 実施態様6に記載の組成物において、
前記第一コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液に不溶性である、
組成物。
(8) 実施態様6に記載の組成物において、
前記第二コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液に不溶性である、
組成物。
(9) 実施態様6に記載の組成物において、
前記第一コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液中で実質的に非膨潤性を保つ、
組成物。
(10) 実施態様6に記載の組成物において、
前記第二コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液中で実質的に非膨潤性を保つ、
組成物。
(11) 実施態様6に記載の組成物において、
前記第一コーティング層が、約40℃よりも高いガラス転移温度または融点温度を有する、
組成物。
(12) 実施態様6に記載の組成物において、
前記第二コーティング層が、約40℃よりも高いガラス転移温度または融点温度を有する、
組成物。
(13) 実施態様6に記載の組成物において、
前記コーティング層の少なくとも1層が、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(aminoalkyl methacrylate copolymer)を含む、
組成物。
(14) 実施態様6に記載の組成物において、
前記コーティング層の少なくとも1層が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびステアリン酸マグネシウムを含む、
組成物。
(15) 実施態様6に記載の組成物において、
前記コーティング層の少なくとも1層が、酢酸セルロースを含む、
組成物。
(16) 実施態様6に記載の組成物において、
前記組成物が、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、液体、硬いおよび軟らかいチュアブル錠ならびにカプセル、急速融解性のカプセルおよび錠剤(fast-melt capsules and tablets)、単層独立フィルム(single standalone films)および多層フィルムを含むフィルム、有核ロゼンジ(center-filled lozenges)を含むロゼンジ、ならびに、シームレスカプセル(seamless capsules)から成る群から選択される剤型である、
組成物。
(17) 実施態様6に記載の組成物において、
前記コーティング層が、前記原薬の放出を大幅には変化させない、
組成物。
【0050】
(18) フィルムにおいて、
口腔で崩壊可能な単層独立フィルムを含み、
前記フィルムが、第一コーティング層および第二コーティング層でコーティングされた原薬を含み、
前記組成物が、即時放出型組成物である、
フィルム。
(19) 実施態様18に記載のフィルムにおいて、
前記コーティング層の少なくとも1層が、約6よりも高いpHを有する水性溶液に不溶性である、
フィルム。
(20) 実施態様18に記載のフィルムにおいて、
前記コーティング層の少なくとも1層が、約6よりも高いpHを有する水溶液中で実質的に非膨潤性を保つ、
フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性懸濁液において、
水、原薬、前記原薬上の第一コーティング層、および、前記原薬上の前記第一コーティング層上の第二コーティング層を含み、
前記コーティング層の少なくとも1層が、約6よりも高いpHを有する水性溶液に不溶性である、
水性懸濁液。
【請求項2】
請求項1に記載の水性懸濁液において、
前記第一コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液に不溶性である、
水性懸濁液。
【請求項3】
請求項1に記載の水性懸濁液において、
前記第二コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液に不溶性である、
水性懸濁液。
【請求項4】
請求項1に記載の水性懸濁液において、
前記第一コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液中で実質的に非膨潤性を保つ、
水性懸濁液。
【請求項5】
請求項1に記載の水性懸濁液において、
前記第二コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液中で実質的に非膨潤性を保つ、
水性懸濁液。
【請求項6】
組成物において、
原薬、前記原薬上の第一コーティング層、および、コーティングされた前記原薬の前記第一コーティング層上の第二コーティング層を含み、
前記コーティング層の少なくとも1層が、約6よりも高いpHを有する水性溶液に不溶性であり、
前記組成物が、即時放出型組成物である、
組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物において、
前記第一コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液に不溶性である、
組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の組成物において、
前記第二コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液に不溶性である、
組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の組成物において、
前記第一コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液中で実質的に非膨潤性を保つ、
組成物。
【請求項10】
請求項6に記載の組成物において、
前記第二コーティング層が、約6よりも高いpHを有する水溶液中で実質的に非膨潤性を保つ、
組成物。
【請求項11】
請求項6に記載の組成物において、
前記第一コーティング層が、約40℃よりも高いガラス転移温度または融点温度を有する、
組成物。
【請求項12】
請求項6に記載の組成物において、
前記第二コーティング層が、約40℃よりも高いガラス転移温度または融点温度を有する、
組成物。
【請求項13】
請求項6に記載の組成物において、
前記コーティング層の少なくとも1層が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含む、
組成物。
【請求項14】
請求項6に記載の組成物において、
前記コーティング層の少なくとも1層が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびステアリン酸マグネシウムを含む、
組成物。
【請求項15】
請求項6に記載の組成物において、
前記コーティング層の少なくとも1層が、酢酸セルロースを含む、
組成物。
【請求項16】
請求項6に記載の組成物において、
前記組成物が、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、液体、硬いおよび軟らかいチュアブル錠ならびにカプセル、急速融解性のカプセルおよび錠剤、単層独立フィルムおよび多層フィルムを含むフィルム、有核ロゼンジを含むロゼンジ、ならびに、シームレスカプセルから成る群から選択される剤型である、
組成物。
【請求項17】
請求項6に記載の組成物において、
前記コーティング層が、前記原薬の放出を大幅には変化させない、
組成物。
【請求項18】
フィルムにおいて、
口腔で崩壊可能な単層独立フィルムを含み、
前記フィルムが、第一コーティング層および第二コーティング層でコーティングされた原薬を含み、
前記組成物が、即時放出型組成物である、
フィルム。
【請求項19】
請求項18に記載のフィルムにおいて、
前記コーティング層の少なくとも1層が、約6よりも高いpHを有する水性溶液に不溶性である、
フィルム。
【請求項20】
請求項18に記載のフィルムにおいて、
前記コーティング層の少なくとも1層が、約6よりも高いpHを有する水溶液中で実質的に非膨潤性を保つ、
フィルム。

【公表番号】特表2009−514845(P2009−514845A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538438(P2008−538438)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003049
【国際公開番号】WO2007/052121
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508132595)マクニール−ピーピーシー・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】McNeil−PPC,Inc.
【住所又は居所原語表記】One Johnson & Johnson Plaza,New Brunswick,New Jersey 08933,United States of America
【Fターム(参考)】